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  • 特許-足場の組立及び解体用の連結体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】足場の組立及び解体用の連結体
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/14 20060101AFI20221017BHJP
   E04G 7/34 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E04G1/14 303A
E04G7/34 303A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018199506
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020066895
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】509083522
【氏名又は名称】有限会社佐野仮設興業
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】佐野 吉弘
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020623(JP,A)
【文献】特開2010-222884(JP,A)
【文献】特開2017-206859(JP,A)
【文献】特開2006-097299(JP,A)
【文献】特表2000-516310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/14
E04G 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の各複数本の柱と、前後の相対応する柱同士を対にして連結する横架材と、前側の左右方向で相隣る柱同士を連結する前連結材と、後側の左右方向で相隣る柱同士を連結する後連結材と、各柱の所定高さ位置に支持される踏板とを有して構成される足場ユニットが、横架材と前連結材と後連結材の各材に備えた楔体と、柱に備えた楔受との楔結合を介して、横架材と前連結材と後連結材の各材のそれぞれを柱に着脱可能に連結される楔緊結式とされ、この足場ユニットの複数個が配置されて構成される足場の組立及び解体に用いられる連結体であって、
足場ユニットの左右方向で相隣る柱のそれぞれに備えてある各楔受に係入できる複数の係合孔を備え、それらの柱同士を互いに連結可能にしたものであり、
前記連結体が板体からなり、
前記連結体が概ね直角三角形板体からなり、該板体が概ね直交する一辺と他の一辺を有するとき、一辺の一端側で交差する他の一辺に沿う2位置に1本の柱の上下2位置に備えた2個の楔受のそれぞれに係入できる2個の係合孔を備え、一辺の他端側の1位置に他の1本の柱に備えた1個の楔受に係入できる1個の係合孔を備える 足場の組立及び解体用の連結体。
【請求項2】
前記連結体が、足場ユニットの前側の左右方向で相隣る柱同士を互いに連結する前側連結体と、後側の左右方向で相隣る柱同士を互いに連結する後側連結体とからなる請求項1に記載の足場の組立及び解体用の連結体。
【請求項3】
前後の各複数本の柱と、前後の相対応する柱同士を対にして連結する横架材と、前側の左右方向で相隣る柱同士を連結する前連結材と、後側の左右方向で相隣る柱同士を連結する後連結材と、各柱の所定高さ位置に支持される踏板とを有して構成される足場ユニットが、横架材と前連結材と後連結材の各材に備えた楔体と、柱に備えた楔受との楔結合を介して、横架材と前連結材と後連結材の各材のそれぞれを柱に着脱可能に連結される楔緊結式とされ、この足場ユニットの複数個が配置されて構成される足場の組立及び解体方法であって、
足場ユニットの左右方向で相隣る柱のそれぞれに備えてある各楔受に係入できる複数の係合孔を備え、それらの柱同士を互いに連結可能にする連結体を用い、
上記足場ユニットの左右方向の一部で相隣る柱同士を1つの連結体によって連結するとともに、左右方向の他の一部で相隣る柱同士を他の1つの連結体によって連結する状態で、それらの左右方向の上記一部で相隣る柱の一方又は上記1つの連結体に取付けた吊り手段と、それらの左右方向の上記他の一部で相隣る柱の一方又は上記他の1つの連結体に取付けた他の吊り手段を介して、当該足場ユニットを吊り上げ又は吊り下ろす工程を有してなる足場の組立及び解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は足場の組立及び解体用の連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場では、建物の躯体に沿う左右及び上下に複数個の足場ユニットを隣接及び積層してなる足場を用いている。足場ユニットとしては、例えば特許文献1に記載の楔緊結式足場ユニットがある。
