(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】品質管理支援方法、品質管理支援システム、および品質管理支援装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20221017BHJP
G06Q 10/06 20120101ALI20221017BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2019114512
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 早苗
(72)【発明者】
【氏名】親松 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】島村 敦司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 郁
(72)【発明者】
【氏名】奥 直樹
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-530806(JP,A)
【文献】清水 悠花 YUUKA SHIMIZU,モビリティサービスの進化,知的資産創造 Vol.26 No.12 Knowledge Creation and Integration,日本,株式会社野村総合研究所 Nomura Research Institute,2018年11月20日,第26巻,第20-33頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業者によるビジネスネットワークを構成する分散台帳システムにおいて、少なくともいずれかのノードが、
当該事業者での製造ないし取引の各事案に関する情報を含むトランザクションを発行し、他ノードとの合意形成を経て分散台帳に格納する処理と、前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記ビジネスネットワークにおける各事業者のうち、前記不具合または変更の対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定する処理と、少なくとも前記特定した事業者の情報を、前記不具合または変更による影響の及ぶ範囲に関する情報として出力する処理と、
を実行する品質管理支援方法。
【請求項2】
前記ノードが、
前記対象物または対象処理を用いる事業者を特定するに際し、前記不具合の対象物の製造に関与する事業者における、当該製造に関する変更の情報を、前記分散台帳にて特定し、当該変更の情報が示す前記対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の品質管理支援方法。
【請求項3】
前記ノードが、
前記対象物または対象処理を用いる事業者を特定するに際し、
前記変更の情報が前記対象処理に関与する事業者の特定人物または当該事業者固有の装置の変更に関するものである場合、前記ビジネスネットワークにおいて当該事業者を起点に直接の連なりで結びついた事業者の範囲で、前記事業者を特定し、
前記変更の情報が、事業者固有のものではない前記対象物および前記対象処理の少なくともいずれかの変更に関するものである場合、前記ビジネスネットワークに含まれる事業者のうち、前記対象物および対象処理の少なくともいずれかに関して同一または類似である事業者の範囲で、前記事業者を特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の品質管理支援方法。
【請求項4】
前記ノードが、
前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記不具合または変更の対象物または対象処理に関して前記分散台帳で保持する仕様情報に、前記不具合または変更の内容を照合して、前記不具合または変更による仕様上の問題の有無を判定し、前記判定の結果、仕様上の問題がある場合、前記不具合または変更の生じた事業者の所定装置に対し、対策を要求する通知を送信する処理をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の品質管理支援方法。
【請求項5】
前記ノードが、
前記判定の結果と前記不具合または変更の情報とを紐付けたトランザクションを発行し、他ノードとの合意形成を経て分散台帳に格納する処理をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の品質管理支援方法。
【請求項6】
事業者によるビジネスネットワークを構成する分散台帳システムであって、
当該事業者での製造ないし取引の各事案に関する情報を含むトランザクションを格納する分散台帳を少なくとも保持する記憶装置と、
前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記ビジネスネットワークにおける各事業者のうち、前記不具合または変更の対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定し、少なくとも前記特定した事業者の情報を、前記不具合または変更による影響の及ぶ範囲に関する情報として出力する演算装置と、
を備えた複数の情報処理装置を含むことを特徴とする品質管理支援システム。
【請求項7】
事業者によるビジネスネットワークを構成する分散台帳システムの、少なくともいずれかのノードであって、
当該事業者での製造ないし取引の各事案に関する情報を含むトランザクションを格納する分散台帳を少なくとも保持する記憶装置と、
