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特許7159808三次元造形装置および三次元造形装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】三次元造形装置および三次元造形装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/35 20170101AFI20221018BHJP
   B22F 10/18 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 12/13 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20221018BHJP
   B22F 12/57 20210101ALI20221018BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20221018BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20221018BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20221018BHJP
   B29C 64/343 20170101ALI20221018BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20221018BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221018BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221018BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20221018BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221018BHJP
【FI】
B29C64/35
B22F10/18
B22F10/85
B22F12/13
B22F12/50
B22F12/57
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/295
B29C64/343
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y50/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018219000
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020082464
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯脇 康平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】中村 和英
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215581(JP,A)
【文献】特開2018-130836(JP,A)
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】特表2017-523934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0118258(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281284(US,A1)
【文献】特開2010-241016(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038984(WO,A1)
【文献】特開平06-179243(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103878979(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0311894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
B41J 3/32
B41M 1/00-3/18
7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形装置であって、
材料を溶融させて造形材料にする溶融部と、
前記溶融部に連通し、前記造形材料が流通する第1流路と、
前記第1流路に連通し、前記造形材料を吐出するノズルと、
前記第1流路に設けられ、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調節する吐出量調節機構と、
前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層される造形テーブルと、
前記ノズルと前記造形テーブルとの相対位置を変化させる移動機構と、
前記溶融部と前記吐出量調節機構と前記移動機構とを制御することによって、前記造形テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、
を備え、
前記溶融部は、
溝が形成された溝形成面を有し、回転軸を中心にして回転するフラットスクリューと、
前記回転軸に沿った方向において前記溝形成面に対向するスクリュー対向面を有し、前記第1流路に連通する連通孔が形成されたバレルと、
を備え、
前記溝の深さは、前記溝形成面の中心に向かうほど浅くなり、
前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、
前記吐出量調節機構を制御することによって、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、前記ノズルから前記造形領域への前記造形材料の吐出の再開に先立って、
記吐出量調節機構を制御することによって前記溶融部と前記ノズルとを連通させた状態において、前記フラットスクリューを回転させることによって前記溶融部に残留する前記造形材料を前記ノズルから前記造形領域とは異なる領域に排出させる材料パージ処理を実行する、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記材料は、熱可塑性樹脂を含み、
前記制御部は、前記吐出量調節機構を制御することによって、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、前記熱可塑性樹脂のガラス転移点に応じて定められた待機期間が経過した場合に、前記材料パージ処理を実行し、
前記待機期間は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点に応じて定められる場合の長さよりも、前記第1熱可塑性樹脂よりもガラス転移点の低い第2熱可塑性樹脂のガラス転移点に応じて定められる場合の長さの方が短い、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の三次元造形装置であって、
さらに、前記溶融部にパージ材を供給するパージ材供給機構を備え、
前記制御部は、前記材料パージ処理において、前記移動機構と前記パージ材供給機構とを制御することによって、前記溶融部に前記パージ材を供給し、前記パージ材を用いて、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の三次元造形装置であって、
さらに、前記第1流路における前記吐出量調節機構と前記ノズルとの間に、圧縮空気を供給する空気供給機構を備え、
前記制御部は、前記材料パージ処理において、前記溶融部に残留する前記造形材料の排出に先立って、前記空気供給機構を制御することによって、前記圧縮空気を用いて、前記第1流路に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって
前記制御部は、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後であり、かつ、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる前または後に、前記フラットスクリューの回転を停止させる、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記バレルは、前記材料を加熱する加熱部を備える、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後であり、かつ、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる前または後に、前記加熱部による加熱を停止させる、三次元造形装置。
【請求項8】
三次元造形装置であって、
溝を有するスクリューを有し、前記スクリューの回転によって材料の少なくとも一部を溶融させて造形材料とする溶融部と、
前記溶融部に連通し、前記造形材料が流通する第1流路と、
前記第1流路に連通し、前記造形材料を吐出するノズルと、
前記第1流路に設けられ、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調節する吐出量調節機構と、
前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層される造形テーブルと、
前記ノズルと前記造形テーブルとの相対位置を変化させる移動機構と、