【0003】
楔緊結式足場ユニットは、前後の各複数本の柱と、前後の相対応する柱同士を対にして連結する横架材と、前側の柱同士を連結する前連結材と、後側の柱同士を連結する後連結材と、各柱の所定高さ位置に支持される踏板とを有して構成される。そして、横架材と前連結材と後連結材の各材に備えた楔体と、柱に備えた楔受との楔結合を介して、横架材と前連結材と後連結材の各材のそれぞれが柱に着脱可能に連結される。
【0004】
即ち、楔緊結式足場ユニットは、柱、横架材、前連結材、後連結材等の各材を別体として取扱うものであり、運搬保管時の嵩張りがないし、各材を軽作業で短時間にユニット化でき、各材の使用経過による変形ひずみも吸収してユニット化できる。また、長尺柱の採用によって、1個の足場ユニットで2層又は3層分(建物の2階又は3階分)等の足場を構築することもできる。
【0005】
このような楔緊結式足場ユニットは、建築現場における足場の組立及び解体の安全性、生産性を向上するため、地上でユニット化した足場ユニットをクレーン等で吊り上げて下層側で設置済の足場ユニットの上に搭載して連結し、又は上層で使用済となった足場ユニットを下層側の足場ユニットから外してクレーン等で地上に吊り下げることとしている。
【0006】
ところが、クレーン等に設けた吊りワイヤで、楔緊結式足場ユニットを吊る場合、例えば前後の各複数本の柱を左右方向に多列(3列以上)設けたとき、前後のそれぞれで、左右両側の柱のみを吊りワイヤに取付けて吊ると、左右方向における中間の柱が前後の連結材との楔結合の外れ等により落下したり、中間の柱が楔結合されている前後の連結材が大きく沈み込む如くに垂れ下がって楔の折損等を生ずるおそれがある。これに対し、前後のそれぞれで、左右方向における全ての柱を吊りワイヤに取付けて吊るときには、柱本数分の多数本の吊りワイヤが必要になる。
【0007】
そこで、本出願人は、特許文献2に記載の如く、クレーン等に設けた吊りワイヤで足場ユニットを、安全、確実、簡易に吊るべく、足場ユニットの前後の左右方向に多列をなす各複数本の柱の全てを一直線状に横切るように配置されて各柱に少なくともそれらの軸方向にて止められた吊りビームを介して、当該足場ユニットを吊り上げ又は吊り下ろすものを提案した。
【0008】
特許文献2に記載の足場の組立及び解体方法によれば、足場ユニットの前後の柱の本数が多数本であっても、多数の吊りワイヤを用意することなく、前後の全柱を横切る吊りビームを用意し、この吊りビームを各柱に少なくとも軸方向にて止めることにより、この吊りビームを介して足場ユニットを簡易に吊ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-280382号公報
【文献】特開2010-222884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の足場の組立及び解体方法には、以下の問題点がある。
【0011】
(1)足場ユニットの前後の左右方向に多列をなす各複数本の柱の全てを一直線状に横切るように配置され、左右方向に連続する前後の各吊りビームの長さLは、左右方向にn列をなす全n本の柱群の相隣る柱の間隔をkとするとき、L=n×kの如くに長尺となる(例えばn=4、k=900mmとするとき、L=3.6m)。前後の各吊りビームは、前後に各n本の柱を有してなる大型の足場ユニットを吊る際に、該吊りビーム自身に曲げを生ずることのない強度を備える必要があって、例えば大断面の鉄材から構成される等による大重量物になり、作業者に一定以上の作業負荷を課すものになる。
【0012】
(2)前後の各吊りビームは、足場ユニットの前後の左右方向に多列をなす各複数本の柱の全てを一直線状に横切って、各柱にそれらの軸方向にて止められる。従って、各複数本の柱のうちの一部の柱が、上下の短尺柱を上下に嵌着して長尺化されたものであり、吊りビームが上記一部の柱における上短尺柱に止められる場合には、当該吊りビームを用いて足場ユニットを吊ったときに、当該一部の柱の下短尺柱が対応する上短尺柱の下端部から抜け落ち、当該足場ユニットを吊り上げ又は吊り下ろしできない。
