(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】電子ビーム測定装置および電子ビーム測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/00 20060101AFI20221013BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221013BHJP
G01B 15/04 20060101ALI20221013BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G01B15/00 K
H01L21/66 J
G01B15/04 K
H01J37/22 502H
(21)【出願番号】P 2018187386
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591012668
【氏名又は名称】株式会社ホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵三
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-321040(JP,A)
【文献】国際公開第2008/111365(WO,A1)
【文献】特開2017-199453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00-15/08
H01L 21/66
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上に形成された距離測定対象のパターンの寸法、面積測定あるいは輪郭を抽出する電子ビーム測定装置において、
前記距離測定対象のパターンのエッジを含む部分走査領域を設定する設定手段と、
前記部分走査領域に電子ビームを走査し発生する電子を検出して部分走査画像を取得すると共に、該取得する際に、該パターンのエッジをリアルタイムに検出する検出手段と、
前記検出手段が前記エッジをリアルタイムに検出して、所定間隔を経過した後に電子ビームOFF信号をリアルタイムに発生する電子ビームOFF信号発生手段と、
前記電子ビームOFF信号発生手段がリアルタイムに電子ビームOFF信号を発生したときにリアルタイムに前記電子ビームを遮断して前記パターンへの照射を遮断する電子ビーム遮断手段とを備え、
自動的に測定に最小限必要な画像を取得することを特徴とする電子ビーム測定装置。
【請求項2】
測定対象パターンに対向して取得されたそれぞれの前記部分走査画像においてエッジ抽出をそれぞれ行い、それぞれのエッジ位置情報から前記パターンの互いに対向するエッジの距離を求める手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電子ビーム測定装置。
【請求項3】
測定対象パターンから取得された前記部分走査画像においてエッジ抽出を行い、測定対象パターンの輪郭を抽出することを特徴とする請求項1記載の電子ビーム測定装置。
【請求項4】
前記所定間隔は、電子ビームをパターンの測定対象エッジに平行方向に走査した場合には走査ラインのN本(整数)に対応する間隔、あるいは電子ビームをパターンの測定対象エッジに直行方向に走査した場合には走査ラインのM画素(整数)に対応する間隔としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子ビーム測定装置。
【請求項5】
前記測定対象のパターンを、電子ビーム照射により縮小するパターンあるいはレジストパターンとしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電子ビーム測定装置。
【請求項6】
試料上に形成された距離測定対象のパターンの寸法、面積測定、あるいは輪郭を抽出する電子ビーム測定方法において、
前記距離測定対象のパターンのエッジを含む部分走査領域を設定する設定ステップと、
前記部分走査領域に電子ビームを走査し発生する電子を検出して部分走査画像を取得すると共に、該取得する際に、該パターンのエッジをリアルタイムに検出する検出ステップと、
前記検出ステップが前記エッジをリアルタイムに検出して、所定間隔を経過した後に電子ビームOFF信号をリアルタイムに発生する電子ビームOFF信号発生ステップと、
前記電子ビームOFF信号発生ステップがリアルタイムに電子ビームOFF信号を発生したときにリアルタイムに前記電子ビームを遮断して前記パターンへの照射を遮断する電子ビーム遮断ステップとを有し、
自動的に測定に最小限必要な画像を取得することを特徴とする電子ビーム測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料上に形成された距離測定対象のパターンの寸法、面積を測定あるいはパターンの輪郭抽出を行う電子ビーム測定装置および電子ビーム測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは年を追うごとに最小フィーチャーサイズが縮小する傾向が半世紀近く続いており、新しいプロセスが開発されるたびに、よりトランジスタ密度の高いデバイスが作られている。これにより単位トランジスタコストを劇的に下げることを可能としている。現在では1cm平方メートルのチップ中に数十億個のトランジスタを詰め込んだデバイスが数万円で購入でき、従来の大型コンピュータの性能を遙かに凌ぐ性能のコンピュータがスマートフォンの中に実現できるようになってきた。
【0003】
一般にムーアの法則で知られるこのフィーチャーサイズ縮小による経済拡大原理によって半導体業界は半世紀以上にわたって栄え続けている。
【0004】
現在では10nmオーダーの最小寸法を持つデバイスが開発利用されており、今後も7nm、5nm、3nmとトランジスタが小さくなる傾向は続くと予想される。
【0005】
半導体デバイスが作られるシリコンウエハー上に小さなトランジスタを製造するためには、リソグラフィーと呼ばれる配線パターンを焼き付ける露光技術が重要である。微細加工の限界は露光に利用する光の波長に依存するため、短波長化が進められてきた。
【0006】
現在主にArF波長193nmによるダブル、トリプル露光、あるいはEUV波長13.5nmの光を用いた露光技術が利用されている。露光技術は使用しないが同様の化学組成を持つレジストを用いるnmオーダー微細化プロセスとしてナノインプリントやDSA(Directed Self-Assembly)も利用されている。
【0007】
