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特許7158023固形腫瘍の治療における使用のための、LSD1阻害剤の組合せ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】固形腫瘍の治療における使用のための、LSD1阻害剤の組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/136 20060101AFI20221014BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K31/136
A61K31/495
A61K31/496
A61K31/5377
A61P11/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2018548076
(86)(22)【出願日】2017-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2017055784
(87)【国際公開番号】W WO2017157825
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】62/308,529
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517381706
【氏名又は名称】オリソン ヘノミクス エセ. アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デマリオ, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ピアシール, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マック, フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】マエス, タマラ
(72)【発明者】
【氏名】ルナルディ, セレーナ
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502335(JP,A)
【文献】国際公開第2015/010782(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/085325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/136
A61K 31/495
A61K 31/496
A61K 31/5377
A61P 11/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と、ベネトクラックス(ABT-199)、ナビトクラックス(ABT-263)、ABT-737及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択されるBCL2阻害剤とを含む、治療的組合せ製造品。
【請求項2】
(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と、ベネトクラックス(ABT-199)又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の治療的組合せ製造品。
【請求項3】
(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と、ナビトクラックス(ABT-263)又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の治療的組合せ製造品。
【請求項4】
(トランス)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の治療的組合せ製造品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の治療的組合せ製造品と、1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物。
【請求項6】
がんの治療に有用である、請求項1から4のいずれか一項に記載の治療的組合せ製造品を含む、製品。
【請求項7】
LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩を含む第1の製剤、及びBCL2阻害剤を含む第2の製剤を含む、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
第1及び第2の製剤が、同時、逐次又は別個の投与のためのものである、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
治療活性物質としての使用のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の治療的組合せ製造品。
【請求項10】
がんの治療における使用のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の治療的組合せ製造品。
【請求項11】
がんの治療のための医薬の調製のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の治療的組合せ製造品の使用。
【請求項12】
がんが、肺がん又は血液がんである、請求項6から8のいずれか一項に記載の製品、又は請求項10に記載の、使用のための治療的組合せ製造品。
【請求項13】
がんが、小細胞肺がん(SCLC)である、請求項6から8のいずれか一項に記載の製品、又は請求項10に記載の、使用のための治療的組合せ製造品。
【請求項14】
がんが、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項6から8のいずれか一項に記載の製品、又は請求項10に記載の、使用のための治療的組合せ製造品。
【請求項15】
がんが、肺がん又は血液がんである、請求項11に記載の使用。
【請求項16】
がんが、小細胞肺がん(SCLC)である、請求項11に記載の使用。
【請求項17】
がんが、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項11に記載の使用。
【請求項18】
ベネトクラックス(ABT-199)、ナビトクラックス(ABT-263)、ABT-737及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択されるBCL2阻害剤と組み合わせて使用するための医薬であって、(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩を含む、医薬。
【請求項19】
ベネトクラックス(ABT-199)又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて使用するための医薬であって、(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項18に記載の医薬。
【請求項20】
がんの治療において、ベネトクラックス(ABT-199)、ナビトクラックス(ABT-263)、ABT-737及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択されるBCL2阻害剤と組み合わせて使用するための医薬であって、(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩を含む、医薬。
【請求項21】
がんの治療において、ベネトクラックス(ABT-199)又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて使用するための医薬であって、(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項20に記載の医薬。
【請求項22】
(トランス)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドを含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項23】
(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて使用するための医薬であって、ベネトクラックス(ABT-199)、ナビトクラックス(ABT-263)、ABT-737及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択されるBCL2阻害剤を含む、医薬。
【請求項24】
(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて使用するための医薬であって、ベネトクラックス(ABT-199)又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項23に記載の医薬。
【請求項25】
がんの治療において、(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて使用するための医薬であって、ベネトクラックス(ABT-199)、ナビトクラックス(ABT-263)、ABT-737及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択されるBCL2阻害剤を含む、医薬。
【請求項26】
がんの治療において、(トランス)-N1-((1R、2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1、4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて使用するための医薬であって、ベネトクラックス(ABT-199)又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項25に記載の医薬。
【請求項27】
(トランス)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドと組み合わせて使用するためのものである、請求項23から26のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項28】
がんが、肺がんである、請求項202125又は26に記載の医薬。
【請求項29】
がんが、血液がんである、請求項20、21、25又は26に記載の医薬。
【請求項30】
がんが、小細胞肺がん(SCLC)である、請求項202125又は26に記載の医薬。
【請求項31】
がんが、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項20、21、25又は26に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSD1阻害剤及び1つ以上の医薬品有効成分又は薬学的に許容されるそれらの塩の治療的組合せに関する。その組合せは、例えばがん、特に小細胞肺がん(SCLC)などの腫瘍性疾患を治療するために特に有用である。
【背景技術】
【0002】
正常組織と比較した患部組織における異常な遺伝子発現は、がんを含む、多くのヒト疾患の共通の特徴である。遺伝子発現パターンは、細胞における複数のレベルで制御される。遺伝子発現の制御はDNAの修飾を通して生じることがある:DNAプロモーターメチル化は遺伝子発現の抑制に関係する。ブロックバスターのビダーザ(商標)を含めて、DNAメチル化のいくつかの阻害剤は、臨床的使用が承認されている。別のクラスの修飾は、DNAが真核細胞において通常関係する(周囲でコイル化されている)、タンパク質スキャフォールドを形成する、ヒストンに関与する。ヒストンは、DNAを組織することにおいて重要な役割を果たし、ヒストンの周囲のDNAの制御されたコイル化及びアンコイル化は、遺伝子発現を制御するのに重要であり、コイル化されたDNAは、一般的に、遺伝子転写に利用できない。ヒストンアセチル化、ヒストンリジンメチル化、ヒストンアルギニンメチル化、ヒストンユビキチン化、及びヒストンSUMO化を含む、多数のヒストン修飾が発見されており、その多くは、細胞の転写機構によって、関係するDNAへの近づきやすさを変更する。これらのヒストンマークは、転写及び抑制に関与する様々なタンパク質複合体をリクルートするのに役立つ。ますます多くの研究が、様々な組合せのヒストンマークが細胞型特異的な方式における遺伝子発現をどのように制御するか、の複雑な絵を描いており、この概念を捉えるために新たな用語が作り出された:ヒストンコード。
【0003】
プロトタイプのヒストンマークは、ヒストンアセチル化である。ヒストンアセチルトランスフェラーゼ及びヒストンデアセチラーゼは、このヒストンマークの調節に関与する触媒機械であるが、一般的に、これらの酵素は、ヒストンマークを読み取ること及び変更することに関与する他のタンパク質を含有する、多タンパク質複合体の一部である。これらのタンパク質複合体の構成は、一般的に、細胞型特異的であり、一般的に、転写調節因子、リプレッサー、コリプレッサー、遺伝子発現調節に関係するレセプター(例えば、エストロゲン又はアンドロゲンレセプター)を含む。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、クロマチンのヒストンアセチル化プロファイルを変更する。それに伴い、ボリノスタット(SAHA)、トリコスタチンA(TSA)、及び多くの他のもの、のようなヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、様々なインビトロ及びインビボの動物モデルにおいて遺伝子発現を変更することが示された。臨床的に、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、がん設定において活性を示し、神経学的状態及び他の疾患についてだけでなく、腫瘍学適応についても調べられている。
【0004】
遺伝子発現を制御することに関与する別の修飾は、リジン及びアルギニンメチル化を含めたヒストンメチル化である。ヒストンリジンのメチル化状態は、最近、遺伝子発現を動的に制御するのに重要であることが示された。
【0005】
ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ及びヒストンリジンデメチラーゼとして知られている一群の酵素が、ヒストンリジン修飾に関与している。リジン特異的デメチラーゼ-1(LSD1)と呼ばれるある特定のヒトヒストンリジンデメチラーゼ酵素が、最近、この重大なヒストン修飾に関与することが見出された。LSD1は、ポリアミンオキシダーゼ及びモノアミンオキシダーゼに対してかなりの程度の構造上の類似性、及びアミノ酸の同一性/ホモロジーを有しており、これらの全て(すなわち、MAO-A、MAO-B及びLSD1)は、窒素-水素結合及び/又は窒素炭素結合の酸化を触媒するフラビン依存性アミンオキシダーゼである。LSD1は、がん、神経学的疾患及び他の状態を処置するための新たな薬物の開発の興味深い標的として認識されている。
【0006】
シクロプロピルアミン含有化合物は、モノアミンオキシダーゼA(MAO-A;又はMAOA)、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B;又はMAOB)のようなアミンオキシダーゼ、及びリジン特異的デメチラーゼ-1(LSD1)を含む、多数の医学的に重要な標的を阻害することが知られる。パルネート(Parnate)(登録商標)の有効成分であり、シクロプロピルアミンの最もよく知られる例の1つであるトラニルシプロミン(2-フェニルシクロプロピルアミンとしても知られている)は、これらの酵素の全てを阻害することが知られる。MAO-A阻害は、望ましくない副作用を引き起こすかもしれないので、強力なLSD1阻害活性を示す一方でMAO-A阻害活性を欠くか又は実質的に低減したMAO-A阻害活性を有する、シクロプロピルアミン誘導体を同定することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
LSD1の阻害剤として働く化合物はその技術分野で知られる。LSD1阻害剤及びそれらを作るための方法は、WO2011/131697、WO2012/135113、WO2013/057322、WO2010/143582、WO2011/131576、WO2013/022047、WO2013/025805、WO2014/058071、WO2014/08429810、WO2014/08561311、WO2014/08679012、WO2014/16486713、WO2014/19428014、WO2014/20521315、WO2015/02112816、WO2015/03156417、WO2015/08919218、WO2015/12028119、WO2015/12346520、WO2015/12343721、WO2015/12342422、WO2015/12340823、WO2015/13497324、WO2015/15641725、WO2015/168466、WO2015/181380、WO2015200843、WO2016003917、WO2016/00410526、WO2016/00772227、WO2016/00772728、WO2016/00773129、WO2016/00773630、WO2016/03494631、WO2016/03700532、CN10554180633、WO2016/12338734、WO2016/13095235、CN10592436236、CN10598526537、WO2016/16128238、CN10604586239、CN10604588140、WO2016/17249641、WO2016/17765642、WO2017/00451943、WO2017/02767844で開示されており、ここでそれらの全部が組み込まれる。
【0008】
WO2012/1351133は、選択的LSD1阻害剤として、例えばGSK2879552[CAS登録番号1401966-69-5]、4-[[4-[[[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ]メチル]-1-ピペリジニル]メチル]-安息香酸(p.75の実施例26、p.81の実施例29)としても知られる化合物を開示する。
(GSK2879552)
【0009】
WO2017/02767844は、l-((4-(メトキシメチル)-4-(((lR,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピぺリジン-l-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸
のp-トルエンスルホン酸塩を開示する。
【0010】
LSD1阻害剤及びそれらを作るための方法は、例えば、WO2013/0220477に、特に実施例1-166(対応するEP2743256の44~114頁)、特にN-[4-[2-[(シクロプロピルメチルアミノ)メチル]シクロプロピル]フェニル]-1-メチル-ピラゾール-4-カルボキシアミド(実施例163)に開示され、ここでそれらの全部が組み込まれる。
【0011】
LSD1阻害剤及びそれらを作るための方法は、例えば、WO2011/1316972、特に実施例1-21(90~103頁)に開示され、ここでそれらの全部が組み込まれる。
【0012】
LSD1阻害剤及びそれらを作るための方法は、例えば、WO2013/0573224、特に実施例1-108(155~191頁)に開示され、ここでそれらの全部が組み込まれる。
【0013】
WO2013/0573224に記載された特定のLSD1阻害剤は表1に示される。
表1.WO2013/0573224に記載された特定のLSD1阻害剤。
【0014】
WO2013/0573224に記載される、より特定のLSD1阻害剤は、その実施例5に対応している、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン[CAS登録番号1431304-21-0]

及び薬学的に許容されるその塩である。本化合物はORY-1001としても知られる。
【0015】
in vitro 及びin vivoでがん細胞の増殖を阻害する相加的又は相乗的効果は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるそれらの塩を、ある他の特定の薬剤との組合せで投与することによって達成され得ることが決定された。その組合せ及び方法は、例えばがんなどの腫瘍性疾患の治療において有用であり得る。
【0016】
したがって、本発明は、哺乳動物での腫瘍性疾患の治療における使用のための、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるそれらの塩と、表2から選択される1つ以上の医薬品有効成分又は薬学的に許容されるそれらの塩とを含む組合せを提供する。
表2.LSD1阻害剤と組み合わされるのに適切な医薬品有効成分。
【0017】
表2の化合物の構造式は次のとおりである:
ABT-199 (ベネトクラックス):
ABT-263(ナビトクラックス):
ABT-737:
ABT-888 (ベリパリブ):
ACY-1215(リコリノスタット):
ベリノスタット:
ベンダムスチン:
BGJ398(インフィグラチニブ):
BMS-906024:
カルボプラチン:
CGK733:
シスプラチン:
CPI-169:
CPI-203:
ドセタキセル:
ドキソルビシン:
EPZ-004777:
EPZ005687:
EPZ-5676(ピノメトスタット):
EPZ-6438(タゼメトスタット):
エルロチニブ:
エトポシド:
FLI06:
フルオロウラシル:
GDC-0449(ビスモデギブ(Vismodegib)):
ゲムシタビン:
GSK126:
GSK1324726A(I-BET726):
GSK343:
GSK-J1:
GSK1210151A(I-BET151):
イリノテカン:
(+)-JQ1:
ラパチニブ:
LDE225(ソニデギブ(Sonidegib)):
LY2603618:
LY-3039478:
メナジオン:
メトトレキサート:
MK-0752:
MLN8237(アリセルチブ(Alisertib)):
MS436:
ヌトリン-3A:
オバトクラックス:
OTX015:
パクリタキセル:
パノビノスタット:
ペメトレキセド:
PF-04217903:
PF-3084014:
SAHA(ボリノスタット):
SGC0946:
SNDX-275(エンチノスタット):
タラデギブ(Taladegib):
テモゾロミド:
トポテカン:
TW-37:
ビンクリスチン:
【0018】
〔発明の詳細な説明〕
別に定義されない限り、ここで使用される全ての技術用語及び科学用語は、この発明の属する分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。ここに記載されたものと類似又は同等の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用され得るが、適切な方法及び材料は以下に記載される。
【0019】
ここに言及された全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、その全体が参照により援用される。
【0020】
別に示されない限り、この出願で使用される命名法は、IUPACの系統的命名法に基づく。
【0021】
別に示されない限り、ここの構造における炭素、酸素、硫黄、又は窒素原子上に現れるどの開いた原子価も水素の存在を示す。
【0022】
置換基の数を示すとき、用語「1つ以上の」は、1つの置換基から最大置換可能数の範囲、すなわち1つの水素の置換から全ての水素の置換までを指す。
【0023】
