(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】二次電池、電池パック及び電力システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221013BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20221013BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221013BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20221013BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20221013BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20221013BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20221013BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20221013BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20221013BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20221013BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M10/052
H01M4/70 A
H01M50/489
H01M50/588
H01M50/593
H01M4/02 Z
H01M50/55 301
H01M50/50 201Z
(21)【出願番号】P 2018195748
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】井上 健士
(72)【発明者】
【氏名】牧野 茂樹
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516352(JP,A)
【文献】特開2014-059971(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125325(WO,A1)
【文献】特開2005-268029(JP,A)
【文献】特開2018-156901(JP,A)
【文献】特開2004-291891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01M 10/052
H01M 4/70
H01M 50/531
H01M 50/50
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体に電極材料が塗布された正極及び負極と、
前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータと、を有し、
前記正極及び前記負極の前記集電体にはそれぞれ、タブが付設され、
前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方は、前記タブの近傍のインピーダンスを、他の領域のインピーダンスよりも小さくし
、
前記タブの近傍には、キャパシタンスを増加させる材料の塗布比率を前記他の領域よりも高めた部分が設けられている、二次電池。
【請求項2】
前記キャパシタンスを増加させる前記材料は、活性炭である、請求項
1記載の二次電池。
【請求項3】
前記セパレータの厚さは、1μm以上100μm以下である、請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記集電体の前記他の領域には、スリットが設けられている、請求項1記載の二次電池。
【請求項5】
前記他の領域は、前記スリットにより二分割されている、請求項
4記載の二次電池。
【請求項6】
前記集電体の前記他の領域には、貫通孔が設けられている、請求項1記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極の前記タブと前記負極の前記タブとの間には、絶縁板が挟み込まれている、請求項1記載の二次電池。
【請求項8】
請求項1記載の二次電池を複数個直列に接続した構成を有し、
隣り合う二個の前記二次電池の前記タブが接続されている、電池パック。
【請求項9】
前記二次電池の前記正極の前記タブと前記負極の前記タブとは、空間を設けて配置されている、請求項
8記載の電池パック。
【請求項10】
請求項1記載の二次電池と、
インバータと、
前記インバータに接続された負荷と、を含み、
前記二次電池と前記インバータとを接続する配線は、他の電力供給機器と前記インバータとを接続する配線よりも、長さが短い、電力システム。
【請求項11】
前記二次電池と前記インバータとを接続する前記配線の前記長さは、1m以下である、請求項
