(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
F16F13/10 J
F16F13/10 K
(21)【出願番号】P 2020518349
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2019018695
(87)【国際公開番号】W WO2019216403
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018091483
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 励
(72)【発明者】
【氏名】植木 哲
(72)【発明者】
【氏名】長島 康寿之
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-59655(JP,A)
【文献】特開平1-193426(JP,A)
【文献】特開2010-31989(JP,A)
【文献】特開2003-130125(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2282430(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 11/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、
これら両取付部材を弾性的に連結する弾性体と、
液体が封入された前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を隔壁の一部に有する主液室および副液室に、前記第1取付部材の中心軸線に沿う軸方向に仕切る仕切部材と、
前記仕切部材に設けられた収容室内に変形可能若しくは変位可能に収容された可動部材と、を備え、
前記仕切部材に、前記主液室と前記副液室とを連通するオリフィス通路と、前記主液室と前記収容室とを連通する複数の第1連通孔と、前記副液室と前記収容室とを連通する第2連通孔と、が形成され、
前記仕切部材において、前記第1連通孔が開口し、かつ前記主液室の内面の一部を構成する第1壁面に、前記弾性体に向けて前記軸方向に突出する筒状部材が配設され、
複数の前記第1連通孔は、前記第1壁面において、前記筒状部材の内側に位置する部分、および前記筒状部材の外側に位置する部分の双方に開口している防振装置。
【請求項2】
前記筒状部材の前記軸方向の長さは、前記主液室の前記軸方向の最大高さの20%以上となっている請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記筒状部材の内径は、前記主液室の最大内径の半分以上となっている請求項1または2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記筒状部材は、前記軸方向に沿って前記第1壁面側から前記弾性体側に向かうに従い漸次、縮径している請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車や産業機械等に適用され、エンジン等の振動発生部の振動を吸収および減衰する防振装置に関する。
本願は、2018年5月10日に日本に出願された特願2018-091483号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
この種の防振装置として、従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、これら両取付部材を弾性的に連結する弾性体と、液体が封入された第1取付部材内の液室を、弾性体を隔壁の一部に有する主液室および副液室に仕切る仕切部材と、仕切部材に設けられた収容室内に変形可能若しくは変位可能に収容された可動部材と、を備え、仕切部材に、主液室と副液室とを連通するオリフィス通路と、主液室と収容室とを連通する複数の第1連通孔と、副液室と収容室とを連通する第2連通孔と、が形成された構成が知られている。
この防振装置では、周波数が200Hz未満の低周波振動のうち、比較的周波数の高いアイドル振動が軸方向に入力されたときに、可動部材を収容室内で変形若しくは変位させつつ、液室の液体を、第1連通孔、および第2連通孔を流通させることで、アイドル振動を減衰、吸収し、また、比較的周波数の低いシェイク振動が軸方向に入力されたときに、液室の液体を、オリフィス通路を流通させることで、シェイク振動を減衰、吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、周波数が200Hz~1000Hzの中周波振動を減衰、吸収することが難しい。