(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】交通状態推定システム、及び交通状態推定方法
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20221014BHJP
B61L 27/10 20220101ALI20221014BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
B61L25/02 A
B61L27/10
G08G1/005
(21)【出願番号】P 2019002516
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 弥生
(72)【発明者】
【氏名】米原 三揮
(72)【発明者】
【氏名】藤原 仁貴
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-115087(JP,A)
【文献】特開2018-101205(JP,A)
【文献】特開2005-227972(JP,A)
【文献】特開2017-177923(JP,A)
【文献】特開2018-151953(JP,A)
【文献】特開2005-056441(JP,A)
【文献】特開2011-141836(JP,A)
【文献】特開2011-113547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00
B61L 25/02
G08G 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通状態に対する制約に関する情報である状態制約、
交通状態の推定値である状態推定値、
交通状態に関する情報を取得するセンサ装置が観測した情報である観測センサ値、及び、
前記観測センサ値を観測する際の前記センサ装置の特性に関する情報である観測特性、
を記憶する記憶部と、
前記状態制約と前記状態推定値とに基づき、ある時刻における交通状態の予測値である状態予測値を生成する状態予測部と、
前記観測特性と前記観測センサ値とに基づき、前記ある時刻における交通状態の予測値である観測予測値を生成する観測予測部と、
前記状態予測値と前記観測予測値との乖離の度合いを示す評価値である乖離評価値を生成する乖離評価部と、
前記乖離評価値に基づき前記状態推定値を更新する状態補正部と、
を備え
、
前記状態制約は、前記交通状態を表すデータ項目のグループ毎に設定された前記制約を示す情報を含み、
前記状態予測部は、前記制約を遵守しつつ、前記状態推定値に基づき、前記データ項目について、前記交通状態を示すデータ値と前記データ値の夫々が取り得る確率の分布とを含む情報を前記状態予測値として生成し、
前記観測特性は、前記センサ装置が本来観測した瞬間の時刻である真時刻と当該真時刻を取り得る確率の分布とを含む情報である時刻特性と、前記センサ装置が本来観測した瞬間の状態に関するデータ値である真データ値と当該真データ値を取り得る確率の分布とを含む情報であるデータ値特性と、を含み、
前記観測予測部は、前記観測特性と前記観測センサ値とに基づき、前記センサ装置が前記観測センサ値を観測したはずの瞬間の時刻と、前記センサ装置が観測したはずのデータ値と、前記時刻と前記データ値の組合せが取り得る確率の分布を含む情報である観測真値を生成し、前記観測真値に基づき、前記ある時刻における前記交通状態の、前記真時刻からの経過時間、前記データ値、及び前記データ値を取り得る確率の分布を含む情報を前記観測予測値として生成し、
前記乖離評価部は、前記観測予測値に含まれている前記経過時間と前記データ値の確率の分布とに基づき、前記交通状態を表すデータ項目毎に、当該観測予測値がどの程度信頼できるかを示す値である観測信頼度と、同じ時刻における、前記状態予測値と前記観測予測値の確率分布がどの程度離れているかを示す値である乖離度とを含む情報を前記乖離評価値として生成し、
前記状態補正部は、前記観測信頼度を予め設定された閾値と比較することにより前記観測予測値が信頼できるか否かを判定し、前記観測予測値が信頼できると判定した場合は前記観測予測値の確率分布に、前記観測予測値が信頼できないと判定した場合は前記状態予測値の確率分布に近づくように、前記状態予測値の確率分布と前記観測予測値の確率分布を統合した内容に前記状態推定値を更新する、
交通状態推定システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の交通状態推定システムであって、
異なる前記センサ装置に基づく前記観測予測値を比較することにより得られる情報に基づき前記観測予測値を調整する、
交通状態推定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の交通状態推定システムであって、
前記状態補正部は、前記乖離度が小さい前記データ項目から優先的に前記統合を行う、
交通状態推定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の交通状態推定システムであって、
前記観測センサ値は、前記交通状態に関する情報を観測するセンサ装置から取得したものである、
交通状態推定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の交通状態推定システムであって、
前記状態推定値に基づき経路情報を生成する経路検索システムと通信可能に接続し、
前記状態推定値を前記経路検索システムに送信する通信装置を備える、
交通状態推定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の交通状態推定システムであって、
前記状態制約及び前記観測特性のうちの少なくともいずれかを調整するパラメータ調整部を更に備える、
交通状態推定システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の交通状態推定システムであって、
前記パラメータ調整部は、前記状態補正部が更新した前記状態推定値、或いは、ユーザから受け付けた情報のいずれかに基づき、前記状態制約及び前記観測特性のうちの少なくともいずれかを調整する、
交通状態推定システム。
【請求項8】
交通状態を推定する方法であって、
情報処理装置が、
交通状態に対する制約に関する情報である状態制約、
交通状態の推定値である状態推定値、
交通状態に関する情報を取得するセンサ装置が観測した情報である観測センサ値、及び、
前記観測センサ値を観測する際の前記センサ装置の特性に関する情報である観測特性、
を記憶するステップ、
前記状態制約と前記状態推定値とに基づき、ある時刻における交通状態の予測値である状態予測値を生成するステップ、
前記観測特性と前記観測センサ値とに基づき、前記ある時刻における交通状態の予測値である観測予測値を生成するステップ、
前記状態予測値と前記観測予測値との乖離の度合いを示す評価値である乖離評価値を生成するステップ、及び、
前記乖離評価値に基づき前記状態推定値を更新するステップ、
を実行
し、
前記状態制約は、前記交通状態を表すデータ項目のグループ毎に設定された前記制約を示す情報を含み、
前記情報処理装置が、前記制約を遵守しつつ、前記状態推定値に基づき、前記データ項目について、前記交通状態を示すデータ値と前記データ値の夫々が取り得る確率の分布とを含む情報を前記状態予測値として生成するステップを更に実行し、
前記観測特性は、前記センサ装置が本来観測した瞬間の時刻である真時刻と当該真時刻を取り得る確率の分布とを含む情報である時刻特性と、前記センサ装置が本来観測した瞬間の状態に関するデータ値である真データ値と当該真データ値を取り得る確率の分布とを含む情報であるデータ値特性と、を含み、
前記情報処理装置が、前記観測特性と前記観測センサ値とに基づき、前記センサ装置が前記観測センサ値を観測したはずの瞬間の時刻と、前記センサ装置が観測したはずのデータ値と、前記時刻と前記データ値の組合せが取り得る確率の分布を含む情報である観測真値を生成し、前記観測真値に基づき、前記ある時刻における前記交通状態の、前記真時刻からの経過時間、前記データ値、及び前記データ値を取り得る確率の分布を含む情報を前記観測予測値として生成するステップを更に実行し、
前記情報処理装置が、前記観測予測値に含まれている前記経過時間と前記データ値の確率の分布とに基づき、前記交通状態を表すデータ項目毎に、当該観測予測値がどの程度信頼できるかを示す値である観測信頼度と、同じ時刻における、前記状態予測値と前記観測予測値の確率分布がどの程度離れているかを示す値である乖離度とを含む情報を前記乖離評価値として生成するステップを更に実行し、
