(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】搬送体に対する搬送管理装置および方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/08 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B65G43/08 C
B65G43/08 F
(21)【出願番号】P 2019091160
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】保富 裕二 アンドレ
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-331110(JP,A)
【文献】特開平07-044232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00-43/10
B65G 47/64、47/68-47/78
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ラインでの搬送体の搬送を管理する搬送体に対する搬送管理装置において、
前記搬送ライン上の前記搬送体の搬送経路を示す複数のルートそれぞれについて、当該ルートの特徴点の位置情報および搬送状態を含むルート情報を記憶する記憶手段と、
搬送中の前記搬送体の搬送状態を、前記搬送体に設置されたセンサから受信する搬送状態受信手段と、
前記搬送状態受信手段で受信された搬送状態と、前記記憶手段に記憶された複数のルート情報のそれぞれを照合して、当該搬送状態に対応するルート情報を特定するルート情報特定手段と、
特定された前記ルート情報を用いて、前記搬送中の搬送体の位置を算出する位置算出手段とを有することを特徴とする搬送体に対する搬送管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送体に対する搬送管理装置において、
前記記憶手段は、前記ルート情報として、前記特徴点の位置情報および搬送状態に、前記搬送体の搬送順序を対応づけた前記ルート情報を記憶し、
前記搬送状態受信手段は、前記センサでの所定の検出順序に従って複数の搬送状態を受信し、
前記ルート情報特定手段は、受信された前記搬送状態を、前記検出順序に対応する搬送順序に対応付けられた搬送状態と照合して、前記ルート情報を特定することを特徴とする搬送体に対する搬送管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送体に対する搬送管理装置において、
前記ルート情報特定手段は、前記検出順序または前記搬送順序に従った順序で、順次前記照合を実行することを特徴とする搬送体に対する搬送管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送体に対する搬送管理装置において、
前記ルート情報特定手段は、順次行われる前記照合のそれぞれで、当該照合の結果が一致するルート情報を特定することを特徴とする搬送体に対する搬送管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送体に対する搬送管理装置において、
前記ルート情報特定手段で、順次行われる前記照合のそれぞれで当該照合の結果が一致するルート情報がない場合、前記搬送体の搬送が異常であると判定する異常判定手段をさらに有することを特徴とする搬送体に対する搬送管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送体に対する搬送管理装置において、
前記異常判定手段は、機械学習モデルを用いた学習を行い、当該学習の結果を前記異常の判定に反映させることを特徴とする搬送体に対する搬送管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送体に対する搬送管理装置において、
前記異常判定手段は、前記機械学習モデルを、前記搬送状態受信手段で受信された搬送状態を教師データとして用いることを特徴とする搬送体に対する搬送管理装置。
【請求項8】
搬送ラインでの搬送体の搬送を管理する搬送管理装置を用いた搬送体に対する搬送管理方法において、
前記搬送管理装置は、前記搬送ライン上の前記搬送体の搬送経路を示す複数のルートそれぞれについて、当該ルートの特徴点の位置情報および搬送状態を含むルート情報を記憶する記憶手段を有し、
搬送中の前記搬送体の搬送状態を、前記搬送体に設置されたセンサから受信する搬送状態受信する搬送状態受信ステップと、
受信された前記搬送状態と、前記記憶手段に記憶された複数のルート情報のそれぞれを照合して、当該搬送状態に対応するルート情報を特定するルート情報特定ステップと、
特定された前記ルート情報を用いて、前記搬送中の搬送体の位置を算出する位置算出ステップを有することを特徴とする搬送体に対する搬送管理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送体に対する搬送管理方法において、
