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特許7160899偏光子、偏光子の製造方法、積層体および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】偏光子、偏光子の製造方法、積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221018BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221018BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020507934
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019012130
(87)【国際公開番号】W WO2019182118
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018056852
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】星野 渉
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】武田 淳
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-012929(JP,A)
【文献】特開2014-191028(JP,A)
【文献】特開2005-189393(JP,A)
【文献】特開2005-189392(JP,A)
【文献】特開2005-140986(JP,A)
【文献】特開2001-330726(JP,A)
【文献】特開2001-188129(JP,A)
【文献】特開2013-033249(JP,A)
【文献】特開2003-238492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0309415(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、配向膜と、偏光子とを有する、積層体であって、
前記偏光子が、重量平均分子量が3000以上であり、スメクチック液晶性を持つ高分子化合物である液晶性化合物と、二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物から形成され、
前記配向膜が前記液晶性化合物および前記二色性物質を水平配向させる膜である、積層体
【請求項2】
前記液晶性化合物の重量平均分子量が、8000以上である、請求項1に記載の積層体
【請求項3】
前記液晶性化合物が、さらにネマチック液晶性を持つ、請求項1に記載の積層体
【請求項4】
前記液晶性化合物が、異なる2以上の繰り返し単位を含有する共重合体である、請求項1に記載の積層体
【請求項5】
前記液晶性化合物と前記二色性物質との総質量に対する前記二色性物質の濃度が、5質量%以上である、請求項1に記載の積層体
【請求項6】
スメクチック液晶性を持つ高分子化合物である液晶性化合物と、二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子を作製する偏光子の製造方法であって、

前記液晶性化合物および前記二色性物質を水平配向させる膜である配向膜上に、前記偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜に含まれる液晶成分を液晶状態で配向させる配向工程と、
前記液晶状態から3℃/秒以上の冷却速度で20~25℃の温度まで冷却し、偏光子を得る冷却工程と、
前記偏光子を硬化させる硬化工程と、を有する、偏光子の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体と、画像表示素子とを有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子、偏光子の製造方法、積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光または自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、または、遮光機能等が必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、画像表示装置(例えば、液晶表示装置)では、表示における旋光性または複屈折性を制御するために直線偏光子または円偏光子が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光子が使用されている。
【0003】
従来、これらの偏光子には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光子についても検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「ゲスト-ホスト偏光子であって、配向した重合した液晶のホスト及び該ホストに分散した且つ配向した二色性の光を吸収するゲストを含む、配向した重合体の膜を含み、前記配向した膜の配向は、スメクチック相Sxの配向であるか又はスメクチック相Sxの配向に対応する配向(ただし、スメクチックA相及びスメクチックC相を除く)であり、該配向した重合体の膜は、15以上の二色比を有し、前記配向した重合した液晶のホストは、配向した重合性の液晶を重合させることによって得られると共に、該重合性の液晶は、トランス-1-[4-[6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]シクロヘキサンカルボキシル]-4-[4-[6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]ベンゾイルオキシ]ベンゼン、又は、スメクチック相Sx(ただし、スメクチックA相及びスメクチックC相を除く)を有する、ゲスト-ホスト偏光子。」が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4719156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載された偏光子について検討したところ、ホストに用いる重合性液晶の種類や重合条件によっては、配向度と耐光性の両立が困難であることを明らかとした。