露光装置で利用するArFあるいはEUV等の短波長レーザ光源の発生効率は非常に低いため、最終的に得られるレーザ光の光量も少ない。例えばEUV光源では投入したエネルギーの1%しかEUV光に成らず、さらにその1%程度がウエハー表面に届いて実際の露光に使用されるにすぎない。より具体的には数十キロワットのポンピングレーザーを用いて数百ワットのEUV光が発生し、最終的に数Wの光がウエハーに届く。そのため通常の低感度レジストを用いると露光時間が掛かりすぎ、スループットの著しい低下が起こる。そこで、弱い光でも従来と同じ露光時間で露光可能でスループット向上出来る化学増幅型レジストと呼ぶ高感度レジストが開発され利用されている。
【0008】
代表的な化学増幅型レジストはエステル化メタクリル酸樹脂を基材とし、感度を上げるために反応触媒となる酸を発生させる光酸発生材料(PAG)を含んでいる。これにより、レジストに光が当たると酸が発生しレジストの分解反応を促進し感度を高める。光酸発生剤としてオニウム塩の他に、ニトロベンジルエステル、ジアゾメタン、トリアジンなどが知られている。
【0009】
その後の露光後ベーク(Post Exposure Bake PEB)の加熱によって、ポジ型においてはアルカリ可溶樹脂のアルカリ可溶基を保護している酸不安定保護基が酸を触媒に脱保護反応を起こし、樹脂の極性が変化することによってアルカリ不溶からアルカリ可溶へとなりアルカリ液現像後にポジ型パターンを得る。アルカリ可溶基としてはフェノール性水酸基、カルボキシル基、酸不安定保護基としてはtert-ブチルter-ブトキシカルボニル(t-Boc)、テトラヒドロピラニル基などが用いられる。ネガ型においては、露光後ベークの加熱によってアルカリ可溶性樹脂と架橋剤が酸を触媒にして架橋反応を起こし、アルカリ可溶からアルカリ不溶へと変化しアルカリ液現像後にネガ型パターンを得る。架橋剤としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリル(TMCU)などが用いられる。いずれの場合も、酸を触媒にして反応が進むので、従来のレジストにくらべて極めて高感度のレジストとなる。
【0010】
一方、このような化学増幅型のレジストは前述したような酸発生による感度増幅機構をもつため、光露光とは無関係な電子ビーム照射によってもレジスト中に酸が発生しレジストが分解しレジストが収縮してしまう。例えば、CDSEMで測長を行うために前記材料を含んだレジスト構造物に数nmに収束した電子ビームを照射すると照射した場所のレジストがシュリンクしてしまい、元の長さや構造とは異なったものになることが知られている。この問題は長年CDSEMによるレジスト構造物の精密測長の妨げとして広く認識されているが、いまだシュリンクしないでCD測定する方法は見つかっていないという大きな課題があった。
【0011】
現在では、大手メーカのウエハー用CDSEMなどでは、電子ビームによって測長する際には数nmから数十nmのレジストシュリンクが当然起こることを前提として、同じ測定箇所を複数回連続測定した結果から、電子ビームが照射されていない時の寸法を推定あるいは予測する方法が広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前述したように半導体デバイス微細化が進んだ結果、レジスト構造の最小幅は10nmオーダーとなり、数nmのシュリンクが起こると本体寸法の10%以上のランダムな寸法変化を起こすことになり、寸法測定精度が出ないことどころか、デバイス特性に悪影響が出るほどの大きな問題となってきた。さらにはSEM観察することによって欠陥を発生させる事態もなるという大きな問題となってきた。
【0013】
従って、従来のように実際にレジストをシュリンクさせてしまったのちに、電子ビーム照射をしていない状態の寸法を推定する方法では測定の意味を為さなくなったばかりか、本来歩留まり向上のために行われているCDSEM測定がデバイス製造の歩留まりを落とす原因にさえなってきている。これではTEG(test element group)は測定できても実際に動作するデバイスあるいは素子を測定することは不可能であるという大きな問題となってきた。
【0014】
そのため、本発明は、電子ビームを用いた従来の測長方法の課題や欠陥を鑑み、従来のCDSEM測定概念とは全く逆の方法を導入してレジストのシュリンクそのものを本質的に小さくする、あるいは発生しないようにし、実際に動作するデバイスの正確かつ再現性の高いレジスト寸法の測定あるいは歩留まりを落とさない測長方法SEM観察方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、試料上に形成された距離測定対象のパターンの寸法、面積測定あるいは輪郭を抽出する電子ビーム測定装置において、距離測定対象のパターンのエッジを含む部分走査領域を設定する設定手段と、部分走査領域に電子ビームを走査し発生する電子を検出して部分走査画像を取得すると共に、該取得する際に、該パターンのエッジをリアルタイムに検出する検出手段と、検出手段が前記エッジをリアルタイムに検出して、所定間隔を経過した後に電子ビームOFF信号をリアルタイムに発生する電子ビームOFF信号発生手段と、電子ビームOFF信号発生手段がリアルタイムに電子ビームOFF信号を発生したときにリアルタイムに電子ビームを遮断してパターンへの照射を遮断する電子ビーム遮断手段とを備え、自動的に測定に最小限必要な画像を取得するようにしている。
【0016】
この際、測定対象パターンに対向して取得されたそれぞれの部分走査画像においてエッジ抽出をそれぞれ行い、それぞれのエッジ位置情報からパターンの互いに対向するエッジの距離を求めるようにしている。
【0017】
また、測定対象パターンから取得された部分走査画像においてエッジ抽出を行い、測定対象パターンの輪郭を抽出するようにしている。
【0018】
また、所定間隔は、電子ビームをパターンの測定対象エッジに平行方向に走査した場合には走査ラインのN本(整数)に対応する間隔、あるいは電子ビームをパターンの測定対象エッジに直行方向に走査した場合には走査ラインのM画素(整数)に対応する間隔とするようにしている。
【0019】
また、測定対象のパターンを、電子ビーム照射により縮小するパターンあるいはレジストパターンとするようにしている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の特徴は従来方法とは全く逆で、基本的にレジスト構造(パターン)部分には電子ビームを照射しないでレジスト構造物の幅や長さを測定することにある。特に本発明では構造物から得られる信号電子を用いて測定するために利用される非常に狭い範囲に電子ビーム走査領域を自動設定できることに大きな特徴がある。
【0021】
従来の電子ビームを用いた測長あるいは検査方法ではレジスト構造物を含むFOVと呼ばれる数ミクロンから数mmにおよぶ領域全体をくまなくnmオーダーに収束した電子ビームを走査して画像を取得し、得られた画像に現れる輝度が大きく変化する部分を構造体のエッジと定義してそれらエッジ間の距離を求めることで測長や形状認識を行っていた。
【0022】