用語「任意の」又は「任意に」は、続いて記載される事象又は状況が生じ得るが生じる必要がないこと、また、その記載が、事象又は状況が生じる場合と生じない場合の両方を含むことを意味する。
【0024】
用語「薬学的に許容される塩」は、生物学的に又はその他の点で望ましくないものではない塩を意味する。薬学的に許容される塩は、酸付加塩及び塩基付加塩の両方を含む。
【0025】
用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸などの無機酸、並びに脂肪族、環状脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸のクラスから選択される有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸(maloneic acid)、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びサリチル酸などで形成された塩で、薬学的に許容されるものを意味する。
【0026】
用語「薬学的に許容される塩基付加塩」は、有機又は無機塩基で形成された塩で、薬学的に許容されるものを意味する。許容される無機塩基の例は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン及びアルミニウムの塩を含む。薬学的に許容される有機非毒性塩基由来の塩は、第一級、第二級及び第三級アミン、天然の置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂を含む置換アミン類(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペリジン(piperizine)、ピペリジン(piperidine)、N-エチルピペリジン及びポリアミン樹脂類など)の塩を含む。
【0027】
ここで使用される立体化学の定義及び規定は、一般的にS. P. Parker100;及びEliel, E. and Wilen, S.101に従う。光学的に活性な化合物を記載する際に、接頭語D及びL、又はR及びSが使用され、そのキラル中心の周りでの分子の絶対配置を意味する。対象とするキラル中心に結合した置換基は、Cahn, Ingold and Prelog102のシーケンスルール(Sequence Rule)に従ってランク付けされる。接頭語D及びL、又は(+)及び(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために用いられ、(-)又はLは化合物が左旋性であることを示す。接頭語(+)又はDを有する化合物は、右旋性である。
【0028】
用語「医薬組成物」及び「医薬製剤」(又は「製剤」)は、互換的に使用され、哺乳動物、例えばそれを必要とするヒトに投与される、薬学的に許容される添加剤とともに治療的有効量の医薬品有効成分を含む混合物又は溶液を意味する。
【0029】
用語「薬学的に許容される」は、一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではなく、ヒトだけでなく動物の医薬用途について許容される、薬学的組成物を調製するのに有用な物質の属性を意味する。
【0030】
用語「薬学的に許容される添加剤」、「薬学的に許容される担体」及び「治療的に不活性な添加剤」は、互換的に使用可能であり、医薬製品を製造する際に使用される、例えば崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝剤、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、担体、希釈剤又は潤滑剤など、治療活性を有さず、投与される対象に対して非毒性である、医薬組成物中の任意の薬学的に許容される成分を意味する。
【0031】
用語「阻害剤」は、特定のリガンドの特定の受容体又は酵素への結合に競合する、減少させる又は妨げる化合物、及び/又は特定のタンパク質、例えば受容体又は酵素の活性を減少させる又は妨げる化合物を意味する。
【0032】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物は、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及び例えばサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されるものではない。ある実施態様において、個体又は対象はヒトである。
【0033】
ここで使用する用語「動物」は、ヒト及び非ヒト動物を含む。一実施態様では、「非ヒト動物」は、哺乳動物、例えばラット又はマウスなどのげっ歯類である。一実施態様では、非ヒト動物は、マウスである。
【0034】
用語「半数効果濃度」(EC50)は、特定のin vino効果の最大値の50%を得るために必要な、特定の化合物又は分子の血漿濃度を意味する。
【0035】
用語「治療的有効量」(又は「有効量」)は、対象に投与されたとき、ここに記載の(i)特定の疾患、状態、又は障害を治療又は予防する、(ii)特定の疾患、状態、又は障害の1つ以上の症状を軽減、改善又は排除する、又は(iii)特定の疾患、状態、又は障害の1つ以上の症状の発現を防止する又は遅らせる、本発明の化合物又は分子の量を意味する。治療的有効量は、化合物、治療される病状、治療される疾患の重症度、対象の年齢及び相対的健康度、投与の経路及び形態、担当の医師又は獣医師の判断、及び他の要因に応じて変化するであろう。
【0036】
病状の「治療」という用語は、病状を阻害すること、すなわち病状又はその臨床症状の進行を阻止すること、又は病状を緩和すること、すなわち病状又はその臨床症状の一時的又は永続的退行を引き起こすことを含む。
【0037】
用語「腫瘍性疾患を評価すること」は、本発明の方法が、個体が腫瘍性疾患を有する又は腫瘍性疾患を発症するリスクがあるかどうかを評価することにおいて、例えば医師を含む医学専門家を手助けすることを示すために使用される。遺伝子パネルのレベルは、1つ以上の参照レベルと比較して、個体が腫瘍性疾患を有するかどうか、又は個体が腫瘍性疾患を発症する又は腫瘍性疾患の過程の前兆となるリスクがあるかどうかを示す。一実施態様において、腫瘍性疾患を評価するという用語は、本発明の方法が、個体が腫瘍性疾患を有するか否かを評価することにおいて、医学専門家を手助けすることを示すために使用される。これらの実施態様において、遺伝子パネルのレベルは、1つ以上の参照レベルと比較して、個体が腫瘍性疾患を有するかどうかを示す。
【0038】
用語「治療法を評価すること」は、本発明の方法が、腫瘍性疾患を有する患者が有効な量のLSD1阻害剤を用いる治療を受けるべきかどうかを評価することにおいて、例えば医師を含む医学専門家を手助けすることを示すために使用される。参照レベルより高いレスポンダー遺伝子のレベル、及び/又は参照レベルより低いノンレスポンダー遺伝子のレベルは、患者が有効な量のLSD1阻害剤を用いる治療を受けるべきであることを示す。ある実施態様において、用語「参照レベルで」は、参照レベル又は参照レベルと1%まで、2%まで、3%まで、4%まで、5%まで異なるレベルと本質的に同じである個体又は患者からの試料中の遺伝子パネルの遺伝子のレベルを指す。
【0039】
ある実施態様において、用語「参照レベルより高い」は、参照レベルと比較して、ここに記載された方法によって決定された、参照レベルより高い又は5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、100%又はより大きい全体の増加の個体又は患者からの試料遺伝子パネルの遺伝子のレベルを指す。ある実施態様において、増加という用語は、個体又は患者からの試料中の遺伝子パネルの遺伝子のレベルにおける増加であって、その増加は参照レベル、例えば参照試料から予め決められたものと比較して少なくとも約1.75-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、25-、30-、40-、50-、60-、70-、75-、80-、90-、又は100倍高いことを示す。
【0040】
ある実施態様において、用語「減少」又は「低い」は、参照レベルと比較して、ここに記載された方法によって決定された、参照レベルより低い又は5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はより大きい全体の減少の個体又は患者からの試料遺伝子パネルの遺伝子のレベルを指す。ある実施態様において、減少という用語は、個体又は患者からの試料中の遺伝子パネルの遺伝子のレベルにおける減少であって、その減少したレベルは、参照レベル、例えば参照試料から予め決められたものと比較して多くとも約0.9-、0.8-、0.7-、0.6-、0.5-、0.4-、0.3-、0.2-、0.1-、0.05-、又は0.01倍である、又はより低いことを示す。
【0041】
ここで使用される用語「バイオマーカー」は、哺乳動物の組織又は細胞の中又は上に標準的な方法(又はここで開示された方法)によって検出され得る、哺乳動物の細胞又は組織の、例えばLSD1阻害剤(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドによるLSD1阻害に基づく治療レジメンへの感受性についての予測的、診断的及び/又は予後的であり得る、遺伝子、発現又は存在を一般的に指す。ある実施態様において、そのようなバイオマーカーのレベルは、参照試料について観察されたものより高い又は低いことが決定される。
【0042】
ここで使用される用語「比較すること」は、個体又は患者からの試料中のバイオマーカーのレベルを、この記載のどこかで特定されたバイオマーカーの参照レベルと比較することを指す。ここで使用される比較は、通常、対応するパラメーター又は値の比較を指すと理解され、例えば、絶対量は絶対参照量と比較される一方で、濃度は参照濃度と比較され、又は試料中のバイオマーカーから得られる強度シグナルは、参照試料から得られる同じ型の強度シグナルと比較される。比較は手動又はコンピューター支援により実行され得る。このように、比較は計算装置(例えば、ここで開示されたシステムの)によって実行され得る。個体又は患者からの試料中のバイオマーカーの測定又は検出されたレベル、及び参照レベルの値は、例えば、互いに比較され得て、前記比較は比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータープログラムによって自動的に実行され得る。前記評価を実行するコンピュータープログラムは、適切な出力フォーマットにおける望ましい評価を提供するであろう。コンピューター支援の比較にとって、決定された量の値は、コンピュータープログラムによってデータベースにおいて分類される適切な参照に対応する値と比較され得る。コンピュータープログラムは比較の結果をさらに評価し得る、すなわち適切な出力フォーマットにおける望ましい評価を自動的に提供する。コンピューター支援の比較にとって、決定された量の値は、コンピュータープログラムによってデータベースにおいて分類される適切な参照に対応する値と比較され得る。コンピュータープログラムは比較の結果をさらに評価し得る、すなわち適切な出力フォーマットにおける望ましい評価を自動的に提供する。
【0043】
ここで使用されるバイオマーカーを「検出すること」という用語は、この中のどこかに記載される適切な検出の方法を採用している試料においてバイオマーカーの量の存在を検出する方法を指す。
【0044】
ここで使用されるバイオマーカーのレベルを「測定すること」という用語は、バイオマーカーの定量、例えばこの中のどこかに記載される適切な検出の方法を採用している試料においてバイオマーカーのレベルを決定することを指す。
【0045】
用語「治療法の効果をモニターすること」は、LSD1阻害剤を用いる治療前及び/又は治療中の患者からの連続的なものを含めて、少なくとも1回は試料が得られること、及び治療法が有効であるか否かの兆候を得るために遺伝子パネルレベルが測定されることを示すために使用される。
【0046】
治療法の効き目をモニターすることにおいて、遺伝子パネルレベルは測定され、一実施態様において遺伝子パネルの参照値と比較される、又は、さらなる実施態様において、より早い時点、例えば、前記患者が既に治療中であった間又は前記患者における治療の開始前に、同じ患者から得られた試料中の遺伝子パネルと比較される。
【0047】
ここで「患者」又は「対象」は、1つ以上の腫瘍性疾患の兆候、症状若しくは他の指標を経験している又は経験した、治療の対象となる任意の単一のヒト対象である。対象として含めることを意図しているのは、どの臨床上の兆候も示していない臨床研究試験に関係している任意の対象、又は疫学研究に関係している対象、又はかつてコントロールとして使用された対象である。対象は以前にLSD1阻害剤又は他の薬物で治療されていても、そのように治療されていなくてもよい。対象は、ここで治療が開始されるときに、追加の薬物が使用されることにナイーブであってもよい、すなわち、対象は以前に、例えば、「ベースライン」(すなわち、例えば治療が開始される前の対象のスクリーニングの日など、ここでの治療方法における薬物Dの最初の用量の投与前の時点で)でLSD1阻害剤以外の治療法で治療されていなくてもよい。そのような「ナイーブ」の対象は一般的にそのような追加の薬物での治療の候補であると考えられる。
【0048】
ここで使用される語句「診断/評価を提供すること」は、患者の試料中の遺伝子パネルレベルに関連して生成された情報又はデータを使用して、患者における腫瘍性疾患を診断/評価することを指す。情報又はデータは、書面、口頭又は電子のいずれの形式であってもよい。いくつかの実施態様において、生成された情報又はデータを使用することは、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、計算装置、解析装置又はそれらの組合せによって行われる。いくつかのさらなる実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、実験又は医学の専門家によって行われる。いくつかの実施態様において、情報又はデータは、遺伝子パネルレベルと参照レベルの比較を含む。
【0049】
ここで使用される語句「治療を推奨すること」は、患者の試料中の遺伝子パネルレベルに関連して生成された情報又はデータを使用して、治療法で適切に治療される又は適切に治療されない患者を同定することを指す。いくつかの実施態様において、治療法はLSD1阻害剤を含み得る。いくつかの実施態様において、語句「治療/治療法を推奨すること」は、有効な量のLSD1阻害剤が投与されることの適用を必要とする患者の同定を含む。いくつかの実施態様において、治療を推奨することは、投与されるLSD1阻害剤の量が適用されることを推奨することを含む。ここで使用される語句「治療を推奨すること」は、LSD1阻害剤を含む治療法に多かれ少なかれ応答する可能性があるとして同定又は選択された患者のためにLSD1阻害剤を含む治療法を提案又は選択するために生成された情報又はデータを使用することも指し得る。使用又は生成された情報又はデータは、書面、口頭又は電子のいずれの形式であってもよい。いくつかの実施態様において、生成された情報又はデータを使用することは、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、計算装置、解析装置又はそれらの組合せによって行われる。いくつかのさらなる実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、実験又は医学の専門家によって行われる。いくつかの実施態様において、情報又はデータは、遺伝子パネルレベルと参照レベルの比較を含む。いくつかの実施態様において、情報又はデータは、患者がLSD1阻害剤を含む治療法で適切に治療される又は適切に治療されないことの表示を含む。
【0050】
ある実施態様において、用語「参照レベル」はここで、予め決められた値を指す。この文脈において、「レベル」は絶対量、相対量又は濃度、及びそれらに相関するか又はそれらから誘導され得る任意の値又はパラメーターを含む。当業者が理解するように、参照レベルは予め決められて、例えば、特異性及び/又は感度の観点でいつもの要件を満たすために設定される。これらの要件は例えば、規制機関によって変わり得る。例えば、定量の感度又は特異性が、それぞれ特定の限度値、例えばそれぞれ80%、90%、95%又は98%に設定されなければならないことがあり得る。これらの要件は正又は負の予測値の観点でも定義され得る。しかしながら、本発明において与えられる教示に基づいて、当業者がそれらの要件を満たす参照レベルに到達することはいつも可能であろう。一実施態様において、参照レベルは健康個体からの参照試料において決定される。一実施態様における参照レベルは、患者が属する疾患全体からの参照試料において予め決定された。ある実施態様において、参照レベルは、例えば、調査された疾患実体における値の全体的な分布の25%から75%の間の任意のパーセンテージで設定され得る。別の実施態様において、参照レベルは、調査された疾患実体からの参照試料における値の全体的な分布から決定される中央値、三分位値又は四分位値に設定され得る。一実施態様において、参照レベルは、調査された疾患実体からの参照試料における値の全体的な分布から決定される中央値に設定され得る。参照レベルは、例えば年齢、性別又はサブ集団などの様々な生理学的パラメーター、及び、ここで参照される遺伝子パネルレベルの決定のために使用される方法によって変わり得る。一実施態様において、参照試料は、本発明の方法を受ける個体又は患者からの試料と本質的に同じ型の細胞、組織、臓器又は体液源からのものであり、例えば、本発明により、個体における遺伝子パネルレベルを決定するために血液が試料として使用される場合、参照レベルは血液又はその一部においても決定される。
【0051】
本発明の文脈の中で、語句「に応答する」は、ここに記載された障害に、罹患している、罹患すると疑われている若しくは罹患しやすい、又は診断された患者が、LSD1阻害剤を含む治療法に応答することを示す。
【0052】
用語「試料」は、体液の試料、分離された細胞の試料又は組織又は臓器からの試料を指す。体液の試料は周知の技術から得ることが可能であり、血液、血漿、血清、尿、リンパ液、痰、腹水、気管支洗浄液若しくは他の体液分泌物又はそれらの派生物を含む。組織又は臓器の試料は、任意の組織又は臓器から、例えば、生検により得られ得る。分離された細胞は体液又は組織又は臓器から、例えば遠心分離又は細胞選別などの分離技術によって得られ得る。例えば、細胞の、組織の、又は臓器の試料はバイオマーカーを発現又は生産するそれらの細胞、組織、又は臓器から得られ得る。試料は凍結されていても、新鮮でも、固定(例えばホルマリン固定)されていても、遠心分離されていても、及び/又は包埋(パラフィン包埋)などされていてもよい。試料中のマーカーの量を評価するより前に、細胞試料はもちろん様々な周知の収集後の調製及び保存技術(例えば、核酸及び/又はタンパク質の抽出、固定、保存、凍結、限外ろ過、濃縮、蒸発、遠心分離など)を受けることができる。同様に、生検も収集後の調製及び保存技術、例えば固定を受け得る。
【0053】
ここで使用される語句「患者を選択すること」は、患者の試料中の遺伝子パネルレベルに関連して生成された情報又はデータを使用して、LSD1阻害剤を含む治療法から恩恵を受ける可能性がより高い又は恩恵を受ける可能性がより低い患者を同定又は選択することを指す。使用又は生成された情報又はデータは、書面、口頭又は電子のいずれの形式であってもよい。いくつかの実施態様において、生成された情報又はデータを使用することは、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、計算装置、解析装置又はそれらの組合せによって行われる。いくつかのさらなる実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、実験又は医学の専門家によって行われる。いくつかの実施態様において、情報又はデータは、遺伝子パネルレベルと参照レベルの比較を含む。いくつかの実施態様において、情報又はデータは、患者がLSD1阻害剤を含む治療法に応答する可能性が高い又は可能性が低いことの表示を含む。
【0054】
ここで使用される語句「治療法を選択すること」は、患者の試料中の遺伝子パネルレベルに関連して生成された情報又はデータを使用して、患者のための治療法を同定又は選択することを指す。いくつかの実施態様において、治療法はLSD1阻害剤を含み得る。いくつかの実施態様において、語句「治療法を同定すること/選択すること」は、有効な量のLSD1阻害剤が投与されることの適用を必要とする患者の同定を含む。いくつかの実施態様において、治療を推奨することは、投与されるLSD1阻害剤の量が適用されることを推奨することを含む。ここで使用される語句「治療を推奨すること」は、LSD1阻害剤を含む治療法に多かれ少なかれ応答する可能性があるとして同定又は選択された患者のためにLSD1阻害剤を含む治療法を提案又は選択するために生成された情報又データを使用することも指し得る。使用又は生成された情報又はデータは、書面、口頭又は電子のいずれの形式であってもよい。いくつかの実施態様において、生成された情報又はデータを使用することは、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、計算装置、解析装置又はそれらの組合せによって行われる。いくつかのさらなる実施態様において、連絡、提示、報告、保存、送付、転送、供給、伝達、分配又はそれらの組合せは、実験又は医学の専門家によって行われる。いくつかの実施態様において、情報又はデータは、遺伝子パネルレベルと参照レベルの比較を含む。いくつかの実施態様において、情報又はデータは、LSD1阻害剤を含む治療法が患者に適していることの表示を含む。
【0055】
用語「レスポンダー遺伝子」は、ASCL1、HOXA10、NCAM1、NCAM2、NEUROD1、DDC、GRP、KRT8、ENO2、AVP、OXT、SYP、CHGA、CHGB、SOX21及びBCL2を含む遺伝子の群を指す。
【0056】
用語「ノンレスポンダー遺伝子」は、がん遺伝子MYCを指す。
【0057】
用語「固形腫瘍」は、嚢胞又は液体領域を通常は含まない組織の以上な塊に関する。固形腫瘍は、良性(がんではない)、又は悪性(がん)であり得る。異なる型の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の型に名前が付けられる。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫、及びリンパ腫である。白血病(血液のがん)は一般的に固形腫瘍を形成しない。
【0058】
治療的組合せ
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分とを含む治療的組合せを提供する。
【0059】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、ABT-199、ABT-263、ABT-737、ABT-888、ACY-1215、ベリノスタット、ベンダムスチン、BGJ398、BMS-906024、カルボプラチン、CGK733、シスプラチン、CPI-169、CPI-203、ドセタキセル、ドキソルビシン、EPZ-004777、EPZ005687、EPZ-5676、EPZ-6438、エルロチニブ、エトポシド、FLI06、フルオロウラシル、GDC-0449、ゲムシタビン、GSK126、GSK1324726A、GSK343、GSK-J1、GSK1210151A、イリノテカン、(+)-JQ1、ラパチニブ、LDE225、LY2603618、LY-3039478、メナジオン、メトトレキサート、MK-0752、MLN8237、MS436、ヌトリン-3A、オバトクラックス、OTX015、パクリタキセル、パノビノスタット、ペメトレキセド、PF-04217903、PF-3084014、SAHA、SGC0946、SNDX-275、タラデギブ(Taladegib)、テモゾロミド、トポテカン、TW-37、ビンクリスチン及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つ以上の医薬品有効成分とを含む治療的組合せを提供する。
