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特許7159621電圧発生装置、電源制御装置、画像形成装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電圧発生装置、電源制御装置、画像形成装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20221018BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20221018BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221018BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G21/00 398
H02M7/48 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018105151
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019211525
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】眞野 剛
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-065104(JP,A)
【文献】特開2000-147923(JP,A)
【文献】特開2014-202987(JP,A)
【文献】特開平03-156476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0013409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/06
13/14-13/16
13/34
15/00
15/02
15/06
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
H02M 3/00-3/44
7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、前記直流電源に接続された交流電源とを有し、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を生成して回転体に印可する電圧発生装置であって、
前記交流電源の出力電圧の電圧波形の周期毎に算出された電圧実効値の変動と、
前記交流電源の出力電流の電圧波形の周期毎に算出された電流実効値、又は、前記出力電流の電流波形に基づき検出される正電流ピーク値及び負電流ピーク値を加算した電流ピーク値の何れか一方の変動と、が逆位相であるか否かを判定する変動位相判定部と、
前記変動位相判定部による判定結果が逆位相であるとき、前記出力電流から算出される正電流実効値及び負電流実効値から、PI制御における比例ゲイン、又は、基準電圧を算出し、前記変動位相判定部による判定結果が逆位相でないとき、比例ゲイン、又は、基準電圧を、規定の値とする制御を行う電圧制御部と、
を有する電圧発生装置。
【請求項2】
出力インピーダンスを記憶する出力インピーダンス記憶部と、
前記出力電流から前記正電流実効値を算出する正電流実効値算出部と、
前記出力電流から前記負電流実効値を算出する負電流実効値算出部と、
前記出力インピーダンスと前記正電流実効値とに基づく第1補正係数の算出と、前記出力インピーダンスと前記負電流実効値とに基づく第2補正係数の算出とを行う補正係数算出部と、を有し、
前記電圧制御部は、前記変動位相判定部による判定結果が逆位相であるとき、前記出力電圧が正である場合に前記第1補正係数を用いてゲイン補正を行い、前記出力電圧が負である場合に前記第2補正係数を用いてゲイン補正を行う請求項1記載の電圧発生装置。
【請求項3】
前記出力電圧から前記電圧実効値を算出する電圧実効値算出部と、
前記出力電流から前記電流実効値を算出する電流実効値算出部と、を有する請求項2記載の電圧発生装置。
【請求項4】
前記電流実効値算出部は、前記正電流実効値算出部と、前記負電流実効値算出部と、前記正電流実効値と前記負電流実効値とを加算して前記電流実効値を算出する加算部とで構成される請求項3記載の電圧発生装置。
【請求項5】
前記電圧実効値算出部から出力される前記電圧実効値を一定周期ごとに平均化して平均電圧実効値を出力する第1平均化部と、
前記電流実効値算出部から出力される前記電流実効値を前記一定周期ごとに平均化して平均電流実効値を出力する第2平均化部と、をさらに有し、
前記変動位相判定部は、前記電圧実効値算出部から出力される前記電圧実効値の前回の出力値を基準とした大小関係と、前記電流実効値算出部から出力される前記電流実効値の前回の出力値を基準とした大小関係とが異なる場合に、前記出力電圧の変動と前記出力電流の変動とが逆位相であると判定する請求項4記載の電圧発生装置。
【請求項6】
出力インピーダンスを記憶する出力インピーダンス記憶部と、
前記出力電流から正電流ピーク値を検出する正電流ピーク値検出部と、
前記出力電流から負電流ピーク値を検出する負電流ピーク値検出部と、
前記出力インピーダンスと前記正電流ピーク値とに基づく第1補正係数の算出と、前記出力インピーダンスと前記負電流ピーク値とに基づく第2補正係数の算出とを行う補正係数算出部と、を有し、
前記電圧制御部は、前記出力電圧の変動と前記出力電流の変動とが逆位相であるとき、前記出力電圧が正である場合に前記第1補正係数を用いてゲイン補正を行い、前記出力電圧が負である場合に前記第2補正係数を用いてゲイン補正を行う請求項1記載の電圧発生装置。
【請求項7】
前記電圧制御部は、前記交流電源を制御するための基準正弦波を生成する基準正弦波生成部と、前記基準正弦波生成部により生成される基準正弦波の正負を判定する正負判定部とを有し、前記基準正弦波が正である場合に前記第1補正係数を用いてゲイン補正を行い、前記基準正弦波が負である場合に前記第2補正係数を用いてゲイン補正を行う請求項2記載の電圧発生装置。
