(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】携帯型画像形成装置用治具及び携帯型画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B41J 3/28 20060101AFI20221014BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221014BHJP
B41J 29/44 20060101ALI20221014BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J2/01 301
B41J29/44
H04N1/00 519
(21)【出願番号】P 2018234275
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】遠山 英彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 光孝
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-012748(JP,A)
【文献】実開昭63-165958(JP,U)
【文献】特開平03-000299(JP,A)
【文献】実開平02-061646(JP,U)
【文献】実開平02-068562(JP,U)
【文献】実開昭64-036153(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 2/01-2/215
B41J 29/44
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型画像形成装置を走査方向へ走査することにより記録材に画像を形成するための携帯型画像形成装置用治具であって、
前記携帯型画像形成装置の
走査方向上流側の端面が当接することで走査開始位置の位置決め基準となる
走査直交方向に長尺な走査開始位置決め部材と、
前記携帯型画像形成装置の走査直交方向一方側の端面が当接することで走査直交方向の位置決め基準となる走査方向に長尺な装置位置決め部材とが、互いの長尺方向一端部で連結された略L字形状をなし、
前記走査開始位置決め部材に合わせて位置決めされた前記携帯型画像形成装置によって前記記録材に対する画像形成が開始される走査方向位置
を該記録材の走査方向上流側端
部に一致させる場合に、前記走査方向における該記録材に対する前記携帯型画像形成装置用治具の位置決め基準となる治具位置決め基準部
が、前記装置位置決め部材と前記走査開始位置決め部材のそれぞれに設けられていることを特徴とする携帯型画像形成装置用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型画像形成装置用治具において、
前記治具位置決め基準部は、前記走査方向における前記記録材の走査方向上流側端部を指し示す記録材端部位置指標を含むことを特徴とする携帯型画像形成装置用治具
。
【請求項3】
請
求
項1又は2に記載の携帯型画像形成装置用治具において、
前記装置位置決め部材と前記走査開始位置決め部材のそれぞれに設けられる
複数の前記治具位置決め基準部は、走査直交方向に前記携帯型画像形成装置の長さ以上の距離をあけて配置されていることを特徴とする携帯型画像形成装置用治具。
【請求項4】
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の携帯型画像形成装置用治具において、
前記装置位置決め部材と前記走査開始位置決め部材のそれぞれに設けられる
複数の前記治具位置決め基準部は、
前記走査開始位置決め部材に合わせて位置決めされた前記携帯型画像形成装置によって前記記録材に対する画像形成が開始される走査方向位置を該記録材の走査方向上流側端部に一致させる場合に、前記記録材に重なる箇所に設けられていることを特徴とする携帯型画像形成装置用治具。
【請求項5】
請求項1乃
至4のいずれか1項に記載の携帯型画像形成装置用治具において、
前記記録材が載置された台面又は該記録材の面に対して接触する接触面に、該台面又は該記録材の面との間の摩擦係数を高める摩擦部材を有することを特徴とする携帯型画像形成装置用治具。
【請求項6】
走査方向へ手動で走査することにより記録材に画像を形成する携帯型画像形成装置と、
請求項1乃
