(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】対象物の分光分析を行う装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
G01N21/65
(21)【出願番号】P 2021045839
(22)【出願日】2021-03-19
(62)【分割の表示】P 2017022860の分割
【原出願日】2017-02-10
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518260987
【氏名又は名称】ビーアンドダブリュ・ティーイーケー・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】B&W TEK LLC
【住所又は居所原語表記】19 Shea Way, Suite 301,Newark, DE 19713,USA
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【氏名又は名称】稲田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ツァオ
(72)【発明者】
【氏名】シン・ジャック・ツォウ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・シャオル・ワン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077206(JP,A)
【文献】特開2010-122146(JP,A)
【文献】特表2015-500492(JP,A)
【文献】特表2016-508768(JP,A)
【文献】特表2006-501481(JP,A)
【文献】米国特許第05381237(US,A)
【文献】国際公開第2012/095651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00- 21/83
G01J 3/00 - 3/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の
ラマン分光分析を行う装置であって、
第1の波長の励起光を生成する光源と、
反射表面を有する反射キャビティであって、反射キャビティの反対象物側に位置する第1の開口、及び、反射キャビティの対象物側に位置する第2の開口を有し、 ここで、第2の開口は、反射キャビティが、実質的に、対象物の領域を覆う包囲体を形成するように、対象物に適用されるように構成されている反射キャビティと、
励起光を反射キャビティの第1の開口に集束させて、励起光を反射キャビティ内に伝送するように構成されている1つ以上の光学部品と、
ここで、励起光は、反射キャビティの第2の開口に投射され、そして、覆われた対象物の領域に入射して、第2の波長の信号光を生成し、
ここで、反射キャビティは、対象物の覆われた領域から反射又は後方散乱された励起光及び信号光を反射し、また、反射された又は後方散乱された励起光及び信号光を、反射キャビティの第2の開口において対象物の覆われた領域に再入射させる、 ただし、反射キャビティの第1の開口を通って反射キャビティから出る、前記反射された又は後方散乱された励起光及び信号光を除く、
信号光の光スペクトルを集め測定する分光器と、を備える装置。
【請求項2】
前記分光器が、反射キャビティの第1の開口から信号光を集める請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記反射キャビティが、励起光及び信号光に対して高い反射率を有する材料により形成されている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記反射キャビティが、励起光及び信号光に対して高い反射率を持った表面コーティングを有する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記表面コーティングが金属コーティングである請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記表面コーティングが誘電体コーティングである請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記反射キャビティが、少なくとも1つの追加の開口を備える請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記反射キャビティの第2の開口が、前記反射キャビティの第1の開口の少なくとも2倍の面積を有する請求項1に記載の光伝送及び収集装置。
【請求項9】
前記反射キャビティの第1の開口のサイズが、前記反射キャビティの第1の開口において集束された励起光のビームウエストのサイズと実質的に同じである請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記反射キャビティの第1の開口のサイズが、前記反射キャビティの第1の開口において集めることが可能な信号光のビームウエストのサイズと実質的に同じであり、
ここで、集めることが可能な信号光のビームウエストは、1つ以上の光学部品の焦点距離、及び、分光器のエタンデュ(etendue)により決定される請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記反射キャビティが、円柱形、円錐形、球形、又は放物面 (paraboloidal)形状である請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記反射キャビティの円錐角度が、実質的に、集束された励起光の発散角に一致する請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記反射キャビティの第2の開口を覆う光学窓をさらに備え、