【請求項8】
所定期間分の前記正電流実効値及び前記負電流実効値を記憶して、前記補正係数算出部に入力する電流実効値記憶部を有する請求項2記載の電圧発生装置。
【請求項9】
前記交流電源は、ハーフブリッジ回路またはフルブリッジ回路により構成されたスイッチング回路を有する請求項1ないし8何れか一項に記載の電圧発生装置。
【請求項10】
直流電源と、前記直流電源に接続された交流電源とを有し、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を生成して回転体に印可する電源部を制御する電源制御装置であって、
前記交流電源の出力電圧の電圧波形の周期毎に算出された電圧実効値の変動と、
前記交流電源の出力電流の電圧波形の周期毎に算出された電流実効値、又は、前記出力電流の電流波形に基づき検出される正電流ピーク値及び負電流ピーク値を加算した電流ピーク値の何れか一方の変動と、が逆位相であるか否かを判定する変動位相判定部と、
前記変動位相判定部による判定結果が逆位相であるとき、前記出力電流から算出される正電流実効値及び負電流実効値から、PI制御における比例ゲイン、又は、基準電圧を算出し、前記変動位相判定部による判定結果が逆位相でないとき、比例ゲイン、又は、基準電圧を、規定の値とする制御を行う電圧制御部と、を有する電源制御装置。
【請求項11】
請求項1ないし9何れか一項に記載の電圧発生装置と、
前記電圧発生装置から出力された電圧が印可される前記回転体としての帯電ローラと、
前記帯電ローラに近接して配置された感光体と、
を有する画像形成装置。
【請求項12】
直流電源と、前記直流電源に接続された交流電源とを有し、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を生成して回転体に印可する電源部の制御方法であって、
前記交流電源の出力電圧の電圧波形の周期毎に算出された電圧実効値の変動と、
前記交流電源の出力電流の電圧波形の周期毎に算出された電流実効値、又は、前記出力電流の電流波形に基づき検出される正電流ピーク値及び負電流ピーク値を加算した電流ピーク値の何れか一方の変動と、が逆位相であるか否かを判定し、
判定結果が逆位相であるとき、前記出力電流から算出される正電流実効値及び負電流実効値から、PI制御における比例ゲイン、又は、基準電圧を算出し、判定結果が逆位相でないとき、比例ゲイン、又は、基準電圧を、規定の値とする制御を行う、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧発生装置、電源制御装置、画像形成装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル複合機等の電子写真方式の画像形成装置では、感光体表面に帯電ローラ(回転体)を近接させ、この帯電ローラに電圧発生装置により発生された高電圧を印可することにより、感光体表面を所定の電位に一様に帯電させる。
【0003】
この電圧発生装置として、直流電源と、直流電源に接続された交流電源とを有し、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を生成して帯電ローラに印可する方式が知られている(特許文献1)。
【0004】
このような方式では、感光体表面の電位が印加電圧の直流成分と等しくなり、直流電圧を調整することで感光体表面の電位を制御することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような画像形成装置では、電圧発生装置から電圧が印可される作像部品等の負荷に変動が生じると、電圧発生装置の出力電圧の直流成分が一定にならず、感光体表面の帯電が一様でなくなる。これにより、色むら等の異常画像が発生してしまう。具体的には、作像部品である帯電ローラや感光体の歪み、帯電ローラと感光体とのギャップの変動等が生じると、負荷抵抗等が変動して負荷電流が変化する。この負荷電流の変動により、電圧発生装置から出力される出力電圧の交流成分の波形が正と負で非対称になる。この結果、出力電圧の直流成分が変動して、帯電ローラへの印可電圧が変動し、異常画像が発生する。
【0006】
開示の技術は、上記事情に鑑みてこれを解決すべくなされたものであり、負荷変動による出力電圧の直流成分の変動を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、直流電源と、前記直流電源に接続された交流電源とを有し、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を生成して回転体に印可する電圧発生装置であって、前記交流電源の出力電圧の電圧波形の周期毎に算出された電圧実効値の変動と、前記交流電源の出力電流の電圧波形の周期毎に算出された電流実効値、又は、前記出力電流の電流波形に基づき検出される正電流ピーク値及び負電流ピーク値を加算した電流ピーク値の何れか一方の変動と、が逆位相であるか否かを判定する変動位相判定部と、前記変動位相判定部による判定結果が逆位相であるとき、前記出力電流から算出される正電流実効値及び負電流実効値から、PI制御における比例ゲイン、又は、基準電圧を算出し、前記変動位相判定部による判定結果が逆位相でないとき、比例ゲイン、又は、基準電圧を、規定の値とする制御を行う電圧制御部と、を有する電圧発生装置である。
【発明の効果】
【0008】
負荷変動による出力電圧の直流成分の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態の電圧発生装置の構成を示す図である。
図3】電圧制御部の構成を示す図である。
図4】電源部の具体的な回路例を示す図である。
図5】電源部の等価回路を示す図である。
図6】負荷抵抗に流れる負荷電流と電圧降下量との関係を示す図である。
図7】負荷変動が生じた場合の電流波形の変動を例示する図である。
図8】負荷変動が生じた場合の電圧波形の変動を例示する図である。
図9】負荷変動による電流起因で変動が生じた場合における出力電流と出力電圧との時間変動を示す図である。