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、中周波振動を減衰、吸収することができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、これら両取付部材を弾性的に連結する弾性体と、液体が封入された前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を隔壁の一部に有する主液室および副液室に、前記第1取付部材の中心軸線に沿う軸方向に仕切る仕切部材と、前記仕切部材に設けられた収容室内に変形可能若しくは変位可能に収容された可動部材と、を備え、前記仕切部材に、前記主液室と前記副液室とを連通するオリフィス通路と、前記主液室と前記収容室とを連通する複数の第1連通孔と、前記副液室と前記収容室とを連通する第2連通孔と、が形成され、前記仕切部材において、前記第1連通孔が開口し、かつ前記主液室の内面の一部を構成する第1壁面に、前記弾性体に向けて前記軸方向に突出する筒状部材が配設され、複数の前記第1連通孔は、前記第1壁面において、前記筒状部材の内側に位置する部分、および前記筒状部材の外側に位置する部分の双方に開口している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中周波振動を減衰、吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る防振装置の縦断面図である。
【
図2】
図1に示す防振装置のA-A線矢視断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る防振装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る防振装置の実施の形態について、
図1および
図2に基づいて説明する。
図1に示すように、防振装置1は、振動発生部および振動受部のいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11と、振動発生部および振動受部のいずれか他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材11および第2取付部材12を互いに弾性的に連結する弾性体13と、液体が封入された第1取付部材11内の液室19を、弾性体13を隔壁の一部に有する主液室14および副液室15に仕切る仕切部材16と、仕切部材16に設けられた収容室42内に変形可能若しくは変位可能に収容された可動部材41と、を備える液体封入型の防振装置である。
【0010】
以下、第1取付部材11の中心軸線Oに沿う方向を軸方向という。また、軸方向に沿う第2取付部材12側を上側、仕切部材16側を下側という。また、防振装置1を軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O周りに周回する方向を周方向という。
なお、第1取付部材11、第2取付部材12、および弾性体13はそれぞれ、平面視で円形状若しくは円環状を呈し、中心軸線Oと同軸に配置されている。
【0011】
この防振装置1が例えば自動車に装着される場合、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジン等に連結され、第1取付部材11が振動受部としての車体に連結される。これにより、エンジン等の振動が車体に伝達することが抑えられる。なお、第1取付部材11を振動発生部に連結し、第2取付部材12を振動受部に連結してもよい。
【0012】
第1取付部材11は、内筒部11a、外筒部11b、および下支持部11cを備える。
内筒部11aは、外筒部11b内に嵌合されている。下支持部11cは、環状に形成されている。下支持部11cの外周部の上面に、外筒部11bの下端開口縁が載置されている。第1取付部材11は全体で円筒状に形成されている。第1取付部材11は、図示されないブラケットを介して振動受部としての車体等に連結される。
【0013】
第2取付部材12は、環状に形成されている。第2取付部材12は、第1取付部材11に対して径方向の内側で、かつ上方に位置している。第2取付部材12の外径は、第1取付部材11の内径より小さい。第2取付部材12は、図示されない取付金具が内側に嵌合されることにより、この取付金具を介して振動発生部としてのエンジン等に連結される。
なお、第1取付部材11および第2取付部材12の相対的な位置は、図示の例に限らず適宜変更してもよい。また、第2取付部材12の外径を、第1取付部材11の内径以上としてもよい。
【0014】
弾性体13は、軸方向に延びる筒状に形成されている。弾性体13は、上方から下方に向かうに従い漸次、拡径している。
弾性体13の軸方向の両端部に、第1取付部材11および第2取付部材12が各別に連結されている。弾性体13の上端部に第2取付部材12が連結され、弾性体13の下端部に第1取付部材11が連結されている。弾性体13は、第1取付部材11の上端開口部を閉塞している。弾性体13の下端部は、第1取付部材11の内筒部11aの内周面に連結されている。弾性体13の上端部は、第2取付部材12の下面に連結されている。弾性体13は、ゴム材料等により形成され、第1取付部材11および第2取付部材12に加硫接着されている。弾性体13の厚さは、上方から下方に向かうに従い漸次、薄くなっている。なお、弾性体13は、例えば合成樹脂材料等で形成してもよい。