前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記ビジネスネットワークにおける各事業者のうち、前記不具合または変更の対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定し、少なくとも前記特定した事業者の情報を、前記不具合または変更による影響の及ぶ範囲に関する情報として出力する演算装置と、
を備えることを特徴とする品質管理支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質管理支援方法、品質管理支援システム、および品質管理支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経済のグローバル化と共に、各種製品等のサプライチェーンも世界規模で拡大し、より多層化する傾向にある。そうした状況において、製品の品質管理は重要な課題であり、様々なアプローチが提案されている。
【0003】
そうしたアプローチの一つとして、例えば、原本としてのミルシート電子ファイルを生成するミルシート原本生成ステップと、前記原本としてのミルシート電子ファイルに記録された品質情報と同一の品質情報を含み、前記品質情報の表示および印刷のみ可能で、保存、転送および改変が不可能な閲覧版のミルシート電子ファイルを生成する閲覧用電子ファイル生成ステップと、前記閲覧版のミルシート電子ファイルを、ネットワーク網に接続された外部の端末から、前記ネットワーク網を介してアクセス可能な記録媒体の領域に格納する電子ファイル開示ステップと、を含むことを特徴とするミルシート閲覧方法(特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、それまでは紙媒体で個別管理されていた、材料証明書(ミルシート)や検査成績書を電子ファイルとして管理することで、ネットワークを介した閲覧が可能となり、ひいてはそうしたファイルの検証工数を低減可能となる。
【0006】
しかしながら、上述のような技術においては、広範かつ多層化したサプライチェーンのどこかで発生した製品や部品の不具合とその影響範囲を、効率的かつ的確に特定して関係者間で改竄なく共有するといった対応はできていない。特に、製品や検査の品質不正等が社会問題化している昨今、このような状況は大きな問題につながりやすいとも言える。
【0007】
そこで本発明の目的は、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲を効率良く特定し関係者間で共有可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の品質管理支援方法は、事業者によるビジネスネットワークを構成する分散台帳システムにおいて、少なくともいずれかのノードが、当該事業者での製造ないし取引の各事案に関する情報を含むトランザクションを発行し、他ノードとの合意形成を経て分散台帳に格納する処理と、前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記ビジネスネットワークにおける各事業者のうち、前記不具合または変更の対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定する処理と、少なくとも前記特定した事業者の情報を、前記不具合または変更による影響の及ぶ範囲に関する情報
として出力する処理と、を実行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の品質管理支援システムは、事業者によるビジネスネットワークを構成する分散台帳システムであって、当該事業者での製造ないし取引の各事案に関する情報を含むトランザクションを格納する分散台帳を少なくとも保持する記憶装置と、前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記ビジネスネットワークにおける各事業者のうち、前記不具合または変更の対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定し、少なくとも前記特定した事業者の情報を、前記不具合または変更による影響の及ぶ範囲に関する情報として出力する演算装置と、を備えた複数の情報処理装置を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の品質管理支援装置は、事業者によるビジネスネットワークを構成する分散台帳システムの、少なくともいずれかのノードであって、当該事業者での製造ないし取引の各事案に関する情報を含むトランザクションを格納する分散台帳を少なくとも保持する記憶装置と、前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記ビジネスネットワークにおける各事業者のうち、前記不具合または変更の対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定し、少なくとも前記特定した事業者の情報を、前記不具合または変更による影響の及ぶ範囲に関する情報として出力する演算装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲を効率良く特定し関係者間で共有可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の品質管理支援装置を含むネットワーク構成図である。
【