至5のいずれか1項に記載の携帯型画像形成装置用治具とから構成されることを特徴とする携帯型画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型画像形成装置用治具及び携帯型画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型画像形成装置を走査方向へ走査することにより記録材に画像を形成するための携帯型画像形成装置用治具が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、手動式プリンタ(携帯型画像形成装置)の走査時の位置ずれや斜行を防止するための手動式プリンタガイド機構(携帯型画像形成装置用治具)が開示されている。この手動式プリンタガイド機構は、上下ガイドと左右ガイドによって形成される四角形のガイド枠内に、上下ガイド間に嵌合されるように溝付き長板が設けられている。この溝付き長板に設けられた溝は、ガイド枠の上下方向に延びており、手動式プリンタのボス部がはまり込んで当該溝に沿って手動式プリンタを上下方向へスライドできるようになっている。この手動式プリンタガイド機構は、用紙(記録材)の4辺に合わせてガイド枠を用紙上に置き、ガイド枠内に配置されている溝付き長板の溝に手動式プリンタのボス部をはめ込んで手動式プリンタを上下方向へ手動で走査するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の携帯型画像形成装置用治具においては、目標とする画像形成開始位置が記録材の走査方向上流側端部又はその近傍位置である場合、携帯型画像形成装置による画像形成開始位置を、その目標画像形成開始位置に精度よく一致させることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、携帯型画像形成装置を走査方向へ走査することにより記録材に画像を形成するための携帯型画像形成装置用治具であって、前記携帯型画像形成装置の走査方向上流側の端面が当接することで走査開始位置の位置決め基準となる走査直交方向に長尺な走査開始位置決め部材と、前記携帯型画像形成装置の走査直交方向一方側の端面が当接することで走査直交方向の位置決め基準となる走査方向に長尺な装置位置決め部材とが、互いの長尺方向一端部で連結された略L字形状をなし、前記走査開始位置決め部材に合わせて位置決めされた前記携帯型画像形成装置によって前記記録材に対する画像形成が開始される走査方向位置を該記録材の走査方向上流側端部に一致させる場合に、前記走査方向における該記録材に対する前記携帯型画像形成装置用治具の位置決め基準となる治具位置決め基準部が、前記装置位置決め部材と前記走査開始位置決め部材のそれぞれに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、目標とする画像形成開始位置が記録材の走査方向上流側端部又はその近傍位置である場合、携帯型画像形成装置による画像形成開始位置を、その目標画像形成開始位置に精度よく一致させることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るHMPを斜め上方から示す外観斜視図。
【
図3】同HMPの上部ユニットを下部ユニットに対して開いた状態を示す斜視図。
【
図5】同HMPの電気回路の一部を示すブロック図。
【
図6】実施形態に係る治具を用いて、HMPにより熨斗用紙に表書きや名前の文字画像を形成する際の説明図。
【
図7】治具位置決め基準部が治具の走査直交方向装置位置決め部材上の画像形成開始位置指標だけであった場合の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、携帯型画像形成装置であるハンディモバイル型プリンタ(以下「HMP」という。)と、携帯型画像形成装置用治具(以下、単に「治具」という。)とから構成される携帯型画像形成システムに適用した一実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係るHMPの基本的な構成について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るHMP1を斜め上方から示す外観斜視図である。
同図に示されるHMP1は、上部ユニット2と下部ユニット3とから主に構成されている。HMP1は、全体的におおよそ直方体形状を有しており、その走査方向(=印字方向:図中矢印X方向)の幅は、ユーザーが掌で掴める程度である。
【0010】
HMP1の筐体は、後述するインクジェットヘッドの記録部(画像形成部)を用紙などの記録材に対面させる面である記録面30、これの反対面である上面31、走査方向(図中矢印X方向)に向く左側面32などを有している。また、走査方向に向く右側面33、走査直交方向(図中矢印Y方向)に向く背面34、走査直交方向に向く正面35なども有している。なお、走査直交方向は、HMP1の走査方向に対して直交する方向である。
【0011】
