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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】浴室洗い場床用洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 4/00 20060101AFI20221018BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20221018BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A47K4/00
A61L2/18
B08B3/02 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018049775
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019154998
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 基和
(72)【発明者】
【氏名】石井 克典
(72)【発明者】
【氏名】村橋 利行
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174904(JP,A)
【文献】特開2008-168230(JP,A)
【文献】特開2016-174754(JP,A)
【文献】特開2008-168231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00、4/00
A61L 2/18
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を有する洗い場床を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、
前記洗い場床に、水道水又は低濃度除菌水からなる第1洗浄水と、メチロバクテリウムを取り除いた第2洗浄水を散水する洗浄手段と、
前記洗浄手段を回転させる回転部と、
前記洗浄手段および前記回転部を制御する制御部と、
使用者が操作可能な操作部と、を備え、
前記制御部は、
前記洗い場床に残存する角質を前記第1洗浄水の散水によって前記排水口に排出する黒カビ抑制工程と、
前記洗い場床に残存する残水を、前記第2洗浄水に置換するピンクスライム抑制工程と、を実施するよう前記洗浄手段を制御するよう構成され、
前記洗浄手段を制御することによって、
前記洗い場床に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床から前記排水口に排出されるように、前記洗浄水を散水する黒カビ抑制工程と、
前記洗い場床に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水が、メチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水に置換されるように、前記洗浄水を散水するピンクスライム抑制工程と、を実施するようになっており、
前記制御部は、前記黒カビ抑制工程における吐水流量を変更するために、所定の流量を吐水する第1モードと、前記第1モードよりも吐水流量が少ない第2モードと、前記第1モードよりも吐水流量が多い第3モードとを前記操作部で操作された信号に応じて選択できるよう構成されており、
前記制御部は、
予め設定された所定時間継続する前記第1モードと、前記第1モードの所定時間よりも短い時間継続する前記第2モードと、前記第1モードの所定時間よりも長い時間継続する前記第3モードとを選択することで吐水流量を変更するよう構成され、
前記制御部は、
前記第1モードおよび前記第2モードおよび前記第3モードの継続時間を前記回転部の回転数を変更することで変更するよう構成される
ことを特徴とする浴室洗い場床用洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1モードおよび前記第2モード及び前記第3モードの何れかが設定された場合であっても、前記ピンクスライム抑制工程における吐水流量は変更しない
ことを特徴とする請求項1に記載の浴室洗い場床用洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場床を洗浄するための浴室洗い場床用専用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場床の汚れには、人体の洗浄に使用された石鹸やシャンプーなどのかす、人体から発生した垢(タンパク質系、炭水化物系、油脂系、塩類等)などがある。
【0003】
本件出願人は、これらの汚れを除去して浴室洗い場床におけるカビの発生を抑制するための洗浄装置をすでに開発し、特許を取得している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4035662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者は、浴室における顧客ニーズが最も高い、洗い場床のカビ発生を抑制できる技術について、長年研究してきた。
【0006】
特許文献1に開示されている技術のうち、浴室の排水口をAg殺菌する技術は、本件出願人が実際に商品化を果たした(商品名:ぬめりま洗)。しかしながら、排水口に対しては高い殺菌効果が期待できる一方で、洗い場床に対してはAg殺菌水は遅行性という特性があるため、十分な効果を発揮できず、洗い場床に対するカビ対策という観点では十分ではなかった。具体的には、Ag殺菌水は、即効性が低いため、カビ菌にアタックする前に洗い場床から排水口に流れてしまうという問題があった。
【0007】
大量のAg殺菌水を洗い場床に流し続ければ、カビ菌に対して長い時間アタックできるため、効果を期待できる。しかし、その場合、節水面での課題が残る。
【0008】
顧客ニーズの高い洗い場床におけるカビ菌に対する効果を高めるべく、本件発明者は、次亜塩素酸を利用した技術の応用について検討を重ねてきた。次亜塩素酸を用いる技術は、即効性が期待できるため、カビ菌に対するアタックの点では効果が期待できたが、以下の問題を解決する必要があった。
【0009】
まず、浴室はある程度の広さを有し、吐水距離がある程度長くなるため、次亜塩素酸の濃度の「減衰」が起こるという問題である。すなわち、散水後においてカビに対して十分なアタック効果を期待するには、当該減衰の分を考慮して、かなり高濃度の次亜塩素酸を用いる必要があると考えられていた。
【0010】
しかしながら、水道水中に含まれる塩素成分には限りがあり、高濃度化を図ることは容易ではなかった。塩素添加などの方法も考えられたが、塩素を添加するプロセスに伴う種々の煩わしさが発生してしまって、実用的でなかった。
【0011】
更に、高濃度化が実現できたとしても、流量を絞った状態で散水(吐水)すると、洗浄時間の長期化に伴って設備機器の腐食対策が必要になる、という問題も生じ得る。
【0012】
本件発明者は、長年の研究の末、浴室洗い場床に対して、次亜塩素酸を含む水を洗浄に用いる場合であっても、塩素添加などの高濃度化技術を採用する必要なく、好適に浴室洗い場床のカビ発生を大幅に低減できる実用上優れた洗浄技術を見出した。
【0013】
すなわち、本件発明者は、従来のように発生してしまった後の黒カビやピンクスライムを死滅させるという殺菌作用ではなく、浴室に発生し得る黒カビやピンクスライムに対してそれらの増殖原因となる物質を抑制ないし死滅させることが、効果的であることを知見した。発生後の事後対策技術ではなく、発生源の除去という未然対策技術によって、実用上優れた浴室の洗浄技術を見出したものである。
【0014】
具体的には、黒カビの原因である角質を床面から除去することによって黒カビ対策を実施し、ピンクスライムの原因であるメチロバクテリウムを含まないメチロバクテリウムレス水で洗い場床を洗浄置換することによってピンクスライム抑制を実施することが、効果的であることを知見したものである。
【0015】
なお、図34は、角質の残存が黒カビ発生の主要因であることを説明するための実験結果を示す図である。これは、各汚れ成分を500ppm混合したものに、カビ胞子(クラドスポリウム)を2500cfu/ml付与して、25℃、80%Rhの環境下で7日間培養したものである。図34に示すように、角質に対する培養結果において、黒カビの顕著な発生が確認された。
【0016】
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものである。本発明の目的は、浴室の洗い場床においてカビの発生を抑制することができる浴室洗い場床洗浄装置を提供することである。
【0017】
本発明は、排水口を有する洗い場床を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、前記洗い場床に、水道水又は低濃度除菌水からなる第1洗浄水と、メチロバクテリウムを取り除いた第2洗浄水を散水する洗浄手段と、前記洗浄手段を回転させる回転部と、前記洗浄手段および前記回転部を制御する制御部と、使用者が操作可能な操作部と、を備え、前記制御部は、前記洗い場床に残存する角質を前記第1洗浄水の散水によって前記排水口に排出する黒カビ抑制工程と、前記洗い場床に残存する残水を、前記第2洗浄水に置換するピンクスライム抑制工程と、を実施するよう前記洗浄手段を制御するよう構成され、前記洗浄手段を制御することによって、前記洗い場床に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床から前記排水口に排出されるように、前記洗浄水を散水する黒カビ抑制工程と、前記洗い場床に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水が、メチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水に置換されるように、前記洗浄水を散水するピンクスライム抑制工程と、を実施するようになっており、前記制御部は、前記黒カビ抑制工程における吐水流量を変更するために、所定の流量を吐水する第1モードと、前記第1モードよりも吐水流量が少ない第2モードと、前記第1モードよりも吐水流量が多い第3モードとを前記操作部で操作された信号に応じて選択できるよう構成されていることを特徴とする浴室洗い場床用洗浄装置である。
【0018】
黒カビ抑制工程では、洗い場床に残存する角質を剥ぎとって排水口に残すことなく排出することが重要である。この角質の除去を、散水だけで行う場合は、角質をふやかして剥ぎ取ることが重要であり、水量、水勢を高くすることが望ましい形態になる。
【0019】
一方、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を作り、これを散水して残水を置換させるピンクスライム抑制工程では、メチロバクテリウムの除去が不十分であれば、散水されたメチロバクテリウムによってピンクスライムが発生してしまう。よって、高い除去性能が必要になる。また、ピンクスライム抑制工程で散水される洗浄水が殺菌性を持たない場合、もしくは殺菌成分が低濃度である場合、発生してしまったピンクスライムの取り除きができないため、散水前のメチロバクテリウムの除去性能に高い精度が求められる。
【0020】
このように、本発明の2つの工程において、異なる要求が存在し、例えば、黒カビ抑制工程における散水の水量や水勢でピンクスライム抑制工程を実行すると、散水前にメチロバクテリウムを高精度に除去するには、除去手段の性能がとても高いものが要求されることになる。
【0021】
本発明においては、ピンクスライム抑制工程では、角質をふやかす、剥がすという要求がない、という本件発明者の特有の知見に基づいて、散水の仕方を最適に変えるという簡単な構成で両工程の要求を高いレベルで満足し、メチロバクテリウムの除去性能を高めた実用上優れた実施の形態を見出したものである。
【0022】
このように実用上優れた実施の形態を見出したことに加え、洗い場床への角質の固着は、使用者数の違いや季節等によって異なることが判明した。この洗い場床への角質の固着の度合が変わるため、黒カビ抑制工程において吐水流量が異なる第1モードと第2モードと第3モードとを選択できるように構成した。このように構成することによって、角質の固着度合が高い場合は、第3モードを実行し、角質の固着度合が低い場合は、第1モードを実行することで、角質の固着度合が変わった場合であっても角質を排水口に排出することができる。
【0023】
本発明においては、制御部は、予め設定された所定時間継続する前記第1モードと、前記第1モードの所定時間よりも短い時間継続する前記第2モードと、前記第1モードの所定時間よりも長い時間継続する前記第3モードとを選択することで吐水流量を変更するよう構成することが好ましい。
【0024】
このように第1モードと第2モードと第3モードの継続時間を変えることで吐水流量を変更するように構成することにより、水圧の変更を行うことが不要となり、構造が複雑になることなく、吐水流量を変更することができる。
【0025】
本発明においては、制御部は、前記第1モードおよび前記第2モードおよび前記第3モードの継続時間を前記回転部の回転数を変更することで変更するよう構成することが好ましい。
【0026】
このように第1モードと第2モードと第3モードの回転数を変更することで吐水流量を変更するように構成することにより、水圧の変更を行うことが不要となり、構造が複雑になることなく、吐水流量を変更することができる。
【0027】
本発明においては、制御部は、前記第1モードおよび前記第2モード及び前記第3モードの何れかが設定された場合であっても、前記ピンクスライム抑制工程における吐水流量は変更しないことが好ましい。
【0028】
このように構成することで、黒カビ抑制工程にて角質が洗い場床から除去されているため、ピンクスライム抑制工程では、洗い場床に残存している洗浄水をメチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水で置換すればよい。そのため、黒カビ抑制工程において第1モードおよび第2モードおよび第3モードの何れかが設定された場合であってもピンクスライム抑制工程における吐水流量を変更しないことで、無駄に水を散水することを防止できる。
【0029】
ピンクスライム抑制工程では、角質をふやかす、剥がすという要求がない、という本件発明者の特有の知見に基づいて、散水の仕方を最適に変えるという簡単な構成で、黒カビ抑制工程及びピンクスライム抑制工程の両方の要求を高いレベルで満足できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、浴室の洗い場床においてカビの発生を抑制することができる浴室洗い場床洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態による浴室洗い場用洗浄装置が設置される浴室の一例を表す模式的斜視図である。
図2図1のカウンターの近傍を拡大した模式的斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る浴室洗い場用洗浄装置を例示する模式図である。
図4図1のノズル部の構成の詳細を例示する正面図及び断面図である。
図5図1のノズル部の構成の詳細を例示する斜視図、側面図及び平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る浴室洗い場用洗浄装置の制御フローを示す概略図である。
図7図1のノズル部の回転動作の一例を示す概略図である。
図8】黒カビ抑制工程と対応させた洗い場床を示す平面図である。
図9】黒カビ抑制工程におけるタイムチャートを示す概略図である。
図10】ピンクスライム抑制工程と対応させた洗い場床を示す平面図である。
図11】ピンクスライム抑制工程におけるタイムチャートを示す概略図である。
図12】ピンクスライム抑制工程の効果についての実験結果を示す洗い場床の平面図である。
図13】黒カビ抑制工程およびピンクスライム抑制工程を実行する際のそれぞれの工程の散水量を示す表である。
図14】本発明の一実施形態に係る浴室洗い場用洗浄装置において、低濃度殺菌水生成部と除去装置との関係を説明する模式図であり、図14(a)は概略斜視図であり、図14(b)は概略断面図である。
図15】低濃度殺菌水生成部及び除去装置の他の構成例を示す模式図であり、図15(a)は概略斜視図であり、図15(b)は概略断面図である。
図16】低濃度殺菌水生成部の第1代替例を示す、図3の相当図である。
図17】低濃度殺菌水生成部の第2代替例を示す、図3の相当図である。
図18】低濃度殺菌水生成部の第1変形例を示す、図3の相当図である。
図19】部分的な除菌効果について説明する平面図である。
図20】有効塩素濃度毎の、浴室における発生後の黒カビ及びピンクスライム殺菌時間と散水量との関係を示すグラフである。
図21】有効塩素濃度毎の散水後の濃度減衰を示すグラフである。
図22】有効塩素濃度毎のメチロバクテリウムの死滅時間を示すグラフである。
図23】本実施形態の第1流動水(第1波)と第2流動水(第2波)との流動状態を示す概略図であり、図23(a)は概略平面図であり、図23(b)~図23(d)は、概略断面図である。
図24】好適な散水条件の一例を纏めた図表である。
図25】水道水と低濃度殺菌水との散水範囲の一例を示す概略図である。
図26】低濃度殺菌水の散水範囲の一例を示す概略図である。
図27】排水口手前の一時停止制御の一例を示す概略図である。
図28】排水口手前の一時停止制御を採用した黒カビ抑制工程におけるタイムチャートを示す概略図である。
図29】排水口手前の一時停止制御を採用したピンクスライム抑制工程におけるタイムチャートを示す概略図である。
図30】波が角質を運ぶ様子を示す模式図であり、図30(a)は概略平面図であり、図30(b)は、概略断面図である。
図31】水位の低下によって角質の再付着が起こりやすくなる様子を示す模式図である。
図32】第1着水部と第2着水部の合流の様子を示す模式図である。
図33】更に第3着水部の合流の様子を示す模式図である。
図34】角質の残存が黒カビ発生の主要因であることを説明するための実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符合を付して、重複する説明は省略する。なお、以下に示す実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0033】
<浴室の一例>
まず、本発明の一実施形態による浴室洗い場用洗浄装置100が設置される浴室の一例について説明する。図1は、そのような浴室の一例を表す模式的斜視図である。
【0034】
図1に示すように、浴室洗い場用洗浄装置100が設置される浴室500は、概ね直方体の4つの側面に相当する配置の第1壁541、第2壁542、第3壁543、第4壁544を備えている。第2壁542は、第1壁541と対向しており、第4壁544は、第3壁543と対向している。第1壁541と第2壁542とは、それぞれ、第3壁543及び第4壁544と接続されている。
【0035】
説明の便宜上、本明細書において、第2壁542(図1の奥側の壁)から第1壁541(図1の手前側の壁)へ向かう方向を「前方」とし、これと反対の方向を「後方」とする。また、前後方向および上下方向に対して垂直な方向を横方向とする。
【0036】
第4壁544の側に浴槽510が設けられており、当該浴槽510と第3壁543との間に洗い場床520(浴室洗い場床)が設けられている。すなわち、浴槽510と洗い場床520とは、共に前後方向に延びて、横方向に並んでいる。洗い場床520は、第3壁543に加えて、第1壁541の一部及び第2壁542の一部にも接している。
【0037】
洗い場床520には、排水口521が設けられている。排水口521は、洗い場床520の前後方向における中央付近であって、洗い場床520の横方向における浴槽510側の端に設けられている。洗い場床520には、排水口521へ向かう緩やかな(例えば1~5°程度の)排水勾配(傾斜)が設けられている。また、洗い場床520の表面は、親水コーティングされている。
【0038】
そして、洗い場床520が接している第2壁542の一部に(浴室500の後方側に)、カウンター530が設けられている。浴室500の第2壁542には、鏡、給水栓、シャワーホースなどが適宜設けられている。
【0039】
図2は、カウンター530の近傍を拡大した模式的斜視図である。図2に示すように、カウンター530は、天板531と下カバー532とを有しており、洗い場床520から上方に離間して配置されている。カウンター530は、上方から見たときに、横方向に長い略矩形状の形状を有する。浴室500の前後方向におけるカウンター530の幅は、80cmとなっており、浴室500の横方向におけるカウンター530の幅(長さ)は、洗い場床520の横方向における幅と同等となっている。
【0040】
<浴室洗い場用洗浄装置の水路>
次に、図3は、本発明の一実施形態に係る浴室洗い場用洗浄装置を例示する模式図であり、カウンター530を側方から見た様子を示している。図3に示すように、本実施形態に係る浴室洗い場用洗浄装置100(以下、説明の便宜上、「洗浄装置100」と略称する)は、カウンター530の下部に突出するノズル部10aと、カウンター530の内部に収容された制御部30(後述するように散水制御部と回転制御部とを兼ねる)と、を備えている。
【0041】
図2にも示すように、ノズル部10aは、カウンター530の下部に、洗い場床520から離間した位置に配置されている。本実施形態のノズル部10aは、カウンター530の横方向における中央付近に設置されている。すなわち、ノズル部10aは、洗い場床520の横方向における中央付近に設置されている。
【0042】
図3に戻って、浴室500の外部(例えば第2壁542の後方)に、給水管51と、給湯管52と、が設けられている。給水管51は、図示しない水道管と接続されている。これにより、給水管51から水道水が洗浄装置100に供給されるようになっている。
【0043】
カウンター530の内部(天板531と下カバー532との間)には、第1ストレーナ53aと、第1電磁弁54aと、第2電磁弁54bと、調圧弁55と、バキュームブレーカ57と、逆止弁56と、除菌水生成部20と、第2ストレーナ53bと、制御部30と、が設けられている。第1ストレーナ53aは、給水管51と接続されており、第1ストレーナ53aの下流において、水道水の流路は2つに分岐している。
【0044】