弾性体13の上端部に、第2取付部材12の外周面、および上面を覆うストッパゴム13aが一体に形成されている。弾性体13およびストッパゴム13aには、第2取付部材12を囲う外殻体12aが埋設されている。
【0015】
ダイヤフラム20は、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料からなり、有底円筒状に形成されている。ダイヤフラム20の上端部が、第1取付部材11の下支持部11cの内周部と、仕切部材16の外周部と、により挟まれることで、ダイヤフラム20の内側の液密性が確保され、かつ第1取付部材11の下端開口部が閉塞されている。
なお図示の例では、ダイヤフラム20の底部が、外周側で深く中央部で浅い形状になっている。ただし、ダイヤフラム20の形状としては、このような形状以外にも、従来公知の種々の形状を採用することができる。
【0016】
ここで、前述したように、弾性体13が第1取付部材11の上端開口部を閉塞し、かつダイヤフラム20が第1取付部材11の下端開口部を閉塞したことにより、第1取付部材11内が液密に封止された液室19となっている。この液室19に液体が封入(充填)されている。液体としては、例えばエチレングリコール、水、若しくはシリコーンオイル等が挙げられる。
【0017】
液室19は、仕切部材16によって軸方向に主液室14と副液室15とに区画されている。主液室14は、弾性体13の内周面13cを壁面の一部に有し、弾性体13と仕切部材16とによって囲まれた空間であり、弾性体13の変形によって内容積が変化する。副液室15は、ダイヤフラム20と仕切部材16とによって囲まれた空間であり、ダイヤフラム20の変形によって内容積が変化する。このような構成からなる防振装置1は、主液室14が鉛直方向上側に位置し、副液室15が鉛直方向下側に位置するように取り付けられて用いられる、圧縮式の装置である。
【0018】
仕切部材16に、主液室14と収容室42とを連通する複数の第1連通孔42aと、副液室15と収容室42とを連通する第2連通孔42bと、が形成されている。第2連通孔42bは仕切部材16に複数形成され、第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各個数は互いに同じになっている。第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各内径は互いに同じになっている。なお、第2連通孔42bは仕切部材16に1つ形成してもよい。
【0019】
ここで、仕切部材16において、主液室14の内面の一部を構成する上壁面、および副液室15の内面の一部を構成する下壁面はそれぞれ、軸方向から見て、中心軸線Oと同軸に配置された円形状を呈する。仕切部材16における上壁面および下壁面の各直径は互いに同等になっている。仕切部材16の上壁面は、弾性体13の内周面13cに軸方向で対向し、仕切部材16の下壁面は、ダイヤフラム20の内面に軸方向で対向している。
【0020】
図示の例では、仕切部材16の上壁面に、外周縁部16aを除く全域にわたって窪み部が形成されている。この窪み部の底面(以下、第1壁面という)16bの全域にわたって、複数の第1連通孔42aが開口している。仕切部材16の下壁面に、外周縁部16cを除く全域にわたって窪み部が形成されている。この窪み部の底面(以下、第2壁面という)16dの全域にわたって、複数の第2連通孔42bが開口している。上壁面および下壁面の各窪み部は、軸方向から見て、中心軸線Oと同軸に配置された円形状を呈し、各窪み部の内径および深さなどの大きさは互いに同等になっている。
【0021】
収容室42は、仕切部材16において、第1壁面16bと第2壁面16dとの軸方向の間に位置する部分に形成されている。収容室42は、軸方向から見て、中心軸線Oと同軸に配置された円形状を呈する。収容室42の直径は、第1壁面16bおよび第2壁面16dの各直径より大きい。
可動部材41は、例えばゴム材料等で形成され表裏面が軸方向を向く板状に形成されている。可動部材41は、軸方向から見て、中心軸線Oと同軸に配置された円形状を呈する。
【0022】
仕切部材16に、主液室14と副液室15とを連通するオリフィス通路24が形成されている。オリフィス通路24は、仕切部材16において、上壁面の外周縁部16aと下壁面の外周縁部16cとの軸方向の間に位置する部分に形成されている。オリフィス通路24の上端は、第1壁面16bより上方に位置し、オリフィス通路24の下端は、第2壁面16dより下方に位置している。オリフィス通路24の流路断面形状は、軸方向に長い長方形状となっている。オリフィス通路24の共振周波数は、第1連通孔42aおよび第2連通孔42bの各共振周波数より低い。
