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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20221018BHJP
   B22F 10/18 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 12/13 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 12/53 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 12/55 20210101ALI20221018BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20221018BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20221018BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20221018BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221018BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221018BHJP
【FI】
B29C64/118
B22F10/18
B22F10/85
B22F12/13
B22F12/53
B22F12/55
B29C64/209
B29C64/336
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018194487
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020062761
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086829(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0266244(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0070461(US,A1)
【文献】国際公開第2017/038985(WO,A1)
【文献】特開2017-075369(JP,A)
【文献】特表2008-538329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B23K 9/00- 9/32
10/00-10/02
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性の構成材料を用いてユニット層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
第1の厚さの第1層が積層される第1ユニット層を形成した後に、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さの第2層からなる第2ユニット層を前記第1ユニット層と隣接して形成することでユニット層を形成するユニット層形成工程を有し、前記ユニット層形成工程を複数回実行して前記ユニット層を積層し、
前記ユニット層形成工程は、前記ユニット層を積層する積層方向において前記第1ユニット層と前記第2ユニット層とを互い違いに配置することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記ユニット層形成工程において、前記第1ユニット層の形成時における前記第1ユニット層の構成材料の粘度は、前記第2ユニット層の形成時における前記第2ユニット層の構成材料の粘度よりも高いことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記ユニット層形成工程は、前記第1ユニット層の構成材料と前記第2ユニット層の構成材料とを射出部から射出させることで前記ユニット層を形成し、
前記ユニット層形成工程において、前記第1ユニット層の形成時における前記第1ユニット層の構成材料の射出温度は、前記第2ユニット層の形成時における前記第2ユニット層の構成材料の射出温度よりも低いことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記第1ユニット層の構成材料と前記第2ユニット層の構成材料とは異なることを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記ユニット層形成工程は、前記第1ユニット層の構成材料と前記第2ユニット層の構成材料とを同一の射出部から射出させることで前記ユニット層を形成することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記ユニット層形成工程は、前記三次元造形物の表面を構成する部分に前記第1ユニット層を配置することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記ユニット層形成工程において、前記第1ユニット層の形成時における前記第1ユニット層の構成材料の粘度は、前記第2ユニット層の形成時における前記第2ユニット層の構成材料の粘度よりも高く、
前記ユニット層形成工程は、前記第1ユニット層の構成材料と前記第2ユニット層の構成材料とを射出部から射出させることで前記ユニット層を形成し、
前記ユニット層形成工程において、前記第1ユニット層の形成時における前記第1ユニット層の構成材料の射出温度は、前記第2ユニット層の形成時における前記第2ユニット層の構成材料の射出温度よりも低いことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な三次元造形物の製造方法が使用されている。このうち、流動性の構成材料を用いて層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法がある。