第1ストレーナ53aの下流側の一方の流路は、第1電磁弁54aを介して、水道水(水の一例である)を直接的にノズル部10aに供給するようになっている。第1電磁弁54aを開くことで、水道水がノズル部10aに供給されるようになっている。
【0045】
第1ストレーナ53aの下流側の他方の流路には、上流側から順に、第2電磁弁54b、調圧弁55、バキュームブレーカ57、逆止弁56、低濃度殺菌水生成部20、第2ストレーナ53bが接続されており、低濃度殺菌水をノズル部10aに供給するようになっている。
【0046】
第1電磁弁54a及び第2電磁弁54bは、それぞれ、水道水の流路を開く動作、及び、水道水の流路を閉じる動作、を行うようになっている。
【0047】
調圧弁55は、供給される水道水の圧力を制御するようになっている。これにより、後述する低濃度殺菌水生成部20(殺菌剤生成装置の一例)に供給される水道水の流量を所望に調整することができる。低濃度殺菌水生成部20に供給される水道水の流量を調整することで、ノズル部10aに供給される低濃度殺菌水の流量が調整される。(もっとも、調圧弁55の代わりに、あるいは、調圧弁55に加えて、第2電磁弁54bを用いて水道水の流量を調整してもよい。)
【0048】
低濃度殺菌水生成部20は、陽極と陰極とを有する電解室(電解槽)である。低濃度殺菌水生成部20は、陽極と陰極との間に電圧を印加して、それら電極の間を流れる水道水を電気分解することで、低濃度の次亜塩素酸を生成するようになっている。水道水は、塩化物イオンを含んでいるため、その塩化物イオンを電気分解することによって、次亜塩素酸が生成される。
【0049】
そして、本実施形態の低濃度殺菌水生成部20の下流部は、除去装置20bとなっていて、当該低濃度殺菌水生成部20の上流部である次亜塩素酸生成槽20a(殺菌剤生成装置の一例)において生成された次亜塩素酸を用いて水道水中のメチロバクテリウムを死滅させることによって、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成するようになっている。低濃度殺菌水生成部20の出口領域における洗浄水の有効塩素濃度は、0.4~1.0ppmである(水道水の有効塩素濃度は、通常、0.1~0.3ppmである)。これにより、低濃度殺菌水生成部20は、流路構成を複雑にすることなく、水道水から低濃度殺菌水(メチロバクテリウムを含まない洗浄水の一例)を生成するようになっている。
【0050】
低濃度殺菌水は、金属イオン水(例えば、銀イオン、銅イオンまたは亜鉛イオンなどの金属イオンを含む水)またはオゾンを含む水であってもよい。例えば、水道水が電気分解される際、陰極においては酸(H)が消費され、陰極の近傍ではpHが上昇する。すなわち、陰極の近傍では、アルカリ水が生成される。一方、陽極においてはアルカリ(OH)が消費され、陽極の近傍ではpHが下降する。すなわち、陽極の近傍では、酸性水が生成される。低濃度殺菌水生成部20における流量を変化させることで、低濃度殺菌水に含まれる成分の濃度を制御することができる。もっとも、低濃度殺菌水生成部20は、電解室に限定されるわけではない。
【0051】
なお、ストレーナ53a、53b、電磁弁54a、54b、調圧弁55、バキュームブレーカ57、逆止弁56、低濃度殺菌水生成部20及び制御部30の少なくとも一部が、カウンター530の外部や浴室500の外部に設けられることも可能である。例えば、図1に破線で示したように、制御部30を浴室500の外部に設けることも可能である。
【0052】
第1電磁弁54a、第2電磁弁54b、調圧弁55及び低濃度殺菌水生成部20は、散水制御部としての制御部30によって適宜に制御されるようになっている。これにより、ノズル部10aからの水道水(水の一例)の散水と、ノズル部10aからの低濃度殺菌水の散水と、を互いに独立に制御できるようになっている。
【0053】
具体的には、第1電磁弁54a及び第2電磁弁54bは、制御部30からの信号に基づいて、水道水の流路の開閉を行う。これにより、下流側に供給される水道水の流量が制御される。また、低濃度殺菌水生成部20は、制御部30からの信号に基づいて、電解室のON/OFF等を切り替える。このようにして制御部30は、低濃度殺菌水における各種構成成分の濃度、吐水される洗浄水(水道水または低濃度殺菌水)の瞬間流量(単位時間当たりの流量)、吐水される洗浄水の総水量、を制御することができる。
【0054】
<浴室洗い場用洗浄装置のノズル部の詳細>
本実施形態において、ノズル部10aの位置姿勢は、洗浄水(水道水または低濃度殺菌水)が散水される洗い場床520上の領域を変えるよう、変動することができる。具体的には、ノズル部10aは、電動モータ17によって回転駆動されるようになっている。電動モータ17は、例えばステッピングモータからなる。
【0055】
電動モータ17は、回転制御部としての制御部30によって制御されるようになっている。これにより、ノズル部10aは、制御部30からの信号に基づいて電動モータ17が制御されることにより、回転角度や回転速度が変化するようになっている。また、制御部30には、操作部35が接続されていて、浴室利用者が適宜の操作を行うことができるようになっている。
【0056】
図4(a)は、本実施形態のノズル部の構成の詳細を例示する正面図であり、図4(b)は、図4(a)のA-A線断面図である。本実施形態のノズル部10aは、図4(a)及び図4(b)に示すように、第1貯水部14aと、第2貯水部14bと、第1ノズル開口11aと、第2ノズル開口12aと、を有している。
【0057】
第1ノズル開口11aは、第1貯水部14aの内部と外部とを繋ぐ孔であり、第2ノズル開口12aは、第2貯水部14bの内部と外部とを繋ぐ孔である。第1電磁弁54aを通過した水道水は、第1貯水部14a内に供給され、第1ノズル開口11aから吐水されるようになっている。低濃度殺菌水生成部20によって生成された低濃度殺菌水は、第2貯水部14b内に供給され、第2ノズル開口12aから吐水されるようになっている。
【0058】
もっとも、貯水部及びノズル開口は、水道水の散水と低濃度殺菌水の散水とで共用されるようになっていてもよい。そのような構成が採用される場合、ノズル部10aの構成は簡単になるが、水道水の散水と低濃度殺菌水の散水との両方を同時に実施することはできない。
【0059】
図5(a)は、第2ノズル開口12aから洗浄水として低濃度殺菌水が吐水される様子を表す斜視図であり、図5(b)は、第1ノズル開口11aから洗浄水として水道水が吐水される様子を表す斜視図である。
【0060】
図5(c)、図5(d)は、それぞれ、図5(a)、図5(b)に示した状態を、図中のX方向に沿って見た側面図である。このように、洗浄水は、X方向に対して垂直なZ方向に広がる扇状又は三角形状となって、第1ノズル開口11a及び第2ノズル開口12aのそれぞれから吐水される。
【0061】
図5(e)、図5(f)は、それぞれ、図5(a)、図5(b)に示した状態をZ方向に沿って見た平面図である。Z方向に沿って見たときの吐水された洗浄水の広がりは、X方向に沿って見たときの吐水された洗浄水の広がりよりも狭い。例えば、第1ノズル開口11a及び第2ノズル開口12aは、それぞれ、Z方向に沿って見たときに洗浄水をライン状に吐水する。第1ノズル開口11a及び第2ノズル開口12aの形状によって、吐水される洗浄水の広がり方を調整できる。
【0062】
また、ノズル部10aは、Z方向に延びる軸10xを有する。この例では、ノズル部10aは、軸10xが鉛直方向(上下方向)と略平行になるように配置されている。ノズル部10aは、電動モータ17の駆動力を受けて、軸10xを中心として回転することができる。ノズル部10aは、軸10xと交差する方向に洗浄水を吐水するため、ノズル部10aの回転によって洗浄水を吐水する領域を変えることができる。
【0063】
なお、本明細書において「吐水方向」とは、軸10xに沿って見たときに、洗浄水が吐水される方向をいうものとする。すなわち、この例では、「吐水方向」は、上方から見たときに洗浄水が吐水される方向である。上方から見たとき、洗浄水が複数の方向に広がって吐水される場合には、複数の方向の中央を「吐水方向」とすることができる。あるいは、上から見たときに、ノズル開口11a、12aを中心に扇状または三角形状に広がって洗浄水が吐水される場合、その扇状または三角形状の範囲を概略二等分する方向を「吐水方向」とすることができる。
【0064】
<本実施形態の作用>
次に、以上のような構成からなる本実施形態の洗浄装置100の動作例(作用)について説明する。図6は、本実施形態の洗浄装置100の制御フローを示す概略図である。
【0065】
本実施形態の洗浄装置100の制御部30は、散水制御部として、ノズル部10aから洗い場床520上に水道水(水の一例)を散水させることによって、洗い場床520上の角質を水道水と一緒に排水口521に流す黒カビ抑制工程S1を実施するようになっている。ここで、本実施形態の制御部30は、回転制御部として、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、電動モータ17を制御して、ノズル部10aが回転している間に連続的に当該ノズル部10aから洗い場床520上に水道水を散水させるようになっている。
【0066】
そして、本実施形態の制御部30は、散水制御部として、黒カビ抑制工程S1の後に、ノズル部10aから浴室洗い場床520上に、メチロバクテリウムを含まない洗浄水の一例である低濃度殺菌水を散水させることによって、洗い場床520上の水道水を排水口521に流すことで、洗い場床520上の水道水を低濃度殺菌水に置換するピンクスライム抑制工程S3を実施するようになっている(本実施形態における低濃度殺菌水は、メチロバクテリウムのゼロを目指した洗浄水の一例に過ぎないが、殺菌作用があれば図19を参照して後述する副次的な効果を得ることができる)。ここで、本実施形態の制御部30は、回転制御部として、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際においても、電動モータ17を制御して、ノズル部10aが回転している間に連続的に当該ノズル部10aから洗い場床520上に低濃度殺菌水を散水させるようになっている。
【0067】
ここで、図7は、本実施形態のノズル部10aの回転動作の一例を示す概略図である。図7の各矢印において、破線で表した方向にノズル部10が回転するときは、ノズル部10は洗浄水(水道水または低濃度殺菌水)を吐水しないことを表す。逆に、実線で表した方向にノズル部10が回転するときは、ノズル部10が洗浄水(水道水または低濃度殺菌水)を吐水することを表す。
【0068】
本実施形態では、黒カビ抑制工程S1の実施を開始する際、ノズル部10aがカウンター530の下部の第2壁542に向けて略垂直に水道水を着水させることができる位置(初期位置P1)から、ノズル部10aの回転が開始されるようになっている。
【0069】
後述するように、本実施形態では、ピンクスライム抑制行程S3の終了後、ノズル部10aはそのような初期位置P1まで移動される。もっとも、何らかの事情で、更にその後にノズル部10aが回転してしまうことがあり得るため、必要に応じて、まず、ノズル部10aが、そのような初期位置P1まで移動される(原点出し工程A01)。当該原点出し工程A01の間は、水道水の吐水は開始されない。
【0070】
次に、ノズル部10aは、そのような初期位置P1(排水口521に対して一方の側の位置において水道水を着水させることができる第1位置)から、ノズル部10aが排水口521に向けて水道水を着水させることができる位置(第2位置P2)に至るまで、時計回り方向の順回転動作を実施する(第1順回転動作A02)。この間、第1電磁弁54aが開状態(ON)とされて水道水の吐水が実施され、黒カビ抑制工程S1の前半が実施される。
【0071】
この順回転動作の途中、図8に示すように、ノズル部10aは、横方向に見て第2位置P2と対称な第4位置P4を通過するが、図9に示すように、本実施形態では、初期位置P1から第4位置P4までの平均回転速度を、第4位置P4から第2位置P2までの平均回転速度よりも高くしている。
【0072】
図8は、本実施形態の制御フローによって黒カビ抑制工程S1が実施される洗い場床520の領域を模式的平面図で示したものである。図9は、当該黒カビ抑制工程S1におけるタイムチャートを示す概略図である。
【0073】
図9に示すように、本実施形態の制御部30は、回転制御部として、電気モータ17が回転状態と停止状態とを交互に繰り返すような制御を実施する(これにより、図30を参照して後述されるような流動水の波(脈動)が形成される)。そして、制御部30は、停止状態の時間の長さを変化させることで、ノズル部10aの平均回転速度を変化させるようになっている。図9に示すように、第4位置P4から第2位置P2までの間、第1位置P1から第4位置P4までの間と比較して停止状態の時間の長さを増大させることで、ノズル部10aの平均回転速度を小さくしている。これによれば、ノズル部10aの平均回転速度を、極めて容易かつ高精度に変化させることができる。
【0074】
図9(及び後述の図11)において、「ノズル部の回転」として示しているグラフにおける「1」は、ノズル部10aが時計回り方向に回転していること(順回転動作)を表し、「0」は、ノズル部10aが回転を停止していることを表し、「-1」は、ノズル部10aが反時計回り方向に回転していること(逆回転動作)を表している。
【0075】
その後、ノズル部10aは、第2位置P2(排水口521に向けて水道水を着水させることができる位置)から初期位置P1まで、時計回り方向の順回転動作を継続する(第2順回転動作A03)。但し、この間は、第1電磁弁54aが閉状態(ON)とされて水道水の吐水は実施されず、ノズル部10aの回転速度も高速とされる。
【0076】
そして、ノズル部10aが初期位置P1に至ると、今度は反時計回り方向の逆回転動作が開始される(第1逆回転動作A04)。第2位置P2に戻るまでの当該逆回転動作の間、第1電磁弁54aが開状態(ON)とされて水道水の吐水が実施され、黒カビ抑制工程S1の後半が実施される。
【0077】
その後、ノズル部10aは、第2位置P2(排水口521に向けて水道水を着水させることができる位置)から初期位置P1まで、反時計回り方向の逆回転動作を継続する(第2逆回転動作A05)。この間は、第1電磁弁54aが閉状態(ON)とされて水道水の吐水は実施されず、ノズル部10aの回転速度も高速とされる(止水工程S2)。
【0078】
以上のような黒カビ抑制工程S1によれば、ノズル部10aが回転している間に連続的に当該ノズル部10aから洗い場床520上に水道水が散水されるため、水道水はノズル部10aの回転に伴って付勢された水流となって、洗い場床520上の角質を効果的に洗い流すことができる。
【0079】
更に、前記黒カビ抑制工程S1によれば、水道水の吐水が、第1順回転動作A02の間と第1逆回転動作A04の間とに実施され、第2順回転動作A03の間には実施されない。すなわち、水道水の吐水は、排水勾配の上流側の領域から下流側の領域に連続的に着水するようになっている。このことにより、更に効果的に洗い場床520上の角質を水道水と一緒に排水口521に流すことができる。
【0080】
次に、ノズル部10aは、初期位置P1(排水口521に対して一方の側の位置において低濃度殺菌水を着水させることができる第1位置)から、ノズル部10aが排水口521に向けて低濃度殺菌水を着水させることができる位置(第2位置P2)に至るまで、時計回り方向の順回転動作を実施する(置換第1順回転動作A06)。この間、第1電磁弁54aは閉状態(OFF)に戻され、第2電磁弁54bが開状態(ON)とされて低濃度殺菌水の吐水が実施され、ピンクスライム抑制工程S3の前半が実施される。
【0081】
この順回転動作の途中、図10に示すように、ノズル部10aは、横方向に見て第2位置P2と対称な第4位置P4を通過するが、図11に示すように、本実施形態のピンクスライム抑制工程S3(の前半)では、黒カビ抑制工程S1(の前半)と同様に、初期位置P1から第4位置P4までの平均回転速度を、第4位置P4から第2位置P2までの平均回転速度よりも高くしている。
【0082】
図10は、本実施形態の制御フローによってピンクスライム抑制工程S3が実施される洗い場床520の領域を模式的平面図で示したものであり、図11は、当該ピンクスライム抑制工程S3におけるタイムチャートを示す概略図である。
【0083】
図11に示すように、本実施形態の制御部30は、回転制御部として、電気モータ17が回転状態と停止状態とを交互に繰り返すような制御を実施する。そして、制御部30は、停止状態の時間の長さを変化させることで、ノズル部10aの平均回転速度を変化させるようになっている。図11に示すように、第4位置P4から第2位置P2までの間、第1位置P1から第4位置P4までの間と比較して停止状態の時間の長さを増大させることで、ノズル部10aの平均回転速度を小さくしている。これによれば、ノズル部10aの平均回転速度を、極めて容易かつ高精度に変化させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、図9に示す黒カビ抑制工程S1の実施の際の平均回転速度と、図11に示すピンクスライム抑制工程S3の実施の際の平均回転速度とが、異なっている。すなわち、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3との各々について、最適なノズル部10aの平均回転速度が採用されている。
【0085】
特に、本実施形態では、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際の平均回転速度の方が、黒カビ抑制工程S1の実施の際の平均回転速度よりも、小さい。従って、黒カビ抑制工程S1よりもピンクスライム抑制工程S3の方がゆっくりと実施される(図8及び図10に洗い場床520の領域毎のノズル部10aの回転時間を示している)。これに伴って、例えば、ピンクスライム抑制工程S3における低濃度殺菌水の散水領域(吐水距離)を、黒カビ抑制工程S1における水道水の散水領域(吐水距離)よりも、広く(長く)設定することが容易となる。この場合、浴室洗い場床520上に散水された水道水を、より確実に低濃度殺菌水で置換することができる。このような例については、図25及び図26を参照して後述される。
【0086】
その後、ノズル部10aは、第2位置P2(排水口521に向けて低濃度殺菌水を着水させることができる位置)から初期位置P1まで、時計回り方向の順回転動作を継続する(置換第2順回転動作A07)。但し、この間は、第2電磁弁54bが閉状態(ON)とされて低濃度殺菌水の吐水は実施されず、ノズル部10aの回転速度も高速とされる。
【0087】
そして、ノズル部10aが初期位置P1に至ると、今度は反時計回り方向の逆回転動作が開始される(置換第1逆回転動作A08)。第2位置P2に戻るまでの当該逆回転動作の間、第2電磁弁54bが開状態(ON)とされて低濃度殺菌水の吐水が実施され、ピンクスライム抑制工程S3の後半が実施される。
【0088】
この後、本実施形態のノズル部10aは、第2位置P2(排水口521に向けて低濃度殺菌水を着水させることができる位置)において一時停止して、排水口521の水道水を集中的に低濃度殺菌水で置換してもよい。一時停止の時間は、例えば50秒間である。
【0089】
その後、ノズル部10aは、第2位置P2(排水口521に向けて低濃度殺菌水を着水させることができる位置)から初期位置P1まで、反時計回り方向の逆回転動作を継続する(第2逆回転動作A09)。この間は、第2電磁弁54bが閉状態(ON)とされて水道水の吐水は実施されず、ノズル部10aの回転速度も高速とされる(止水工程S4)。
【0090】
以上のような制御フローによるピンクスライム抑制工程S3によれば、ノズル部10aが回転している間に連続的に当該ノズル部10aから洗い場床520上に低濃度殺菌水が散水されるため、低濃度殺菌水はノズル部10aの回転に伴って付勢された水流となって、洗い場床520上の水道水を効果的に洗い流すことができる。
【0091】
更に、前記制御フローによるピンクスライム抑制工程S3によれば、低濃度殺菌水の吐水が、第1順回転動作A06の間と第1逆回転動作A08の間とに実施され、第2順回転動作A07の間には実施されない。すなわち、低濃度殺菌水の吐水は、排水勾配の上流側の領域から下流側の領域に連続的に着水するようになっている。このことにより、更に効果的に洗い場床520上の水道水を排水口521に流すことで、更に効果的に洗い場床520上の水道水を低濃度殺菌水に置換することができる。
【0092】
図12は、黒カビ抑制工程S1のみを実施した洗い場床520の領域と、黒カビ抑制工程S1の後にピンクスライム抑制工程S3を実施した洗い場床520の領域と、を1ヶ月間入浴者の入浴後に繰り返し実施した実際の実験結果である。黒カビ抑制工程S1のみを実施した洗い場床520の領域では、角質の残存量はほぼゼロで、黒カビの発生は認められないものの、ピンクスライムの発生が認められた。一方、黒カビ抑制工程S1の後にピンクスライム抑制工程S3を実施した洗い場床520の領域では、角質の残存量はほぼゼロで、黒カビの発生は認められず、更にピンクスライムの発生も認められなかった。
【0093】
図13は、本実施形態の黒カビ抑制工程S1およびピンクスライム抑制工程S3を実行する際のそれぞれの工程の散水量を示す表である。黒カビ抑制工程S1は、複数のモードを有しており、予め設定された所定散水量を散水する第1モードと、第1モードで散水する散水量よりも少ない第2モードと、第1モードで散水する散水量よりも多い第3モードとを有する。これら複数のモードは、使用者が洗浄を開始する際に操作する操作部(図示しない)によって選択および設定することができる。この操作部(図示しない)で操作された信号を制御部30が受信し、制御部30は、モータ17や第1電磁弁54aを制御する。
【0094】
制御部30は、第1モードと第2モードと第3モードの散水量を変更するために、第1電磁弁54aの開状態を維持する時間を変更することで散水量を変更するように制御する。例えば第1モードの第1電磁弁54aの開状態維持時間よりも、第2モードの第1電磁弁54aの開状態維持時間を短くし、第1モードの第1電磁弁54aの開状態維持時間よりも、第3モードの第1電磁弁54aの開状態維持時間を長くすることで、黒カビ抑制工程S1で散水される合計の散水量を変更する。
【0095】
また、制御部30は、第1モードと第2モードと第3モードの散水量を変更するために、ノズル部10aの回転回数を変更するように制御する。例えば、制御部30は、第1モードでは、ノズル部10aの回転回数を2回転するように制御し、第2モードでは、ノズル部10aの回転数を1回転するように制御し、第3モードでは、ノズル部10aの回転数を3回転するように制御することで、黒カビ抑制工程S1で散水される合計の散水量を変更する。なお、回転数を変更して散水量を変更する場合は、第1モードと第2モードと第3モードのノズル部10aの回転速度は同じ速度で回転させるものとする。