前記情報処理装置が、前記観測信頼度を予め設定された閾値と比較することにより前記観測予測値が信頼できるか否かを判定し、前記観測予測値が信頼できると判定した場合は前記観測予測値の確率分布に、前記観測予測値が信頼できないと判定した場合は前記状態予測値の確率分布に近づくように、前記状態予測値の確率分布と前記観測予測値の確率分布を統合した内容に前記状態推定値を更新するステップを更に実行する、
交通状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通状態推定システム、及び交通状態推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遅延・早発時間を考慮した経路検索結果を計算する経路検索システムについて記載されている。この技術において、路線運行実績予測時刻生成システムは、鉄道やバス等の時刻表を作成するシステムであるダイヤ編成システムと、鉄道やバス等の運行状況を監視する運行管理システムと、利用者から受け付けた経路検索条件で出発地から到着地までの交通機関情報を含む経路情報を生成する経路検索システムを備え、ダイヤ編成システムからの時刻情報と運行管理システムからの運行情報とで未来の運行状況を算出して、その算出した未来の運行状況を基に、出発地から到着地までの交通機関情報を含む経路情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にスマートフォンやパーソナルコンピュータ等の情報機器向けに提供される交通機関の経路案内サービスは、確定している時刻表に基づき経路案内を生成する。そのため、例えば天候不順や事故等で交通機関に遅延や運行見合わせが生じた場合、案内の内容が現実の交通状況から乖離し、実際の到着時刻が遅れる場合や乗換地点で乗換不可となる場合等、利用者の利便性に影響が生じ得る。
【0005】
特許文献1では、路線運行実績予測時刻生成システムが、ダイヤ編成システムからの時刻情報と運行管理システムからの運行情報とで未来の運行状況を算出している。しかしデータが丸められている場合や更新頻度がずれていて古いデータが含まれている場合、データに抜けがある場合等、運行管理システムから提供されるデータは特性が必ずしも一様ではなく、こうした情報を用いた場合、現実の交通状態を正確に予測することができず、精度の高い経路情報を提供することができない。
【0006】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、現実の交通状態を精度よく予測することが可能な、交通状態推定システム、及び交通状態方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一つは、交通状態推定システムであって、交通状態に対する制約に関する情報である状態制約、交通状態の推定値である状態推定値、交通状態に関する情報を取得するセンサ装置が観測した情報である観測センサ値、及び、前記観測センサ値を観測する際の前記センサ装置の特性に関する情報である観測特性、を記憶する記憶部と、前記状態制約と前記状態推定値とに基づき、ある時刻における交通状態の予測値である状態予測値を生成する状態予測部と、前記観測特性と前記観測センサ値とに基づき、前記ある時刻における交通状態の予測値である観測予測値を生成する観測予測部と、前記状態予測値と前記観測予測値との乖離の度合いを示す評価値である乖離評価値を生成する乖離評価部と、前記乖離評価値に基づき前記状態推定値を更新する状態補正部と、を備え、前記状態制約は、前記交通状態を表すデータ項目のグループ毎に設定された前記制約を示す情報を含み、前記状態予測部は、前記制約を遵守しつつ、前記状態推定値に基づき、前記データ項目について、前記交通状態を示すデータ値と前記データ値の夫々が取り得る確率の分布とを含む情報を前記状態予測値として生成し、前記観測特性は、前記センサ装置が本来観測した瞬間の時刻である真時刻と当該真時刻を取り得る確率の分布とを含む情報である時刻特性と、前記センサ装置が本来観測した瞬間の状態に関するデータ値である真データ値と当該真データ値を取り得る確率の分布とを含む情報であるデータ値特性と、を含み、前記観測予測部は、前記観測特性と前記観測センサ値とに基づき、前記センサ装置が前記観測センサ値を観測したはずの瞬間の時刻と、前記センサ装置が観測したはずのデータ値と、前記時刻と前記データ値の組合せが取り得る確率の分布を含む情報である観測真値を生成し、前記観測真値に基づき、前記ある時刻における前記交通状態の、前記真時刻からの経過時間、前記データ値、及び前記データ値を取り得る確率の分布を含む情報を前記観測予測値として生成し、前記乖離評価部は、前記観測予測値に含まれている前記経過時間と前記データ値の確率の分布とに基づき、前記交通状態を表すデータ項目毎に、当該観測予測値がどの程度信頼できるかを示す値である観測信頼度と、同じ時刻における、前記状態予測値と前記観測予測値の確率分布がどの程度離れているかを示す値である乖離度とを含む情報を前記乖離評価値として生成し、前記状態補正部は、前記観測信頼度を予め設定された閾値と比較することにより前記観測予測値が信頼できるか否かを判定し、前記観測予測値が信頼できると判定した場合は前記観測予測値の確率分布に、前記観測予測値が信頼できないと判定した場合は前記状態予測値の確率分布に近づくように、前記状態予測値の確率分布と前記観測予測値の確率分布を統合した内容に前記状態推定値を更新する。
【0008】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現実の交通状態を精度よく予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】情報処理システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】交通状態推定システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図3】交通状態推定システムが備える主な機能を示す図である。
【
図6】状態予測処理を説明するフローチャートである。
【
図11】観測予測処理を説明するフローチャートである。
【
図14】乖離評価処理を説明するフローチャートである。
【
図16】状態補正処理を説明するフローチャートである。
【
図17】経路検索システムが提示する経路検索結果画面の一例である。
【
図18】交通状態推定システムが提示する予測結果確認画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に実施形態として説明する情報処理システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、情報処理システム1は、一つ以上のセンサ装置2、交通状態推定システム10、一つ以上のユーザ装置5、及び経路検索システム3を含む。センサ装置2は、交通状態推定システム10と通信ネットワーク301を介して通信可能に接続されている。交通状態推定システム10は、通信ネットワーク302を介して経路検索システム3と通信可能に接続されている。経路検索システム3には一つ以上のユーザ装置5が通信ネットワーク303を介して通信可能に接続する。
【0012】
交通状態推定システム10は、未来のある時刻における輸送手段の状態(交通手段として用いられる移動体(陸上輸送手段(車、列車等)、海上輸送手段(船舶)、航空輸送手段(航空機)等)の現在位置、遅延時分、乗車人数、道路状況等。以下、「交通状態」と称する。)を推定した結果(以下、「推定結果」と称する。)を経路検索システム3に提供する。尚、以下の説明において、「状態」とは、物事のある時点における有り様に関する情報をいうものとする。
【0013】
経路検索システム3は、ユーザ装置5を介して受け付けた経路検索条件(出発地や目的地、利用時刻等)と、交通状態推定システム10から提供される推定結果とに基づき経路情報を生成し、生成した経路情報に基づく経路情報サービスをユーザ装置5に提供する。これにより経路検索システム3のユーザは、精度の高い経路情報を利用することができ、例えば、遅延している列車に乗車すべきか否か等の判断を適切に行うことができる。
【0014】