該光学窓は励起光及び信号光に対して透明である請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記反射キャビティが、反射コーティングを有する固体の光学材料によって形成されている請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記固体の光学材料が、空間的に不均一な屈折率分布を有する請求項14記載の装置。
【請求項16】
対象物の
ラマン分光分析を行う方法であって、
第1の波長の励起光を生成する工程と、
反射表面を有する反射キャビティであって、反射キャビティの反対象物側に位置する第1の開口、及び、反射キャビティの対象物側に位置する第2の開口をする反射キャビティを提供する工程と、
反射キャビティの第2の開口を、反射キャビティが対象物の領域を覆う包囲体を実質的に形成するように、対象物に適用する工程と、
励起光を反射キャビティの第1の開口に集束させて、励起光を反射キャビティ内に伝送するように構成された1つ以上の光学部品を提供する工程と、
ここで、励起光は、反射キャビティの第2の開口に投射され、そして、覆われた対象物の領域に入射して、第2の波長の信号光を生成し、
ここで、対象物の覆われた領域から反射された又は後方散乱された励起光及び信号光を反射キャビティが反射し、そして反射された又は後方散乱された前記励起光及び信号光を、反射キャビティの第2の開口において覆われた対象物の領域に再入射させ、ただし、反射キャビティの第1の開口を通って反射キャビティから出る、前記反射された又は後方散乱された励起光及び信号光を除く、
信号光の光スペクトルを測定する工程と、を含む方法。
【請求項17】
前記反射キャビティが、励起光及び信号光に対して高い反射率を有する材料により形成されている請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反射キャビティが、励起光及び信号光に対して高い反射率を持つ表面コーティングを有する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記表面コーティングが金属コーティングである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記表面コーティングが誘電体コーティングである請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記反射キャビティの第2の開口が、前記反射キャビティの第1の開口の少なくとも2倍の面積を有する請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記反射キャビティの第1の開口のサイズが、前記反射キャビティの第1の開口において集束された励起光のビームウエストのサイズと実質的に同じである請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記反射キャビティの第1の開口のサイズが、前記反射キャビティの第1の開口において集めることが可能な信号光のビームウエストのサイズと実質的に同じであり、
ここで、集めることが可能な信号光のビームウエストは、1つ以上の光学部品の焦点距離、及び、分光器のエタンデュ(etendue)により決定される請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記反射キャビティが、円柱形、円錐形、球形、又は放物面 (paraboloidal)形状である請求項16記載の方法。
【請求項25】
前記反射キャビティの円錐角度が、実質的に、集束された励起光の発散角に一致する請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記反射キャビティが、反射コーティングを有する固体の光学材料によって形成されている請求項16記載の方法。
【請求項27】
前記固体の光学材料が、空間的に不均一な屈折率分布を有する請求項26記載の方法。
【請求項28】
対象物の
ラマン分光分析を行う方法であって:
第1の波長の励起光を生成する工程と、
対象物の第1の側に励起光を伝送して、該励起光を対象物に入射させて、第2の波長の信号光を生成する工程と、 ここで、励起光及び信号光は、少なくとも部分的に、対象物の第1の側から、該第1の側の反対側の第2の側に伝わり、
反射表面を有する反射キャビティであって、反射キャビティの反対象物側に位置する第1の開口、及び、反射キャビティの対象物側に位置する第2の開口を具備する反射キャビティを提供する工程と、
反射キャビティの第2の開口を、反射キャビティが対象物の第2の側の領域を覆う包囲体を実質的に形成するように、対象物の第2の側に適用する工程と、
ここで、前記伝わった励起光及び信号光を反射キャビティが反射し、前記伝わった励起光び信号光を反射キャビティの第2の開口において、覆われた対象物の領域に再入射する工程と、 ただし、反射キャビティの第1の開口を通って反射キャビティから出る、前記伝わった励起光及び信号光を除く、
反射キャビティの第1の開口から放射された信号光の光スペクトルを測定する工程と、を含む方法。
【請求項29】
異なる材料の表面層及び表面下層を有する対象物の