図10】電圧起因で変動が生じた場合における出力電流と出力電圧との時間変動を示す図である。
図11】電圧発生装置の動作を説明するフローチャートである。
図12】静的変動量測定部の動作を説明するフローチャートである。
図13】従来の電圧発生装置からの出力電流及び出力電圧の波形を例示する図である。
図14】第1実施形態の電圧発生装置からの出力電流及び出力電圧の波形を例示する図である。
図15】可変電圧と負荷電流との関係を示すグラフである。
図16】第2実施形態の電源制御部の構成を示す図である。
図17】第3実施形態の電圧制御部の構成を示す図である。
図18】第4実施形態の電源制御部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、電子写真方式の画像形成装置100の概略構成を示す図である。
【0011】
図1において、画像形成装置100は、電圧発生装置10、感光体2、帯電ローラ3、露光部4、現像器5、一次転写ローラ6、中間ベルト7、除電器8、及び高圧電源9を有する。電圧発生装置10は、電源部11、及び電源制御部(電源制御装置)12を有する。電源部11は、直流電源11bと、直流電源11bに接続された交流電源11aとを含む。
【0012】
帯電ローラ3は、ドラム状の感光体2の表面に近接して配置された回転体である。帯電ローラ3と感光体2とのギャップは、例えば、数十マイクロメートルである。
【0013】
電源制御部12は、交流電源11aと直流電源11bとの動作を制御し、電源部11に、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧を生成させる。この交流電圧の周波数は、例えば約2kHzである。直流電圧は、負電圧であり、例えば-700Vである。
【0014】
帯電ローラ3には、電源部11により生成された電圧が印可される。帯電ローラ3に電圧が印可されると、感光体2の表面と当該帯電ローラ3の表面の間に放電が発生し、感光体2の表面が所定の電位に帯電する。
【0015】
露光部4は、帯電した感光体2の表面に対して、画像信号に応じた露光を行う。この露光により、感光体2上に静電潜像が形成される。現像器5は、感光体2上にトナー像を現像させる。高圧電源9は、高電圧を一次転写ローラ6に印加する。感光体2上のトナー像は、一次転写ローラ6に高電圧が印加されることで、中間ベルト7に転写される。
【0016】
中間ベルト7に転写されたトナー像は、2次転写部によって記録材に転写され、その後に定着手段によって定着されることにより画像が形成される。除電器8は、光を照射することにより感光体2の表面の電荷を除去する。この後、感光体2の表面は再び帯電処理が行われる。
【0017】
なお、カラー印刷の場合には、同様の構成が4つあり、色毎に中間ベルトにトナー像を転写し、その後に2次転写部、定着手段に至る。
【0018】
図2は、第1実施形態の電圧発生装置10の構成を示す図である。図2において、電圧発生装置10に含まれる電源制御部12は、電圧実効値算出部30、電流実効値算出部31、平均化部32、変動位相判定部33、補正係数算出部34、補正係数設定部35、電圧制御部36、及び静的変動量測定部37を有する。また、電圧発生装置10には、第1全波整流回路40、直流成分除去回路41、及び第2全波整流回路42が含まれる。
【0019】
第1全波整流回路40は、電源部11から出力される出力電圧の交流成分を全波整流し、全波整流された電圧波形を出力する。電圧実効値算出部30は、第1全波整流回路40から入力される全波整流された電圧波形に基づき、電圧実効値Vrmsを算出する。ここで、電圧実効値Vrmsは、下式(1)で表される。V(t)は、電圧波形を表す。Tは、電圧波形の周期を表す。
【0020】
【数1】

電圧実効値算出部30は、周期Tごとに電圧実効値Vrmsを算出して出力する。
【0021】
直流成分除去回路41は、電源部11から出力される出力電流から直流成分を除去し、直流成分が除去された電流を出力する。第2全波整流回路42は、直流成分除去回路41から出力される電流を全波整流し、全波整流された電流波形を出力する。電流実効値算出部31は、第2全波整流回路42から入力される全波整流された電流波形に基づき、電流実効値Irmsを算出する。ここで、電流実効値Irmsは、下式(2)で表される。I(t)は、電流波形を表す。
【0022】
【数2】

電流実効値算出部31は、正電流実効値算出部31a、負電流実効値算出部31b、及び加算部31cにより構成される。正電流実効値算出部31aは、直流成分除去回路41により直流成分が除去された電流のうちの正電流の実効値である正電流実効値Iprmsを算出する。負電流実効値算出部31bは、直流成分除去回路41により直流成分が除去された電流のうちの負電流の実効値である負電流実効値Inrmsを算出する。ここで、正電流実効値Iprm及び負電流実効値Inrmsは、それぞれ下式(3)及び下式(4)で表される。
【0023】
【数3】
【0024】
【数4】

正電流実効値算出部31a及び負電流実効値算出部31bは、それぞれ周期Tごとに正電流実効値Iprms及び負電流実効値Inrmsを算出して出力する。
【0025】
加算部31cは、正電流実効値算出部31aから出力された正電流実効値Iprmsと負電流実効値算出部31bにより算出された負電流実効値Inrmsとを加算し、上述の電流実効値Irmsを算出する。すなわち、電流実効値算出部31は、周期Tごとに電流実効値Irmsを算出して出力する。
【0026】
平均化部32は、第1平均化部32a及び第2平均化部32bにより構成される。第1平均化部32aは、電圧実効値算出部30から出力される電圧実効値Vrmsを、一定周期である平均化周期Tcごとに平均化し、平均電圧実効値AVG(Vrms)を算出する。第2平均化部32bは、電流実効値算出部31から出力される電流実効値Irmsを、平均化周期Tcごとに平均化し、平均電流実効値AVG(Irms)を算出する。ここで、平均電圧実効値AVG(Vrms)及び平均電流実効値AVG(Irms)は、それぞれ下式(5)及び下式(6)で表される。nは、平均化周期Tcに対応するサイクル数を表す。すなわち、nは、平均化周期Tcの逆数に対応する。Vrms(i)は、サイクルiにおける電圧実効値Vrmsを表す。Irms(i)は、サイクルiにおける電流実効値Irmsを表す。なお、1サイクルは、1周期Tに対応する。