前記溶融部と前記吐出量調節機構と前記移動機構とを制御することによって、前記造形テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、
前記吐出量調節機構を制御することによって前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、かつ、前記ノズルから前記造形領域への前記造形材料の吐出を再開させる前に、前記スクリューの回転を停止させる、三次元造形装置。
【請求項9】
三次元造形装置の制御方法であって、
前記三次元造形装置は、
材料を溶融させて造形材料にする溶融部と、
前記溶融部に連通し、前記造形材料が流通する第1流路と、
前記第1流路に連通し、前記造形材料を吐出するノズルと、
前記第1流路に設けられ、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調節する吐出量調節機構と、
前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層される造形テーブルと、
前記ノズルと前記造形テーブルとの相対位置を変化させる移動機構と、
を備え、
前記溶融部は、
溝が形成された溝形成面を有し、回転軸を中心にして回転するフラットスクリューと、
前記回転軸に沿った方向において前記溝形成面に対向するスクリュー対向面を有し、前記第1流路に連通する連通孔が形成されたバレルと、
を備え、
前記溝の深さは、前記溝形成面の中心に向かうほど浅くなり、
前記溶融部と前記吐出量調節機構と前記移動機構とを制御することによって、前記造形テーブルの造形領域に三次元造形物を造形し、
前記三次元造形物を造形する期間内に、前記吐出量調節機構を制御することによって、前記ノズルから前記造形材料の吐出を停止させた後、前記ノズルから前記造形領域への前記造形材料の吐出の再開に先立って、前記吐出量調節機構を制御することによって前記溶融部と前記ノズルとを連通させた状態において、前記フラットスクリューを回転させることによって前記溶融部に残留する前記造形材料を前記ノズルから前記造形領域とは異なる領域に排出させる、三次元造形装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置および三次元造形装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、溶融した熱可塑性の材料を、予め設定された形状データにしたがって走査する押出ノズルから基台上に押し出し、その基台上で硬化した材料の上に更に溶融した材料を積層して三次元造形物を作成する三次元造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-192710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した三次元造形装置では、ノズルからの材料の吐出を長時間停止させた後、吐出を再開させる場合、溶融部に残留する材料が熱や酸化によって変性して、三次元造形物の品質に影響を与える可能性があることを、本願の発明者らは見出した。そこで、本願は、このような場合であっても、三次元造形物の品質が低下することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を溶融させて造形材料にする溶融部と、前記溶融部に連通し、前記造形材料が流通する第1流路と、前記第1流路に連通し、前記造形材料を吐出するノズルと、前記第1流路に設けられ、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調節する吐出量調節機構と、前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層される造形テーブルと、前記ノズルと前記造形テーブルとの相対位置を変化させる移動機構と、前記溶融部と前記吐出量調節機構と前記移動機構とを制御することによって、前記造形テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、前記吐出量調節機構を制御することによって、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、前記ノズルから前記造形領域への前記造形材料の吐出の再開に先立って、前記溶融部および前記吐出量調節機構を制御することによって、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる材料パージ処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図。
図2】第1実施形態における吐出ユニットの概略構成を示す説明図。
図3】第1実施形態における吸引部の概略構成を示す説明図。
図4】第1実施形態におけるフラットスクリューの溝形成面の構成を示す斜視図。
図5】第1実施形態におけるバレルのスクリュー対向面の構成を示す上面図。
図6】第1実施形態における造形処理の内容を示すフローチャート。
図7】第1実施形態における材料パージ処理の内容を示すフローチャート。
図8】第2実施形態における材料パージ処理の内容を示すフローチャート。
図9】第3実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図。
図10】第3実施形態における材料パージ処理の内容を示すフローチャート。
図11】第4実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。本実施形態における三次元造形装置100は、吐出ユニット200と、造形テーブル300と、移動機構400と、材料供給機構500と、廃棄材料収容部600と、制御部700とを備えている。三次元造形装置100は、制御部700の制御下で、吐出ユニット200に設けられたノズル65から、造形テーブル300に向かって造形材料を吐出しつつ、移動機構400によって、ノズル65と造形テーブル300との相対的な位置を変化させることによって、造形テーブル300上に所望の形状の三次元造形物を造形する。尚、吐出ユニット200の詳細な構成については、図2を用いて後述する。
【0008】
移動機構400は、吐出ユニット200と造形テーブル300とのそれぞれを移動させることによって、ノズル65と造形テーブル300との三次元的な相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構400は、吐出ユニット200を移動させる第1移動機構410と、造形テーブル300を移動させる第2移動機構420とによって構成されている。第1移動機構410は、吐出ユニット200をX方向とY方向との2軸方向に移動可能に構成されている。第2移動機構420は、造形テーブル300をZ方向に移動可能に構成されている。第1移動機構410は、モーターの駆動力によって、吐出ユニット200を移動させる。第2移動機構420は、モーターの駆動力によって、造形テーブル300を移動させる。各モーターは、制御部700の制御下で駆動する。
【0009】
材料供給機構500は、三次元造形装置100における吐出ユニット200よりも上方に設けられている。材料供給機構500は、第1移動機構410によって材料供給機構500の下方に移動した吐出ユニット200に対して、三次元造形物の造形に用いられる材料を供給する。材料供給機構500は、材料を貯蔵する貯蔵部510と、貯蔵部510の下方に設けられた供給口520とを、複数組有している。供給口520の開閉によって、材料の供給のオンオフが切替えられる。例えば、制御部700の制御下で駆動するモーターによって開閉されるシャッターによって、供給口520が開閉される。
【0010】
本実施形態では、複数の貯蔵部510には、それぞれ異なる種類の材料が貯蔵されている。貯蔵部510には、例えば、三次元造形物の造形材料の元となる材料や、三次元造形物の形状を保持するための材料であるサポート材や、吐出ユニット200内に残留する造形材料や炭化物を除去するための材料であるパージ材が貯蔵されている。吐出ユニット200は、所望の材料を貯蔵する貯蔵部510の供給口520から、材料の供給を受ける。尚、材料供給機構500のことを、サポート材供給機構や、パージ材供給機構と呼ぶこともある。パージ材として、ポリオレフィン樹脂に添加剤が配合された洗浄剤や、ポリプロピレン樹脂等を用いることができる。パージ材は、例えば、吐出ユニット200内の古い造形材料を、新しい造形材料に入れ替える場合や、吐出ユニット200内の造形材料を、異なる種類の造形材料に入れ替える場合に用いられる。パージ材は、吐出ユニット200内の造形材料が入れ替えられた後、ノズル65から排出される。
【0011】
廃棄材料収容部600は、造形テーブル300に隣接して設けられている。本実施形態では、廃棄材料収容部600は、上方に向かって開口した箱である。廃棄材料収容部600は、第1移動機構410によって廃棄材料収容部600の上方に移動した吐出ユニット200のノズル65から排出された造形材料を収容する。尚、廃棄材料収容部600は、ノズル65から排出された造形材料の他に、ノズル65から排出されたサポート材やパージ材を収容してもよい。
【0012】
本実施形態では、廃棄材料収容部600における開口の外周部分に、ノズル65の先端部分を清掃するためのノズル清掃部材610が設けられている。本実施形態におけるノズル清掃部材610は、毛先が上方を向くように配置されたブラシである。尚、ノズル清掃部材610は、樹脂製や合成皮革製のシートであってもよい。
【0013】
制御部700は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部700は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。尚、制御部700は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0014】