前記記憶手段は、前記ルート情報として、前記特徴点の位置情報および搬送状態に、前記搬送体の搬送順序を対応づけた前記ルート情報を記憶し、
前記搬送状態受信ステップは、前記センサでの所定の検出順序に従って複数の搬送状態を受信し、
前記ルート情報特定ステップは、受信された前記搬送状態を、前記検出順序に対応する搬送順序に対応付けられた搬送状態と照合して、前記ルート情報を特定することを特徴とする搬送体に対する搬送管理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の搬送体に対する搬送管理方法において、
前記ルート情報特定ステップは、前記検出順序または前記搬送順序に従った順序で、順次前記照合を実行することを特徴とする搬送体に対する搬送管理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の搬送体に対する搬送管理方法において、
前記ルート情報特定ステップは、順次行われる前記照合のそれぞれで、当該照合の結果が一致するルート情報を特定することを特徴とする搬送体に対する搬送管理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送体に対する搬送管理方法において、
前記ルート情報特定ステップでは、順次行われる前記照合のそれぞれで当該照合の結果が一致するルート情報がない場合、前記搬送体の搬送が異常であると判定する異常判定ステップをさらに有することを特徴とする搬送体に対する搬送管理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の搬送体に対する搬送管理方法において、
前記異常判定ステップは、機械学習モデルを用いた学習を行い、当該学習の結果を前記異常の判定に反映させることを特徴とする搬送体に対する搬送管理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の搬送体に対する搬送管理方法において、
前記異常判定ステップは、前記機械学習モデルを、前記搬送状態受信ステップで受信された搬送状態を教師データとして用いることを特徴とする搬送体に対する搬送管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道などの搬送ラインでの搬送体の搬送を管理する技術に関する。その中でも特に、搬送体の搬送経過を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複数の搬送体を搬送する搬送システムが、自動配給や倉庫保管、製造、生産施設などで使われている。搬送システムは、複数の搬送ラインと、搬送体の搬送方向や速度を変える接続部と、搬送されるラインを分岐する分岐機構と、搬送体を停止する停止機構で構成される。
【0003】
以上のような搬送システムでは、搬送体を傷付けることなく迅速に運搬する要求がある。搬送される搬送体の損傷を防ぐためには、搬送ライン間の段差やライン間の水平方向の位置ずれを抑制することで、搬送体が引っ掛かる原因を予防する必要がある。そのための異常検出手段が必要であり、前述のような搬送システムには位置ずれなどを定期的に点検する機能が必要である。しかし、複数のラインが連結する搬送システムは、複雑で長距離のラインを有するため、時間を要し点検作業の負担が増加する。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1は、MEMS技術を応用した小型センサを利用し、搬送システムの状態を検出するセンサ(角速度センサ、加速度センサ、画像センサなど)を搬送体に組み込んだ例が示されている。搬送体の回転、傾き、速度の変化、または画像データを取得することで、信号処理後に搬送システムの搬送ライン間の接続部の段差、搬送ラインの平行度、搬送面の凹凸などを検出可能としている。また、特許文献2は、搬送ラインのカーブや原点などの複数箇所に磁気テープを貼り、搬送体に磁気センサを搭載することで、搬送体の位置を検出する例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2016/147714
【文献】特開平7-334238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、搬送体にRFIDタグを搭載し、搬送ラインに複数のRFIDリーダーを設け、RFIDリーダーでRFIDタグを検出することで搬送体の位置を検出している。そのため、搬送ラインが長距離となるとRFIDリーダーの設置コストが増大する。特許文献2の磁気テープを用いた構成でも同様にコスト増大が課題となる。また、このような搬送体の検出手段では、システムの複雑化によりRFIDリーダーまたは磁気テープが近接配置された場合、搬送体の管理が困難となるため、搬送体の現在位置を特定することが困難となる。
【0007】