【0027】
【数5】
【0028】
【数6】

平均化周期Tcは、予め電源制御部12に含まれる記憶部に記憶されている。平均化周期Tcは、負荷電流の変動周期、すなわち、作像部品である帯電ローラ3や感光体2の径に基づいて算出される。ここでは、計算の簡単化のため、インダクタンスノイズ等の変動要因は無視する。負荷変動の周期は、感光体2より径が小さい帯電ローラ3の径に基づいて計算することが好ましい。例えば、帯電ローラ3の円周を40mm、線速度を352.8mm/sとすると、負荷変動の周期は、40/352.8≒113msとなる。平均化周期Tcを負荷変動の周期の1/10倍と設定すると、Tc=11.3msとなる。
【0029】
上述の実効値計算周期である周期Tを0.5msとすると、上述の平均化のためのサイクル数nは、n=11.3/0.5≒23となる。
【0030】
第1平均化部32a及び第2平均化部32bは、例えば、平均化周期Tcごとに平均電圧実効値AVG(Vrms)及び平均電流実効値AVG(Irms)を算出して出力する。なお、平均化周期Tcは、上記の算出方法で得られる値には限られない。
【0031】
変動位相判定部33は、電圧実効値Vrmsの時間変動(時間による変動)と、電流実効値Irmsの時間変動とが逆位相であるか否かを判定する。具体的には、変動位相判定部33は、平均化周期Tcごとに、電圧位相変動量Vph及び電流位相変動量Iphを算出する。ここで、電圧位相変動量Vph及び電流位相変動量Iphは、それぞれ下式(7)及び下式(8)で表される。AVG(Vrms)'は、第1平均化部32aから前回出力された平均電圧実効値である。AVG(Irms)'は、第2平均化部32bから前回出力された平均電流実効値である。
【0032】
Vph=AVG(Vrms)-AVG(Vrms)' ・・・(7)
Iph=AVG(Irms)-AVG(Irms)' ・・・(8)
なお、電圧実効値Vrms及び電流実効値Irmsの時間変動は、上述の負荷変動によって生じるが、これらの時間変動は、実効値計算周期よりも長周期である。このため、変動位相判定部33は、電圧実効値Vrms及び電流実効値Irmsではなく、平均電圧実効値AVG(Vrms)及び平均電流実効値AVG(Irms)に基づいて電圧位相変動量Vph及び電流位相変動量Iphの算出を行っている。
【0033】
また、変動位相判定部33は、第1平均化部32aから出力される平均電圧実効値AVG(Vrms)の前回の出力値AVG(Vrms)'を基準とした大小関係と、第2平均化部32bから出力される平均電流実効値AVG(Irms)の前回の出力値AVG(Irms)'を基準とした大小関係とが異なる場合に、変動位相が逆位相であると判定する。具体的には、変動位相判定部33は、「Vph>0及びIph<0」を満たす場合、または、「Vph<0及びIph>0」を満たす場合に、変動位相が逆位相であると判定する。
【0034】
補正係数算出部34は、出力インピーダンス記憶部34a、第1補正係数算出部34b、及び第2補正係数算出部34cにより構成される。出力インピーダンス記憶部34aは、電源部11の出力インピーダンスZを記憶している。第1補正係数算出部34bは、正電流実効値算出部31aから出力された正電流実効値Iprmsと、出力インピーダンス記憶部34aに記憶された出力インピーダンスZとに基づいて、第1補正係数αpを算出する。第2補正係数算出部34cは、負電流実効値算出部31bから出力された負電流実効値Inrmsと、出力インピーダンス記憶部34aに記憶された出力インピーダンスZとに基づいて、第2補正係数αnを算出する。
【0035】
具体的には、第1補正係数算出部34b及び第2補正係数算出部34cは、それぞれ下式(9)及び下式(10)に基づいて第1補正係数αp及び第2補正係数αnを算出する。ここで、kは、静的変動量測定部37により測定される静的変動量である。
【0036】
αp=Z×Iprms-k ・・・(9)
αn=Z×Inrms-k ・・・(10)
補正係数設定部35は、変動位相判定部33による変動位相の判定結果に基づき、電源部11の出力電圧をゲイン補正するための補正係数を設定する。具体的には、補正係数設定部35は、変動位相判定部33により上述の変動位相が逆位相であると判定された場合には、正電圧補正係数gpを第1補正係数αpとし、負電圧補正係数gnを第2補正係数αnとする。一方、補正係数設定部35は、変動位相が逆位相でない場合には、gp=0、gn=0とする。なお、正電圧補正係数gpは、交流電源11aの出力電圧の正電圧成分(正位相成分)をゲイン補正するための補正係数である。負電圧補正係数gnは、出力電圧の負電圧成分(負位相成分)を補正するための補正係数である。
【0037】
電圧制御部36は、正電圧補正係数gp及び負電圧補正係数gnに基づき、電源部11の出力電圧をフィードバック制御する。
【0038】
静的変動量測定部37は、詳しくは後述するが、出荷検査時等に動作し、出力電圧の正側ピーク値の最大値及び最小値を検出することにより、上述の静的変動量kを測定して、補正係数算出部34に供給する。この静的変動量kは、一定の負荷状態において、電圧発生装置10が自身で起こす電圧の変動量である。
【0039】
図3は、電圧制御部36の構成を示す図である。図3において、電圧制御部36は、基準電圧生成部50、減算器51、比例部52、積分部53、第1加算器54、基準正弦波生成部55、第1乗算器56、オフセット値記憶部57、第2加算器58、PWM(Pulse Width Modulation)信号生成部59、タイマ60、及び正負判定部61を有する。比例部52、積分部53、及び第1加算器54は、PI制御部を構成している。
【0040】