図2】本実施形態の品質管理支援装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態の品質管理支援装置の機能構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態の取引情報のデータ構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態の検査情報のデータ構成例を示す図である。
【
図6】本実施形態の不良・不具合情報のデータ構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態の企業情報のデータ構成例を示す図である。
【
図8】本実施形態のBOM情報のデータ構成例を示す図である。
【
図9】本実施形態の製造実績情報のデータ構成例を示す図である。
【
図10】本実施形態の人事情報のデータ構成例を示す図である。
【
図11】本実施形態における品質管理支援方法のフロー例を示す図である。
【
図12】本実施形態における画面例1を示す図である。
【
図13】本実施形態における画面例2を示す図である。
【
図14】本実施形態における画面例3を示す図である。
【
図15】本実施形態における画面例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
---前提となる技術---
【0014】
従来、金融機関や政府などの信頼できる中央集権機関を経由して実施されてきた取引を、利用者間のP2P(Peer to Peer)による直接的な取引で代替する技術と
して、ブロックチェーン(以下、BCとも称する)を用いた分散台帳技術が登場している。
【0015】
現状における分散台帳技術の主な特徴としては、(1)分散台帳システムへの参加者間の取引において、中央集権機関ではなく(任意ないしは特定の)参加者による合意形成や承認によって取引を確定させること、(2)複数のトランザクションをブロックとしてまとめ、数珠つなぎにブロックチェーンと呼ばれる分散台帳に記録し、連続するブロックにハッシュ計算を施すことにより、改ざんを実質不可能にすること、(3)参加者全員が同一の台帳データを共有することにより、参加者全員での取引の確認を可能とする、といったものが挙げられる。
【0016】
このようなBCを用いた分散台帳技術は、以上のような特徴から、信頼できるデータの管理/共有や、契約に基づく取引の執行/管理を行う仕組みとして、金融や製造業等、幅広い分野での応用が検討されている。
【0017】
そうした応用例の一つとして、分散台帳技術を複雑な取引条件や多様なアプリケーションにも適用可能とすべく、分散台帳にて取引データだけでなく取引条件を記載したロジック、すなわちスマートコントラクト(以下、SCとも称する)も管理しうる技術も提案されている。
【0018】
また、特定業界のコンソーシアムやサプライチェーンに関係する複数企業など、特定の複数または一つの団体・人により許可されたコンピュータのみが取引の承認者となる、「コンソーシアム型」の分散台帳基盤も提案されている。こうしたコンソーシアム型の分散台帳基盤では、承認者を選ぶ管理主体が存在するため、取引承認のスピードを早められるメリットがある。
【0019】
上述のSCに関する従来技術としては、SCの実行機能を有する分散台帳基盤に関する技術が提案されている。こうした分散台帳基盤では、ノード間で所定の合意水準で合意形成しながらトランザクション(以下、TXとも称する)を受け入れて、各ノードでTXを実行し、当該TXの実行結果を保持することにより、複数ノード上で情報(台帳)を共有することとなる。また、上述のTXに対して予め決めたロジックを実行するSC実行機能を備えている。
【0020】
分散台帳システムにおいては、P2Pネットワーク上において、取引データすなわちトランザクションデータに関する正当性の判定を、マイナーと呼ばれるノードが実行し、プルーフオブワークと呼ばれる特定のハッシュ値を算出する作業で確定処理を行っている。こうして確定されたトランザクションデータは、1つのブロックにまとめられ、ブロックチェーンと呼ばれる分散台帳に記載される。この分散台帳は各ノードに等しく備わり、ノード間で分散台帳の同期が保たれている。
こうした技術的背景をベースに、本実施形態の品質管理支援装置が運用されているものとする。
---ネットワーク構成---
【0021】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の品質管理支援装置100を含むネットワーク構成図である。
図1に示す品質管理支援装置100は、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲を効率良く特定し関係者間で共有可能とするコンピュータ装置である。
【0022】
図1は、本実施形態における品質管理支援装置100を含むネットワーク構成例を示す図である。ここでは、一例として製品製造に伴うサプライチェーンを成すビジネスネット
ワークに対して、本発明の品質管理支援手法を適用し、当該サプライチェーンで生じる部品等の不良や不具合、変更等に関する情報に基づき、品質管理支援を行う状況を想定し、説明を進めるものとする。
【0023】
図1に例示する品質管理支援システム10は、分散台帳システムであって、各事業者すなわち企業の分散台帳ノードである、1台以上の品質管理支援装置100によって構成される。また、これらの各企業の品質管理支援装置100は、物理的な通信回線を通してネットワーク1に接続され、互いに通信可能となっている。
【0024】