【0013】
本発明の課題は、足場ユニットをクレーン等によって簡易かつ確実に吊ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、前後の各複数本の柱と、前後の相対応する柱同士を対にして連結する横架材と、前側の左右方向で相隣る柱同士を連結する前連結材と、後側の左右方向で相隣る柱同士を連結する後連結材と、各柱の所定高さ位置に支持される踏板とを有して構成される足場ユニットが、横架材と前連結材と後連結材の各材に備えた楔体と、柱に備えた楔受との楔結合を介して、横架材と前連結材と後連結材の各材のそれぞれを柱に着脱可能に連結される楔緊結式とされ、この足場ユニットの複数個が配置されて構成される足場の組立及び解体に用いられる連結体であって、足場ユニットの左右方向で相隣る柱のそれぞれに備えてある各楔受に係入できる複数の係合孔を備え、それらの柱同士を互いに連結可能にしたものであり、前記連結体が板体からなり、前記連結体が概ね直角三角形板体からなり、該板体が概ね直交する一辺と他の一辺を有するとき、一辺の一端側で交差する他の一辺に沿う2位置に1本の柱の上下2位置に備えた2個の楔受のそれぞれに係入できる2個の係合孔を備え、一辺の他端側の1位置に他の1本の柱に備えた1個の楔受に係入できる1個の係合孔を備えるようにしたものである。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記連結体が、足場ユニットの前側の左右方向で相隣る柱同士を互いに連結する前側連結体と、後側の左右方向で相隣る柱同士を互いに連結する後側連結体とからなるようにしたものである。
【0016】
請求項3に係る発明は、前後の各複数本の柱と、前後の相対応する柱同士を対にして連結する横架材と、前側の左右方向で相隣る柱同士を連結する前連結材と、後側の左右方向で相隣る柱同士を連結する後連結材と、各柱の所定高さ位置に支持される踏板とを有して構成される足場ユニットが、横架材と前連結材と後連結材の各材に備えた楔体と、柱に備えた楔受との楔結合を介して、横架材と前連結材と後連結材の各材のそれぞれを柱に着脱可能に連結される楔緊結式とされ、この足場ユニットの複数個が配置されて構成される足場の組立及び解体方法であって、足場ユニットの左右方向で相隣る柱のそれぞれに備えてある各楔受に係入できる複数の係合孔を備え、それらの柱同士を互いに連結可能にする連結体を用い、上記足場ユニットの左右方向の一部で相隣る柱同士を1つの連結体によって連結するとともに、左右方向の他の一部で相隣る柱同士を他の1つの連結体によって連結する状態で、それらの左右方向の上記一部で相隣る柱の一方又は上記1つの連結体に取付けた吊り手段と、それらの左右方向の上記他の一部で相隣る柱の一方又は上記他の1つの連結体に取付けた他の吊り手段を介して、当該足場ユニットを吊り上げ又は吊り下ろす工程を有してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
(請求項1、
(a)足場ユニットの左右方向に多列をなす複数本の柱が連結体を介して互いに連結される。従って、クレーン等に設けた吊りワイヤ等の吊り手段が一部(及び他の一部)の柱又は1つ(及び他の1つ)の連結体に取付けられて当該足場ユニットを吊るとき、各連結体の係合孔と各柱の楔受との係合を介して当該足場ユニットの全体が一体化された状態で吊り上げ又は吊り下ろしできるものになる。従って、足場ユニットの左右方向に多列をなす柱の本数が多数本であっても、多数の吊りワイヤを用意することなく、当該足場ユニットを簡易に吊ることができる。
【0020】
(b)足場ユニットは、当該足場ユニットの左右方向の一部で相隣る柱同士を互いに連結する連結体と、左右方向の他の一部で相隣る柱同士を互いに連結する他の連結体により、それらの全体に渡る柱が互いに連結されるものになる。従って、各連結体は足場ユニットの左右方向に多列をなす各複数本の柱の全てを一直線状に横切るような、大断面かつ長尺をなすものでなく、軽量物となって作業者の取り扱い性は良く、作業者の作業負担を軽減できる。
【0021】
(c)各連結体は、足場ユニットの左右方向に多列をなす複数本の柱の全てを一直線状に横切って、各柱にそれらの軸方向にて止められるものでなく、足場ユニットの左右方向の各部分のそれぞれにおいて相隣る柱同士を互いに連結するものになる。従って、足場ユニットの左右方向における一部の柱が上下の短尺柱を上下に嵌着されて長尺化されたものであるとき、当該一部の柱に対する連結体の適用を当該一部の柱における下短尺柱に係合させるものとすることにより、当該足場ユニットを吊ったときの当該一部の柱における上短尺柱の下端部からの下短尺柱の抜け落ちを回避し、当該足場ユニットを吊り上げ又は吊り下ろしできる。