【0023】
図2に示されるように、オリフィス通路24における主液室14側の開口部25は、仕切部材16の上壁面の外周縁部16aに形成されている。この開口部25は、貫通孔25aが周方向に間隔をあけて複数配置されてなる孔列25bが、径方向および周方向の各位置を異ならせて複数配置されて構成されている。貫通孔25aの内径は、第1連通孔42aの内径より小さい。孔列25bは、仕切部材16の上壁面の外周縁部16aに2つ配置されている。各孔列25bの周方向のずれ量、および各孔列25bの径方向のずれ量はそれぞれ、貫通孔25aの内径と同等になっている。
【0024】
オリフィス通路24の副液室15側の開口部は、仕切部材16の下壁面の外周縁部16cに形成され、主液室14側の開口部25の開口面積、つまり複数の貫通孔25aの開口面積の総和より開口面積が大きい1つの開口となっている。オリフィス通路24における主液室14側の開口部25および副液室15側の開口部は、第1連通孔42a、および第2連通孔42bより径方向の外側に位置している。
【0025】
仕切部材16の上端部には、径方向の外側に向けて突出し全周にわたって連続して延びるフランジ部16eが形成されている。フランジ部16eの上面は、第1取付部材11における内筒部11aおよび外筒部11bの各下端開口縁に、環状の上側シール材27を介して当接している。フランジ部16eの下面は、第1取付部材11の下支持部11cの内周部の上面に、ダイヤフラム20の上端開口縁、およびダイヤフラム20の上端開口縁を径方向の外側から囲う環状の下側シール材28を介して当接している。
【0026】
仕切部材16は、互いに軸方向に突き合わされて配置された上筒体31および下筒体32と、上筒体31の下端開口部を閉塞する上壁33と、下筒体32の上端開口部を閉塞する下壁34と、を備える。なお、仕切部材16は一体に形成されてもよい。
【0027】
上筒体31の上端開口縁が、前述した仕切部材16の上壁面の外周縁部16aとなっている。上筒体31の上端部にフランジ部16eが形成されている。上筒体31の下端開口縁において、内周部より径方向の外側に位置する部分に、上方に向けて窪み、かつ径方向の外側に向けて開口した周溝が形成されている。
上壁33は、上筒体31の下端開口縁における内周部に固定されている。上壁33に第1連通孔42aが形成されている。
【0028】
下筒体32の上端開口縁において、上筒体31の周溝と軸方向で対向する径方向の中間部分に、下方に向けて窪む周溝が形成されている。この周溝と、上筒体31の周溝と、によりオリフィス通路24が画成されている。下筒体32の上端開口縁において、周溝より径方向の外側に位置する外周縁部が、上筒体31のフランジ部16eの下面に当接している。下筒体32は、ダイヤフラム20の上端部内に嵌合され、ダイヤフラム20の上端部は、第1取付部材11の下支持部11c内に嵌合されている。これにより、ダイヤフラム20の上端部は、下筒体32の外周面と下支持部11cの内周面とにより径方向に挟まれている。
下壁34は、下筒体32の上端開口縁における内周部に固定されている。下壁34に第2連通孔42bが形成されている。
【0029】
上筒体31の下端開口縁における内周部、および下筒体32の上端開口縁における内周部のうちの少なくとも一方に、他方に向けて突出して当接する突き当て突起34a、34bが形成されている。図示の例では、上筒体31の下端開口縁における内周部、および下筒体32の上端開口縁における内周部の双方に、突き当て突起34a、34bが形成されている。突き当て突起34a、34bは、中心軸線Oと同軸に配置された環状に形成され、その径方向の内側に、上壁33および下壁34が、互いに軸方向に隙間をあけた状態で配設されている。収容室42は、上壁33の下面、下壁34の上面、および突き当て突起34a、34bの内周面により画成されている。
【0030】
そして、本実施形態では、仕切部材16において、第1連通孔42aが開口し、かつ主液室14の内面の一部を構成する第1壁面16bに、弾性体13に向けて軸方向に突出する筒状部材21が配設されている。
【0031】
筒状部材21は、円筒状に形成され、中心軸線Oと同軸に配置されている。筒状部材21は、軸方向に真直ぐ延びている。筒状部材21の軸方向の長さは、主液室14の軸方向の最大高さTの20%以上となっている。図示の例では、主液室14の軸方向の最大高さTは、下方から上方に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて延びる、弾性体13の内周面13cにおける上端部と、第1壁面16bと、の軸方向の距離となっている。筒状部材21の軸方向の長さは、防振装置1に軸方向の静荷重が加えられたとき、および軸方向の振動が入力されたときに、筒状部材21の上端部が弾性体13の内周面13cに当接しないように設定される。
【0032】