【0060】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、BCL2阻害剤、BET阻害剤、EZH2阻害剤、DOT1L阻害剤、Chk阻害剤、DNAアルキル化剤、HDAC阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤、オーロラキナーゼ阻害剤及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分とを含む治療的組合せを提供する。
【0061】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、BCL2阻害剤、BET阻害剤、EZH2阻害剤、DOT1L阻害剤及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分とを含む治療的組合せを提供する。
【0062】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、BCL2阻害剤、BET阻害剤及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分とを含む治療的組合せを提供する。
【0063】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのBCL2阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0064】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、ABT-199、ABT-263、ABT-737、オバトクラックス、TW-37及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つのBCL2阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0065】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのBET阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0066】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、CPI-203、GSK1324726A、GSK1210151A、イリノテカン、(+)-JQ1、MS436、OTX015及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つのBET阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0067】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのEZH2阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0068】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、CPI-169、EPZ005687、EPZ-6438、GSK126、GSK343及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つのEZH2阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0069】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのDOT1L阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0070】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、EPZ-004777、EPZ-5676、SGC0946及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つのDOT1L阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0071】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのChk阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0072】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、LY2603618及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つのChk阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0073】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのDNAアルキル化剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0074】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、ベンダムスチン、カルボプラチン、シスプラチン、テモゾロミド及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つのDNAアルキル化剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0075】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのHDAC阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0076】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、ACY-1215、ベリノスタット、パノビノスタット、SAHA、SNDX-275及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つのHDAC阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0077】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのトポイソメラーゼ阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0078】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、エトポシド、イリノテカン、トポテカン及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つのトポイソメラーゼ阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0079】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つのオーロラキナーゼ阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0080】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、MLN8237及び薬学的に許容されるその塩のリストから選択される1つのオーロラキナーゼ阻害剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0081】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、1つの抗有糸分裂剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0082】
詳細には、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン及び薬学的に許容されるそれらの塩のリストから選択される1つの抗有糸分裂剤とを含む治療的組合せを提供する。
【0083】
ある実施態様において、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、トポイソメラーゼ又は薬学的に許容されるその塩と、DNAアルキル化剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0084】
ある実施態様において、本発明は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と、トポイソメラーゼ又は薬学的に許容されるその塩と、DNAアルキル化剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0085】
ある実施態様において、本発明は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩と、エトポシド又は薬学的に許容されるその塩と、カルボプラチン又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0086】
ある実施態様において、本発明は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩と、エトポシド又は薬学的に許容されるその塩と、カルボプラチン又は薬学的に許容されるその塩とを含む治療的組合せを提供する。
【0087】
本発明のある実施態様において、治療的組合せは、6.4を超える、特に8を超える、より特に10を超える、最も特に15を超えるシナジースコア(synergy score)をもたらす。
【0088】
本発明のある実施態様において、治療的組合せは、6.4を超える、特に8を超える、より特に10を超える、最も特に15を超えるシナジースコアをもたらし、ここでシナジースコアはこのように計算される:
シナジースコア=logflogfΣmax(0,Idata)(Idata-ILoewe
【0089】
LSD1阻害剤
本発明のある態様において、LSD1阻害剤はWO2011/1316972、WO20121351133及びWO2013/0573224に記載された化合物から選択される。
【0090】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は次のリストから選択される:
4-[[4-[[[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ]メチル]-1-ピペリジニル]メチル]-安息香酸、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
(R)-1-(4-(((trans)-2-フェニルシクロプロピル)アミノ)シクロヘキシル)ピロリジン-3-アミン、
4-(アミノメチル)-N-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサンアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロブタン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1,3-ジアミン、
N1-メチル-N4-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-((trans)-2-(4-ブロモフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(o-トルイル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(4-メトキシフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(2-フルオロフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(ナフタレン-2-イル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N-(4’-((trans)-2-((4-アミノシクロヘキシル)アミノ)シクロプロピル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-シアノベンゼンスルホンアミド、
N1-((trans)-2-(4-(ピリジン-3-イルメトキシ)フェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
及び薬学的に許容されるそれらの塩。
【0091】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は次のリストから選択される:
4-[[4-[[[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ]メチル]-1-ピペリジニル]メチル]-安息香酸、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
(R)-1-(4-(((trans)-2-フェニルシクロプロピル)アミノ)シクロヘキシル)ピロリジン-3-アミン、
4-(アミノメチル)-N-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサンアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロブタン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1,3-ジアミン、
N1-メチル-N4-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-((trans)-2-(4-ブロモフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(o-トルイル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(4-メトキシフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(2-フルオロフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(ナフタレン-2-イル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N-(4’-((trans)-2-((4-アミノシクロヘキシル)アミノ)シクロプロピル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-シアノベンゼンスルホンアミド、及び
N1-((trans)-2-(4-(ピリジン-3-イルメトキシ)フェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
又は薬学的に許容されるそれらの塩。
【0092】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は次のリストから選択される:
4-[[4-[[[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ]メチル]-1-ピペリジニル]メチル]-安息香酸 (trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
(R)-1-(4-(((trans)-2-フェニルシクロプロピル)アミノ)シクロヘキシル)ピロリジン-3-アミン、
4-(アミノメチル)-N-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサンアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロブタン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1,3-ジアミン、
N1-メチル-N4-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-((trans)-2-(4-ブロモフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(o-トルイル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(4-メトキシフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(2-フルオロフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(ナフタレン-2-イル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N-(4’-((trans)-2-((4-アミノシクロヘキシル)アミノ)シクロプロピル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-シアノベンゼンスルホンアミド、
N1-((trans)-2-(4-(ピリジン-3-イルメトキシ)フェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
及び薬学的に許容されるそれらの塩。
【0093】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は、GSK2879552[CAS登録番号1401966-69-5]、4-[[4-[[[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ]メチル]-1-ピペリジニル]メチル]-安息香酸としても知られる、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0094】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は次のリストから選択される:
(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
(R)-1-(4-(((trans)-2-フェニルシクロプロピル)アミノ)シクロヘキシル)ピロリジン-3-アミン、
4-(アミノメチル)-N-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサンアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロブタン-1,3-ジアミン、
N1-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1,3-ジアミン、
N1-メチル-N4-((trans)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-((trans)-2-(4-ブロモフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(o-トルイル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(4-メトキシフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(2-フルオロフェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N1-(2-(ナフタレン-2-イル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
N-(4’-((trans)-2-((4-アミノシクロヘキシル)アミノ)シクロプロピル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-シアノベンゼンスルホンアミド、
N1-((trans)-2-(4-(ピリジン-3-イルメトキシ)フェニル)シクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、
及び薬学的に許容されるそれらの塩。
【0095】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン[CAS登録番号1431304-21-0]又は薬学的に許容されるその塩ある。
【0096】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン[CAS登録番号1431304-21-0]又はその塩酸塩である。
【0097】
本発明の特定の実施態様において、LSD1阻害剤は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン ビス-ヒドロクロリド[CAS登録番号1431303-72-8]である。
【0098】
併用療法
治療的組合せは、腫瘍、がん、及び腫瘍性組織を含む、過剰増殖性疾患又は障害、並びに前がん状態及び非腫瘍性又は非悪性の過剰増殖性障害の治療のために使用され得る。ある実施態様において、本発明の組合せは、併用療法としての投薬レジメンにおいて、抗過剰増殖性特性を有する、又は過剰増殖性障害を治療するために有用である別の化合物と組み合わされる。投薬レジメンの追加の化合物は、好ましくは、互いに悪影響を与えないように、組合せへの相補的な活性を有する。このような化合物は、意図した目的に有効な量で投与され得る。ある実施態様において、治療的組合せは投与レジメンによって投与され、ここでは治療的有効量のLSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩は、1日2回から3週ごとに1回(q3wk)の範囲で投与され、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分は、1日2回から3週ごとに1回の範囲で投与される。
【0099】
併用療法は、同時又は逐次レジメンとして投与され得る。逐次的に投与されるとき、その組合せは、2回以上の投与で投与され得る。併用投与は、別個の製剤を使用する同時投与、及びどちらかの順序での連続投与を含み、その際、好ましくは、両方の(又は全ての)活性剤がそれらの生物学的活性を同時に発揮する期間がある。
【0100】
本発明のある特定の実施態様において、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩は、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分の投与の開始の後の約1~約10日の期間に投与され得る。本発明の別の特定の実施態様において、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩は、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分の投与の開始の前の約1~10日の期間に投与され得る。本発明の別の特定の実施態様において、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩の投与と、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分の投与は同日に開始する。
【0101】