なお、各企業のうち部品や製品等の製造を行っている企業においては、製造管理装置200が備わる。製造管理装置200は、製造ラインでの製造実績の情報を随時または一定時間ごとに品質管理支援装置100に配信する。
【0025】
また、特に図示はしていないが、品質管理支援システム10は、1台以上のクライアントノードも含みうる。このクライアントノードは、各企業の担当者が操作する端末であり、後述する検査情報162や不良・不具合情報163などの情報のリソースとなる各種情報の入力を受け付け、これをトランザクションとして分散台帳システムたる品質管理支援システム10に発行する。
---ハードウェアおよび機能構成---
【0026】
また、本実施形態の品質管理支援装システム10に含まれる各装置のハードウェア構成を
図2に示す。上述の分散台帳ノードである品質管理支援装置100や、製造管理装置200、および、クライアントノードの物理的な実体は、
図2に例示するように、プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入力装置104、出力装置105、および通信装置106から構成される、一般的な計算機である。
【0027】
このうちプロセッサ101は、補助記憶装置103に格納されるプログラムを主記憶装置102に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なう演算装置である。
また、主記憶装置102は、RAMなど揮発性記憶素子で構成される記憶装置である。
【0028】
また、補助記憶装置103は、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される記憶装置である。
また、入力装置104は、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付けるキーボードやマウスといった装置である。
また、出力装置105は、プロセッサ101による処理データの表示を行うディスプレイ等の装置である。
また、通信装置106は、ネットワーク1と接続し他装置との通信処理を担うネットワークインターフェイスカードである。
【0029】
なお、上述の補助記憶装置103には、本実施形態の品質管理支援装置100として必要な機能を実装する為のプログラムに加えて、分散台帳150およびデータベース125が少なくとも記憶されている。これらの具体的なデータ構成については後述する。
【0030】
こうしたハードウェア構成を備える品質管理支援装置100は、
図3で例示する機能構成を備える。品質管理支援装置100は、データ処理部1011および記憶部1031を備える。このうちデータ処理部1011は、上述のプロセッサ101がプログラムを実行することで実装される機能部となる。また、記憶部1031は、上述の補助記憶装置103において確保された所定の記憶領域とそこに格納されたデータ群となる。
上述のデータ処理部1011は、登録部110、評価部111、解析部112、結果表
示部112、受発注手続部114、および検収部115を備える。
【0031】
登録部110は、分散台帳システムにおけるいずれかの分散台帳ノード、すなわち品質管理支援装置100から発行されたトランザクション(例:製品や部品、工程に関する不良・不具合、変更などに関するトランザクションや、それに関する各種判定結果、取引情報、検査情報、企業情報など)を所定の合意形成を経て分散台帳150に登録する。また登録部110は、分散台帳150のブロックチェーン151に格納したトランザクションが含む情報のうち、予め定めた項目の値をステート情報160に格納する。
【0032】
また、評価部111は、不良・不具合情報163が示す対象物、対象処理とサプライチェーン上で直接関係する、すなわちサプライチェーンの一連の流れに沿って製造工程に組み込まれる関係がある部材、処理や、そうした部材、処理に関する変更の有無(当該サプライチェーンにおけるいずれかの企業にて)を評価する。
【0033】
また、解析部112は、上述の評価部111での評価結果を踏まえつつ、不良・不具合、変更の影響範囲をサプライチェーンの構成に沿って解析する。なお解析部112は、前述の解析の結果を登録部110に提供し、トランザクション発行を通じた分散台帳150のブロックチェーン151への登録をさせる。
【0034】
また、結果表示部113は、解析部112による解析結果を出力装置105か、通信装置106を介した他の品質管理支援装置100或いは所定のクライアントノードに出力させる。
【0035】
受発注手続部114は、上述のサプライチェーン上の各企業の間における、製品や部品、或いはそれらに対する加工等の処理を対象とした受発注の処理を行う。なお受発注手続部114は、前述の受発注の処理結果を登録部110に提供し、トランザクション発行を通じた分散台帳150のブロックチェーン151への登録をさせる。
【0036】
また、検収部115は、上述の受発注手続部114による受発注の処理対象となった対象物や対象処理に関して所定の検収処理を行う。検収処理自体は当該企業の担当者が実行し、検収部115は、その検収結果の入力を受けつける機能であるとしてもよい。また、検収部115は、前述の検収の結果を登録部110に提供し、トランザクション発行を通じた分散台帳150のブロックチェーン151への登録をさせる。
---データ構造例---
【0037】
続いて
図4~10に基づき、本実施形態の品質管理支援装置100が用いるデータ類について説明する。なお、
図3で例示したように、記憶部1031は、分散台帳150およびデータベース125を含んでいる。また、分散台帳150は、ブロックチェーン151およびステート情報160を含んでいる。