ラマン分光分析を行う方法であって、
励起光を生成する工程と、
反射表面を有する反射キャビティであって、反射キャビティの反対象物側に位置する第1の開口、及び、反射キャビティの対象物側に位置する第2の開口を有する反射キャビティを提供する工程と、
反射キャビティが実質的に対象物の領域を覆う包囲体を形成するように、反射キャビティの第2の開口を対象物に適用する工程と、
励起光を、第1の開口を通して、反射キャビティの第2の開口に投射されるように伝送し、そして、覆われた対象物の領域に励起光を入射して、第1の信号光を生成する工程と、
ここで、覆われた対象物の領域から反射された又は後方散乱された励起光及び第1の信号光を反射キャビティが反射し、そして、前記反射された又は後方散乱された励起光及び第1の信号光を、反射キャビティの第2の開口において対象物の覆われた領域に再入射させ、 ただし、反射キャビティの第1の開口を通って反射キャビティから出る、前記反射された又は後方散乱された励起光及び第1の信号光を除いて、
第1の信号光を測定して、対象物の表面層及び表面下層の両方の情報を含む対象物の第1の光スペクトルを取得する工程と、
反射キャビティを取り除いて、励起光を対象物の表面層に集束させて、対象物からの第2の信号光を励起させ、第2の信号光を測定し、対象物の表面層の情報を主に含む対象物の第2の光スペクトルを取得する工程と、
第1の光スペクトルと第2の光スペクトルの差を分析して、表面下層の材料を識別する工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光伝送(delivery)及び収集(collection)装置に関し、より具体的には、試料のラマン散乱を測定するための光伝送及び収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光法は、非弾性散乱、即ち、材料のスペクトル特性を生成(produce)するための、材料による単色光のラマン散乱を測定する光学分光技術である。ラマン分光法は、材料の特性評価及び同定のための強力な非侵襲性の分析技術であることが明らかになっている。
【0003】
従来のラマン分光法は、一般に、試料からラマン散乱信号を生成するために十分に集束されたレーザ光を利用する。この手法は、ラマン信号の励起及び収集において、比較的高効率という明確な利点を有する。しかしながら、それはまた、以下の欠点に悩まされている。
【0004】
第一に、わずかな体積の試料しか測定することができない。従って、収集されたラマンスペクトルは、特に、幾分か不均一な試料については、極めて代表的(representative)と言うことはできない可能性がある。
第二に、狭く集束されたレーザ光は、いくらか繊細な試料に損傷を与える可能性がある。
第三に、レーザ光に対して透明ではない拡散性の散乱(diffusely scattering )試料については、この方法は、試料の表面層からのラマン散乱信号のみを測定することになる。表面下の材料の大部分には、ほぼ完全に到達できないだろう。
【0005】
したがって、試料の広い領域の測定を可能とするだけでなく、表面層下(sub-surface)のラマン信号の励起及び収集もできるようなラマン分光法を行うために、改良された光伝送及び収集装置が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、試料の広い領域からのラマン散乱を測定するための光伝送及び収集装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
光伝送及び収集装置は、励起光及びラマン散乱光に対して高い反射率を有する材料により形成されているか、又は、高い反射率の表面コーティングを有する反射キャビティ (reflective cavity)を備える。反射キャビティは2つの開口を有する。第1の開口は、励起光を受光して、第2の開口上に投射するように構成されている。第2の開口は、試料に近接して用いられて、反射キャビティが実質的に試料の広い領域を覆う包囲体(enclosure)を形成するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
励起光は、試料の覆われた領域から、ラマン散乱光を生成する。反射キャビティは、励起光及びラマン散乱光が、分光装置による測定のため第1の開口から放射(emit)されるか、又は第2の開口において試料により再散乱(re-scattered)される場合を除き、全ての(any)励起光及び試料から散乱されたラマン光を反射する。反射キャビティの多重反射(multi-reflection)は、試料からのラマン散乱の励起効率を大幅に改善し、かくして、その収集効率を高める。加えて、散乱光がより多くの励起光を拡散性の散乱試料に浸透させ(penetrate)、それにより生成されたラマン散乱光の効率的な収集を可能にし、それ故に、表面下層のラマン散乱測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面においては、同様の参照番号は、別々の図面の全体にわたって、同一又は機能的に類似する要素を指し、以下の詳細な説明とともに明細書に組み込まれて、その一部
を形成するものであり、添付の図面は、様々な実施形態をさらに示し、本発明による全ての様々な原理及び利点を説明するのに寄与する。
【0010】
【
図1】
図1A-Bは、光伝送及び収集装置の第1の例示的な実施形態を示し、該装置は、ラマン散乱の励起及び収集のための反射キャビティ並びにプローブを受ける容器(receptacle)を有する。