筒状部材21の上部は、仕切部材16の上壁面に形成された窪み部の上端開口部から上方に突出している。筒状部材21の上部の外周面は、第1取付部材11の内筒部11aの内周面における下端部、および弾性体13の内周面13cにおける下端部と径方向で対向している。筒状部材21の上部の、窪み部の上端開口部からの突出長さは、この窪み部の深さより短い。また、前記突出長さは、弾性体13の内周面13cにおいて、筒状部材21の上端開口縁が軸方向で対向する部分と、筒状部材21の上端開口縁と、の軸方向の距離より短い。下方から上方に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて延びる、弾性体13の内周面13cのうち、軸方向に沿う縦断面視において、この内周面13cの延びる方向における中央部より下側にずれた部分に、筒状部材21の上端開口縁が軸方向に対向している。
【0033】
筒状部材21の内周面の半径は、筒状部材21の外周面と、仕切部材16の上壁面に形成された窪み部の内周面と、の径方向の間隔より大きい。筒状部材21の内径は、主液室14の最大内径Rの半分以上となっている。図示の例では、主液室14の最大内径Rは、第1取付部材11の内筒部11aの下端部の内径となっている。第1壁面16bにおいて、筒状部材21の内側に位置する部分(以下、内側部分という)16fの平面積は、筒状部材21の外側に位置する部分(以下、外側部分という)16gの平面積より大きい。
【0034】
複数の第1連通孔42aは、第1壁面16bにおける内側部分16fおよび外側部分16gの双方に開口している。
内側部分16fに開口する第1連通孔42aの開口面積の総和は、外側部分16gに開口する第1連通孔42aの開口面積の総和より大きい。第1連通孔42aは、内側部分16fにおける全域にわたって等間隔をあけて配置されている。第1連通孔42aは、外側部分16gに、等間隔をあけて全周にわたって配置されている。互いに隣り合う第1連通孔42a同士の間隔は、第1連通孔42aの内径より小さい。
筒状部材21は、第1壁面16bにおいて、隣り合う第1連通孔42a同士の間に位置する部分に連結され、第1連通孔42aと重複しないように配設されている。筒状部材21は、軸方向から見て、内周面および外周面が第1連通孔42aに接するように配置されている。
【0035】
このような構成からなる防振装置1では、低周波振動のうち、比較的周波数の高いアイドル振動が軸方向に入力されると、収容室42内で可動部材41が変形若しくは変位しつつ、液室19の液体が第1連通孔42aおよび第2連通孔42bを流通することで、この振動が減衰、吸収される。また、低周波振動のうち、比較的周波数の低いシェイク振動が軸方向に入力されると、液室19の液体がオリフィス通路24を流通することで、この振動が減衰、吸収される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置1によれば、仕切部材16の第1壁面16bに、弾性体13に向けて突出する筒状部材21が配設されている。このため、軸方向の中周波振動の入力にともない、軸方向に沿う縦断面視において、弾性体13が二次の振動モードで変形するときに、従来は弾性体13の中央部に生じていた節部分が、例えば、主液室14の内周面と筒状部材21の上部の外周面との間の液体が流動しにくくなることなどに起因して、第2取付部材12側にずれることとなり、弾性体13において、節部分より第2取付部材12側に位置する部分と比べて、節部分より第1取付部材11側に位置する部分が変形しやすくなる。これにより、軸方向の中周波振動の入力時に、弾性体13において、節部分より第1取付部材11側に位置する部分が積極的に変形することとなり、弾性体13の剛性を見かけ上低減することが可能になり、この振動を減衰、吸収することができる。
また、本実施形態に係る防振装置1によれば、主液室14の液圧をコントロールすることでも中周波振動を低減することが可能である。
例えば、孔の総面積が同じ場合、振動等の入力があった場合の主液室14の液圧は、仕切部材16に設けられた孔形状の違いに起因して異なる。
同様に、仕切部材16に筒状部材21を配置した場合も、筒状部材21がない場合とは、振動等の入力があった場合の主液室14の液圧が異なる。
筒状部材21を用いることで、防振装置1の軸方向及び径方向で主液室14の領域が分けられ、それぞれの領域が相互に作用することで、従来とは異なり、中周波振動を低減可能と考えられる。
【0037】
また、複数の第1連通孔42aが、第1壁面16bにおいて、筒状部材21の内側に位置する部分、および筒状部材21の外側に位置する部分の双方に開口しているので、第1壁面16bに多くの第1連通孔42aを配置することが可能になり、例えば低周波振動のうち比較的周波数の高いアイドル振動などを確実に減衰、吸収することができる。
また、筒状部材21の軸方向の長さが、主液室14の軸方向の最大高さTの20%以上となっているので、軸方向の中周波振動を確実に減衰、吸収することができる。
また、筒状部材21の内径が、主液室14の最大内径Rの半分以上となっているので、軸方向の中周波振動を確実に減衰、吸収することができる。