一方、搬送システムの設置コストを低減するため、RFID、磁気センサ、通過センサなどの搬送体の検知手段をなくして搬送体の位置を推定する手段には、搬送ラインの速度の積分値から搬送体の移動距離を推定する方法がある。しかし、搬送体が搬送中に滑ったり、停止したり、引っかかったりするなどして推定位置が実際の位置とずれることがあるため、搬送体の位置の特定手段としては精度が低い。
【0008】
以上を鑑みて、搬送体の搬送経過を容易に検出可能な搬送システムを提供することを目的とする。なお、搬送経過には、搬送体の位置、異常有無の少なくとも一方が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送システムでは、搬送体に搬送状態を検出可能なセンサを設け、本センサを用いて、搬送経過を特定するものである。より詳細には、センサで検出された搬送状態と予め記憶されたルート情報を照合することで搬送経過を特定する。なお、搬送経過には、搬送体の位置や搬送ラインの異常の検出のいずれかを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば要因搬送体の搬送経過の検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例における搬送システムの基本構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例における複数のベルトライン上を進行するホルダの移動状態の一例である。
【
図3】本発明の一実施例における搬送体の位置を推定するフローチャート300である。
【
図4】本発明の一実施例における判断手段説明用の搬送システムの一部を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例における分類器214の詳細モデルの一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例における分類器214の詳細モデルの別の例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例における複数のベルトライン上を進行するホルダの移動状態を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例における複数のベルトライン上を進行するホルダの移動状態を示す図である。
【
図9】本発明の一実施例におけるルート情報データベース218の内容を示す図である。
【
図10】本発明の一実施例における搬送状態216を示す図である。
【
図11】本発明の一実施例で用いられる加速度を示す図である。
【
図12】本発明の一実施例で用いられる角速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかわる一実施例を、
図1から
図6を用いて説明する。
図1は、搬送システムの基本構造を示す図である。
図1では、搬送体101を搬送経路102で搬送する例を示す。搬送システム100は、少なくとも2つ以上の搬送ライン103で構成される。このほかに、搬送ライン103間を接続する接続部104と、搬送体101を一時停止することができる一時停止部(以下、停止部105)と、搬送体の進む搬送ラインを切り替える分岐部106を含む構成としても良い。搬送ライン103の形状はストレートで、2つの搬送ライン103の間には、接続部104が必要である。接続部104には、搬送ライン103同士を近接させる方法と、搬送ライン103の間に搬送体101の橋渡しをする部品を別途設ける方法がある。 また、搬送ライン103は、ベルトコンベアや磁気コンベアなどのように搬送体101を移動可能なシステムであればよい。
【0013】
本搬送システム100では、搬送体101の搬送状態を測定するセンサ107(以下、状態センサ)を搬送体101に搭載する。本実施例の状態センサ107は、加速度、あるいは角速度と、磁気を検出する手段を有する後述する信号処理では、少なくとも加速度と角速度のどちらか一方の信号が検出できれば良い。状態センサ107を搬送体101に取り付けることで、搬送中の搬送体101の状態(加速度または角速度及び周囲の磁気)を測定可能となる。以降の説明では、加速度、角速度、磁気が検出可能な状態センサ107を例に用いて説明する。
【0014】
また、PCなど情報処理装置で実現される管理装置110が、無線ネットワークを介して状態センサ107と接続される。この管理装置110において、搬送体101の位置推定ないし異常検出を行う。管理装置110は、CPU110-1、メモリ110-2、通信部110-3がそれぞれバスを介して接続されている。そして、搬送経過、つまり、位置推定や異常検出のための処理は、通信部110-3を介して状態センサ107からの搬送状態(本実施例では加速度データ211や角速度データ212)を受信する。また、メモリ110-2に展開されたコンピュータプログラムに従って、CPU110-1で位置推定ないし異常検出を行う。本処理の内容は、後述する。なお、本処理を搬送体101に設置したマイクロコンピュータで実行してもよい。なお、本願明細書での異常とは、想定される搬送状態以外であって、予め定めた条件を満たすもしくは満たさない結果を示すもので、異常の予兆も含む。