交通状態推定システム10及び経路検索システム3は、いずれも情報処理装置(コンピュータ)を用いて実現される。尚、交通状態推定システム10や経路検索システム3は、
例えば、クラウドシステム(Cloud System)により提供されるクラウドサーバ(Cloud Server)のような仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また経路検索システム3や交通状態推定システム10は、通信可能に接続された複数の情報処理装置によって実現されるものであってもよい。
【0015】
通信ネットワーク301,302,303は、例えば、インターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、公衆通信網、専用
回線等である。通信ネットワーク301,302,303の少なくとも2つ以上は共通の通信ネットワークであってもよい。通信ネットワーク301,302,303は、有線方式または無線方式のいずれの通信方式で実現されるものであってもよい。
【0016】
センサ装置2は、交通状態を特定するための情報(以下、「観測センサ値」と称する。)を観測(取得)して交通状態推定システム10に提供(送信)する。センサ装置2の種類や観測対象、観測方法は必ずしも限定されないが、例えば、事業者等の組織が保有する設備やユーザの携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機、ウェアラブル型端末、パーソナルコンピュータ等)である。またセンサ装置2は、例えば、鉄道列車運行管理システム、バスロケーションシステム、鉄道応荷重システム、バス乗降客カウントシステム、交通の利用者が所持する携帯情報端末等である。上記の鉄道列車運行管理システムやバスロケーションシステムは、車両の走行位置や遅延時分を観測するシステムである。上記の鉄道応荷重システム及びバス乗降客カウントシステムは、車両の乗車人数を観測するシステムである。センサ装置2は、例えば、携帯情報端末のGPS(Global Positioning System)による車両の走行位置を観測するシステム、監視カメラにより乗車人数を観測するシ
ステムであってもよい。またセンサ装置2は、車両の走行位置や乗車人数以外の情報を観測するセンサを用いて構成されるものであってもよい。センサ装置2は、交通状態推定システム10に直接接続されていてもよいし、集約装置や中継装置などを介して交通状態推定システム10に接続されてもよい。センサ装置2から交通状態推定システム10への情報の提供は、例えば、検出した生データをそのまま交通状態推定システム10に送信することにより行われる。またセンサ装置2から交通状態推定システム10への情報の提供は、例えば、センサ装置2内の処理回路やセンサ装置2と交通状態推定システム10との間に設置される装置が、センサ装置2により検出された生データを加工して交通状態推定システム10に送信することにより行われる。
【0017】
ユーザ装置5は、例えば、経路検索システム3のユーザの携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機、ウェアラブル型端末、パーソナルコンピュータ等)や事業者等の組織が業務で用いる情報処理装置である。
【0018】
図2に交通状態推定システム10のハードウェア構成を示している。交通状態推定システム10は、補助記憶装置401、主記憶装置402、プロセッサ403、ユーザインタフェース404、及び通信装置405の各構成を備える。これらの構成は、バス406を介して通信可能に接続されている。
【0019】
補助記憶装置401は、例えば、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドラ
イブ等の不揮発性の記憶素子を用いて構成される。主記憶装置402は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子や、NVRAM(Non-Volatile RAM)、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性素子を用いて構成される。プロセッサ403は、補助記憶装置401が記憶するプログラム4011やデータ4012を主記憶装置402に読み出して実行する。プロセッサ403は、交通状態推定システム10の統括的な制御を行うとともに、各種判定、演算及び制御処理を行う。通信装置405は、通信ネットワーク301や通信ネットワーク302を介して行われる外部装置(センサ装置2、経路検索システム3)との間の通信に関する処理を行う。補助記憶装置401は、交通状態推定
システム10の機能を実現するためのプログラム4011やデータ4012を記憶する。
【0020】
図3に、交通状態推定システム10が備える主な機能、及び交通状態推定システム10が記憶する主なデータを示している。同図に示すように、交通状態推定システム10は、状態予測部201、観測予測部202、乖離評価部203、状態補正部204、及びパラメータ調整部205の各機能を備える。また同図に示すように、交通状態推定システム10は、状態推定値101、状態予測値102、観測センサ値103、観測予測値104、乖離評価値106、及び観測特性112を記憶する。
【0021】
交通状態推定システム10が備える上記の機能は、例えば、交通状態推定システム10が備えるハードウェアによって実現される。またこれらの機能は、例えば、プロセッサ403が、主記憶装置402に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。上記のプログラムは、例えば、記録媒体に記録して配布することができる。また上記のプログラムは、例えば、上記のプログラムを蓄積管理する配信サーバ装置から通信設備を介して交通状態推定システム10にダウンロードすることにより配布することができる。
【0022】
交通状態推定システム10は、上記の機能に加えて、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、デバイスドライバ、DBMS(DataBase Management System)等の他の機能を備えていてもよい。交通状態推定システム10は、各種の情報を、例えば、データベースのテーブルやファイルとして記憶する。
【0023】
上記の機能のうち、状態予測部201は、状態補正部204によって繰り返し更新される状態推定値101と状態制約111とに基づき状態予測値102を生成する。ここで交通状態は、例えば、路線の構造、路線を走行する車両同士の関係性、天候等の環境等に応じた様々な制約の下で確定する。上記の状態制約111とは、交通状態に対する上記の制約に関する情報(以下、状態制約と称する。)であり、例えば、交通状態が遵守すべき条件や交通状態のあるべき姿の条件等に関する情報である。
【0024】
図4に状態制約111の一例を示す。同図に示すように、状態制約111は、グループID1111、データ項目1113、及び制約1115の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。グループID1111には、状態として表現される対象を表すデータ項目(制約のあるデータ項目)のグループを一意に特定する識別子(グループ名や識別コード等。以下、「グループID」と称する。)が設定される。グループIDは、状態制約111のキー項目である。同図に例示するグループID「路線Aを走行する列車」は、路線Aに関する状態を表すデータ項目のグループのグループIDである。また「路線A、Bの乗車人数」は、路線A,Bの乗車人数に関する状態を表すデータ項目のグループのグループIDである。
【0025】
データ項目1113には、当該グループにおいて制約のあるデータ項目を一意に特定する識別子(データ項目の名称や識別コード(以下、「データ項目名」と称する。)が設定される。例えば、
図4の一つ目のレコードは、「路線Aを走行する列車」というグループについて、「走行位置」、「遅延時分」、及び「乗車人数」というデータ項目の間に制約がある場合である。状態制約は、複数のデータ項目同士の制約を定義するデータであるため、このように複数のデータ項目をセットにしてデータ項目1113に格納する。
【0026】
制約1115には、当該グループにおける状態制約が設定される。同図に示すように、同じグループに複数の状態制約を設定してもよい。本例では状態制約を日本語で記述しているが、状態制約は必ずしも日本語で記述する必要はなく、例えば、数式等で記述してもよい。