本発明は、測定対象の必要な場所にだけ電子ビームを照射して測定時間を短縮する技術を利用している。それを利用するとレジストのエッジ部分にだけ電子ビームを照射することが可能で、シュリンクを低減することが可能である。例えば100nm位の幅を持つラインパターンに対して、エッジを構成する10nm程度の幅の領域にだけ電子ビームを照射して測定することが出来る。このようにすれば、レジストのシュリンクはライン全体に電子ビームを照射した場合と比較してかなり小さくできる。
【0023】
しかしながら、ライン形成位置には誤差があるため、線幅が10nmオーダーになったラインパターンのエッジ部分だけに予めデザイン(CADデータ)で決められた位置だけを頼りに高速に正確に電子ビームを照射して測定することはかなり難しい。
【0024】
そこで、本発明は、ノギス的な測定方法を電子ビームに利用したものである。つまり、電子ビーム走査は主に測定対象であるレジスト構造物の作る境界の外側の領域で行い、構造物を挟み込むように測長することに特徴がある。特に本発明では構造物から得られる信号電子を用いて電子ビーム照射する範囲をCADデータをガイドとして実際に形成されたラインのエッジ位置に合わせて自動設定(セルフアラインESR)することに大きな特徴がある。
【0025】
言い換えると、電子ビームを照射した構造物から発生する信号電子を測定中にリアルタイムに利用して、現在進行しつつある電子ビーム走査方法を即時変調あるいは測定方式を変更するという従来にはない電子ビーム走査方法を有することに大きな特徴がある(リアルタイム測定)。これにより測定対象物に照射した結果発生する信号(電子、電磁波、熱等)の変化によって走査方法を自動的に変えることが出来る。
【0026】
より具体的な1つの例としては、測定対象物構造体からの信号電子を利用して、測定対象物におけるパターンの境界を認識し、測定対象に照射している電子ビームをブランキングあるいは照射停止して確実に測定対象物を保護することに大きな特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、距離測定対象のパターンの対向するエッジをそれぞれ含むそれぞれの部分走査領域を設定し、該部分走査領域に電子ビームを走査し発生する電子を検出して該部分走査画像を取得する際に、該パターンの外から内に入る境界に存在するエッジのピークをリアルタイムに検出した後、所定間隔を経過した後に電子ビームOFF信号をリアルタイムに発生し、電子ビームをパターンへの照射をリアルタイムに遮断して、自動的に測定に必要な最小限の画像のみを取得するようにしてパターンへの照射を抑止しパターンのダメージやシュリンクを抑制することを実現した。
【実施例1】
【0028】
本発明の実施例について以下順次詳細に説明する。
(1)電子ビーム走査をCADデータから導かれるレジスト構造物が無い位置から開始し、徐々に走査位置をレジスト構造物との境界に向かって近づけていく。走査位置の関数として測定対象物から発生する2次電子あるいは反射電子信号電子を検出してその強度をデジタル値に変換したのち半導体メモリーあるいは記憶装置に記録する。
(2)レジスト構造物が無い場所の2次電子あるいは反射電子強度とレジストがある場所の2次電子あるいは反射電子強度や出射方向は異なるので、その強度信号差や出射方向差を利用してレジスト領域とレジスト以外の領域を適切な敷居値を設定して自動的に区別し電子ビームがレジスト領域に入った途端電子ビーム照射を停止あるいはNピクセル走査後に停止するなどと決めることが出来る。走査停止までに取得した信号波形を1つの塊としてメモリー等記憶装置に記憶する。
(3)レジストが無い領域はいくら電子ビーム走査しても測定対象に影響を与えないので、必要な画像SNRが得られるだけ上記プロセスを繰り返して十分に電子ビーム照射を行うことが可能で非常に高いSNRの画像が得られるところがキーポイントである。この特性の結果、ノイズフロアーを非常に低いところに抑えることが可能となり、ノイズフロアーからわずかに上に飛び出す境界を表す微小信号を検出可能となり容易にレジスト領域とそれ以外の領域の区別がつくのが本発明の基本原理である。尚、電子ビームを走査する間隔については、AIなど学習機能を利用して、間隔と波形変化の関係を学習し、最短かつ最大の効率でレジスト構造体に近づくように制御しても良い。
【0029】
以上のような仕組みによりCADデータによる設定だけでは実現できないような狭い領域に対して自動的に測定に必要な最小限の画像を取得できる。
【0030】
【0031】
図1において、電子銃1は、電子線ビームを発生・縮小するものであって、電子発生源としてはWフィラメントを用いた熱電子源、ZrOを用いたショトキー型、電解研磨したWのコールドエミッタや、マイクロマシニング技術等を用いて作ったコールドフィールドエミッタ、CNTカソード、LaB6,光励起型エミッター(フォトカソード)等を利用できる。発生した電子を所望のエネルギーに加速する加速電極などから構成される公知のものである。
【0032】
アパチャー2は、電子銃1から放出された電子ビームの中心部分(所定立体角内)の電子ビームを通過させ、それ以外を遮断する円形の絞りであって、ここでは、自動的に複数の穴径をもつものに切り替え可能なものである。アパチャー径を変えるための移動手段としてはステッピングモーター、サーボモータあるいはピエゾ素子を用いた超音波モータや形状記憶合金などを利用できる。図示のアパチャー2は、CL3の上側に配置したが、これに限らず、当該CL3の主面(レンズ中心)や下側になどに配置してもよい。
【0033】
CL(コンデンサレンズ)3は、電子銃1から放出されてアパチャー2の中心部分を通過した電子ビームを収束する公知のものである。図示のCL3は、模式的に表し、実際は磁界レンズあるいは静電レンズから構成されるものである。
【0034】
ブランキング電極13は、ブランキングアパチャー14とともに利用して自動ブランキング制御装置11からの信号に従って電子ビームをオン/オフして電子ビームがサンプル8に照射されるか否かを決定するものである。超高速動作出来るために、出来るだけ電極間容量が小さくなるように設計する。また、小さな電圧印可で完全ブランキングが可能なように、電子ビームが収束している場所にブランキングアパチャー14を配置すると良い。
【0035】
自動ブランキング制御手段11は、サンプル8で電子ビーム走査に起因して発生した2次電子あるいは反射電子信号を受け取って、サンプル構造が大きく変化したあるいは構成材料が変化した等(例えばエッジ)を超高速検出し自動的にブランキング信号を発生してレジスト構造物に電子ビームが照射されないようにする装置である。前述したように実際に電子ビーム照射停止を開始する場所は、信号を受け取ってから任意のピクセル後(あるいはライン後)に設定することが出来る。このON/OFF決定の判断に構造物のデザイン寸法や配置を決めているCADデータを利用することもできる。例えば、CADデータで規定されているレジスト構造物の範囲に一定量電子ビーム走査が入り込んだら、レジスト構造物の完全な保護のために自動的あるいは強制的にブランキングを行うという使い方である。上の例ではサンプルが発生する信号電子を利用してブランキングを行う例を示したが、測定対象からの信号を受けて、照射する電子ビームの走査間隔や電流量あるいはデューティーを変えて実質的にレジストがシュリンクしないように制御しても良い。