(請求項1)
(d)前記連結体が板状をなすものとすることにより、当該連結体の軽量化の確実を図り、作業者の取り扱い性の向上、作業負担の一層の軽減を実現できる。
(請求項1)
(e)足場ユニットを吊ったとき、直角三角形状板体からなる連結体は、一端側の2個の係合孔を1本の柱の上下2個の楔受に係合し、他端側の1個の係合孔を他の1本の柱の楔受に係合する。従って、上記他の1本の柱の側から連結体の他端側に作用する力の回転モーメントが、連結体の一端側で上記1本の柱の上下2個の楔受に回り止めされて支持される。これにより、連結体は相隣る2本の柱に安定的に係合し、当該足場ユニットを安定的に吊り上げ又は吊り下ろしできる。しかも、連結体は直角三角形状をなすことにより、両側に各2個の係合孔を備えて矩形状をなすものに比して、より軽量化されるものになる。
【0022】
(請求項2)
(f)前記(a)乃至(e)の連結体が、足場ユニットの前側の左右方向で相隣る柱同士を互いに連結する前側連結体と、後側の左右方向で相隣る柱同士を互いに連結する後側連結体とからなるものとすることにより、足場ユニットを構成する前後左右の全部の柱をそれらの連結体によって互いに確実に連結し、当該足場ユニットを安定的に吊り上げ又は吊り下ろしできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は足場ユニットの構築状態を示す全体斜視図である。
図2図2はクレーンによる足場ユニットの吊り状態を示す斜視図である。
図3図3は足場ユニットに連結体を取付けた状態を示す正面図である。
図4図4は足場ユニットに連結体を取付けた状態の変形例を示す正面図である。
図5図5図3の要部拡大図である。
図6図6は柱の楔受に対する連結体の脱落防止構造を示す模式図である。
図7図7は柱の楔受に対する連結体の他の脱落防止構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示す足場ユニット10は、前側の複数本(本実施例では4本)の柱11Fと、後側の複数本(本実施例では4本)の柱11Rと、前後の相対応する柱11F、11R同士を対にして連結する横架材12と、前側の柱11F同士を連結する前連結材13Aと、後側の柱11R同士を連結する後連結材13Bと、各柱11F、11Rの所定高さ位置に支持される踏板14とを有して構築される。尚、足場ユニット10において、足場ユニット10が使用される建物の躯体から遠い側を前側、躯体に近い側を後側というものとする。
【0027】
本実施例の足場ユニット10は、着脱連結式であり、柱11F、11Rに着脱連結部20を介して、横架材12と前連結材13Aと後連結材13Bの各材のそれぞれが連結されてなり、各柱11F、11Rの踏板14の上方に設けられる前連結材13Aと後連結材13Bを作業者の腰高等に対応する手摺15とするものである。踏板14の両端部に設けられている各2個のフック14Aが相隣る横架材12、12に係着されて設けられる。
【0028】
本実施例の着脱連結式足場ユニット10は、楔緊結式であり、各柱11F、11Rの正背面に設けられる2個の袋状の楔受21、21と、各柱11F、11Rの左右側面に設けられる2個の袋状の楔受22、22と、各材12、13A、13Bの両端部に設けられる楔体23の組合せにより、前記着脱連結部20を構成する。本実施例では、楔受21を楔受22の下側に段差をなすように配置している。横架材12の両端部の楔体23、23を前後の相対応する柱11F、11Rの相対向する楔受21、21に挿入して押下げることにて、楔結合する。前連結材13Aの両端部の楔体23、23を相隣る前側の柱11F、11Fの相対向する楔受22、22に挿入して押下げることにて、楔結合する。後連結材13Bの両端部の楔体23、23を相隣る後側の柱11R、11Rの相対向する楔受22、22に挿入して押下げることにて、楔結合する。
【0029】
従って、足場ユニット10は、建築現場の地上にて以下の如くに構築される。
【0030】
(1)地面の上にアンダーベース1が設置され、アンダーベース1の上にパイプジャッキ2が着座される。
【0031】
(2)各柱11F、11Rの下端中空部がアンダーベース1の上のパイプジャッキ2に挿通されて支持される。前後の相対応する柱11F、11Rの楔受21、21に横架材12の両端部の楔体23を楔結合し、前側の相隣る柱11F、11Fの楔受22に前連結材13Aの両端部の楔体23を楔結合し、後側の相隣る柱11R、11Rの楔受22に後連結材13Bの両端部の楔体23を楔結合し、相隣る横架材12、12に踏板14の両端部のフック14Aを係着する。