同図に示されるHMP1は、記録面30を鉛直方向下方に向けつつ、上面31を鉛直方向上方に向ける姿勢になっている。上面31の外縁内(枠内)には、プリントボタン14と、電源ボタン15とが設けられている。また、上部ユニット2の左側面32には、USB接続口6が設けられている。
【0012】
USB接続口6は、USBケーブルを接続するためのものである。HMP1に設けられた充電式のバッテリー(後述する
図3の符号51)に対し、USB接続口6に接続したUSBケーブルを介して外部の電源から電力を供給することで、バッテリーを充電することができる。
【0013】
ユーザーは電源ボタン15を長押しすることによってHMP1の電源の入切(ON/OFF)を切り替えることができる。電源を入れた状態では、スマートフォンなどの外部機器との近距離無線通信により、HMP1の上部ユニット2内に設けられた制御基板に対して画像情報を取得させることができる。その後、記録面30を記録材の表面に対面させる姿勢でHMP1を記録材の表面上に置いた後、プリントボタン14を一度押してから、
図2に示されるようにHMP1を走査方向(図中矢印X方向)に沿って移動させることで、記録材の表面に画像を形成することができる。なお、このHMP1は、ユーザーの移動操作(手動走査)によって走査方向(図中矢印X方向)に沿って往復移動させる場合、往路と復路のそれぞれで、記録材の表面に画像を形成することができる。
【0014】
記録材は、用紙などの紙類に限定されるものではなく、OHP、布、段ボール、包装容器、ガラス、基板など、画像記録可能なあらゆるものが含まれる。
【0015】
図3は、上部ユニット2を下部ユニット3に対して開いた状態のHMP1を示す斜視図である。
図示のように、上部ユニット2は、下部ユニット3に対して開閉するように下部ユニット3に支持されている。下部ユニット3の内部空間には、HMP1の各機器に電源供給するためのバッテリー51が搭載されている。
【0016】
また、下部ユニット3の内部には、記録部とインクタンクとを一体で備えるインクタンク一体型のインクジェットヘッド40(インクカートリッジ)が着脱可能に装着される。このとき、インクの液滴を吐出する記録部が鉛直方向下方に向けられる。このインクジェットヘッド40は、記録部からインクの液滴を吐出して画像記録を行うものである。
【0017】
上部ユニット2の内面には、下部ユニット3内に装着されたインクジェットヘッド40を押さえて係止するためのヘッド押さえ板バネ37が固定されている。
【0018】
このHMP1では、下部ユニット3内において、バッテリー51をインクジェットヘッド40の側方に位置させているため、上方に位置させる構成に比べてHMP1の高さを低くできる。これにより、HMP1の重心位置を低くでき、移動操作(手動走査)時等におけるHMP1の転倒を抑制することができる。
【0019】
図4は、HMP1を記録面側から見たときの底面図である。
同図において、HMP1の記録面30には、下部ユニット(
図3の符号3)内に装着されたインクジェットヘッド40の記録部41を外部に露出させるための開口30aが設けられている。記録部41は、複数の吐出孔41aを有しており、アクチュエータ(駆動源)を駆動させることによりそれぞれの吐出孔41aからインクの液滴を個別に吐出することが可能である。
【0020】
記録部41は、インクジェットヘッド40の基板のうち、基板面方向において吐出孔41aを囲むように設けられている複数のインナーリードよりも内側(吐出孔41aの側)の領域である。このHMP1では、基板における記録部41の領域を白色に塗装して、周囲の黒色の領域とはっきり区別できるようにしている。つまり、白色の領域は、記録部41であることを示す目印になっている。この目印の形は、図示のように矩形状になっている。
【0021】
インクジェットヘッド40においては、インクを吐出するための駆動源として、積層型圧電素子や薄膜型圧電素子等を用いた電気機械変換素子(圧電アクチュエータ等)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子、振動板と対向電極とからなる静電アクチュエータなどを用いることができる。
【0022】
記録部41の吐出孔41aから吐出されるインク(液体)は、吐出孔41aから吐出可能な粘度や表面張力を有する液体であればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。具体的には、インク(液体)は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等である。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0023】
記録面30の外縁内には、記録材上におけるHMP1の位置を検知する検知手段としての位置検知センサー8、回転可能な左側第一ローラ部17a、左側第二ローラ部17b、右側第一ローラ部18a、右側第二ローラ部18bなどが設けられている。