【0036】
ブランキング装置12は、自動ブランキング制御手段11からの信号をもとにブランキング電極13に電圧を印加し、電子ビームを遮断するものである。
【0037】
ブランキングアパチャー14は、ブランキング電極13で偏向された電子ビームを遮断するアパチャー(絞り)である。
【0038】
DEF(1)4,DEF(2)5は、2段の偏向器を表し、対向した電極をそれぞれ持つ静電偏向器であって、nmオーダーに細く絞った電子ビーム111をサンプル8上に照射しつつ平面走査(X方向およびY方向に走査)するものである。この偏向器は必要な場所にのみ電子ビームが走査出来るように電極容量を小さく設計し高速応答できることが望ましい。尚、ヒステリシスなどを特別に小さく設計した2段の磁気偏向器でもよい。
【0039】
MCP6は、2次電子検出器の例を表し、電子ビームがサンプル8に照射しつつ平面走査されたときに、放出された2次電子を検出するものであって、前面に正の電圧を印加したものである。検出器はMCPをはじめシンチレータやPINダイオード、APD,MPPC等半導体検出器など現在使用可能なあらゆる検出器を使用することが出来る。境界検出をリアルタイムで行うために、サンプル表面で発生した2次電子を加速して出来るだけ遅延が起こらないようにすることが望ましい。そのために、サンプルと電子検出器の間に加速電界を加えると良い。当然、もちいる増幅器はnsの周波数応答が可能なアンプルを用いて増幅を行うことが望ましい。
【0040】
対物レンズ7は、電子ビーム111をサンプル8上にnmオーダーに細く絞って照射するためのものであって、通常、磁界型対物レンズである。もちろん静電レンズで構成することもできる。対物レンズ収差を小さくするために高加速電子を対物レンズに入射しサンプルに逆バイアスを印加して、電子ビームにブレーキをかけ電子ビームのランディングエネルギーを制御する方法を利用することも出来る。(所謂、リターディング法や中間加速法)
サンプル8は、ステージ9上に固定されたレジストパターン付きサンプル(例えばフォトマスクや半導体ウエハーなど)である。
【0041】
ステージ9は、サンプル8を固定し、測長器27で精密にX方向およびY方向の座標位置を測長しつつ所定場所に移動させるものである。
【0042】
電子ビーム111は、電子銃1から放出された1次電子ビームである。
【0043】
2次電子ビーム121は、電子ビーム111を細く絞ってサンプル8上に照射しつつ平面走査したときに放出された2次電子の集合体である。サンプル8から放出された2次電子121は、対物レンズ7の磁界により軸上を螺旋しながら正電圧の印加されているMCP6に向かって進行し、当該MCP6の検出面に衝突して増幅されて信号電流となり適切に増幅されたのちにAD変換されてPCに取り込まれ、信号電流量をグレースケールとする2次電子画像をディスプレイ上に生成するものである。二次電子ビームには反射電子等も含まれる。
【0044】
高圧電源21は、PC31からの指示に従い、電子銃1に正の高電圧を印加、陰極に加熱電圧を供給したりなどするものである。
【0045】
CL電源22は、PC31からの指示に従い、CL3に所定電流を供給するものである。
【0046】
偏向電源23は、PC31からの指示に従い、DEF(1)4,DEF(2)5に所定の偏向電圧を印加するものである。
【0047】
2次電子検出器24は、MCP6に所定電圧を印加、MCP6で増幅された信号を更に増幅したりなどし、PC31に2次電子信号(2次電子画像)を送出するものである。
【0048】
対物レンズ電源25は、PC31からの指示に従い、対物レンズ7に所定電流を供給したりなどするものである。
【0049】
ステージ制御電源26は、ステージ9を駆動するモータに所定制御電源を供給してサンプル8を所定場所に移動させるものである。
【0050】
測長器27は、ステージ9あるいはサンプル8の位置を精密に測定するレーザ干渉計などである。電子ビームがサンプルを照射している位置座標は、レーザ干渉計の測定位置と電子ビームの走査位置を合成することで得られる。この値とCADデータ等の座標を用いて照射開始位置を決定する。
【0051】
PC31は、プログラムにより各種制御、処理を行う公知のパソコンであって、ここでは、走査領域設定手段32、走査方法指定手段33、グローバルアライメント手段34、画像取得手段35、測長手段36、信頼性判定手段37、DB41などから構成されるものである。
【0052】
走査領域設定手段32は、サンプル8上のパターンの走査領域(走査領域、部分走査領域)を設定するものである。
【0053】
走査方法指定手段33は、サンプル8上のパターンの走査領域を走査する走査方法を指定するものである。
【0054】
グローバルアライメント手段34は、サンプル8上のパターンと、設計データ上のパターンとの座標変換式を生成するものである。ここで、半導体ウエハーあるいはフォトマスク等のサンプル上に存在する電子ビームを照射する測定対象の精密な位置は適切なアライメント手続きを実施したのち半導体デバイスの設計に利用するCADデータを用いて精密に指定することが出来る。もちろんCADデータが無い場合は、レジストに影響を与えない程度の低倍率で出来るだけ電子ビーム照射量を少なくした状態でSEM画像を観察しながら測定対象の範囲を指定することで、レジストとそれ以外の場所との境界を判定し自動的に電子ビーム走査する場所を決めることが出来る。もちろん高倍率の光学顕微鏡やAFMを用いることもできる。電子ビーム以外を用いる場合は、電子ビーム照射位置と光学顕微鏡の中心位置が一致するようにアライメントする。
【0055】
画像取得手段35は、サンプル8上のパターンの走査領域(走査領域、部分走査領域)を細く絞った電子ビームで走査してサンプル上で発生した信号電子の量を輝度情報として画像(走査領域画像、部分走査領域画像)を取得するものである。
【0056】
測長手段36は、画像取得手段35によって取得した画像(走査領域画像、部分走査領域画像)から境界部分を抽出してパターンの測長を行うものである。
【0057】
信頼性判定手段37は、取得した画像(走査領域画像、部分走査領域画像)からレジスト境界領域部分を抽出してパターンを測長した値の信頼性を判定するものである
DB41は、各種データを検索し易く格納したものであって、ここでは、配線パターンや測定位置を決定するCADデータ、測定結果データ、信頼性データなどを格納したものなどである。
【0058】
図2は、本発明の高速ON/OFF可能なフォトカソード型電子源例を示す。
【0059】
図2の(a)は構成図を示し、