【0015】
図2に、本実施例における搬送体101の位置推定および異常検出手段の例を示す。搬送中の搬送体101にかかる加速度データ211、角速度データ212、磁気データ213の時系列データが入力データとなる。この入力データ210を事前に学習した学習済み分類器214(詳細は後述する)に入力することで、移動中、停止中といった搬送状態や、搬送ラインの接続部や分岐部などの通過状態を出力する。また、搬送システムの異常有無を示す搬送異常有無情報215を出力する。さらに、搬送状態216と記憶部217に書込まれた搬送状態の履歴をルート情報データベース218と照合することで、搬送体101の位置情報219を出力する。加えて、ルート情報データベース218にないルートを判定された場合、ずれはじめ異常位置を出力する。ルート情報は、接続部、停止部、分岐部などの搬送状態が変わる箇所や、各搬送ライン、または搬送可能なルートを登録されているデータベースである。なお、分類器214の機能は、管理装置110で実行されてもよいし、他の情報処理装置で実行されてもよい。ここで、ルート情報データベース218の一例を
図9に示す。なお、種別には、上述の特徴点の他、直線部を含めてもよい。
【0016】
図3は、管理装置110で実行される搬送体101の位置を推定するフローチャート300である。まず、本フローチャート300の概要を説明する。取得した搬送状態と過去の搬送状態を読み出してから、ルート情報データベース218の各ルート情報と比較する。読み出した搬送状態が、ルート情報とマッチした場合、ルート情報データベース218から搬送システムの位置が照合される。もしマッチしなければ、ルート情報データベース218のルート情報とずれ始めた位置を異常位置として出力する。例えば、
図4のように、搬送体101が搬送システム400中の搬送ライン401上にある場合、分類器214は、搬送開始後に、直進して、接続部を左折し、分岐部で右折して、搬送されていることを順番に出力する。それにより、本処理では、搬送開始後に、直進、接続部の通過、直進といった搬送状態を記憶部から読みだし、分岐部の通過を分類器214から分類する。そのあと、ルート情報データベース218のルート情報に同じシーケンスがあれば、本処理ではルート情報データベース218のルート情報から搬送体101が搬送ライン401と402の分岐部403にあると判断し、搬送体101の位置を出力する。
【0017】
次に、
図3に示すフローチャート300の処理の詳細を説明する。判定がスタートすると、ステップ301で、新搬送体、つまり、本処理を行う際の位置推定対象搬送体(以下、搬送体101)の搬送状態を受信する。この受信は、通信部110-3が搬送体101のセンサ207からの搬送状態の受信することで実現される。ここで、本受信は、周期的に行われるものであり、状態センサ107での検知に応じて実行される。なお、本ステップには、受信後に一時記憶した搬送状態を読み出すことも含まれる。また、周期的な受信を行うために、状態センサ107から一定時間ごとに搬送状態を送信してもよいし、状態センサ107が加速度や角速度に変化が生じた場合に、搬送状態を送信してもよい。
【0018】
次に、ステップ302において、スタートからの過去の搬送状態を読み出す。この過去の搬送状態とは、当該搬送における過去(該当受信以前)に受信した搬送状態を読み出すことを意味する。この搬送状態の一例を
図10に示す。この過去の搬送状態216は、前述のとおり記憶部217に格納してもよいし、その他、管理装置110の図示しない一時格納部に格納してもよい。そして、読み出した過去の搬送状態216に、ステップ301で受信した搬送状態をマージする。
【0019】
次に、ステップ303において、ステップ302でマージされた搬送状態と、ルート情報データベース218の比較を行う。これは、マージされた搬送状態と、各ルートのルート情報をそれぞれ総当たり方式で比較することで実行する。この一例を、
図10をマージされた搬送状態として説明する。
図10の最下部(最新)のレコードがステップ301で受信した搬送状態とする。
図10の加速度と各速度は、
図9のルート情報データベース218の加速度と各速度を比較する。ここでは、加速度と角速度を比較したが、いずれか一方でもよい。また、それぞれの経過時間と通過時間をまず比較し、次いで加速度、角速度を比較してもよい。なお、
図9、10では、加速度および角速度をそれぞれ数値で示したが、
図11(加速度)、
図12(角速度)のような波形を比較してもよい。この波形データは、搬送状態、ルート情報のいずれにも当てはまる。
【0020】
次に、ステップ304において、ステップ303の比較結果がマッチ(一致)する情報があるかを判断する。
図9および
図10の例では、ルート情報データベース218のうち、ルートA-1の上位4レコードと、マージされた搬送状態の角速度と加速度が一致するため、ルートA-1のルート情報を特定できる。この結果、本ステップ304では「はい」と判断し、ステップ305に進む。また、一致する情報がない場合は「いいえ」と判断し、ステップ306に進む。