【0024】
HMP1は、ユーザーによって走査方向に移動操作(手動走査)されるときに、記録材の表面上に接触している前述した4つのローラ部をタイヤのように回転させる。このようなローラ部が設けられていることで、ユーザーはHMP1を走査方向に沿って直進させることが容易になる。このとき、記録材の表面に接触させているのは、HMP1の四つのローラ部だけであり、記録面30は記録材の表面に接触させない。このため、インクジェットヘッド40の記録部41と記録材の表面との距離を一定に保って、所望の高画質の画像を形成することができる。
【0025】
位置検知センサー8は、記録材の表面までの距離や表面状態(例えば凹凸)を検知したり、HMP1の移動距離を検知したりするセンサーであり、例えばパソコンの光学式マウス(ポインティングデバイス)などで使用されているものと同様のものを利用できる。位置検知センサー8は、置かれている場所(記録材)に光を照射し、その部分の状態を「模様」として読み取る。そして、位置検知センサー8の動きに対してその「模様」がどのように移動するのかを連続して捉えることで、移動量を算出する。
【0026】
図5は、HMP1の電気回路の一部を示すブロック図である。
制御基板57は、各種の演算処理やプログラム実行を行うCPU55、近距離無線通信用のBt(Bluetooth(登録商標))基板52、データを一時記憶するRAM53、ROM54、記録制御部56などを有している。この制御基板57は、上部ユニット(
図1の符号2)の中空内において、USB接続口(
図2の符号6)の裏側の位置に固定されている。
【0027】
Bt基板52は、スマートフォンやタブレット端末などの外部機器との近距離無線通信(Bluetooth通信)によってデータ通信を行うものである。また、ROM54は、HMP1のハードウェア制御を行うファームウェアや、インクジェットヘッド40の駆動波形データ等を格納するものである。また、記録制御部56は、インクジェットヘッド40を駆動させるためのデータ処理を実行したり、駆動波形を生成したりするものである。
【0028】
制御基板57には、ジャイロセンサー58、位置検知センサー8、LEDランプ59、インクジェットヘッド40、プリントボタン14、電源ボタン15、バッテリー51などが電気的に接続されている。
【0029】
ジャイロセンサー58は、周知の技術により、HMP1の傾きや回転角度を検知して、その結果を制御基板57に送信するものである。LEDランプ59は、プリントボタン14における光透過性の材料からなる外装カバーの内部に設けられ、プリントボタン14を発光させるものである。
【0030】
電源ボタン15を押してHMP1の電源を入れると、各モジュールに電力が供給され、CPU55はROM54に格納されているプログラムに基づいて起動動作を開始し、プログラムや各データをRAM53に展開する。画像データを外部機器から近距離無線通信によって受信すると、記録制御部56は、受信した画像データに応じた駆動波形を生成する。そして、位置検知センサー8によって検知された記録材の表面上の位置に応じた画像を形成するようにインクジェットヘッド40からのインクの吐出を制御する。
【0031】
先に
図5に示した制御基板57は、外部機器との近距離無線通信によって画像データを取得すると、LEDランプ59を点滅させることで、光透過性のあるプリントボタン14を発光点滅させる。これを見たユーザーは、HMP1の画像データ取得が終了したことを知る。その後、HMP1を記録材上に置いて、プリントボタン14を押す。
【0032】
一方、制御基板57は、LEDランプ59の点滅制御を開始すると、プリントボタン14が押されるのを待機する。そして、プリントボタン14が押されると、LEDランプ59を連続点灯させることで、プリントボタン14を連続発光させる。これを見たユーザーは、HMP1の走査方向への移動操作(手動走査)を開始する。
【0033】
HMP1の移動操作(手動走査)を終えたユーザーは、HMP1を記録材から取り上げて卓上などに置く。位置検知センサー8は、HMP1が記録材上から取り上げられたとき、位置の検知ができなくなる。制御基板57は、位置検知センサー8が位置を検知しなくなったタイミングで、LEDランプ59を消灯させて、プリントボタン14の発光を停止させる。これを見たユーザーは、HMP1のプリント用の処理が終了したことを把握することができる。
【0034】
なお、移動操作(手動走査)中にプリントボタン14を押し続ける必要はない。移動操作に先立ってプリントボタン14を押して離せば、位置検知センサー8による検知結果に基づく画像形成処理が、画像形成の終了まで、もしくは位置検知センサー8による位置検知不能まで継続される。
【0035】