10記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、電池パック及び電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池内の寄生インダクタンスを下げることにより、高周波帯での応答性を向上させる検討が行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、平行に設けられた正極側集電電極および負極側集電電極によって、同じ大きさの電流を互いに逆方向に流す2つの電流経路ができるようにし、これにより、逆方向の電流によってそれぞれに流れる電流によって生じる電磁誘導は磁界キャンセルされて、寄生インダクタンスを小さくすることができる電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている電池は、集電電極の配置を改良するものであるが、磁界キャンセルによる寄生インダクタンスに着目したものであり、正極及び負極の内部におけるインピーダンスに関しては改善の余地があると考えられる。
【0006】
高周波帯においては、上記のインピーダンスのうち、電極集電体に塗布された電極材料のキャパシタンス成分の寄与も大きいと考えられる。
【0007】
本発明は、二次電池の電極におけるキャパシタンスを含むインピーダンスの分布を調整し、高周波帯における二次電池のインピーダンスを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二次電池は、集電体に電極材料が塗布された正極及び負極と、正極と負極との間に設けられたセパレータと、を有し、正極及び負極の集電体にはそれぞれ、タブが付設され、正極及び負極のうち少なくとも一方は、タブの近傍のインピーダンスを、他の領域のインピーダンスよりも小さくしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二次電池の電極におけるキャパシタンスを含むインピーダンスの分布を調整し、高周波帯における二次電池のインピーダンスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】リチウムイオン電池の内部の構成を示す概略構成図である。
【
図3】電池の等価回路モデルの要部を示す構成図である。
【
図4】第一の実施形態に係る電池の等価回路モデルの要部を示す構成図である。
【
図5】高周波帯に関連する等価回路モデルを示す構成図である。
【
図6】
図5の等価回路モデルを用いてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図7】第二の実施形態に係る電極の例を示す断面図である。
【
図8】第三の実施形態に係る電極を示す模式構成図である。
【
図9】第四の実施形態に係る電極を構成する金属箔を示す模式構成図である。
【
図10】第五の実施形態に係る電池を示す模式構成図である。
【
図11】第六の実施形態に係る電池パックを示す模式構成図である。
【
図12】第七の実施形態に係る電力システムを示す概略構成図である。
【
図13】第八の実施形態に係る電極の作製プロセスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
以下の説明は、本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0013】
まず、本発明の実施形態の前提となる電池の構成例について説明する。
【0014】
図1は、リチウムイオン電池の内部構成についての最小単位を示したものである。
【0015】
本図に示すように、電池は、負極10と正極11とセパレータ12とから構成されている。負極10及び正極11は、外部との電流経路としてそれぞれ、負極タブ13、正極タブ14を有している。また、負極10、正極11及びセパレータ12は、リチウム塩を溶解させた電解液で満たされており、この電解液がイオンの伝導を行う。
【0016】
例えばラミネート型の電池では、
図1の最小単位の電池を多数積層し、並列に接続する。この場合には、負極タブ13、正極タブ14をそれぞれ集約し、溶接等により一体化し、一つのラミネート内で電池とする。
【0017】
正極11及び負極10の構成例としては、次のようなものがある。
【0018】
正極11は、NMC活物質(三元系LiNixMnyCozO2)に代表される正極活物質と導電助剤とをバインダーにより結着したものをアルミニウム箔(正極集電体)に塗布する。一方、負極10は、グラファイトに代表される負極活物質と導電助剤とをバインダーにより結着したものを銅箔(負極集電体)に塗布する。
【0019】
【0020】
本図に示す電極においては、金属箔100(集電体)の両面に電極材料101を塗布している。片面塗布でもよいが、エネルギー密度を向上させるために両面に塗布を行うのが一般的である。
【0021】
次に、電池の等価回路モデルについて説明する。
【0022】
図3は、高周波帯での特性を議論するため、高周波帯で関連する等価回路モデルのみを示している。