例えば、特許文献1には、複数のノズルを使用して流動性の構成材料を堆積させることで層としてのビーズを形成し、該ビーズを積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-523068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流動性の構成材料を用いて層を積層して三次元造形物を製造する従来の三次元造形物の製造方法においては、流動性の構成材料は表面張力により断面形状が丸まるように力が働くため、射出部から射出された流動性の構成材料は、断面が円形や楕円形に近い状態で配置される場合がある。断面の形状は1層あたりの厚みに影響され、1層あたりの厚みを小さくしていくと、射出された流動性の構成材料は四角形に近づいていく。流動性の構成材料の1層あたりの厚みを大きくして層を形成すると、該流動性の構成材料が円形や楕円形に近い状態で配置されることに伴い、流動性の構成材料の隣接配置部分に空隙が生じる場合がある。流動性の構成材料の隣接配置部分に空隙が生じると、三次元造形物の密度が低下する。また、流動性の構成材料の1層あたりの厚みを小さくして層を形成すると、当然、三次元造形物の製造時間が長くなる。
【0005】
なお、特許文献1に開示される三次元造形物の製造方法においては、複数のノズルを使用して各々のノズルからの構成材料の流量を異ならせることで1層分のビーズにおいて厚さの異なる部分を同時に形成可能である。しかしながら、流動性の構成材料の隣接配置部分に空隙が生じることを抑制できる構成にはなっていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の三次元造形物の製造方法は、流動性の構成材料を用いてユニット層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、第1の厚さの第1層が積層される第1ユニット層を形成した後に、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さの第2層からなる第2ユニット層を前記第1ユニット層と隣接して形成することでユニット層を形成するユニット層形成工程を有し、前記ユニット層形成工程を複数回実行して前記ユニット層を積層することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置の構成を表す概略構成図。
図2】本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置のフラットスクリューを表す概略図。
図3】本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置のフラットスクリューに構成材料が充填されている状態を表す概略図。
図4】本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置のバレルを表す概略図。
図5】本発明の一の実施形態に係る三次元属造形物の製造方法のフローチャート。
図6】本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造方法における第1ユニット層の形成後であって第2ユニット層の形成前のユニット層の状態を説明するための概略図。
図7】本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造方法における第2ユニット層の形成後のユニット層の状態を説明するための概略図。
図8】本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造方法における2層分のユニット層で形成される三次元造形物を説明するための概略図。
図9】従来の三次元造形物の製造方法におけるユニット層を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の三次元造形物の製造方法は、流動性の構成材料を用いてユニット層を積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、第1の厚さの第1層が積層される第1ユニット層を形成した後に、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さの第2層からなる第2ユニット層を前記第1ユニット層と隣接して形成することでユニット層を形成するユニット層形成工程を有し、前記ユニット層形成工程を複数回実行して前記ユニット層を積層することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、第1層が積層される第1ユニット層を形成した後に、第1の厚さよりも厚い第2の厚さの第2層からなる第2ユニット層を第1ユニット層と隣接して形成することでユニット層を形成する。第1層を積層することで第1ユニット層における第2ユニット層との接触部には凸凹が形成され、該接触部は第2ユニット層の構成材料との接触性が良くなる。このため、薄い複数の層からなる第1ユニット層と厚い第2ユニット層とを隣接させることで、厚い層を隣接させることで生じ得る空隙を抑制でき、薄い層のみでユニット層を形成する場合よりも三次元造形物の製造時間を短縮できる。
【0010】
本発明の第2の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第1の態様において、前記ユニット層形成工程は、前記第1ユニット層の構成材料と前記第2ユニット層の構成材料とを同一の射出部から射出させることで前記ユニット層を形成することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1ユニット層の構成材料と第2ユニット層の構成材料とを同一の射出部から射出させることでユニット層を形成するので、複数の射出部を必要とせず、簡単な構成で安価な三次元造形物の製造装置で三次元造形物を製造できる。