図2は、本実施形態における吐出ユニット200の概略構成を示す説明図である。本実施形態における吐出ユニット200は、材料貯留部20と、溶融部30と、吐出部60と、吸引部80とを備えている。
【0015】
材料貯留部20は、材料供給機構500から供給されたペレットや粉末等の状態の材料を貯留する。本実施形態における材料は、ペレット状のABS樹脂である。本実施形態における材料貯留部20は、ホッパーによって構成されている。材料貯留部20と溶融部30との間は、材料貯留部20の下方に設けられた供給路22によって接続されている。材料貯留部20に貯留された材料は、供給路22を介して、溶融部30に供給される。
【0016】
溶融部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50とを備えている。溶融部30は、材料貯留部20から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を溶融させて流動性を有するペースト状の造形材料にして、ノズル65に供給する。尚、フラットスクリュー40のことを単にスクリューと呼ぶこともある。
【0017】
スクリューケース31は、フラットスクリュー40を収容する筐体である。スクリューケース31の上面には、駆動モーター32が固定されている。駆動モーター32は、フラットスクリュー40の上面41に接続されている。
【0018】
フラットスクリュー40は、中心軸AXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー40は、中心軸AXがZ方向に平行になるように、スクリューケース31内に配置されている。フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させるトルクによって、スクリューケース31内において、中心軸AXを中心に回転する。
【0019】
フラットスクリュー40は、中心軸AXに沿った方向における上面41とは反対側に溝形成面42を有している。溝形成面42には、溝部45が形成されている。フラットスクリュー40の溝形成面42の詳細な形状は、図4を用いて後述する。
【0020】
バレル50は、フラットスクリュー40の下方に設けられている。バレル50は、フラットスクリュー40の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。バレル50には、フラットスクリュー40の溝部45に対向する位置にヒーター58が内蔵されている。ヒーター58の温度は、制御部700によって制御される。尚、ヒーター58のことを加熱部と呼ぶこともある。
【0021】
スクリュー対向面52の中心には、連通孔56が設けられている。連通孔56は、吐出部60に連通している。尚、バレル50のスクリュー対向面52の詳細な形状については、図5を用いて後述する。
【0022】
吐出部60は、第1流路61と、吐出量調節機構70と、ノズル65とを備えている。第1流路61は、溶融部30の連通孔56に連通する。第1流路61には、溶融部30から供給された造形材料が流通する。ノズル65は、第1流路61に連通する。ノズル65には、第1流路61を介して造形材料が供給される。ノズル65は、先端部分に設けられたノズル孔67から造形材料を吐出する。本実施形態では、吐出部60には、ノズル65を加熱するノズルヒーター91が設けられている。ノズルヒーター91の温度は、制御部700によって制御される。ノズル65における造形材料の流動性を高めるために、ノズルヒーター91の温度は、バレル50のヒーター58の温度よりも高く設定される。
【0023】
吐出量調節機構70は、第1流路61に設けられている。吐出量調節機構70は、第1流路61の流路抵抗を変化させることによって、ノズル65からの造形材料の吐出量を調節する。本実施形態における吐出量調節機構70は、バタフライバルブによって構成されている。本実施形態における吐出量調節機構70は、軸状部材である駆動軸71と、駆動軸71の回転に伴って回転する板状の弁体72とを備えている。駆動軸71の中心軸に沿った方向と、第1流路61における造形材料の流れ方向とが交差するように、駆動軸71が配置されている。弁体72は、第1流路61を横断するように配置されている。駆動軸71は、制御部700の制御下で駆動するモーターによって回転させられる。図2に示すように、弁体72の板状の面が、第1流路61における造形材料の流れ方向と平行な状態では、溶融部30とノズル65との間が連通状態となるためノズル65から造形材料が吐出される。駆動軸71が中心軸を中心に回転することによって、弁体72が第1流路内において回転する。弁体72の回転角に応じて、第1流路61の流路断面積は変化する。第1流路61の流路断面積は減少に応じて、ノズル65からの造形材料の吐出量減少する。図2に破線で示すように、弁体72の板状の面が、第1流路61における造形材料の流れ方向と垂直な状態、換言すれば、弁体72によって第1流路61の流路断面積がゼロにされた状態では、溶融部30とノズル65との間が非連通状態となるためノズル65からの造形材料の吐出は停止される。
【0024】
本実施形態では、第1流路61における吐出量調節機構70とノズル65との間に、吸引部80が設けられている。
【0025】
図3は、吸引部80の概略構成を示す説明図である。本実施形態では、吸引部80は、第1流路61に接続された円筒状のシリンダー81と、シリンダー81内に収容されたプランジャー82と、プランジャー82を駆動させるプランジャー駆動部83とを備えている。本実施形態では、プランジャー駆動部83は、制御部700の制御下で駆動するモーターと、モーターの回転をシリンダー81の軸方向に沿った並進方向の移動に変換するラックアンドピニオンによって構成されている。尚、プランジャー駆動部83は、制御部700の制御下で駆動するモーターと、モーターの回転をシリンダー81の軸方向に沿った並進方向の移動に変換するボール螺子によって構成されてもよいし、ソレノイド機構やピエゾ素子等のアクチュエーターによって構成されてもよい。
【0026】
図3に矢印を用いて表したように、プランジャー82が第1流路61から遠ざかる方向に移動した場合には、シリンダー81内が負圧となるため、第1流路61からノズル65にかけての造形材料は、シリンダー81内に吸引される。一方、プランジャー82が第1流路61に近付く方向に移動した場合には、シリンダー81内の造形材料は、プランジャー82によって第1流路61に押し出される。
【0027】
図4は、本実施形態におけるフラットスクリュー40の溝形成面42の構成を示す斜視図である。図4に示したフラットスクリュー40は、技術の理解を容易にするために、図2に示した上下の位置関係を逆向きとした状態で示されている。フラットスクリュー40の溝形成面42には、上述したとおり、溝部45が形成されている。溝部45は、中央部46と、渦状部47と、材料導入部48とを有している。
【0028】
中央部46は、フラットスクリュー40の中心軸AXの周りに形成された円形の窪みである。中央部46は、バレル50に設けられた連通孔56に対向する。
【0029】
渦状部47は、中央部46を中心として、溝形成面42の外周に向かって弧を描くように渦状に延びる溝である。渦状部47は、インボリュート曲線状や螺旋状に延びるように構成されてもよい。渦状部47の一端は、中央部46に接続されている。渦状部47の他端は、材料導入部48に接続されている。
【0030】
材料導入部48は、スクリュー対向面52の外周縁に設けられた渦状部47よりも幅広な溝である。材料導入部48は、フラットスクリュー40の側面43まで連続している。材料導入部48は、供給路22を介して材料貯留部20から供給された材料を、渦状部47に導入する。
【0031】
図5は、本実施形態におけるバレル50のスクリュー対向面52の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、ノズル65に連通する連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。
【0032】
上述した三次元造形装置100の構成によれば、材料供給機構500から供給されて、材料貯留部20内に貯留された材料は、供給路22を通って、回転しているフラットスクリュー40の側面43から材料導入部48に供給される。材料導入部48内に供給された材料は、フラットスクリュー40の回転によって、渦状部47内へと搬送される。
【0033】
渦状部47内に搬送された材料は、フラットスクリュー40の回転と、バレル50に内蔵されたヒーター58による加熱とによって、少なくとも一部が溶融されて、流動性を有するペースト状の造形材料となる。
【0034】
フラットスクリュー40の回転によって、渦状部47内を中央部46に向かって造形材料が搬送される。中央部46に搬送された造形材料は、連通孔56から第1流路61を介してノズル65に送出され、ノズル65から造形テーブル300に向かって吐出される。このようにして、造形テーブル300上に造形材料が積層されることによって、三次元造形物が造形される。
【0035】
図6は、三次元造形物の造形を実現するための造形処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、三次元造形装置100に設けられた操作パネルや、三次元造形装置100に接続されたコンピューターに対して、所定の開始操作がユーザーによって行われた場合に実行される。
【0036】