【0023】
本図において、等価回路200は、タブ近傍における電池の電極材料に由来するものである。一方、等価回路210は、タブから遠い部分における電極材料に由来するものである。
【0024】
等価回路200は、電池の起電力201、電気二重層形成の反応によるキャパシタンス202と電極活物質の電荷移動抵抗203との並列回路、電極内のインダクタンス204とインダクタンス部抵抗205との並列回路、及び電池の電解液抵抗や部材の抵抗の総和である直流抵抗206から構成されている。
【0025】
電極全体では、電極材料由来の等価回路200が外部回路に対してタブ由来のインダクタンス207及び抵抗208を介して接続されている。タブから遠いほど、銅箔のインダクタンス209の影響を受けやすい。このため、等価回路210は、インダクタンス209を電極長さの分だけ積算したものが追加され、インダクタンス207及び抵抗208に接続される。
【0026】
通常の電極は、電極箔全面に一様に電極材料101が塗布されているため、タブ近傍の電極材料由来の等価回路200と、タブから遠い部分の電極材料由来の等価回路210とは、同一となる。
【0027】
インダクタンスのインピーダンスの絶対値Zは、下記式(1)で表される。式中、ωは周波数、Lはインダクタンス値を表している。
【0028】
【0029】
上記式(1)より、高周波帯では、インダクタンス209の影響を大きく受け、高インピーダンスになってしまうため、タブから遠い部分の電極材料から電力を供給することが困難とわかる。つまり、高周波帯では、タブ近傍に電流が集中してしまうことを意味する。したがって、高周波帯で電力を供給するためには、タブのインダクタンス207及び抵抗208を下げた状態で、キャパシタンス分の容量をタブ近傍のキャパシタンスに持たせることが有効であると考えられる。
【0030】
以下、実施形態について説明する。
【0031】
(第一の実施形態)
第一の実施形態は、タブ近傍とタブ近傍以外とで、
図3の等価回路200と等価回路210とを異なる構成とすることにより、高周波帯における特性を改善するものである。
【0032】
【0033】
本図に示すように、高周波に対応した電池は、厚い負極タブ300、厚い正極タブ301、活性炭等の比率を高めキャパシタンス成分を増加させた電極材料塗布部302、及び通常組成の電池の電極材料塗布部303によって構成されている。
【0034】
負極タブ300及び正極タブ301は両方とも、厚さを厚くし、電極間を近接配置させる。これは、
図3に示すタブ由来のインダクタンス207及び抵抗208を低減するためである。
【0035】
抵抗は、下記式(2)に従い、厚さに依存する。式中、Rは抵抗値、ρは抵抗率、lは電流経路長、Aは断面積を示している。
【0036】
【0037】
一方、電池の電流経路の主経路の銅箔のインダクタンスは、下記式(3)に従い、電流経路長に依存する。式中、Lはインダクタンス(単位:nH)、lは電流経路長、wは導体の幅、tは銅箔の厚さを示している。
【0038】
【0039】
このような電極タブ近傍の高周波帯でのインピーダンスを下げた領域に、容量成分を付加することが高周波で電力供給を可能にする。このため、キャパシタンス202(
図3)を増加させる材料、例えばイオンの吸脱着の面積を増やす表面積の大きい活性炭等、成分を通常組成の電極材料よりも多く含む電極材料を塗布する。タブ近傍以外の高周波帯でのインピーダンスが大きい領域には、通常組成の電極材料を塗布する。このような構成にすることで、タブ近傍では電気二重層由来のキャパシタンス202(
図3)が増加する。ここで、活性炭等は、比表面積が500~3000m
2/g程度のものが望ましい。
【0040】
この効果に関して、
図4の構成を高周波応答成分に限定し、簡易的に表現した等価回路を用いて説明する。
【0041】
図5は、高周波帯に関連する等価回路モデルを示したものである。
【0042】
図5においては、タブ近傍のキャパシタンス成分を増加させた電極材料塗布部302(
図4)に対応したキャパシタンスをキャパシタンス400、通常組成の電極材料塗布部303(
図4)での電気二重層の容量分に対応したキャパシタンスをキャパシタンス401としている。
【0043】
図6は、
図5の構成において、キャパシタンス400及びキャパシタンス401の容量をパラメータとして変化させてシミュレーションを行った結果を示したものである。横軸は周波数を、縦軸はインピーダンスを示している。横軸及び縦軸はともに、対数軸で表示している。
【0044】
点線は、従来例である通常組成の電極材料を全面に塗布した場合(比較例1)を、一点鎖線は、キャパシタンスが増加する成分を多く含む電極材料を全面に塗布した場合(比較例2)を、実線は、本実施形態であるタブ近傍にのみキャパシタンスが増加する成分を多く含む電極材料を塗布した場合、つまりキャパシタンス400を増加させた場合を、破線は、タブから遠い部分にのみキャパシタンスが増加する成分を多く含む電極材料を塗布した場合、つまりキャパシタンス401を増加させた場合(比較例3)を示している。