【0096】
制御部30は、黒カビ抑制工程S1では、各モードで散水量を変更するように構成するが、黒カビ抑制工程S1で第1モードまたは第2モードまたは第3モードの何れかを選択・実行した場合であっても、ピンクスライム抑制工程S3で散水する散水量の合計は変更せずに一定の散水量で散水を行うように制御する。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、水道水(水の一例)を散水させることによって洗い場床520上の角質を除去する黒カビ抑制工程S1の後に、メチロバクテリウムの量が低減された低濃度殺菌水を散水させることによって洗い場床520上の水道水を低濃度殺菌水に置換するピンクスライム抑制工程S3を実施することで、洗い場床520上に残存するメチロバクテリウムの量を顕著に低減することができる。これにより、洗い場床520におけるヌメリの発生を効果的に抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、図9に示すように、第4位置P4から第2位置P2まで回転する間、ノズル部10aの平均回転速度が小さくされて、水道水の単位面積あたりの散水量が増大されている。これは、第4位置P4から第2位置P2まで回転する間に水道水が散水される洗い場床520の領域(ノズル部10aから相対的に遠い領域)が、第1位置P1から第4位置P4まで回転する間に水道水が散水される洗い場床520の領域(ノズル部10aに相対的に近い領域)と比較して、人体から発生した垢等の有機物が残存する傾向が高いことに対応したものである。このように、有機物、特には角質、の残存傾向が高い(ないし残存量が多い)領域に対して、単位面積あたりの散水量を増やしたり、単位時間あたりの散水量を増やしたり、あるいは総水量を増やしたりすることで、洗い場床520における黒カビの発生をより効果的に抑制することができる。
【0099】
そして、本実施形態によれば、図11に示すように、第4位置P4から第2位置P2まで回転する間、ノズル部10aの平均回転速度が小さくされて、低濃度殺菌水の単位面積あたりの散水量が増大されている。これは、第4位置P4から第2位置P2まで回転する間に散水される水道水の単位面積あたりの散水量が、第1位置P1から第4位置P4まで回転する間に散水される水道水の単位面積あたりの散水量よりも多いことに対応したものである。このように、水道水の散水量が多い領域に対して、単位面積あたりの低濃度殺菌水の散水量を増やしたり、単位時間あたりの低濃度殺菌水の散水量を増やしたり、あるいは低濃度殺菌水の総水量を増やしたりすることで、洗い場床520におけるヌメリの発生をより効果的に抑制することができる。
【0100】
また、本実施形態の制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際、及び/または、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際、ノズル部10aの回転速度を制御することによって、ノズル部10aから洗い場床520上に水道水ないし低濃度殺菌水を散水させる時間を変更できるようになっている。これにより、黒カビ抑制工程S1及び/またはピンクスライム抑制工程S3を、洗い場床520の各領域毎にきめ細かい制御条件で実施することができる。また、本実施形態の洗浄装置100がこのような散水時間変更機能を有していることは、水道水の給水圧が低い(単位時間あたりの給水量が少ない)場合等において、所望の散水量を実現する上で有効である。
【0101】
<本実施形態の効果>
以上の通り、本実施形態の洗浄装置100は、浴室500の洗い場を構成すると共に排水口521を有する洗い場床520を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、洗い場床520上に洗浄水を散水する洗浄手段であるノズル部10aと、ノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1と、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水がメチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水に置換されるように洗浄水を散水するピンクスライム抑制工程S3と、を実施する。
【0102】
本実施形態の洗浄装置100によれば、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質を除去する黒カビ抑制工程S1と、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水を除去するピンクスライム抑制工程S3と、を実施することによって、洗い場床520上の角質及びメチロバクテリウムを顕著に低減することができ、ひいては洗い場床520におけるカビの発生を顕著に抑制することができる。
【0103】
特に、ピンクスライム抑制工程S3において、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水が、メチロバクテリウムが取り除かれた低濃度殺菌水に置換されることにより、高濃度の即効性のある殺菌水を用いなくても、洗い場床520上のメチロバクテリウムを顕著に低減することができる。そして、浴室500で菌を殺菌するのではなく、栄養源を全て死滅させたり取り除くという訳でもなく、微量のメチロバクテリウムを死滅させれば良いだけなので、ピンクスライム抑制工程S3において散水される低濃度殺菌水は従来考えられていたような高濃度の即効性のある殺菌水である必要はなく、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0104】
本実施形態の洗浄装置100は、カビやピンクスライムの発生後に殺菌するという事後対応技術ではなく、それらの発生源を未然に叩くという事前対応技術であると言える。浴室500で発生するカビの種類は、黒カビとピンクスライムであるところ、本実施形態の洗浄装置100によれば、これらを抑制することによって、99%以上の顧客満足度が図れる。
【0105】
本件発明者は、浴室500における黒カビとピンクスライムの発生原因となる要因物質を突きとめた(発見)。すなわち、本件発明者は、黒カビの発生要因が角質であること(図34参照)、及び、ピンクスライムの発生要因が水道水中の微量なメチロバクテリウムであってこれが洗い場床上で増殖することによってピンクスライムが発生すること、を見出した。そして、これらの特定ができたことによって、カビやピンクスライムの発生後にそれらを死滅させるのはなく、それらの要因物質を未然に取り除くという技術の開発が可能になった。そして、殺菌水の高濃度化や長時間の殺菌が不要な洗浄技術として、本実施形態を確立するに至ったものである。
【0106】
本実施形態では、黒カビ抑制工程S1では、角質を洗い場床520から除去するために第1洗浄水としての水道水が散水され、ピンクスライム抑制工程S3では、メチロバクテリウムを洗い場床520から除去するために第2洗浄水としての低濃度殺菌水が散水され、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3とは、時間的に互いに分離された態様で、それぞれ実施される。
【0107】
これにより、角質を床面から剥ぎ取るように洗浄するための黒カビ抑制工程S1での第1洗浄水の散水と、ピンクスライム抑制工程S3での第1洗浄水に置き換わる第2洗浄水の散水と、を独立に実施することができる。例えば、前者の水勢、水量が、ある程度必要であるのに対し、後者の水勢、水量は、さほど必要ない。また、後者については、メチロバクテリウムを取り除いたり死滅させたりするフィルターや殺菌装置を用いた処理が必要であるところ、要求の異なる2つの洗浄水の散水に際して、独立に条件を設定することができる。
【0108】
また、制御部30は、黒カビ抑制工程S1での角質の除去する工程で、角質の固着について着目すると、洗い場床520への角質の固着は、使用者数の違いや季節によって異なることが判明した。そのため、洗い場床520への角質の固着の度合が変わった場合においても角質を排水口521に排出するために黒カビ抑制工程S1での散水量の合計が異なる第1モード、第2モード、第3モードを選択実行できるよう構成した。これにより、洗い場床520への角質の固着の度合が変わった場合であっても角質を排水口に排出することができる。
【0109】
また、制御部30は、第1モードと第2モードと第3モードでの散水の合計散水量を変更する際は、第1電磁弁54aやモータ17の動作を変えて制御する。制御部30は、第1電磁弁54aの開状態維持時間を変更することで散水量を変更している。これにより、供給される水の給水圧や第1電磁弁54aの開度を調整する必要がなく、簡単な制御で散水量を変更することができる。また、同様に散水量を変更する際に、ノズル部10aの回転数を変更することで簡単な制御で散水量を変更することができる。
【0110】
また、本実施形態では、洗浄手段として、第1洗浄水としての水道水及び第2洗浄水としての低濃度殺菌水を吐水するためのノズル部10aに加えて、ノズル部10aよりも上流の流路内に、水道水からメチロバクテリウムを取り除く除去装置としての低濃度殺菌水生成部20を有している。第2洗浄水は、メチロバクテリウムを取り除くことによって、洗い場床520に散水される前段階でメチロバクテリウムが水中に存在しない状態とされた水である。
【0111】
要するに、洗い場床520に残存する角質は、水で取り除けるのである。水であれば、角質の剥ぎ取りに必要な水勢、水量を容易に確保することができる。これにより、安価に、確実に、角質除去を実現することができる。一方、メチロバクテリウムの除去に対して、広い床面に散水されたメチロバクテリウムを確実に取り除くためには、置換水である第2洗浄水の量が多く必要になる。除去不良が発生すると、ピンクスライム発生の原因になってしまうからである。そこで、ノズル部10aよりも上流の流路内に除去装置を設けて、当該除去装置によってメチロバクテリウムを散水前に除去することにより、洗い場床520に残る残水をメチロバクテリウムが存在しない水で置換することができるのである。これによって、確実なメチロバクテリウムの除去が可能となり、ピンクスライムの発生を少ない水量、短い時間で防止することができる。
【0112】
以上の通り、本実施形態の洗浄装置100は、浴室洗い場床520における黒カビないしピンクスライムの発生を、安価に、確実に、短時間に防止することができる実用上極めて優れた浴室の洗浄技術を確立したものである。
【0113】
また、本実施形態では、黒カビ抑制工程S1は、常に先に実施され、ピンクスライム抑制工程S3は、常に後に実施される。
【0114】
黒カビ抑制工程S1においては、安価な水道水を第1洗浄水として用いて、メチロバクテリウムを含んだ水を散水することになる。このため、これを後工程で行うと、ピンクスライムが発生する原因を再度作り出すことになってしまう。従って、黒カビ抑制工程S1を先に行い、その後に第2洗浄水を散水することで、黒カビとピンクスライムの発生を確実に抑制することができるのである。
【0115】
また、本実施形態では、制御部300は、洗浄手段であるノズル部10aを制御することによって、ピンクスライム抑制工程S3の後に、水の散水が禁止される放置工程としての止水工程を実施している。
【0116】
これにより、メチロバクテリウムを含む洗浄水が誤って散水されることがないため、ピンクスライムの増殖を効果的に抑制できる。
【0117】
また、本実施形態では、第2洗浄水は、次亜塩素酸を含む水、あるいは、次亜塩素酸を含む水であって殺菌濃度が低下した後の水である。また、低濃度殺菌水生成部20は、次亜塩素酸生成槽20aを有しており、除去装置20bが、当該次亜塩素酸生成槽20aに連続して設けられている。そして、水道水が、当該除去装置20bを通過することによって、次亜塩素酸生成槽20aによって生成される次亜塩素酸の殺菌作用によってメチロバクテリウムを取り除かれて第2洗浄水となる。次亜塩素酸生成槽20aは、水道水を電気分解することによって次亜塩素酸を生成するようになっており、次亜塩素酸生成槽20aの通電は、少なくとも第2洗浄水がノズル部10aから吐水されている間は常時継続されるようになっている。
【0118】
浴室500の洗浄の目的で、次亜塩素酸を含む水の利用が検討されたことはあった。しかし、従来の技術常識においては、散水後にカビを殺菌する作用を十分なものとするために、次亜塩素酸の濃度が高い必要があった。具体的には、水道水中の塩素から次亜塩素酸を生成した程度の濃度では、殺菌作用が低く、散水中(吐水中)の濃度低下によって更に殺菌作用(殺菌力)が減衰するため、高濃度化のための特別な処理が必要であったし、殺菌処理も長時間が必要であった。
【0119】
しかるところ、本実施形態の第2洗浄水としては、低濃度の次亜塩素酸でも採用ができる。また、本実施形態の第2洗浄水は、メチロバクテリウムを除去すればよいのであって、散水後に殺菌作用を失って単なる水になっていてもよい。
【0120】
更に、本実施形態の除去装置は、次亜塩素酸生成槽20内に設けられているので、第2洗浄水の生成を、極めて簡単な構成で実現することができる。
【0121】
また、この場合、第2洗浄水のノズル部10aからの吐水が終了するまで次亜塩素酸生成槽20の通電が継続されるため、単純な制御でありながら、確実に真水の散水を防止することができる。これにより、誤った真水散水によるピンクスライムの発生を、簡単かつ確実に防止することができる。
【0122】
なお、本実施形態の浴室500は、当該浴室500の洗い場を構成すると共に排水口521を有する洗い場床520と、前記洗浄装置100と、当該浴室500の一側に設置されたカウンター530と、当該浴室500の周縁に設けられた浴室壁541~544と、を備えており、洗浄手段としてのノズル部10aは、カウンター530側に配置されておいるが、洗浄手段としてのノズル部10aは、洗い場床520を排水口521に向かって流れる排水流れにおいて排水口521よりも上流側の浴室壁541~544に、第1洗浄水及び/または第2洗浄水を着水させるようになっていてもよい。
【0123】
角質やメチロバクテリウムが最も残留しやすい床の部位は、人が体を洗浄するカウンター530のある位置である。この位置に洗浄装置であるノズル部10aを配置することで、例えば次亜塩素酸を用いてメチロバクテリウムを除去した水を第2洗浄水として採用する場合、吐水(散水)中の濃度減衰の程度が低く済むため、次亜塩素酸の濃度は更に低くても足りる。
【0124】
また、この場合、排水口521に向かって流れる排水流れによって、排水口521の近傍に高い水勢を提供することができ、当該水勢が排水口521に向けて角質等を押し込むように作用することができる。一般に、排水口521の近傍は、水の拡散で水位が低下することで角質が再付着するなど、角質除去が難しい場合があるが、この態様によれば、より確実に角質を除去できる。特に、洗浄手段としてのノズル部10aが、洗い場床520を排水口521に向かって流れる排水流れにおいて排水口521よりも上流側の浴室壁541~433に、第1洗浄水及び/または第2洗浄水を着水させるようになっている場合、より確実に角質を除去できる。
【0125】
また、洗い場床520の表面は、親水コーティングされていることが好ましい。この場合、角質やメチロバクテリウムが洗い場床520に付着しても、洗い場床520と水との親和性が高いことが、角質やバクテリアの除去に際して極めて有効に作用する。すなわち、少ない洗浄水の水量、低い洗浄水の水勢でも、迅速かつ十分に黒カビ抑制(角質除去)ないしピンクスライム抑制(メチロバクテリウムを含まない水への置換)を果たすことができる。
【0126】
また、洗い場床520には、第1洗浄水及び/または第2洗浄水が着水する方向に対して非平行である方向に延びる溝522が形成されていることが好ましい(図30(b)参照)。この場合、散水された洗浄水が洗い場床520に衝突した際や洗い場床520上を流れる際に、洗浄水が溝522に衝突して上下方向の波(水の脈動)が形成される。このように水の流れが乱れることにより、洗い場床520から角質やメチロバクテリウムが剥がれ易くなる。また、洗浄水が洗い場床520上に広がって流れる際にも、当該波によって角質やメチロバクテリウムの床への再付着が抑制される。これにより、散水される洗浄水の水勢や水量が小さくても、角質やメチロバクテリウムを床から確実に除去できる。
【0127】
更に、制御部300は、洗浄手段としてのノズル部10aを制御することによって、黒カビ抑制工程S1の後、ピンクスライム抑制工程S3の前に、第1洗浄水が排水口521に排水されるのを待つ散水待機工程を実施するようになっていることが好ましい。この場合、第1洗浄水を第2洗浄水によって置換するために必要な第2洗浄水の量が、少量で済む。
【0128】
また、本実施形態の洗浄装置100を用いて浴室500の洗い場床520を洗浄する場合、使用者の使用態様に合わせた規制を採用することが更に望ましい。具体的には、使用者の意図に反して洗浄装置100から散水されてしまうと、散水が人に衝突したり、当該衝突によって角質の除去性や置換性に影響が残るためである。また、浴室外への飛散等を防止することも重要である。
【0129】
例えば、制御部300は、予め設定された条件の下で、黒カビ抑制工程S1及び/またはピンクスライム抑制工程S3の実施を禁止する、あるいは、緊急停止させるようになっていることが好ましい。具体的には、例えば、制御部300は、浴室500に利用者がいることを示す信号に基づいて、黒カビ抑制工程S1及び/またはピンクスライム抑制工程S3の実施を禁止する、あるいは、緊急停止させるようになっていることが好ましい。あるいは、例えば、制御部300は、浴室500のドアが開いていることを示す信号に基づいて、黒カビ抑制工程S1及び/またはピンクスライム抑制工程S3の実施を禁止する、あるいは、緊急停止させるようになっていることが好ましい。
【0130】
<散水制御のバリエーション>
本実施形態の洗浄装置100は、浴室500の洗い場を構成すると共に排水口521を有する洗い場床520を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、洗い場床520上に洗浄水を散水する洗浄手段であるノズル部10aと、ノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1と、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水がメチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水に置換されるように洗浄水を散水するピンクスライム抑制工程S3と、を実施するようになっている。そして、制御部300は、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3とにおいて、洗い場床520に対する散水を変更するように構成されている。
【0131】
黒カビ抑制工程S1では、洗い場床520に残存する角質を剥ぎとって排水口521に残すことなく排出することが重要である。この角質の除去を、散水だけで行う場合は、角質をふやかして剥ぎ取ることが重要であり、水量、水勢を高くすることが望ましい。
【0132】
一方、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を作り、これを散水して残水を置換させるピンクスライム抑制工程S3では、メチロバクテリウムの除去が不十分であれば、散水されたメチロバクテリウムによってピンクスライムが発生してしまう。よって、高い除去性能が必要である。また、ピンクスライム抑制工程S3で散水される洗浄水が殺菌性を持たない場合、もしくは殺菌成分が低濃度である場合、発生してしまったピンクスライムの取り除きができないため、散水前のメチロバクテリウムの除去性能に高い精度が求められる。
このように、本実施形態の2つの工程において、異なる要求が存在し、例えば、黒カビ抑制工程S1における散水の水量や水勢でピンクスライム抑制工程S3を実行すると、散水前にメチロバクテリウムを高精度に除去するには、除去手段の性能がとても高いものが要求されることになる。
本実施形態においては、ピンクスライム抑制工程S3では、角質をふやかす、剥がすという要求がない、という本件発明者の特有の知見に基づいて、散水の仕方を最適に変えるという簡単な構成で両工程の要求を高いレベルで満足し、メチロバクテリウムの除去性能を高めている。
【0133】
なお、洗浄手段としてのノズル部10aは、黒カビ抑制工程S1に使用される洗浄水として水を用いるように構成されており、制御部30は、黒カビ抑制工程S1を実行した後に、ピンクスライム抑制工程S3を実施するようになっている。
ここで、制御部30は、ノズル部10aを制御することによって、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3との両方において、洗い場床520及び洗い場床520の周囲に立ち上がる浴室壁541~544の下部に散水するようになっていることが更に好ましく、黒カビ抑制工程S1における水道水による浴室壁541~544の下部に対する散水位置より、黒カビ抑制工程S1の後に実施されるピンクスライム抑制工程S3におけるメチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水による浴室壁541~544の下部に対する散水位置の方が高いことが更に好ましい。
【0134】
本件発明者は、浴室500における黒カビの発生の殆どの要因が、角質であることを見出し、角質除去であれば水で良い、ということも合わせて見出した。従って、最も安価で安全な水、例えば水道水、によって黒カビ抑制工程S1を実施することが好ましい。
一方、水によって黒カビ抑制工程S1を行う場合には、水中のメチロバクテリウムを増やすように散水することにもなる。従って、黒カビ抑制工程S1は、ピンクスライム抑制工程S3の前に必ず実行することが好ましい。
以上のような単純な制御態様の採用により、水による黒カビ抑制の課題を解決できる。
更に、角質は、使用者が体を洗う際に発生するため、シャワー等の影響で浴室壁541~544の壁際に溜まりやすい。そのために、黒カビ抑制工程S1の散水を壁下部にも及ぶようにすることで、壁際の角質をも確実に除去できる。