【0038】
まず、品質管理支援装置100の具備する分散台帳150の構成について説明する。ブロックチェーン151を用いた分散台帳管理では、一定時間に発行、合意形成された複数のトランザクションをブロックとしてまとめて、各ブロックが前のブロックのハッシュ値を持つことで各ブロックを数珠つなぎにして管理する。
【0039】
こうした管理を行う場合、前段のブロックの値が1ビットでも変わると後続の全ブロックのハッシュ値が変わることになる。そのため、分散台帳150における改ざんは困難である。そうしたブロックチェーン151は、一連のブロックの連なりとなっている。また各ブロックは、それぞれスマートコントラクトのデプロイ、実行、いずれかのトランザクション情報を含む。また各ブロックは、前ブロックのハッシュ値を含み、後述のステート
情報から生成したハッシュ値を含む。上述のようなデータ構造により、スマートコントラクトのデプロイ、実行がブロックチェーンの中でデータの連鎖として管理される。
【0040】
こうした分散台帳150で管理するステート情報160の構成例を、
図4~7に示す。ブロックチェーン151を用いた分散台帳管理では、通常、(最新の)ステート(例えば、仮想通貨の場合にはアカウントの残高であり、本実施形態の場合は、取引情報、検査情報、不良・不具合情報、および企業情報などである)を取得するためには、ブロックチェーン151を辿らなければならない。ところが、これでは処理効率が悪いため、ブロックチェーン151とは別に、ブロックチェーン151を構成する各ブロックから得た最新のステート情報160をキャッシュしておく方法が存在する。
【0041】
本実施形態でも、分散台帳150において、最新のステート情報160を保持することを想定する。本実施形態におけるステート情報160は、取引情報161、検査情報162、不良・不具合情報163、および企業情報164を含んでいる。
【0042】
このうち取引情報161は、
図4で示すように、サプライチェーン上の各企業間での取引を一意に特定する取引IDをキーとして、発注者、受注者、品目、数量、金額、発注日、納品日、製造番号、および検査データといった値を紐付けたレコードの集合体である。このうち検査データの値は、検査情報162のIDと共通する。
【0043】
また、検査情報162は、
図5で示すように、上述の取引情報161が示す取引で取り扱った物品(製品や部品)に対する品質検査を一意に特定する検査IDをキーとして、検査種別、検査結果、検査証ID、発効日、および発行者、といった値を紐付けたレコードの集合体である。検査結果の欄の値が示すファイル、或いは検査証IDが示すファイルは、例えば、材料証明書や検査成績書等、取引における品質情報を想定できる。
【0044】
また、不良・不具合情報163は、
図6で示すように、サプライチェーン上の企業において発生、特定された製品や部品の不良、不具合の事案を一意に特定する不具合IDをキーとして、対象となる製品の製品ID/名、製造番号、発生日、発生場所、件数、重要度、症状分類、症状詳細、原因分類、原因詳細、原因部材、対策状況、および登録者といった値を紐付けたレコードの集合体である。
【0045】
また、企業情報164は、
図7で示すように、サプライチェーンに分散台帳ノードである品質管理支援装置100を運営する各企業の情報であって、当該企業の企業IDおよび企業名をキーとして、所在地、保有設備、および従業員数といった値を紐付けたレコードの集合体である。
一方、記憶部1031が含むデータベース125は、BOM情報126、製造実績情報127、および人事情報128を含んでいる。
【0046】
このうちBOM情報126は、
図8で例示するように、一般的なBOMと同様のデータ構造であり、対象となる製品の製品IDをキーとして、製品名、仕様、工程(例:製造ラインを示し、当該製造ラインで使用する設備の情報が随時引用可能に別途管理されている)、材料、および数量といったデータから成るレコードの集合体である。
【0047】
また、製造実績情報127は、
図9で例示するように、サプライチェーン上の企業らが、所定の材料や設備を使用して部品や製品を製造した実績の情報であり、製造番号および製品IDをキーとして、使用した材料、当該材料の製造番号、数量、設備、担当者、および製造日といったデータから成るレコードの集合体である。
【0048】
また、人事情報128は、
図10で例示するように、上述のサプライチェーン上の各企
業において管理する人事情報であって、社員を一意に特定する社員IDをキーとして、当該社員の氏名、所属、および権限といったデータから成るレコードの集合体である。
---フロー例---
【0049】
以下、本実施形態における品質管理支援方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する品質管理支援方法に対応する各種動作は、品質管理支援装置100がメモリ等に読み出して実行するプログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0050】
図11は、本実施形態における品質管理支援方法のフロー例を示す図である。ここではまず、上述のサプライチェーン上におけるいずれかの企業の担当者が、例えば自社の製造ラインで製造した製品、部品に関して生じた不良や不具合の情報を、適宜なクライアントノードを操作して分散台帳ノードたる品質管理支援装置100に送信する状況を想定する。
【0051】