電圧制御部36には、上述の電圧実効値算出部30から電圧実効値Vrmsが入力される。基準電圧生成部50は、基準電圧を生成する。減算器51は、電圧実効値Vrmsから基準電圧を減算した値を、指令入力値としてPI制御部に含まれる比例部52及び積分部53に入力する。比例部52は、指令入力値を比例ゲインKpで比例制御する。積分部53は、指令入力値を積分ゲインKiで積分する。第1加算器54は、比例部52の出力値と積分部53の出力値とを加算して出力する。
【0041】
基準正弦波生成部55は、基準正弦波を生成して出力する。この基準正弦波の周波数は、例えば2kHzである。第1乗算器56は、PI制御部からの出力値である第1加算器54からの出力値に、基準電圧生成部50から出力される基準正弦波を乗じて出力する。オフセット値記憶部57は、後述する交流電源11aに含まれるスイッチング回路に起因したオフセット値を記憶している。第2加算器58は、第1乗算器56からの出力値に、オフセット値記憶部57に記憶されたオフセット値を加算して出力する。
【0042】
PWM信号生成部59は、PWM信号を生成し、交流電源11aのドライバ回路に供給する。ドライバ回路は、駆動信号(ON/OFF信号)を生成し、スイッチング回路に入力する。
【0043】
タイマ60は、クロック信号をPWM信号生成部59に供給する。
【0044】
正負判定部61は、基準電圧生成部50により生成される基準正弦波に基づき、電圧の正負を判別する。具体的には、正負判定部61は、基準正弦波の位相が正(0°以上180°未満)の場合に電圧が正と判別し、基準正弦波の位相が負(180°以上360°未満)の場合に電圧が負と判別する。また、正負判定部61には、上述の補正係数設定部35から補正係数として正電圧補正係数gp及び負電圧補正係数gnが入力される。正負判定部61は、基準正弦波の電圧が正の場合には、正電圧補正係数gpを選択して出力し、基準正弦波の電圧が負の場合には、負電圧補正係数gnを選択して出力する。
【0045】
次に、比例部52の詳細について説明する。比例部52は、基準比例ゲイン記憶部62、第3加算器63、及び第2乗算器64を有する。基準比例ゲイン記憶部62は、基準比例ゲインKpaの値を記憶している。
【0046】
第3加算器63は、基準比例ゲイン記憶部62に記憶された基準比例ゲインKpaに、正負判定部61から出力される正電圧補正係数gpまたは負電圧補正係数gnを加算することにより、基準比例ゲインKpaを補正する。この補正された基準比例ゲインKpaが、上述の比例ゲインKpとして比例制御に用いられる。具体的には、基準正弦波の電圧が正の場合には、Kp=Kpa+gpとなり、基準正弦波の電圧が負の場合には、Kp=Kpa+gnとなる。第2乗算器64は、上述の指令入力値に、第3加算器63から出力される比例ゲインKpを乗じる。
【0047】
図4は、電源部11の具体的な回路例を示す図である。図4において、交流電源11aは、スイッチング回路としてのハーフブリッジ回路を構成する第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2を含んで構成されている。第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2には、上述のドライバ回路から駆動信号が入力される。直流電源11bは、直流電圧を調整するためのPWM信号が入力される第3トランジスタQ3を含んで構成されている。
【0048】
上述の第1全波整流回路40は、ダイオードD1、抵抗R1,R2、コンデンサC1を含んで構成されている。第1全波整流回路40により全波整流された電圧は、端子70から電圧制御部36に出力される。上述の直流成分除去回路41は、コンデンサC2を含んで構成されている。また、上述の第2全波整流回路42は、ダイオードD2、抵抗R3,R4、コンデンサC4を含んで構成されている。第2全波整流回路42により全波整流された電流は、端子71から電圧制御部36に出力される。
【0049】
図4に示される交流電源11aには、第1トランジスタQ1または第2トランジスタQ2のオン抵抗Ronと、抵抗R5の直流抵抗Rlと、抵抗R6の出力抵抗Roの3つの大きな抵抗成分が存在する。例えば、これらの直列インピーダンスであるZ=Ron+Rl+Roの値が出力インピーダンスZとして上述の出力インピーダンス記憶部34aに記憶される。
【0050】
図5は、電源部11の等価回路を示す図である。図5において、負荷抵抗Rは、図4に示される3つの抵抗成分を合成したものである。負荷は、作像部品である帯電ローラ3や感光体2に起因する負荷抵抗等である。帯電ローラ3や感光体2の歪み、帯電ローラ3と感光体2とのギャップの変動等が生じるにより、負荷抵抗等が変化し、負荷電流(正電流Ip及び負電流In)が変動する。ここで、正電流Ipとは、交流電源11aの出力電圧が正(正位相)である場合の負荷電流である。負電流Inとは、交流電源11aの出力電圧が負(負位相)である場合の負荷電流である。
【0051】
負荷抵抗Rに負荷電流が流れることにより電圧降下が生じる。負荷電流が増減することにより、電圧降下量が変化し、電源部11からの出力電圧に変動が生じる。電源部11から出力される出力電圧の直流成分はゼロではないため、負荷抵抗Rに流れる正電流Ipと負電流Inとは異なる。例えば、出力電圧の直流成分が負である場合には、正電流Ipの大きさは、負電流Inの大きさより小さくなる。
【0052】
次に、図6図8を参照して、負荷変動により電源部11の出力電圧の直流成分に変動が生じる理由についての詳細を説明する。図6は、図5に示される負荷抵抗Rに流れる負荷電流と電圧降下量との関係を示す図である。図7は、負荷変動が生じた場合の電流波形の変動を例示する図である。図8は、負荷変動が生じた場合の電圧波形の変動を例示する図である。
【0053】
図7に示すように、負荷変動により正電流IpがI1pからI2pに変動した場合には、図6に示す電圧と電流の関係に従い、図8に示すように、電圧がV1pからV2pに変動する。また、図7に示すように、負荷変動により負電流InがI1nからI2nに変動した場合には、図6に示す電圧と電流の関係に従い、図8に示すように、電圧がV1nからV2nに変動する。変動量ΔVpと変動量ΔVnとが異なることにより、結果的に出力電圧の直流成分がV1dcからV2dcに変動する。この直流成分の変動が異常画像の発生原因となる。