【0007】
そこで、本発明は、配向度と耐光性を両立した偏光子、偏光子の製造方法、積層体および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、液晶性化合物と、二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、液晶性化合物がスメクチック液晶性を持つ高分子化合物である偏光子が、配向度と耐光性の両立が図れることを見出した。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0009】
[1] 液晶性化合物と、二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、
液晶性化合物が、スメクチック液晶性を持つ高分子化合物である、偏光子。
[2] 液晶性化合物の重量平均分子量が、3000以上である、[1]に記載の偏光子。
[3] 液晶性化合物が、さらにネマチック液晶性を持つ、[1]または[2]に記載の偏光子。
[4] 液晶性化合物が、異なる2以上の繰り返し単位を含有する共重合体である、[1]~[3]のいずれかに記載の偏光子。
[5] 液晶性化合物と二色性物質との総質量に対する二色性物質の濃度が、5質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の偏光子。
【0010】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の偏光子を作製する偏光子の製造方法であって、
配向膜上に、液晶性化合物と、二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
塗布膜に含まれる液晶成分を液晶状態で配向させる配向工程と、
液晶状態から3℃/秒以上の冷却速度で20~25℃の温度まで冷却し、偏光子を得る冷却工程と、を有する、偏光子の製造方法。
[7] 基材と、配向膜と、[1]~[5]のいずれかに記載の偏光子とを有する、積層体。
[8] [1]~[5]のいずれかに記載の偏光子または[7]に記載の積層体と、画像表示素子とを有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配向度と耐光性を両立した偏光子、偏光子の製造方法、積層体および画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行、直交とは厳密な意味での平行、直交を意味するのではなく、平行または直交から±5°の範囲を意味する。
また、本明細書において、液晶性組成物、液晶性化合物とは、硬化等により、もはや液晶性を示さなくなったものも概念として含まれる。
また、本明細書において、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0013】
[偏光子]
本発明の偏光子は、液晶性化合物と、二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子である。
本発明においては、液晶性化合物が、スメクチック液晶性を持つ高分子化合物である。
【0014】
本発明においては、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物がスメクチック液晶性を持つ高分子化合物であると、形成される偏光子の配向度と耐光性が両立できる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、液晶性化合物として、スメクチック液晶性を持つ低分子化合物を用いると、形成される偏光子の耐光性や耐熱性を付与するために、液晶状態を配向させた後に、硬化処理を施し、高分子の状態にする必要がある。
そして、スメクチック液晶性を持つ低分子化合物は、配向時に特有のレイヤー構造を取るため、硬化時の硬化収縮の影響により、配向度が低下すると考えられる。
そのため、本発明では、スメクチック液晶性を持つ高分子化合物を用いることにより、耐光性や耐熱性を付与する硬化処理が不要もしくは軽度で済むため、配向度の低下を抑制しつつ、耐光性や耐熱性を向上させることが可能になったと考えられる。
【0015】
以下、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物、二色性物質および任意成分について説明する。
【0016】
〔液晶性化合物〕
偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物は、スメクチック液晶性を持つ高分子化合物である。
ここで、本発明において、「スメクチック液晶性を持つ高分子化合物」とは、スメクチック相の液晶状態を示すことができる高分子化合物をいう。なお、スメクチック相とは、一方向に揃った分子が層構造を有している状態であることを意味する。
また、「高分子化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する化合物のことをいう。
【0017】
本発明においては、形成される偏光子の配向度がより高くなる理由から、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物が、さらにネマチック液晶性を持つ高分子化合物であることが好ましい。
ここで、本発明において、「ネマチック液晶性を持つ高分子化合物」とは、ネマチック相の液晶状態を示すことができる高分子化合物をいう。なお、ネマチック相とは、構成分子が配向秩序を持つが、三次元的な位置秩序を持たない状態であることを意味する。
【0018】
液晶性化合物がスメクチック性やネマチック性を持つことは、例えば光学顕微鏡を用いた観察によりスメクチック相やネマチック相に特有の組織を観察することで確かめることができる。
【0019】
本発明においては、形成される偏光子の耐熱性が高くなる理由から、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物の重量平均分子量が3000以上であることが好ましく、8000~300000であることがより好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により下記の条件で測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0020】