一方、壁際にメチロバクテリウムが散水されれば、壁際にピンクスライムが発生する可能性も高まる。このため、ピンクスライム抑制工程S3の散水領域を黒カビ抑制工程S1の散水領域の全てを網羅するように後者より広い範囲とする、すなわち、ピンクスライム抑制工程S3において浴室壁541~544のより高い位置まで散水することが好ましい。これにより、簡単な制御での、かつ安価な水での洗浄を実現でき、実用上極めて有用な効果を提供することができる。
【0135】
また、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の単位時間あたりの散水水量に比して、ピンクスライム抑制工程S3の単位時間あたりの散水水量が少なくなるように、洗浄手段であるノズル部10aを制御するようになっていることが好ましい。
【0136】
ピンクスライム抑制工程S3では、例えば水中のメチロバクテリウムを散水前に取り除いた水が散水されるが、床面に貼り付いた角質をふやかしたり、剥がしたりする性能は必要ない。すなわち、ピンクスライム抑制工程S3では、単位時間あたりの散水水量が少なくても足りる。そして、散水前にメチロバクテリウムを除去することは、散水量が少なければ、容易である。
一方で、ピンクスライム抑制工程S3における散水量(流量)を増やせば、置換性能は高まるし、置換にかかる時間も短縮できる。しかしながら、メチロバクテリウムを含まない洗浄水の生成量を確保するための生成性能が高いものが必要となってしまう。
要するに、ピンクスライム抑制工程S3では、散水に対する水量や水勢が不要であるという知見に基づき、単位時間あたりの散水水量を減少させることが好ましいのである。これによって、安価でありながら確実に残水置換を行えるシステムを構築できる。
【0137】
また、制御部30は、洗浄手段であるノズル部10aを制御することによって、黒カビ抑制工程S1の実施後であってピンクスライム抑制工程S3の実施前に、散水を停止させる散水待機工程を実施するようになっていることが好ましい。
【0138】
例えば水で行う黒カビ抑制工程S1では、多くの散水によって残水が多く残る。これを全て完璧にメチロバクテリウムを含まない洗浄水に置換するには、メチロバクテリウムを含まない洗浄水の多くの生成が必要になる。そこで、黒カビ抑制工程S1における散水の後に残った残水が排水口521に排水されるのを待つ待機工程を設けることが好ましいのである。これによって、メチロバクテリウムを含まない洗浄水の生成量を更に抑えることが可能となり、一層安価で簡単な構成とすることができる。
【0139】
更に、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の単位時間あたりの散水水勢に比して、ピンクスライム抑制工程S3の単位時間あたりの散水水勢が小さくなるように、洗浄手段であるノズル部10aを制御するようになっていることが好ましい。
【0140】
これによれば、ピンクスライム抑制工程S3での散水に伴って洗い場床520の残水中のメチロバクテリウムが浴室壁541~544等に飛散してしまうことが抑制できる。これによって、浴室壁541~544に飛散した残水がその後に置換済の洗い場床520に再度飛散してしまって洗い場床520においてピンクスライムを発生させてしまうということが抑制できる。
【0141】
また、制御部30は、黒カビ抑制工程S1における洗い場床520の単位面積あたりの散水水量の総量に比して、ピンクスライム抑制工程S3における洗い場床520の単位面積あたりの散水水量の総量が多くなるように、洗浄手段であるノズル部10aを制御するようになっていることが好ましい。
【0142】
浴室500では、散水の着水位置での水位は高くても、排水口521に向かう排水過程で浴室500の床面に広がって水位が下がり、また、排水流速も低下する。このため、ピンクスライム抑制工程S3(置換過程)において、残水中のメチロバクテリウムが床面に付着した状態を維持してしまって置換不良を起こすリスクがある。そこで、ピンクスライム抑制工程S3(置換過程)においては、単位時間あたりの散水水量を低下させた場合であっても、洗い場床520の床面の単位面積当たりの散水水量は多くすることで、置換残しが生じることを効果的に防止できる。
【0143】
また、制御部30は、黒カビ抑制工程S1における散水水量の総量に比して、ピンクスライム抑制工程S3における散水水量の総量が多くなるように、洗浄手段であるノズル部10aを制御するようになっていることが好ましい。
【0144】
メチロバクテリウムを含まない洗浄水を、ゆっくり高精度に生成して、少ない水量をゆっくり散水し、一方、全体に散水する総量については多くする、という制御態様が、最も安価で確実にピンクスライムの発生を防止できる。
【0145】
また、洗浄手段であるノズル部10aは、浴室500の一側に設けられて回転しながら洗い場床520を順次洗浄するようになっており、制御部30は、洗浄手段であるノズル部10aの回転とともに回転速度を制御するように構成されており、更に制御部30は、黒カビ抑制工程S1におけるノズル部10aの回転速度に比して、ピンクスライム抑制工程S3におけるノズル部10aの回転速度が小さくなるように、ノズル部10aを制御するようになっていることが好ましい。
【0146】
換言すれば、黒カビ抑制工程S1における角質の除去に対する散水は、勢いのある多くの水を散水するとともに、洗浄手段であるノズル部10aの回転速度を高めにして、排水流量の低下や排水流速の低下に伴って発生しやくするなる角質の床面への再付着を確実に防止することが望ましく、ピンクスライム抑制工程S3におけるバクテリアを含まない洗浄水への置換は、少ない洗浄水を飛び散らないようにゆっくりと撒き、また、水量低下に伴う水位低下で置換残しが起こらないように洗浄手段の回転速度を低めにすることが望ましい。
【0147】
<散水制御の状況に応じた変更>
本実施形態の洗浄装置100は、浴室500の洗い場を構成すると共に排水口521を有する洗い場床520を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、洗い場床520上に洗浄水を散水する洗浄手段であるノズル部10aと、ノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1と、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水がメチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水に置換されるように洗浄水を散水するピンクスライム抑制工程S3と、を実施する。
そして更に、本実施形態の制御部30は、予め設定された条件に従って、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3との少なくとも一方において洗い場床520に対する散水を変更する実行条件変更手段30aを有している(図3参照)。
【0148】
本件発明者は、浴室500のカビを抑制する洗浄技術の開発にあたり、発生したカビを殺菌する技術ではなく、事前対応の知見を得ることができた。これは、高濃度の殺菌剤等を使用することなく、水等の手軽な洗浄水を使用することで、かつ短時間で、カビの発生を極めて長期間抑制できるものである。
水や、バクテリアを除去した水や、低濃度の殺菌水を洗浄水として使用する場合、黒カビが発生したりピンクスライムが発生したりしてしまうと、当該洗浄水の散水では殺菌ができないため、黒カビやピンクスライムの増殖を止めることができない。よって、如何に黒カビやピンクスライムを発生させないようにするかが重要となる。
より詳細に説明すれば、角質の除去は、基本的には水でも可能であるのだが、角質が多い場合や角質が乾燥して床面に貼り付いてしまっていた場合には、当該角質の除去が困難で残ってしまうことがある。これが原因で黒カビが発生してしまう。また、ピンクスライムは、一旦発生してしまうと、粘膜に覆われているため、水では除去が困難で、殺菌性能の高いものを用いての対応が必要となる。
従って、実行条件変更手段30aを設けておいて、カビ発生のリスクに応じた条件を予め設定しておいて、状況に応じて丁寧に各工程S1、S3の散水制御を変更することが好ましいのである。これによって、手動の制御や一定の(固定的な)制御を行うものに比べて、飛躍的にカビやピンクスライムの発生を抑制するに成功したものである。
【0149】
例えば、予め設定された条件は、入浴後から洗浄開始までの放置時間に基づく条件である。
入浴後から洗浄開始までの放置時間が長くなれば、角質の乾燥が生じ、薄い角質は床面に強固に貼り付く。また、水中のメチロバクテリウムも、乾燥によって洗い場床520へ固着する。角質が洗い場床520に固着した状態では、角質の除去性能を高める対応が必要となる。
従って、例えば、放置時間が長いほど乾燥が進み固着が進んでいて、放置時間が短ければ固着があまり進んでいないと判断し、洗浄開始にあたり、放置時間に対応するような散水制御(洗浄制御)を実施することが好ましい。これによって、節水性と除去性の両立を高めることができる。
【0150】
あるいは、例えば、予め設定された条件は、浴室温度、湿度、時期のいずれかに基づく条件である。
温度が高くなれば、角質が早く乾燥するため、固着が発生しやすい。また、湿度が高くなれば、カビ等の増殖は激しくなる。温度や湿度の情報は、これらの測定結果を用いる他、時期(季節)の情報に基づいて推定してもよい。これらに対応するような制御を採用することで、浴室500にカビやピンクスライムという最終的に嫌なものを発生させることを長期間抑制できる。
【0151】
あるいは、例えば、予め設定された条件は、浴室500の使用期間に基づく条件である。
洗い場を長年使用することによって、洗い場床520上に傷や凹凸が形成され、角質やピンクスライムが固着しやすくなる。また、汚れの付着やコーティングの劣化等によって排水性の低下等が生じて、角質やピンクスライムが床面に残りやすくなる懸念が高まる。従って、経年変化で変化する浴室500の状態に合わせた洗浄制御を採用することが好ましい。浴室500の使用期間によって経年補正を行えば、簡単な構成であって煩わしさもない一方で、本発明の効果を高めることができる。
【0152】
あるいは、例えば、予め設定された条件は、入浴者数に基づく条件である。
入浴者数が増加すれば、角質が多くなり、使用水量も多くなるため残留するメチロバクテリウムも多くなる。入浴者数に見合った洗浄制御が採用されれば、節水性を維持した上で、最適な黒カビ及びピンクスライムの抑制が実現できる。
【0153】
更に、実行条件変更手段30aは、予め設定された条件に従って、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3との少なくとも一方において、当該工程S1、S3の実施時間、当該工程S1、S3の洗浄水の単位面積あたりの散水水量の総量、当該工程S1、S2の洗浄水の水勢、当該工程S1、S3の洗浄水の水温、当該工程S1、S3の洗浄水がジア塩素酸を含む場合のジア塩素酸濃度、のうちの少なくともいずれか一つを変更するようになっていることが好ましい。
角質除去や、メチロバクテリウムを含まない洗浄水への置換に際して、浴室500の使用状態等に応じて、水量、水勢、水温、殺菌濃度の少なくとも一つが変化するため、洗浄強度を変更でき、当該状態にとって最適な洗浄が実現できる。
【0154】
特に、実行条件変更手段30aは、予め設定された条件に従って、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3との両方において、各工程S1、S3の洗浄水の単位面積あたりの散水水量の総量を変更するようになっていることが好ましい。
例えば、角質やメチロバクテリウムの乾燥等による床面貼り付きに対する対策として、角質については再度ふやかすことが水でも対応できるのでそのような対応が望ましく、メチロバクテリウムを含まない洗浄水への置換については散水水量の増加で置換の確実性を高めることが望ましい。従って、各工程S1、S3の洗浄水の単位面積あたりの散水水量の総量を変更することによって、安価に確実に黒カビ、ピンクスライムの発生要因を除去できる。
【0155】
また、本実施形態の制御部30は、利用者による入力条件に従って、黒カビ抑制工程S1とピンクスライム抑制工程S3との少なくとも一方において洗い場床520に対する散水を変更する手動変更手段30bを更に有する(図3参照)。手動変更手段30bは、操作部35に接続されている(図1参照)。
前述してきたような予め設定された条件に基づく自動制御によっても、洗い場床520は「きれいな状態」を長持ちできる。しかし、「きれいな状態」に対する個々人の評価値や、使用状態のばらつき(過酷さ)、来客等の際に普段よりも更に一層「きれいな状態」にしておきたい、といった要望に応えることができるように、利用者による入力条件に従って手動で制御内容を調整できるような手動変更手段30bを設けておけば、利用者の満足度や使用勝手を更に向上することができる。
【0156】
なお、制御部30は、事前対応としての角質除去及びメチロバクテリウムを含まない水を生成して散水する置換散水からなる事前対応制御と、洗い場床520の床面に発生したカビもしくはピンクスライムを事後対応として殺菌する事後対応制御と、の両方を実施できるようになっていることが好ましい。
カビやピンクスライムの発生原因を取り除くことで浴室500の洗い場床520の「きれいな状態」を長持ちさせる事前対応制御のみならず、発生したカビやピンクスライムにも対応できる従来型の事後対応制御をも兼ね備えておくことで、浴室500の洗い場床520の「きれいな状態」をより確実に長期間維持でき、掃除の手間を相当量低減できる。
【0157】
この場合、制御部30は、予め決定された第1周期で事前対応制御を実行するようになっており、第1周期より長い予め決定された第2周期で事後対応制御を実行するようになっていることが更に好ましい。
このように、事前対応制御と事後対応制御の各々の頻度を最適化するように調整しておくことで、ランニングコストを最適化しつつ、「きれいな状態」をより確実に長時間維持することができる。
【0158】
また、制御部30は、利用者による入力条件に従って、事後対応制御を不定期に自由に実施できるようになっていることが好ましい。
前述してきたような予め設定された条件に基づく自動制御によっても、洗い場床520は「きれいな状態」を長持ちできる。しかし、如何なる状況にあっても確実にカビの発生を防止するというのは難しい。例えば、角質以外の栄養分の堆積によってカビが発生したり、メチロバクテリウムが飛散したり置換水でない水を置換後に撒いてしまった場合などにはピンクスライムが発生してしまう。黒カビやピンクスライムが発生してしまった場合、水やメチロバクテリウムを含まない洗浄水では、それらを除去できない。そこで、例えば殺菌性を高めた洗浄を行う手動モードを設けておけば、「きれいな状態」の長持ち機能に加えて、発生してしまったカビ等を殺菌する機能も実装でき、利用者の満足度はより一層高められる。
【0159】
<ピンクスライム抑制工程の効果>
本実施形態の洗浄装置100は、浴室500の洗い場を構成すると共に排水口521を有する洗い場床520を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、洗い場床520上に洗浄水を散水する洗浄手段であるノズル部10aと、ノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水がメチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水に置換されるように洗浄水を散水するピンクスライム抑制工程S3を実施するようになっている。
【0160】
本実施形態によれば、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水を除去するピンクスライム抑制工程S3を実施することによって、洗い場床520上のバクテリア、特にはメチロバクテリウム、を顕著に低減することができ、ひいては洗い場床520におけるカビの発生を顕著に抑制することができる。
【0161】
特に、ピンクスライム抑制工程S3において、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水が、水道水中のメチロバクテリウムを取り除いて生成されるメチロバクテリウムを含まない洗浄水によって置換されることにより、高濃度の即効性のある殺菌水を用いなくても、洗い場床520上のメチロバクテリウムを顕著に低減することができる。そして、浴室500で菌を殺菌するのではなく、栄養源を全て死滅させたり取り除くという訳でもなく、微量のメチロバクテリウムを死滅させれば良いだけなので、ピンクスライム抑制工程S3において散水される洗浄水は従来考えられていたような高濃度の即効性のある殺菌水である必要はなく、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0162】
本実施形態は、ピンクスライムの発生後に殺菌するという事後対応技術ではなく、その発生源を未然に叩くという事前対応技術であると言える。浴室500で発生するピンクスライムについて、本実施形態の洗浄装置100によれば、この抑制によって、99%以上の顧客満足度が図れる。
【0163】
本件発明者は、浴室500におけるピンクスライムの発生原因となる要因物質を突きとめた(発見)。すなわち、本件発明者は、ピンクスライムの発生要因が水道水中の微量なメチロバクテリウムであってこれが洗い場床520上で増殖することによってピンクスライムが発生すること、を見出した。そして、この特定ができたことによって、ピンクスライムの発生後にそれを死滅させるのはなく、その要因物質を未然に取り除くという技術の開発が可能になった。そして、殺菌水の高濃度化や長時間の殺菌が不要な洗浄技術として、本実施形態の洗浄装置100を確立するに至ったものである。
【0164】
洗浄手段は、第1洗浄水としての水道水及び第2洗浄水としての低濃度殺菌水を吐水するためのノズル部10aに加えて、ノズル部10aよりも上流の流路内に、水道水からメチロバクテリウムを取り除く除去装置20bを含む低濃度殺菌水生成部20を有している。第2洗浄水は、メチロバクテリウムを取り除くことによって、洗い場床520に散水される前段階でメチロバクテリウムが水中に存在しない状態とされた水である。
【0165】
広い洗い場床520に散水された水中のメチロバクテリウムを死滅させるためには、メチロバクテリウムへの確実なアタックのため、多量の殺菌水が必要になる。また、アタック不良が発生すると、ピンクスライム発生の原因になる。そこで、ノズル部10aよりも上流の流路内に除去装置を設けて、当該除去装置でメチロバクテリウムを散水前に除去し、洗い場床520に残る残水をメチロバクテリウムが存在しない水で置換する、という構成を採用したことにより、確実なメチロバクテリウムの除去を可能としたものである。これにより、死滅不良によるピンクスライムの発生を、より少ない水量で、より短い時間で、防止できる。
【0166】
また、本実施形態の浴室500においては、洗い場床520は、排水口521に向かって傾斜するように形成されており、洗浄手段であるノズル部10aは、浴室500内の一側に設置されたカウンター530側に配置され、且つ、排水口521より、洗い場床520を排水口521に向かって流れる排水流れにおいて上流側となるように配置されており、洗浄手段としてのノズル部10aは、洗い場床520の上流側から順次排水口521に向かうように散水するように回動するようになっており、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3において、ノズル部10aから先に散水されて洗い場床520を流れている洗浄水よりも上流側に後からの洗浄水が着水するように、ノズル部10aの回動速度を変更するようになっている。
【0167】
これにより、着水した水が排水流れとなって洗い場床520の傾斜に沿って排水口521に流れることと、ノズル部10aの回動によって順次排水口521に向かうように散水することと、が相俟って、洗い場床520に着水した洗浄水を排水口521に追い込み易くなり、洗い場床520の床面全体を置換し易くなる。
【0168】
また、先に散水された洗浄水は、洗い場床520に着水した後、水膜を形成しながら洗い場床520の傾斜に沿って流れていく。洗い場床520を流れる洗浄水の水膜は、広がりながら排水口521に向かうため、水膜がちぎれてしまい、洗浄水が通過する所と通過しない所が発生してしまう。ここで、先に散水されて洗い場床520を流れている洗浄水よりも上流側に後からの洗浄水が着水するように回動速度を変更することで、先に着水した洗い場床520の水膜に後から散水される洗浄水が補充されることとなり、水膜がちぎれることが防止される。これにより、洗い場床520の全面をより確実に洗浄水で置換することができる。
さらに、水膜の状態を維持できた場合であっても、先に散水された洗浄水よりも下流側に後からの洗浄水が着水してしまうと、着水時の水跳ねが発生して、メチロバクテリウムを含む水が飛散して、バクテリアを含む水を洗浄水で置換したにも関わらず置換した領域にバクテリアを含む水が飛散してしまう。そこで、先に散水され水膜を形成した洗浄水よりも上流側に着水させることによって、着水時のバクテリウムを含む水の飛散を防止することができる。
【0169】
また、ノズル部10aから散水される洗浄水の少なくとも一部は、洗い場床520から上方に立ち上がる浴室壁541~544に着水することが好ましい。
【0170】
メチロバクテリウムを含む水は、使用者の入浴行為によって、浴室壁541~544にも付着する。そして、浴室壁541~544に長時間付着していると、当該浴室壁541~544にピンクスライムが発生してしまう。そこで、洗浄水の少なくとも一部を浴室壁541~544に着水させることで、浴室壁541~544をもメチロバクテリウムを含まない水で置換することができる。また、浴室壁541~544と洗い場床520との接続部においても浴室壁541~544を流れた後の洗浄水が流れるため、確実な置換を実施することができる。すなわち、浴室壁541~544の壁面と洗い場床520との間の角部の置換を確実に実施することができる。
【0171】
また、ノズル部10aは、排水口521に向かって流れる排水流れにおいて上方側となる壁面から散水するようになっていることが好ましい。
【0172】
洗い場床520の傾斜の上方側の壁面から散水することで、当該壁面によって反射した洗浄水が排水口521に向かう流れが形成される。これにより、壁面によって反射した洗浄水の流れで洗い場床520上に存在するメチロバクテリウムを含む水を排水口521に効率的に排水できる。これにより、浴室壁541~544の壁面の下部にメチロバクテリウムを含む水が滞留することも防止でき、ピンクスライムの発生を効果的に防止することが可能となる。