この不良や不具合の情報は、担当者が製造管理装置200から不具合の情報を取得するケースや、検査機関、検査部門等から交付された検査証から当該情報を認識し取得するケースなどが想定できる(勿論、これに限定はしない)。こうした情報の認識、取得や品質管理支援装置100への送信の手順等は、分散台帳150のブロックチェーン151に登録すべき他の情報(例:設備の変更に関する情報)に関しても同様である。
【0052】
品質管理支援装置100は、上述のような不良や不具合の情報をクライアントノードから受け付けるに際し、例えば
図12の不良・不具合登録画面1100を配信するものとする。
【0053】
図12に例示する不良・不具合登録画面1100は、登録種別および報告番号の入力インターフェイス1101、1102、および不良・不具合の具体的情報の入力インターフェイス1105を含んでいる。
【0054】
このうち不良・不具合の入力インターフェイス1105は、不良や不具合の生じた製品の製品ID、製品名、製造番号、発生日、発生場所、件数、重要度、症状分類、症状詳細、原因分類、原因詳細、原因部材、対策状況、および登録者、といった値の入力欄を備える。
【0055】
また、症状分類欄には、当該症状の種類選択を受け付けるプルダウンメニュー1106が配置されている。同様に、原因分類欄には、当該症状の原因分類に関する種類選択を受け付けるプルダウンメニュー1107が配置されている。
【0056】
上述の担当者はこうした入力インターフェイス1101~1107にて、該当事象に関して情報を入力ないし選択し、最終的に登録ボタン1108をクリックすることとなる。
【0057】
そこで品質管理支援装置100は、不良・不具合登録画面1100を介して不良・不具合情報を取得し、これを含むトランザクションをネットワーク1にて発行する(s1)。
【0058】
この結果、当該品質管理支援装置100は、上述のトランザクションを受信した他の企業の品質管理支援装置100との間で、当該トランザクションに関する所定の合意形成処理を実行し、分散台帳150のブロックチェーン151に登録する(s5)。
【0059】
品質管理支援装置100は、このブロックチェーン151に不良・不具合の情報を登録するに際し、ステート情報160の不良・不具合情報163にも格納するものとする。
【0060】
続いて、品質管理支援装置100は、
図13に例示する影響範囲解析画面1200を、例えば上述のクライアントノードに配信し、今回の品質管理支援対象、すなわち影響範囲の解析対象となる不具合等に関しての選択を受け付ける(s10)。
【0061】
図13に示す影響範囲解析画面1200は、品質管理支援装置100が不良・不具合情報163から抽出しリスト化した不良・不具合登録リスト1201と、当該リスト中から担当者が選択した不具合情報の表示インターフェイス1202、解析範囲の指定インターフェイス1203、および仕様チェックの指定インターフェイス1204を含んでいる。
このうち解析範囲の指定インターフェイス1203は、直接影響範囲のみか、間接影響範囲を含むか、を担当者に選択させるラジオボタンである。
【0062】
上述の直接影響範囲は、上述のサプライチェーンにおいて、当該不良や不具合の対象部品を提供した企業、当該不良や不具合の対象部品が提供されている他企業を母集団とした範囲である。
【0063】
一方、間接影響範囲は、上述のサプライチェーンにおいて、当該不良や不具合の対象部品を提供した企業が提供する別部品のうち、その使用部材や製造設備に上述の対象部品と同様の変更がなされた部品の提供先の企業および、上述の対象部品を提供していない企業のうち、上述の対象部品を提供した企業における使用部材や製造設備の変更と類似の変更があった他企業も含む範囲である。
【0064】
また、仕様チェックの指定インターフェイス1204は、当該不具合により劣化した品質が、当該部品等を使用する製品の仕様を満たすか否かチェックする要否について担当者に選択させるラジオボタンである。
【0065】
品質管理支援装置100は、上述のステップs10で選択を受け付けた不具合情報に基づき、直接関係部材を特定する(s11)。この場合、品質管理支援装置100は、当該不具合情報が示す製品IDといった識別情報をキーに、BOM情報126で該当製品とその材料を特定し、当該製品の製造番号および当該材料の情報をキーに製造実績情報127で製造担当の企業、設備、担当者といった情報を特定する。また、品質管理支援装置100は、ここで特定した情報を取引情報161に照合し、サプライチェーン上での実際の取引関係とその内容を特定する。
【0066】
品質管理支援装置100は、こうした処理を、取引情報161での取引関係の連なりが尽きるまで順次実行し、上述の不具合情報の対象と直接関係する部材(やその製造企業等)の情報を特定する。
【0067】
品質管理支援装置100は、s11で特定した直接関係部材の情報に基づき、この直接関係部材の製造に関与する企業における、当該製造に関する変更の情報を、例えば、検査情報162が示す検査対象製品や装置の変更チェックの情報(例えば、検査結果のファイルが該当情報を含んでいるとする)から特定し、当該変更の有無を判定する(s12)。
【0068】
上述の判定の結果、上述の不具合情報の対象に関連する各企業において使用部材や設備に変更が無いことが判明した場合(s12:NO)、品質管理支援装置100は、処理をs17に遷移させる。
【0069】
一方、上述の判定の結果、上述の不具合情報の対象に関連する各企業のいずれかにおいて使用部材や設備に変更があることが判明した場合(s12:YES)、品質管理支援装置100は、まず、当該変更が無い企業については影響範囲の対象から予め排除し、影響
範囲の絞り込みを行う(s13)。
【0070】