【
図2】光伝送及び収集装置の第2の例示的な実施形態を示し、該装置は、ラマン散乱の励起及び収集のための反射キャビティ並びに光ファイバ又はファイバ束(bundle)を受けるための容器を有する。
【
図3】光伝送及び収集装置の第1の例示的な実施形態の変形例を示し、該装置は、異なる形状の反射キャビティを有する。
【0011】
【
図4】光伝送及び収集装置の第1の例示的な実施形態を用いて、拡散性の散乱試料の透過ラマン散乱を測定する方法(scheme)を示す。
【
図5】光伝送及び収集装置の第1の例示的な実施形態を用いて、拡散性の散乱試料の透過ラマン散乱を測定する若干異なる方法を示す。
【
図6】光伝送及び収集装置の第3の例示的な実施形態を示し、該装置は、反射コーティングを有する固形(solid)の光学材料によって形成された反射キャビティを有する。
【
図7】光伝送及び収集装置の第3の例示的な実施形態の若干の変形例を示す。
【0012】
【
図8】
図8A-Dは、プラスチックボトルに含まれる安息香酸ナトリウム試料の測定されたラマンスペクトルとともに、比較のためのプラスチックボトルのラマンスペクトル及び安息香酸ナトリウム試料のラマンスペクトルを示す。
【
図9】
図9A-Cは、茶封筒に含まれるD(+)-グルコース試料の測定されたラマンスペクトルとともに、比較のための茶封筒のラマンスペクトル及びD(+)-グルコース試料のラマンスペクトルを示す。
【
図10】
図10A-Cは、3つの異なる測定モードにおいて得られた被覆イブプロフェン錠剤試料のラマンスペクトルを示す。
【符号の説明】
【0013】
100・200・300・600・700;光伝送及び収集装置
102・202・302・402・432・602・702;反射キャビティ
104・204・404・434・604;第1の開口、106・206・306・406・436・606;第2の開口
108・208・308・408・508・608;試料、110;表面層、112;表面下層
114・214・414・514・614;励起光、118・218・418・618;容器
120・420・440・620;プローブ、122;光学素子
130;最初の照明領域、132;集光領域、134; 集束角
216・416・516・616;ラマン散乱光
220;光ファイバ又はファイバ束、222;光ファイバ、324;光学窓
400;光伝送装置、430・530;集光装置、601;反射コーティング、
603・703;固体の光学材料、701;他の面、726;端表面
【0014】
図面の要素は、簡潔且つ明瞭となるように図示されており、必ずしも寸法比どおりに描かれていないことを、当業者は理解するであろう。例えば、図面のいくつかの要素の寸法は、本発明の実施形態をより理解しやすいように、他の要素に対して誇張されているものもある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明による実施形態を詳細に説明する前に、実施形態は、主に、試料のラマン散乱を
測定するための光伝送及び収集装置に関する方法のステップ、及び、装置の構成要素の組み合わせにあることと、認められるべきである。したがって、装置の構成要素及び方法のステップは、それが適切な場合には、図面おいて通常の記号(conventional symbols)により表されており、本発明の実施形態を理解することに関連する事柄についてのみ、具体的な詳細を示し、本明細書の説明の恩恵を受ける当業者に既に明らかな詳細事項により、本開示が不明瞭とならないようにしている。
【0016】
この文書では、第1及び第2、上部及び底部などの相互関係を示す用語は、1つの実在物(entity)又は動作を他の実在物又は動作から区別するためだけに用いられており、そのような実在物又は動作間における実際のそのような関係又は順序は、一切、必ずしも必要とされるものではないし、また暗示されるものでもない。
【0017】
「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」の用語、又は、これらの如何なる他の変形も、非排他的な包含をカバーすることを意図するものであって、要素 (elements)のリストを備えるプロセス、方法、品目(article)、又は装置は、これらの要素のみを含むのではなく、他の明示的に列挙されていない要素、あるいは、そのようなプロセス、方法、品目、又は装置に固有の(inherent to)要素を含んでいてもよい。「一つの…を含む(comprises …a)」の文言に続く要素は、さらに限定されることなく、当該要素を備えるプロセス、方法、品目、又は装置の中で、付加的な同一の要素の存在を排除するものではない。
【0018】
図1Aは、光伝送及び収集装置の第1の例示的な実施形態を示し、該装置は、試料の広い領域に励起光を伝送すると共に、そこで生成されたラマン散乱光を収集するように構成されている。光伝送及び収集装置100は、励起光及びラマン散乱光に対して高い反射率を有する材料により形成された反射キャビティ102を備える。そのような材料は、例えば、金、銀、銅、及びアルミニウムなどの金属材料であってよい。あるいは、それは誘電材料、好ましくは共に堅く充填された誘電材料の粒子であってもよい。誘電体材料は、励起光及びラマン散乱光に対して透明又は半透明(translucent)であり、粒子の境界における多重反射により、又は、半透明材料の内部における拡散散乱(diffuse scattering)により光を反射する。
【0019】