【0173】
また、制御部30は、洗い場床520の傾斜を流れる排水流れの速度よりも遅い速度で洗浄手段であるノズル部10aを回動させるようになっていることが好ましい。
【0174】
壁面によって反射した洗浄水は、水膜を形成しつつ洗い場床520上を進むことになるが、進むに連れて水膜が広がっていき、水膜がちぎれてしまって、洗浄水が通過する箇所としない箇所が発生してしまう。そこで、回転速度を工夫することにより、水膜がちぎれないようにすることができ、洗い場床520全体をより確実に洗浄水で置換することができる。
【0175】
更に、カウンター530に近い壁面に着水する洗浄水は、カウンター530から遠い壁面に着水する洗浄水よりも上方の位置で着水することが好ましい。
【0176】
洗浄手段であるノズル部10aから近い洗い場床520に着水する水は、着水時に、洗浄手段であるノズル部10aによる吐水(噴射)方向の速度成分が高く、壁面側に更に進もうとする。壁面方向に進むと、壁面側にメチロバクテリウムが集まってしまって、ピンクヌメリが発生する可能性が高まる。そこで、壁面の高い位置に着水させることで、排水口521に向かうエネルギーを高めつつ、壁面に着水した後に流れる水と先に着水していた水とを合流させ、先に着水していた水が壁面に向かうことを防止することが効果的である。
洗浄手段であるノズル部10aから遠い壁面の高い位置に水を着水させると、洗い場床520の床面の傾斜の稜線を通りこしてしまう場合がある。すなわち、逆流が発生してしまって、バクテリアを含まない水で置換が完了した領域に、バクテリアを含む水が到達してしまう場合がある。そこで、洗浄手段であるノズル部10aから遠い壁面に対しては、より低い位置に着水させることで、床面に着水した水と壁面からの水との速度成分を相殺させて、そのような逆流が発生することを効果的に抑制することができる。
【0177】
なお、浴室500の器具を収納する収納部を更に備え、収納部は、洗い場床520の床面よりも上方に設けられることが好ましい。
【0178】
浴室500の器具が洗い場床520の床面に置かれている状態では、壁面で形成される排水口521に向かう洗浄水の排水流れを遮ってしまうことがあり、洗い場床520の床面全体を置換することができない場合がある。そこで、浴室500の器具を収納する収納部を洗い場床520の床面よりも上方に設けておくことで、浴室500の器具が洗い場床520の床面に置かれることが防止され、壁面からの洗浄水の排水流れが遮られずに洗い場床520の全面を置換することができる。
【0179】
この場合、制御部30は、洗浄手段であるノズル部10aを制御することによって、収納部に対する集中散水工程を実行した後にピンクスライム抑制工程S3を実施するようになっていることが更に好ましい。
【0180】
ピンクスライム抑制工程S3を実行した後に、収納部に対する集中散水工程を実行すると、洗い場床520が洗浄水で置換された後の領域を集中散水工程時の洗浄水が通過することになり、洗い場床520の置換が最終的に不十分な状態で終了する恐れがある。そこで、収納部に対する集中散水工程を実行した後にピンクスライム抑制工程S3を実行することで、置換が不十分な領域が発生することを防止できる
【0181】
また、ピンクスライム抑制工程S3の効果に関しても、洗い場床520の表面は、親水コーティングされていることが好ましい。
この場合、メチロバクテリウムが洗い場床520に付着しても、洗い場床520と水との親和性が高いことが、バクテリアの除去に際して極めて有効に作用する。すなわち、少ない洗浄水の水量、低い洗浄水の水勢でも、迅速かつ十分にピンクスライム抑制(メチロバクテリウムを含まない水への置換)を果たすことができる。
【0182】
また、ピンクスライム抑制工程S3の効果に関しても、洗い場床520には、洗浄水が着水する方向に対して非平行である方向に延びる溝522が形成されていることが好ましい(図30(b)参照)。
この場合、散水された洗浄水が洗い場床520に衝突した際や洗い場床520上を流れる際に、洗浄水が溝522に衝突して上下方向の波(水の脈動)が形成される。このように水の流れが乱れることにより、洗い場床520からメチロバクテリウムが剥がれ易くなる。また、洗浄水が洗い場床520上に広がって流れる際にも、当該波によってメチロバクテリウムの床への再付着が抑制される。これにより、散水される洗浄水の水勢や水量が小さくても、メチロバクテリウムを床から確実に除去できる。
【0183】
<低濃度殺菌水生成のバリエーション>
本実施形態の洗浄装置100は、浴室500の洗い場を構成すると共に排水口521を有する洗い場床520を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、洗い場床520上に洗浄水を散水する洗浄手段であるノズル部10aと、ノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存するメチロバクテリウムを含んだ残水がメチロバクテリウムが取り除かれた洗浄水に置換されるように洗浄水を散水するピンクスライム抑制工程S3を実施するようになっている。
【0184】
そして、洗浄手段は、第1洗浄水としての水道水及び第2洗浄水としての低濃度殺菌水を吐水するためのノズル部10aに加えて、ノズル部10aよりも上流の流路内に、水からメチロバクテリウムを取り除く除去装置20bを含む低濃度殺菌水生成部20を有している。
より具体的には、図14に示すように、本実施形態の低濃度殺菌水生成部20の下流部が、除去装置20bとなっていて、当該低濃度殺菌水生成部20の上流部である殺菌剤生成装置の一例である次亜塩素酸生成槽20aにおいて生成された次亜塩素酸を用いて水道水中のメチロバクテリウムを死滅させることによって、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成するようになっている。
除去装置20bは、低濃度殺菌水生成部20の上流部である殺菌剤生成装置の一例である次亜塩素酸生成槽20aで生成された次亜塩素酸(殺菌剤の一例)を含む原水の濃度を分散させることによって、原水中のメチロバクテリウムを死滅させて、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成する分散部20cを有している。分散部20cは、具体的には、互い違いに配置された隔壁20dによって形成されている。その他、図14において、20eは電極であり、20fは外郭ケースである。
【0185】
ここで、図15に示すように、除去装置20bは、次亜塩素酸生成槽20aとは別体に構成されてもよい。この場合、除去装置20bは、次亜塩素酸生成槽20aとノズル部10aとの間に設けられることになる。
【0186】
また、図16は、低濃度殺菌水生成部の第1代替例を示す模式図である。図16の場合、次亜塩素酸生成槽20aと除去装置20bとを採用する代わりに、配管内を流れる水道水に熱を与えることで水道水中のメチロバクテリウムを死滅させるためのコイル21が設けられている。このような構成によっても、原水中のメチロバクテリウムを死滅させて、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成することができる。
【0187】
更に、図17は、低濃度殺菌水生成部の第2代替例を示す模式図である。図17の場合、次亜塩素酸生成槽20aと除去装置20bとを採用する代わりに、紫外線透過性を有する配管内を流れる水道水に紫外線を照射することで水道水中のメチロバクテリウムを死滅させるための紫外線ランプ22が設けられている。このような構成によっても、原水中のメチロバクテリウムを死滅させて、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成することができる。
【0188】
また、図18は、低濃度殺菌水生成部の第1変形例を示す模式図である。図18の場合、図3の次亜塩素酸生成槽20aに加えて、図16のコイル21も併設され、更に次亜塩素酸生成槽20aに塩を添加する塩添加装置23が付加されている。このような構成によれば、原水中のメチロバクテリウムを死滅させて、メチロバクテリウムを含まないで且つ所望の殺菌作用を有する殺菌水を生成することができる。
【0189】
図3及び図16乃至図18のいずれの構成が採用されても、ピンクスライムではなくメチロバクテリウムという細菌の段階での除去が実施され、かつ、散水前の水からメチロバクテリウムを除去するために、効率よくメチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成することができる。
【0190】
このうち、図3の構成が採用される場合、すなわち、ノズル部10aよりも上流の流路内に配置された除去装置20bと当該除去装置20bよりも上流の流路内に配置された次亜塩素酸生成槽(殺菌剤生成装置の一例)20aとが用いられる場合には、即効性さえあれば極めて低濃度の次亜塩素酸によっても、非常に安価で、かつ確実に、洗い場床面に発生し得るピンクスライムを抑制できる。
【0191】
なお、本実施形態の除去装置20bは、メチロバクテリウムを死滅させた後の洗浄水がノズル部10aから吐水された後も浴室500の全長より短い第1の範囲では低い殺菌能力が残存している、というような殺菌水を洗浄水として生成するようになっている。
これにより、ピンクスライム抑制工程S3において、洗い場床520の前記第1の範囲では、殺菌と置換とが行われ、洗い場床520の前記第1の範囲外である第2の範囲では、置換のみが行われる、ということが実現できる。
メチロバクテリウムを含まない洗浄水によって残水を置換することにより、ピンクスライムの発生を飛躍的に向上でき、きれいな状態を長持ちさせることができる。しかしながら、浴室500では、洗濯やバケツの水の散水なども行われるため、メチロバクテリウムが完全にない状態を維持することは難しい。そして、一旦メチロバクテリウムによってピンクスライムが発生すると、殺菌性のないメチロバクテリウムを含まない洗浄水では、ピンクスライムを除去することができず、使用者の手による除去(こすり取ることや殺菌剤を用いての除去)が必要となる。
一方で、メチロバクテリウムという細菌の段階での死滅であれば、殺菌剤の劣化が低く、死滅させた後であっても低濃度の殺菌性を維持させることが容易であり、そのような殺菌剤を生成することに困難はないし、低濃度の殺菌性であれば機器への影響も小さい。
そこで、本実施形態では、好適な一態様として、洗い場床520の全体に対して殺菌性を維持するのではなく、第1の範囲において安全かつ容易に殺菌性を確保した散水を実現できるようにしている。当該範囲においては、残水を置換することによる「きれい」の維持に加えて、殺菌性も維持できるようにして、置換後にまかれてしまった水のメチロバクテリウムを除去したり、発生してしまったピンクスライムをアタックしたりする。これにより、より一層「きれい」を維持でき、洗浄の手間も大幅に抑制できる。
【0192】
また、本実施形態のノズル部10aは、浴室500のカウンター530側に配置されており、前記第1の範囲に、カウンター530及び排水口521が含まれている。
前記のように、第1の範囲では、置換による「きれい」の維持に加えて、殺菌性をも確保できる。従って、第1の範囲内にカウンター530及び排水口521が位置するように工夫することで、メチロバクテリウムが残存し易くピンクスライムの発生懸念が高い部分について、殺菌性を確保できる。すなわち、簡単な配置の工夫により、浴室500において最大の効果を得ることができる。
図19は、このような除菌領域と置換領域との一例を示す概略図である。この例では、洗い場床520のカウンター530側(ノズル部10a側)の略半分が、除菌領域となっており、カウンター530(及びノズル部10a)から遠い側の略半分が、置換領域となっている。
【0193】
殺菌効果に関連して、制御部30は、洗浄手段であるノズル部10aを制御することによって、洗浄水が空中を経由して直接排水口521に着水する、というように洗浄水を散水できるようになっていることが更に好ましい。
洗浄水が洗い場床520を経由して排水口521に至る場合、有機物との接触や残水との接触によって、洗浄水の殺菌濃度が下がってしまって、殺菌効果が期待できなくなる場合がある。これを回避したい場合には、空中を経由して直接排水口521に着水するような制御を採用すれば、簡単な構成で、ピンクスライムの発生リスクが高い排水口521に対する置換をより確実に実施できる。
この場合には、ノズル部10aは、カウンター530側で、且つ、排水口521に近接するように配設されていることが更に好ましい。
殺菌剤は、空中を経由するだけでも、空気との接触で殺菌濃度が下がるため、低濃度になって効果が期待できなくなる場合がある。そこで、ノズル部10aを排水口521の近くに偏倚配置することで、簡単な構成で殺菌濃度の減衰を抑制することができ、すなわち、殺菌剤を高濃度にする必要なく、すなわち、メチロバクテリウム殺菌後の殺菌剤によって、排水口521に対するピンクスライムの殺菌を実現できる。
【0194】
更に、ピンクスライム抑制工程S3において、前記第1の範囲では、洗い場床520の床面周囲から立ち上がる浴室壁541~544の壁面下部にも着水するように洗浄水が散水されるようになっており、且つ、カウンター530側の壁面に対する着水の高さが最も高いというように散水されるようになっていることが好ましい。
カウンター530の周辺は、入浴者の浴び水やシャワーによる水の飛散が多く、特にカウンター530側の浴室壁542の壁面はピンクスライムが発生するリスクが高い。そこで、カウンター530側の壁面に置換水を着水させて確実に置換を行えるようにし、更に前記リスクの大きい当該領域において殺菌作用をも維持させることで、ピンクスライムの発生をより確実に抑制し、「きれいな状態」を長持ちさせることができる。
【0195】
また、本実施形態のノズル部10aは、カウンター530の下方に配置されている。
カウンター530の下方は、飛散水が最も多く、カウンター530の下方の壁面は、ピンクスライム発生のリスクが最も大きい。ノズル部10aをカウンター530の下方に配置しておくことにより、そのようなリスクを顕著に低減することができる。
【0196】
また、本実施形態の制御部30は、除去装置20bを制御することで、前記第1の範囲を変更できるようになっている。
ピンクスライム抑制工程S3における洗浄水での置換によって、きれいな状態を長持ちさせることはできるが、置換後に水等がまかれてしまうこと等によってピンクスライムが一旦発生すると、メチロバクテリウムを含まない洗浄水の散水では、対応ができない。洗い場床520の全領域を殺菌作用を確保した第1の範囲にするのは、高濃度化が必要であり、無駄が生じ得るし、装置腐食等の懸念もある。そこで、第1の範囲を可変にして、すなわち、洗浄水の殺菌成分の濃度調整を行うことにして、利用者の多様なニーズへの柔軟な対応を提供することが有益である。これにより、掃除の手間の抑制と、高濃度化頻度の低下にともなう機器の保全や洗浄時間の短縮など、実用上有用な効果を奏しつつ、置換技術の課題を軽減できる。
具体的には、本実施形態の制御部30によれば、除去装置20bを制御することで、洗い場床520の第1の範囲をゼロにして洗い場床520の床面全体を第2の範囲とするモードをも実施可能であるし、かつ、洗い場床520の第2の範囲をゼロにして洗い場床520の床面全体を第1の範囲とするモードをも実施可能である。
【0197】
また、本実施形態の低濃度殺菌水生成部20(殺菌剤生成装置の一例)は、即効性の殺菌剤として、水道水中の塩素を殺菌成分生成手段である電極によって分解することによって次亜塩素酸を生成するようになっており、除去装置20bは、生成された次亜塩素酸を用いて水道水中のメチロバクテリウムを死滅させることによって、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成するようになっている。
このように、水道水を使える状況であれば、水道水中の塩素を利用して、低濃度であるが即効性の次亜塩素酸を生成することが便利である。次亜塩素酸は、空気減衰も多いため、第2の範囲が大きくなるが、メチロバクテリウムを除去するための除去装置20bを近傍に配置しておけば、メチロバクテリウムを死滅させるのに十分な殺菌性を容易に確保できるため、実用上有用である。
【0198】
<低濃度殺菌水における有効塩素濃度>
本実施形態では、前述の通り、有効塩素濃度が通常は0.1~0.3ppmである水道水を電気分解することによって次亜塩素酸を生成し、当該次亜塩素酸を用いて水道水中のメチロバクテリウムを死滅させることによって、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成するようになっている。これにより、低濃度殺菌水生成部20は、流路構成を複雑にすることなく、水道水から低濃度殺菌水(メチロバクテリウムを含まない洗浄水の一例)を効率よく生成できるようになっている。
そして、除去装置20bの内部、特には出口領域、における洗浄水の有効塩素濃度は、0.4~1.0ppmに調整されている。これは、ピンクスライム抑制工程S3において有効な洗浄水は、除去装置20bの内部、特には出口領域、における有効塩素濃度が0.4~1.0ppmであるような洗浄水である、という本件発明者の知見に基づくものである。
【0199】
一旦洗い場床520において発生してしまったピンクスライムを除去するためには、有効塩素濃度を高濃度化した殺菌水を用いる必要がある。ピンクスライムを死滅させるために必要な濃度は、1ppm以上である。しかしながら、本実施形態においては、原水中に含まれる塩素成分の濃度(有効塩素濃度が低い地域では0.1ppm、全国の水道水の有効塩素濃度の平均値は0.3ppm)を少しだけ上昇させて、0.4~1.0ppmとするのみで、ピンクスライムの発生原因であるメチロバクテリウムを除去できるのである。
【0200】
図14を参照して前述した通り、本実施形態の除去装置20bは、低濃度殺菌水生成部20の上流部である殺菌剤生成装置の一例である次亜塩素酸生成槽20aで生成された次亜塩素酸(殺菌剤の一例)を含む原水の濃度を分散させることによって、原水中のメチロバクテリウムを死滅させて、メチロバクテリウムを含まない洗浄水を生成する分散部20cを有している。
次亜塩素酸生成槽20aにおいて局所的に生成され得る次亜塩素酸を、分散部20cにおいて原水内で効果的に分散させることにより、有効塩素濃度の低い次亜塩素酸であっても、より確実にメチロバクテリウムと反応させることができ、原水内のメチロバクテリウムを効果的に除去することができる。
【0201】
また、前述の通り、本実施形態の除去装置20bは、メチロバクテリウムを死滅させた後の洗浄水がノズル部10aから吐水された後も浴室500の全長より短い第1の範囲では殺菌能力が残存している、というような殺菌水を洗浄水として生成するようになっている。
これにより、ピンクスライム抑制工程S3において、洗い場床520の前記第1の範囲では、殺菌と置換とが行われ、洗い場床520の前記第1の範囲外である第2の範囲では、置換のみが行われる、ということが実現できる。
そして、本実施形態の場合、洗い場床520の第1の範囲に着水された後の洗浄水の有効塩素濃度は、0.4ppm以上であることが好ましい。
メチロバクテリウムを含まない洗浄水によって残水を置換することにより、ピンクスライムの発生を飛躍的に向上でき、きれいな状態を長持ちさせることができる。しかしながら、浴室500では、洗濯やバケツの水の散水なども行われるため、メチロバクテリウムが完全にない状態を維持することは難しい。そして、一旦メチロバクテリウムによってピンクスライムが発生すると、殺菌性のないメチロバクテリウムを含まない洗浄水では、ピンクスライムを除去することができず、使用者の手による除去(こすり取ることや殺菌剤を用いての除去)が必要となる。
一方で、メチロバクテリウムという細菌の段階での死滅であれば、殺菌剤の劣化が低く、死滅させた後であっても低濃度の殺菌性を維持させることが容易であり、そのような殺菌剤を生成することに困難はないし、低濃度の殺菌性であれば機器への影響も小さい。
そこで、本実施形態では、好適な一態様として、洗い場床520の全体に対して殺菌性を維持するのではなく、第1の範囲において安全かつ容易に殺菌性を確保した散水を実現できるようにしている。当該範囲においては、残水を置換することによる「きれい」の維持に加えて、殺菌性も維持できるようにして、置換後にまかれてしまった水のメチロバクテリウムを除去したり、発生してしまったピンクスライムをアタックしたりする。これにより、より一層「きれい」を維持でき、洗浄の手間も大幅に抑制できる。
【0202】
ここで、洗い場床520の第1の範囲に着水された後の洗浄水の有効塩素濃度は、0.8ppm以上であることが更に好ましい。
浴室500に関する顧客要求が高い項目としては、黒カビに対する対策もある。その中でも、使用者の入浴行為後に、黒カビの原因である角質が集まって貯留される傾向が高い排水口521およびトラップにおける黒カビの発生の抑制に関しては、特に要求が高い。カウンター530および排水口521を含む第1の範囲に着水する洗浄水の有効塩素濃度を0.8ppm以上としておくことで、メチロバクテリウムに加えて、黒カビを除去することも可能である。
【0203】
また、洗浄手段であるノズル部10aは、除去装置20bによって生成される洗浄水中の有効塩素濃度を高める高濃度化手段(例えば塩添加装置23)を有していることが更に好ましい(図18参照)。この場合、制御部30は、当該高濃度化手段を制御することによって、洗い場床520の床面全体で殺菌と置換とが行われるような高濃度除去工程を実施できる。この場合、ピンクスライム抑制工程S3と高濃度除去工程とは、選択的に実施されるようになっていることが好ましい。
利用者数の多い浴室(汚れの原因菌が多い)や、長期間使用していなかった浴室においては、洗い場床520の全体にメチロバクテリウムや黒カビが存在している可能性がある(黒カビは、空中を浮遊している)。ピンクスライム抑制工程S3で散水される洗浄水は、有効塩素濃度が低いため、このような状況では、メチロバクテリウムや黒カビを殺菌することができない。そこで、このような状況に対応するべく、高濃度化除去工程を用意しておくことで、利用者が多い浴室や長期間使用していなかった浴室において、メチロバクテリウムや黒カビを殺菌することができる。
【0204】
以上の効果の説明に、更に以下の3つのグラフを援用する。
図20は、有効塩素濃度毎の、浴室における発生後の黒カビ及びピンクスライム殺菌時間と散水量との関係を示すグラフである。これによれば、黒カビ及びピンクスライム殺菌時間と散水量とが互いにトレードオフの関係にあることが確認できる。また、有効塩素濃度が高い程、黒カビ及びピンクスライム殺菌時間を短くすることができる、あるいは、散水量を少なくすることができることも確認できる。