このような液晶性化合物としては、例えば、以下の繰り返し単位を有する化合物が好適に挙げられる。
【0021】
【化1】
【0022】
本発明においては、液晶性化合物の安定性が良好となる理由から、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物が、異なる2以上の繰り返し単位を含有する共重合体であることが好ましく、例えば、上記で例示した繰り返し単位(特に、メソゲン基を含む繰り返し単位)と、メソゲン基を含まず、分子量280以下の繰り返し単位を含有する共重合体であることがより好ましい。
【0023】
メソゲン基を含まず、分子量280以下の繰り返し単位の重合に使用されるモノマーの具体例としては、アクリル酸[72.1]、α-アルキルアクリル酸類(例えば、メタクリル酸[86.1]、イタコン酸[130.1])、それらから誘導されるエステル類およびアミド類(例えば、N-i-プロピルアクリルアミド[113.2]、N-n-ブチルアクリルアミド[127.2]、N-t-ブチルアクリルアミド[127.2]、N,N-ジメチルアクリルアミド[99.1]、N-メチルメタクリルアミド[99.1]、アクリルアミド[71.1]、メタクリルアミド[85.1]、ジアセトンアクリルアミド[169.2]、アクリロイルモルホリン[141.2]、N-メチロールアクリルアミド[101.1]、N-メチロールメタクリルアミド[115.1]、メチルアクリレート[86.0]、エチルアクリレート[100.1]、ヒドロキシエチルアクリレート[116.1]、n-プロピルアクリレート[114.1]、i-プロピルアクリレート[114.2]、2-ヒドロキシプロピルアクリレート[130.1]、2-メチル-2-ニトロプロピルアクリレート[173.2]、n-ブチルアクリレート[128.2]、i-ブチルアクリレート[128.2]、t-ブチルアクリレート[128.2]、t-ペンチルアクリレート[142.2]、2-メトキシエチルアクリレート[130.1]、2-エトキシエチルアクリレート[144.2]、2-エトキシエトキシエチルアクリレート[188.2]、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート[154.1]、2,2-ジメチルブチルアクリレート[156.2]、3-メトキシブチルアクリレート[158.2]、エチルカルビトールアクリレート[188.2]、フェノキシエチルアクリレート[192.2]、n-ペンチルアクリレート[142.2]、n-ヘキシルアクリレート[156.2]、シクロヘキシルアクリレート[154.2]、シクロペンチルアクリレート[140.2]、ベンジルアクリレート[162.2]、n-オクチルアクリレート[184.3]、2-エチルヘキシルアクリレート[184.3]、4-メチル-2-プロピルペンチルアクリレート[198.3]、メチルメタクリレート[100.1]、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート[168.1]、ヒドロキシエチルメタクリレート[130.1]、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[144.2]、n-ブチルメタクリレート[142.2]、i-ブチルメタクリレート[142.2]、sec-ブチルメタクリレート[142.2]、n-オクチルメタクリレート[198.3]、2-エチルヘキシルメタクリレート[198.3]、2-メトキシエチルメタクリレート[144.2]、2-エトキシエチルメタクリレート[158.2]、ベンジルメタクリレート[176.2]、2-ノルボルニルメチルメタクリレート[194.3]、5-ノルボルネン-2-イルメチルメタクリレート[194.3]、ジメチルアミノエチルメタクリレート[157.2])、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル[86.1])、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(例えば、マレイン酸ジメチル[144.1]、フマル酸ジエチル[172.2])、マレイミド類(例えば、N-フェニルマレイミド[173.2])、マレイン酸[116.1]、フマル酸[116.1]、p-スチレンスルホン酸[184.1]、アクリロニトリル[53.1]、メタクリロニトリル[67.1]、ジエン類(例えば、ブタジエン[54.1]、シクロペンタジエン[66.1]、イソプレン[68.1])、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン[104.2]、p-クロルスチレン[138.6]、t-ブチルスチレン[160.3]、α-メチルスチレン[118.2])、N-ビニルピロリドン[111.1]、N-ビニルオキサゾリドン[113.1]、N-ビニルサクシンイミド[125.1]、N-ビニルホルムアミド[71.1]、N-ビニル-N-メチルホルムアミド[85.1]、N-ビニルアセトアミド[85.1]、N-ビニル-N-メチルアセトアミド[99.1]、1-ビニルイミダゾール[94.1]、4-ビニルピリジン[105.2]、ビニルスルホン酸[108.1]、ビニルスルホン酸ナトリウム[130.2]、アリルスルホン酸ナトリウム[144.1]、メタリルスルホン酸ナトリウム[158.2]、ビニリデンクロライド[96.9]、ビニルアルキルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル[58.1])、エチレン[28.0]、プロピレン[42.1]、1-ブテン[56.1]、ならびに、イソブテン[56.1]が挙げられる。なお、[ ]内の数値は、モノマーの分子量を意味する。
上記モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記モノマーの中でも、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸類、それらから誘導されるエステル類およびアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ならびに、芳香族ビニル化合物が好ましい。
上記以外のモノマーとしては、例えば、リサーチディスクロージャーNo.1955(1980年、7月)に記載の化合物を使用できる。
【0024】