【0021】
ここで、ステップ303、304の他の手法について、説明する。ステップ301では周期的に1レコードずつ搬送状態を受信する。受信した場合、最初の受信から受信ごとに比較を行い、一致しないルート情報を比較の対象から除外し、一致したルート情報を次回以降の受信の際の比較対象とする。そして、次回の受信の際には、受信した搬送状態と、比較の対象のルート情報に含まれる未比較レコードで最新のものと比較する。このことで、比較するデータ量を削減できる。
【0022】
なお、一致するかの判断は、完全一致か否か判断しなくともよい。例えば、比較の結果、所定範囲にあるもの、加速度と角速度の関係が同じであるものを含む。加速度と角速度の関係が同じとは、その比率が比較対象同士で同様であることを指す。
【0023】
さらに、また、一致するルート情報が複数あり、そのそれぞれの位置が一致しない場合、一致しない、つまり「いいえ」と判断してもよい。
【0024】
次に、ステップ305において、搬送体101の位置情報を出力する。具体的には、ルートA-1の「x3,y3」が出力される。これはステップ304において、一致したルート情報のうち、最も通過時間が遅い情報(つまり、ステップ301で受信した搬送状態に対応するレコード)の位置を位置情報として特定され、出力される。なお、この出力は、管理装置110の表示装置へ表示や、搬送状態216に位置情報を追加して記録することを含む。
【0025】
また、ステップ306においては、一致するルート情報が検索されなかったため、異常発生であることを出力する。また、ステップ306では、ずれはじめの異常位置を出力することも含む。ステップ304での判断において、一致しなくなったルート情報のレコードが示す位置を出力する。この位置は、始点から任意のレコードまでは一致しその後一致しなくなったレコードのうち、最も通過時間が小さなレコードが示す位置を意味する。また、始点から一致しない場合、始点をずれはじめの異常位置として出力する。この出力は、管理装置110の表示装置へ表示や、搬送状態216に位置情報を追加して記録することを含む。
【0026】
また、ステップ304の判断は、
図5、6を用いた説明(後述)のように、(機械)学習によりその精度を向上することを含む。
【0027】
以上のように、段差などで加速度が発生する接続部や、搬送体の向きが変わる分岐部などでは、状態センサ107で加速度や角速度として検出される信号を使うことで、搬送体101の現在位置を高精度に把握することができる。
【0028】
新しいルートの登録は、新しく搬送システム100を立ち上げる際のマッピングデータ作成に有効である。一度ルート情報を登録すれば、そのあとの位置検出が可能となる。
【0029】
以上の搬送状態216の検出によって、搬送体101がどの搬送ライン上にあるかを判断できる。さらに、搬送ライン203の搬送速度を積分することで、搬送ライン103の中のどの位置にあるかの推定も可能である。ただし、長い搬送ライン103では、搬送ライン103の速度の検出誤差などによる位置推定のばらつきが発生する可能性があるため、搬送ライン103の途中に一時停止部などの特徴点を設けることで位置推定の精度を向上できる。
【0030】
図5は、分類器214の詳細モデルの一例を示す図である。本例では分類器214がディープニューラネットワーク(以下、DNN)を用いて分類を行うが、サポートベクターマシンや、k近傍法、単純ベイズなどの分類手段を使用する方法もある。
図5のDNNは3層の畳み込みニューラルネットワーク501(以下、CNN501)と2層の全結合ニューラルネットワーク502(以下、全結合NN502)から構成される。CNN501は入力データからフィルタによって特徴点を抽出するために使用する。全結合NN502はCNN501で抽出された特徴を搬送状態216のアウトプット層に接続するため使用する。入力データ210は時系列データであるため、入力データ210の入力範囲503は特徴点が分類できる最短の範囲とすればよい。
【0031】
図6は、分類器214の別の実施例で、分類器214に全結合層230の代わりに再帰型ニューラルネットワーク601(以下、RNN601)を使った例である。RNN502を使うことで、前の時刻の中間層を次の時刻の入力と合わせて分類を行うことができるため、分類の精度を向上する。さらに、入力データ210の入力範囲503を短くできるため、短期間での複数搬送状態変更の場合の分類を向上する。RNN502としては、単純再帰型ニューラルネットワーク以外にLTSMやGRUが挙げられる。
図5または
図6のDNNで搬送体101の搬送状態を正しく検出するためには、DNNを学習する必要がある。異常がある場合とない場合のセンサ信号と実際の搬送体101の搬送状態をDNNに入力することで、教師あり学習ができ、搬送状態216または搬送異常有無情報215を出力できる。各搬送状態を精度よく検出するには、各搬送状態から最低1000個の学習データがあればよい。各異常状態を正確に検出するため、各異常状態を最低1000個の学習データを入力すればよい。ただし、異常有状態のデータセットを作成が困難な場合、各搬送状態の正常搬送の学習データを最低1000個で学習し、学習した信号と異なる信号を検出した場合に異常と判断すればよい。さらに、