しかしながら、散水後の有効塩素濃度を1ppmとしても、散水量を顕著に低減するには至らず、すなわち、依然として相応の散水量が必要である。
本実施形態のように、散水前のバクテリアを死滅させた洗浄水を用いたピンクスライム抑制工程S3を実施することは、節水面で非常に有効である。
図21は、有効塩素濃度毎の散水後の濃度減衰を示すグラフである。図21に示すように、散水前の有効塩素濃度が1ppmであっても、浴室内での散水中の濃度減衰により、着水後の有効塩素濃度は大きく低下してしまう。
浴室500の全体に洗浄水を飛ばして(散水距離2m程度)、浴室500の全体において着水後の有効塩素濃度0.4ppmを達成しようとすると、図21に示すように、吐水時の有効塩素濃度を2ppm程度にする必要がある。しかしながら、水道水中の有効塩素成分からそのような高濃度の有効塩素濃度を実現するのは、容易ではない(高濃度化手段が必要である)。
図22は、有効塩素濃度のメチロバクテリウムの死滅時間を示すグラフである。図22に示すように、有効塩素濃度が0.4ppmであれば、メチロバクテリウムは略瞬殺される。すなわち、散水前の(減衰前の)事前処理による当該濃度の洗浄水による残水置換で、ピンクスライムの発生を抑制できるのである。(逆に、有効塩素濃度が0.3ppmでは、メチロバクテリウムが生き残ってしまうと言える。)
【0205】
<黒カビ抑制工程の効果>
本実施形態の浴室500は、当該浴室500の洗い場を構成する洗い場床520と、洗い場床520上の残水を排水するために洗い場床520に設けられた排水口521と、洗い場床520の周囲から立ち上がる浴室壁541~544と、洗い場床520上に洗浄水を散水するノズル部10aを有する洗浄手段と、洗浄手段のノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1を実施するようになっている。
そして更に、黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aから散水される洗浄水が、洗い場床520の角質を取り除く一方で、取り除いた角質を洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部に堆積させることがないように流動するようになっている。
本実施形態によれば、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質を除去する黒カビ抑制工程S1を実施することによって、洗い場床520上の角質を顕著に低減することができ、ひいては洗い場床520におけるカビの発生を顕著に抑制することができる。
【0206】
黒カビ抑制工程S1を実施する際、洗い場床520に残存する角質を剥ぎ取って排水口521に余すことなく除去することが重要である。この角質の除去を散水だけで行う場合、角質が洗い場床520の床面に再付着することなく排水口521に至るようにすることが重要である。
また、角質を洗い場床520から取り除くために散水し、角質を取り除くことができても、ノズル部10aから散水される洗浄水は一方向に指向して散水されるため、その方向の延長線上にある洗い場床520と浴室壁541~544との角部に到達し、折角剥ぎ取った角質が当該角部と衝突して当該角部に堆積してしまい、洗い場床520の黒カビ発生を抑制できても、当該角部の黒カビ発生を十分に抑制できない、という問題があった。
本実施形態の洗浄装置100によれば、黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aから散水される洗浄水が、洗い場床520の角質を取り除く一方で、取り除いた角質を洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部に堆積させることがないように流動することにより、洗い場床520のみならず前記角部での黒カビ発生をも抑制できる。
【0207】
なお、本実施形態の制御部30は、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520から取り除かれた角質が洗い場床520へ再付着することを防止するために洗浄水を更に散水する再付着防止散水工程を実施するようになっていることが好ましい。
散水される洗浄水によって角質が剥ぎ取られても、当該洗浄水中に含まれることとなった当該角質は、排水口521に至る流動過程で洗い場床520に再付着してしまうことがある。このため、洗い場床520から取り除かれた角質が洗い場床520へ再付着することを防止するために洗浄水を更に散水する再付着防止散水工程を実施することによって、角質の再付着がより確実に防止でき、洗い場床520から確実に角質を除去できる。
【0208】
また、本実施形態の黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aから散水される洗浄水は、図23に示すように、洗い場床520に残存する角質に対して最初に接触して当該角質を洗い場床520から剥がすための第1流動水と、洗い場床520から剥がされた角質を排水口521まで搬送するための第2流動水と、を有している。図23は、本実施形態の第1流動水(第1波)と第2流動水(第2波)との流動状態を示す概略図である。
【0209】
散水される洗浄水によって角質が剥ぎ取られても、当該洗浄水中に含まれることとなった当該角質は、排水口521に至る流動過程で洗浄水が拡散して洗浄水の水位が下がることにより、特に排水口521の近傍等において洗い場床520に再付着しやすい。このため、洗い場床520に残存する角質に対して最初に接触して当該角質を洗い場床から剥がすための第1流動水と、洗い場床から剥がされた角質を排水口521まで搬送するための第2流動水と、を分離して散水する(流動させる)ことが効果的である。
角質を剥ぎ取るための第1流動水だけで、排水口521までの流動過程における洗浄水の拡散に伴う水位低下によって角質が洗い場床に再付着することを抑制しようとすると、大量の洗浄水を一度に散水して、水位低下による角質の再付着を発生させないようにする必要がある。第1流動水と第2流動水とを分離して、第1流動水を角質を剥がすために散水し、第2流動水を剥がされた角質を搬送するために散水すれば、結果的により少ない洗浄水の量で、洗い場床520から角質を除去し、確実に排水口521まで排出できる。
【0210】
また、本実施形態では、第1流動水は、洗い場床520の所定部位上を流動するようになっており、第2流動水は、第1流動水が到達してから所定時間の経過後に、前記所定部位上を流動するようになっている。
第1流動水と第2流動水とを同時に散水したのでは、両者の散水を分離して制御する趣旨が活かされないが、両者の散水の間の時間が長すぎても、角質が乾燥して再付着しやすくなるため好ましくない。従って、両者の散水の間の時間を適度に制御することが有効である。本実施形態では、第1流動水が洗い場床520の所定部位上を流動するようになっており、第2流動水は第1流動水が到達してから所定時間の経過後に当該所定部位上を流動するようになっているため、簡単な構成でありながら、少ない洗浄水の量で確実に角質の再付着を防止できる。
【0211】
また、本実施形態では、前記所定部位上において、第2流動水が排水口521に向かう流動速度は、第1流動水が排水口521に向かう流動速度よりも速く、第2流動水は、排水口521に至るまでに、第1流動水と合流するようになっている。
排水口521に近づくにつれて、第1流動水の拡散による水位低下によって、角質は再付着しやすくなる。従って、洗い場床520の各部位において第1流動水の到着から第2流動水の到着までの時間を一定に制御するよりも、排水口521に近づくにつれて短くする、更には、排水口521に至る前に追いつかせて合流させる、ことが有効である。これにより、第1流動水の拡散による水位低下を効果的に補うことができ、より確実に角質の再付着を防止することができる。
【0212】
また、本実施形態のノズル部10aは、洗い場床520に垂直な軸心回りに回転するように構成されており、制御部30によってノズル部10aの回転が制御されることによって、前記所定部位上において第2流動水が排水口521に向かう流動速度が第1流動水が排水口521に向かう流動速度よりも速く調整されている。
すなわち、ノズル部10aの回転の送り速度を制御することによって、第1流動水が排水口521に向かう流動速度、及び/または、第2流動水が排水口521に向かう流動速度を比較的容易に制御することができ、ひいては、両者間の遅れ時間や両者の合流位置を比較的容易に調整することができる。
【0213】
また、本実施形態では、制御部30が、ノズル部10aから遠い領域へ洗浄水を着水させる際には、ノズル部10aから近い領域へ洗浄水を着水させる際と比して、ノズル部10aの回転速度が低い、というようにノズル部10aの回転を制御するようになっている。
散水距離が遠いほど、散水される洗浄水の水勢が低下するため、排水口521に向かって流動する洗浄水の速度も低下する。この傾向を補償するべく、散水距離が遠いほど回転速度を低くして散水水量を増大させることにより、簡単な制御でありながら、第1流動水の散水制御と第2流動水の散水制御との各々の最適化を図ることができる。
【0214】
<排水口の両側から散水制御を行う効果>
本実施形態の浴室500は、当該浴室500の洗い場を構成する洗い場床520と、洗い場床520上の残水を排水するために洗い場床520に設けられた排水口521と、洗い場床520の周囲から立ち上がる浴室壁541~544と、当該浴室500の一側に設けられ回転しながら洗い場床520上に洗浄水を散水するノズル部10aを有する洗浄手段と、洗浄手段のノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1を実施するようになっている。
そして更に、黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aの回転が制御されることによって、ノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が浴室500の一側から排水口521に向かって移動する第1洗浄工程(前半の黒カビ抑制工程)と、ノズル部10aの回転が制御されることによってノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が浴室500の他側から排水口521に向かって移動する第2洗浄工程(後半の黒カビ抑制工程)と、が実施されるようになっている
【0215】
黒カビ抑制工程S1を実施する際、洗い場床520に残存する角質を剥ぎ取り、角質の洗い場床520の床面への再付着を防止しながら排水口521まで確実に角質を搬送することが重要である。この目的に対して、単純な散水では、角質が洗い場床520の周縁と浴室壁541~544との間の角部に集められて堆積してしまって、排水口541まで確実に搬送されない場合がある。
【0216】
本実施形態によれば、洗浄水の撒き方を工夫することにより、この課題が確実に解決される。具体的には、回転しながら洗い場床520上に洗浄水を散水するノズル部10aを採用すると共に、ノズル部10aの回転が制御されることによってノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が浴室500の一側から排水口521に向かって移動する第1洗浄工程と、ノズル部10aの回転が制御されることによってノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が浴室500の他側から排水口521に向かって移動する第2洗浄工程と、を実施することによって、角質を排水口521まで確実に搬送することができる。
【0217】
本実施の形態では、第1洗浄工程(前半の黒カビ抑制工程)は、ノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が排水口521を含む状態で終了する。これにより、剥ぎ取られた角質が確実に排水口521に排出され、剥ぎ取られた角質が排水口521を超えて前記角部に堆積してしまうことが防止される。
【0218】
また、第1洗浄工程(前半の黒カビ抑制工程)では洗浄されない領域(第2洗浄領域)が、第2洗浄工程(後半の黒カビ抑制工程)によって分離して洗浄されることにより、第2洗浄領域の角質も同様に排水口521に確実に排出される。
【0219】
このように、排水口521までの分離洗浄という簡単な散水形態を採用したことによって、本実施形態の洗浄装置100は、床面に残存する角質を確実に剥ぎ取りながら排水口521まで確実に搬送させ、洗い場床520の床面と浴室壁541~544との間の角部に角質を堆積させることがない。
【0220】
また、本実施形態の洗い場床520は、平面視で略矩形状であって、洗い場床520の第1辺にカウンター530が設置されており、ノズル部10aはカウンター530側に配置されており、排水口521は洗い場床520の前記第1辺と当該第1辺に対向する第2辺とを除いた両側辺の一方である第3辺の側に配置されている。
このように、ノズル部10aと排水口521とを同一辺上に配置しないことにより、角質の角部への堆積を効果的に防止することができる。ノズル部10aと排水口521とを同一辺上に配置すると、洗浄によって角質を剥ぎ取って掻き集めてきて、排水口位置において洗浄を停止させたとしても、角質が第1辺の角部に堆積してしまうリスクが高くなってしまう。本実施形態では、前記のような配置の工夫によって、そのようなリスクを低減している。
特に、ノズル部10aをカウンター530側(第1辺側)に配置することで、角質除去性能を高めている。具体的には、体を洗うとカウンター530前に角質が多く残存するが、第1辺側にノズル部10aを配置することで、洗浄水の水勢ないし水量を多く確保することができ、角質の剥ぎ取りをより確実に行うことができる。
更に、排水口521を第2辺上に配置すると、排水口521がノズル部10aからの洗浄水の散水方向と対面する状態となるため、排水口521の位置で洗浄水の散水を止めても、散水される洗浄水の水勢で第2辺に角質が堆積(残存)してしまうリスクが高い。この場合、排水口521へ確実に角質を搬送することが難しくなる。これに対して、本実施形態では、排水口521を第3辺の側に配置することによって、角質をいずれの角部にも堆積(残存)させることなく、排出口521まで確実に導くことができる。
【0221】
本実施形態のノズル部10aは、前記第3辺と当該第3辺に対向する第4辺との中間に配置されているが、当該中間に対して前記第4辺の側、に配置されていてもよい。
排水口521の周囲には、洗浄水によって剥ぎ取られた角質が多く含まれた洗浄水が、最終的に到達してくる。更に洗浄水は、上流から流れてくる過程で拡散し、下流においては水位や流速が低下する。これらの要因により、排水口521の周囲では、角質が床面に再付着しやすい。この傾向を考慮して、第3辺と第4辺との中間を含む第4辺の側にノズル部10aを配置しておくことにより、ノズル部10aから散水される洗浄水を排水口方向に指向すれば、角質が再付着しやすい排水口521の周囲を直接的に洗浄することが容易であり、また、洗い場床520上の洗浄水(排水流れ)の水位を増大させ、排水口521に角質を押し込む力を増大させることも容易である。これにより、排水口521の周囲における角質の再付着を効果的に抑制することができる。
【0222】
また、本実施形態の第1洗浄工程(前半の黒カビ抑制工程)は、ノズル部10aから散水される洗浄水の一部の着水位置が排水口521である状態を含み、第2洗浄工程(後半の黒カビ抑制工程)も、ノズル部10aから散水される洗浄水の一部の着水位置が排水口521である状態を含んでいる。
排水口521の周囲は、前述の通り、洗浄水によって掻き集められた角質が堆積しやすく、黒カビ発生のリスクが高い。また、排水口521の周囲で洗浄水の散水を止める場合、排水口521への洗浄水の排出性は高まるが、角質の一部が排水口521の周囲に再付着する懸念が残る。従って、第1洗浄工程と第2洗浄工程との両方において排水口521に洗浄水の一部を直接的に着水させる、すなわち、角質の再付着しやすい排水口521の周囲を2度丁寧に洗浄する、ことにより、角質残りをより効果的に抑制することができる。
【0223】
また、本実施形態の第1洗浄工程(前半の黒カビ抑制工程)では、ノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が、洗い場床520の前記第1辺、前記第4辺、前記第2辺及び前記第3辺の順に移動するようになっており、第2洗浄工程(後半の黒カビ抑制工程)では、ノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が、洗い場床520の前記第1辺及び前記第3辺の順に移動するようになっている。そして、第1洗浄工程が実施されてから第2洗浄工程が実施されるようになっている。
第1洗浄工程と第2洗浄工程とを、時間をずらして段階的に実施する場合、一方の洗浄領域の洗浄が終わった時に、角質を含む洗浄水の一部が他方の洗浄領域に広がってしまって、当該洗浄水の一部に含まれていた角質が他方の洗浄領域に再付着してしまう虞がある。更に、一方の洗浄工程の終了時から他方の洗浄工程の開始時までの時間が長いと、洗浄水の排水が進んで角質が洗い場床520に再付着するリスクが高まる。従って、2つの洗浄工程の間の時間は短いことが望ましい。そこで、本実施形態のように、一方の洗浄工程の終了時から他方の洗浄工程の開始時までの時間が短くなるように、第1洗浄工程と第2洗浄工程との各々によって洗浄される洗浄領域に予め差を設けておいて、より広い範囲の洗浄を先に実施することにより、角質の再付着のリスクを低減することができる。
【0224】
また、本実施形態では、洗い場床520の床面には、排水口521に向かう排水勾配が設定されている。このため、排水口521の対面側である第4辺の洗浄を先行させることが好ましい。この場合、第4辺の側に着水した洗浄水は、排水勾配によって、排水口521に向かって勢いよく流れ得て、第2洗浄工程のみによって洗浄される領域内まで飛散し得るが、第2洗浄工程が後で実施されるので問題が生じない。一方、第2洗浄工程で散水される洗浄水も、第1洗浄工程のみによって洗浄される領域内まで飛散し得るが、排水勾配を上る流動方向であるため流速が遅く、飛散の程度が顕著に低い。
【0225】
なお、第1洗浄工程が実施される前に、ノズル部10aから散水される洗浄水の着水位置が洗い場床520の前記第1辺に維持される第1辺洗浄工程が実施されてもよい。
カウンター530の周囲は、角質の残存が多く、特にカウンター530の裏には角質が溜まりやすい。そこで、第1辺の洗浄を実施する第1辺洗浄工程を別に先に行うことで、第1辺の側から角質を第1洗浄工程及び第2洗浄工程で洗浄される各洗浄領域に追い出すことができ、結果としてカウンター530周辺の洗浄性能を高めることができる。
【0226】
また、本実施形態では、ノズル部10aの数は一つであって、制御部30は、第1洗浄工程を実施した後、ノズル部10aからの洗浄水の散水を停止し(もしくは減量でもよい)、第2洗浄工程の開始位置までノズル部10aを回転させてから、第2洗浄工程を実施するようになっている。
第1洗浄工程と第2洗浄工程とは、2つのノズル部を設けておいて、それぞれのノズル部から別個に実施する、ということも可能である。例えば、排水口521を両側から挟み込むように、同時に散水することも可能である。しかしながら、2つのノズル部を設けることは、コストが高い。本実施形態により、1つのノズル部であっても、2つのノズル部を設けておくことと略同様の効果を実現できることが確認できた。すなわち、第1洗浄工程を実施した後、ノズル部10aからの洗浄水の散水を停止(もしくは減量)し、第2洗浄工程の開始位置までノズル部10aを回転させてから、第2洗浄工程を実施することでも、高い角質除去性能を実現することができる。第1洗浄工程の後、洗浄水の散水を停止もしくは減量させるのは、節水の他、剥がした角質を第1辺の側(第2洗浄領域)に搬送しないためでもある。
【0227】
<より好適な散水制御条件の具体例>
本実施形態の洗浄装置100に関する各種の実験の結果、洗い場床520においてヌメリの発生をより確実に抑制するためには、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、黒カビ抑制工程S1の後に洗い場床520上に残存する水道水の80~100%を低濃度殺菌水に置換するようになっていることが好ましい。
【0228】
そのような置換率を達成するため、各種の実験から本件発明者が得た知見によれば、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、単位時間あたり0.4~4.0L/minの散水量でノズル部10aから洗い場床520上に水道水を散水させるようになっていることが好ましく、また、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、単位時間あたり0.2~2.0L/minの散水量でノズル部10aから洗い場床520上に低濃度殺菌水を散水させるようになっていることが好ましい。本件発明者による検証によれば、黒カビ抑制工程S1での水道水の単位時間あたりの散水量と、ピンクスライム抑制工程S3での低濃度殺菌水の単位時間あたりの散水量との相互比較においては、後者の方を前者よりも少なくすることが可能である。このような単位時間あたりの散水量のバランスが採用される場合に、高い置換率を実現することができる。
【0229】
別の視点では(別のパラメータによれば)、本件発明者が得た知見によれば、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、単位面積あたり0.05~0.5L/cm の散水量でノズル部10aから洗い場床520上に水道水を散水させるようになっていることが好ましく、また、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、単位面積あたり0.06~0.6L/cm の散水量でノズル部10aから洗い場床520上に低濃度殺菌水を散水させるようになっていることが好ましい。このような単位面積あたりの散水量のバランスが採用される場合に、高い置換率を実現することができる。
【0230】