〔二色性物質〕
偏光子形成用組成物に含まれる二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、無機物質(例えば量子ロッド)、などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特開2016-006502号公報の[0005]~[0051]段落、国際公開第2016/060173号の[0005]~[0041]段落、国際公開第2016/136561号の[0008]~[0062]段落、国際公開第2017/154835号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/154695号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/195833号の[0013]~[0037]段落などに記載されたものが挙げられる。
【0025】
本発明においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、偏光子を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
【0026】
上記二色性物質は、架橋性基を有していてもよい。
上記架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0027】
偏光子形成用組成物に含まれる二色性物質の含有量は、配向度と耐光性の両立がより図りやすくなり、耐熱性も良好となる理由から、上記液晶性化合物100質量部に対して1~400質量部であることが好ましく、2~100質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることがさらに好ましく、10~30質量部であることが特に好ましい。色素濃度を高くすることで耐光性が向上する傾向にあり好ましい。
【0028】
本発明においては、液晶性化合物と二色性物質との総質量に対する二色性物質の濃度が、5質量%以上であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
【0029】
〔溶媒〕
偏光子形成用組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、および、シクロペンチルメチルエーテルなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル、炭酸ジエチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
偏光子形成用組成物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、偏光子形成用組成物の全質量に対して、80~99質量%であることが好ましく、83~97質量%であることがより好ましく、85~95質量%であることが特に好ましい。
【0031】
〔界面改良剤〕
偏光子形成用組成物は、配向度と耐光性の両立がより図りやすくなり、耐熱性も良好となる理由から、界面改良剤を含むことが好ましい。界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面改良剤としては、液晶性化合物を水平配向させるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007-272185号公報の[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。界面改良剤としては、これら以外の化合物を用いてもよい。
偏光子形成用組成物が界面改良剤を含有する場合、界面改良剤の含有量は、配向度と耐光性の両立がより図りやすくなり、耐熱性も良好となる理由から、組成物中の液晶性化合物と二色性物質との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が好ましい。
【0032】
〔重合開始剤〕
偏光子形成用組成物は、配向度と耐光性の両立がより図りやすくなり、耐熱性も良好となる理由から、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)等が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア819およびイルガキュアOXE-01等が挙げられる。
偏光子形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、配向度と耐光性の両立がより図りやすくなり、耐熱性も良好となる理由から、組成物中の液晶性化合物と二色性物質との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、偏光子の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、偏光子の配向がより良好となる。
【0033】
〔厚み〕
本発明の偏光子の膜厚は、配向度と耐光性の両立がより図りやすくなり、耐熱性も良好となる理由から、0.1~5.0μmであることが好ましく、0.3~1.5μmであることがより好ましい。偏光子形成用組成物中の二色性物質の濃度にもよるが、膜厚が0.1μm以上であると、より優れた吸光度の偏光子が得られ、膜厚が5.0μm以下であると、より優れた透過率の偏光子が得られる。
【0034】
[偏光子の製造方法]
本発明の偏光子を製造する方法は特に制限されないが、得られる偏光子の配向度がより高くなり、且つ、ヘイズが観察され難くなる理由から、以下に示す方法(以下、「本発明の偏光子の製造方法」という。)で作製されることが好ましい。
本発明の偏光子の製造方法は、配向膜上に、上述した偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、塗布膜に含まれる液晶成分を液晶状態で配向させる配向工程と、液晶状態から3℃/秒以上の冷却速度で20~25℃の温度まで冷却し、偏光子を得る冷却工程と、を有する、製造方法である。
以下、各工程について説明する。
【0035】
〔塗布膜形成工程〕
塗布膜形成工程は、配向膜上に上述した偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含有する偏光子形成用組成物を用いたり、偏光子形成用組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、配向膜上に偏光子形成用組成物を塗布することが容易になる。