【0012】
本発明の第3の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第1又は第2の態様において、前記ユニット層形成工程は、前記三次元造形物の表面を構成する部分に前記第1ユニット層を配置することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、三次元造形物の表面を構成する部分に記第1ユニット層を配置するので、三次元造形物の表面を緻密に形成でき、三次元造形物の密度を高くすることができる。
【0014】
本発明の第4の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記ユニット層形成工程において、前記第1ユニット層の形成時における前記第1ユニット層の構成材料の粘度は、前記第2ユニット層の形成時における前記第2ユニット層の構成材料の粘度よりも高いことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、第1ユニット層の形成時における第1ユニット層の構成材料の粘度は、第2ユニット層の形成時における第2ユニット層の構成材料の粘度よりも高い。すなわち、粘度が低く接触性の良い第2ユニット層の構成材料を第1ユニット層に隣接して配置させることにより、第1ユニット層と第2ユニット層との隣接部分に空隙が生じることを効果的に抑制できる。
【0016】
本発明の第5の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第4の態様において、前記ユニット層形成工程は、前記第1ユニット層の構成材料と前記第2ユニット層の構成材料とを射出部から射出させることで前記ユニット層を形成し、前記ユニット層形成工程において、前記第1ユニット層の形成時における前記第1ユニット層の構成材料の射出温度は、前記第2ユニット層の形成時における前記第2ユニット層の構成材料の射出温度よりも高いことを特徴とする。
【0017】
射出温度を高くすることで粘度を低くすることができる。本態様によれば、第1ユニット層の形成時における第1ユニット層の構成材料の射出温度は、第2ユニット層の形成時における第2ユニット層の構成材料の射出温度よりも高い。このため、例えば、第1ユニット層の構成材料と第2ユニット層の構成材料とを同一にしつつ、第1ユニット層と第2ユニット層との隣接部分に空隙が生じることを効果的に抑制できる。
【0018】
本発明の第6の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第4の態様において、前記第1ユニット層の構成材料と前記第2ユニット層の構成材料とは異なることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、第1ユニット層の構成材料と第2ユニット層の構成材料とは異なる。すなわち、第2ユニット層の構成材料の粘度を第1ユニット層の構成材料の粘度よりも低くすることができる。このため、例えば、第1ユニット層の構成材料の射出温度と第2ユニット層の構成材料の射出温度とを変えることのできない簡単な構成の三次元造形物の製造装置を用いて、第1ユニット層と第2ユニット層との隣接部分に空隙が生じることを効果的に抑制できる。
【0020】
本発明の第7の態様の三次元造形物の製造方法は、前記第1から第6のいずれか1つの態様において、前記ユニット層形成工程は、前記ユニット層を積層する積層方向において前記第1ユニット層と前記第2ユニット層とを互い違いに配置することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、ユニット層を積層する積層方向において第1ユニット層と第2ユニット層とを互い違いに配置する。このため、三次元造形物を組成に偏りがないように製造できる。
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
最初に、本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置1の概要について図1から図4を参照して説明する。
ここで、図中のX方向は水平方向であり、Y方向は水平方向であるとともにX方向と直交する方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0023】
なお、本明細書における「三次元造形」とは、いわゆる立体造形物を形成することを示すものであって、例えば、平板状、例えば1層分の層で構成される形状のように、いわゆる二次元形状の形状であっても厚さを有する形状を形成することも含まれる。また、「支持する」とは、下側から支持する場合の他、横側から支持する場合や、場合によっては上側から支持する場合も含む意味である。
【0024】
図1で表されるように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、三次元造形物を構成する構成材料としてのペレット19を収容するホッパー2を備えている。ホッパー2に収容されたペレット19は、供給管3を介して、略円柱状のフラットスクリュー4の円周面4aに供給される。なお、本実施形態の三次元造形物の製造装置1において使用する構成材料は、金属粉末と樹脂製のバインダーとを含んでいる。ただし、使用する構成材料の種類に特に限定はなく、流動性を有する状態にできるものであればよい。
【0025】
図2で表されるように、フラットスクリュー4の底面には、円周面4aから中央部分4cまで至る螺旋状の切欠き4bが形成されている。このため、フラットスクリュー4を図1で表されるモーター6でZ方向に沿う方向を回転軸として回転させることにより、図3で表されるように、ペレット19が円周面4aから中央部分4cまで送られる。
【0026】