更に別の視点では(別のパラメータによれば)、本件発明者が得た知見によれば、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、総水量0.8~8.0Lの散水量でノズル部10aから洗い場床520上に水道水を散水させるようになっていることが好ましく、また、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、総水量1.0~10.0Lの散水量でノズル部10aから洗い場床520上に低濃度殺菌水を散水させるようになっていることが好ましい。本件発明者による検証によれば、黒カビ抑制工程S1での水道水の散水の総水量と、ピンクスライム抑制工程S3での低濃度殺菌水の散水の総水量との相互比較においては、後者の方を前者よりも少なくすることが可能である。このような総水量のバランスが採用される場合に、高い置換率を実現することができる。
【0231】
更に別の視点では(別のパラメータによれば)、本件発明者が得た知見によれば、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、流速0.8~8.0m/sでノズル部10aから洗い場床520上に水道水を散水させるようになっていることが好ましく、また、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、流速0.8~8.m/sでノズル部10aから洗い場床520上に低濃度殺菌水を散水させるようになっていることが好ましい。このような流速のバランスが採用される場合に、高い置換率を実現することができる。
【0232】
更に別の視点では(別のパラメータによれば)、本件発明者が得た知見によれば、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、粒径100 ~500μmでノズル部10aから洗い場床520上に水道水を散水させるようになっていることが好ましく、また、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、粒径100~300μmでノズル部10aから洗い場床520上に低濃度殺菌水を散水させるようになっていることが好ましい。このような粒径のバランスが採用される場合に、高い置換率を実現することができる。
【0233】
以上に説明した好適な散水条件の一例を、纏めて図24に示す。
【0234】
また、前述のように、黒カビの発生を抑制する上では、洗い場床520において角質を残存させておかないこと(除去しておくこと)が効果的である。従って、制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、ノズル部10aから洗い場床520上に水道水を散水させることによって、特に洗い場床520上の角質を水道水と一緒に排水口521に流すようになっていることが好ましい。具体的には、例えば洗い場床520上の領域毎の角質の残存量(ないし残存傾向)についての情報があれば、そのような情報を黒カビ抑制工程S1の実施の際に活用することが望ましい。例えば、角質の残存量が多い(ないし残存傾向が高い)領域に対しては、単位面積あたりの水道水の散水量を増やしたり、単位時間あたりの水道水の散水量を増やしたり、水道水の総水量を増やしたり、水道水の流速を高めたり、といった修正が有効である。
【0235】
また、低濃度殺菌水による水道水の置換をより確実に実施するためには、制御部30は、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、図25及び図26に示すように、黒カビ抑制工程S1の実施の際に洗い場床520上に水道水が散水された領域よりも広い領域に、ノズル部10aから低濃度殺菌水を散水させるようになっていることが好ましい。これは、低濃度殺菌水の吐水時の流速を水道水の吐水時の流速よりも大きく制御すること等により、実現可能である。
【0236】
<排水口手前での一時停止制御>
本件発明者の更なる検討によれば、黒カビ抑制工程S1において、ノズル部10aから水道水が散水される領域が排水口521にさしかかる手前の位置で、ノズル部10aの回転を一時停止させるか、あるいは、当該位置を含む回転領域におけるノズル部10aの平均回転速度を超低速(例えば1~3°/s程度)に減速させることが好ましい。
【0237】
このような制御が採用される場合、図27に示すように、ノズル部10aから散水された水道水が水流となって排水口521に流れている状態を、一時的に維持することができる。これにより、洗い場床520上の角質を効果的に排水口521へ洗い流すことができる。
【0238】
図28は、排水口手前での一時停止制御を採用した黒カビ抑制工程S1におけるタイムチャートを示す概略図である。
【0239】
図28に示すように、本実施形態の制御部30は、ノズル部10aを第4位置P4から第2位置P2まで回転させる途中において、ノズル部10aから水道水が散水される領域が排水口521にさしかかる手前の位置P5で、電気モータ17の停止時間の長さを延ばすことによって(例えば20秒間程度)ノズル部10aの回転を一時停止させる。これにより、ノズル部10aから散水された水道水が水流となって排水口521に流れている状態を、一時的に維持することができる。
【0240】
ここで更に、ノズル部10aから水道水が散水される領域が排水口521にさしかかる手前の位置P5で、水道水が第2壁542に対して平面視で鋭角θ(例えば5~85°)をなすように着水するようになっていれば、第2壁542に着水した水道水が当該第2壁542によって反射された反射水流となって排水口521に流れ、更にノズル部10aの回転の一時停止(または減速)によってその状態が一時的に維持されるため、洗い場床520上の角質をより効果的に排水口521へ洗い流すことができる。
【0241】
同様に、本件発明者の更なる検討によれば、ピンクスライム抑制工程S3においても、ノズル部10aから低濃度殺菌水が散水される領域が排水口521にさしかかる手前の位置で、ノズル部10aの回転を一時停止させるか、あるいは、当該位置を含む回転領域におけるノズル部10aの平均回転速度を超低速に減速させることが好ましい。
【0242】
このような制御が採用される場合、同様に図28に示すように、ノズル部10aから散水された低濃度殺菌水が水流となって排水口521に流れている状態を、一時的に維持することができる。これにより、洗い場床520上の水道水を効果的に排水口521へ洗い流すことができる。
【0243】
図29は、排水口手前での一時停止制御を採用したピンクスライム抑制工程におけるタイムチャートを示す概略図である。
【0244】
図29に示すように、本実施形態の制御部30は、ノズル部10aを第4位置P4から第2位置P2まで回転させる途中において、ノズル部10aから低濃度殺菌水が散水される領域が排水口521にさしかかる手前の位置P5で、電気モータ17の停止時間の長さを延ばすことによって(例えば40秒間程度)ノズル部10aの回転を一時停止させるようになっている。これにより、ノズル部10aから散水された低濃度殺菌水が水流となって排水口521に流れている状態を、一時的に維持することができる。
【0245】
ここでも更に、ノズル部10aから低濃度殺菌水が散水される領域が排水口521にさしかかる手前の位置P5で、低濃度殺菌水が第2壁542に対して平面視で鋭角θ(例えば5~85°)をなすように着水するようになっていれば、第2壁542に着水した低濃度殺菌水が当該第2壁542によって反射された反射水流となって排水口521に流れ、更にノズル部10aの回転の一時停止(または減速)によってその状態が一時的に維持されるため、洗い場床520上の水道水をより効果的に排水口521へ洗い流すことができる。
【0246】
<壁面反射水の活用>
以上に説明してきた本実施形態の浴室500は、当該浴室500の洗い場を構成する洗い場床520と、洗い場床520上の残水を排水するために洗い場床520に設けられた排水口521と、洗い場床の周囲から立ち上がる浴室壁541~544と、当該浴室500の一側に設けられ当該浴室500内に洗浄水を散水するノズル部10aを有する洗浄手段と、洗浄手段のノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1を実施するようになっている。
そして更に、黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aから散水される洗浄水が、洗い場床520の角質を取り除く一方で、取り除いた角質を洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部に堆積させることがないように流動するようになっている。
そして、本実施形態においては、黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aから散水される洗浄水の少なくとも一部が、浴室壁541~544にも着水するようになっていて、浴室壁541~544に着水した洗浄水は、当該浴室壁541~544との衝突によって排水口521方向に反射されて壁面反射水を生成するようになっていて、当該壁面反射水は、洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部に堆積した角質を剥ぎ取りながら、剥ぎ取った角質を排水口521に導くように流動するようになっている。
【0247】
このような実施形態によれば、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質を除去する黒カビ抑制工程S1を実施することによって、洗い場床520上の角質を顕著に低減することができ、ひいては洗い場床520におけるカビの発生を顕著に抑制することができる。
【0248】
そして、黒カビ抑制工程S1を実施する際、洗い場床520に残存する角質を剥ぎ取って排水口521に余すことなく除去することが重要である。この角質の除去を散水だけで行う場合、角質が洗い場床520の床面に再付着することなく排水口521に至るようにすることが重要である。
ここで、排水口521に指向するように、複数のノズル部を異なる角度で設定しておけば、角質を残すことなく上手に取り除くために有効であると考えられる。しかしながら、このような対応は、浴室500に複数のノズル部を設置する必要があってスペース上の問題があるし、各ノズル部に対する給水配管も複雑になるため高コストとなって現実的でない。
本実施形態のように、単一のノズル部10aを浴室500の一側に設定することが一般的であるが、この場合には、ノズル部10aから散水される洗浄水の全てを排水口521に指向させることが容易でなく、散水される洗浄水の力で角質が浴室500の壁際に追いやられるような状況も生じ得て、結果的に黒カビを発生させてしまうことがあり得る。
具体的には、シャワーや掛け湯によって、洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部に角質が堆積してしまうことがある。この堆積した角質を除去するに際して、一側から散水すると、全ての方向において角質を角部から剥ぎ取る力を作用させることができず、少なくともその一部では、散水力が角部に角質を押し付けるように作用してしまう。角質を剥がしたい床面に散水した時でさえ、散水によって床面から剥ぎ取られた角質が、前記角部に積極的に堆積されるように作用してしまうこともある。
本件発明者は、洗い場床520の一側から洗浄水を散水する形式において、コストを上げることなく角質を上手に除去でき、また、壁際に角質を追いやって集めてしまうということもない、優れた散水形態を見出したものである。
具体的には、ノズル部10aから散水される洗浄水の一部を、積極的に壁に衝突するように散水するのである。このような簡単な構成によって、ノズル部10aから散水される排水口521方向に指向していない洗浄水を、排水口521方向に方向転換させることができる。すなわち、浴室壁500による反射の採用という簡単な工夫で、散水された洗浄水が確実に排水口521方向に指向しながら流動して角質を取り除き、取り除いた角質を排水口521に導く、ということを可能にしたものである。この壁面反射水は、壁からの落下によって洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部(洗い場床520の壁際)の角質を剥ぎ取ることができ、当該角部での角質の堆積も防止することができ、確実に角質を排水口521に流すことができる。
【0249】
また、本実施形態では、浴室500の一側にカウンター530が設置されており、ノズル部10aは、カウンター530側に配置されている。そして、黒カビ抑制工程S1において、ノズル部10aから散水される洗浄水の少なくとも一部は、カウンター530側の浴室壁542に着水するようになっており、黒カビ抑制工程S1において、ノズル部10aから散水される洗浄水の他の少なくとも一部は、カウンター530側の浴室壁542とは異なる浴室壁541、543、544に着水するようになっており、カウンター側の浴室壁542に着水した洗浄水によって生成される壁面反射水の水勢は、カウンター側の浴室壁とは異なる浴室壁541、543、544に着水した洗浄水によって生成される壁面反射水の水勢よりも、高くなっている。
【0250】
角質が最も残留しているのは、人が体を洗浄するカウンター530側の部位である。また、この部位では、使用者が踏むなどして、床面に強固に角質が張り付いている場合もある。そこで、カウンター530側にノズル部10aを設けておくことで、カウンター530側の洗い場床520を洗浄するための洗浄水の水勢を高く維持することができる。これによって、強固に貼りついた角質であっても、確実に除去することができる。
【0251】
また、本実施形態では、ノズル部10aは、回転しながら、浴室壁541~544と洗い場床520とに洗浄水を散水するようになっており、洗い場床520に散水される洗浄水は、先行して散水されて浴室壁541~544に着水した洗浄水によって生成された壁面反射水に衝突するようになっており、洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部に直接的には作用しないようになっている。
【0252】
壁によって反射される洗浄水は、反射によって拡散するため、洗い場床520の全面において角質の取り残しがないように角質を確実に除去するには、高度な洗浄制御が必要である。また、洗い場床520において一側から洗浄水を散水すると、当該一側と対面する角部に向かう洗浄水の水勢が浴室壁に衝突する(直交する)ため、当該角部に角質を押し付けるような作用が生じてしまう。そこで、壁面反射水で角部の角質を除去させるだけでなく、洗い場床520の洗浄は洗い場床520に着水する洗浄水によって行うこととし、更に、洗い場床520に着水する洗浄水を、角部に角質を押し付けるような作用を発生させないよう、先行して散水されて浴室壁541~544に着水した洗浄水によって生成された壁面反射水に衝突させることにより、角部の角質除去、床の角質除去、を確実なものとできる。また、ノズル部10aは1つ配置されれば足りるため、コストも大幅に低減でき、施工も容易である。
【0253】
また、本実施形態のノズル部10aは、上下方向が横方向より長いノズル開口を有している。
【0254】
例えばノズル部10aが回転しながら洗浄水を散水する場合、浴室壁541~544による反射角度は逐次変わる。このように反射角度が変化する壁面反射水に対して、散水される洗浄水が反射を遮るようなことがあると、角部における角質除去の不良を招いたり、角部に角質を押しつける力を作用させてしまうことがある。すなわち、如何なる状況でも浴室壁541~544による反射を安定的に行うことが好ましい。
そこで、上下方向が横方向より長いノズル開口11a、12aを採用することで、散水位置を狭く安定させることが有効である。これにより、壁面反射水の反射角度の変化の影響を抑制することができ、安定した角質除去が可能となる。また、一つのノズル部10aで浴室壁541~544への散水と洗い場床520への散水とを同時に行える。更に、洗い場床520に着水する洗浄水を先行して散水されて浴室壁541~544に着水した洗浄水によって生成された壁面反射水に衝突させる制御についても、一つのノズル部10aであるため、散水のタイミングを安定化でき、確実に実施することができる。従って、角部に角質を押し付けるような作用が発生してしまうことを、より確実に防止することができる。
【0255】
<壁面反射水を追い越さない散水の活用>
別の観点では、以上に説明してきた本実施形態の浴室500は、当該浴室500の洗い場を構成する洗い場床520と、洗い場床520上の残水を排水するために洗い場床520に設けられた排水口521と、洗い場床の周囲から立ち上がる浴室壁541~544と、当該浴室500の一側に設けられ回転しながら洗い場床520上に洗浄水を散水する単一のノズル部10aを有する洗浄手段と、洗浄手段のノズル部10aを制御する制御部30と、を備えており、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1を実施するようになっている。
そして、黒カビ抑制工程S1において単一のノズル部10aから同一時間に散水される洗浄水が、浴室壁541~544の下部に着水する第1着水部と、洗い場床520の床面上に着水する第2着水部と、を有している。
第1着水部は、当該浴室壁541~544の下部によって反射されて壁面反射水を生成するようになっており、当該壁面反射水は、排水口521の方向に方向転換されて、洗い場床520の床面上に残存する角質を取り除きながら洗い場床520の床面上を排水口521に向かって流動するようになっている。
そして更に、制御部30は、黒カビ抑制工程S1を実施する際、所定の第1時間に散水される洗浄水の第1着水部によって生成される壁面反射水が洗い場床520の床面上を流動する過程において、当該壁面反射水がその後の所定の第2時間に散水される洗浄水の第2着水部によって追い越されることがないように、前記壁面反射水が流動する領域に追従するようにノズル部10aの回転を制御するようになっている。
【0256】
このような実施形態によれば、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質を除去する黒カビ抑制工程S1を実施することによって、洗い場床520上の角質を顕著に低減することができ、ひいては洗い場床520におけるカビの発生を顕著に抑制することができる。
【0257】
そして、黒カビ抑制工程S1を実施する際、洗い場床520に残存する角質を剥ぎ取って排水口521に余すことなく除去することが重要である。この角質の除去を散水だけで行う場合、角質が洗い場床520の床面に再付着することなく排水口521に至るようにすることが重要である。
ここで、排水口521に指向するように、複数のノズル部を異なる角度で設定しておけば、角質を残すことなく上手に取り除くために有効であると考えられる。しかしながら、このような対応は、浴室500に複数のノズル部を設置する必要があってスペース上の問題があるし、各ノズル部に対する給水配管も複雑になるため高コストとなって現実的でない。
本実施形態のように、単一のノズル部10aを浴室500の一側に設定することが一般的であるが、この場合には、ノズル部10aから散水される洗浄水の全てを排水口521に指向させることが容易でなく、散水される洗浄水の力で角質が浴室500の壁際に追いやられるような状況も生じ得て、結果的に黒カビを発生させてしまうことがあり得る。
本件発明者は、洗い場床520の一側から洗浄水を散水する形式において、コストを上げることなく角質を上手に除去でき、また、壁際に角質を追いやって集めてしまうということもない、優れた散水形態を見出したものである。
具体的には、ノズル部10aから散水される洗浄水の一部を、積極的に壁に衝突するように散水するのである。このような簡単な構成によって、ノズル部10aから散水される排水口521方向に指向していない洗浄水を、排水口521方向に方向転換させることができる。すなわち、浴室壁500による反射の採用という簡単な工夫で、散水された洗浄水が確実に排水口521方向に指向しながら流動して角質を取り除き、取り除いた角質を排水口521に導く、ということを可能にしたものである。この壁面反射水は、壁からの落下によって洗い場床520の周囲と浴室壁541~544との角部(洗い場床520の壁際)の角質を剥ぎ取ることができ、当該角部での角質の堆積も防止することができ、確実に角質を排水口521に流すことができる。
更に、本件発明者は、ノズル部10aの回転、特には回転速度、をコントロールすることも有効であることを知見した。壁面反射水は、最も先に洗い場床520を流れるため、残存する角質を最も多く含み得る。これを追い越さないように散水することで、折角取り除いた角質を洗浄が完了した領域に逆戻りさせたり、再付着させたり、ということが抑制される。そのような態様で洗い場床520への更なる洗浄水の散水を行うことにより、角質の除去性を高めることができる。これにより、1本のノズル部10aであっても、洗い場床520の「きれいな状態」の長持ちを実現できるのである。
【0258】
また、本実施形態の制御部30は、第1時間よりも後の第2時間に散水される洗浄水の第2着水部が、第1時間に散水される洗浄水の第1着水部によって生成される壁面反射水を追い越すことなく合流することによって、当該壁面反射水が洗い場床520の床面上を流動する過程において発生する拡散と水位低下とを補う、というようにノズル部10aの回転を制御するようになっている。
洗い場床520に散水された洗浄水は、洗い場床520を流動する過程で拡散して、水位が必ず低下する。このような水位の低下により、折角除去した角質を洗い場床に再付着させてしまうことがあり得る。そこで、先に着水された第1着水部によって生成された壁面反射水を追い越すことなく合流する(追いかける、追従する)ように後の時間に第2着水部を着水させる、というようにノズル部10aの回転を制御することによって、角質除去性を向上させることができる。特に、拡散に伴う水位低下を抑制することによって、角質の再付着を効果的に抑制することができる。
【0259】
また、本実施形態の制御部30は、第1時間よりも後の第2時間に散水される洗浄水の第2着水部が、第1時間に散水される洗浄水の第1着水部によって生成される壁面反射水を追い越すことなく合流し、かつ、壁面反射水を排水口521の方向へ流動させる推進力を付与する、というようにノズル部10aの回転を制御するようになっている。
推進力を付与する、というのは、合流後の壁面反射水(排水流れ)の速度が維持ないし増大されることを意味している。この場合、壁面反射水中に多く含まれ得る角質の排水口521までの送り速度を高めることができる。移動速度が低いと、角質の除去力低下だけでなく、角質の再付着も多くなってしまうところ、移動速度を高めることにより、時間の短縮とともに、角質の除去力の向上及び再付着防止を実現できる。
【0260】
また、本実施形態の制御部30は、ノズル部10aの回転速度を、予め決定した位置で変更するように構成されている。