次に、本実施形態に係る治具の構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る治具100を用いて、水引の画像が印字されたA4サイズの記録材である熨斗用紙Pに、HMP1により表書きや名前の文字画像を形成する際の説明図である。
本実施形態に係る治具100は、HMP1の走査方向(X方向)に延びる長尺平板状の走査直交方向装置位置決め部材101と、HMP1の走査直交方向(Y方向)に延びる長尺平板状の走査開始位置決め部材102とが、互いの相対位置関係が固定されるように一体成型されたものである。具体的には、治具100は、走査直交方向装置位置決め部材101の一端部と走査開始位置決め部材102の一端部とが固定部103で互いに連結された略L字形状であり、L字定規のような形状となっている。治具100の基材は、熨斗用紙P(記録材)に治具100を重ねて置いても、治具100に重なる部分の用紙を視認できるように、光透過性の材料が好ましく、透明であるのがより好ましい。
【0036】
本実施形態の治具100の走査直交方向装置位置決め部材101は、走査直交方向(Y方向)におけるHMP1の位置決め基準となる装置位置決め基準部として機能する。すなわち、走査直交方向装置位置決め部材101は、走査直交方向(Y方向)の一端面(基準側面)101aにHMP1の背面34が当接することで、HMP1の走査直交方向位置を規制するものである。そして、この走査直交方向装置位置決め部材101の基準側面101aでHMP1の走査直交方向位置を規制しつつHMP1を走査方向(X方向)へ移動操作(手動走査)することにより、HMP1を走査方向へ直進させることができ、走査直交方向へのずれが少ない画像を用紙上に形成することができる。
【0037】
なお、装置位置決め基準部は、HMP1に備わった突起が入り込む溝によって構成してもよく、HMP1に備わった被当接部の走査直交方向片側又は両側から当接することによりHMP1の走査直交方向位置を規制できる構成であればよい。
【0038】
また、本実施形態の治具100の走査直交方向装置位置決め部材101上には、走査直交方向(Y方向)に沿って延びる1又は2以上の記録材基準線としての用紙基準線111が形成されている。この用紙基準線111は、基材上に印字されたものである。このような用紙基準線111を設けることで、走査直交方向へ延びる用紙上の基準線分(例えば、用紙上に描かれた走査直交方向へ延びる線分、走査直交方向へ延びる用紙端部(端辺)など)が治具100の当該用紙基準線111と平行になるように、用紙に対して治具100をセットすることにより、用紙上に形成される画像が斜めに形成されてしまう事態を抑制しやすい。
【0039】
また、本実施形態の治具100の走査直交方向装置位置決め部材101上には、走査方向(X方向)に沿って延びる1又は2以上の記録材基準線としての用紙基準線112が形成されている。この用紙基準線112は、基材上に印字されたものである。このような用紙基準線112を設けることで、走査方向へ延びる用紙上の基準線分(例えば、用紙上に描かれた走査方向へ延びる線分、走査方向へ延びる用紙端部(端辺)など)が治具100の当該用紙基準線112と平行になるように、用紙に対して治具100をセットすることにより、用紙上に形成される画像が斜めに形成されてしまう事態を抑制しやすい。
【0040】
また、本実施形態の走査直交方向装置位置決め部材101には、HMP1の走査方向位置を予め決められた走査開始位置(ホームポジション)に位置決めしたときにHMP1による画像形成が開始される記録材上の走査方向位置を指し示す画像形成開始位置指標140が設けられている。これにより、ユーザーは、走査方向(X方向)において、用紙上のどの位置から画像形成が開始されるのか、用紙上のどの位置に画像が形成されるのか、を把握することができる。本実施形態では、画像形成開始位置指標140に「印字開始」という文字画像(表示)が付され、これにより、当該画像形成開始位置指標140である矢印が、画像形成が開始される位置を指し示していることをユーザーが認識できるようになっている。
【0041】
一方、本実施形態の治具100の走査開始位置決め部材102は、HMP1の走査開始位置の位置決め基準として機能する。すなわち、走査直交方向装置位置決め部材101の基準側面101aにHMP1の背面34を当接させた状態で、そのHMP1の右側面33を、当該走査開始位置決め部材102の走査方向上流側端面102aに当接させることで、HMP1の走査方向位置が予め決められた走査開始位置(ホームポジション)に位置決めされる。その後、HMP1を走査方向(X方向)へ移動操作(手動走査)することにより、走査直交方向装置位置決め部材101上の画像形成開始位置指標140が指し示す走査方向位置から、熨斗用紙P上への画像形成が開始される。
【0042】