【0045】
なお、このシミュレーションにおいて、「タブ近傍」は、
図4において、電極材料塗布部302の図中上下方向の幅が、電極の図中上下方向の幅の2分の1、言い換えると、電極材料塗布部302の図中上下方向の幅が、電極材料塗布部303の図中上下方向の幅と同等であることを意味する。これはインダクタンス207とインダクタンス209が等しい且つ抵抗206と抵抗208が等しいことを意味している。これが実施例1である。これに対して、比較例3は、実施例1とは反対に、タブ近傍に電極材料塗布部303を設け、タブから遠い部分に電極材料塗布部302を設けるとともに、電極材料塗布部303の図中上下方向の幅を、電極材料塗布部302の図中上下方向の幅と同等としている。
【0046】
また、
図5のキャパシタンス400とキャパシタンス401との容量の比、言い換えると、電極材料塗布部302と電極材料塗布部303の容量比は、10:1とした。
【0047】
図6において、周波数が数kHzから50kHzまでの範囲でインピーダンスが低くなるように電極を構成することが望ましい。更に望ましくは、周波数が数kHzから20kHzまでの範囲でインピーダンスが低くなることである。
【0048】
本図の(a)に示すとおり、周波数が20kHz以下の領域においては、本実施例並びに比較例2及び3の場合、比較例1の場合に比べ、インピーダンスが低くなっている。これは、通常の電極材料のみを塗布した場合よりも、キャパシタンスが増加する成分を塗布することによる。
【0049】
比較例1の場合、約40kHzでインピーダンスが極小となっている。
【0050】
本実施例の場合、約20kHzでインピーダンスが極小となっている。比較例2及び3の場合、およそ12~13kHzでインピーダンスが極小となっている。すなわち、本実施例の場合、比較例2及び3に比べ、インピーダンスが最小となる共振点が高周波側にシフトしている。
【0051】
本実施例と比較例2及び3とを比較すると、本図の(b)に示すとおり、インピーダンスに関して、本実施例の極小値が最も小さくなっている。また、周波数が10~50kHzの領域では、本実施例のインピーダンスの積分値が最も小さくなっている。
【0052】
以上のように、本実施例の場合、高周波領域におけるインピーダンスが低減し、高周波でも電力応答が可能になると考えられる。
【0053】
このように、タブ近傍を高周波に対応できる領域とし、タブから離れた部分を通常の電池の電気化学反応を取り出す領域として、役割を分けることにより、高周波領域及び低周波領域の両方に優位な電極設計が可能となる。
【0054】
なお、本図に示すシミュレーションにおいては、タブ近傍の電極材料塗布部302(
図4)の幅を、電極の幅の3分の1としたが、本発明は、これに限定されるものではなく、タブ近傍の電極材料塗布部302(
図4)の幅は、電極の幅の2分の1以下であればよい。
【0055】
実施例1のような構成は、正極及び負極のうち少なくとも一方でも効果が得られる。
【0056】
本明細書においては、「タブの近傍」とは、電極の形状が長方形の場合、電極においてタブが付設された辺から対辺までの距離の半分までの領域をいう。電極の形状が他の形状、例えば円形又は楕円形の場合、タブの付設部の中点と円形又は楕円形の重心とを結ぶ直線に直交する直線で仕切られたタブ側の領域をいうことにする。まとめると、一般に、「タブの近傍」とは、電極の形状の重心とタブの付設部(線分)の中点とを結ぶ直線に直交する直線で仕切られたタブ側の領域をいうことにする。
【0057】
まとめると、タブの近傍のインピーダンスは、実施例1のように、キャパシタンスが増加する成分を多く含む電極材料を塗布した部分の幅を3分の1としたとしても、上記の定義による「タブの近傍」のインピーダンスは、他の領域のインピーダンスよりも小さくなる。
【0058】
(第二の実施形態)
タブ近傍の低インピーダンス化の手段について説明する。低インピーダンス化は、薄いセパレータ500を用いることにより可能になる。
【0059】
【0060】
図7において、負極箔501には、負極材料502が塗布されている。正極箔503には、正極材料504が塗布されている。負極材料502と正極材料504との間は、薄いセパレータ500で隔てられている。
【0061】
図3の直流抵抗206は、電解液の抵抗と箔等の抵抗との和である。電解液の抵抗は、上記式(1)の抵抗率をイオン伝導率に置き換えた式で表すことができる。
【0062】
よって、電解液の抵抗は、イオンの伝導長さに比例する。したがって、
図7のセパレータ500を薄くすることにより、直流抵抗206を下げることが可能である。これにより、電池のインピーダンスを低減し、高周波でも応答することが可能になる。ここで、セパレータ500の厚さは、1μm以上100μm以下が望ましい。厚さが1μm未満となると、膜の強度が不十分となる。
【0063】
(第三の実施形態)
電極にスリットを入れることにより、電流経路をコントロールすることができる。
【0064】
図8は、第三の実施形態の電極を模式的に示したものである。
【0065】