本発明のある特定の実施態様において、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩の投与の開始の後の約1~約10日の期間に投与され得る。本発明の別の特定の実施態様において、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分は、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩の投与の開始の前の約1~10日の期間に投与され得る。本発明の別の特定の実施態様において、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分の投与と、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩の投与は同日に開始する。
【0102】
上記の同時に投与する薬剤の適切な投与量は、現在使用されているものであり、例えば、治療指数を増加させる、又は、毒性又は他の副反応又は結果を軽減させるなどのために、新たに同定された組合せの複合作用(相乗作用)により減じられ得る。
【0103】
抗がん療法の特定の実施態様において、治療的組合せは、外科療法及び放射線療法と組み合わされ得る。組合せの量及び投与の相対的なタイミングは、望まれる併用療法の効果を達成するために選択されるであろう。
【0104】
本発明のある特定の実施態様において、ここに記載した治療的組合せの投与より前に、SCLC細胞はLSD1阻害剤の投与を通じて感受性を高められる。
【0105】
本発明のある特定の実施態様において、ここに記載した治療的組合せの投与より前に、SCLC細胞は(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、又は薬学的に許容されるその塩の投与を通じて感受性を高められる。
【0106】
本発明のある特定の実施態様において、ここに記載した治療的組合せの投与より前に、SCLC細胞は(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、又は薬学的に許容されるその塩の、5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高められる。
【0107】
本発明のある特定の実施態様において、ここに記載した治療的組合せの投与より前に、SCLC細胞は(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、又は薬学的に許容されるその塩の、40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高められる。
【0108】
本発明のある特定の実施態様において、エトポシド、カルボプラチン及び(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、又は薬学的に許容されるそれらの塩の治療的組合せの投与より前に、SCLC細胞は(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、又は薬学的に許容されるその塩の、40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高められる。
【0109】
本発明のある特定の実施態様において、5mg per kg(mpk)の用量で毎日5日間(qdx5)のエトポシド、100mpkの用量で毎週3週間(qwkx3)のカルボプラチン、及び20upkの用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、又は薬学的に許容されるその塩を含む治療的組合せの投与より前に、SCLC細胞は(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン、又は薬学的に許容されるその塩の、40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高められる。
【0110】
本発明のある特定の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のための方法であって、LSD1阻害剤の投与を通じて感受性を高めることに続いて、ここに記載された有効な量の治療的組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0111】
本発明のある特定の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のための方法であって、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩の投与を通じて感受性を高めることに続いて、ここに記載された有効な量の治療的組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0112】
本発明のある特定の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のための方法であって、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩の5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高めることに続いて、ここに記載された有効な量の治療的組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0113】
本発明のある特定の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のための方法であって、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩の40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高めることに続いて、ここに記載された有効な量の治療的組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0114】
本発明のある特定の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のための方法であって、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩の40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高めることに続いて、エトポシド、カルボプラチン及び(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンを含む有効な量の治療的組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0115】
本発明のある特定の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のための方法であって、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン又は薬学的に許容されるその塩の40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の投与を通じて感受性を高めることに続いて、5mg per kg(mpk)の用量で毎日5日間(qdx5)のエトポシド、100mpkの用量で毎週3週間(qwkx3)のカルボプラチン及び20upkの用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)の3週間の(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンを含む有効な量の治療的組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0116】
医薬組成物
別の実施態様は、ここに記載された治療的組合せ及び薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物又は医薬を提供する。
【0117】
組成物は、医療実施基準(good medical practice)にかなう方式で、製剤化され、用量化され、投与される。この観点において考慮すべき要因は、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程、及び医師に知られる他の要因を包含する。
【0118】
ここに記載された治療的組合せは、経口、局所(口腔及び舌下を含む)、直腸内、膣内、経皮、非経口、皮下、腹腔内、肺内、皮内、髄腔内及び硬膜外及び鼻腔内、並びに、必要に応じて局所治療、病巣内投与を含む任意の適切な方法により投与されうる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。
【0119】
ここに記載された治療的組合せは、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、液剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、スプレー剤、坐剤、ゲル剤、乳剤、貼付剤などの簡便な投与剤形で投与され得る。そのような組成物は、例えば、希釈剤、担体、pH調節剤、保存剤、溶解剤、安定剤、湿潤剤、甘味剤、着色剤、香料、浸透圧を変更するための塩、緩衝剤、マスキング剤、抗酸化剤、及びさらなる活性剤などの、医薬製剤における通常の成分を含んでいてもよい。それらは他の治療上価値のある物質もさらに含むことができる。
【0120】
典型的な製剤は、ここに記載された治療的組合せと、薬学的に許容される添加剤とを混合することによって調製される。適切な添加剤は当業者に周知であり、例えば、Ansel H.C. et al.103;Rowe R.C.104及びGennaro A.R. et al.105に詳細が記載される。製剤は、薬物(すなわち、本発明の化合物又はその薬学的組成物)の美しい見栄え又は医薬製品(すなわち、医薬)の製造における補助を提供するために、1つ以上の緩衝剤、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動化剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、香料、香味料、希釈剤及び他の既知の添加剤も含みうる。
【0121】
ここに記載された治療的組合せが投与され得る用量は、広い制限の中で変わり得るし、もちろん、各特定の場合における個々の要件に合わせられる。
【0122】
適切な経口剤形の一例は、約90~30mgの無水ラクトース、約5~40mgのクロスカルメロース、約5~30mgのポリビニルピロリドン(PVP)K30、及び約1~10mgのステアリン酸マグネシウムを配合する、約0.01mg~10mgのここに記載された治療的組合せを含む錠剤である。粉末成分は最初に混合され、その後PVPの溶液と混合される。得られた組成物は、乾燥され、造粒され、ステアリン酸マグネシウムと混合され、通常の装置を使用して錠剤の形態に圧縮され得る。
【0123】
エアロゾル剤形の一例は、ここに記載された治療的組合せを、例えば、0.1~100mgを、適切な緩衝液、例えばリン酸緩衝液に、必要に応じて、等張化剤、例えば塩化ナトリウムなどの塩を加えて、溶解することによって調製され得る。
【0124】
別の実施態様は、ここに記載された治療的組合せ及び1つ以上の薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物に関する。
【0125】
製品
本発明の別の実施態様において、上記の疾患及び障害の治療に有用な組合せを含有する製品、又は「キット」が提供される。
【0126】
一実施態様において、製品は、ここに記載された容器及び治療的組合せを含む。
【0127】
本発明の一実施態様は、腫瘍性疾患の治療において有用なここに記載された治療的組合せを含む製品を提供する。
【0128】
キットは、容器上に又は容器に付属する、ラベル又は添付文書をさらに含んでもよい。用語「添付文書」は、治療製品の商品パッケージに通例含まれる、治療製品の効能効果、用法、用量、投与、禁忌、及び/又は使用に関する警告についての情報を含む説明書のことを言及するのに使用される。適切な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、病態を治療するのに有効な、組合せ又はその製剤を保持してもよく、無菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液のバッグ又はバイアルとすることができる)を有してもよい。ラベル又は添付文書は、組成物が例えばがんなどの選択した状態を治療するために使用されることを示す。一実施態様において、ラベル又は添付文書は、組合せを含む組成物が、異常な細胞増殖から生じる障害を治療するために使用され得ることを示す。ラベル又は添付文書は、この組成物が、他の障害を治療するために使用され得ることを示してもよい。代替的に、又は追加的に、製品は、薬学的に許容される緩衝剤、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びブドウ糖液などを含む第二の容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0129】
キットは、組合せ、及び、存在する場合、第2の医薬製剤、の投与についての説明書をさらに含んでもよい。例えば、キットが、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩を含む第1の組成物、及び表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分を含む第2の医薬製剤を含む場合、そのキットは、必要とする患者への第1及び第2の医薬組成物の、同時、逐次又は別個の投与についての説明書をさらに含んでもよい。
【0130】
別の実施態様において、キットは、例えば錠剤又はカプセル剤などの、組合せの固体経口形態の送達に適している。このようなキットは、好ましくは多数の単位用量を含む。このようなキットは、その意図された使用の順序向けの投与量を記したカードを含むことができる。このようなキットの例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装産業において周知であり、医薬単位剤形を包装するために広く使用される。必要に応じて、記憶の助けとなるものが、例えば、用量が投与され得る治療スケジュール中の日にちを示す、数字、文字若しくは他のマークの形で、又はカレンダー挿入物とともに、提供され得る。
【0131】
一実施態様によれば、キットは(a)その中にLSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩が入った第1の容器;(b)表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分が入った第2の容器及び(c)その中に第3の医薬組成物が入った第3の容器であって、第3の医薬製剤は、抗過剰増殖性活性を有する別の化合物を含む。代替的に、又は追加的に、キットは、薬学的に許容される緩衝剤、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びブドウ糖液などを含む別の容器を含んでもよい。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0132】
キットが、LSD1阻害剤又は薬学的に許容されるその塩を有する第1の容器と、表2の化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される1つ以上の医薬品有効成分との組成物を含む場合、キットは、例えば分割ボトル又は分割ホイルポケットなどの、別個の組成物を収容するための容器を含んでもよいが、別個の組成物は、単一の、分割されていない容器に収容されてもよい。一般的に、キットは別個の成分の投与のための説明書を含む。キットの形態は、別個の成分が、好ましくは異なる剤形(例えば、経口及び非経口)で投与されるとき、異なる投与間隔で投与されるとき、又は組合せの個々の成分の用量調整が処方医により望まれるときに、特に有利である。
【0133】
医学的使用
別の実施態様は、治療活性物質としての使用のためのここに記載された治療的組合せに関する。
【0134】
別の実施態様は、腫瘍性疾患における使用のためのここに記載された治療的組合せに関する。
【0135】
別の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のための方法であって、ここに記載された治療的組合せの有効な量をヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0136】
別の実施態様は、腫瘍性疾患の治療のためのここに記載された治療的組合せの使用に関する。
【0137】
別の実施態様は、腫瘍性疾患の治療において有用な医薬の調製のためのここに記載された治療的組合せの使用に関する。
【0138】
本発明の特定の実施態様において、ここに記載された治療的組合せは、それを必要とする患者に経口で、例えば経口液剤などで投与される。
【0139】
本発明の特定の実施態様において、ここに記載された治療的組合せによって潜在的に治療可能な腫瘍性疾患はがんであり、特に、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、大腸がん(すなわち、結腸がん及び直腸がんを含む)、膵臓がん、肝臓がん、脳腫瘍、神経内分泌がん、肺がん、腎臓がん、造血器悪性腫瘍、メラノーマ及び肉腫からなる群から選択されるがんである。
【0140】
本発明の特定の実施態様において、ここに記載された治療的組合せによって潜在的に治療可能ながんは、造血器悪性腫瘍、神経内分泌がん、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、大腸がん、メラノーマ及び肺がんからなる群から選択される。
【0141】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、血液がん又は肺がん、より特に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、小細胞肺がん(SCLC)及び非小細胞肺がん(NSCLC)からなる群から選択されるがんである。
【0142】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、小細胞肺がん(SCLC)及び非小細胞肺がん(NSCLC)からなる群から選択される血液がん又は肺がんである。
【0143】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、急性骨髄性白血病(AML)、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺がん(SCLC)、甲状腺がん、及びメラノーマからなる群から選択されるがんである。
【0144】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、急性骨髄性白血病(AML)、甲状腺がん、メラノーマ、又は小細胞肺がん(SCLC)からなる群から選択されるがんである。
【0145】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、急性骨髄性白血病(AML)及び小細胞肺がん(SCLC)からなる群から選択されるがんである。
【0146】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、神経内分泌がんである。
【0147】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、固形腫瘍である。
【0148】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、肉腫、癌腫、及びリンパ腫から選択される悪性固形腫瘍である。
【0149】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、肺がんである。
【0150】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、小細胞肺がん(SCLC)である。
【0151】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、小細胞肺がん(SCLC)であって、SCLC細胞はLSD1阻害剤に基づいた治療法に感受性が高い。
【0152】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、小細胞肺がん(SCLC)であって、SCLC細胞はLSD1阻害剤に基づいた治療法に感受性が高いものであって、LSD1阻害剤に基づいた治療法に対する感受性は、ここに記載されたような予測mRNA発現レベルに基づいて評価される。
【0153】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、小細胞肺がん(SCLC)であって、SCLC細胞はLSD1阻害剤に基づいた治療法に感受性が高いものであって、LSD1阻害剤に基づいた治療法に対する感受性は:
a)患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定することであって、遺伝子パネルはレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子を含むこと、
b)測定された遺伝子パネルのレベルからのシグネチャースコアを計算すること、
c)計算されたシグネチャースコアを閾値レベルと比較すること、及び
d)シグネチャースコアが閾値レベルを超えるとき、LSD1阻害剤を含む治療法により応答しやすい患者を同定すること
を含むin vitroの方法を使用して評価される。
【0154】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、小細胞肺がん(SCLC)であって、SCLC細胞はLSD1阻害剤を用いた単剤治療に応答を示す。
【0155】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、小細胞肺がん(SCLC)であって、SCLC細胞はLSD1阻害剤を用いた単剤治療に応答を示すものであって、LSD1阻害剤を用いた単剤治療への応答は、ここに記載されたような予測mRNA発現レベルに基づいて評価される。
【0156】
本発明の特定の実施態様において、腫瘍性疾患は、小細胞肺がん(SCLC)であって、SCLC細胞はLSD1阻害剤を用いた単剤治療に応答を示すものであって、LSD1阻害剤を用いた単剤治療への応答は:
a)患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定することであって、遺伝子パネルはレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子を含むこと、
b)測定された遺伝子パネルのレベルからシグネチャースコアを計算すること、
c)計算されたシグネチャースコアを閾値レベルと比較すること、及び
d)シグネチャースコアが閾値レベルを超えるとき、LSD1阻害剤を含む治療法により応答しやすい患者を同定すること
を含むin vitroの方法を使用して評価される。
【0157】
遺伝子パネル及びmRNAシグネチャー
表3は本発明において使用された遺伝子の説明を含むリストを提供する。
表3.本発明において使用された遺伝子の説明 (*http://www.ensembl.org/, Cunningham F. et al.106).