【0032】
しかるに、建築現場では、足場ユニット10を上述の如くに地上にて構築し、複数個の足場ユニット10を建物の躯体に沿う左右及び上下方向に順に隣接又は積層するように並べて配置することにて足場を組立て、その後、解体する。即ち、地上でユニット化した足場ユニット10をクレーン100で吊り上げて下層側の設置済の足場ユニット10の上に搭載して連結し、又は上層で使用済となった足場ユニット10を下層側の足場ユニット10から外してクレーン100で地上に吊り下げる。以下、足場ユニット10を用いた足場の組立及び解体方法について説明する。
【0033】
本実施例では、図2図3に示す如く、足場ユニット10の前側の左右方向で相隣る柱11F、11Fのそれぞれに備えてある各楔受21に係入できる複数の係合孔41を備え、それらの相隣る柱11F同士を互いに連結する前側連結体30Fを用いる。
【0034】
また、本実施例では、足場ユニット10の後側の左右方向で相隣る柱11R、11Rのそれぞれに備えてある各楔受21が係入できる複数の係合孔41を備え、それらの相隣る柱11R同士を互いに連結する後側連結体30Rを用いる。
【0035】
本実施例において、前側連結体30Fと後側連結体30Rは同一形態の板体から構成される。
【0036】
尚、図2図3は、足場ユニット10の前側の柱11F、前側連結体30Fの背面に後側の柱11R、後側連結体30Rが重なるように配置されたものを例示していて、後側の柱11R、後側連結体30Rを図示していない。
【0037】
従って、足場ユニット10の前側において、足場ユニット10の左右方向の一部で相隣る柱11FAと11FB同士を互いに連結する左側の第1の連結体31Fと、左右方向の他の一部で相隣る柱11FCと11FD同士を互いに連結する右側の第2の連結体32Fにより、足場ユニット10の全体に渡って、その前側で相隣る柱11FAと11FBが連結体31Fを介して互いに連結されるとともに、相隣る柱11FCと11FDが連結体3Fを介して互いに連結される。
【0038】
同様に、足場ユニット10の後側において、足場ユニット10の左右方向の一部で相隣る柱11RAと11RB同士を互いに連結する左側の第1の連結体31Rと、左右方向の他の一部で相隣る柱11RCと11RD同士を互いに連結する右側の第2の連結体32Rにより、足場ユニット10の全体に渡って、その後側で相隣る柱11RAと11RBが連結体31Rを介して互いに連結されるとともに、相隣る柱11RCと11RDが連結体32Rを介して互いに連結される。
【0039】
即ち、本実施例による足場の組立及び解体方法では、足場ユニット10の全体に渡って、前後左右で相隣る柱11F(11FAと11FB、11FCと11FD)、及び柱11R(11RAと11RB、11RCと11RD)が前側連結体30F(31F、32F)、及び後側連結体30R(31R、32R)を介して互いに連結された状態で、クレーン100に設けた吊りワイヤ101が例えば中央2本の柱11FBと柱11FC、柱11RBと柱11RC(又は左右の連結体31Fと32F、31Rと32R)に取付けられ、当該足場ユニット10を吊り上げ又は吊り下ろす工程を有するものになる。この場合、クレーン100に設けた吊りワイヤ101は左右の柱11FAと柱11FD、柱11RAと柱11RDに取付けられても良い(図3に二点鎖線で示した吊りワイヤ101)。
【0040】
図4は、図3に示した足場ユニット10の変形例である足場ユニット10Aに係る。足場ユニット10Aは、左右方向における一部の柱11F(例えば11FA)が上下2本の短尺柱A1、A2を上下に嵌着されて長尺化され(上短尺柱A1の下端内径部に下短尺柱A2の上端縮径部を嵌合する)、他の柱11F(例えば11FB乃至11FD)が1本物で長尺状をなすものとされたものである。この場合、足場ユニット10Aの上記一部の柱11FAに対する連結体30Fの適用が、当該一部の柱11FAにおける下短尺柱A2に係合させるものとする。即ち、例えば連結体30Fの係合孔41(図5で後述する係合孔41C)が柱11FAにおける下短尺柱A2の楔受21に係入される。
【0041】
尚、足場ユニット10Aでは、上記一部の柱11Fにおける下短尺柱A2に上記の1個の連結体30Fを適用することに加え、当該柱11Fにおける上短尺柱1Aに他の1個の連結体30F(図4に二点鎖線で示した30F)を適用しても良いことは勿論である。