【0027】
図3に戻り、同図に示す状態推定値101は、ある時刻における交通状態に関する情報である。一方、同図に示す状態予測値102は、状態予測部201が、繰り返し行われる後述の状態予測処理2010の前回処理にて生成した状態推定値101に基づき予測した、状態推定値101から進んだある時刻における交通状態に関する情報である。
【0028】
図5に状態推定値101の一例を示す。尚、状態予測値102のデータ構成も状態推定値101と同様である。
【0029】
同図に示すように、状態推定値101は、時刻1011、対象ID1013、データ項目1015、データ値1017、及び確率1019の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。尚、時刻1011及び対象ID1013は、状態推定値101(または状態予測値102)のキー項目である。
【0030】
時刻1011には、当該交通状態の時刻が設定される。対象ID1013には、当該交通状態の対象を一意に特定する識別子(名称や識別コード等。以下、「対象ID」と称する。)が設定される。データ項目1015には、前述したデータ項目名が設定される。データ値1017には、当該データ項目の状態を表す情報が設定される。当該データ項目の状態が離散値で表される場合、データ値1017には値(例えば、列車の位置を駅で表す場合には、駅名や識別コード)が設定される。また状態を連続値で表される場合、データ値1017には、状態を表す数値の範囲(例えば、列車の位置を走行距離で表す場合には、「0~1km」等)が設定される。
【0031】
確率1019には、当該データ項目が当該データ値をとる確率(0~1の値)が格納される。本例の場合、例えば、時刻「10:00:00」に「列車a」の「走行位置」は、「0.3」%の確率で「0~1km」の位置(駅等の所定の基準位置からの距離)に存在することを示す。尚、同じ時刻1011、同じ対象ID1013、及び同じデータ項目1015について、取り得るデータ値1017の確率1019を全て合計すると1になる。
【0032】
図6は、状態予測部201が行う処理(以下、状態予測処理S2010と称する。)を説明するフローチャートである。状態予測処理S2010は、予め設定されたスケジュール(一定時間毎等)に従って実行してもよいし、経路検索システム3等の外部からの要求に応じて開始されるようにしてもよい。以下、同図とともに状態予測処理S2010について説明する。
【0033】
同図に示すように、状態予測部201は、まず前回の処理(状態予測処理S2010)で生成した状態推定値101に基づき、ある時刻(以下、時刻tとする。)における、予測対象の各データ項目1015のデータ値1017と各データ値1017をとる確率1019の分布(以下、確率分布とも称する。)を計算する(S2011)。上記計算の方法としては、例えば、データ項目1015が車両の走行位置である場合、走行速度と走行時間とに基づき移動した距離を計算する方法、遅延時分に基づき時刻表からのずれを考慮して計算する方法等が考えられる。尚、状態予測処理S2010の初回実行時における状態推定値101の値(初期値)は、センサ装置2からの情報に基づき設定してもよいし、人手により設定してもよい。
【0034】
例えば
図5に示すように、時刻「10時0分0秒」における「列車a」の「走行位置」について、「0~1km」である確率が「0.3」、データ値が「1~2km」である確率が「0.5」、データ値が「2~3km」である確率が「0.2」である場合、状態予測部201は、その1分後の時刻である「10時1分0秒」について、「列車a」の「走行位置」のデータ値が「0~1km」である確率、「1~2km」である確率、「2~3
km」である確率、及びそれ以外のデータ値である確率、を夫々計算する。尚、状態予測部201は、同図に示す他のデータ項目(例えば、「遅延時分」や「乗車人数」等)についても同様にデータ値と確率分布を計算する。
【0035】
図6に戻り、続いて状態予測部201は、状態制約111を満たすようにS2011で求めた状態予測値102を修正する(S2013)。例えば、状態制約111が
図4の内容である場合、状態予測部201は、「路線Aを走行する列車」のグループのデータ項目である「走行位置」と「乗車人数」に関し、走行位置及び乗車人数の双方が同時に変化していれば、「走行位置が変化するとき、乗車人数は変化なし」との制約を遵守するように状態予測値102を修正する。また例えば、状態予測部201は、「路線Aを走行する列車」のグループのデータ項目である「走行位置」と「遅延時分」に関し、遅延時分が0で走行位置が時刻表よりも遅れていれば、「遅延時分が0のとき、走行位置は時刻表通り」という制約を遵守するように走行位置に応じて遅延時分を再計算し、状態予測値102を修正する。
【0036】
尚、状態予測部201は、以上の状態予測処理S2010により生成した状態予測値102を、後述の乖離評価処理2030に渡す。
【0037】
以上に示した状態予測処理S2010によれば、交通状態の特徴を表す単位であるデータ項目毎にデータ値の確率分布を状態予測値として求めることができ、適切かつ精度よく交通状態を予測することができる。
【0038】
図3に戻り、観測予測部202は、最新の観測センサ値103と観測特性112とに基づき、観測予測値104を生成する。観測センサ値103は、センサ装置2により実際に観測(取得)されたデータである。尚、本実施形態では、センサ装置2が事業者毎や観測対象毎に異なっていることを想定しており、各センサ装置2の観測のタイミングや観測するデータ項目、観測値の単位等は必ずしも共通していないものとする。
【0039】
図7に観測センサ値103の一例を示す。同図に示すように、観測センサ値103は、センサID1031、時刻1033、対象ID1035、データ項目1037、及びデータ値1039の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。尚、センサID1031、時刻1033、対象ID1035、データ項目1037は、観測センサ値103のキー項目である。
【0040】
センサID1031には、センサ装置2を一意に特定する識別子(名称或いは識別コード。以下、「センサID」と称する。)が設定される。
【0041】
時刻1033には、センサ装置2が観測センサ値に付与した時刻が設定される。上記時刻は、例えば、センサ装置2が観測した瞬間の時刻や観測センサ値を交通状態推定システム10に送信した時刻等、その意味は各センサ装置2について必ずしも共通ではない。
【0042】
対象ID1035には、前述した対象IDが設定される。データ項目1037には、前述したデータ項目名が設定される。
【0043】
データ値1039には、当該データ項目の観測結果を示す情報が設定される。例えば、データ項目1037が「走行位置」であれば、データ値1039には、駅コードや走行距離の値が設定される。またデータ項目1037が「乗車人数」であれば、データ値1039には、人数や重量の値が設定される。尚、データ値1039に設定される値の単位や粒度は各センサ装置2について必ずしも共通ではない。
【0044】
図3に戻り、観測特性112は、観測センサ値を観測(取得)する際のセンサ装置2の特性に関する情報であり、センサ装置2から送られてくる観測センサ値に基づき、本来あるはずの交通状態と当該交通状態が出現する確率を求める際に用いられる情報である。
【0045】
図8に観測特性112の一例を示す。同図に示すように、観測特性112は、時刻特性1121及びデータ値特性1122の各情報を含む。時刻特性1121は、観測センサ値103の時刻1033(センサ装置2が付与した時刻)と本来観測した瞬間の時刻との差に関する情報を含む。データ値特性1122は、観測センサ値103のデータ値1039と本来観測した瞬間にあるべきデータ値との差に関する情報を含む。
【0046】
図9に時刻特性1121の一例を示す。同図に示すように、時刻特性1121は、センサID11211、真時刻11213、及び確率11215の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。
【0047】
センサID11211には、前述したセンサIDが設定される。尚、センサID11211は、時刻特性1121のキー項目である。
【0048】