【0158】
本発明は、in vitroのデータに基づいたそのmRNA発現シグネチャーが、治療レジメンを含むLSD1阻害剤に最も応答しやすい患者を同定するのに役立つ可能性がある遺伝子パネル(「マルチ遺伝子パネル」、「遺伝子発現パネル」又は「遺伝子のパネル」とも呼ばれる)を同定する。リストされた遺伝子は、「バリアント」フェノタイプの細胞株を除いたSCLCクラシックフェノタイプ(一般的に神経内分泌起原の)の特徴である。これらの遺伝子の発現は、追加の腫瘍の設定おいて他の組織学的サブタイプのレスポンダーの患者を同定することにおける予測利益を有するかもしれない。
【0159】
mRNAシグネチャーは、レスポンダー遺伝子:ASCL1、HOXA10、NCAM1、NCAM2、NEUROD、DDC、GRP、KRT8、ENO2、AVP、OXT、SYP、CHGA、CHGB、SOX21及びBCL2における高発現によって特徴付けられることが見出された。
【0160】
ノンレスポンダーラインはがん遺伝子MYCの高いレベルによって特徴付けられることがさらに見出された。
【0161】
ここにリストされたレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子のベースラインの発現レベルは、単独で又は互いの組合せにおいて、細胞株と治療法に抵抗性である患者由来の臨床検体とを区別する複合スコアをもたらす可能性があり、LSD1阻害剤を用いる治療法への感受性(応答性)があるものを同定する。
【0162】
このようにレスポンダー遺伝子のより高いレベル及び/又はノンレスポンダー遺伝子のより低い発現レベルは、LSD1阻害剤を用いる治療法へ応答を示す。いくつかのレスポンダー遺伝子及び/又はノンレスポンダー遺伝子の発現レベルを組み合わせることは、単一の遺伝子発現レベルからの読出しと比較して応答性に関する信頼性が改善されたマルチ遺伝子シグネチャーを提供するかもしれない。
【0163】
本発明は、LSD1阻害剤に関連してLSD1阻害剤への応答を同定するためのmRNAを同定する。
【0164】
本発明は、LSD1阻害剤に基づいた治療法への感受性を同定するための方法にも関する。
【0165】
本発明は、患者がLSD1阻害剤に基づいた治療法で治療されるときの、患者の腫瘍性疾患への応答を決定するための遺伝子パネルの使用にも関する。
【0166】
本発明は、LSD1阻害剤を用いた患者における腫瘍性疾患の治療をモニターするためのmRNA発現も同定する。
【0167】
本発明は、腫瘍性疾患に対するLSD1阻害剤に基づいた治療法の効果を決定することにおける予測mRNAの値も提供する。
【0168】
本発明の一実施態様は、腫瘍性疾患を有する、LSD1阻害剤を含む治療法に応答しやすい患者を同定するin vitroの方法、
a)患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定することであって、遺伝子パネルはレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子を含むこと、
b)a)で測定された遺伝子パネルのレベルを参照レベルと比較すること、及び
c)a)で測定された患者からの試料中の遺伝子パネルのレスポンダー遺伝子のレベルが参照レベルより高いとき、及び/又はa)で測定された患者からの試料中の遺伝子パネルのノンレスポンダー遺伝子のレベルが参照レベルより低いとき、LSD1阻害剤を含む治療法により応答しやすい患者を同定すること
を含む方法を提供する。
【0169】
本発明の一実施態様は、腫瘍性疾患を有する、LSD1阻害剤を含む治療法に応答しやすい患者を同定するin vitroの方法、
a)患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定することであって、遺伝子パネルはレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子を含むこと、
b)測定された遺伝子パネルのレベルからシグネチャースコアを計算すること、
c)計算されたシグネチャースコアを閾値レベルと比較すること、及び
d)シグネチャースコアが閾値レベルを超えるとき、LSD1阻害剤を含む治療法により応答しやすい患者を同定すること
を含む方法を提供する。
【0170】
本発明の別の実施態様は、腫瘍性疾患を有する、LSD1阻害剤を含む治療法に応答しやすい患者を同定するin vitroの方法、
a)患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定することであって、遺伝子パネルはレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子を含むこと、
b)a)で測定された遺伝子パネルのレベルを参照レベルと比較すること、
c)a)で測定された患者からの試料中の遺伝子パネルのレスポンダー遺伝子のレベルが参照レベルより高いとき、及び/又はa)で測定された患者からの試料中の遺伝子パネルのノンレスポンダー遺伝子のレベルが参照レベルより低いとき、LSD1阻害剤を含む治療法により応答しやすい患者を同定すること、及び
d)有効な量のLSD1阻害剤を投与すること
を含む方法を提供する。
【0171】
本発明の一実施態様は、腫瘍性疾患を有する、LSD1阻害剤を含む治療法に応答しやすい患者を同定するin vitroの方法、
a)患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定することであって、遺伝子パネルはレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子を含むこと、
b)測定された遺伝子パネルのレベルからシグネチャースコアを計算すること、
c)計算されたシグネチャースコアを閾値レベルと比較すること、
d)シグネチャースコアが閾値レベルを超えるとき、LSD1阻害剤を含む治療法により応答しやすい患者を同定すること、及び
e)有効な量のLSD1阻害剤を投与すること
を含む方法を提供する。
【0172】
本発明の別の実施態様は、腫瘍性疾患を有する、LSD1阻害剤を含む治療法に応答しやすい患者を同定するin vitroの方法、
a)治療法の開始より前に患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定することであって、遺伝子パネルはレスポンダー遺伝子及びノンレスポンダー遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子を含むこと、
b)a)で測定された遺伝子パネルのレベルを用いて治療法の開始より前に患者のシグネチャースコアを計算すること、
c)治療法の開始より後に患者からの試料中の遺伝子パネルのレベルを測定すること、
d)c)で測定された遺伝子パネルのレベルを用いて治療法の開始より後に患者のシグネチャースコアを計算すること、
e)治療法の開始より後にd)で得られた患者のシグネチャースコアと、治療法の開始より前にb)で得られた患者のシグネチャースコアを比較すること、及び
f)治療法の開始より後にd)で得られた患者のシグネチャースコアが、治療法の開始より前にb)で得られた患者のシグネチャースコアより高いとき、LSD1阻害剤を含む治療法により応答する患者を同定すること
を含む方法を提供する。
【0173】
本出願において、用語「読出しレベル(readout levels)」は、例えば、正規化リードカウント及びRPKM(Reads per Kilobase of Million mapped reads);RT-qPCR;又はマイクロアレイなどのRNAシーケンシング由来の発現レベルなどの、mRNA発現測定の任意の形式でありうる値を意味する。
【0174】
本出願において、用語「正規化リードカウント(normalized read count)」は、RNAシーケンシングの実験から直接得られ、実験を通して比較できるようにするために正規化されるリードカウントを意味する。
【0175】
本出願において、用語「正規化発現レベル(normalized expression level)」は、特定の種類の発現測定において得られ、実験を通して比較できるようにするために正規化される値を意味する(例えば、マイクロアレイからの正規化発現、RNAシーケンシングからの正規化発現)。
【0176】
本発明の一態様において、正規化発現レベルは正規化リードカウントである。
【0177】
本発明の一態様において、測定されたレベルはmRNA発現レベルである。
【0178】
本発明の一態様において、測定されたレベルは、RNAシーケンシング、RT-qPCR、又はマイクロアレイ由来のmRNA発現レベルである。
【0179】
本発明の一態様において、参照レベルは、同じ腫瘍性疾患を有する患者からの標準値である。
【0180】
本発明の一態様において、参照レベルは、同じ腫瘍性疾患を有する患者集団において測定されたmRNA発現レベルの中央値である。
【0181】
本発明の一態様において、遺伝子パネルのある遺伝子についての参照レベルは次のとおりである(正規化リードカウントとして示される):ASCL1(4515.83);DDC(2005.02);GRP(426.01);HOXA10(10.04)。
【0182】
上で報告された参照レベルは、2つの小細胞肺がんの細胞株CとCの間の対応する遺伝子についてのより低い正規化リードカウントを選択することにより得られたものであって、Cは選択された遺伝子の最も低い発現を有する感受性の細胞株であり、Cは選択された遺伝子の最も高い発現を有する抵抗性の細胞株である。
【0183】
ここで使用されるシグネチャースコアは、レスポンダー遺伝子のアップレギュレーション及びノンレスポンダー遺伝子のダウンレギュレーション又はコピー数多型(copy number variation)を示す値から構成される、遺伝子に基づくアルゴリズム由来のスコア(マルチ遺伝子シグネチャー)である。
【0184】
閾値レベルより高いシグネチャースコアは、LSD1阻害剤を含む治療法への応答を予測する。応答を予測するためのより高い閾値レベルがシグネチャースコアについて選択されると、より高い特異性が得られる。応答を予測するためのより低い閾値レベルがシグネチャースコアについて選択されると、より高い感度が得られる。
【0185】
本発明の一実施態様において、閾値レベルは0.4~0.6のシグネチャースコア1に、特に0.5±20%、最も特に0.5に対応するものであって、シグネチャースコアは第二主成分を用いる部分的最小二乗回帰(PLS)分析によって得られる:
シグネチャースコア 1=
0.0900693
+(ASCL1の正規化発現レベル)×0.00000211296
+(DDCの正規化発現レベル)×0.000000536658
+(GRPの正規化発現レベル)×0.00000297345
+(HOXA10の正規化発現レベル)×0.000234721
-(MYCのコピー数多型)×0.0537056。
【0186】
本発明の一実施態様において、閾値レベルは0.4~0.6のシグネチャースコア2に、特に0.5±20%、最も特に0.5に対応するものであって、シグネチャースコアは第一主成分を用いる部分的最小二乗回帰(PLS)分析によって得られる:
シグネチャースコア 2=
0.483918
+(ASCL1の正規化発現レベル)×0.00000188066
+(DDCの正規化発現レベル)×0.00000188066
+(GRPの正規化発現レベル)×0.00000352033
-(MYCのコピー数多型)×0.0407898。
【0187】
本発明の一実施態様において、閾値レベルは0.4~0.6のシグネチャースコア3に、特に0.5±20%、最も特に0.5に対応するものであって、シグネチャースコアは第一主成分を用いる部分的最小二乗回帰(PLS)分析によって得られる:
シグネチャースコア 3=
0.393569
+(ASCL1の正規化発現レベル)×0.00000182731
+(DDCの正規化発現レベル)×0.00000189664
+(正規化発現レベル)×0.00000342046。
【0188】
閾値レベルより高いシグネチャースコアはLSD1阻害剤を用いる治療への応答の高い可能性を示す一方で、前記レベルより低いシグネチャースコアはそのような治療への応答の低い可能性を示す。より高いスコアはより高いASCL1、DDC、GRP及びHOXA10のmRNA発現、並びにMYCにおけるより低いコピー数多型に関連する。
【0189】
本発明の一実施態様において、参照レベルはシグネチャースコアの閾値レベルである。
【0190】
本発明の一実施態様において、LSD1阻害剤を含む治療法への応答を予測するためのシグネチャースコアは次のステップを行うことにより得られ得る:
a.m遺伝子を含む遺伝子パネルを選択する、ここでmは1より大きい整数で、表9に開示された遺伝子の中から選択され、HOXA10及びMYCであってもよい。
b.特に、例えば表6に記載したような、小細胞肺がん(SCLC)などの神経内分泌腫瘍を起原とする、1つ以上の感受性のがん細胞株のセット及び1つ以上の抵抗性のがん細胞株のセットを選択する。
c.nxmのマトリックスを生成する、ここでmは上のように定義され、nは選択された小細胞肺がん細胞株の全数である。マトリックスは選択された遺伝子の発現レベル(及び/又はMYCの場合におけるコピー数多型)を含む。遺伝子発現レベルはRPKM又は正規化リードカウントとして報告され得る。
d.表6に定義されたように、各細胞株が感受性(sensitive)(「S」)又は抵抗性(resistant)(「R」)であること記載するサイズnの応答ベクトルを生成する。あるいは、このベクトルは各細胞株が「クラシック」(「C」)又は「バリアント」(「V」)サブタイプであることを記載し得る。
e.上のポイントcに記載したマトリックスの分類のための機械学習アルゴリズムを適用する。そのような機械学習アルゴリズムの例は、決定木(decision trees)、サポートベクターマシン(support-vector machines)、ニューラルネットワーク(neural networks)、近傍解析(nearest neighbor analysis)、単純ベイズ(naive Bayes)、ランダムフォレスト(random forest)、部分的最小二乗回帰(partial least square)などを含むがこれらに限定されない。
f.モデルの予測力を最適化するために、その解析に含まれる細胞株及び/又はその解析に含まれない細胞株を用いて適切なクロスバリデーションを行う。
g.シグネチャースコアy(y=f(x))を得るために、機械学習アルゴリズムにとって適切な、式f(x)を選択する。式f(x)は、機械学習アルゴリズムによって計算されるa1 … apの係数(ここでpは与えられたアルゴリズムによって選択される係数の数である)及び選択された遺伝子の発現レベル(x1 … xm)のセットを含む。
h.シグネチャースコアがLSD1阻害療法への感受性又は抵抗性を予測するかどうかを決定するために、機械学習法によって提案されるように、閾値を選択する。
【0191】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、ASCL1、MYC、HOXA10、DDC、GRP、NCAM1、NCAM2、NEUROD1、KRT8、ENO2、AVP、OXT、SYP、CHGA、CHGB、SOX21及びBCL2の群から選択される1つ以上の遺伝子を含む。
【0192】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、ASCL1、MYC、HOXA10、DDC、GRP、NCAM1、NCAM2、NEUROD1、SOX21及びBCL2の群から選択される1つ以上の遺伝子を含む。