図2の(b)はビームOFF信号例を示す。
【0060】
図2の(a)において、レーザ51は、レーザを発振するものである。
【0061】
集光レンズ52は、レーザ51から発生されたレーザを図示のように光電膜53に収束するものである。
【0062】
電子ビーム54は、光電膜53にレーザが照射されたときに放出された電子を図示外の電極で加速したものである。
【0063】
自動ブランキング制御手段11は、
図1の自動ブランキング制御手段であって、パターンのエッジから所定間隔(例えばNライン、M画素の間隔)経過したときにブランキング信号を発生し、レーザ51の放出を停止(遮断)し、電子ビームがサンプルに照射されるのを停止させるものである(
図3、
図4等を用いて後述する)。
【0064】
ここで、高速にON/OFF可能な半導体のレーザ51で、GaAs等の光電膜53を照射し電子を発生させるフォトカソードタイプの電子銃を組み合わせて実現する。半導体レーザはnsよりも遙かに高速にON/OFFすることが可能であり、電子ビームが1ピクセル分偏向走査でXY方向移動する時間よりも短い時間に電子ビームを停止できる。そのため、レーザ制御信号にレジスト境界を判定する信号を入力することで1ピクセルの誤差以下で確実に電子ビーム照射を停止してレジストがシュリンクすることを防止出来る。当然であるが、レジスト境界信号を受け取った後、2ピクセル、3ピクセル、Nピクセルと指定すれば、その位置で電子ビーム照射が停止する。同様に、MEMSあるいは半導体製造技術を用いて作成したゲート付きのマイクロエミッターを利用することで、電子銃のゲート自身にブランキング信号を与えて、電子ビームを高速にON/OFFすることもできる。つまり、ブランキング信号を電子源のONF/OFF信号として利用することで電子ビームの照射のオンオフを制御できる。ブランキング信号が正しく境界に対応するように信号地点の補正を行うと良い。
【0065】
次に、
図2の構成の動作を説明する。
(1)
図2の(a)の電子検出器が、例えばラインの左から右方向に走査し、ラインの左側のエッジをリアルタイムに検出した場合、自動ブランキング制御手段11がそのエッジから所定間隔(Nラインの間隔、あるいはM画素の間隔)後に、ビームOFF信号を発生する。
(2)(1)のビームOFF信号をもとにレーザ51にレーザをOFFにしてレーザの放出を停止する。そうすると、光電膜53から放出されていた電子ビーム54がOFFとなり、極めて高速に電子ビームを遮断できる。
【0066】
以上のように、ラインのエッジを検出した後、所定間隔後にビームOFF信号を出力し、レーザをOFF,更に電子ビームをOFFにし、結果として、電子ビームがラインのエッジを通過して所定間隔後に当該電子ビームが超高速に遮断し、無用な電子ビームの照射をなくし、ダメージやシュリンクをライン(レジストで構成される)に与えることを必要最小限に低減することが可能となる。
【0067】
【0068】
図3の(a)は、ライン長手方向に沿った走査例を示す。縦方向は主走査方向(Y軸)を表し、横方向は副走査方向(X軸)を表す。
【0069】
図3の(a)において、電子ビームをラインと平行に縦方向に、スペースの部分から走査(主走査)を開始し、順次右方向にあるラインに向かって走査(主走査)し、その境界に至ると検出される2次電子の強度が強くピークとなりエッジ(スペースとラインの境界)を検出できる。エッジを検出した後、更にNライン(例えば3ライン)の間隔に至ったときに電子ビームOFF信号を発生し、電子ビームを遮断し、それ以降の内側の部分への電子ビームの照射を遮断する。これにより、余分の電子ビームがラインの内側に照射されることがなく、ラインのダメージやシュリンクを低減できる。
【0070】
【0071】
本発明では、レジスト構造物であるラインに電子ビームを極力照射しないで測定することに特徴がある。そこで、設計CADデータを用いると測定対象構造物のラインとその周辺のスペースの設計上の位置は予め正確に知ることが可能である。電子ビーム走査はレジストの無いスペース領域から開始し、ライン長手方向に沿った方向に必要な長さ走査する。例えばラインの左側からラインの長手方向に沿って予め設定した距離(ピクセル数)の走査を始める(走査1)。従来SEMと同様に走査に伴って発生する信号電子の情報(量、放出方向、エネルギー等)を走査位置の関数としてリアルタイムに検出する。
【0072】
スペース部分を走査しているときは下地(石英や金属膜等)の2次電子放出能力で定まる2次電子が放出される。スペース部分にはレジストが無いためかなり大量に電子ビーム照射を行ってもレジストシュリンクには影響しないので、必要十分なSNRの画像信号が取得できるように十分な電子量を照射して電子ビーム走査を行う。スペース領域から徐々に右側に向かって走査を行いラインに近づくと、ラインの構造を為しているレジスト構造物の非常に薄い残膜が残っている領域に差し掛かる。さらに右側に向かって走査するとさらに厚いレジスト残差領域に入る。1次電子のエネルギーにも依存するがレジストは電子を吸収する性質があるので、信号強度は一旦小さくなる。2次電子検出能力は測定対象の表面数nm以下のレジスト膜厚変化を検出できるほど感度が高い。その後、レジスト構造物の側壁に当たると、コサイン効果により急激に2次電子放出が大きくなる。以上のように測定対象構造物を挟んで取得された相対する2つの部分走査画像をペアにして利用する。本発明では信号のSNRが非常に高いのでこれらの信号変化を精密に測定することが可能である。
【0073】
電子ビーム走査位置と信号電子強度の関係を簡単な近似式等に置き換えることが出来る。求められた近似式に対して予めレジスト境界を定める第1の閾値を定義することで、スペースとレジスト構造物の境界を判別できるようになる。
【0074】
判定に使用する信号は2次電子信号や反射電子信号が混ざった状態で利用しても良いし、境界変化に対応する信号変化が強く表れるように、2次電子信号や反射電子信号のエネルギーをフィルターして所望のエネルギーを持つ電子だけを利用しても良いし、複数の信号を合成しても良い。
【0075】
図3の(b)は、ライン長手方向に沿った走査画像例を示す。
図3の(a)と同様にして走査したときの画像例を示し、縦方向は主走査方向(Y軸)を表し、横方向は副走査方向(X軸)を表し、図示の画像は2次電子画像である。
【0076】
図3の(b)において、縦方向のライン(レジストで構成)の画像の左端、右端のNライン分だけ内部に入ったときに電子ビームを遮断するので、その内部に電子ビームは照射されなく、真っ黒になる(図示の走査画像では説明のために全部表示している)。
【0077】
以上のように、ラインの両端からNライン分まで電子ビームを照射し、それよりも内側は電子ビームを遮断するので、当該内部における電子ビームの照射をリアルタイムに制限し、ラインのダメージやシュリンクを低減することが可能となった。
【0078】
図4は、本発明の動作説明図(その2)を示す。