真時刻11213には、当該センサで観測される観測センサ値が本来観測されたはずの瞬間の時刻が取り得る値を示す情報が設定される。真時刻11213には、同図に示すように値の範囲を設定してもよいし、値を設定してもよい。また真時刻11213の内容は、日本語で記述してもよいし、数式等の他の方法で記述してもよい。
【0049】
確率11215には、当該センサで観測される観測センサ値の本来観測した瞬間の時刻が当該真時刻11213である確率(0~1の範囲の値)が設定される。尚、ある観測センサ値について、取り得る真時刻11213の確率11215を全て合計すると1になる。
【0050】
図10にデータ値特性1122の一例を示す。同図に示すように、データ値特性1122は、センサID11221、データ項目11223、センサデータ値11225、真時刻11231、真データ値11227、及び確率11229の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。尚、センサID11221、データ項目11223、及びセンサデータ値11225は、データ値特性1122のキー項目である。
【0051】
センサID11221には、前述したセンサIDが設定される。データ項目11223には、前述したデータ項目名が設定される。
【0052】
センサデータ値11225には、当該センサ装置2で観測(取得)される観測センサ値が当該データ項目において取り得るデータ値やデータ値を特定する情報が設定される。
【0053】
真時刻11231には、当該センサデータ値を取り得る真の観測時刻を特定する情報が設定される。
【0054】
真データ値11227には、当該センサ装置2で観測された観測センサ値103のデータ値1039が当該センサデータ値11225であった場合に本来観測されたはずの瞬間のデータ値が取り得る値を示す情報が設定される。尚、真データ値11227の内容は、日本語で記述してもよいし、数式等の他の方法で記述してもよい。
【0055】
確率11229には、当該センサ装置2で観測された観測センサ値103の本来観測した瞬間のデータ値が当該真データ値11227である確率(0~1の範囲の値)が設定される。尚、ある観測センサ値について、取り得る真データ値の確率を全て合計すると1に
なる。
【0056】
ここで時刻特性1121における確率11215やデータ値特性1122における確率11229は、条件付き確率として求められるものであってもよい。例えば、列車やバスの走行位置は常に単調増加するので、走行位置に関する上記確率(確率11215、確率11229)は、前回の走行位置に基づく条件付き確率として求めることができる。また例えば、列車やバスの遅延時分はダイヤと実際の走行状態の差に基づき計算されるので、同じ時刻での走行位置に基づく条件付き確率を定義することができる。
【0057】
図11は、観測予測部202が行う処理(以下、観測予測処理S2020と称する。)を説明するフローチャートである。観測予測処理S2020は、例えば、状態予測処理S2000が実行されるタイミングに合わせて(例えば、状態予測処理S2010と同時に)開始される。以下、同図とともに観測予測処理S2020について説明する。
【0058】
同図に示すS2021~S2025の処理は、交通状態推定システム10に接続するセンサ装置2毎に繰り返し(或いはセンサ装置2毎の並列処理として)で実行される。
【0059】
観測予測部202は、センサ装置2から受信した観測センサ値103と前述した観測特性112とに基づき、当該観測センサ値が本来観測されたはずの瞬間の真時刻及び真データ値と夫々の確率分布を計算し、中間生成物である観測真値105を生成する(S2023)。
【0060】
ここで観測予測部202は、S2023における真時刻の確率分布の計算を、時刻特性1121の真時刻11213と確率11215とに基づき行う。例えば、観測センサ値103が、
図7の「地上センサ」の「9時59分48秒」の値であり、
図9のように、時刻特性1121において、「地上センサ」について、真時刻「センサ時刻より30秒~40秒前」が設定され、確率「0.3」が設定されていれば、観測予測部202は、当該観測センサ値が本来観測されたはずの瞬間の真時刻が「9時59分8秒~18秒」である確率を「0.3」と推定する。
【0061】
また観測予測部202は、S2023における真データ値の確率分布の計算を、データ値特性1122における、該当するセンサID11221、データ項目11223、センサデータ値11225の真データ値11227、及び確率11229に基づき行う。例えば、観測センサ値103が、
図7の「地上センサ」の「走行位置」の「P~Q駅」であり、
図10に示すように、「地上センサ」の「走行位置」のセンサデータ値「P~Q駅」に、真データ値「P~Q駅」及び確率「0.5」が設定されていれば、観測予測部202は、当該観測センサ値が本来観測されたはずの瞬間の真データ値が「P~Q駅」である確率を「0.5」と推定する。
【0062】
観測予測部202は、以上のようにして求めた真時刻の確率分布と真データ値の確率分布とに基づき、中間生成物である観測真値105を生成する。
【0063】
図12に観測真値105の一例を示す。同図に示すように、観測真値105は、センサID1051、対象ID1052、データ項目1053、時刻1054、データ値1055、及び確率1056の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。尚、センサID1051、対象ID1052、及びデータ項目1053は、観測真値105のキー項目である。
【0064】
センサID1051には、前述したセンサIDが設定される。対象ID1052には、前述した対象IDが設定される。データ項目1053には、前述したデータ項目名が設定
される。本例では、当該観測センサ値103のデータ項目1037が格納される。時刻1054には、当該観測センサ値が本来観測した瞬間の時刻の取り得る値(または取り得る値の範囲)を特定する情報が設定される。
【0065】
データ値1055には、当該観測センサ値が本来観測されたはずの瞬間のデータ値の取り得る値(または取り得る値の範囲)を特定する情報が設定される。例えば、列車やバスの走行位置であれば駅コードや走行距離の値が、列車やバスの遅延時間であれば遅延時間の範囲が、乗車人数であれば人数や重量の値が格納される。当該データ項目が複数存在する場合、データ値1055には複数のデータ値のセットが設定される。本例では、例えば、データ項目1053に複数のデータ項目「走行位置」、「遅延時分」が設定されているので、データ値1055にはこれらをセットにした「[P~Q駅,30~60秒]」等が設定される。
【0066】
確率1056には、当該観測センサ値が本来観測された瞬間の時刻及びデータ値が、当該時刻1054及び当該データ値1055である確率(0~1の範囲の値)が設定される。本例では、
図9に示した真時刻の確率分布と
図10に示した真データ値の確率分布とに基づき、確率1056の値を決定している。尚、ある観測センサ値について、取り得る時刻及びデータ値の確率を全て合計すると1になる。
【0067】
図11に戻り、続いて観測予測部202は、S2023で生成した観測真値105に基づき、各センサ装置2が同じタイミング(時刻t)で(例えば同時に)状態を観測したと仮定したときに観測されると予測されるデータ値と確率分布とを計算し、観測予測値104を生成する(S2025)。観測予測値104の計算方法としては、例えば、列車やバスの走行位置の予測であれば、走行速度と走行時間から移動した距離を計算する方法や、遅延時分を考慮して時刻表のずれから計算する方法等がある。上記の計算方法は、状態予測部201と同様の方法としてもよいし、異なる方法としてもよい。
【0068】
図13は、S2025の処理で生成される観測予測値104の一例である。同図に示すように、観測予測値104は、センサID1041、対象ID1042、時刻1043、データ項目1044、経過時間1045、データ値1047、及び確率1048の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。尚、センサID1041、対象ID1042、時刻1043、及びデータ項目1044は、観測予測値104のキー項目である。
【0069】
センサID1041には、前述したセンサIDが設定され、観測真値105のセンサID1051のセンサIDが設定される。対象ID1042には、前述した対象IDが設定され、観測真値105の対象ID1052が設定される。
【0070】