偏光子形成用組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0036】
<配向膜>
塗布膜形成工程に用いる配向膜は、偏光子形成用組成物に含有される液晶性化合物および二色性物質を水平配向させる膜であれば、どのような膜でもよい。
有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。
さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
なかでも、本発明では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜も好ましい。
【0037】
(ラビング処理配向膜)
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、およびその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがさらに好ましい。
【0038】
(光配向膜)
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献などに記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0039】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0040】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0041】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色性物質偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0042】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、または裏面から配向膜表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0043】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0044】
〔配向工程〕
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶成分を液晶状態で配向させる工程である。なお、液晶成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
【0045】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質がより配向し、得られる偏光子の配向度がより高くなる。
加熱処理は、製造適性などの面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0046】
〔冷却工程〕
冷却工程は、液晶状態から3℃/秒以上の冷却速度で20~25℃の温度まで冷却し、偏光子を得る工程である。これにより、塗布膜に含有される二色性物質の配向がより固定され、得られる偏光子の配向度がより高くなる。
ここで、3℃/秒の冷却速度とは、1秒間に温度を3℃下げることをいう。
【0047】
冷却工程における冷却速度は、5℃/秒以上であることが好ましい。
なお、所定冷却速度は、いわゆる平均速度である。このため、塗布膜を冷却する過程の一部において所定冷却速度を下回る冷却速度で冷却する時間を含んでいてもよい。この場合、上記いずれかの温度区間で平均した冷却速度が所定冷却速度であればよい。また、冷却工程における冷却速度には基本的には上限はない。このため、塗布膜を有する積層体の各部が変質する、または、皺(しわ)ができる等の不具合が生じない範囲内であれば、できる限り速く冷却することが好ましい。
【0048】
冷却工程においては、塗布膜を、0.01秒以上110秒以内に、好ましくは0.01秒以上40秒以内に、より好ましくは0.01秒以上25秒以内に、特に好ましくは0.01秒以上10秒以内に塗布膜を冷却する。
【0049】
また、冷却工程は、配向工程の直後に行う工程であることが好ましい。すなわち、配向工程後、冷却工程の開始までの間に、塗布膜の温度変化をともなう工程及びその他塗布膜の状態の変化をともなう工程を行わず、配向工程の直後に冷却工程を行うことが好ましい。
冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、本発明の偏光子を得ることができる。
【0050】
〔他の工程〕
本発明の偏光子の製造方法は、上記配向工程後に、偏光子を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって偏光子の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0051】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、上記基材上に設けられた配向膜と、上記配向膜上に設けられた上述した本発明の偏光子とを有する。
また、本発明の積層体は、上記本発明の偏光子上に、λ/4板を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記本発明の偏光子とλ/4板との間に、バリア層を有していてもよい。
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0052】
〔基材〕
基材としては、適宜選択することができ、例えば、ガラス基板およびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。
ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002-22942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。
また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第2000/26705号公報に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0053】