図4はレジスト構造物(ライン)の断面と電子ビーム走査によって生じる信号電子波形を示したものである。従来の信号電子波形とは異なり、エッジ部分に相当する波形は存在するが、構造物に相当する場所の波形が存在しない。
【0079】
図4の(c)はエッジ(+Nライン)に来たら走査停止する説明図を示し、
図4の(d)は電子ビームの照射例示す。
【0080】
次に動作を説明する。
(1)
図4の(c)に示したように例えばレジストのボトム構造を反映した長さを計測するための閾値として第1の閾値を定め、レジストとのトップ構造を反映した長さを測定するための閾値として第2の閾値を定める(どこをボトムあるいはトップと定義するかはユーザーが測定再現性等を考慮し実験して決定する)。通常は、ピーク位置、波形高さ%、微分波形あるいは断面SEMやTEM等の他の測定手段で得られた値と比較して決めることが多い。
【0081】
サンプルから発生する電子信号量がそれぞれの閾値を上回るあるいは下回ったところで、自動ブランキング制御手段は走査している電子ビームがスペースとライン(レジスト)の境界に至ったと判断し電子ビーム照射停止あるいは電子ビームブランキングを行って電子ビーム照射を停止してレジスト構造物(ライン)に電子ビームが照射されるのを防止する。このようにして得られた境界の位置を境界位置1(X1,Y1)として記録する。
(2)次に先ほどと逆にラインの右側のスペースを走査開始する(走査2)。2つの走査はレジスト構造物を挟んで1つの直線状にある。徐々に左側に走査して行きラインに近づいていく。ラインに近づくと薄いレジスト膜残差がある領域に差し掛かり、さらに左側に走査するとより厚いレジスト残差のある領域に入る。先ほど述べたように、レジスト厚み変化は2次電子信号量を十分検出できる程度に変化させる。この変化を近似式で表現しレジスト境界を定義する第2の閾値で区別することにより、ラインの右側のスペースとレジスト領域(ライン)の境界を正確に知ることが出来る。この信号を利用することで自動ブランキング制御手段が働き電子ビームをオフにする。このようにして求めた境界(エッジ)の位置を境界位置2(X2,Y2)として記録する。CD測定の分解能はそれぞれのライン刻みに比例するので、高い分解能が必要な時はライン走査刻みをサブnmとか小さな値に設定し、高い分解能が不要な場合は、3nmとかに設定すると良い。
(3)上記のように求めた、左右2つのレジスト境界(ラインのエッジ)の位置差(X2-X1)をレジスト構造物の幅とすることで、レジスト構造物をシュリンクすることなく、測定を行うことが出来る。
(4)信号波形に対してどこに閾値を置くと良いかは、通常のCDSEMの場合と同様、計測再現性との相関においてAI等の学習を行って最も測定再現性が高い閾値に最適化することもできる。
【0082】
図5は、本発明のラインプロファイル説明図を示す。
図5に示す閾値(第1の閾値、第2の閾値)を対応づける場合、2次電子あるいは反射電子の量を電子ビーム走査位置に対するX1次元あるいはXY2次元平面の近似式などで表し、その近似式に閾値を適用することで境界を求めても良い。あるいはレジスト構造物の左右境界として得られたそれぞれの境界点位置座標を結ぶ近似曲線(境界)を考え、その近似曲線を利用して距離を測定しても良い。
【0083】
この際、各電子ビーム走査で求めた距離にはエッジラフネスに起因する距離のばらつきがあるので、設計上同じ距離を持つとされる部分を電子ビーム走査した結果を積算して統計的に平均化処理を行い、長さを求めると、より精度が高く、再現性の良い測定結果が得られる。
【0084】
図6は、本発明の動作説明図(その3)を示す。これは、ラインに対して垂直方向に走査する例を示す。
【0085】
図6において、この実施例では、電子ビーム走査を行う方向がレジスト構造物(ライン)に対して並行ではなくどちらかといえば直角に近い角度で走査することに特徴がある(斜めでもよい)。斜めにして走査すれば、ライン幅が見かけ上長くなるため、境界部分を形成する画像のピクセル数をより多くとることが出来るので測定精度を上げることが出来る。斜めに走査した場合は、得られた距離に走査角度補正を行って正しい距離に変換する。
【0086】
図7は、本発明の動作説明図(その4)を示す。これは、
図6の詳細を説明するものである。以下詳細に説明する。
【0087】
(1)電子ビーム照射を開始するサンプル上の位置はCADデータを利用したCADガイドライン1,2あるいはマニュアルにより精密に定める。レジストが存在しないスペースの部分から走査を開始する。スペース部分とレジスト部分(ライン)は材料が異なるので、同一の電子ビーム照射に対して異なる2次電子放出量を示す。例えば左スペース部分からレジスト領域(ライン)に向かって電子ビームを走査し2次電子あるいは反射電子を連続的に電子ビーム走査位置の関数として検出し走査位置の関数として信号電子量を検出する。CADデータで指定される開始点のあるスペース部分からレジスト領域(ライン)に向かうとレジストの薄い膜が残った残差領域に差し掛かる。このとき2次電子あるいは反射電子はレジストの厚みに応じた信号量変化を起こす。さらに厚い残差が残ったレジスト領域(ライン)に走査が進むとさらに大きな信号量変化が生じる。この時の信号量変化(エッジの信号強度)を検出することでスペース領域とレジスト領域の境界(エッジ)を検出することが出来る(信号電子による境界)。
【0088】
(2)この検出した信号を用いて、自動ブランキング制御手段が境界点(エッジ)からNるいはMピクセル余分に走査したのち電子ビームを遮断させる。これにより1つの部分画像データが取得される。
【0089】
(3)1つの電子ビーム走査を停止したのち各CADデータで示されるガイドラインを利用して第2の電子ビーム走査を開始する。これを必要回数繰り返すことで、走査終了点がセルフアラインされたエッジ近傍の部分画像の集合体が取得される。隣接する走査線のピクセル位置は必要に応じて任意に決めることが出来る。1つのラインを走査し終えた後の次の走査は、本発明においては自由にプログラムすることが可能であり、構造物からの信号電子に依存して変化させることが出来る。例えば、必要なSNRに達しなければもう1度同じ場所を走査しても良いし、横のピクセル開始位置や終了位置を変化させることもできる。走査開始点から走査終了点まで走査を行い、再び走査開始点に戻ってくるような走査を行うこともできる(可変ESR)。
【0090】
(4)ブランキングを高速にするためには静電ブランキング法を利用しかつ、静電容量が極力小さくなるようにブランキング電極を設計する。同様に回路側の出力には応答速度数ns以下の超高速かつ出力電流の大きなトランジスタを用いて鋭い立ち上げ立ち下げが実現できるようにする。1次電子ビーム幅の狭くなる位置にブランキングアパチャーを置くことが望ましい。ブランキングは有限の速度を持つため、1次電子ビームのON/OFFにはテールが生じる。そこで、必要に応じてはブランキングがより正確に行えるように、クロックスピードを落とすことによってテールの影響を低減する方法も利用できる。