【0054】
図6図8から理解できるように、負荷変動に起因した電源部11の出力の変動において、電圧の変動方向と電流の変動方向とが逆となる。
【0055】
図9は、負荷変動による電流起因で変動が生じた場合における出力電流と出力電圧との時間変動を示す図である。図10は、電圧起因で変動が生じた場合における出力電流と出力電圧との時間変動を示す図である。
【0056】
図9に示すように、負荷変動による電流起因で変動が生じた場合には、出力電流と出力電圧との時間変動は逆位相となる。これに対して、図10に示すように、電圧起因で変動が生じた場合には、出力電流と出力電圧との時間変動は同位相となる。この電圧起因の変動は、電圧発生装置10自身のノイズや制御系の異常等により生じる。本実施形態では、負荷変動による電流起因の変動であるか否かを判別するために、出力電流と出力電圧との時間変動が逆位相であるか否かを判定している。なお、図9では、出力電流、出力電圧、及び実効値の時間変動を示しているが、これらの時間変動の周波数は、実際は10Hz程度であり、出力電圧の周波数である2kHzよりもはるかに低い。
【0057】
次に、本実施形態の電圧発生装置10の動作について説明する。図11は、電圧発生装置10の動作を説明するフローチャートである。
【0058】
まず、電源部11から、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧の出力が開始する(ステップS100)。そして、電圧実効値算出部30及び電流実効値算出部31により、上述の式(1)及び式(2)に基づいて電圧実効値Vrms及び電流実効値Irmsの算出が行われる(ステップS101)。ここで、電流実効値Irmsは、正電流実効値算出部31aにより上述の式(3)に基づいて算出された正電流実効値Iprmsと、負電流実効値算出部31bにより上述の式(4)に基づいて算出された負電流実効値Inrmsとが、加算部31cにより加算されたものである。
【0059】
電圧実効値Vrms及び電流実効値Irmsは、それぞれ平均化部32により、上述の式(5)及び式(6)に基づいて平均化され、平均電圧実効値AVG(Vrms)及び平均電流実効値AVG(Irms)が算出される(ステップS102)。
【0060】
そして、変動位相判定部33により、電圧位相変動量Vph及び電流位相変動量Iphが、上述の式(7)及び式(8)に基づいて算出され(ステップS103)。また、変動位相判定部33により、電圧実効値Vrmsの時間変動と電流実効値Irmsの時間変動とが逆位相であるか否かが判定される(ステップS104)。
【0061】
変動位相が逆位相である場合(ステップS104:YES)には、補正係数算出部34により、第1補正係数αp及び第2補正係数αnが算出される(ステップS105)。ここで、第1補正係数αpは、上述の式(9)に基づいて算出される。第2補正係数αnは、上述の式(10)に基づいて算出される。算出された第1補正係数αp及び第2補正係数αnは、補正係数設定部35により、それぞれ正電圧補正係数gp及び負電圧補正係数gnとして設定される(ステップS106)。
【0062】
一方、変動位相が逆位相でない場合(ステップS104:NO)には、補正係数設定部35により、正電圧補正係数gp及び負電圧補正係数gnはそれぞれ「0」に設定される(ステップS107)。
【0063】
正電圧補正係数gp及び負電圧補正係数gnは、電圧制御部36に供給され、電圧制御部36では、正負判定部61により、基準電圧生成部50により生成される基準正弦波の位相に基づいて、基準正弦波の電圧の正負の判定が行われる(ステップS108)。正負判定部61は、基準正弦波の電圧が正である場合には、第3加算器63に正電圧補正係数gpを供給することにより、基準比例ゲインKpaに正電圧補正係数gpを加算させる(ステップS109)。一方、正負判定部61は、基準正弦波の電圧が負である場合には、第3加算器63に負電圧補正係数gnを供給することにより、基準比例ゲインKpaに負電圧補正係数gnを加算させる(ステップS110)。
【0064】
そして、PI制御部により、基準比例ゲインKpaに正電圧補正係数gpまたは負電圧補正係数gnが加算された値を比例ゲインKpとしたPI制御が行われる(ステップS111)。この後、ステップS100に戻り、同様の処理が繰り返し行われる。
【0065】
次に、静的変動量測定部37の動作について説明する。図12は、静的変動量測定部37の動作を説明するフローチャートである。静的変動量測定部37は、出荷検査時等、負荷変動が生じていない状態で動作される。
【0066】
まず、電源部11により直流電圧に交流電圧が重畳された電圧の出力が開始する(ステップS200)。次に、静的変動量測定部37は、ピークホールド回路を有しており、電源部11から出力される出力電圧の正ピークの最大値Vpmaxと正ピークの最小値Vpminとを検出して保持する(ステップS201)。そして、静的変動量測定部37は、最大値Vpmaxから最小値Vpminを減算することにより静的変動量kを算出し(ステップS202)、算出した静的変動量kを記憶する(ステップS203)。
【0067】
次に、本実施形態の画像形成装置100が奏する効果について説明する。図13(A)は、従来の電圧発生装置からの出力電流波形を例示する図である。図13(B)は、従来の電圧発生装置からの出力電圧波形を例示する図である。従来の電圧発生装置では、上述の負荷変動が生じることにより、図13(A)に示すように、出力電流が増減する。出力電圧がバイアスされているため、出力電流の交流成分は正と負で電流量が異なる。この出力電流の増減により電圧降下量が変動することにより、図13(B)に示すように、出力電圧の交流成分の波形が歪み、正と負で非対称になる。この結果、電圧発生装置からの出力電圧の直流電圧成分が変動し、感光体2の表面電位が変動する。これにより、画像形成装置からは、色むら等を含む異常画像が生成される。