図1で表されるように、フラットスクリュー4の底面と対向する位置には、バレル5が所定の間隔を有して設けられている。そして、バレル5の上面近傍には、ヒーター7及びヒーター8が設けられている。フラットスクリュー4とバレル5とがこのような構成をしていることにより、フラットスクリュー4を回転させることで、フラットスクリュー4の底面とバレル5の上面との間に形成される切欠き4bによる空間部分20にペレット19は供給され、円周面4aから中央部分4cに移動する。なお、ペレット19が切欠き4bによる空間部分20を移動する際、ペレット19は、ヒーター7及びヒーター8の熱により溶融し可塑化され、また、狭い空間部分20を移動することに伴う圧力で加圧される。こうして、ペレット19が可塑化されることで、流動性の構成材料がノズル10aから射出される。なお、本明細書において「流動性の構成材料」とは、常温で流動性を有するもののほか、ペレット19のように常温では固体であるが加熱などすることで流動性を有する状態にできるものも含む意味である。また、ペレット19を構成する複数の原材料の全てが溶融しなくても、その一部の原材料が溶融し流動性を有すれば良い。具体的には、金属粒子材料と熱可塑性樹脂とワックスが混練されたペレット材料が使用できる。
【0027】
<金属粒子材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくは、これらの金属を1つ以上含む合金。マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン鋼、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
<熱可塑性材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)。
【0028】
図1及び図4で表されるように、平面視でバレル5の中央部分には、溶融したペレット19である構成材料の移動経路5aが形成されている。図1で表されるように、移動経路5aは、構成材料を射出する射出部10のノズル10aと繋がっている。なお、図4で表されるように、バレル5の上面には移動経路5aに繋がる溝5bが複数形成されており、構成材料が移動経路5aに向かって集まり易くなっている。
【0029】
射出部10は、流体状態の構成材料をノズル10aから連続的に射出することが可能な構成になっている。なお、図1で表されるように、射出部10には、構成材料を所望の粘度にするためのヒーター9が設けられている。射出部10から射出される構成材料は、線形の形状で射出される。そして、射出部10から線状に構成材料を射出することで構成材料の層であるユニット層を形成する。なお、図5から図9を用いて詳細は後述するが、本実施形態の三次元造形物の製造装置1で形成可能なユニット層Uは、第1の厚さL1の複数の第1層23が積層される第1ユニット層U1と、第1の厚さL1よりも厚い第2の厚さL2の1層分の第2層24からなる第2ユニット層U2とがある。
【0030】
本実施形態の三次元造形物の製造装置1では、ホッパー2、供給管3、フラットスクリュー4、バレル5、モーター6及び射出部10などで射出ユニット21を形成している。なお、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、構成材料を射出する射出ユニット21を1つ備える構成であるが、構成材料を射出する射出ユニット21を複数備える構成としてもよいし、支持材料を射出する射出ユニット21を備えていてもよい。ここで、支持材料とは、構成材料のユニット層Uを支持するための支持材料のユニット層を形成するための材料である。
【0031】
また、図1で表されるように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、射出ユニット21から射出されることで形成されるユニット層Uを載置するためのステージユニット22を備えている。ステージユニット22は、実際にユニット層Uが載置されるプレート11を備えている。また、ステージユニット22は、プレート11が載置され、第1駆動部15を駆動することによりY方向に沿って位置を変更可能な第1ステージ12を備えている。また、ステージユニット22は、第1ステージ12が載置され、第2駆動部16を駆動することによりX方向に沿って位置を変更可能な第2ステージ13を備えている。そして、ステージユニット22は、第3駆動部17を駆動することによりZ方向に沿って第2ステージ13の位置を変更可能な基体部14を備えている。
【0032】
また、図1で表されるように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、射出ユニット21の各種駆動及びステージユニット22の各種駆動を制御する、制御ユニット18と電気的に接続されている。
【0033】
次に、本実施形態の三次元造形物の製造装置1を用いて行う三次元造形物の製造方法について、図5のフローチャート、並びに、図6から図9のユニット層Uの形成図を用いて説明する。
【0034】
本実施例の三次元造形物の製造方法においては、最初に、図5のフローチャートで表されるように、ステップS110で、製造する三次元造形物の造形データを入力する。三次元造形物の造形データの入力元に特に限定はないが、PCなどを用いて造形データを三次元造形物の製造装置1に入力できる。
【0035】
次に、ステップS120で、ステップS110で入力した造形データに基づいて、第1の厚さL1の複数の第1層23が積層される第1ユニット層U1を形成する。なお、図6は、本ステップ120により第1ユニット層U1が形成された状態を表している。本実施例においては4層分の第1層23で第1ユニット層U1を形成しているが、第1ユニット層U1における第1層23の積層数に特に限定はない。
【0036】