続いて、品質管理支援装置100は、上述の担当者が影響範囲解析画面1200における解析範囲の指定インターフェイス1203にて、「直接影響範囲のみ」を選択したか、「間接影響範囲を含む」を選択したか判定する(s14)。
上述の判定の結果、担当者の選択が「直接影響範囲のみ」であった場合、品質管理支援装置100は、処理をs17に遷移させる。
【0071】
一方、上述の判定の結果、担当者の選択が「間接影響範囲を含む」であった場合、品質管理支援装置100は、当該変更が、上述の不具合情報の対象にのみ関係する変更か判定する(s15)。この判定に際し、品質管理支援装置100は、当該変更の情報が上述の不具合情報の対象処理に関与する企業の特定人物(製造実績情報127や人事情報128で特定)または当該企業固有の設備、装置(製造実績情報127の設備欄で特定)の変更に関するものであるか判定するものとする。
【0072】
上述の判定の結果、当該変更が、上述の不具合情報の対象にのみ関係する変更であった場合(s15:YES)、品質管理支援装置100は、処理をs17に遷移させる。
【0073】
一方、上述の判定の結果、当該変更が、上述の不具合情報の対象物(や対象処理)にのみ関係する変更ではなかった場合(s15:NO)、品質管理支援装置100は、サプライチェーンに含まれる企業のうち、当該対象物および対象処理の少なくともいずれかに関して同一または類似である企業らを、取引情報161、製造実績情報127、企業情報164らが示す、製品、材料、設備、といった情報に基づき、間接影響範囲として特定する(s16)。
【0074】
上述の当該対象物および対象処理の少なくともいずれかに関して同一または類似である企業とは、直接の取引関係は無いが、例えば変更のあった材料に関して同一ないし類似(例:手法は同じでパラメータがごく小さい範囲で異なるなど)の加工等を行っている企業、同一材料に対して同じないし類似の仕様例:(基本的な機能構成は同じで、最高出力が若干異なるなど)の機器を使用する変更があった企業、を想定できる。
【0075】
続いて、品質管理支援装置100は、
図13の影響範囲解析画面1200における仕様チェックの指定インターフェイス1204で、チェック「あり」が選択されているか判定する(s17)。
【0076】
上述の判定の結果、仕様チェックする要否について担当者が「なし」を選択していた場合(s17:NO)、品質管理支援装置100は、処理をs19に遷移させる。
【0077】
一方、上述の判定の結果、仕様チェックする要否について担当者が「あり」を選択していた場合(s17:YES)、品質管理支援装置100は、当該不具合または変更の対象物または対象処理に関して分散台帳150のブロックチェーン151またはステート情報160で保持する仕様情報に、当該不具合または変更の内容を照合する(s18)。
【0078】
この場合、品質管理支援装置100は、当該不具合または変更による仕様上の問題の有無を判定することとなる。当該判定の結果、当該不具合または変更が仕様上の問題につながるおそれがある場合、品質管理支援装置100は、当該不具合または変更の生じた企業の例えばクライアントノードに対し、対策を要求する通知を送信するものとする。
【0079】
続いて、品質管理支援装置100は、これまでのステップにて特定している、サプライチェーンにおける各企業のうち、上述の不具合または変更の対象物または対象処理を用い
る企業の情報を、当該不具合または変更による影響の及ぶ範囲に関する情報として、出力装置105か、または通信装置106を介してクライアントノード等に出力する(s19)。
【0080】
図14は結果表示画面1300の一例を示す図である。この結果表示画面1300は、解析条件1301、および解析結果1302、の各表示インターフェイスを含んでいる。このうち解析条件1301は、担当者が影響範囲解析画面1200で指示、選択した内容が表示される。
【0081】
また、解析結果1302は、サプライチェーンにおける各企業をノード1310と、企業間をその取引関係(取引情報161に基づくもの)に応じて結ぶエッジ1311とで構成したグラフ1320が描画される。
【0082】
上述のグラフ1320のノードのうち、上述の直接影響範囲に該当する企業のノードについては破線1312で、間接影響範囲に該当する企業のノードについては一点破線1313で囲んでいる。
【0083】
また、グラフ1320における各企業のノード1310の間を結ぶエッジ1311には、当該企業間で取引された部品や製品の情報(例:部品α)を付帯表示している。同様に、設備や仕様などの変更があった企業のノード1310には、当該変更の情報(例:設備変更)を付帯表示している。
【0084】
画面1300を閲覧している担当者が、例えば詳細ボタン1304をクリックすれば、品質管理支援装置100は、
図15に例示する結果表示画面1400を返信するものとする。この結果表示画面1400は、変更のあった企業における変更点の情報を表示するインターフェイス1401と、推定影響範囲の表示インターフェイス1402とを含んでいる。
【0085】
変更点の情報としては、当該変更が生じた企業、製品、変更内容、変更詳細、変更日、および変更対象の製造番号、といった情報が含まれる。
図15の例で示すように、「企業k」において「部品k」に関してその「製造設備」の変更があり、詳細には「機器DEF_1をDEF_up2に変更」したことがわかる。また、「企業O」において「素材ZO」
について、その「成分変更」を行ったことがわかる。
【0086】
また、推定影響範囲の情報としては、直接影響範囲および間接影響範囲の各企業と、製造製品、原因材料、影響推定理由、および不良登録、といった値を含んでいる。