本図において、電極600は、第一の実施形態又は第二の実施形態と同様に、電極材料が塗布され、タブ601を有している。電極600において、タブ601を設けた辺の対辺の中央部には、スリット602が設けられている。
【0066】
スリット602があることで、電極600の電流経路は、必ずタブ601の近傍を経由することになる。このため、特に高周波帯では、タブ601の近傍に電流が集中する。
【0067】
これにより、タブ601の近傍のインピーダンスがタブ601から遠い部分と比較して相対的に低くなる。このため、タブ601の近傍の高周波側での利用率が向上する。このように電極600内のスリット602を設けて電流経路を限定することにより、電極600の面内でインピーダンスが小さい電流集中が起きる箇所を指定することが可能となる。ここにキャパシタンス成分を付与することで、高周波特性の改善を図ることができる。本実施形態のスリット602は、金属箔にのみに設け、電極材料は、通常のように一様に塗布されていてもよい。また、電極の形状やタブの位置により、どの位置にスリットを入れれば電流が低インダクタンス部に集中するかは異なるため、電極の形状やタブの位置によって設計することが重要である。
【0068】
(第四の実施形態)
第三の実施形態では、タブ近傍の使用率を高めるに当たり、スリット入り電極を使用したが、金属箔に貫通孔を設けることにより同様の効果が期待できる。
【0069】
図9は、第四の実施形態の電極の金属箔を模式的に示したものである。
【0070】
本図において、金属箔700は、タブから遠い部分に貫通孔701を有している。これにより、電極材料を塗布した際に通常の電極では金属が存在していた部分に電極材料が充填されるため、高エネルギー密度が実現できる。
【0071】
一方で、貫通孔701が存在する部分は、電流経路が減少するため、抵抗が増加してしまう。したがって、タブ近傍には貫通孔701を設けず、タブから遠い部分に貫通孔701を設けることにより、タブ近傍の抵抗が相対的に小さくなり、電流が集中する。これにより、高周波帯においてタブ近傍の利用率が向上する。
【0072】
(第五の実施形態)
電池のタブ近傍のインダクタンスを低減させる手段として、正極タブと負極タブを対向させて磁界を打ち消す手段がある。
【0073】
図10は、第五の実施形態の電池を示す模式構成図である。
【0074】
本図に示す電池は、ラミネート型の電池容器800内に電極を格納したものである。負極タブ801及び正極タブ802は、外部回路に接続されている。負極タブ801と正極タブ802との間には、絶縁板803が挟み込まれ、絶縁されている。
【0075】
配線のインダクタンスは、対向させた配線間で、逆向きの電流が流れるように配線すると、磁界の打消し効果でインダクタンスが低減する。インダクタンスを低減するためには、この配線間の距離を短くして、磁界の打消し効果を強める必要がある。
【0076】
本図の構成においては、負極タブ801と正極タブ802との間の距離を近づける必要があるが、負極タブ801と正極タブ802を接触させてしまうと、短絡し、電池が破損してしまうため、絶縁する必要がある。したがって、絶縁板803が必要である。
【0077】
本図の構成により、負極タブ801に電流804が流れる場合、正極タブ802には逆向きの電流805が流れる。これにより、タブ間の磁界の向きが逆向きになるため、
図3のインダクタンス207が減少し、高周波での応答性を高めることが可能となる。
【0078】
(第六の実施形態)
電池パック内でインダクタンスを低減する手段について説明する。
【0079】
一般に、電池は、電圧が3.7V程度と小さいため、直列化して電池パックとして使用することが多い。電池パック内でインダクタンスを低減するためには、電池内のインダクタンスを低減するのに加え、電池間でインダクタンスを低減することが有効である。
【0080】
図11は、直列に接続された2個の電池で構成された電池パックを模式的に示したものである。
【0081】
本図において、電池パックは、電池900、903を含む。電池900は、負極タブ902と正極タブ901とを有している。電池903は、正極タブ904と負極タブ905とを有している。
【0082】
電池900と電池903とを直列化する際には、負極タブ902と正極タブ904とを接続することになる。例えば、ねじ等により直列化する場合、負極タブ902と正極タブ904とを留めることになる。この直列化の際には、電池900と電池903とを背中合わせにする。背中合わせにすることで、電池900において電流906の向きに電流が流れる場合には、電池903においては電流907の向きに電流が流れる。これにより、電池間の磁界の向きが逆向きになるため、
図3のインダクタンス207が減少し、高周波での応答性を高めることが可能となる。
【0083】
なお、二次電池を三個以上直列に接続した場合には、隣り合う二個の二次電池のタブを接続する。その場合、二次電池の正極のタブと負極のタブとは、
図11のように空間を設けて配置されることが望ましい。
【0084】
(第七の実施形態)