ここで、図6で表されるように、流動性の構成材料は、表面張力により表面積が小さくなるように、すなわち、断面形状が丸まるように力が働く。このため、第1層23は全体的に多少丸みを帯びているが層厚を薄くしていることで第1層23の全体的な丸みは軽減されている。ただし、各第1層23の端部は多少丸みを帯びている。そして、各第1層23の端部が多少丸みを帯びていることで、第1ユニット層U1における第2ユニット層U2との接触部23aは、凸凹となっている。
【0037】
次に、ステップS130で、ステップS110で入力した造形データに基づいて、第1の厚さL1よりも厚い第2の厚さL2の第2層24からなる第2ユニット層U2を第1ユニット層U1と隣接して形成する。なお、図7は、本ステップ130により第1ユニット層U1の形成後に第2ユニット層U2が形成された状態を表している。
【0038】
ここで、上記のように、ステップS120で形成した各第1層23の端部は多少丸みを帯びている。そして、各第1層23の端部が多少丸みを帯びていることで、図6で表されるように、第1ユニット層U1における第2ユニット層U2との接触部23aは、凸凹となっている。接触部23aが凸凹となっていることで、第2層24は第1層23における接触部23aとの接触性が良くなり、図7で表されるように、第1ユニット層U1と第2ユニット層U2との間にできる空隙Sの発生を抑制している。
【0039】
ここで、図9は、従来の三次元造形物の製造方法でユニット層Uを形成した状態を表しており、具体的には、第2層24のみでユニット層Uを形成した状態を表している。図7図9とを比較すると明らかなように、本実施例の三次元造形物の製造方法において形成したユニット層Uにおける空隙S1は、従来の三次元造形物の製造方法において形成したユニット層Uにおける空隙S2よりも明らかに小さくなっている。
【0040】
次に、ステップS140で、ステップS110で入力した造形データに基づくユニット層U、すなわち第1ユニット層U1及び第2ユニット層U2の形成が終了したかどうかを判断する。ユニット層Uの形成が終了していないと判断した場合、すなわち、さらにユニット層Uを積層すると判断した場合は、ステップS120に戻り、次のユニット層Uを形成する。ここで、図8は、1層目のユニット層Uを形成した後、ステップS140でさらにユニット層Uを積層すると判断し、ステップS120に戻り、2層目のユニット層Uを形成した状態を表している。なお、図8は、2層分のユニット層Uで構成される三次元造形物の一例を表しているが、本実施例の三次元造形物の製造方法において製造される三次元造形物は、3層以上のユニット層Uで構成される三次元造形物であってもよいのは言うまでもない。3層以上ユニット層Uを積層する場合は、積層する数に応じてステップS120からステップS140を繰り返す。
【0041】
一方、ユニット層Uの形成が終了したと判断した場合、本実施例の三次元造形物の製造方法を終了する。上記のことから、本ステップS140は、ステップS120とステップS130とからなるユニット層形成工程を、ステップS110で入力した造形データに基づいて何層分実行させるかを判断する判断工程に対応する。
【0042】
なお、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ノズル10aの内径を200μm、第1層23の厚さである第1の厚さL1を50μm、第2層24の厚さである第2の厚さL2を200μm、としてユニット層Uを形成したが、これらの値に特に限定はない。また、ノズル10aから射出される第1層23のライン幅は約0.30mm、ノズル10aから射出される第2層24のライン幅は約0.38mm、であったが、これらの値も特に限定はない。
【0043】
ここで、一旦まとめると、本実施例の三次元造形物の製造方法は、流動性の構成材料を用いてユニット層Uを積層して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法である。そして、ステップS120で第1の厚さL1の複数の第1層23が積層される第1ユニット層U1を形成した後に、ステップS130で第1の厚さL1よりも厚い第2の厚さL2の第2層24からなる第2ユニット層U2を第1ユニット層U1と隣接して形成することで1層分のユニット層Uを形成するユニット層形成工程を有し、ユニット層形成工程を複数回実行してユニット層Uを積層すると表現できる。
【0044】
上記のように、本実施例の三次元造形物の製造方法は、薄い複数の第1層23が積層されてなる第1ユニット層U1を形成した後に、第1の厚さL1よりも厚い第2層24からなる第2ユニット層U2を第1ユニット層と隣接して形成することで1層分のユニット層Uを形成する。複数の第1層23を積層することで第1ユニット層U1における第2ユニット層U2との接触部23aには凸凹が形成され、該接触部23aは第2ユニット層U2の構成材料との接触性が良くなる。このため、薄い複数の層からなる第1ユニット層U1と厚い第2ユニット層U2とを隣接させることで、図9で表されるような厚い層を隣接させることで生じ得る空隙Sを抑制でき、薄い層のみでユニット層Uを形成する場合よりも三次元造形物の製造時間を短縮できる。
【0045】
なお、上記のように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、構成材料を射出する射出ユニット21を1つ備える構成である。すなわち、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ユニット層形成工程は、第1ユニット層U1の構成材料と第2ユニット層U2の構成材料とを同一の射出部10から射出させることでユニット層Uを形成する。このように、第1ユニット層U1の構成材料と第2ユニット層U2の構成材料とを同一の射出部10から射出させてユニット層Uを形成する方法とすることで、複数の射出部10を必要とせず、簡単な構成で安価な三次元造形物の製造装置1を用いて三次元造形物を製造できる。
【0046】