時刻1043には、予測対象の時刻(時刻t)が設定される。例えば、時刻1043に「10時0分0秒」が設定されている場合は「10時0分0秒」に観測されるであろうデータを予測していることになる。
【0071】
データ項目1044には、前述したデータ項目名が設定され、観測真値105のデータ項目1053の値が設定される。
【0072】
経過時間1045には、観測センサ値103が実際に観測されてから、時刻1043に設定されている時刻までの経過時間が設定される。ここでは観測真値105の、当該センサID1041、当該対象ID1042、当該データ項目1044に対応する時刻1054の値を基準として経過時間の取り得る値の範囲を設定している。例えば、
図13に示すように、時刻1043が「10時0分0秒」であり、観測真値105の時刻1054が「9時58分48秒」から「9時59分18秒」の範囲に分布する場合は「42秒~72秒
」が設定される。
【0073】
データ値1047には、当該データ項目が当該時刻に観測されると予測される値または値の範囲が設定される。例えば、列車やバスの走行位置であればデータ値1047には駅コードや走行距離の値が、列車やバスの遅延時間であればデータ値1047には遅延時間の範囲が、乗車人数であればデータ値1047には人数や重量の値が設定される。当該データ項目が複数存在する場合、データ値1055には複数のデータ値のセットが設定される。本例では、例えば、データ項目1044に複数のデータ項目「走行位置」、「遅延時分」が設定されているので、データ値1047にはこれらをセットにした「[P~Q駅,30~60秒]」等が設定される。
【0074】
確率1048には、当該データ項目が当該データ値である確率(0~1の範囲の値)が設定される。ある時刻、ある対象、あるデータ項目について、取り得るデータ値の確率を全て合計すると1になる。
【0075】
図11に戻り、センサ装置2毎の処理(S2021~S2025のループ)が終了すると、続いて観測予測部202は、異なるセンサ装置2の観測予測値104を比較して観測予測値104を調整(修正、更新)する(S2027)。尚、比較する観測予測値104の対象は、そのデータ項目1044に対して状態制約111において対応するデータ項目1113が含まれるグループ1111が同じグループに属するデータ項目である。後述するように、状態推定値101及び状態予測値102のデータ項目と観測予測値104のデータ項目とは予め対応付けられている。
【0076】
ここで状態制約111において、同一のグループ1111に含まれるデータ項目1113は、観測に際してその挙動に関連性を有する。例えば、「路線Aを走行する列車」というグループにおけるデータ項目「走行位置、遅延時分、乗車人数」は、観測するセンサ装置2が異なっていたとしても、運行遅れや見合わせが生じていれば、それに応じた挙動が同時に観測されるはずである。従って、観測特性112のデータ値特性1122の確率11229として、例えば、「運行遅れが生じている」といった条件付き確率が定義され、同じ路線に関連する観測予測値104において全て運行遅れの確率が高くなっていれば、「運行遅れが生じている」確率の値がより高くなるように確率1048の値を調整する。
【0077】
このように、異なるセンサ装置2の観測予測値104を比較して観測予測値104を調整することで、異なるセンサ装置2により観測される情報の挙動の関連性を利用して観測予測値104の精度を向上することができる。
【0078】
観測予測部202は、以上の観測予測処理S2020によって生成した観測予測値104を乖離評価部203に渡す。
【0079】
以上のように、観測予測処理S2020によれば、観測特性112と観測センサ値103とに基づき、ある時刻における交通状態の、真時刻からの経過時間、データ値、及びデータ値を取り得る確率の分布を含む情報を観測予測値104として生成するので、センサ装置2の特性を考慮して精度の高い観測予測値104を生成することができる。
【0080】
図3に示す乖離評価部203は、状態予測部201と観測予測部202とが夫々同じ時刻tについて生成した状態予測値102と観測予測値104とを比較することにより乖離評価値106を生成する。尚、上記の同じ時刻tは、厳密に同じ時刻を意味するわけではなく実用上問題ない程度の差を許容する趣旨である。
【0081】
図14は、乖離評価部203が行う処理(以下、乖離評価処理S2030と称する。)
を説明するフローチャートである。乖離評価処理S2030は、例えば、状態予測部201から状態予測値102を受け取るとともに観測予測部202から観測予測値104を受け取ったことを契機として開始される。以下、同図とともに乖離評価処理S2030について説明する。
【0082】
同図に示すS2031~S2037の処理は、観測予測部202で生成された観測予測値104のセンサ装置2毎、データ項目毎に繰り返し(或いはセンサ装置2毎、データ項目毎の並列処理により)行われる。
【0083】
まず乖離評価部203は、観測予測値の観測信頼度を計算する(S2033)。ここで観測信頼度とは、観測予測値104の経過時間1045とデータ値1047の確率1048の分布とがどの程度信頼できるかを示す値である。例えば、経過時間1045については、経過時間が長いデータと短いデータとを比べると、経過時間の短いデータの方が鮮度が高く、より信頼できるということができる。ここで経過時間による観測信頼度の計算方法は必ずしも限定されないが、例えば、経過時間の逆数を取り、経過時間が短いほど観測信頼度の数値が大きく、経過時間が長いほど観測信頼度の数値が小さくなるように構成した計算式を用いる方法がある。またデータ値1047と確率1048の分布については、確率の分布が尖った分布と扁平な分布とを比べると、尖った分布の方がデータが集中しているため、より信頼できるということができる。尚、確率の分布の尖りによる観測信頼度を数値として計算する方法は必ずしも限定されないが、例えば、一般的な統計量として用いられる尖度の計算式などを用いて、尖っているほど観測信頼度の数値が大きく、扁平であるほど観測信頼度の数値が小さくなるように構成した計算式を用いる方法がある。また経過時間1045とデータ値1047と確率1048の双方を考慮した観測信頼度を数値として計算する方法もあり、その場合は、例えば、夫々の観測信頼度の数値の積算値等を用いる。
【0084】
乖離評価部203は、S2033で計算した観測信頼度の値を、後述する乖離評価値106の観測信頼度1066として設定する。
【0085】
続いて、乖離評価部203は、その後の処理で状態予測値102と観測予測値104を比較することができるように両者の次元を統一する(S2035)。例えば、状態予測値102の走行位置が走行距離で、観測予測値104の走行位置が駅単位で格納されている場合、そのままでは両者を比較することができないため、乖離評価部203は両者の単位を統一する。次元の統一は、状態予測値102の単位を観測予測値104の次元に変換してもよいし、逆方向に変換しもよい。また双方を別の共通の次元に変換してもよい。また次元や単位の変換は、予め用意した変換テーブルを用いて行うようにしてもよい。尚、本処理において統一された次元を後述する状態補正処理S2040で用いてもよい。
【0086】
また乖離評価部203は、状態予測値102のデータ項目と観測予測値104のデータ項目が一致しない場合(例えば、状態予測値102のデータ項目が「列車の走行状態」、データ値が「走行」、「停車」といった値で定義されており、観測予測値104のデータ項目が「走行位置」、データ値が「P~Q駅」である場合等)、データ項目の対応付けを行う。
【0087】
続いて、乖離評価部2013は、次元を統一した状態予測値102及び観測予測値104と、S2033で計算した観測信頼度の値とに基づき、乖離度を計算する(S2037)。ここで乖離度とは、状態予測値102の確率の分布と観測予測値104の確率の分布がどの程度離れているかを示す値である。観測のデータ項目ごとに観測信頼度が異なり、観測信頼度の程度によって、状態予測値102と観測予測値104の信頼度の比重が変わるため、乖離評価部2013は、観測したデータ項目毎に乖離度を計算する。確率分布が
どの程度離れているかを数値として計算する方法は必ずしも限定されないが、例えば、一般的な確率論の定義として用いられるバック・ライブラー情報量の計算式を用い、確率分布が離れているほど乖離度の数値が大きく、確率の分布が近いほど乖離度の数値が小さくなるように定義した計算式を用いる方法がある。
【0088】
乖離評価部2013は、S2037で計算した乖離度の値を後述する乖離評価値106の乖離度1068に設定する。