【0068】
図14(A)は、本実施形態の電圧発生装置10からの出力電流波形を例示する図である。図14(B)は、本実施形態の電圧発生装置10からの出力電圧波形を例示する図である。図14(A)に示される出力電流波形は、従来と同様であり、負荷変動により増減する。本実施形態では、電圧実効値と電流実効値との時間変動が逆位相であるか否かを判定することにより、電圧波形の変動が負荷変動によるものであるか否かを判定する。そして、電圧波形の変動が負荷変動によるものである場合には、正電流実効値及び負電流実効値に基づいて算出される第1補正係数αp及び第2補正係数αnを用いて出力電圧をゲイン補正する。これにより、図14(B)に示すように、出力電圧の交流成分の波形の歪が抑制される。この結果、電圧発生装置10からの出力電圧の直流電圧成分の変動が抑制され、感光体2の表面電位が一様となる。これにより、画像形成装置100からは、色むら等を含む異常画像の発生が抑制される。
【0069】
上述のゲイン制御は、図5に示される等価回路において、負荷電流(正電流Ip及び負電流In)の値に基づいて可変電圧Viを制御し、出力電圧Voを安定化させる制御に相当する。図15に示すように、例えば、負荷電流がI0からI1に変動した場合には、ゲイン補正により可変電圧ViをVi1に変更することにより、出力電圧Voが一定に保たれる。同様に、負荷電流がI0からI2に変動した場合には、ゲイン補正により可変電圧ViをVi2に変更することにより、出力電圧Voが一定に保たれる。
【0070】
なお、本実施形態の画像形成装置100では、変動位相が逆位相でない場合に、補正係数設定部35は、gp=0,gn=0としているが、これに限定されず、静的変動量kを用いて、gp=-k,gn=-kとしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、第1補正係数算出部34bは、正電流実効値Iprmsに基づいて第1補正係数αpを算出しているが、これに限定されず、正電流実効値Iprmsを平均化周期Tcで平均した値に基づいて第1補正係数αpを算出してもよい。同様に、第2補正係数算出部34cは、負電流実効値Inrmsを平均化周期Tcで平均した値に基づいて第2補正係数αnを算出してもよい。
【0072】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の画像形成装置について説明する。第2実施形態の画像形成装置に含まれる電圧発生装置10aでは、図2に示す構成の電源制御部12に代えて、図16に示す構成の電源制御部12aを用いる。電源制御部12aは、電流実効値算出部31に代えて、電流ピーク値検出部80を有する。その他の構成部は、第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成部については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0073】
電流ピーク値検出部80は、正電流ピーク値検出部80aと、負電流ピーク値検出部80bとにより構成される。正電流ピーク値検出部80aは、第2全波整流回路42から入力される全波整流された電流波形に基づき、1周期T中の正電流ピーク値Ippを検出する。負電流ピーク値検出部80bは、第2全波整流回路42から入力される全波整流された電流波形に基づき、1周期T中の負電流ピーク値Inpを検出する。
【0074】
本実施形態では、正電流ピーク値検出部80aにより検出された正電流ピーク値Ippは、正電流実効値Iprmsに代えて加算部31cに入力される。同様に、負電流ピーク値検出部80bにより検出された負電流ピーク値Inpは、負電流実効値Inrmsに代えて加算部31cに入力される。
【0075】
本実施形態では、加算部31cは、正電流ピーク値Ippと負電流ピーク値Inpとを加算して電流ピーク値Ipsを算出する。すなわち、電流ピーク値検出部80は、周期Tごとに電流ピーク値Ipsを出力する。電流ピーク値検出部80から出力された電流ピーク値Ipsは、電流実効値Irmsに代えて第2平均化部32bに入力される。第2平均化部32bは、電流ピーク値検出部80から入力される電流ピーク値Ipsを、所定の平均化周期Tcに渡って平均化し、平均電流ピーク値AVG(Ips)を算出する。
【0076】
変動位相判定部33による位相判定については、平均電流実効値AVG(Irms)に代えて平均電流ピーク値AVG(Ips)が用いられること以外、第1実施形態と同様である。
【0077】
また、正電流ピーク値検出部80aにより検出された正電流ピーク値Ippは、第1補正係数算出部34bに入力される。また、負電流ピーク値検出部80bにより検出された負電流ピーク値Inpは、第2補正係数算出部34cに入力される。本実施形態では、第1補正係数算出部34b及び第2補正係数算出部34cは、それぞれ下式(11)及び下式(12)に基づいて第1補正係数αp及び第2補正係数αnを算出する。
【0078】
αp=Z×Ipp-k ・・・(11)
αn=Z×Inp-k ・・・(12)
本実施形態においても第1実施形態と同様に、負荷変動による出力電圧の交流成分の波形の歪が抑制される。この結果、電圧発生装置10aからの出力電圧の直流電圧成分の変動が抑制され、感光体2の表面電位が一様となり、異常画像の発生が抑制される。
【0079】
なお、本実施形態では、電圧については、電圧実効値算出部30により電圧実効値Vrmsを算出しているが、電流と同様に、電圧実効値算出部30に代えて、電圧ピーク値を検出する電圧ピーク値算出部を設けてもよい。
【0080】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の画像形成装置について説明する。第3実施形態の画像形成装置では、図3に示す構成の電圧制御部36に代えて、図17に示す構成の電圧制御部36aを用いる。電圧制御部36aは、比例部52に代えて比例部52aが設けられており、基準電圧生成部50と減算器51との間に第2乗算器82が設けられている点が第1実施形態の電圧制御部36と異なる。その他の構成部は、第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成部については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0081】