【0038】
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0039】
本実施形態に係る防振装置2の筒状部材22では、
図3に示されるように、下側から上側に向かうに従い漸次、縮径している。図示の例では、筒状部材22はドーム状に湾曲して形成されている。なお、筒状部材22は、下側から上側に向かうに従い漸次、直線状に縮径してもよい。
本実施形態に係る防振装置2によれば、筒状部材22が、下側から上側に向かうに従い漸次、縮径しているので、軸方向の中周波振動をより一層確実に減衰、吸収することができる。
【0040】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0041】
前記実施形態では、内側部分16fに開口する第1連通孔42aの開口面積の総和を、外側部分16gに開口する第1連通孔42aの開口面積の総和より大きくしたが、これに限らず例えば、内側部分16fに開口する第1連通孔42aの開口面積の総和を、外側部分16gに開口する第1連通孔42aの開口面積の総和以下としてもよい。
また、筒状部材21が、第1壁面16bに、第1連通孔42aと重複しないように連結された構成を示したが、筒状部材21を、第1壁面16bに、第1連通孔42aと重複させて連結してもよい。
また、弾性体13として、軸方向に延びる筒状に形成された構成を示したが、上下面を有する環状の板状に形成された構成を採用してもよい。
また、仕切部材16の上壁面に窪み部を形成したが、窪み部を形成しなくてもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、支持荷重が作用することで主液室14に正圧が作用する圧縮式の防振装置1、2について説明したが、主液室14が鉛直方向下側に位置し、かつ副液室15が鉛直方向上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室14に負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
【0043】
また、本発明に係る防振装置1、2は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントに適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントに適用することも可能である。
【0044】
本発明によれば、仕切部材の第1壁面に、弾性体に向けて突出する筒状部材が配設されているので、軸方向の中周波振動の入力にともない、軸方向に沿う縦断面視において、弾性体が二次の振動モードで変形するときに、従来は弾性体の中央部に生じていた節部分が、例えば、主液室の内周面と筒状部材の外周面との間の液体が流動しにくくなることなどに起因して、第2取付部材側にずれることとなり、弾性体において、節部分より第2取付部材側に位置する部分と比べて、節部分より第1取付部材側に位置する部分が変形しやすくなる。これにより、軸方向の中周波振動の入力時に、弾性体において、節部分より第1取付部材側に位置する部分が積極的に変形することとなり、弾性体の剛性を見かけ上低減することが可能になり、この振動を減衰、吸収することできる。
また、複数の第1連通孔が、第1壁面において、筒状部材の内側に位置する部分、および筒状部材の外側に位置する部分の双方に開口しているので、第1壁面に多くの第1連通孔を配置することが可能になり、例えば低周波振動のうち比較的周波数の高いアイドル振動などを確実に減衰、吸収することができる。
【0045】
ここで、前記筒状部材の軸方向の長さは、前記主液室の軸方向の最大高さの20%以上となってもよい。
この場合、前述の作用効果が確実に奏功される。
【0046】
また、前記筒状部材の内径は、前記主液室の最大内径の半分以上となってもよい。
この場合、前述の作用効果が確実に奏功される。
【0047】
また、前記筒状部材は、軸方向に沿って前記第1壁面側から前記弾性体側に向かうに従い漸次、縮径してもよい。
この場合、前述の作用効果がより一層確実に奏功される。
【0048】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の防振装置を当該分野に適用することにより、中周波振動を減衰、吸収することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、2 防振装置
11 第1取付部材
12 第2取付部材
13 弾性体
14 主液室
15 副液室
16 仕切部材
16b 第1壁面
16f 内側部分(筒状部材の内側に位置する部分)
16g 外側部分(筒状部材の外側に位置する部分)
19 液室
21、22 筒状部材
24 オリフィス通路
41 可動部材
42 収容室
42a 第1連通孔
42b 第2連通孔
O 中心軸線
R 最大内径
T 最大高さ