【0042】
また、柱ユニット10、10Aでは、中央で相隣る柱11FBと11FC同士(又は柱11RBと11RC同士)を、第3の連結体33F(又は連結体33R)(図3図4)を介して互いに連結しても良い。
【0043】
ここで、前側連結体30F(後側連結体30Rも同じ)は、図5に示す如く、概ね直角三角形状板体からなり、該板体が概ね直交する短辺と長辺を有するとき、長辺の一端側で交差する短辺に沿う2位置に1本の柱11Fの上下2位置に備えた2個の楔受21(21A、21B)のそれぞれに係入できる2個の係合孔41(41A、41B)を備え、長辺の他端側の一位置に他の1本の柱11Fに備えた1個の楔受21(21C)に係入できる1個の係合孔41(41C)を備える。
【0044】
尚、図5に示した連結体30F(連結体30Rも同じ)にあっては、直角三角形状板体の長辺の他端側に設けた1個の係合孔41(41C)に対し、該長辺に沿って隣接する1個以上(図5では3個)の係合孔41(41D、41E、41F)を備える。連結体30Fにおいて、係合孔41C乃至41Fのそれぞれが係合孔41Aに対してなす距離は、当該連結体30Fが適用される足場ユニット10において相隣る柱11F同士の設置間隔kの変化に対応し得るように、例えば1.8m、1.5m、1.2m、0.9mの如くに設定される。
【0045】
従って、足場の組立、解体に際し、足場ユニット10(10A)は、クレーム100により以下の如くに吊られる。
【0046】
(1)地上で足場ユニット10を構築した後、最上段の踏板14の上に立つ作業者等により、前側の柱11F(11FA乃至11FD)に前側連結体30F(31F、32F)を取付け、後側の柱11R(11RA乃至11RD)に後側連結体30R(31R、32R)を取付ける。
【0047】
(2)クレーン100等に設けた吊りワイヤ101を例えば中央2本の柱11FBと柱11FC、柱11RBと柱11RC(又は左右の連結体31Fと32F、31Rと32R)に取付け、足場ユニット10の全体を吊り上げる。クレーン100等で吊り上げた足場ユニット10の柱11F、11Rの下端内径部を足場の下層側で設置済の足場ユニット10の柱11F、11Rの上端縮径部に差し込み、当該足場ユニット10を下層側の足場ユニット10の上に搭載して連結し、足場を組立てる。各連結体30F、30Rが足場ユニット10から取外される。
【0048】
(3)足場の上層で使用済となった足場ユニット10に、上述(1)におけると同様にして、前側連結体30Fと後側連結体30Rを取付ける。
【0049】
(4)クレーン100等に設けた吊りワイヤ101を例えば中央2本の柱11FBと柱11FC、柱11RBと柱11RC(又は左右の連結体31Fと32F、31Rと32R)に取付け、足場ユニット10の全体を下層側の足場ユニット10から吊り上げて外し、当該足場ユニット10を地上に吊り下げ、足場を解体する。各連結体30F、30Rが足場ユニット10から取外される。
【0050】
従って、本実施例連結体30F、30Rを用いた足場の組立及び解体方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0051】
(a)足場ユニット10の左右方向に多列をなす複数本の柱11F、11Rが連結体30F、30Rを介して互いに連結される。従って、クレーン100等に設けた吊りワイヤ101が柱11F、11R又は連結体30F、30Rに取付けられて当該足場ユニット10を吊るとき、各連結体30F、30Rの係合孔41と各柱11F、11Rの楔受21との係合を介して当該足場ユニット10の全体が一体化された状態で吊り上げ又は吊り下ろしできるものになる。従って、足場ユニット10の左右方向に多列をなす柱11F、11Rの本数が多数本であっても、多数の吊りワイヤ101を用意することなく、当該足場ユニット10を簡易に吊ることができる。
【0052】
(b)足場ユニット10は、当該足場ユニット10の左右方向の一部で相隣る柱11F、11R同士を互いに連結する連結体30F、30Rと、左右方向の他の一部で相隣る柱11F、11R同士を互いに連結する他の連結体30F、30Rにより、それらの全体に渡る柱11F、11Rが互いに連結されるものになる。従って、各連結体30F、30Rは足場ユニット10の左右方向に多列をなす各複数本の柱11F、11Rの全てを一直線状に横切るような、大断面かつ長尺をなすものでなく、軽量物となって作業者の取り扱い性は良く、作業者の作業負担を軽減できる。
【0053】