まず、ステップS110にて、制御部700は、溶融部30と、吐出量調節機構70と、第1移動機構410と、第2移動機構420とを制御することによって、ノズル65から造形材料を吐出して、造形テーブル300の造形領域に三次元造形物を造形する。造形領域とは、三次元造形物が造形される領域である。造形領域は、三次元造形物の造形を行うためのGコードに含まれる造形パスデータによって設定される。
【0037】
次に、ステップS120にて、制御部700は、連続した造形パスの末端であるか否かを判定する。連続した造形パスの末端であるか否かは、三次元造形物の造形を行うためのGコードに含まれる造形パスデータを用いて判断できる。ステップS120にて、連続した造形パスの末端であると判断されなかった場合、制御部700は、ステップS120の処理を繰り返しながら、三次元造形物の造形を継続する。
【0038】
一方、ステップS120にて、連続した造形パスの末端であると判断された場合、ステップS130にて、制御部700は、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を非連通状態にし、さらに、吸引部80を制御することによって、第1流路61からノズル65にかけての造形材料を吸引する。ノズル65からの造形材料の吐出が停止されるタイミングは、吐出量調節機構70によって溶融部30とノズル65との間が非連通状態にされたタイミングから遅れる。そのため、制御部700は、連続した造形パスの末端において、造形材料の過不足が生じないように、吐出量調節機構70と、吸引部80とを制御する。
【0039】
吐出量調節機構70を制御することによって、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させた後、ステップS140にて、制御部700は、予め定められた期間以上に亘ってノズル65からの造形材料の吐出を停止させた後に再開させるか否かを判定する。尚、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させることには、三次元造形物の電源がオフにされることによって、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させることは含まれない。
【0040】
予め定められた期間は、造形材料の変性が進行する速さに応じて設定できる。例えば、予め行われる試験によって、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから、造形材料の変性によって三次元造形物の品質低下が生じるまでの期間を調べることによって、上記期間を設定できる。また、材料に熱可塑性樹脂が含まれる場合には、熱可塑性樹脂のガラス転移点に応じて、上記期間を設定してもよい。この場合、材料に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移点が低いほど、上記期間は短く設定される。つまり、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも、第2熱可塑性樹脂のガラス転移点の方が低い場合、材料に第1熱可塑性樹脂が含まれる場合の上記期間よりも、材料に第2熱可塑性樹脂が含まれる場合の上記期間の方が短く設定される。本実施形態では、材料として熱可塑性樹脂であるABS樹脂が用いられるため、ABS樹脂のガラス転移点に応じた期間が設定されている。尚、上記期間は、材料の種類に応じて設定できる。材料に複数種類の熱可塑性樹脂が含まれる場合には、複数種類の熱可塑性樹脂の内、最も物質量の大きい熱可塑性樹脂のガラス転移点を用いて、上記期間を設定してもよい。上記期間のことを待機期間と呼ぶこともある。
【0041】
ノズル65からの造形材料の吐出を停止させる場合には、例えば、材料供給機構500から材料の供給を受けるために、ノズル65からの造形材料の吐出を一時的に停止させる場合等がある。この場合、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させる期間は、吐出ユニット200が材料供給機構500の下方まで移動するために必要な時間と、吐出ユニット200が材料供給機構500から材料の供給を受けるために必要な時間とを合算することによって算出できる。吐出ユニット200の移動のために必要な時間は、吐出ユニット200の現在位置と、材料供給機構500の位置と、吐出ユニット200によって次に造形を行う位置と、吐出ユニット200の移動速度とを用いて算出できる。吐出ユニット200が材料供給機構500から材料の供給を受けるために必要な時間は、制御部700に予め記憶させることができる。
【0042】
ステップS140にて、予め定められた期間以上に亘ってノズル65からの造形材料の吐出を停止した後に再開させると判断されなかった場合、制御部700は、この造形パスの造形処理を終了し、次の造形パスの造形を行うために、ステップS110から造形処理を再開する。
【0043】
一方、ステップS140にて、予め定められた期間以上に亘ってノズル65からの造形材料の吐出を停止させた後に再開させると判断された場合、制御部700は、ステップS200にて、材料パージ処理を実行した後に、この造形パスの造形処理を終了し、次の造形パスの造形を行うために、ステップS110から造形処理を再開する。制御部700は、三次元造形物の造形が完了するまで、この処理を繰り返す。
【0044】
図7は、本実施形態における材料パージ処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、三次元造形物を造形する期間内において、制御部700によって実行される。三次元造形物を造形する期間内とは、制御部700によって、三次元造形物の造形を実現するための造形処理が開始されてから、三次元造形物の造形が完了して造形処理が終了されるまでの期間内のことを意味する。材料パージ処理が開始されると、まず、ステップS210にて、制御部700は、駆動モーター32を制御することによって、フラットスクリュー40の回転を停止させ、さらに、バレル50のヒーター58を制御することによって、バレル50の加熱を停止させる。
【0045】
次に、ステップS220にて、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を再開させるか否かを判定する。制御部700は、例えば、三次元造形物の造形を行うためのGコードに含まれる吐出量調節機構70の開閉フラグを用いて、ノズル65からの造形材料の吐出を再開させるか否かを判定できる。
【0046】
ステップS220にて、ノズル65からの造形材料の吐出を再開させると判断されなかった場合、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を再開させると判断されるまで、ステップS220の処理を繰り返す。
【0047】
一方、ステップS220にて、ノズル65からの造形材料の吐出を再開させると判断された場合、制御部700は、ステップS230にて、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を廃棄材料収容部600の上方に移動させる。
【0048】
ステップS240にて、制御部700は、吸引部80を制御することによって、吸引部80のシリンダー81内に残留する造形材料を第1流路61に押し出し、さらに、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を連通状態にする。
【0049】
ステップS250にて、制御部700は、駆動モーター32を制御することによって、フラットスクリュー40の回転を再開させ、さらに、バレル50のヒーター58を制御することによって、バレル50の加熱を再開させて、溶融部30からノズル65にかけて残留した造形材料を、ノズル65から廃棄材料収容部600に向かって排出させる。つまり、本実施形態では、制御部700は、溶融部30からノズル65にかけて残留する造形材料を、造形領域とは異なる領域である廃棄材料収容部600に向かって排出させる。溶融部30とノズル65との間が連通状態にされているため、フラットスクリュー40の回転によって、溶融部30からノズル65に新しい造形材料が供給される。供給された新しい造形材料によって、ノズル65から古い造形材料が押し出されて、廃棄材料収容部600に排出される。そのため、溶融部30からノズル65にかけて残留する古い造形材料は、新しい造形材料に置換される。この際に、溶融部30からノズル65にかけて残留する古い造形材料が新しい造形材料に確実に置換されるように、制御部700は、溶融部30からノズル65にかけての容積以上の造形材料を、ノズル65から排出させることが好ましい。ノズル65から排出された造形材料は、廃棄材料収容部600に収容される。
【0050】
ステップS260にて、制御部700は、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を非連通状態にし、さらに、吸引部80を制御することによって、第1流路61からノズル65にかけての造形材料を吸引部80のシリンダー81内に吸引する。そのため、吐出ユニット200が廃棄材料収容部600の上方から造形テーブル300の上方に移動する間に、ノズル65から造形材料が漏洩することが抑制される。
【0051】
ステップS270にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、ノズル65の先端部分を、ノズル清掃部材610に擦りつけて、ノズル65の先端部分に付着した造形材料を除去する。ステップS280にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を造形テーブル300の上方に移動させる。その後、制御部700は、この処理を終了し、造形処理を再開する。