【0193】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、ASCL1、MYC、HOXA10、DDC、GRP、NCAM1、NCAM2、NEUROD1、SOX21及びBCL2の群から選択される2つ、3つ、4つ又は5つの遺伝子を含む。
【0194】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、ASCL1、MYC、HOXA10、DDC及びGRPの群から選択される1つ以上の遺伝子を含む。
【0195】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、ASCL1、MYC、HOXA10、DDC及びGRPの群から選択される2つ、3つ、4つ又は5つの遺伝子を含む。
【0196】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、ASCL1、MYC及びHOXA10の群から選択される1つ以上の遺伝子を含む。
【0197】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルはASCL1遺伝子を含む。
【0198】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルはMYC遺伝子を含む。
【0199】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルはHOXA10遺伝子を含む。
【0200】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルはDDC遺伝子を含む。
【0201】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルはGRP遺伝子を含む。
【0202】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの遺伝子からなる。
【0203】
本発明の特定の実施態様において、遺伝子パネルは、2つ、3つ又は4つの遺伝子からなる。
【0204】
本発明の特定の実施態様において、レスポンダー遺伝子は、ASCL1、HOXA10、DDC、GRP、NCAM1、NCAM2、NEUROD1、KTR8、ENO2、AVP、OXT、SYP、CHGA、CHGB、SOX21及びBCL2の群から選択される。
【0205】
本発明の特定の実施態様において、レスポンダー遺伝子はMYCから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0206】
図1A】7日間処理されたSCLC細胞株のパネルにおけるLSD1阻害剤(すなわち、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンのin vitroの差次的活性である。NCI-H1876(図1A)及びNCI-H510(図1B)などの「クラシック」神経内分泌細胞株は高いレベルの感受性を維持した。
図1B】7日間処理されたSCLC細胞株のパネルにおけるLSD1阻害剤(すなわち、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンのin vitroの差次的活性である。NCI-H1876(図1A)及びNCI-H510(図1B)などの「クラシック」神経内分泌細胞株は高いレベルの感受性を維持した。
図2A】LSD1阻害剤(すなわち、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンは、in vivo(図2A)及びマウスのin vivo(図2B)で、SCLC標準治療(SOC)エトポシド及びカルボプラチンの効力及び持続期間を改善した。
図2B】LSD1阻害剤(すなわち、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンは、in vivo(図2A)及びマウスのin vivo(図2B)で、SCLC標準治療(SOC)エトポシド及びカルボプラチンの効力及び持続期間を改善した。
図3】実施例5による、主成分1(t[1],x軸)及び主成分2(t[2],y軸)についての主成分解析スコアプロットはクラシック細胞株(C,黒色)をバリアント細胞株(V,灰色)から分離させる。
図4】表8、表6及びMYCを含む実施例6の遺伝子パネルについてのmRNA発現(zスコアとして)を示すヒートマップである。これらの遺伝子は、表6の19の細胞株におけるLSD1阻害療法への応答を最もよく予測する。より高いzスコアはよりよい感受性と相関する。
図5】表6の19の細胞株における実施例7の神経内分泌遺伝子についてのmRNA発現(zスコアとして)を示すヒートマップである。感受性の細胞株は、そのような神経内分泌マーカーのより強い発現(より高いzスコア)を表す。
図6】実施例8による、第二主成分を用いたPLS解析によって得られたシグネチャースコアである。スコア_1>0.5を有する細胞株はLSD1阻害療法に、より感受性である可能性が高い。
図7】実施例8による、第一主成分を用いたPLS解析によって得られたシグネチャースコアである。スコア_2>0.5を有する細胞株はLSD1阻害療法に、より感受性である可能性が高い。
図8】実施例8による、第一主成分を用いたPLS解析によって得られたシグネチャースコアである。スコア_3>0.45を有する細胞株はLSD1阻害療法に、より感受性である可能性が高い。
図9】クラシック(c)細胞株H-510Aにおける、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンのin vivo腫瘍増殖阻害である。
図10-1】SCLC患者試料におけるmRNA発現(zスコアとして)パターンを示すヒートマップである。
図10-2】SCLC患者試料におけるmRNA発現(zスコアとして)パターンを示すヒートマップである。
【実施例
【0207】
次の実施例1~9は発明の説明のために提供される。それらは発明の範囲を限定するものとしてみなすべきではなく、単にその代表例である。
【0208】
方法
発現データ
発現データは、Illumina,Inc.(San Diego,CA)の全トランスクリプトームRNAシーケンシング(RNA-seq)から得られた。Illumina HiSeqマシンは、50又は100bp長のリードにおいて未加工のベースコールを生成し、これらはいくつかのデータ解析ステップに供される。RNA-seqは、試料ごとに4000~5000万リードで行われる。この数字は、低発現遺伝子を検出する比較的高い感度を提供すると共に、費用効果が試料の多重化を可能にする。RNAは、polyA TruSeq Illuminaキットによる標準キットとRNAライブラリーによって調製される。一つの細胞株につき100ngのmRNAが、各RNA-seq反応のために使用される。複数の品質管理手順が、各試料のRNA-seqデータに適用される。Illumina HiSeqソフトウェアは、各レーンにローディングされるクラスター(DNA断片)の総数、シーケンシングクオリティフィルター通過パーセント(オーバーローディング及びシーケンシングケミストリーに起因するエラーを同定する)、各シーケンスリードの各ベースのphredクオリティスコア、各シーケンスサイクルの全体の平均phredスコア、及び全体のパーセントエラー(参照ゲノムに対するアラインメントに基づく)を報告する。各RNA-seq試料について、ミトコンドリアRNA及びリボソームRNAを含むリードのパーセンテージが計算される。FASTQCパッケージが、追加のQCメトリクス(ベース分布(base distribution)、シーケンス重複(sequence duplication)、重複数の多いシーケンス(overre resented sequences)及びエンリッチドkmers(enriched kmers))並びに図式的要約を提供するために使用される。未加工のリードは、GSNAP及びRNASeqデータにとっての推奨オプションを用いて、ヒトゲノム(hg19)に対して並べられた。ゲノムシーケンスに加えて、GSNAPはEnsembl v73に基づくヒトスプライスジャンクション及びトランスクリプトのデータベースを与えられる。結果として生じるSAMファイルはその後Samtoolsを用いて分類されたBAMファイルに変換される。遺伝子発現値は、次のRPKM値(Mortazavi et al.107)及びリードカウントの両方として計算される。正規化リードカウントはRパッケージのDESeq2を用いて得られた。
【0209】
コピー数多型(CNV)
コピー数多型データを得るために、ゲノムDNAは抽出され、Roche NimbleGen(Madison,WI)により標準プロトコールを用いてアレイCGH解析が行われる。正規化シグナル強度及びコピー数変化はsegMNTアルゴリズムを用いて得られた。CGHマイクロアレイは、シリカ表面に光指向性の光化学(Selzer et al.108)を用いて直接合成される等温の、45-~85-merのオリゴヌクレオチドプローブを含む。ゲノムDNA試料はランダムに、より低い分子量種に断片化され、蛍光色素を用いて別個にラベルされる。
【0210】
主成分解析
主成分解析はSimca v14(Umetrics AB,Umea,Sweden)を用いて行われた。
【0211】
表9におけるデータを生成するために使用されたディファレンシャル遺伝子解析は、RパッケージのDESeq2を用いて19細胞株についての未加工のリードカウントから開始して行われた。
【0212】
細胞株のヒートマップ
色分けされた遺伝子発現レベルを視覚化するために、細胞株のヒートマップ(図4及び5)は、GenePattern v3.9.4(Reich M. et al.109)を用いて生成された。GenePatternは正規化リードカウント(表10で報告される)プラス1の対数の入力を取り込み、試験された細胞株にわたって与えられた遺伝子の全ての発現レベルについてzスコアを計算することからなる列ベース(row-based)の正規化を適用する。分布の平均に対応する0のzスコア、及び正又は負の値は、それぞれ平均より高い又は低い遺伝子発現レベルを表す。カラーマッピングはzスコアを-1.5~+1.5の範囲でキャップをつけた、すなわち、+1.5より高いzスコアは黒色で示され、-1.5より低いzスコアは白色で示される。中間値は異なる灰色の陰影で示される。Gene Patternは、遺伝子発現プロファイルに基づいて細胞株をグループ化し、分類するために、階層的クラスタリングを行う。
【0213】
実施例1 SCLC細胞株におけるLSD1阻害剤の特異的な活性
SCLC細胞株における(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンの差次的な活性は図1A-1Bに提示される。(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンの活性はin vitroで7日間処理されたSCLC細胞株のパネルで評価された。NCI-H1876(図1A)及びNCI-H510(図1B)などの、「クラシック」神経内分泌系統として特徴付けられた細胞株は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンに対する高レベルの感受性を維持した。
【0214】
化合物効力決定は、示された濃度で15段階の希釈液(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンの存在下で、加湿インキュベーター内で、小細胞肺がん細胞株を37℃、5%CO、7日間培養することによって行われた。細胞株のそれぞれは、ATCCによって推奨される別個に最適化された培地又は細胞株源において増殖され、試験された。
【0215】
細胞は液体窒素保存状態から解凍された。細胞が増殖され、期待される倍加時間で分裂されると、スクリーニングは開始された。細胞は黒色の384ウェル組織培養処理プレートでの増殖培地中でウェルごとに500細胞で播種された(アナライザーに記載される場合を除く)。細胞は遠心分離を経てアッセイプレート中で平衡化され、投与モジュールに取り付けられたインキュベーター内に、処理の前に37℃で24時間置かれた。処理の時間に、(処理を受けていなかった)アッセイプレートのセットは収集されて、ATPLite(Perkin Elmer)を加えることによってATPレベルが測定された。これらのTゼロ(T0)プレートはEnvision Plate Readersの超高感度発光を用いて読まれた。処理されたアッセイプレートは(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンとともに168時間インキュベートされた。168時間後に、プレートはATPLiteを用いたエンドポイント解析のために展開された。全てのデータポイントは自動化プロセス;品質管理された;を経て収集され、Horizon CombinatoRx proprietary softwareを用いて解析された。アッセイプレートは次の品質管理基準を通過した場合に受け入れられた:相対ルシフェラーゼ値は実験全体を通じて一貫しており、z因子スコアは0.6より大きく、未処理/ビヒクル対照はプレート上で一貫して挙動した。
【0216】
Horizon Discoveryは、細胞生存の尺度として増殖阻害(Growth Inhibition)(GI)を利用する。ビヒクルの細胞生存は投与の時間(T0)及び168時間後(T168)に測定された。0%のGIリーディングは増殖阻害を表さない-(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンで処理された細胞及びT168ビヒクルシグナルは一致した。GI 100%は完全な増殖阻害を表す-化合物で処理された細胞及びT0ビヒクルシグナルは一致した。GI 100%のウェル内で投与期間中に細胞数は増加しておらず、この効果レベルでプラトーに達する化合物についての細胞増殖抑制効果を示唆する可能性がある。GI 200%は培養細胞における全ての細胞の完全な死を表す。GI 200%の活性プラトーに達する化合物は細胞傷害性と考えられた。Horizon CombinatoRxは次の試験及び方程式を適用することによりGIを計算する。
ここで、Tは試験品のシグナル尺度、Vはビヒクル処理されたコントロール尺度、Voは0時間におけるビヒクルコントロール尺度である。この式はNational Cancer InstituteのNCI-60ハイスループットスクリーンにおいて使用される増殖阻害計算に由来した。
【0217】
実施例2 他の医薬品有効成分と組み合わされたLSD1阻害剤の相乗効果
表4は相乗スコア、相乗効果の強さを示す値、のヒートマップを提供する。6.4より大きい相乗スコアは有意なものとみなされ、さらなる検証を是認された。(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン(NCI-H187、NCI-H1417、NCI-H1876、NCI-H510)への特定の単剤応答を示した細胞株は、HDAC及びBET阻害剤、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤、オーロラキナーゼ阻害剤、BCL2ファミリー阻害剤及びChk阻害剤を含む、広い範囲の薬物クラスの効果への感受性を高められた。同様のレベルの相乗効果は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンに感受性でない細胞株(NSCLC細胞株、SCLC細胞株NCI-H1048、NCI-H446及びSBC-5)において、一様に観察されなかった。これらのデータは、LSD1の阻害がSCLC細胞株を化学療法及び標的療法による介入に対し広く感受性にする可能性があることを示唆する。