(c)各連結体30F、30Rは、足場ユニット10の左右方向に多列をなす複数本の柱11F、11Rの全てを一直線状に横切って、各柱11F、11Rにそれらの軸方向にて止められるものでなく、足場ユニット10の左右方向の各部分のそれぞれにおいて相隣る柱11F、11R同士を互いに連結するものになる。従って、足場ユニット10の左右方向における一部の柱11F、11Rが上下の短尺柱A1、A2を上下に嵌着されて長尺化されたものであるとき、当該一部の柱11F、11Rに対する連結体30F、30Rの適用を当該一部の柱11F、11Rにおける下短尺柱A2に係合させるものとすることにより、当該足場ユニット10を吊ったときの当該一部の柱11F、11Rにおける上短尺柱A1の下端部からの下短尺柱A2の抜け落ちを回避し、当該足場ユニット10を吊り上げ又は吊り下ろしできる。
【0054】
(d)前記(a)乃至(c)の連結体30F、30Rが、足場ユニット10の前側の左右方向で相隣る柱11F、11R同士を互いに連結する前側連結体30Fと、後側の左右方向で相隣る柱11F、11R同士を互いに連結する後側連結体30Rとからなるものとすることにより、足場ユニット10を構成する前後左右の全部の柱11F、11Rをそれらの連結体30F、30Rによって互いに確実に連結し、当該足場ユニット10を安定的に吊り上げ又は吊り下ろしできる。
【0055】
(e)前記連結体30F、30Rが板状をなすものとすることにより、当該連結体30F、30Rの軽量化の確実を図り、作業者の取り扱い性の向上、作業負担の一層の軽減を実現できる。
【0056】
(f)足場ユニット10を吊ったとき、直角三角形状板体からなる連結体30F、30Rは、一端側の2個の係合孔41A、41Bを1本の柱11F、11Rの上下2個の楔受21A、21Bに係合し、他端側の1個の係合孔41Cを他の1本の柱の楔受21Cに係合する。従って、上記他の1本の柱11F、11Rの側から連結体30F、30Rの他端側に作用する力の回転モーメントが、連結体30F、30Rの一端側で上記1本の柱11F、11Rの上下2個の楔受21に回り止めされて支持される。これにより、連結体30F、30Rは相隣る2本の柱11F、11Rに安定的に係合し、当該足場ユニット10を安定的に吊り上げ又は吊り下ろしできる。しかも、連結体30F、30Rは直角三角形状をなすことにより、両側に各2個の係合孔41を備えて矩形状をなすものに比して、より軽量化されるものになる。
【0057】
図6図7は、柱11F(11Rも同じ)の楔受21に対する連結体30F(30Rも同じ)の脱落防止構造を示したものである。
【0058】
図6は、連結体30Fの係合孔41が柱11Fの楔受21に係入した状態で、該楔受21において柱11Fの正面から遠い側の楔孔内に楔状ストッパ50を打ち込んだものである。連結体30Fは、楔状ストッパ50と柱11Fの間に挟圧されて保持される。
【0059】
図7は、足場ユニット10の各柱11Fの正背面の双方に連結体30Fを適用して2枚の連結体30Fで当該柱11Fを正背両側から挟み、柱11Fの正背面に設けられている正背両側の各楔受21に2枚の各連結体30Fの係合孔41が係入される状態で、それら2枚の連結体30F同士をボルト等の引き寄せ手段で保持するものである。2枚の連結体30Fが柱11Fの各楔受21に係入されて当該柱11Fを挟んだ状態で、それらの各連結体30Fが、それらに挿通されたボルト60及びナット61により互いに引き寄せられて当該柱11Fを挟圧しつつ保持される。
【0060】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、連結体30F(30Rも同じ)は直角三角形状をなすものに限らず、短冊状をなしてその一端側と他端側のそれぞれに相隣る柱の各1個の楔受に係入できる各1個の係合孔を備えるもの、更には矩形状等をなしてその一端側と他端側のそれぞれに相隣る柱の各2個以上の楔受に係入できる各複数個の係合孔を備えたもの等を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、足場ユニットをクレーン等によって簡易かつ確実に吊ることができる。
【符号の説明】
【0062】
10、10A 足場ユニット
11F、11R 柱
12 横架材
13A、13B 連結材
14 踏板
21、22 楔受
23 楔体
30F、31F乃至33F 前側連結体
30R、31R乃至33R 後側連結体
41 係合孔
101 吊りワイヤ(吊り手段)
A1、A2 短尺柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7