【0087】
影響推定理由は、不具合情報が示す対象部品(例:部品α)を製品(例:製品BB)に利用している、すなわち「直接部品利用」や、直接影響範囲の部品を利用し、かつ変更点がある材料を利用しているもの、などが存在する。
【0088】
また、不良登録は、当該製品や材料に関して既に不良・不具合情報163が登録されているものについて、チェックが設定される。すなわち、品質管理支援装置100は、上述の各判定の結果と、上述の不具合または変更の情報とを紐付けたトランザクションをネットワーク1にて発行し、他の品質管理支援装置100との合意形成を経て分散台帳150のブロックチェーン151に格納するものとする。この格納により不良登録が部品等についてなされることと同義である。
【0089】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0090】
こうした本実施形態によれば、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲を効率良く特定し関係者間で共有可能となる。
【0091】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、本実施形態の品質管理支援方法において、前記ノードが、前記対象物または対象処理を用いる事業者を特定するに際し、前記不具合の対象物の製造に関与する事業者における、当該製造に関する変更の情報を、前記分散台帳にて特定し、当該変更の情報が示す前記対象物または対象処理を用いる事業者を、前記分散台帳で保持している前記製造ないし取引に関する情報に基づき、当該ビジネスネットワークでの事業者間の連なりに応じて特定する、としてもよい。
【0092】
これによれば、不具合(不良等)の生じた製造過程、取引過程での各種変更の情報に基づき、当該変更による影響範囲の推定が可能となる。ひいては、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲をさらに効率良く特定し関係者間で共有可能となる。
【0093】
また、本実施形態の品質管理支援方法において、前記ノードが、前記対象物または対象処理を用いる事業者を特定するに際し、前記変更の情報が前記対象処理に関与する事業者の特定人物または当該事業者固有の装置の変更に関するものである場合、前記ビジネスネットワークにおいて当該事業者を起点に直接の連なりで結びついた事業者の範囲で、前記事業者を特定し、前記変更の情報が、事業者固有のものではない前記対象物および前記対象処理の少なくともいずれかの変更に関するものである場合、前記ビジネスネットワークに含まれる事業者のうち、前記対象物および対象処理の少なくともいずれかに関して同一または類似である事業者の範囲で、前記事業者を特定する、としてもよい。
【0094】
これによれば、不具合(不良等)の生じた製造過程、取引過程での各種変更の情報に基づき、当該変更による影響範囲の推定が可能であり、また、事業者固有の変更か或いは事業者間で共通して起こりうる変更かに応じて影響範囲の制御が可能となる。ひいては、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲をより一層、効率良く特定し関係者間で共有可能となる。
【0095】
また、本実施形態の品質管理支援方法において、前記ノードが、前記分散台帳に格納されたいずれかのトランザクションの内容が製造上の不具合または変更に関する所定情報を含む場合、前記不具合または変更の対象物または対象処理に関して前記分散台帳で保持する仕様情報に、前記不具合または変更の内容を照合して、前記不具合または変更による仕様上の問題の有無を判定し、前記判定の結果、仕様上の問題がある場合、前記不具合または変更の生じた事業者の所定装置に対し、対策を要求する通知を送信する処理をさらに実行する、としてもよい。
【0096】
これによれば、不具合(不良等)や変更の生じた製造過程の情報に基づき、当該不具合や変更による仕様上の影響有無を特定し、それに対する対策要求(変更をしないようにするもの含みうる)を、当該不具合や変更が生じた事業者に求めることが可能になる。ひいては、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲をさらに効率良く特定し関係者間で共有可能となる。
【0097】
また、本実施形態の品質管理支援方法において、前記ノードが、前記判定の結果と前記不具合または変更の情報とを紐付けたトランザクションを発行し、他ノードとの合意形成を経て分散台帳に格納する処理をさらに実行する、としてもよい。
【0098】
これによれば、不具合(不良等)や変更とその影響有無の各情報について、改竄無く管理することが可能となる。ひいては、サプライチェーンにて発生した製品等の不具合情報を改竄なく管理し、当該不具合の影響範囲をさらに効率良く特定し関係者間で共有可能となる。
【符号の説明】
【0099】
1 ネットワーク
10 品質管理支援システム
100 品質管理支援装置(分散台帳ノード)
101 プロセッサ
1011 データ処理部
102 主記憶装置
103 補助記憶装置
1031 記憶部
104 入力装置
105 出力装置
106 通信装置
110 登録部
111 評価部
112 解析部
113 結果表示部
114 受発注手続部
115 検収部
125 データベース
126 BOM情報
127 製造実績情報
128 人事情報
150 分散台帳
160 ステート情報
161 取引情報
162 検査情報
163 不良・不具合情報
164 企業情報
200 製造管理装置