なお、図7及び図8で表されるように、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、積層される各ユニット層Uにおいて、第1ユニット層U1で最外部を構成する。別の表現をすると、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ステップS120及びステップS130のユニット層形成工程において、三次元造形物の表面を構成する部分に第1ユニット層U1を配置することができる。このため、薄い第1層23で三次元造形物の表面を緻密に形成でき、三次元造形物の密度を高くすることができる。なお、図8で表されるユニット層Uの積層体は、Z方向に沿う方向であるユニット層Uを積層する積層方向と交差する方向においてのみ第1ユニット層U1で最外部が構成されているが、ユニット層Uの積層方向における最外部も第1ユニット層U1で構成されていることが特に好ましい。全方向における三次元造形物の表面を緻密に形成できるためである。
【0047】
なお、図7では第1ユニット層U1と第2ユニット層U2は同じ厚みとなるように構成されているが、異なる厚みとしても良い。例えば、5層分の第1層23で第1ユニット層U1を形成し、第2ユニット層U2は第1ユニット層U1の薄い第1層23を4層の厚みとすることもできる。この場合、次の1層分のユニット層Uにおける第1ユニット層U1は3層分の第1層23を形成してもよいし、4層分の第1層23で第1ユニット層U1を形成してもよい。
【0048】
また、上記のように、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ユニット層形成工程を複数回実行してユニット層Uを積層することができる。そして、図8で表されるように、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ユニット層形成工程は、ユニット層Uの積層方向において第1ユニット層U1と第2ユニット層U2とを互い違いに配置することができる。このため、本実施例の三次元造形物の製造方法を実行することで、組成に偏りがない三次元造形物を製造できる。また、第1ユニット層U1と第2ユニット層U2とでは、熱可塑性樹脂やワックスなどの脱脂や、金属粒子同士の焼結などを行う場合など、収縮率に差が出やすいが、収縮率の大きい部分と収縮率の小さい部分とが発生し、三次元造形物が変形などすることなども抑制できる。
【0049】
また、上記のように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、ヒーター9を射出部10に備えている。そして、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ステップS120における第1ユニット層U1の形成時と、ステップS130における第2ユニット層U2の形成時とで、ヒーター9の温度を変えることができる。すなわち、上記のように、ステップS120及びステップS130のユニット層形成工程は、第1ユニット層U1の構成材料と第2ユニット層U2の構成材料とを射出部10から射出させることでユニット層Uを形成するが、該ユニット層形成工程において、第1ユニット層U1の形成時における第1ユニット層U1の構成材料の射出温度を、第2ユニット層U2の形成時における第2ユニット層U2の構成材料の射出温度よりも高くすることができる。
【0050】
射出温度を高くすることで粘度を低くすることができる。このため、本実施例の三次元造形物の製造方法を実行することで、第1ユニット層U1の構成材料と第2ユニット層U2の構成材料とを同一にしつつ、第1ユニット層U1と第2ユニット層U2との隣接部分に空隙Sが生じることを効果的に抑制できる。
【0051】
このように、ユニット層形成工程において、第1ユニット層U1の形成時における第1ユニット層U1の構成材料の粘度を第2ユニット層U2の形成時における第2ユニット層U2の構成材料の粘度よりも高くし、粘度が低く接触性の良い第2ユニット層U2の構成材料を第1ユニット層U1に隣接して配置させることにより、第1ユニット層U1と第2ユニット層U2との隣接部分に空隙Sが生じることを効果的に抑制できる。
【0052】
上記のように、本実施形態の三次元造形物の製造装置1は、構成材料を射出する射出ユニット21を1つ備える構成であるので、第1ユニット層U1の構成材料と第2ユニット層U2の構成材料とは共通である。しかしながら、第1ユニット層U1の構成材料の射出部10と、第2ユニット層U2の構成材料の射出部10とを、別々に設け、第1ユニット層U1の構成材料と第2ユニット層U2の構成材料とを異なる組成にしてもよい。
【0053】
例えば、第1ユニット層U1の構成材料と第2ユニット層U2の構成材料とを異ならせ、第2ユニット層U2の構成材料の粘度を第1ユニット層U1の構成材料の粘度よりも低くすることで、第1ユニット層U1の構成材料の射出温度と第2ユニット層U2の構成材料の射出温度とを変えることのできない簡単な構成の三次元造形物の製造装置1を用いて、第1ユニット層U1と第2ユニット層U2との隣接部分に空隙Sが生じることを効果的に抑制できる。
【0054】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…三次元造形物の製造装置、2…ホッパー、3…供給管、4…フラットスクリュー、
4a…円周面、4b…切欠き、4c…中央部分、5…バレル、5a…移動経路、
5b…溝、6…モーター、7…ヒーター、8…ヒーター、9…ヒーター、
10…射出部、10a…ノズル、11…プレート、12…第1ステージ、
13…第2ステージ、14…基体部、15…第1駆動部、16…第2駆動部、
17…第3駆動部、18…制御ユニット、19…ペレット(構成材料)、
20…空間部分、21…射出ユニット、22…ステージユニット、23…第1層、
23a…接触部、24…第2層、L1…第1の厚さ、L2…第2の厚さ、S…空隙、
S1…空隙、S2…空隙、U…ユニット層、U1…第1ユニット層、
U2…第2ユニット層
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9