【0052】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100によれば、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出が長期間に亘って停止された後、再開される場合には、造形領域への造形材料の吐出の再開に先立って、溶融部30からノズル65にかけて残留する古い造形材料を排出する。そのため、変性の進んだ古い造形材料によって、三次元造形物の品質が低下することを抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では、制御部700は、材料に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移点が低いほど早期に、溶融部30からノズル65にかけて残留する古い造形材料を排出させる。つまり、制御部700は、造形材料の耐熱性が低いほど早期に、溶融部30からノズル65にかけて残留する古い造形材料を排出させる。そのため、三次元造形物の品質が低下することを、より確実に抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、ノズル65からの造形材料の吐出が長期間に亘って停止される場合、制御部700がフラットスクリュー40の回転を停止させるため、造形材料の変性を抑制できる。
【0055】
また、本実施形態では、ノズル65からの造形材料の吐出が長期間に亘って停止される場合、制御部700がヒーター58によるバレル50の加熱を停止させるため、造形材料の変性を抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、ノズル清掃部材610によって、ノズル65の先端部分に付着した造形材料を除去できるため、ノズル65の目詰まりが生じることや、三次元造形物の品質が低下することを、より抑制できる。
【0057】
尚、本実施形態では、ペレット状のABS樹脂の材料が用いられたが、吐出ユニット200において用いられる材料としては、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形する材料を採用することもできる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0058】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、溶融部30において、当該材料が可塑化することによって造形材料が生成される。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。
【0059】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記のいずれか一つまたは2以上を組み合わせた熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0060】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、溶融部30において、フラットスクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル孔67から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0061】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル孔67から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂は、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル孔67からの射出時には約200℃であることが望ましい。このように高温の状態で造形材料を射出するために、ノズル孔67の周囲にはヒーターが設けられてもよい。
【0062】
吐出ユニット200では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、溶融部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0063】
吐出ユニット200においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、造形テーブル300に配置された造形材料は、例えばレーザーの照射や温風などによる焼結によって硬化されてもよい。
【0064】
材料貯留部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、溶融部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0065】
材料貯留部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0066】
その他に、材料貯留部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0067】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における材料パージ処理の内容を示すフローチャートである。第2実施形態の三次元造形装置100では、材料パージ処理の内容が第1実施形態と異なる。その他の構成は、特に説明しない限り、図1に示した第1実施形態と同じである。
【0068】
本実施形態では、材料パージ処理が開始されると、まず、ステップS305にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を材料供給機構500の下方に移動させる。
【0069】
次に、ステップS310にて、制御部700は、材料供給機構500を制御することによって、パージ材が貯蔵された貯蔵部510の供給口520から、吐出ユニット200の材料貯留部20にパージ材を供給する。
【0070】
吐出ユニット200へのパージ材の供給が終了した後、ステップS315にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を廃棄材料収容部600の上方に移動させる。
【0071】
ステップS320にて、制御部700は、吸引部80を制御することによって、吸引部80のシリンダー81内に残留する造形材料を第1流路61に押し出し、さらに、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を連通状態にする。
【0072】
ステップS325にて、制御部700は、フラットスクリュー40の回転によって、パージ材をノズル65に供給し、溶融部30からノズル65にかけて残留する造形材料をノズル65から排出する。つまり、制御部700は、フラットスクリュー40の回転によって、溶融部30からノズル65にかけて残留する造形材料を、パージ材に置換する。ノズル65から排出された造形材料やパージ材は、廃棄材料収容部600に収容される。
【0073】
残留する造形材料をパージ材に置換した後、ステップS330にて、制御部700は、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を非連通状態にする。そのため、ノズル65からの造形材料やパージ材の排出が停止される。尚、制御部700が吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を非連通状態にするタイミングは、後述するステップS335よりも後からステップS345よりも前であってもよい。
【0074】
ステップS335にて、制御部700は、駆動モーター32を制御することによって、フラットスクリュー40の回転を停止させ、さらに、バレル50のヒーター58を制御することによって、バレル50の加熱を停止させる。
【0075】
ステップS340にて、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を再開するか否かを判定する。ステップS340にて、ノズル65からの造形材料の吐出を再開すると判断されなかった場合、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を再開すると判断されるまで、ステップS340の処理を繰り返す。
【0076】
一方、ステップS340にて、ノズル65からの造形材料の吐出を再開すると判断された場合、ステップS345にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を材料供給機構500の下方に移動させる。
【0077】
ステップS350にて、制御部700は、材料供給機構500を制御することによって、造形材料の元となる材料が貯蔵された貯蔵部510の供給口520から、吐出ユニット200の材料貯留部20に造形材料の元となる材料を供給させる。
【0078】
ステップS355にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を廃棄材料収容部600の上方に移動させる。
【0079】
ステップS360にて、制御部700は、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を連通状態にする。
【0080】