図3で説明した搬送状態シーケンスがルート情報とマッチしない場合、それを搬送異常として判定すればよい。
以上の構成の搬送システム100によれば、搬送ライン103上にセンサを設けることなく、搬送体101の位置と異常を高精度に検出できる。
【0032】
図7は搬送システムの異常を解決するために、構成または搬送速度を自動的に調整される搬送システム700を示す図である。
図7に示す構成では、搬送システム700は搬送システム100と等しい構成を有する。また、搬送システム700は搬送ライン701をXYZ軸方向にアクチュエータで可動でき、Z軸回りに回転できる保持部702を有し、搬送ライン701の搬送速度を調整できる手段をも有する。保持部702のXYZ軸の制御には、搬送システム700は保持部XYZコントローラ703(以下、保持部コントローラ703)を有し、搬送速度の制御には、搬送ライン制御コントローラ704(以下、搬送加減速コントローラ704)を有する。したがって、搬送システム700では、搬送ライン701のXYZ方向とZ軸の角度と、搬送速度を制御できる手段を有する。なお、保持部コントローラ703と搬送加減速コントローラ704は、管理装置110で実現されるものであり、本管理装置110は状態センサの他、各アクチュエータと接続される。そして、管理装置110からの指示に従った各アクチュエータが制御される。
【0033】
搬送システム700では、搬送システム100と同じ異常検出が可能な手段を有しており、異常状態の検出によって自動でラインの調整が可能である。例えば、最初の搬送ライン701とその次の搬送ライン701の接続部705に段差があった場合、搬送体706が揺れることで、加速度から異常状態が検出される。異常検出後、保持部コントローラ703では搬送ライン701間の段差をなくすため、それぞれをZ軸方向に移動して調整する。このような異常検出と搬送ライン701の高さ調整を自動で行うことで、搬送体の安定した搬送が実現される。
【0034】
以上の自動調整を実現するためには、強化学習モデルを使用する。
図8に、搬送システムで使用する強化学習モデルを示す。強化学習モデル800の入力は、
図2のような学習済みのモデルから求めた搬送状態と搬送体の位置を含む搬送システムの状態801(以下、ステータス801)である。出力は搬送ラインのXYZ軸の各位置、または搬送速度の増加及び減少などの調整803(機械学習分野ではアクションと呼ぶ)の確率値である。強化学習ニューラルネットワーク802(以下、強化学習NN802)はステータス801を用いて、各調整803の確率値を出力することで、搬送システム700は最も高い確率値の調整803をコントローラ704か703によって行う。高い確率値の調整803を繰り返して行うことで、搬送システム700の状態を自動調整、つまり最適化する。
【0035】
強化学習NN802はオンラインで学習されるニューラルネットワークであり、調整803を起こしてから、強化学習NN802の重みが更新される。更新のため、調整803後の次のステップ(t+1)の異常有無情報804は強化学習NN802の報酬として使用される。
【0036】
強化学習モデル800は
図2のような学習済みのモデルの出力を入力として使用しているため、強化学習NN802は3層以上の全結合NNで構成されても良い。ただし、信号を分類するモデルがなければ、強化学習NNに3層以上の折り畳みNNと2層以上の再帰型NNを追加することで、入力データ210を強化学習NNに入力し、搬送状態や、搬送位置、異常有無とともに、各調整803の確率値を出力できる。
【0037】
以上の搬送システムによれば、搬送ライン701の異常検出とともに搬送ライン701を安定して搬送できる状態に保つことができる。
【0038】
また、本実施例によれば、搬送ラインへのセンサの組み込みが不要で低コストな搬送システムが構築でき、搬送体の位置の検出と搬送ラインの異常検出ができる。
【符号の説明】
【0039】
100、400、700:搬送システム
101、706:搬送体
102:搬送経路
103、401、402、404、701:搬送ライン
104、405、705:接続部
105:停止部
106、403:分岐部
107:状態センサ
210:入力データ
211:加速度データ
212:角速度データ
213:磁気データ
214:分類器
215:搬送異常有無情報
216:搬送状態
217:記憶部
218:ルート情報データベース
219:位置情報
300:搬送体の位置を推定するフローチャート
501:畳み込みニューラルネットワーク
502:全結合ニューラルネットワーク
503:入力範囲
601:再帰型ニューラルネットワーク
702:保持部
703:保持部XYZコントローラ
704:搬送ライン制御コントローラ
800:強化学習モデル
801:ステータス
802:強化学習ニューラルネットワーク
803:調整
804:次のステップ(t+1)の異常有無情報