また、本実施形態の治具100の走査開始位置決め部材102上には、走査直交方向(Y方向)における熨斗用紙Pに対する治具100の位置決め基準となる走査直交方向治具位置決め基準部が設けられている。本実施形態の走査直交方向治具位置決め基準部は、用紙上の予め決められた基準箇所の走査直交方向位置を指し示す記録材位置指標である。本実施形態の記録材位置指標は、熨斗用紙Pの走査直交方向一端部を基準箇所とし、その用紙の走査直交方向一端部の走査直交方向位置を指し示す用紙端部位置指標130である。この用紙端部位置指標130は、基材上に印字されたものである。
【0043】
本実施形態の用紙端部位置指標130は、
図6に示すように、走査直交方向(Y方向)において、走査直交方向装置位置決め部材101の基準側面101aからの距離が互いに異なる複数の走査直交方向位置にそれぞれ設けられている。各用紙端部位置指標130が設けられている複数の走査直交方向位置は、走査直交方向の幅が互いに異なる予め決められた複数種類の用紙上の走査直交方向一端部(用紙上の基準箇所)が、対応する用紙端部位置指標130に合わさるように、用紙に対して治具100を位置決めした場合に、HMP1の記録部41の走査直交方向位置が、用紙上の予め決められた目標位置に位置決めされるように設定されている。
【0044】
本実施形態の治具100において、用紙端部位置指標130の位置は、対応する用紙上の予め決められた目標位置が当該用紙の走査直交方向中央位置となるように、設定されている。すなわち、各用紙端部位置指標130の走査直交方向位置は、対応するサイズの用紙の一端部(基準箇所)を当該用紙端部位置指標130に合わせた場合に、当該用紙の走査直交方向中央位置に画像が形成されるように、設定されている。
【0045】
図6の例では、熨斗用紙Pの走査直交方向(Y方向)における中央位置が、表書きや名前の文字画像を形成する目標位置となる。この場合、ユーザーは、まず、治具100の走査開始位置決め部材102に形成されているA4の用紙端部位置指標130に熨斗用紙Pの走査直交方向一端部が合うように、熨斗用紙Pの上に治具100をセットする。
【0046】
ユーザーは、熨斗用紙Pに対して治具100がずれないように、セットした治具100を片手で押さえる。そして、もう一方の手でHMP1を把持し、HMP1の背面34を治具100の走査直交方向装置位置決め部材101の基準側面101aに当接させる。その後、ユーザーは、HMP1の右側面33が治具100の走査開始位置決め部材102の走査方向上流側端面102aに当接するように、治具100に対してHMP1をセットする。これにより、HMP1が予め決められた走査開始位置(ホームポジション)に位置決めされる。
【0047】
その後、プリントボタン14を押して、HMP1の背面34が治具100の走査直交方向装置位置決め部材101の基準側面101aに沿って移動するように、HMP1を走査方向(X方向)に沿って移動操作(手動走査)する。これにより、HMP1の記録制御部56によって生成された駆動波形に従ってHMP1の記録部41の吐出孔41aからインクの液滴が吐出され、インクによる文字画像(表書きや名前)が、熨斗用紙Pの走査直交方向中央位置(目標位置)に形成される。
【0048】
ここで、
図6に示すように、熨斗用紙Pの走査方向上流側端部(上端部)又はその近傍位置を目標画像形成開始位置として画像を形成するような場合(以下、熨斗用紙Pの上端部が目標画像形成開始位置とする例で説明する。)、ユーザーは、治具100の走査直交方向装置位置決め部材101上の画像形成開始位置指標140が指し示す走査方向位置に、熨斗用紙Pの上端部が合うように、熨斗用紙Pに対して治具100をセットする。すなわち、この場合、画像形成開始位置指標140は、走査方向における熨斗用紙Pに対する治具100の位置決め基準となる治具位置決め基準部として機能する。
【0049】
このとき、仮に、
図7に示すように、当該治具位置決め基準部が治具100の走査直交方向装置位置決め部材101上の画像形成開始位置指標140だけであった場合、実質的に、熨斗用紙Pの上端部に対して画像形成開始位置指標140の一点を合わせることになる。この場合、熨斗用紙Pが斜めにセットされやすく、熨斗用紙Pの上端部から精度よく画像形成できないばかりか、画像が斜めに形成されてしまう事態を引き起こしやすい。
【0050】
そこで、本実施形態では、
図6に示すように、治具100の走査開始位置決め部材102は、走査直交方向装置位置決め部材101から遠い側の端部領域にも、走査方向における熨斗用紙Pに対する治具100の位置決め基準となる治具位置決め基準部を設けている。具体的には、走査直交方向装置位置決め部材101から遠い側の端部領域を、画像形成開始位置指標140と同じ走査方向位置まで延出させている。これにより、当該延出した端部領域の走査方向上流側端部102bは、画像形成開始位置指標140と同じ走査方向位置に位置する。よって、この走査方向上流側端部102bは、熨斗用紙Pの上端部を目標画像形成開始位置として画像を形成する場合、画像形成開始位置指標140とともに、走査方向における熨斗用紙Pに対する治具100の位置決め基準となる治具位置決め基準部として機能する。