反射キャビティの表面は、好ましくは、その反射率を高めるために研磨されている。或いは、反射キャビティ102は、励起光及びラマン散乱光に対して高い反射率を有する表面コーティングを有してもよい。このような表面コーティングは、広範囲の波長において高反射を示す金属コーティングであってもよい。或いは、それは、特定された (customized)された反射波長の範囲を有する誘電体コーティングであってもよい。後者は、関心のある波長のみを反射してもよく、これにより、励起光及びラマン散乱光と重ならない波長の迷光又は蛍光を排除することができる。反射キャビティ102は、様々な形状の試料表面に適応できるように、可撓性材料で作ることができる。
【0020】
光伝送及び収集装置100は、プローブ120を受けるように構成された容器118をさらに備える。プローブ120は、光学レンズ、ミラー、フィルタ、ビームスプリッタ、光ファイバなどの、1つ又は複数の光学部品122を備え、該光学部品122は、レーザ光源(図示せず)などの光源から励起光を受光し、該励起光を反射キャビティ102の第1の開口104に集束させ、それによって励起光114を反射キャビティ102内に伝送する。
【0021】
開口104は、好ましくは、できるだけ小さいが、励起光、及び、プローブ120によって集光可能なラマン光を、遮ることなく通過させるのに十分な大きさを有する。励起光114は発散(diverge)し、反射キャビティ102の第2の開口106に投射される。
第2の開口106は、好ましくは第1の開口104よりも十分に大きいサイズを有し、より好ましくは、第1の開口104の少なくとも2倍の面積を有し、少なくとも数平方ミリメートルの面積をカバーする。
【0022】
反射キャビティ102の第2の開口106は、反射キャビティ102が実質的に試料108の広い領域を覆う包囲体を形成するように、試料108に近接して適用されるように構成され、励起光114は、試料108の覆われた領域からラマン散乱光116を生成する。大体積の試料からラマン散乱を収集することにより、試料上における励起光の強度を低下させて試料の損傷を回避する。その一方、収集されたラマンスペクトルは、特に不均一な試料については、より代表的である。
【0023】
ここで、試料108は、医薬品、粉末、生体組織などのような拡散性の散乱試料であってもよく、又は異なる材料の複数の層を有する試料であってもよい。
図1Aに示す試料108は、例えば内部に粉末を入れた容器のように、表面層110及び表面下層112を有する拡散性の散乱試料である。
【0024】
試料108は、弾性散乱又は非弾性散乱、即ちラマン散乱により、励起光114を散乱させて反射キャビティ102内に戻す。反射キャビティ102は、次の場合を除いて、励起光及び試料から散乱されたラマン散乱光のどちらも反射する。ただし、励起光及びラマン散乱光が第1の開口104から放射されてプローブ120により集光された後(then)、試料108のラマンスペクトルを取得するために分光装置(図示せず)により測定されるか、又は、第2の開口106において試料108により再散乱される場合を除く。反射キャビティの多重反射は、試料からのラマン散乱の励起効率を大きく改善し、その間にその収集効率を高める。
【0025】
この例では、励起光114は、反射キャビティ102の助けにより、試料108の表面層110を透過し、試料108の表面下層112からラマン散乱を生成する。したがって、測定されたラマンスペクトルは、試料108の表面層110及び表面下層112の両方の特性情報を含む。
【0026】
別のステップ(step)では、光伝送及び収集装置100を取り外すことができ、プローブ120からの励起光120は、試料108の表面層110に直接集束され、それにより表面層110のラマンスペクトルが測定される。後者のラマンスペクトルは、先に測定されたラマンスペクトルから数学的に差し引かれ(extract)、それにより、試料の表面下層のラマンスペクトルが得られる。反射キャビティにより提供されるようなラマン散乱光の励起及び収集効率の向上により、表面下層のラマン散乱測定が可能になる。
【0027】
光学的には、反射キャビティは、次の(i)~(iii)を含む、3つの目的を果たす。すなわち、(i)大きなサンプリング領域を提供する、(ii)上述したように、多重の反射及び散乱によって信号収集を最大にする、及び、(iii)サンプリングされた領域を、信号を汚染しかねない環境(ambient)光から隔離する。
【0028】
サンプリング領域のサイズは、具体的なサンプリング要件により決定する必要がある。例えば、試料が不均一(heterogeneous)であり、試料全体の中でのより良い代表
(representation)を取得することを目標とする場合、サンプリング領域を、試料の粒子サイズの少なくとも数倍大きくする必要がある。包装材(packaging material)の層を通して表面下層の試料を測定することが目的である場合、サンプリング領域の線長さ (linear size)を、包装材の厚さの数倍にする必要がある。
【0029】
決定された望ましいサンプリング領域と共に、
図1Bはさらに、最大の信号収集を達成
するための反射キャビティの設計の留意事項(design consideration)を示す。プローブ120からの励起光ビーム114は、光学部品122により第1の開口104において集束され、続いて発散し、第2の開口106上に投射され、最初の照明領域130を覆う。プローブ光学系により収集可能な光ビーム116も同様に、集光領域(collection area)132に投射される。集光領域132及び最初の照明領域130は、サイズが異なっていても良い。プローブ光学系が固定された状態で、第1の開口104の最小サイズ、及び、両ビームの発散角が決定される。