〔配向膜〕
配向膜については、上述した塗布膜形成工程において説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
〔偏光子〕
本発明の偏光子については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
【0055】
〔λ/4板〕
「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルムなどが挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
λ/4板と本発明の偏光子とは、接して設けられていてもよいし、λ/4板と本発明の偏光子との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層または接着層、およびバリア層が挙げられる。
【0056】
〔バリア層〕
本発明の積層体がバリア層を備える場合、バリア層は、本発明の偏光子とλ/4板との間に設けられる。なお、本発明の偏光子とλ/4板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層または接着層)を備える場合には、バリア層は、例えば、本発明の偏光子と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から本発明の偏光子を保護する機能を有する。
バリア層については、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0057】
〔用途〕
本発明の積層体は、例えば、偏光素子(偏光板)として使用でき、例えば、直線偏光板または円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などの光学異方性層を有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。
一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0058】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の偏光子または上述した本発明の積層体を有する、画像表示装置である。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0059】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した本発明の偏光子と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した本発明の積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光素子のうち、フロント側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0060】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0061】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した本発明の偏光子と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、λ/4板を有する上述した本発明の積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。この場合には、積層体は、視認側から、基材、配向膜、本発明の偏光子、必要に応じて設けられるバリア層、および、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例
【0062】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0063】
[実施例1]
〔配向膜の作製〕
ガラス基材(セントラル硝子社製、青板ガラス、サイズ300mm×300mm、厚み1.1mm)をアルカリ洗剤で洗浄し、次いで純水を注いだ後、ガラス基材を乾燥させた。
下記組成の配向膜形成用組成物1を#12のバーを用いて乾燥後のガラス基材上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物1を110℃で2分間乾燥して、ガラス基材上に塗布膜を形成した。
得られた塗布膜にラビング処理(ローラーの回転数:1000回転/スペーサー厚2.9mm、ステージ速度1.8m/分)を1回施して、ガラス基材上に配向膜1を作製した。
【0064】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記式(PVA-1)参照) 2.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 23.86質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0065】
【化2】
【0066】
〔偏光子1の作製〕
得られた配向膜1上に、下記組成の偏光子形成用組成物1を#7のワイヤーバーで塗布し、塗布膜1を形成した。
次いで、塗布膜1を下記表1に示す加熱温度で40秒間加熱し、塗布膜1に含まれる液晶成分を液晶状態で配向させた後、下記表1に示す冷却速度で室温(25℃)まで冷却した。
次いで、90℃で30秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯を用いて露光量1000mJ/cm照射することにより、配向膜1上に偏光子1を作製した。
【0067】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光子形成用組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記高分子液晶性化合物L1 6.413質量部
・下記第1の二色性物質Y1 0.135質量部
・下記第2の二色性物質M1 0.135質量部
・下記第3の二色性物質C1 0.203質量部
・下記重合開始剤J1 0.054質量部
・下記界面改良剤F1 0.061質量部
・クロロホルム 79.05質量部