【0051】
このように、本実施形態では、画像形成開始位置指標140と走査方向上流側端部102bという複数の治具位置決め基準部が設けられているので、画像形成開始位置指標140と走査方向上流側端部102bの両方に熨斗用紙Pの上端部が合うように、熨斗用紙Pに対して治具100をセットすることができる。これにより、熨斗用紙Pが斜めにセットされにくく、熨斗用紙Pの上端部から精度よく画像形成できるうえ、画像が斜めに形成されてしまう事態を抑制できる。
【0052】
しかも、走査開始位置決め部材102の走査方向上流側端部102bは、画像形成開始位置指標140に対し、走査直交方向にHMP1の長さ以上の距離をあけて配置されている。したがって、治具位置決め基準部である画像形成開始位置指標140と走査方向上流側端部102bとを、走査されるHMP1が通る走査領域をまたがるように配置することができる。これにより、熨斗用紙Pの上端部から更に精度よく画像形成することができるようになる。
【0053】
図8は、治具100の底面を示す斜視図である。
本実施形態の治具100は、用紙が載置された台面又は用紙の上面に対して接触する接触面(底面)に、当該台面又は当該用紙の上面との間の摩擦係数を治具100の基材面よりも高める摩擦部材150が設けられている。この摩擦部材150は、当該台面又は当該用紙に対する治具100の滑り止めとして機能し、用紙と治具100との相対的なずれを抑制する。
【0054】
また、本実施形態においては、画像形成開始位置指標140とともに治具位置決め基準部として機能する部分が、走査開始位置決め部材102の走査方向上流側端部102bであったため、熨斗用紙Pの上端部を目標画像形成開始位置として画像を形成する場合、走査方向上流側端部102bが熨斗用紙Pの上端部に一致し、熨斗用紙Pと重ならない。この場合、熨斗用紙Pを押さえるのは、走査直交方向装置位置決め部材101の箇所だけとなり、HMP1の走査中などに熨斗用紙Pが動いてしまうおそれがある。
【0055】
したがって、例えば、
図9に示すように、走査直交方向装置位置決め部材101から遠い側の端部領域を、画像形成開始位置指標140と同じ走査方向位置まで延出させている。これにより、当該延出した端部領域の走査方向上流側端部102cは、熨斗用紙Pの上端部を目標画像形成開始位置として画像を形成する場合、熨斗用紙Pに重なることになる。そして、当該延出した端部領域において、画像形成開始位置指標140と同じ走査方向位置には、治具位置決め基準部として機能する矢印141が設けられている。このように、
図9の例では、熨斗用紙Pの上端部を目標画像形成開始位置として画像を形成する場合、治具位置決め基準部として機能する画像形成開始位置指標140と矢印141とが、いずれも、熨斗用紙Pに重なる箇所(走査直交方向装置位置決め部材101及び走査開始位置決め部材102の端部領域)に設けられている。その結果、走査直交方向装置位置決め部材101と走査開始位置決め部材102の端部領域とで熨斗用紙Pを押さえることができ、HMP1の走査中などに熨斗用紙Pが動いてしまう事態を抑制できる。
【0056】
なお、本実施形態では、携帯型画像形成装置がインクジェット方式のHMP1である例について説明したが、他の画像形成方法による携帯型画像形成装置であってもよい。例えば、感熱方式、又は熱転写方式など適宜な画像形成方式の携帯型画像形成装置であってもよい。
【0057】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、携帯型画像形成装置(例えばHMP1)を走査方向(X方向)へ走査することにより記録材(例えば熨斗用紙P)に画像を形成するための携帯型画像形成装置用治具(例えば治具100)であって、前記携帯型画像形成装置の走査開始位置の位置決め基準となる走査開始位置決め部材102と、前記走査開始位置決め部材に合わせて位置決めされた前記携帯型画像形成装置によって前記記録材に対する画像形成が開始される走査方向位置を、該記録材の走査方向上流側端部又はその走査方向近傍位置に一致させる場合に、前記走査方向における該記録材に対する前記携帯型画像形成装置用治具の位置決め基準となる治具位置決め基準部(例えば画像形成開始位置指標140、走査開始位置決め部材102の上流側端部102b、走査開始位置決め部材102の矢印141)を有することを特徴とするものである。