比例部52aは、指令入力値を比例ゲインKpで比例制御するものである。本実施形態では、比例部52aには、正負判定部61から補正係数(正電圧補正係数gp及び負電圧補正係数gn)の入力は行われない。すなわち、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、比例ゲインKpの補正は行われない。
【0082】
本実施形態では、正負判定部61は、基準電圧生成部50により生成される基準正弦波の電圧の正負に応じて、正電圧補正係数gpまたは負電圧補正係数gnを第2乗算器82に入力する。具体的には、正負判定部61は、基準正弦波の電圧が正の場合には、正電圧補正係数gpを選択して第2乗算器82に入力し、基準正弦波の電圧が負の場合には、負電圧補正係数gnを選択して第2乗算器82に入力する。
【0083】
第2乗算器82は、基準電圧生成部50により生成される基準電圧に、正負判定部61から入力される補正係数を乗じて減算器51に供給する。具体的には、基準正弦波の電圧が正の場合には、基準電圧に正電圧補正係数gpを乗じた電圧値を減算器51に供給し、基準正弦波の電圧が負の場合には、基準電圧に負電圧補正係数gnを乗じた電圧値を減算器51に供給する。
【0084】
なお、本実施形態では、補正係数設定部35は、電圧と電流の変動位相が逆位相でない場合には、gp=1、gn=1とする。
【0085】
したがって、本実施形態では、変動位相が逆位相の場合に、PI制御の比例ゲインではなく、基準電圧をゲイン補正することにより、出力電圧の交流成分の波形の歪を抑制する。
【0086】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態の画像形成装置について説明する。第4実施形態の画像形成装置に含まれる電圧発生装置10bでは、図2に示す構成の電源制御部12に代えて、図18に示す構成の電源制御部12bを用いる。電源制御部12bは、補正係数算出部34に代えて、電流実効値記憶部90が追加された補正係数算出部91を有する。その他の構成部は、第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成部については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0087】
補正係数算出部91は、出力インピーダンス記憶部34a、第1補正係数算出部34b、及び第2補正係数算出部34cに加えて電流実効値記憶部90を有する。
【0088】
電流実効値記憶部90は、正電流実効値算出部31a及び負電流実効値算出部31bから、正電流実効値Iprms及び負電流実効値Inrmsをそれぞれ受信し、所定期間分、例えば1変動周期分の正電流実効値Iprms及び負電流実効値Inrmsを記憶する。電流実効値記憶部90は、記憶した1変動周期分の正電流実効値Iprms及び負電流実効値Inrmsを、それぞれ1変動周期ごとに、第1補正係数算出部34b及び第2補正係数算出部34cに入力する。なお、変動周期とは、負荷変動の周期であり、例えば、上述の帯電ローラ3の回転周期である。
【0089】
本実施形態では、第1補正係数算出部34bは、電流実効値記憶部90から入力された正電流実効値Iprmsに基づいて第1補正係数αpを算出する。第2補正係数算出部34cは、電流実効値記憶部90から入力された負電流実効値Inrmsに基づいて第2補正係数αnを算出する。
【0090】
電流実効値記憶部90に記憶された正電流実効値Iprms及び負電流実効値Inrmsは、変動位相が変化した場合等に適宜更新される。
【0091】
本実施形態では、電流実効値記憶部90が正電流実効値Iprms及び負電流実効値Inrmsを記憶することにより、第1補正係数αp及び第2補正係数αnの算出を高速に行うことができる。
【0092】
なお、第2実施形態の変形例として、本実施形態と同様に、電流ピーク値記憶部が追加された補正係数算出部を適用することが可能である。電流ピーク値記憶部は、1変動周期分の正電流ピーク値及び負電流ピーク値を記憶し、第1補正係数算出部34b及び第2補正係数算出部34cに入力する。
【0093】
また、上記各実施形態では、交流電源11aに含まれるスイッチング回路をハーフブリッジ回路で構成しているが、これに限定されず、スイッチング回路をフルブリッジ回路で構成してもよい。
【0094】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0095】
2 感光体
3 帯電ローラ
4 露光部
5 現像器
10,10a,10b 電圧発生装置
11 電源部
11a 交流電源
11b 直流電源
12,12a,12b 電源制御部(電源制御装置)
30 電圧実効値算出部
31 電流実効値算出部
31a 正電流実効値算出部
31b 負電流実効値算出部
31c 加算部
32 平均化部
32a 第1平均化部
32b 第2平均化部
33 変動位相判定部
34 補正係数算出部
34a 出力インピーダンス記憶部
34b 第1補正係数算出部
34c 第2補正係数算出部
35 補正係数設定部
36,36a 電圧制御部
50 基準電圧生成部
52,52a 比例部
53 積分部
55 基準正弦波生成部
61 正負判定部
62 基準比例ゲイン記憶部
80 電流ピーク値検出部
80a 正電流ピーク値検出部
80b 負電流ピーク値検出部
90 電流実効値記憶部
91 補正係数算出部
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【文献】特開2004-102079号公報
図1
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