本実施形態においては、第一の実施形態~第六の実施形態で説明してきた電池を、負荷に接続した場合の電力システムの全体構成について説明する。
【0085】
図12は、電池を負荷に接続した電力システムを示したものである。
【0086】
本図において、負荷としては、モータ1000を想定している。モータ1000は、インバータ1001を介して、電力供給源である高周波対応電池1002が接続されている。インバータ1001と高周波対応電池1002とは、配線1003を介して接続されている。別途、電池としてのエネルギーが必要な場合には、容量型電池1004(他の電力供給機器)を接続する。インバータ1001と容量型電池1004とは、配線1005を介して接続されている。高周波対応電池1002でモータ1000へのエネルギー供給が十分な場合には、容量型電池1004は不要である。なお、配線1003は、これ自体のインピーダンスを小さくするため、可能な限り短くすることが望ましい。長さ1m以下が望ましい。更に望ましくは、長さ50cm以下である。
【0087】
このような構成にすることにより、インバータ1001からのリプル電流、電圧を平滑化するコンデンサの役割を高周波対応電池1002が担い、大電力が必要な際には容量型電池1004から電力を供給することが可能となる。平滑コンデンサから高周波対応電池1002とすることによる利点は、電池の電極活物質由来の反応を使用することで、平滑コンデンサよりも低周波側の負荷に対しても応答できる成分が増加していることである。このような低周波側での負荷を高周波対応電池1002が担うことで、容量型電池1004の負荷が軽減し、発熱抑制、寿命延長に寄与することができる。
【0088】
上記式(3)でも述べたように、電流経路長が長くなるほど、インダクタンスは増加する。
【0089】
したがって、高周波対応電池1002は、インバータ1001に対して近い位置に設置し、更に、配線1003も、+側(正極側)の配線と-側(負極側)の配線とを対向させることで、磁界の打消し効果により配線1003のインダクタンスを低減することが可能である。一方で、容量型電池1004は、高周波は考慮していないため、配線1005は長くてもよく、対向させる必要はない。
【0090】
したがって、高周波対応電池1002は、容量型電池1004よりも近い位置でインバータ1001と接続され、接続は、インダクタンス低減のために対向させた配線1003を使用することで、高周波のリプル電流を低減し、且つ、容量型電池の負荷を低減することが可能になる。
【0091】
(第八の実施形態)
第一の実施形態の電池(
図4)の電極を作製する場合、塗布工程は2段階になる。
【0092】
【0093】
本図に示すように、金属箔1100は、塗布機に接続されている。金属箔1100は、ロールの状態で所定の位置に取り付けられ、送り出されるようになっている。キャパシタンス成分を増加させた電極材料1101(
図4の電極材料塗布部302に塗布される材料)、例えば活性炭を多く含む材料は、塗布ヘッド1102により金属箔1100に塗布される。また、通常組成の電池の電極材料1103(
図4の通常組成の電池の電極材料塗布部303に塗布される材料)は、塗布ヘッド1104により金属箔1100に塗布される。
【0094】
本図においては、塗布ヘッド1102が塗布ヘッド1104よりも少し先行する状態で塗布がなされる。ただし、本発明は、このような塗布方式に限定されるものではなく、塗布ヘッド1102及び塗布ヘッド1104による塗布を同時に並列に行ってもよい。
【0095】
なお、塗布は、スプレー方式、ロールコーティング等により行うことができ、種類を限定されるものではない。また、電極材料1101と電極材料1103との塗布順序は逆でもよい。
【0096】
塗布された金属箔1100は、乾燥後、ロールに巻き取られる。
【0097】
なお、正極及び負極とも塗布の工程はほぼ同様であるため、本実施形態の工程は、正極及び負極の両方に適用される。
【符号の説明】
【0098】
10:負極、11:正極、12:セパレータ、13:負極タブ、14:正極タブ、100:金属箔、101:電極材料、200:等価回路、201:電池の起電力、202:キャパシタンス、203:電荷移動抵抗、204:インダクタンス、205:インダクタンス部抵抗、206:直流抵抗、207:インダクタンス、208:抵抗、209:インダクタンス、210:等価回路、300:負極タブ、301:正極タブ、302、303:電極材料塗布部、400、401:キャパシタンス、500:セパレータ、501:負極箔、502:負極材料、503:正極箔、504:正極材料、600:電極、601:タブ、602:スリット、700:金属箔、701:貫通孔、800:ラミネート型の電池容器、801:負極タブ、802:正極タブ、803:絶縁板、804、805:電流、900、903:電池、901、904:正極タブ、902、905:負極タブ、906、907:電流、1000:モータ、1001:インバータ、1002:高周波対応電池、1003:配線、1004:容量型電池、1005:配線、1100:金属箔、1101、1103:電極材料、1102、1104:塗布ヘッド。