【0089】
図15に乖離評価値106の一例を示す。同図に示すように、乖離評価値106は、センサID1061、対象ID1062、時刻1063、観測データ項目1064、状態データ項目1065、観測信頼度1066、及び乖離度1068の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。尚、センサID1061、対象ID1062、時刻1063、観測データ項目1064、状態データ項目1065は、乖離評価値106のキー項目である。
【0090】
センサID1061には前述したセンサIDが設定される。対象ID1062には前述した対象IDが設定される。時刻1063には評価対象とする時刻が設定される。観測データ項目1064には前述したデータ項目名が設定される。
【0091】
状態データ項目1065は、状態推定値101及び状態予測値102で用いる、当該対象の状態に関するデータ項目が設定される。尚、状態推定値101及び状態予測値102のデータ項目(以下、「状態データ項目」と称する。)と観測予測値104のデータ項目(以下、「観測データ項目」と称する。)とは予め対応付けられている。1つの状態データ項目に対して複数の観測データ項目が対応づけられてもよい(つまり1つの状態を複数のセンサ装置2で観測してもよい)し、1つの状態データ項目に対して対応付けられる観測データ項目が無くてもよい(つまりその状態をセンサ装置2では観測できなくてもよい)。例えば、センサ装置2では観測していないドアの開閉状態などを状態データ項目1065として設定してもよい。
【0092】
観測信頼度1066には、前述した観測信頼度が設定される。乖離度1068には、前述した乖離度が設定される。
【0093】
乖離評価値106は、乖離評価処理S2030により生成した乖離評価値106を状態補正部204に渡す。
【0094】
図3に示す状態補正部204は、乖離評価部203が生成した乖離評価値106に基づき、時刻tにおける状態推定値101を生成する。より詳細には、状態補正部204は、状態予測部201が生成した状態予測値102のデータ値1017及び確率1019に設定されている値を、観測予測部202が生成した観測予測値104と乖離評価部203が生成した乖離評価値106に基づき書き換えたものを新たな状態推定値101として設定する。
【0095】
図16は、状態補正部204が行う処理(以下、状態補正処理S2040と称する。)を説明するフローチャートである。状態補正処理S2040は、例えば、状態補正部204が乖離評価部203から乖離評価値106を受け取ったことを契機として開始される。以下、同図とともに状態補正処理S2040について説明する。
【0096】
同図に示すS2041~S2045の処理は、状態予測値102の各データ項目1015について、乖離評価値106の乖離度1068が小さいものから優先して、つまり状態予測値102と観測予測値104の乖離が少ないデータ項目から優先して、順に繰り返し実行される。尚、乖離評価値106の乖離度1068には、観測予測値104のデータ項
目1044に対応付けられた値が設定されているため、乖離評価値106の複数のレコードが該当する場合もあれば、該当するレコードが無い場合もある。複数のレコードが該当する場合は、例えば、当該レコードの中で最小の乖離度1068の値を用いて処理順序を決定する。該当するレコードが無い場合は、乖離評価値106の全てのレコードについて処理順序を決定した後に、当該データ項目に関する処理を実行する。
【0097】
まず状態補正部204は、該当する状態予測値102及び観測予測値104のデータ値及び確率分布を統合する(S2043)。本例では、状態予測値102と観測予測値104の次元は前述した乖離評価処理S2035にて統一されているものとする。状態補正部204は、該当する乖離評価値106の観測信頼度1066の値に応じて、観測信頼度1066の値が小さければ、つまり観測予測値104の信頼度が低ければ、状態予測値102のデータ値1017と確率1019の分布に近づくように状態予測値102及び観測予測値104のデータ値及び確率分布を統合する。逆に、観測信頼度1066の値が大きければ、つまり観測予測値104の信頼度が高ければ、観測予測値104のデータ値1047、確率1048の分布に近づくように状態予測値102及び観測予測値104のデータ値及び確率分布を統合する。
【0098】
例えば、データ項目「走行位置」について、状態予測値102において、データ値1017が「P駅」である確率1019が「0.8」、データ値1017が「P~Q駅」である確率1019が「0.2」であり、観測予測値104において、データ値1047が「P駅」である確率1048が「0.2」であり、データ値1047が「P~Q駅」である確率1048が「0.8」であるとき、観測信頼度1066の値が小さければ、データ値「P駅」の確率は「0.8」に、データ値「P~Q駅」の確率は「0.2」に近づくように状態予測値102及び観測予測値104のデータ値及び確率分布を統合する。逆に、観測信頼度1066の値が大きければ、データ値「P駅」の確率は「0.2」に、データ値「P~Q駅」の確率は「0.8」に近づくように状態予測値102及び観測予測値104のデータ値及び確率分布を統合する。また観測信頼度1066の値が大きくも小さくもなければ、状態予測値102と観測予測値104の平均に近づくように状態予測値102及び観測予測値104のデータ値及び確率分布を統合する。尚、観測信頼度1066の大小は、例えば、予め設定しておいた閾値の値との比較に基づき判定する。該当する観測予測値104のデータが存在しない場合には、例えば、状態予測値102のデータを統合後のデータとする。
【0099】
ここで状態予測値102は、どんな時刻においても遵守すべき交通状態のあるべき姿の条件である状態制約111を遵守する定義されているため、上記のデータの統合に際しても状態制約111は遵守する必要がある。つまり状態予測値102で範囲外となっているデータ値は補正後も取るはずがない。また順序が早いループ(優先して処理されるデータ項目のループ)程、状態予測値102と観測予測値104の乖離が少なく信頼できるデータが対象になっているので、順序が遅いループは順序が早いループで適用される状態制約111の条件を遵守するようにする。これにより統合後のデータの信頼性を高めることができる。
【0100】
以上のように、状態補正部204は、観測予測値104の信頼度に応じて、適切な方向に状態予測値102及び観測予測値104のデータ値及び確率分布を統合するので、状態推定値101の精度を高めることができる。
【0101】
続いて、状態補正部204は、S2043で統合されたデータ値と確率分布とを、状態予測値102の次元に変換する(S2045)。この次元の変換には、例えば、前述した乖離評価処理S2035で用いた変換テーブルを用いてもよい。元々状態予測値102の次元に統一されているのであれば必ずしも上記の変換は行わなくてもよい。
【0102】
状態補正部204は、S2041~S2045の全てのループの処理を終了すると、状態予測値102のデータ値1047と確率1049を、統合したデータ値と確率分布とで書き換えたデータを、当該時刻の新たな状態推定値101として記憶する(S2047)。
【0103】
続いて、状態補正部204は、状態制約111や観測特性112の内容(以下、パラメータと称する。)を調整するか否かを判定する(S2049)。パラメータの調整の要否の指定は、事前に設定しておいてもよいし、状態補正部204がユーザインタフェース404から都度受け付けるようにしてもよい。パラメータを調整(状態制約111や観測特性112の内容を更新)する場合(S2049:YES)、
図3に示すパラメータ調整部205がパラメータの調整処理を行う。パラメータを調整しない場合、状態補正処理S2040は終了する。
【0104】
パラメータ調整部205は、例えば、状態補正部204から状態推定値101を受け取ったことを契機として、或いは現実の交通状態を観察しているユーザ4からの調整値の入力を受け付けたことを契機としてパラメータの調整処理を開始する。
【0105】