【0030】
収集効率を最大にするために、第1の開口104のサイズは、励起及び収集ビームを遮ることなく、即ち、第1の開口104においてそれらのビームのウエスト(beam waists)を取り囲むのに十分な大きさで、可能な限り小さくすべきである。仮に、それより大きい場合、収集ビームのウエスト(collection beam waist)の外側ではあるが第1の開口の内側の領域に来た(falling on)、散乱した励起光及びラマン光が、プローブ120によって集光されずに、第1の開口104を出るであろう。
【0031】
最大の信号収集を得るための第2の開口106のサイズを決定するには、まず、開口の外側の光を遮ることを考慮しなくてはならないので、開口は少なくとも所望のサンプリング領域のサイズでなければならない。次に、反射キャビティ102による各反射の際、及び、試料108による各散乱の際の、必然的な損失を考慮する必要がある。最大の収集効率のために、ラマン散乱光は、できるだけ少ない回数の反射及び散乱を経ることにより、第1の開口104を出て、プローブ120により集光されるべきである。
【0032】
仮に、第2の開口106を投射された領域(projected area)132よりも大きくすると、投射された領域132の外側の領域から出てくるラマン光を、より多くの反射及び散乱を経ることなくプローブ120で捕捉することができず、その結果、効率が低下し、有効なサンプリング領域が領域132に限定されてしまうことになる。したがって、サンプリング領域は、領域132と第2の開口106とのうちの小さい方である。
【0033】
一方、第2の開口106からの信号光の集束角134は、第1の開口104における集束ビームのサイズに比例し、キャビティ長に反比例する。この角度が大きいほど、収集効率も高くなる。したがって、投射領域132を必要なサンプリング領域よりも小さくすることなく、キャビティ長をできるだけ短く必要がある。これらの因子が、最適な効率のために、組み合わされて、第2の開口106のサイズを必要なサンプリング領域に等しくすべきであり、キャビティ長を、投射領域132が第2の開口106のサイズと等しくなるような長さにすべきである。好ましくは、反射キャビティ102の第2の開口106を、第1の開口104の面積の少なくとも2倍の大きさにする。
【0034】
図2は、光伝送及び収集装置の第2の例示的な実施形態を示す。ここで、光伝送及び収集装置200は、
図1における反射キャビティ102と同様の構造を有する反射キャビティ202を備えるととも、1つ以上の光ファイバ又はファイバ束220を受けるように構成された容器(receptacle)218を備える。光ファイバ又はファイバ束は、反射キャビティ202の第1の開口204の近傍において終端し、これにより、光源(図示せず)から反射キャビティ202内に励起光を伝送する。
【0035】
図1に示すものと同様にして、励起光214は、反射キャビティ202の第2の開口206において、試料208からラマン散乱を励起する。反射キャビティ202は、次の場合を除き、全ての励起光及び試料から散乱されたラマン散乱光216を反射する。ただし、励起光及びラマン散乱光216が第1の開口から放射されてファイバ220により収集された後に、試料208のラマンスペクトルを取得するために分光装置(図示せず)により測定されるか、又は、第2の開口206において試料208により再散乱される場合を
除く。ファイバ束220は、複数の光ファイバ222を含んでもよい。例えば束の中心のファイバなどの一部のファイバは、励起光を伝送するために用いることができ、例えば束の周縁のファイバなどの他の部分のファイバは、ラマン散乱光を収集するために用いることができる。
【0036】
光伝送及び収集装置の反射キャビティは、例えば円柱形、円錐形、球形、又は放物面 (paraboloidal)形状など、様々な形状を取ってもよい。
図3に示すような光伝送及び収集装置の若干の変形において、光伝送及び収集装置300の反射キャビティ302は、球形又は放物面形状である。特殊な形状は、光を特定の方向に有利に(favorably)反射し、それにより、それらの方向におけるラマン散乱の励起及び収集効率を高める。
【0037】
さらに、反射キャビティ302は、その第2の開口306を覆う光学窓(window)324を含んでもよく、それにより、キャビティの表面における、試料308からの如何なる汚染も防止する。光学窓324は、反射キャビティ302の第2の開口306が様々な形状の試料表面に適応できるように、可撓性膜であってもよい。
【0038】
光学窓324は、励起光及びラマン散乱光に対して透明であることが好ましく、光学窓324の厚さは、励起光及びラマン散乱光に過剰な挿入損失(insertion loss)を生じさせないように、十分薄くなければならない。光学窓324に適切な材料を選択することにより、光学窓からのラマン散乱を、測定されたラマンスペクトルの波長(又はラマンシフト)を較正するための参照(reference)として利用することも可能である。
【0039】
光伝送及び収集装置のさらに別の変形においては、反射キャビティの第1及び第2の開口の相対位置を調整してもよい。例えば、第1の開口を、励起光が試料を斜めに照射するように、第2の開口の中心の軸外(off-axis)としても良い。反射キャビティは、ラマン散乱光を出力するための追加の開口を有してもよい。
【0040】