本態様に係る携帯型画像形成装置用治具(以下、適宜「治具」という。)は、走査方向における記録材に対する当該治具の位置決め基準となる治具位置決め基準部を有する。記録材の走査方向上流側端部又はその近傍位置を目標画像形成開始位置として画像形成する場合、本治具は、記録材上の予め決められた基準箇所(例えば記録材の走査方向端部)に対して治具位置決め基準部を位置合わせして、セットされる。その後、本治具の走査開始位置決め部材に合わせて携帯型画像形成装置を位置決めして走査を開始する。これにより、記録材に対して画像形成が開始される走査方向位置は、目標画像形成開始位置である記録材の走査方向上流側端部又はその走査方向近傍位置に精度よく一致する。
【0058】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記治具位置決め基準部は、前記走査方向における前記記録材の走査方向上流側端部を指し示す記録材端部位置指標(例えば画像形成開始位置指標140)を含むことを特徴とするものである。
これによれば、記録材の走査方向上流側端部に治具位置決め基準部を合わせるように記録材に対して治具をセットすることで、携帯型画像形成装置による画像形成開始位置を、目標画像形成開始位置である記録材の走査方向上流側端部又はその走査方向近傍位置に精度よく一致させることができる。
【0059】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記治具位置決め基準部は、走査直交方向に離間して複数配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、記録材上の予め決められた基準箇所(例えば記録材の走査方向端部)に対して複数の治具位置決め基準部を合わせすることができるので、記録材に対して治具が斜めにセットされにくく、目標画像形成開始位置である記録材の走査方向上流側端部又はその走査方向近傍位置から精度よく画像形成できるうえ、画像が斜めに形成されてしまう事態を抑制できる。
【0060】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、複数の前記治具位置決め基準部は、走査直交方向に前記携帯型画像形成装置の長さ以上の距離をあけて配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、複数の治具位置決め基準部を、走査される携帯型画像形成装置が通る走査領域をまたがるように配置することができる。これにより、目標画像形成開始位置である記録材の走査方向上流側端部又はその走査方向近傍位置から更に精度よく画像形成することができる。
【0061】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、複数の前記治具位置決め基準部は、前記の場合に、前記記録材に重なる箇所に設けられていることを特徴とするものである。
これによれば、複数の治具位置決め基準部がそれぞれ設けられる複数の箇所で記録材を押さえることができ、携帯型画像形成装置の走査中などに記録材が動いてしまう事態を抑制できる。
【0062】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記記録材が載置された台面又は該記録材の面に対して接触する接触面に、該台面又は該記録材の面との間の摩擦係数を高める摩擦部材150を有することを特徴とするものである。
これによれば、記録材が載置された台面や記録材に対して治具100が滑りにくくなり、より安定して高い位置精度の画像形成を行うことができる。
【0063】
[第7態様]
第7態様は、走査方向へ手動で走査することにより記録材に画像を形成する携帯型画像形成装置と、第1乃至第6態様のいずれかの携帯型画像形成装置用治具とから構成されることを特徴とするものである。
これによれば、目標とする画像形成開始位置が記録材の走査方向上流側端部又はその近傍位置である場合、携帯型画像形成装置による画像形成開始位置を、その目標画像形成開始位置に精度よく一致させることができる携帯型画像形成システムを提供できる。
【符号の説明】
【0064】
1 :HMP
2 :上部ユニット
3 :下部ユニット
14 :プリントボタン
15 :電源ボタン
30 :記録面
31 :上面
32 :左側面
33 :右側面
34 :背面
35 :正面
40 :インクジェットヘッド
41 :記録部
41a :吐出孔
100 :治具
101 :走査直交方向装置位置決め部材
101a :基準側面
102 :走査開始位置決め部材
103 :固定部
130 :用紙端部位置指標
140 :画像形成開始位置指標
141 :矢印
150 :摩擦部材
P :熨斗用紙
X :走査方向
Y :走査直交方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】