【0218】
細胞は液体窒素保存状態から解凍されて、期待される倍加時間に達するまで増殖された。細胞株のそれぞれは、ATCCによって推奨される別個に最適化された培地又は細胞株源において増殖され、試験された。
【0219】
細胞は黒色の384ウェルアッセイプレート中で指定濃度(最適化フェーズで決定された)で播種された。細胞はその後、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン前処理の前に、24時間投与モジュールに取り付けられたインキュベーター内で遠心分離を経て平衡化された。アッセイプレートはその後指定濃度の(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン(最適化フェーズで決定された)で処理された。
【0220】
(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン処理の時間に、(処理を受けていない)アッセイプレートのセットは収集されて、ATPLite(Perkin Elmer)を加えることによってATPレベルが測定された。発光を測定するために、これらのTゼロ(T0)プレートはEnvision Plate Readersで読まれた。処理されたアッセイプレートは(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンとともに第2の化合物での処理の前に96時間インキュベートされた。この時間の後に、アッセイプレートはその後、9x9拡張されたマトリックスにおいて、エンハンサー化合物の8ポイント段階の希釈液で処理され、別の72時間インキュベーションの後で収穫された。初めの(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン処理時間からの全体の168時間の後で、プレートはATPLiteを用いたエンドポイント解析のために展開された。全てのデータポイントは自動化プロセス;品質管理された;を経て収集され、Horizon CombinatoRx proprietary softwareを用いて解析された。アッセイプレートは次の品質管理基準を通過した場合に受け入れられた:相対ルシフェラーゼ値は実験全体を通じて一貫しており、z因子スコアは0.6より大きく、未処理/ビヒクル対照はプレート上で一貫して挙動した。
【0221】
Horizon Discoveryは、細胞生存の尺度として増殖阻害(GI)を利用する。ビヒクルの細胞生存は投与の時間(T0)及び168時間後(T168)に測定される。0%のGIリーディングは増殖阻害を表さない-化合物で処理された細胞とT168ビヒクルシグナルは一致した。GI100%は完全な増殖阻害を表す-化合物で処理された細胞とT0ビヒクルシグナルは一致した。GI100%のウェル内で投与期間中に細胞数は増加しておらず、この効果レベルでプラトーに達する化合物についての細胞増殖抑制効果を示唆する可能性がある。GI200%は培養細胞における全ての細胞の完全な死を表す。GI200%の活性プラトーに達する化合物は細胞傷害性と考えられた。Horizon CombinatoRxは次の試験及び方程式を適用することによりGIを計算する。
ここで、Tは試験品のシグナル尺度、Vはビヒクル処理されたコントロール尺度、Voは0時間におけるビヒクルコントロール尺度である。この式はNational Cancer InstituteのNCI-60ハイスループットスクリーンにおいて使用される増殖阻害計算に由来する。
【0222】
Loewe additivityモデルは用量ベースであり、単剤によって達成される活性レベルにのみ適用する。Loewe VolumeはLoewe additivityモデルを超える組合せ相互作用の全体の大きさを評価するために使用される。Loewe Volumeは、フェノタイプの活性における相乗的な増加(正のLoewe Volume)と相乗的拮抗作用(負のLoewe Volume)を区別するときに特に有用である。拮抗作用が観察されるとき、現在のデータセットにおけるように、拮抗作用と特定の薬物標的活性又は細胞ジェノタイプの間の相関関係があるかどうかを調査するためにLoewe Volumeは評価される。このモデルは、組合せ用量マトリックス表面がそれ自身と交差したいずれの薬物とも区別できない非相乗的組合せ相互作用として、相加性を定義する。相加性の計算は:
Loeweは、(X/X)+(Y/Y)=1を満たす
ここで、X及びYは、観察された組合せ効果Iについての単剤有効濃度である。例えば、もし1mMの薬物A又は1mMの薬物Bによって別々に50%阻害が達成されれば、0.5mMの薬物A及び0.5mMの薬物Bの組合せも50%で阻害するはずである。
【0223】
Loewe additivityモデルを超える組合せ効果を測定するために、Horizon Discoveryプラットホームは利用された。この方法はシナジースコアと名付けられた相乗的相互作用の強さを特徴付けるためにスカラー尺度を考案した。シナジースコアは次のように計算される:
シナジースコア=logflogfΣmax(0,Idata)(Idata-ILoewe
【0224】
マトリックスにおける各成分剤及び組合せポイントについての部分阻害は、全てのビヒクル処理されたコントロールウェルの中央値に対して計算される。シナジースコア方程式は、相加性のためのLoeweモデルを使用して成分剤の活性から数値的に導出されたモデルサーフェスを超える、マトリックスにおける各ポイントで実験的に観察された活性ボリュームを統合する。シナジースコア方程式(上記)における追加項は、個々の剤に使用される種々の希釈因子について標準化して、実験全体でのシナジースコアの比較を可能にするために使用される。
【0225】
Loewe additivityを超える活性は、単なるボリュームスコアを用いて最も容易に計算され、ここでVLoewe=logflogfΣ(Idata-ILoewe)であり、全ての非単剤濃度ペアを合計され、ここでlogfX,Yは各単剤に使用される希釈因子の自然対数である。これは、希釈因子を変えるために補正された、測定されたものとLoewe相加的応答サーフェスの間のボリュームを効果的に計算する。この体積スコアは、組合せの相乗的又は拮抗的効果全体を強調し、したがって外れているデータスパイクの効果を最小化し、広い範囲の濃度にわたって、高い効果レベルを有する強固な相乗効果を有する組合せを同定する。VLoeweは、大抵の相乗的組合せにとって正であり、拮抗作用にとって負である。不確かさσは測定されたエラーσ及び標準エラー伝搬に基づいて計算され得る。
【0226】
「シナジースコア」S=fcovlnflnfΣmax(0,Idata)max(0,Idata-ILoewe)、これは正数に限定したポジティブゲート、阻害加重されたLoewe additivityを超える体積である。これは、相乗効果が高い効果レベルで起こる、応答サーフェスの拮抗的な部分を無視する、組合せに有利な相加的な優先順位付けを提供する。ここでfX,Yは希釈因子各単剤について使用される希釈因子であり、カバレージ因子fcovは、合計/試験された組合せ用量マトリックスポイントの比率によってスコアをスケールアップする、欠損データを説明する。Sは常に正であり、不確かさσは測定されたエラーσ及び標準エラー伝搬に基づいて計算され得る。シナジースコアの代替手段は「ヒットスコア」H=fCOVlogflogfΣmax(0,Idata)max(0,Idata-IHSA)であり、それはHSAモデルを参照する。SとHの重要な違いは異なる基礎モデルにあることと、どのように単剤がモデル計算において使用されるかということにもある。Chalice Analyzerにおいて、HSAモデルは、対応する濃度で単剤応答から直接に計算される一方で、Loewe additivityモデルは単剤応答カーブへのシグモイドフィットから導出される。
【0227】
ヒットの優先順位を付けるために、スコア(S又はH)及びそのエラーの分布は適切なセクションカットオフを定義するために使用され得る。例えば、S>3σを有する組合せは、通常のエラーを仮定するのに、~99%の信頼度で「個別に有意(individually significant)」である。繰り返しプレートによって試験されない系統的な実験エラーを推定するために、実験中に得られた薬物それ自体の組合せについてのシナジースコアの分布は、非検出のためのもっともらしい範囲を決定するために使用され得る。あるいは、実験全体についてのスコア分布は、選択された信頼レベルで外れ値を同定するために使用され得る。
【0228】
実施例3 他の医薬品有効成分と組み合わされたLSD1阻害剤のSCLCに対するin vitroの相乗効果
表5は相乗スコア、相乗効果の強さを示す値、のヒートマップを提供する。6.4より大きい相乗スコアは有意なものとみなされ、さらなる検証を是認された。薬物クラスの選択パネルは、観察された相乗効果のレベル及びSCLCの治療レジメンにおける化合物の潜在的な臨床的使用に基づいて、SCLC細胞株の拡大されたパネルにおけるさらなる評価のために優先順位付けられた。エピジェネティックレギュレーターBET(特にBrd4)((+)-JQ1、CPI-203、MS 436、GSK1324726A、GSK1210151A及びOTX015)並びに抗アポポティック(apopotic)レギュレーターBCL2(オバトクラックス、ABT-199、ABT-737、及びTW-37)を阻害した標的療法及び化学プローブは、LSD1阻害と高度に相乗的であった。相乗効果は、BET(特にBRD4)及びBCL2阻害剤と比較してい低レベルではあるが、他のエピジェネティックレギュレーター、EZH2(例えばCPI-169、EPZ005687、EPZ-6438、GSK126、GSK343)及びDOT1L(例えばEPZ-5676、SGC 0946)でも観察された。
【0229】
Notch、Hedgehog又はSmoothened経路の阻害は、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン処理と相乗的ではなく、LSD1阻害は、HDAC及びBET阻害剤、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤、オーロラキナーゼ阻害剤、BCL2ファミリー阻害剤、EZH2、DOT1L及びChk阻害剤を含む化合物及び薬物クラスを選択するために、細胞株の感受性を高めることを示唆していた。
【0230】
上の実施例2に記載されたように細胞は処理され、データは解析された。
【0231】
表4.適切な医薬品有効成分(API)のパネルとの(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンの組合せの相乗効果。
【0232】
表5.適切な医薬品有効成分(API)のパネルとの(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンの組合せのSCLC細胞株におけるin vivo相乗効果。
【0233】
実施例4.LSD1阻害剤はSCLC-SOC in vivoの効力及び持続期間を改善する。
in vivoで、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン治療の効果は、図2Aで見られるように細胞傷害性の応答を誘導するのに、エトポシドとカルボプラチンの両方と協同した。臨床において、SCLCの一つの標準治療(SOC)は、エトポシドとカルボプラチンを併用することである。
【0234】
in vivoで、エトポシドとカルボプラチンの組合せは、図2Bで見られるようにNCI-H526モデルにおける投与期間中に迅速な腫瘍退行を促進する。SOCへの(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンの追加は、腫瘍退行の持続期間を改善し、投与の中断後の30日による腫瘍再増殖を有意に遅らせた。同時にデータは、LSD1阻害は、in vitro及びin vivoの化学療法及び標的剤を選択するために、細胞の感受性を高め得ることを示す。
【0235】
NCI-H526モデル:
8~12週齢のnu/nuマウスは、100μLのマトリゲル(Matrigel)(登録商標)及びPBSの1:1混合物に再懸濁された1x107 H526細胞又は5x106 SHP-77を注射された。腫瘍は100-150mm動物でステージされ、用量群に分配された。(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンは、40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフ(5/2)で3週間投与された。エトポシドは、5mg per kg(mpk)の用量で毎日5日間(qdx5)腹腔内投与された。カルボプラチンは、100mpkの用量で毎週3週間(qwkx3)腹腔内投与された。エトポシド及びカルボプラチンとの組合せにおいて、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンは、20upkの用量で5日間オン/2日間オフで3週間投与された。腫瘍体積は隔週でデジタルキャリバーを使用して測定された。実験のエンドポイントは1000mmの腫瘍体積又は90日、いずれかが最初に来たときである。統計解析は対応のないt-検定及びゲーハン-ブレスロー-ウィルコクソン検定を使用して行われた。
【0236】
実施例5.LSD1阻害への細胞応答
化合物効力決定は、19の小細胞肺がん細胞株(様々な腫瘍起原の)を、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドの存在下で、加湿インキュベーター内で、37℃、5%CO、4日間培養することによって行われた。
【0237】
細胞傷害性についてのポジティブコントロールとして、Hsp90阻害剤17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG、ゲルダナマイシンアナログ)が、段階的な希釈でポジティブコントロールとして使用された。細胞株のそれぞれは、ATCCによって推奨される別個の最適化された培地又は細胞株源において増殖され、試験された。
【0238】
小細胞肺がん細胞株は、酵素活性、細胞形態学、及び増殖フェノタイプに基づいて、「クラシック」又は「バリアント」に分類され得る(Desmond et al110.、Shoemaker R.H.111)。クラシック細胞株は、高いレベルのL-dopaデカルボキシラーゼ及びボンベシン様免疫反応性、ニューロン特異的エノラーゼ、及びクレアチンキナーゼの脳アイソザイムを表す;バリアント細胞株は、ニューロン特異的エノラーゼ及びクレアチンキナーゼの脳アイソザイムを表し続けるが、検出不可能なレベルのL-dopaデカルボキシラーゼ及びボンベシン様免疫反応性を有する。クラシック細胞株とは異なり、いくつかのバリアント細胞株は増幅されc-myc(MYC)がん遺伝子の発現を増加させた。
【0239】
いくつかの細胞株はクラシック及びバリアントサブタイプの両方に特異的な特徴を示す。例えば、SHP-77は、クラシックSCLC(例えば高いレベルのL-dopaデカルボキシラーゼ及びボンベシン様免疫反応性)の生化学的性質を有するが、バリアントの形態学を有する。文献によると、SHP-77は生化学的なプロファイルに基づいてクラシックとみなされるが、形態学及び増殖特性に基づいてバリアントとみなされる。
【0240】
NCI-H2029及びSBC-5について、文献においてサブタイプは報告されていないが、それらのトランスクリプトームプロファイル(DDC/GRPのmRNA発現レベル)は、表6のブラケットの中に与えられるクラスメンバーシップを明確に示す。
【0241】