反射キャビティにおけるこの開口の位置は、例えば、試料の表面材料からのラマン散乱信号の収集率(collected percentage)を最小にし、かつ、試料の表面下層の材料からのラマン散乱信号の収集率を最大にするように最適化してもよい。あるいは、追加の開口を、試料からのラマン散乱を励起するための波長が異なる別の励起光を伝送するのに使用してもよい。さらに、反射キャビティは、励起光及びラマン光の光学特性を変化させるために、気体又は液状媒質などの光学媒体で充填されてもよい。
【0041】
図4は、光伝送及び収集装置の第1の例示的な実施形態を、拡散性の散乱試料の透過ラマン散乱を測定するために利用する方法を示す。この例では、そのような装置の2つが利用されている。一方の装置は、励起光を試料の一方の側に伝送するために用いられ、他方の装置は、試料の反対側からラマン散乱光を収集するために使用される。
【0042】
図4に示すように、光伝送装置400は、プローブ420を受ける容器418と、励起光414を受光する、プローブ420と連通する第1の開口404のある反射キャビティ402とを有する。光伝送装置400の第2の開口406は、試料408の一方の側に近接して適用され、これにより、光伝送装置400の反射キャビティ402が、実質的に、試料の広い領域を覆う包囲体(enclosure)を形成するようになり、そこでラマン散乱光416を励起する。
【0043】
集光装置430は、第2の開口436のある反射キャビティ432を有し、この第2の開口436は、試料408の反対側に適用され、これにより、反射キャビティ432が、試料408を透過するラマン散乱光を収集する。それとともに、ラマン散乱光を、反射キャビティ432の第1の開口434を介して、プローブ400に伝送し、分光装置(図示
せず)による分析に供する。光伝送装置400の反射キャビティ402は、試料によって散乱して戻された(scattered back)励起光及びラマン散乱光の大部分を、試料を透過するまで、試料内に反射して戻す(reflecting back)ことにより、ラマン励起及び収集の効率を高める。
【0044】
光伝送装置430の反射キャビティ432は、出口の開口、即ち第1の開口434に落ち入って(fall on)いない、全ての励起光及びラマン散乱光を反射して戻すことによって、同様に機能する。本方法(present scheme)の若干の変形例においては、光伝送装置400を、
図1に示すものと同様の方法で、試料408からの後方散乱ラマン光を収集するために用いることもできる。後方散乱ラマン光及び前方散乱ラマン光のスペクトルは、試料408の組成を分析するために、共に使用されてもよい。
【0045】
図5は、光伝送及び収集装置の第1の例示的な実施形態を、拡散性の散乱試料の透過ラマン散乱を測定するために利用する、若干異なる方法を示す。ここで、励起光514は、試料からラマン散乱光516を励起するために、試料508の一方の側に直接伝送される。励起光514は、コリメートされても良いし、又は収束しても良いし、又は発散しても良い。
図1に示すものと同様に設計された集光装置530は、試料508を透過するラマン散乱光516を収集するために用いられる。
【0046】
同様にして、
図2及び
図3に示す光伝送及び収集装置を、透明又は拡散性の散乱試料の透過ラマン散乱を測定するために使用しても良い。
【0047】
図6は、光伝送及び収集装置の第3の例示的な実施形態を示す。ここで、光伝送及び収集装置600は、反射コーティング602を有する固体の光学材料603によって形成された反射キャビティ602を備える。反射コーティング601は2つの孔(openings)を有し、これらの孔は、反射キャビティ602の第1の開口(aperture)604及び第2の開口606を形成する。光伝送及び収集装置600は、さらに、プローブ620を受けるように構成された容器618を備える。
【0048】
プローブ620は、光源から励起光を受光し、この励起光を反射キャビティ602の第1の開口604に集束させ、これにより、励起光614を反射キャビティ602内に伝送する。
図1に示すものと同様の方法で、励起光614は、反射キャビティ602の第2の開口606において試料608からラマン散乱を励起する。反射キャビティ602は、次の場合を除き、全ての励起光及び試料から散乱されたラマン散乱光616を反射する。ただし、励起光及びラマン散乱光616が、第1の開口604から放射されてプローブ620により収集された後、試料608のラマンスペクトルを取得するため分光装置(図示せず)により測定されるか、又は、試料608により第2の開口606において再散乱される場合を除く。
【0049】
光学材料603は、好ましくは、励起光614及びラマン散乱光616に対して透明である。それは、空間的に不均一(spatially heterogeneous)であって、それゆえ、励起光及びラマン光の伝搬方向(propagation direction)を変化させる屈折率分布
(refractive index profile)を有してもよい。一例として、光学材料603は、光学レンズとして機能するように、屈折率が放物線状に変化する勾配屈折率(GRIN)プロファイルを有してもよい。このGRINレンズの有効焦点距離が反射キャビティ602の長さに等しいとき、第1の開口604からの励起光614は、GRINレンズにより、第2の開口606に到達したときにコリメートされるであろう。それで(in turn)、試料608への励起光の浸透(penetration)深さが増加する。
【0050】
図7は、光伝送及び収集装置の第3の例示的な実施形態の若干の変形例を示す。この変