洗浄水は、浴室壁541~544による反射角度によって、反射される力が変わる。また、散水距離が長いと、散水エネルギが低くなって壁によって反射される力も低下して、着水後の洗浄水の流動速度が低くなる。そのような傾向に合わせて、ノズル部10aの回転速度を調整して散水水量を調整することで、角質の除去力や再付着防止性能を維持ないし向上させることができる。
【0261】
更に、本実施形態の制御部30は、ノズル部10aから遠い領域へ洗浄水を着水させる際には、ノズル部10aから近い領域へ洗浄水を着水させる際と比して、ノズル部10aの回転速度が低いというようにノズル部10aの回転を制御するようになっている。
散水距離が長いと、散水エネルギが低くなって壁によって反射される力も低下して、着水後の洗浄水の流動速度が低くなる。そのような傾向に合わせて、ノズル部10aの回転速度を調整して散水水量を調整することで、角質の除去力や再付着防止性能を維持ないし向上させることができる。
【0262】
<流動水を脈動させることの効果>
以上に説明してきた本実施形態の洗浄装置100は、浴室500の洗い場を構成すると共に排水口521を有する洗い場床520を洗浄する浴室洗い場床用洗浄装置であって、洗い場床520上に洗浄水を散水するノズル部10aを有する洗浄手段と、ノズル部10aを制御する制御部30と、を備えている。そして、制御部30が、ノズル部10aを制御することによって、洗い場床520に残存する黒カビの発生原因である角質が当該洗い場床520から排水口521に排出されるように洗浄水を散水する黒カビ抑制工程S1を実施するようになっている。
そして、本実施形態においては、黒カビ抑制工程S1時において、洗い場床520に付着する角質を剥がすエネルギを波の上昇するエネルギによって作り出すように、洗い場床520に散水された洗浄水は、排水口521に至るまで、連続的な波を発生しながら流動するようになっている。
【0263】
黒カビ抑制工程S1を実施する際、洗い場床520に残存する角質を剥ぎ取って排水口521に余すことなく除去することが重要である。この角質の除去を散水だけで行う場合、洗い場床520上に角質が付着した状態であると、多くの洗浄水を散水する等の対策が必要である。しかし、多量の洗浄水を散水することは、コスト面でも不利であるし、洗浄中には浴室500に入室できないため、長時間の入室規制が必要になるといった利便性の面での問題もある。
本件発明者は、長年の研究の末、洗い場床520に付着した状態の角質について、多量の洗浄水を散水しなくても、短時間で綺麗に剥ぎ取る技術を見出した。同時に、角質を剥ぎ取って排水口521に排出する搬送過程で洗い場床に角質が再付着するという問題についても解決できる技術を見出した。
具体的には、本実施形態において、洗い場床520上に散水される洗浄水が、排水口521に至る過程の間、連続的な波を発生させながら流動することを特徴とする。波の発生に伴う振幅の発生によって、洗い場床520の床面に対する上方側へのエネルギが発生する。この上昇エネルギによって、洗い場床520に付着した角質を洗い場床520から剥がすことができるのである。そして、角質は、一旦洗い場床520から剥がすと、水面上を浮遊するか、もしくは、水中に含まれてしまうため、波の振幅に伴う下方側へのエネルギによって影響される程度は低い。すなわち、角質にとって、波の影響は、上昇エネルギによる寄与の方が顕著に大きい。
要するに、波(脈動)を発生させることで、上手にかつ綺麗に角質を剥ぎ取ることができるのである。また、この波を、排水口521に至るまでの過程で、連続的に作り出すことが特に有効である。これによって、洗い場床520の全面において角質を満遍なく除去でき、また、剥ぎ取った角質に上昇エネルギを連続的に作用させることができるため、洗い場床520への角質の再付着をより確実に抑制できる。
図30は、波が角質を運ぶ様子を示す模式図であり、図30(a)は概略平面図であり、図30(b)は、概略断面図である。
【0264】
本実施形態では、黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aから散水される洗浄水は、洗い場床520に付着する角質に対して最初に接触して当該角質を洗い場床520から剥がすための第1着水部(第1流動水となる:図23参照)と、当該第1着水部の洗い場床520の通過部位に着水する第2着水部(第2流動水となる:図23参照)と、を有している。
そして、本実施形態では、制御部30は、黒カビ抑制工程S1を実施する際、第1着水部が洗い場床520の前記通過部位を流動する過程において、当該第1着水部が第2着水部によって合流されて排水口521に向かう方向の推進力が増大されるように、ノズル部10aの回転を制御するようになっている。
浴室500では、散水された洗浄水は、洗い場床520を排水口521に向かって移動する過程で、洗い場床520に広く拡散しながら進むため、洗浄水の水位は下がっていく。この水位低下によって、角質が洗い場床520と接触することにより、角質の再付着が起こりやすくなる(図31参照)。本実施形態によれば、前記合流によって水位を上げることができる。すなわち、波の上昇エネルギのみならず、この水位増大の効果によっても、角質の再付着の防止効果を高めることができる。
更に、本実施形態では、波の上昇エネルギを確実に作り出すことができる。すなわち、第1着水部に第2着水部が合流する時に第1着水部に対して第2着水部が排水口521方向への推進力を増大させるようにノズル部10aの回転速度が制御されることにより、第1着水部に第2着水部が勢いを増すように合流して、第1着水部の波の上昇エネルギを確実に作り出せる(図32参照)。これにより、第1着水部は、より多くの角質を剥ぎ取れるようになり、より効率的に洗い場床の角質を除去できる。
【0265】
更に、本実施形態では、黒カビ抑制工程S1においてノズル部10aから散水される洗浄水は、前記第2着水部によって合流された後の前記第1着水部の洗い場床520の第2通過部位に着水する第3着水部を更に有している。そして、制御部30は、黒カビ抑制工程S1を実施する際、前記第2着水部によって合流された後の前記第1着水部が洗い場床520の前記第2通過部位を流動する過程において、当該第1着水部が前記第3着水部によって更に合流されて排水口521に向かう方向の推進力が更に増大されるように、ノズル部10aの回転を制御するようになっている(図33参照)。
【0266】
このような本実施形態では、波の上昇エネルギを更に確実に作り出すことができる。すなわち、第2着水部によって合流された後の第1着水部に第3着水部が合流する時に当該第1着水部に対して第3着水部が排水口521方向への推進力を更に増大させるようにノズル部10aの回転速度が制御されることにより、当該第1着水部に第3着水部が勢いを増すように合流して、当該第1着水部の波の上昇エネルギを更に確実に作り出せる。これにより、第2着水部及び第3着水部によって合流された第1着水部は、更に多くの角質を剥ぎ取れるようになり、より効率的に洗い場床の角質を除去できる。更にその後、第4着水部以後が順次に合流して、前記第1着水部の波の上昇エネルギを更に確実に作り出すようになっていてもよい。
【0267】
また、本実施形態の洗い場床520には、図30(b)に示すように、第1着水部または第2着水部が着水する方向に対して非平行である方向に延びる溝522が形成されている。
これにより、散水された洗浄水(第1着水部または第2着水部)が洗い場床520に衝突した際や洗い場床520上を流れる際に、洗浄水が溝522に衝突することによっても上下方向の波(水の脈動)が形成される。このように水の流れが乱れることにより、洗い場床520から角質が剥がれ易くなる。また、洗浄水が洗い場床520上に広がって流れる際にも、当該波によって角質の床への再付着が抑制される。これにより、散水される洗浄水の水勢や水量が小さくても、角質を床から確実に除去できる。
【0268】
また、本実施形態の制御部30は、ノズル部10aから当該ノズル部10aに対向する浴室壁541に向けて第2着水部を着水させる際には、ノズル部10aの回転速度が低い、というようにノズル部10aの回転を制御するようになっている。
散水距離が長いと、散水エネルギが低下して、着水後の洗浄水の流動速度が低くなる。そのような傾向、特に第2着水部の傾向に合わせて、ノズル部10aの回転速度を調整することで、第1着水部への合流による連続的な波の形成を調整しやすくなり、角質の除去力や再付着防止性能を維持ないし向上させることができる。
【0269】
<大波と小波とを発生させることの効果>
更に、本実施形態では、前記連続的な波は、相対的に小さな振幅を有する小波と、相対的に大きな振幅を有する大波と、の少なくとも2種類の波を含んでいる。
【0270】
本実施形態によれば、小波は、主に、再付着防止のための波として作用し、大波は、床面から角質を剥がす大きな力を生む波として作用する。例えば大波の発生場所等を最適化することで、角質が堆積しやすい場所を狙い撃ちすることができる。これにより、小波の上昇エネルギでは剥がし難い角質を効果的に除去することができ、より一層角質除去性能を高めることができる。
【0271】
また、本実施形態では、小波(主にステッピングモータの脈動に起因する)と大波(主に流動水の合流に起因する)とが重畳して発生されるようになっており、洗い場床520に散水された洗浄水は、排水口521に至るまでの過程において、小波の発生頻度が大波の発生頻度より多い、というように流動するようになっている。
【0272】
洗い場床520の床面上に洗浄水を整然と流すだけの態様では、角質を剥がし難い場合があり、剥がされた角質も洗い場床520に再付着しやすい。従って、本実施形態のように小波の発生頻度を大波の発生頻度より多くして、連続的と言える程に高頻度に小波を生成することが、角質の再付着防止のために有効である。一方で、角質が堆積しやすい洗い場床520の周縁などでは、洗浄水の散水だけては付着力が強くて剥がれにくい場合がある。このような領域に合わせる様に大波を作ることで、より確実に角質を除去できる。
【0273】
また、本実施形態の小波及び大波は、ノズル部10aの回転送り速度を変化させることによって、発生されるようになっている。
波の生成方法としては、様々な形態が採用可能であり、例えば、洗い場床520の床面に振動を与える方法や、気流によって振動を生じさせる方法なども採用可能である。しかし、回転するノズル部10aの回転送り速度を変化させることによって、より簡単に波を発生することができる。この場合、簡単かつ安価な態様でありながら、浴室500において最適な構造であって、より確実な効果を得ることができる。
【0274】
また、本実施形態においては、黒カビ抑制工程S1において、ノズル部10aから同一時間に散水される洗浄水は、浴室壁541~544の下部に着水する第1着水部と、洗い場床520の床面上に着水する第2着水部と、を有しており、第1着水部は、浴室壁541~544の下部によって反射されて壁面反射水を生成するようになっており、当該壁面反射水は、排水口521の方向に方向転換されて、洗い場床520の床面上に残存する角質を取り除きながら洗い場床520の床面上を排水口521に向かって流動するようになっている。
そして、制御部30は、黒カビ抑制工程S1を実施する際、所定の第1時間に散水される洗浄水の第1着水部によって生成される壁面反射水が洗い場床520の床面上を流動する過程において、当該壁面反射水がその後の所定の第2時間に散水される洗浄水の第2着水部によって合流されて排水口521の方向に移動する推進力を付加されるように、前記壁面反射水が流動する領域に追従するようにノズル部10aの回転を制御するようになっている。そして、前記壁面反射水と前記所定の第2時間に散水される洗浄水の第2着水部との合流によって、前記大波が発生されるようになっている。
本実施形態によれば、浴室壁541~544による反射の採用という簡単な工夫で、散水された洗浄水が確実に排水口521方向に指向しながら流動して角質を取り除き、取り除いた角質を排水口521に導く、ということが可能である。この壁面反射水によって、洗い場床520の壁際に角質を溜めることもなく、確実に角質を排水口521に流すことができる。
角質は、洗い場床520の周縁と浴室壁541~544との角部に堆積しやすく、また、当該角部に堆積した角質を剥がす力を散水によって発生させることは難しい。しかし、壁面反射水が角質を剥ぎ取るように流動するため、角部のような角質を剥がし難い領域においても角質も剥がすことができる。
また、壁面反射水がその後の所定の第2時間に散水される洗浄水の第2着水部によって合流されて排水口521の方向に移動する推進力を付加されることによっても、角質を確実に排水口521まで搬送して除去することができ、角質の再付着も防止できる。
更に、壁面反射水と前記所定の第2時間に散水される洗浄水の第2着水部との合流によって、大波が発生されるようになっていることにより、確実に狙った位置において大波が発生され得て、角質を剥がし難い領域においても効果的に角質も剥がすことができる。そして、その手法も、合流タイミングを合わせる様に、ノズル部10aの回転の送り速度を制御すれば足りるため、比較的容易である。
浴室500では、散水された洗浄水は、洗い場床520を排水口521に向かって移動する過程で、洗い場床520に広く拡散しながら進むため、洗浄水の水位は下がっていく。この水位低下によって、角質が洗い場床520と接触することにより、角質の再付着が起こりやすくなる。本実施形態によれば、前記合流によって水位を上げることができる。すなわち、波の上昇エネルギのみならず、この水位増大の効果によっても、角質の再付着の防止効果を高めることができる。
【0275】
本実施形態におけるノズル部10aの回転は、前述の通り、ステッピングモータによって駆動されるようになっている。そして、当該ステッピングモータの速度変化によって、ノズル部10aの回転に微小の速度変化を付与することで、前記小波が発生されるようになっている。
小波と大波とを重合させて発生させる制御は、一般には容易ではない。特に、大波は、タイミング合わせが必要であるため、詳細な設計ないし制御が必要である。しかしながら、小波は、角質の再付着防止のために略連続的に発生されれば足りる性質のものであるから、簡易な構成によって発生されることが好ましい。
本実施形態において、ステッピングモータは、1ステップずつ送る駆動方式であるため、構造上、1ステップ送る度に自動的(機械的)に速度変化を起こす。言い換えると、断続的な送り方式である。そして、ステッピングモータの当該速度変化が微小で視認できない程度であっても、ノズル部10aの回転によって拡大されると、着水位置では大きく拡大され、より大きな速度変化として現れ得る。そして、当該速度変化により、着水位置での散水量の変化が生み出され、小波が発生され得る。
すなわち、本実施形態のようにステッピングモータを用いれば、自動的にノズル部10aを送るだけで、小波を作ることができる。換言すれば、ステッピングモータを採用し、ノズル部10aによって微小振動を拡大するという機械的な構成によって、実用的に有用な小波を簡易に作り出すことができる。
【0276】
また、本実施形態のノズル部10aは、図27等に基づいて前述した通り、予め決定された位置において一旦回転を停止した後、再度回転するようになっていることが好ましい。
洗い場床520を排水口521方向に流れる壁面反射水に対して、全ての領域で合流タイミングを最適化するためには、非常にゆっくりとノズル部10aを回転させなければならない領域が存在し得る。反射力が弱い領域では、壁面反射水が流れる流速が遅いためである。非常にゆっくりとノズル部10aの回転を制御することは容易ではなく、すなわち、ゆっくり移動させる過程で散水を行うと誤ったタイミングで合流しやすくなり、角質を上流側に戻してしまう場合さえあり得る。そこで、送りを一旦停止させることで、タイミングの最適化制御をより簡単かつ正確に実施できる。
【0277】
また、制御部30は、ノズル部10aの前記予め決定された位置での一旦停止制御と、ノズル部10aの予め決定された領域別での速度可変制御と、の両方を実施できるようになっていることが更に好ましい。
ノズル部10aの回転の速度制御について、一旦停止制御と速度可変制御との両方を実施することによって、より高い自由度で好ましい合流タイミングの制御を実施することができる。
【0278】
また、本実施形態の制御部30は、ノズル部10aから遠い領域へ洗浄水を着水させる際には、ノズル部10aから近い領域へ洗浄水を着水させる際と比して、ノズル部10aの回転速度が低いというようにノズル部10aの回転を制御するようになっいる(図8乃至図11図28及び図29参照)。
そして、前記予め決定された位置は、洗浄水の着水位置が洗い場床520のコーナー部に対応する位置であることが好ましい(図27参照)。
散水距離が遠い領域では、洗浄水の流速が低いため、壁面反射水の流速も低い。更に、洗い場床520の四隅であるコーナー部では、洗浄水は2つの壁によって反射され得る。そして、四隅のコーナー部では、角質が堆積しやすく、当該コーナー部から角質を上手に排出させることが重要で、遅れて散水される洗浄水の第2着水部で後戻りさせてしまうことは回避すべきである。
そのようなコーナー部では、ノズル部10aの回転を停止させ、壁面反射水がゆっくりと排水口521方向へ流動することを促すことが好ましく、更に、壁面反射水が排水口521方向に十分に流れた後に遅れて散水される洗浄水の第2着水部を合流させることが、コーナー部に洗浄水を戻すことを回避する上でも有効である。
ノズル部10aの回転を停止させて合流を遅らせると、水位低下による角質の再付着の懸念は高まる可能性があったが、コーナー部では散水された水が集まって十分な水量が見込めるため、合流を遅らせても水位低下による再付着は生じないことが確認できている。
【0279】
また、本実施形態の洗い場床520には、排水口521に向かう排水勾配が設定されている。そして、前記予め決定された位置は、洗浄水の着水位置が排水勾配の下流にあたる洗い場床520のコーナー部に対応する位置であり、更に、ノズル部10aは、洗浄水の着水位置が排水勾配の上流にあたる洗い場床520の別のコーナー部に対応する位置において、前記予め決定された位置における停止時間より短い時間だけ一旦停止するか、もしくは、減速するようになっていることが好ましい場合がある。
下流側の、例えば排水口521が設定されている側のコーナー部には、上流側から集められてきた角質が溜まりやすい。また、当該コーナー部は、排水勾配が終わる領域であって、洗浄水が壁に衝突してその速度がゼロになった後に更に横方向に移動して排水口521に進む、という領域である。従って、壁への衝突によって洗浄水が飛び散っているし、流れも遅いため、遅れて散水される洗浄水の第2着水部の合流タイミングは、壁面反射水が落ち着いて十分に排水口521方向に横移動し始めた後であることが好ましい。従って、そのようなコーナー部に対応する位置において、ノズル部10aの回転が一旦停止することが好ましいのである。この場合、角質を含んで飛び散っていた洗浄水を、遅れて散水される洗浄水第2着水部が綺麗に取り除くことができる。
また、上流側のコーナー部についても、下流側のコーナー部に対応する位置における停止時間より短い時間だけ一旦停止するか、もしくは、減速するようになっていることが、角質除去性能を高める上で好ましい。
【0280】
<ノズル部の汚れ対策>
以上の実施形態では、黒カビ抑制工程S1の実施を開始する際、ノズル部10aがカウンター530の下部の第2壁542に向けて略垂直に水道水を着水させることができる位置(初期位置P1)から、ノズル部10aの回転が開始されるようになっている。このため、黒カビ抑制工程の開始の際にノズル部10aに汚れが生じていても、そのことによって生じ得る水道水の吐水方向の一時的な乱れの影響は、第2壁542に向けて略垂直に吐水される際に現れるに留まり、汚れは水道水の吐水によって直ちに飛ばされて消失するため、その後に洗い場床520の中央部へ吐水される際には現れない。従って、ノズル部に一時的な汚れが生じていても、洗い場床520の中央部への黒カビ抑制工程S1の吐水制御を設計通りに実施することができる。
【0281】
本件発明者によれば、黒カビ抑制工程S1の実施を開始する初期位置は、第2壁542に向けて略垂直に水道水を着水させることができる位置に限られず、第2壁542のノズル部10aとの最接近部位を中心に±10°の範囲内に水道水を着水させることができる位置であれば、前記の効果を得ることができる。
【0282】
また、本実施形態のように、浴室壁の一部に隣接してカウンター530が設けられる場合には、ノズル部10aはカウンター530の下方に配置されていることが好ましい。この場合、カウンター530によってノズル部10aが隠されるような態様となるため、人体の洗浄に使用された石鹸やシャンプーなどのかすによってノズル部10aが汚れることが防止される。この時、第2壁542とノズル部10aとの間の最短距離は、例えば80cm以内である。
【0283】
また、本実施形態のように、ノズル部10aは、浴槽壁の高さよりも低い位置に配置されていることが好ましい。この場合、ノズル部10aからの水道水ないし低濃度殺菌水の吐水方向を水平方向以下に設計しておけば、ノズル部10aから吐水される水道水ないし低濃度殺菌水が浴槽壁を超えて浴槽内に入ってしまうことがない。
【0284】
<ドアとの関係>
また、浴室500は、一般に、出入口と、出入口を開閉するドアと、を更に備えている。制御部30は、黒カビ抑制工程S1の実施の際に、ノズル部10aから洗い場床520上のドアの手前の領域に水道水を着水させ、ドアには散水させないようになっており、且つ、ピンクスライム抑制工程S3の実施の際に、ノズル部10aから洗い場床520上のドアの手前の領域に低濃度殺菌水を着水させ、ドアには散水させないようになっていることが好ましい。
【0285】
この場合、ドアが開いたまま黒カビ抑制工程S1及びピンクスライム抑制工程S3が実施されても、浴室500の外に水道水や低濃度殺菌水が飛散してしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0286】
10a ノズル部
10x 回転軸
11a 第1ノズル開口
12a 第2ノズル開口
13 貯水部
14a 第1貯水部
14b 第2の貯水部
17 モータ
20 低濃度殺菌水生成部
30 制御部(散水制御部、回転制御部)
30a 実行条件変更手段
30b 手動変更手段
35 操作部
51 給水管
52 給湯管
53a、53b ストレーナ
54a 第1電磁弁
54b 第2電磁弁
55 調圧弁
56 逆止弁
57 バキュームブレーカ
100 洗浄装置
500 浴室
510 浴槽
520 洗い場床
521排水口
530 カウンター
531 天板
532 下カバー
541~544 第1壁~第4壁
図1
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