【0091】
(5)
図2で既述したように、ブランキングを行う代わりに電子源から出力される電子ビームそのものを境界検出(エッジ検出)とともに自動ブランキング制御手段を用いて停止させることもできる。特に光励起型の電子銃を利用した場合には、電子源に照射するレーザ等の高速光源をブランキングタイミングに合わせてオフすることで同様の効果を得ることが出来る。
【0092】
(6)実施例では説明を簡単にするために、ライン/スペースで説明したが、任意の図形は小さなラインの連結物あるいは集合体として定義できるので、ライン/スペース以外の任意形状であっても同様に測定できるのは言うまでもない。特に、任意形状をもつパターンの輪郭抽出等を行う場合、CADデータを用いて凡その輪郭を指定し、その位置から電子ビーム走査を始め、実際の構造物の境界を用いて電子ビーム走査範囲を定める手法を用いることで、半導体ウエハーやフォトマスク上に存在する、検査を必要とするパターンの輪郭部分だけを走査することが可能となり、超高速に測定対象構造物の輪郭を抽出可能となる。
【0093】
(7)具体的には CADデータで指定した電子ビーム走査開始点から電子ビーム走査を開始してエッジを検出すると、そこからNピクセル過ぎたところで、電子ビームを停止させる。次いで、すぐ横のピクセルに対応するCADガイドラインを始点として走査開始する。走査方向は任意形状を形成する部分ラインに対して垂直方向に走査することが望ましい。これを繰り返すことで、測定対象の輪郭近傍のみを電子ビーム走査することが可能となり、非常に小さな面積を測定するだけで、輪郭が抽出で出来るようになる。
【0094】
(8)通常,検査装置はウエハーやフォトマスクを2次元走査しているため、多くのピクセルを画像として取得する必要がある。取得ピクセル数は検査時間と比例関係があり、多ければ多いほど検査時間が掛かる。検査では外形に意味がある場合が多い。本発明を利用すれば1次元に近い走査を行うことで、測定対象を表現できるので、非常に少ない量のピクセル取得で検査が可能になるため従来の検査装置と比較して非常に高速に検査を行うことが出来るようになる。
【0095】
【0096】
図8において、入れ物は、イオン液体を入れる容器である。
【0097】
イオン液体は、イオン導電性を有する液体である。
【0098】
基板は、パターンを形成する基板であって、例えばウェハ、マスクなどである。
【0099】
レジストは、基板の上にパターンを形成するレジストであって、ここでは、イオン液体に浸すものである。
【0100】
次に、
図8の構成を説明する。
(1)イオン液体は融点が100℃以下である塩(イオン結晶をつくる物質)であり、強力にイオン結合しているため、室温で液体であるにも関わらず真空中でほとんど蒸発しない性質を有す。そのため、真空状態にされた電子顕微鏡の真空チャンバー内にそのまま放置しても蒸発せずにそのまま残り、かつ、導電性を示すことから帯電防止剤や潤滑剤として利用されている。一方、塩と同じで純粋なイオンの塊なのでそれぞれの構成物質はプラスイオンマイナスイオンを持ち、極性溶媒と良く混じる。
(2)主なイオン液体の種類としては以下のものが知られている。イオン液体自身新しいのでこれからもいろいろ出てくるのでそれも利用できる。
【0101】
基本的に、陽イオンの種類でピリジン 系、脂環族アミン系、脂肪族アミン系の3つに大別される。これに組み合わせる陰イオンの種類を選択することで、多様な構造を合成できる。用いられる陽イオンには、イミダゾリウム塩類・ピリジニウム塩類などのアンモニウム系、ホスホニウム系イオン、ピロリジニウム、無系イオンなど、陰イオンの採用例としては、臭化物イオンやトリフラートなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系などがある。
【0102】
最先端の露光プロセスに利用されるArFレジスト等には粘度調節のため以下のような溶剤が多く含まれている。溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル融点-96度、沸点120℃酢酸ブチル融点-74度、沸点126℃ あるいはレジスト分解反応生成物として有機溶剤が分離発生する。
(3)レジストにパターン形成するための露光を行い、現像、洗浄、ベークを行った場合、まだ、大量に上記溶剤がレジスト内部に残っている。したがって、現像後、あるいはベーク後のレジスト構造物を電子顕微鏡の真空チャンバーに入れると、溶剤がどんどん蒸発し目減りを起こす。特に、数nmに収束した電子ビーム照射を行った場所はレジストの温度が局所的に上がり、酸発生剤による酸が発生しレジスト開裂も進んで溶剤が飛び出すことからさらに溶剤が蒸発し、レジストの目減り、あるいはシュリンクが起こる。
【0103】
一方、上述したイオン液体は導電性であり、かつ蒸気圧が殆どないため、レジストを構成する溶剤と現像後に置換することにより、真空中においてもレジストから有機溶剤が外部に蒸発して目減りすることを防止できる。イオン液体をレジスト構造物に早く浸透させるために超音波などを加えて、置換加速を行っても良い。本発明では、エッジ部分で電子ビーム照射を自動停止するので、エッジの部分がイオン液体に置換されていれば良いので、比較的容易に置換できる。
(4)従来からベーク後レジストの帯電を防止する目的でイオン液体をレジスト表面に塗る技術は知られていたが、本発明のようにレジストを構成する有機溶媒を現像後あるいは現像中にイオン液体で置換することによりレジストに含まれる有機溶媒が真空中で蒸発するのを防止してシュリンクを抑制する方法を開示したのは本発明が初めてである。
【0104】
電子ビームを照射するとレジストに含まれる酸発生剤と反応を起こし、レジスト開裂反応を促進する。この反応によって発生する有機溶剤が真空中に飛ぶことで目減りやシュリンクが促進されるが、本発明を用いると溶剤が蒸気圧の低いイオン液体に置換されているため、ほとんど蒸発が起こらない。つまり、レジストに電子ビームを照射してもシュリンクや目減りが起こるのを完璧に防止できる。
(5)これらの技術を既述した電子ビーム走査方法と組み合わせることで、レジストにわずかながら電子ビームが走査された際に起こるレジスト変化を避けることが可能となり、さらに電子ビーム照射によるレジスト損傷を防止つまり、電子ビームを照射する前の状態を保持できるのは言うまでもない。
【0105】
図9は本発明の他の説明図(その2)を示す。
図9では測定中に真空チャンバー内にてレジストあるいはサンプルを冷却装置にて冷却することに特徴がある。
【0106】
図9において、電子ビームコラムは、電子ビームを発生、収束、細く絞ってサンプル上を平面走査するための公知のものである。
【0107】
サンプルは、基板上に形成されたパターンなどである。
【0108】
冷却装置は、低温に冷却する台であって、サンプルを搭載して当該サンプルを冷却するものである。