形例において、光伝送及び収集装置700は、湾曲した端表面726を有する固体の光学材料703により形成された反射キャビティ702を備える。光学材料703の端面726、及び、他の(the other)面701は、異なる波長で反射する反射コーティングを有してもよい。一例として、励起光及びラマン光が2つの異なる形状の反射キャビティによって反射されるように、端表面726が励起光を反射し、他の面701がラマン光を反射するようにしても良い。
【0051】
図8及び
図9は、光伝送及び収集装置を、拡散性の散乱容器に入れられた、拡散性の散乱試料のラマンスペクトルを測定するために利用する2つの例を示す。
【0052】
図8Aは、
図1に示す光伝送及び収集装置を活用して測定された、白色プラスチックボトルに入れられた安息香酸ナトリウム粉末のラマンスペクトルを示す。
図8Bは、光伝送及び収集装置を取り外して、レーザビームをプラスチックボトルの表面に直接集束させることにより測定された、プラスチックボトルのラマンスペクトルを示す。
図8Bにおけるスペクトルを適切に尺度付けし(scaling)、尺度付けしたスペクトルを
図8Aのスペクトルから減算(subtracting)することにより、
図8Cに示すように、安息香酸ナトリウム粉末の計算されたラマンスペクトルを得ることができる。このスペクトルを
図8Dに示すラマンスペクトル、純粋な安息香酸ナトリウム粉末から直接収集されたものと比較すると、計算されたラマンスペクトルは、純粋な安息香酸ナトリウム粉末のスペクトルに十分に近いことが分かる。
【0053】
容器のスペクトルを抽出する(extracting)際の数学的アルゴリズムを最適化することにより、得られた試料のスペクトルの品質をさらに改善することが可能である。或いは、容器及び内容物を含む試料全体の材料の組成(material makeup)を識別するため、混合物解析(mixture analysis)を、
図8Aのスペクトルを用いて直接行うことができる。様々な混合スペクトル分析アルゴリズムが、このようなタスクを遂行するために存在する。容器の材料を予め知っておくことにより、内容物の化学組成を決定することができる。さらに別の実施例では、
図8Bにおける容器のスペクトルを成分として指定する(be designated as a component)ことができ、修正された混合物解析法を使用して、
図8Aのスペクトルを構成する残りの成分を識別することができる。
【0054】
図9は、光伝送及び収集装置により、異なる種類の包装材、すなわち茶封筒(brown
paper envelope)を通したラマン分光法を用いて、材料同定(material identification)を可能とする方法を示す。
図9Aは、茶封筒に含まれるD(+)-グルコース試料の測定されたラマンスペクトルを示し、これは
図1に示す光伝送及び収集装置を用いて測定されたものである。
図9Bは、該装置を用いることなく、茶封筒に励起光を集束させることにより、取得されたラマンスペクトルを示す。
【0055】
図9Cは、茶色の紙の封筒(brown paper envelope)なしで取得されたD(+)-グルコース試料のラマンスペクトルを示す。ここで、
図9Bの茶封筒のスペクトルにおいては、高レベルの蛍光の頂上部に、セルロースの標識(特徴、signature)が表れている。グルコース含量の痕跡は、ほとんど全く存在しない。対照的に、光伝送及び収集装置により取得されたラマンスペクトルは、ほとんどがD(+)-グルコースであり、セルロースからの寄与は比較的少ない。この場合、包装材の中の材料は、分光ライブラリ(spectral library)を探索することによって、直接識別することができる。
【0056】
図10は、透過モードで使用される光伝送及び収集装置により、バルク材料の特性の測定を可能とする方法を示す。ここで、試料は、地元のドラッグストアから購入したイブプロフェン錠剤(Advil、200mg)である。錠剤は茶色のコーティングが、なされている。
図10Aのスペクトルは、
図4に示す構成を用いた透過モードで取得され、
図1
0Bのスペクトルは、
図1に示す構成を用いた反射モードで取得され、
図10Cのスペクトルは、光伝送及び収集装置を利用しない反射モードで取得されたものである。
【0057】
図10Cのスペクトルは、大部分が錠剤のコーティングから得られる特徴からなるのに対し、
図10Aの透過ラマンスペクトルは、ほぼ完全にコーティングの内側の製剤原料からなる。
図10Bのスペクトルは、
図10Aのスペクトルと同様であるが、比較的コーティングからの寄与が大きい。当業者には、透過モードは試料の厚さ全体にわたってラマン信号を測定することが知られているので、試料全体のバルク特性に関心があるときには、より有利である。
【0058】
上述の明細書において、本発明の特定の実施形態について説明した。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。従って、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく好ましい意味で考慮されるべきであり、そのような変更の全ては、本発明の範囲内に含まれることが意図される。効用、利点、課題の解決策、及び、効用、利点、又は解決策を起こさせるか、又は、より多く宣告されるようになる(become more pronounced)原因となり得る、如何なる要素も、いずれかの又は全ての請求項の重要な、必須の、又は不可欠な機能又は要素であると解釈してはならない。本発明は、専ら、本出願の係属中になされた補正、及び、発行された請求の範囲の全ての均等物を含む、添付の請求項によってのみ定義される。