ステップS365にて、制御部700は、駆動モーター32を制御することによって、フラットスクリュー40の回転を再開させ、さらに、バレル50のヒーター58を制御することによって、バレル50の加熱を再開させることによって、造形材料をノズル65に供給し、溶融部30からノズル65にかけて残留するパージ材をノズル65から排出させる。つまり、制御部700は、フラットスクリュー40の回転によって、溶融部30からノズル65にかけて残留するパージ材を、造形材料に置換する。ノズル65から排出された造形材料やパージ材は、廃棄材料収容部600に収容される。
【0081】
ステップS370にて、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65とを非連通状態にし、さらに、吸引部80を制御することによって、第1流路61からノズル65にかけての造形材料を吸引する。そのため、吐出ユニット200が廃棄材料収容部600の上方から造形テーブル300の上方に移動する間に、ノズル65から造形材料が漏洩することが抑制される。
【0082】
ステップS375にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、ノズル65の先端部分を、ノズル清掃部材610に擦りつけて、ノズル65の先端部分に付着した造形材料を除去する。ステップS380にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を造形テーブル300の上方に移動させる。その後、制御部700は、この処理を終了し、造形処理を再開する。
【0083】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100によれば、制御部700は、長期間に亘ってノズル65からの造形材料の吐出を停止させる場合には、溶融部30からノズル65にかけて残留する造形材料をパージ材に置換する。その後、ノズル65からの造形材料の吐出を再開させる場合には、溶融部30からノズル65にかけて残留するパージ材を新しい造形材料に置換する。そのため、溶融部30からノズル65にかけて造形材料が残留することが抑制されるとともに、パージ材によって溶融部30からノズル65にかけて洗浄できるので、三次元造形物の品質が低下することを、より抑制できる。
【0084】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態の三次元造形装置100cの概略構成を示す説明図である。第3実施形態の三次元造形装置100cは、空気供給機構800を備えていることが第1実施形態と異なる。また、第3実施形態の三次元造形装置100cでは、材料パージ処理の内容が第1実施形態と異なる。その他の構成は、特に説明しない限り、図1に示した第1実施形態と同じである。
【0085】
空気供給機構800は、コンプレッサー810と、空気供給流路820と、開閉弁830とを備えている。コンプレッサー810は、空気を加圧して圧縮空気にする。空気供給流路820は、コンプレッサー810と、第1流路61における吐出量調節機構70と吸引部80との間とを接続する。空気供給流路820における第1流路61との接続部の近傍には、開閉弁830が設けられている。開閉弁830は、制御部700の制御下で駆動するモーターによって開閉され、コンプレッサー810と第1流路61との連通状態と非連通状態とを切替える。
【0086】
図10は、第3実施形態における材料パージ処理の内容を示すフローチャートである。材料パージ処理が開始されると、まず、ステップS410にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を廃棄材料収容部600の上方に移動させる。
【0087】
次に、ステップS420にて、制御部700は、吸引部80を制御することによって、吸引部80のシリンダー81内に残留する造形材料を第1流路61に押し出す。
【0088】
ステップS430にて、制御部700は、駆動モーター32を制御することによって、フラットスクリュー40の回転を停止させる。
【0089】
ステップS440にて、制御部700は、コンプレッサー810と開閉弁830とを制御して、空気供給流路820を介して、第1流路61に圧縮空気を噴射させることによって、第1流路61からノズル65にかけて残留する造形材料を、ノズル65から排出させる。尚、ステップS420にて、吸引部80のプランジャー82が第1流路61側に移動しているため、シリンダー81内に圧縮空気が逃げることが抑制される。開閉弁830は、圧縮空気の噴射前に開弁され、圧縮空気の噴射後に閉弁される。
【0090】
ステップS450にて、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を再開するか否かを判定する。ステップS450にて、ノズル65からの造形材料の吐出を再開すると判断されなかった場合、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を再開すると判断されるまで、ステップS450の処理を繰り返す。
【0091】
一方、ステップS450にて、ノズル65からの造形材料の吐出を再開すると判断された場合、ステップS460にて、制御部700は、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65との間を連通状態にする。
【0092】
ステップS470にて、制御部700は、フラットスクリュー40の回転によって、造形材料をノズル65に供給し、溶融部30に残留する造形材料をノズル65から排出させる。ノズル65から排出された造形材料は、廃棄材料収容部600に収容される。
【0093】
ステップS480にて、制御部700は、吐出量調節機構70を制御することによって、溶融部30とノズル65とを非連通状態にし、さらに、吸引部80を制御することによって、第1流路61からノズル65にかけての造形材料を吸引する。そのため、吐出ユニット200が廃棄材料収容部600の上方から造形テーブル300の上方に移動する間に、ノズル65から造形材料が漏洩することが抑制される。
【0094】
ステップS490にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、ノズル65の先端部分を、ノズル清掃部材610に擦りつけて、ノズル65の先端部分に付着した造形材料を除去する。ステップS495にて、制御部700は、第1移動機構410を制御することによって、吐出ユニット200を造形テーブル300の上方に移動させる。その後、制御部700は、この処理を終了し、造形処理を再開する。
【0095】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100cによれば、制御部700は、長期間に亘ってノズル65からの造形材料の吐出を停止させる場合には、第1流路61からノズル65にかけて残留する造形材料を圧縮空気によって、ノズル65から排出する。その後、ノズル65からの造形材料の吐出を再開する場合には、溶融部30に残留する古い造形材料を新しい造形材料に置換する。そのため、三次元造形物の品質が低下することを、より抑制できる。特に、本実施形態では、ノズルヒーター91による加熱に伴って、変性が進行しやすいノズル65に残留する造形材料を、変性が進行する前に圧縮空気によって排出できる。そのため、ノズル65の目詰まりが生じることや、三次元造形物の品質が低下することを、効果的に抑制できる。
【0096】
D.第4実施形態:
図11は、第4実施形態の三次元造形装置100dの概略構成を示す説明図である。第4実施形態の三次元造形装置100dは、第1吐出ユニット200Aと第2吐出ユニット200Bとを備えていることが第1実施形態と異なる。その他の構成は、特に説明しない限り、図1に示した第1実施形態と同じである。
【0097】
第1吐出ユニット200Aの構成は、第2吐出ユニット200Bの構成と同じである。第1吐出ユニット200Aの構成、および、第2吐出ユニット200Bの構成は、図2に示した第1実施形態の吐出ユニット200の構成と同じである。尚、以下の説明において、第1吐出ユニット200Aに係る構成要素には符号の末尾に「A」を付して説明し、第2吐出ユニット200Bに係る構成要素には符号の末尾に「B」を付して説明する。また、第1吐出ユニット200Aの備えるノズル65Aのことを、第1ノズル65Aと呼び、第2吐出ユニット200Bの備えるノズル65Bのことを第2ノズル65Bと呼ぶ。
【0098】
本実施形態では、第1移動機構410は、第1吐出ユニット200Aと第2吐出ユニット200Bとのそれぞれを独立して移動可能に構成されている。本実施形態では、第1吐出ユニット200Aには、材料供給機構500から造形材料が供給される。第2吐出ユニット200Bには、材料供給機構500からサポート材が供給される。制御部700は、第1吐出ユニット200Aの第1ノズル65Aから造形テーブル300の造形領域に造形材料を吐出させ、第2吐出ユニット200Bの第2ノズル65Bから造形テーブル300の造形領域にサポート材を吐出させることによって、三次元造形物を造形する。
【0099】
本実施形態では、第2吐出ユニット200Bの第2ノズル65Bからサポート材が吐出されている間は、第1吐出ユニット200Aの第1ノズル65Aからの造形材料の吐出が停止されている。予め定められた期間以上に亘って第1ノズル65Aからの造形材料の吐出を停止させた後に再開させると判断された場合、第1実施形態と同様にして、制御部700は、第1吐出ユニット200Aに対して材料パージ処理を実行する。一方、第1吐出ユニット200Aの第1ノズル65Aから造形材料が吐出されている間は、第2吐出ユニット200Bの第2ノズル65Bからのサポート材の吐出が停止されている。予め定められた期間以上に亘って第2ノズル65Bからのサポート材の吐出を停止させた後に再開させると判断された場合、第1実施形態と同様にして、制御部700は、第2吐出ユニット200Bに対して材料パージ処理を実行する。