(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドへの応答に応じて、細胞株は、EC50<0.05μMを有していると定義される「感受性」[S]、又はEC50>=0.05μMを有していると定義される「抵抗性」[R]のいずれかに分類される。
【0242】
(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドへの細胞ベースの応答は、バリアントSCLC細胞株と比較して、クラシックSCLC細胞株においてより大きかった(p値0.0055 表6)。試験された19のSCLC細胞株のうち、11中9のクラシック細胞株[C]は感受性[S]であり、8中7のバリアント細胞株[V]は抵抗性[R]である(表7)。
【0243】
バリアント及びクラシックサブタイプは、LSD1阻害剤療法への応答を82%の感度及び88%の特異性で予測する。
【0244】
MYC遺伝子(Ensemble Gene ID: ENSG00000136997)におけるより高いコピー数多型(CNV)は、バリアントサブタイプの小細胞肺がんに関係している(Am J Pathol. 1988 Jul; 132(1): 13-17)。実際に、19の細胞株のうち、MYC遺伝子の高いコピー数多型(CNV>>2)はもっぱらバリアントサブタイプ(NCI-H2171、NCI-H446、NCI-H82、表6)を有する細胞株で見られた。さらに、MYCの高いコピー数多型を有する全ての3つの細胞株はLSD1阻害に対して抵抗性であり、MYC増幅の存在はLSD1阻害療法への抵抗性(R)を予測し得ることを示唆している。
【0245】
表6の細胞株についてRNA-seqデータから実行された主成分解析は、驚くべきことにバリアント及びクラシックSCLC細胞株が異なるクラスターを形成することを明らかにした。
【0246】
表6.バリアント SCLC細胞株[V]と比較したクラシック SCLC細胞株[C]における(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン ビス-ヒドロクロリドへの細胞ベースの応答。
【0247】
表7.LSD1阻害療法への感受性又は抵抗性であるバリアント及びクラシック細胞株の数を示す分割マトリックス。
【0248】
実施例6.LSD1阻害への応答を予測するための遺伝子パネル。
クラシックサブタイプの特徴を有する2つの抵抗性の細胞株(SHP-77及びNCI-2029)と、感受性であるバリアント及びクラシック細胞株(NCI-H1876、NCI-H69、NCI-H510A、NCI-H146、NCI-H187、NCI-H2081、NCI-H345、NCI-H526、NCI-H748)の間のディファレンシャル遺伝子解析は、興味深いことにHOXA10のより低いmRNA発現レベルがLSD1阻害療法への抵抗性に相関することを明らかにした(表8)。これは、より低いレベルのHOXA10のmRNAが、クラシックフェノタイプの存在下であってもLSD1阻害療法への抵抗性を予測する可能性があることを示唆する。
【0249】
LSD1阻害療法への応答の予測的mRNA発現シグネチャーは、クラシックとバリアント細胞株の間に最も差次的に発現した遺伝子を選択することにより定義される(表9)。調整されたp値に基づいて、酵素L-dopaデカルボキシラーゼをエンコードするDDC(調整されたp値4.37E-23)、及びボンベシン様免疫反応性ペプチドをエンコードするGRP(調整されたp値5.19E-14)は、2番目及び6番目に最も差次的に発現した遺伝子として位する。最も差次的に発現した遺伝子はASCL1である(調整されたp値2.6E-23)。ASCL1は肺神経内分泌細胞の適切な発生により得られたトランスクリプション因子であり、大多数の肺がんの生存にとって不可欠である(Augustyn et al.112)。
【0250】
上の実施例5で議論したとおり、MYC増幅はLSD1阻害療法への抵抗性を予測し得る。
【0251】
表10は、記載された表6の19の細胞株に渡るDDC、GRP、及びASCL1の正規化リードカウントを一覧にし、表11は対応するzスコアを一覧にする。
【0252】
図4のヒートマップは、感受性の細胞株が表9に一覧にされた遺伝子のmRNA発現レベルに基づいて、並びにHOXA10の発現レベル及びMYCのコピー数多型に基づいて、抵抗性の細胞株と区別され得ることを視覚的に示す。
【0253】
表8.選択された細胞株についてRNA-seqデータから実行された主成分解析(*http://www.ensembl.org/, Cunningham F. et al.106
【0254】
表9.選択された細胞株についてRNA-seqデータから実行された主成分解析を通じて得られたp値により分類された遺伝子(*http://www.ensembl.org/, Cunningham F. et al.106)。
【0255】
表10.mRNA発現レベルからの正規化リードカウント
【0256】
表11.正規化mRNAリードカウントからGenePatternにより生成されたzスコア。
【0257】
実施例7.LSD1阻害への応答を予測するための神経内分泌遺伝子パネル
神経内分泌フェノタイプの代表的な遺伝子を含み、肺神経内分泌腫瘍についての免疫組織化学的なマーカーとして使用できる、表12による遺伝子の第2のセット(NCAM1、NCAM2、NEUROD1、KRT8、ENO2、AVP、OXT、SYP、CHGA、CHGB、SOX21、BCL2)についてのmRNA発現レベルは、図5に図示されたように、抵抗性細胞株DMS114、SBC5、及びNCI-H1048において強くダウンレギュレートされる。これは、LSD1阻害療法は神経内分泌起原の腫瘍における細胞増殖を停止させるという、我々の仮説と一致する。
【0258】
表13A及び14Bは、記載された表6の19の細胞株に渡る表12の遺伝子の正規化リードカウントを一覧にする。
【0259】
表12.第2の神経内分泌遺伝子パネルの遺伝子(*http://www.ensembl.org/, Cunningham F. et al.106)。
【0260】
表13A.mRNA発現レベルからの正規化リードカウント。
【0261】
表13B.mRNA発現レベルからの正規化リードカウント。
【0262】
実施例8.LSD1阻害への応答を予測するためのシグネチャースコア
ASCL1、DDC、GRP、及びHOXA10の正規化発現レベル(Norm_read_count)並びにMYCコピー数多型(Copy_number_variation)は、次のようにLSD1阻害療法への応答を予測するために、遺伝子シグネチャーを生成するために使用された:
【0263】
スコアは、第二主成分を用いる部分的最小二乗回帰(PLS)分析によって得られた、次の方程式から生成された:
シグネチャースコア 1=0.0900693
+Norm_read_count(ASCL1)×0.00000211296
+Norm_read_count(DDC)×0.000000536658
+Norm_read_count(GRP)×0.00000297345
+Norm_read_count(HOXA10)×0.000234721
-Copy_number_variation(MYC)×0.0537056
【0264】
図6に示されたように、シグネチャースコア 1>0.5はLSD1阻害療法への応答を予測する(フィッシャーの正確検定 両側 p 0.0001、感度90%、特異性100%)。
【0265】
あるいは、スコアは、第一主成分を用いる部分的最小二乗回帰分析によって得られた、次の方程式から生成された:
シグネチャースコア 2=0.483918
+Norm_read_count(ASCL1)×0.00000188066
+Norm_read_count(DDC)×0.00000188066
+Norm_read_count(GRP)×0.00000352033
-Copy_number_variation(MYC)×0.0407898
【0266】
図7に示されたように、シグネチャースコア 2>0.5はLSD1阻害療法への応答を予測する(フィッシャーの正確検定 両側 p 0.0055、感度90%、特異性77.8%)。
【0267】
さらに、スコアは、第一主成分を用いる部分的最小二乗回帰分析によって得られた、次の方程式から生成された:
シグネチャースコア 3=0.393569
+Norm_read_count(ASCL1)×0.00000182731
+Norm_read_count(DDC)×0.00000189664
+Norm_read_count(GRP)×0.00000342046
【0268】
図8に示されたように、シグネチャースコア 3>0.45はLSD1阻害療法への応答を予測する(フィッシャーの正確検定 両側 p 0.0055、感度90%、特異性77.8%)。
【0269】
参照レベルより高いシグネチャースコアはLSD1阻害剤を用いる治療への応答の高い可能性を示す一方で、前記レベルより低いシグネチャースコアはそのような治療への応答の低い可能性を示す。より高いスコアはより高いASCL1、DDC、GRP、HOXA10のmRNA発現、及びMYCにおけるより低いコピー数多型に関連する。
【0270】
実施例9.in vivo腫瘍増殖阻害
NCI-H510A モデル:
7~8週齢の無胸腺ヌードマウス動物は、100μLのマトリゲル(Matrigel)(登録商標)マトリックス(Corning Inc., Tewksbury/MA, C.S. Hughes et al.113)及びPBSの1:1混合物に再懸濁された5x10 H510A細胞を注射された。腫瘍は200-300mm動物でステージされ、用量群に分配された。(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンは、40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフで研究の終了まで投与された。腫瘍体積は隔週でデジタルキャリバーを使用して測定された。研究は、コントロール群の平均腫瘍体積が2000mmに到達したとき又はステージング後28日に終わりにされた。統計解析は対応のないt-検定を使用して行われた。
【0271】
NCI-H526及びSHP-77モデル:
8~12週齢のnu/nuマウスは、100μLのマトリゲル(Matrigel)(登録商標)及びPBSの1:1混合物に再懸濁された1x10 H526細胞又は5x10 SHP-77を注射された。腫瘍は100-150mm動物でステージされ、用量群に分配された。(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンは、40μg per kg(upk)の用量で5日間オン/2日間オフで研究の終了まで投与された。腫瘍体積は隔週でデジタルキャリバーを使用して測定された。研究は、コントロール群の平均腫瘍体積が2000mmに到達したとき又はステージング後28日に終わりにされた。統計解析は対応のないt-検定を使用して行われた。
【0272】
図9に示されるように、LSD1阻害剤(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンのin vitro活性は、H510A異種移植モデルにおけるin vivo増殖阻害に翻訳した。「応答性シグネチャー」陽性細胞株H510Aモデルにおける(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンの処理は、投与の21日後に、処理されていないコントロールと比較して、適度であるが測定可能な腫瘍増殖阻害をもたらした。これらの結果は、15の以前に定義された遺伝子応答シグネチャーが、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンへのin vivo感受性を予測し得ることを示唆する。in vivoの結果から遺伝子シグネチャーの予測可能性を検証するために、(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンへのin vivo活性は、「応答性シグネチャー陽性」のSHP-77及び「応答性シグネチャー陰性」のH510A異種移植片においても評価された。
【0273】
実施例10.SCLC患者試料における発現パターン
SCLC患者試料のセットにおける遺伝子発現パターンは、SCLC細胞株で観察されたものと同様であることが見出され(実施例6、図4)、LSD1阻害剤応答遺伝子シグネチャーの使用、特に(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン応答遺伝子シグネチャーの使用がLSD1阻害剤に基づく治療法、特に(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンに基づく治療法から臨床的に恩恵を受けるであろう患者を同定する可能性を増加させることを示唆している。
【0274】
図10は、表8、表9及びMYCの遺伝子を含むSCLC患者試料における、mRNA発現(zスコアとして)パターンを示すヒートマップを提供する。より高いzスコアはより良い感受性に相関する。
【0275】
使用されたデータセットは、欧州分子生物学研究所の一部門、欧州バイオインフォマティクス研究所のEuropean Genome-phenome Archive(EGA)から得られたデータセットEGAD00001000223(EMBL-EBI, Hinxton/UK, https://www.ebi.ac.uk/ega/datasets/EGAD00001000223)に対応する。患者IDはこのデータセットにおいて使用されたIDに対応する。
【0276】
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2 WO 2011/131697 A1
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4 WO 2013/057322 A1
5 WO 2010/143582
6 WO 2011/131576
7 WO 2013/022047
8 WO 2013/025805
9 WO 2014/058071
10 WO 2014/084298
11 WO 2014/085613
12 WO 2014/086790
13 WO2014/164867
14 WO 2014/194280
15 WO 2014/205213
16 WO 2015/021128
17 WO 2015/031564
18WO 2015/089192
19WO 2015/120281
20 WO 2015/123465
21 WO 2015/123437
22 WO 2015/123424
23 WO 2015/123408
24 WO 2015/134973
25 WO 2015/156417
26 WO 2016/004105
27 WO 2016/007722
28 WO 2016/007727
29 WO 2016/007731
30 WO 2016/007736
31 WO 2016/034946
32 WO 2016/037005
33 CN 105541806
34 WO 2016/123387
35 WO 2016/130952
36 CN 105924362
37 CN 105985265
38 WO 2016/161282
39 CN 106045862
40 CN 106045881
41 WO 2016/172496
42 WO 2016/177656
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図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】