例えば、パラメータ調整部205は、センサ装置2の時刻と真時刻と差が1日毎に変動する場合には、観測特性112の時刻特性1121を調整(該当する真時刻11213と確率11215の値を1日に1度調整)することにより確率の分散を小さくして精度を高める。また過去の観測に応じて確率が変動する場合、パラメータ調整部205は、観測特性112のデータ値特性1122を調整(真データ値11227と確率11229の値を調整)することにより確率の精度を高める。調整処理を行う条件は、状態制約111や観測特性112に条件付き確率として定義しておいてもよいし、調整処理のために別途定義しておくようにしてもよい。また例えば、ユーザ4が実際に列車に乗車できたかを観察したり、事業者がドアの開閉時刻を観察する等することにより取得した情報(既設のセンサ装置2では観測できない情報)をユーザインタフェース404を介して受け付け、パラメータ調整部205が、受け付けた上記情報に基づき、観測特性112の時刻特性1121の真時刻11213と確率11215、観測特性112のデータ値特性1122の真データ値11227と確率11229の値を調整して確率の精度を高めるようにしてもよい。状態制約111のパラメータの調整についても観測特性112の場合と同様にして行うことができる。尚、既存のパラメータを調整するだけでなく、状態制約111の制約1115の条件や観測特性112の条件を増減するようにしてもよい。
【0106】
以上に説明したように、本実施形態の交通状態推定システム10によれば、現実と乖離の少ない交通状態を推定して状態推定値101を生成することができる。
【0107】
交通状態推定システム10は、生成した状態推定値101を、通信ネットワーク301を介して経路検索システム3に随時提供(送信)する。
【0108】
経路検索システム3は、交通状態推定システム10から提供された状態推定値101とユーザ装置5から受け付けた経路検索条件(出発地や目的地、交通機関の利用時刻等)とに基づき経路情報を生成し、ユーザ装置5に経路検索サービス等のサービスを提供する。経路検索システム3は、例えば、定期的(例えば、1年に数回程度の頻度)に策定される時刻表の更新に連動して経路情報を生成する。また経路検索システム3は、例えば、交通状態推定システム10から状態推定値101の提供を受けたことを契機として経路情報を生成する。
【0109】
図17は、経路検索システム3がユーザ装置5に提示する画面(以下、経路検索結果画
面41と称する。)の一例である。同図に示すように、経路検索結果画面41は、検索結果表示欄411と利用結果入力欄413とを含む。
【0110】
検索結果表示欄411には、交通状態推定システム10から提供される状態推定値101に基づき経路検索システム3が生成した経路検索結果が表示される。本例では、列車の見込み着発時刻や見込み乗車可否が表示されている。経路検索システム3のユーザは、検索結果表示欄411を参照して現実と乖離の少ない経路情報を知ることができる。尚、本例では見込み時刻として最適と思われる1つの値を表示しているが、交通状態推定システム10は確率的に値を推定しているので見込み時刻は確率的に表示するようにしてもよい。
【0111】
利用結果入力欄413では、ユーザから、経路検索結果を利用した結果に関する情報の入力を受け付ける。ユーザがラジオボタン4131を操作して「乗車できた」または「乗車できなかった」のいずれかを選択し、送信ボタン4132を操作すると、選択した内容が交通状態推定システム10のパラメータ調整部205に送信される。パラメータ調整部205は、上記内容を受信すると、当該内容に基づき状態制約111または観測特性112を調整する。
【0112】
このように、経路検索システム3のユーザは、経路検索結果画面41を参照することで、現実と乖離の少ない経路情報を知ることができる。また交通状態推定システム10は、「乗車できた」または「乗車できなかった」といったユーザが実際に観察した情報に基づき状態制約111または観測特性112を調整するので、状態推定値101の精度を高めることができる。
【0113】
図18は、交通状態推定システム10がユーザインタフェース404を介してユーザ4に提供する画面(以下、予測結果確認画面42と称する。)の一例である。ユーザ4は、例えば、鉄道やバスの事業者である。尚、交通状態推定システム10を通信ネットワーク303に接続してユーザ装置5と通信できるようにし、ユーザ装置5を介して経路検索システム3のユーザに予測結果確認画面42を提供するようにしてもよい。
【0114】
同図に示すように、予測結果確認画面42は、処理結果出力欄421とユーザ入力受付欄423とを含む。
【0115】
処理結果出力欄421には、交通状態推定システム10により推定された列車位置の状態予測値102の確率分布と観測予測値104の確率分布とがグラフ形式で視覚的に表示される。ユーザは処理結果出力欄421の内容に基づき、交通状態推定システム10の内部の処理状況を知ることができ、状態予測値102と観測予測値104の乖離の様子を知ることができる。
【0116】
ユーザ入力受付欄423は、ユーザが実際に観察した結果の入力を受け付ける。同図では走行距離の入力枠4231に「1.8」という数値が設定されている。ユーザが送信ボタン4232を操作すると、入力枠4231の内容が交通状態推定システム10のパラメータ調整部205に送信される。パラメータ調整部205は、上記内容を受信すると、受信した内容に基づき状態制約111及び観測特性112を調整する。
【0117】
このように、交通状態推定システム10のユーザは、予測結果確認画面42を参照することで、状態予測値102と観測予測値104の乖離の様子を知ることができる。また交通状態推定システム10は、ユーザが実際に観察した結果に基づき状態制約111または観測特性112を調整するので、状態推定値101の精度を高めることができる。
【0118】
以上に説明したように、交通状態推定システム10は、繰り返し更新される最新の状態推定値101に基づく状態予測値102と、センサ装置2により観測される観測センサ値103に基づく観測予測値104とを生成し、状態予測値102と観測予測値104との乖離の度合いに基づき状態推定値101を更新するので、精度の高い状態推定値101を得ることができる。また交通状態推定システム10は、状態推定値101を求める際に状態制約111を考慮するので、適切な条件下で状態予測値102を求めることができる。また交通状態推定システム10は、観測予測値104を求める際はセンサ装置2の観測特性112を考慮するので、精度の高い観測予測値104を求めることができる。
【0119】
このように、交通状態推定システム10によれば、精度の高い状態推定値101を生成することができ、現実の交通状態を精度よく予測することができる。そして経路検索システム3は、交通状態推定システム10から提供される状態推定値101に基づき、現実との乖離の少ない経路情報を生成することができ、これを利用して行われる経路情報提供サービス等のサービスの質を向上させることができる。
【0120】
尚、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0121】
上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。或いは、上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば仮想マシンで設計する等によりクラウドシステムで実現してもよい。
【0122】
上記の各構成、及び機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0123】
制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0124】
本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれる。更に特許請求の範囲に記載された構成は、特許請求の範囲で明示している組合せ以外にも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0125】
1 情報処理システム、2 センサ装置、3 経路検索システム、4 ユーザ、5 ユーザ装置、301~303 通信ネットワーク、10 交通状態推定システム、101 状態推定値、102 状態予測値、103 観測センサ値、104 観測予測値、105 観測真値、106 乖離評価値、111 状態制約、112 観測特性、1121 時刻特性、1122 データ値特性、203 乖離評価部、204 状態補正部、205 パラメータ調整部、S2010 状態予測処理、S2020 観測予測処理、S2030 乖離評価処理、S2040 状態補正処理、41 経路検索結果画面、42 予測結果確認画面