【0100】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100dによれば、第2吐出ユニット200Bの第2ノズル65Bからのサポート材の吐出に伴って、第1吐出ユニット200Aの第1ノズル65Aからの造形材料の吐出が長期間に亘って停止された後、再開される場合には、制御部700は、造形領域への造形材料の吐出の再開に先立って、溶融部30Aから第1ノズル65Aにかけて残留する古い造形材料を排出させる。また、第1吐出ユニット200Aの第1ノズル65Aからの造形材料の吐出に伴って、第2吐出ユニット200Bの第2ノズル65Bからのサポート材の吐出が長期間に亘って停止された後、再開される場合には、制御部700は、造形領域へのサポート材の吐出の再開に先立って、溶融部30Bから第2ノズル65Bにかけて残留する古いサポート材を排出させる。そのため、変性の進んだ古い造形材料やサポート材によって、三次元造形物の品質が低下することを抑制できる。
【0101】
尚、三次元造形装置100dにおいて、制御部700は、第2実施形態と同様の材料パージ処理を実行してもよい。また、三次元造形装置100dは、さらに、空気供給機構800を備え、制御部700は、第3実施形態と同様の材料パージ処理を実行してもよい。
【0102】
E.他の実施形態:
(E1)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dでは、制御部700は、材料パージ処理において、フラットスクリュー40の回転を停止させるとともに、バレル50のヒーター58の加熱を停止させている。これに対して、制御部700は、材料パージ処理において、フラットスクリュー40の回転、または、バレル50のヒーター58の加熱を停止させなくてもよい。制御部700は、材料パージ処理において、フラットスクリュー40の回転を停止させずに、かつ、バレル50のヒーター58の加熱を停止させなくてもよい。
【0103】
(E2)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dでは、制御部700は、ノズル65から造形材料を排出させる前に、フラットスクリュー40の回転を停止させるとともに、バレル50のヒーター58の加熱を停止させている。これに対して、制御部700は、ノズル65から造形材料を排出させた後に、フラットスクリュー40の回転、または、バレル50のヒーター58の加熱を停止させてもよい。制御部700は、ノズル65から造形材料を排出させた後に、フラットスクリュー40の回転を停止させるとともに、バレル50のヒーター58の加熱を停止させてもよい。この場合、ノズル65から造形材料を排出させた後、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから再開させるまでの間における、造形材料の変性を抑制できる。
【0104】
(E3)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dでは、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから再開させるまでの期間内において、ノズル65から造形材料を排出させるとともに、フラットスクリュー40の回転を停止させ、バレル50のヒーター58の加熱を停止させている。これに対して、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから再開させるまでの期間内において、ノズル65から造形材料を排出させなくてもよい。制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから再開させるまでの期間内において、ノズル65から造形材料を排出させずに、フラットスクリュー40の回転を停止させるのみでもよいし、バレル50のヒーター58の加熱を停止させるのみでもよい。制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから再開させるまでの期間内において、ノズル65から造形材料を排出させずに、フラットスクリュー40の回転を停止させるとともに、バレル50のヒーター58の加熱を停止させてもよい。この場合であっても、残留する造形材料の変性を抑制できるため、三次元造形物の品質が低下することを抑制できる。
【0105】
(E4)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dでは、吐出部60には、ノズルヒーター91が設けられている。これに対して、吐出部60には、ノズルヒーター91が設けられていなくてもよい。
【0106】
(E5)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dにおいて、溶融部30は、フラットスクリュー40を備えている。これに対して、溶融部30は、フラットスクリュー40の代わりに、Z方向においてフラットスクリュー40よりも長尺のインラインスクリューを備えてもよい。また、溶融部30は、フラットスクリュー40やインラインスクリューを備えておらず、ヒーター等の加熱部による加熱によって材料を溶融させる形態であってもよい。
【0107】
(E6)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dにおいて、移動機構400は、吐出ユニット200をX方向とY方向との2軸方向に移動させる第1移動機構410と、造形テーブル300をZ方向に移動させる第2移動機構420とによって構成されている。これに対して、移動機構400は、吐出ユニット200を、X方向とY方向とZ方向との3軸方向に移動させる形態であってもよい。また、移動機構400は、吐出ユニット200を移動させずに、造形テーブル300および廃棄材料収容部600をX方向とY方向とZ方向との3軸方向に移動させる形態であってもよい。この場合、移動機構400は、材料供給機構500を移動させて吐出ユニット200に材料を供給可能に構成されていればよい。
【0108】
(E7)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dにおいて、制御部700は、パージ処理において、溶融部30からノズル65にかけて残留した造形材料を、造形領域とは異なる領域である廃棄材料収容部600に向かって排出させる。これに対して、制御部700は、パージ処理において、溶融部30からノズル65にかけて残留した造形材料を、造形領域とは異なる造形テーブル300上の領域に向かって排出させてもよい。
【0109】
(E8)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dにおいて、制御部700は、予め定められた期間以上に亘ってノズル65からの造形材料の吐出を停止させた後に再開させると判断された場合に、材料パージ処理を実行する。これに対して、制御部700は、予め定められた期間を用いずに、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させた後に再開させるまでの間に、造形材料の変性が進行したと判断した場合に、材料パージ処理を実行してもよい。例えば、フラットスクリュー40を回転させる駆動モーター32の回転数の変化によって、造形材料の変性が進行したか否かを判断してもよい。その他、各種センサーによって、造形材料の物性の変化を検出することによって、造形材料の変性が進行したか否かを判断してもよい。
【0110】
(E9)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dにおいて、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから予め定められた期間が経過したタイミングにて、材料パージ処理を実行してもよい。例えば、制御部700は、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから予め定められた期間が経過したか否かを判定し、ノズル65からの造形材料の吐出を停止させてから予め定められた期間が経過したと判断された場合に、材料パージ処理を実行してもよい。
【0111】
(E10)上述した各実施形態の三次元造形装置100,100c,100dは、ノズル清掃部材610を備えなくてもよい。
【0112】
F.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0113】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を溶融させて造形材料にする溶融部と、前記溶融部に連通し、前記造形材料が流通する第1流路と、前記第1流路に連通し、前記造形材料を吐出するノズルと、前記第1流路に設けられ、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調節する吐出量調節機構と、前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層される造形テーブルと、前記ノズルと前記造形テーブルとの相対位置を変化させる移動機構と、前記溶融部と前記吐出量調節機構と前記移動機構とを制御することによって、前記造形テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、前記吐出量調節機構を制御することによって、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、前記ノズルから前記造形領域への前記造形材料の吐出の再開に先立って、前記溶融部および前記吐出量調節機構を制御することによって、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる材料パージ処理を実行する。