【0109】
XYステージは、サンプルを目的とする位置に移動するものである。
【0110】
真空チャンバーは、サンプル、冷却装置、XYステージなどを真空中に配置する容器である。
【0111】
冷却ヘリウムガスは、冷却装置を低温に冷却するためのNガスである。
【0112】
次に、動作を説明する。
(1)
図9において、レジストに電子ビーム照射することで現れるシュリンク現象は一種の化学反応である。化学反応は化学エネルギーによって決まる反応速度を持っているため一般的に化学反応は温度で進行速度を制御できる。一般的に10度温度を下げると反応速度は半分になるので、100度温度を下げると反応速度は1000分の1になる。実質的にレジストの変化が見られないと思われるシュリンク量を100分の1に下げるには室温から60度程度下げるつまり、マイナス30から40度程度に下げればよいので、ペルチェ素子などを用いてサンプル温度を下げることが出来る。
(2)そこで、
図9に示すように、サンプルを運ぶための金属あるいはガラスセラミック製のパレットあるいはXYステージあるいは電子ビームコラムに冷却装置を設け、サンプルを測定中冷却する。サンプル全体を冷却しても良いし、測定箇所のみを冷却しても良い。一般的にレジストで発生するあるいは含有される有機溶剤の融点は-100度よりも高いので、ペルチェ素子などを用いた半導体式の冷却装置を用いて有機溶剤を固体化することが出来る。もちろん真空中で漏れないように配管を用いて液体窒素やその冷却ガス、ヘリウムガスで冷却しても良い。低真空状態で測定する場合には、冷却ガスを測定対象部に吹きかけても良い。
【0113】
以上のように冷却を行えば、シュリンクは室温の100分の1以下となり、実質的にシュリンクレスを実現できる。
(3)前述したイオン液体で置換した場合には、0度近傍に冷却するだけで実質的にレジストのシュリンクレスを実現できる。この方式を既述した方法に併用すれば、さらにレジスト損傷の少ない正確で再現性の高い測定が可能となる。
【0114】
図10は、本発明の他の実施例構成図を示す。これは、大気圧、更に加圧した圧力状態でサンプルを測長する場合の他の実施例構成図を示す。
【0115】
以下詳細に説明する。
(1)既述したようにレジストのシュリンクは主にレジストに含まれる有機溶剤あるいは電子ビームがレジストに照射されたさいに生じる有機溶剤が局所的に温められて真空に揮発することによって起こされる。したがって、測定環境を大気圧あるいは加圧下にしてしまえば、化学平衡により反応が抑えられかつ、発生した有機溶剤の蒸発は減少できる。
(2)サンプルを大気下で測定する方法は色々存在する。大気圧SEMと呼ばれる一連の電子顕微鏡がその目的を達成できる。本発明者が開示している装置もその1つである(詳細は、特開2014-157772を参照)。これらの電子顕微鏡では、電子ビームを通過することが出来て空気などの気体を通過することが出来ない炭素やシリコン等の軽元素薄膜を電子ビームの出射口に配置して大気を遮断し、大気に膜を通して電子ビームを照射出来るようにした装置である。但し、単に大気圧で電子ビームを照射しただけでは、レジストのシュリンクは完全に停止できないので、既述したようなセルフアラインESR電子ビーム走査方法、イオン液体置換法、あるいはサンプルを冷却する方法を併用することによってより効果が出るのは言うまでもない。
【0116】
【0117】
図11の(a)は1ピクセル毎スキャンを示す。これは、電子ビームのスポットサイズと、走査ステップ間隔とが等しい場合のスキャンの様子を示す。この場合には、図示のように左側からラインに向かって走査(主走査)すると、図示のように、電子ビームのスポットサイズで順次走査されるので、そのときに検出される2次電子の輝度(振幅)は、図示のように階段状の波形となる。
【0118】
一方、
図11の(b)はサブピクセルスキャンを示す。これは、電子ビームのスポットサイズが、走査ステップ間隔よりも大幅に大きい(長い)場合のスキャンの様子を示す。この場合には、図示のように左側からラインに向かって走査(主走査)すると、図示のように、電子ビームの大きいスポットサイズで順次右方向に走査(シフト)されるので、そのときに検出される2次電子の輝度(振幅)は、図示のように、エッジの部分(スペースとラインとの境界部分)がピークとなる波形となる。
【0119】
以上のように、電子ビームのスポットサイズと、走査ステップとを変化させると、検出される2次電子の波形が異なるので、スペースからラインへの境界(エッジ)を検出するにはそのときのスポットサイズと走査ステップとをもとに近似曲線を実験で予め求めておき、この近似曲線を用いて正確にエッジ位置を検出することが必要である。
【0120】
図12は、本発明の説明図(その2)を示す。これは、エッジ検出信号を検出してからNピクセル後に遮断信号を発生し、電子ビームを遮断し、ビーム遮断する動作を説明するものである。
【0121】
図12において、走査信号は、電子ビームを走査(主走査)する信号である。
【0122】
エッジ検出信号は、スペースとラインの境界(エッジ)を検出した信号である。
【0123】
遮断信号は、電子ビームを遮断する信号であって、エッジ検出信号(エッジ)が検出されてからNピクセル(Mライン)後に発生する電子ビームを遮断する信号である。
【0124】
2次電子は、スペース、ラインなどから発生する2次電子の強度である。
【0125】
次に、動作を説明する。
【0126】
(1)既述した例えば
図7に示すように、スペースからライン(レジスト)に向かって電子ビームを走査し、スペースとラインとの境界(エッジ)となる2次電子のピークを検出した場合、エッジ信号を出力する。
【0127】
(2)エッジ信号が出力された後、Nピクセルだけ走査信号が進んだときに遮断信号を出力する。
【0128】
(3)遮断信号が出力されると、電子ビームを遮断(ビーム遮断)する。これ以降のラインの内部は電子ビームで照射されないので、ライン(レジスト)のダメージやシュリンクを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図2】本発明の高速ON/OFF可能なフォトカソード型電子源例である。
【符号の説明】
【0130】
1:電子銃
2:アパチャー
3:CL(コンデンサレンズ)
4:DEF(1)
5:DEF(2)
6:MCP
7:対物レンズ
8:サンプル
9:ステージ
11:自動ブランキング制御手段
12:ブランキング装置
13:ブランキング電極
14:ブランキングアパチャー
111:電子ビーム
121:2次電子
21:高圧電源
22:CL電源
23:偏向電源
24:2次電子検出器
25:対物電源
26:ステージ制御電源
27:測長器
31:PC(パソコン)
32:走査領域設定手段
33:走査方法指定手段
34:グローバルアライメント手段
35:画像取得手段
36:測長手段
37:信頼性判定手段
41:DB