この形態の三次元造形装置によれば、ノズルからの造形材料の吐出が停止された後、再開される場合には、造形領域への造形材料の吐出の再開に先立って、溶融部からノズルにかけて残留する造形材料が排出される。そのため、三次元造形物の品質が低下することを抑制できる。
【0114】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記材料は、熱可塑性樹脂を含み、前記制御部は、前記吐出量調節機構を制御することによって、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、前記熱可塑性樹脂のガラス転移点に応じて定められた待機期間が経過した場合に、前記材料パージ処理を実行し、前記待機期間は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点に応じて定められる場合の長さよりも、前記第1熱可塑性樹脂よりもガラス転移点の低い第2熱可塑性樹脂のガラス転移点に応じて定められる場合の長さの方が短くてもよい。
この形態の三次元造形装置によれば、造形材料の耐熱性の指標となるガラス転移点が低いほど早期に、残留する造形材料が排出される。そのため、三次元造形物の品質が低下することを、より確実に抑制できる。
【0115】
(3)上記形態の三次元造形装置は、さらに、前記溶融部にパージ材を供給するパージ材供給機構を備え、前記制御部は、前記材料パージ処理において、前記移動機構と前記パージ材供給機構とを制御することによって、前記溶融部に前記パージ材を供給し、前記パージ材を用いて、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させてもよい。
この形態の三次元造形装置によれば、材料パージ処理において、溶融部からノズルにかけて残留する造形材料がパージ材に置換される。そのため、溶融部からノズルにかけて造形材料が残留することを抑制できるとともに、溶融部からノズルにかけてパージ材によって洗浄できる。
【0116】
(4)上記形態の三次元造形装置は、さらに、前記第1流路における前記吐出量調節機構と前記ノズルとの間に、圧縮空気を供給する空気供給機構を備え、前記制御部は、前記材料パージ処理において、前記溶融部に残留する前記造形材料の排出に先立って、前記空気供給機構を制御することによって、前記圧縮空気を用いて、前記第1流路に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させてもよい。
この形態の三次元造形装置によれば、材料パージ処理において、溶融部に残留する造形材料の排出に先立って、第1流路からノズルにかけて残留する造形材料が空気に置換される。そのため、第1流路からノズルにかけて造形材料が残留することを抑制できるとともに、ノズルの目詰まりが生じることを抑制できる。
【0117】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記溶融部は、溝を有するスクリューと、前記材料を加熱する加熱部とを備え、前記スクリューの回転、および、前記加熱部による加熱によって前記材料を溶融させて前記造形材料とし、前記制御部は、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後であり、かつ、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる前または後に、前記スクリューの回転を停止させてもよい。
この形態の三次元造形装置によれば、スクリューの回転を停止させることによって、溶融部における造形材料の変性を抑制できる。
【0118】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記溶融部は、前記スクリューとして、前記溝を形成された溝形成面を有するフラットスクリューと、前記溝形成面に対向し、中央に前記第1流路に連通する連通孔が形成されたスクリュー対向面、および、前記加熱部を有するバレルと、を備え、前記フラットスクリューの回転、および、前記加熱部による加熱によって前記材料を溶融させて前記造形材料として、前記連通孔から前記第1流路に前記造形材料を供給してもよい。
この形態の三次元造形装置によれば、小型なフラットスクリューによって造形材料を溶融させるため、三次元造形装置を小型化できる。
【0119】
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後であり、かつ、前記溶融部に残留する前記造形材料を前記造形領域とは異なる領域に排出させる前または後に、前記加熱部による加熱を停止させてもよい。
この形態の三次元造形装置によれば、加熱部による材料の加熱を停止させることによって、溶融部における造形材料の変性を抑制できる。
【0120】
(8)本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、溝を有するスクリューを有し、前記スクリューの回転によって材料の少なくとも一部を溶融させて造形材料とする溶融部と、前記溶融部に連通し、前記造形材料が流通する第1流路と、前記第1流路に連通し、前記造形材料を吐出するノズルと、前記第1流路に設けられ、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調節する吐出量調節機構と、前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層される造形テーブルと、前記ノズルと前記造形テーブルとの相対位置を変化させる移動機構と、前記溶融部と前記吐出量調節機構と前記移動機構とを制御することによって、前記造形テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、前記吐出量調節機構を制御することによって前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、かつ、前記ノズルから前記造形領域への前記造形材料の吐出を再開させる前に、前記スクリューの回転を停止させる。
この形態の三次元造形装置によれば、ノズルからの造形材料の吐出が停止された後、再開される場合には、スクリューの回転を停止させることによって、溶融部における造形材料の変性を抑制できる。そのため、三次元造形物の品質が低下することを抑制できる。
【0121】
(9)本開示の第3の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を加熱する加熱部を有し、前記加熱部による加熱によって前記材料の少なくとも一部を溶融させて造形材料にする溶融部と、前記溶融部に連通し、前記造形材料が流通する第1流路と、前記第1流路に連通し、前記造形材料を吐出するノズルと、前記第1流路に設けられ、前記ノズルからの前記造形材料の吐出量を調節する吐出量調節機構と、前記ノズルから吐出された前記造形材料が積層される造形テーブルと、前記ノズルと前記造形テーブルとの相対位置を変化させる移動機構と、前記溶融部と前記吐出量調節機構と前記移動機構とを制御することによって、前記造形テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備える。前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、前記吐出量調節機構を制御することによって前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止させた後、かつ、前記ノズルから前記造形領域への前記造形材料の吐出を再開させる前に、前記加熱部による前記材料の加熱を停止させる。
この形態の三次元造形装置によれば、ノズルからの造形材料の吐出が停止された後、再開される場合には、加熱部による材料の加熱を停止させることによって、溶融部における造形材料の変性を抑制できる。そのため、三次元造形物の品質が低下することを抑制できる。
【0122】
本開示は、三次元造形装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、三次元造形装置の制御方法、造形材料のパージ方法等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0123】
20…材料貯留部、22…供給路、30…溶融部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、41…上面、42…溝形成面、43…側面、45…溝部、46…中央部、47…渦状部、48…材料導入部、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…吐出部、61…第1流路、65…ノズル、65A…第1ノズル、65B…第2ノズル、67…ノズル孔、70…吐出量調節機構、71…駆動軸、72…弁体、80…吸引部、81…シリンダー、82…プランジャー、83…プランジャー駆動部、91…ノズルヒーター、100,100c,100d…三次元造形装置、200…吐出ユニット、200A…第1吐出ユニット、200B…第2吐出ユニット、300…造形テーブル、400…移動機構、410…第1移動機構、420…第2移動機構、500…材料供給機構、510…貯蔵部、520…供給口、600…廃棄材料収容部、610…ノズル清掃部材、700…制御部、800…空気供給機構、810…コンプレッサー、820…空気供給流路、830…開閉弁、AX…中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11