・シクロペンタノン 13.95質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0068】
【化3】





【0069】
〔透明樹脂層(バリア層)1の形成〕
偏光子1上に、下記硬化性組成物1を#2のワイヤーバーで塗布し、60℃で5分間乾燥を行った。
その後、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cmの照射条件で60秒間照射し、硬化性組成物1を硬化させ、偏光子1上に透明樹脂層(バリア層)1が形成された積層体を作製した。
【0070】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
硬化性組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・重合性化合物 KAYARAD PET-30
(日本化薬社製) 29質量部
・重合開始剤 IRGACURE819(BASF社製) 1質量部
・アルミナエタノールゾルA2K5-10
(川研ファインケミカル社製、柱状のアルミナ水和物粒子が液中に分散
したコロイド液) 70質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0071】
KAYARAD PET-30
【化4】
【0072】
[実施例2~6、比較例1]
下記表1に示す液晶性化合物などの種類および配合量(質量部)、ならびに、偏光子の作製条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例および比較例ごとに対応する偏光子および積層体を作製した。なお、液晶性化合物L1-2およびL1-3は、液晶性化合物L1の分子量が異なる化合物であり、液晶性化合物L2~L4は、以下に示す構造を有する化合物である。
【0073】
【化5】
【0074】
[分子量]
液晶性化合物L1、L1-2、L1-3、L2およびL3の重量平均分子量(Mw)は、下記のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定した。結果を以下に示す。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
<結果>
液晶性化合物L1 : Mw 10400
液晶性化合物L1-2 : Mw 7100
液晶性化合物L1-3 : Mw 2900
液晶性化合物L3 : Mw 10200
【0075】
[相転移温度]
液晶性化合物L1、L2、L3およびL4について、以下に示す方法で、相転移温度を測定した。
光学顕微鏡(Nikon社製ECLIPSE E600 POL)の二枚の偏光子を互いに直交するように配置し、二枚の偏光子の間にサンプル台をセットした。そして、液晶性化合物をスライドガラスに少量乗せ、サンプル台上に置いたホットステージ上にスライドガラスをセットした。サンプルの状態を顕微鏡で観察しながら、ホットステージの温度を上げ、サンプルのから液晶相の種類と、相転移する温度を記録した。結果を以下に示す。なお、下記におけるgはガラス転移点を、SmAはスメクチックA相を、SmBはスメクチックB相を、SmCはスメクチックC相を、Nはネマチック相を、Isoは等方相、を表わす。
<結果>
液晶性化合物L1 :g 145 SmA 190 N 210 Iso
液晶性化合物L2 :g 105 SmA 155 Iso
液晶性化合物L3 :K 130 SmA 168 N 187 Iso
液晶性化合物L4 :K 99 SmA 108 N 125 Iso
【0076】
[評価]
上記のようにして得られた実施例および比較例の偏光子および積層体について以下の評価を行った。
【0077】
[配向度]
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例で作製した各積層体をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、380nm~780nmの波長域における偏光子の吸光度を1nmピッチで測定し、以下の式により配向度を400nmから700nmの範囲における平均値として算出した。結果を表1に示す。
配向度:S=((Az0/Ay0)-1)/((Az0/Ay0)+2)
Az0:偏光子の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:偏光子の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0078】
[耐熱性]
実施例および比較例で作製した各積層体を、100℃の耐熱オーブン、及び85℃の耐熱オーブン中で50時間保持した。積層体をとり出した後、室温に冷却し、上記の方法で配向度を測定した。耐熱オーブンの前後での配向度の差を算出し、下記の方法で評価した結果を表1に示す。
A:100℃条件で配向度の変化が10%以内
B:100℃条件で配向度の変化が10%以上、85℃条件で配向度の変化が10%以内
C:85℃条件で配向度の変化が10%~30%
D:85℃条件で配向度の変化が30%以上
【0079】
[耐光性]
実施例1および比較例で作製した各積層体のバリア層側に、粘着剤を介して厚み40μmのTAC基材(製品名「TG40」、富士フイルム社製)を貼合した。TAC面側から、スーパーキセノンウェザーメーター“SX-75”(スガ試験機社製、60℃、50%RH条件)にて、キセノン光を150W/m2(300-400nm)で100時間照射した。所定時間の経過後、積層体の偏光度の変化を測定した。評価結果を表1に示す。
A:偏光度の変化が5%未満
B:偏光度の変化が5%以上10%未満
C:偏光度の変化が10%以上
【0080】
〔液安定性〕
クロロホルム中に、液晶性化合物L1、L1-2、L1-3、L2、L3およびL4を所定濃度(質量%)になるように添加して、60℃20分の撹拌で溶解した。室温で静置し、下記目視にて経時安定性を評価した結果を表1に示す。
A:濃度5質量%、経時時間5時間で透明のまま
B:濃度5質量%、経時時間5時間で白濁が見られた
C:濃度5質量%、経時時間5時間でゲル化した
【0081】
【表1】
【0082】
上記表1に示す結果から、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物が、スメクチック液晶性を有する場合であっても、高分子化合物に該当しない場合は、作製される偏光子の耐熱性および耐光性が劣るため、配向度と耐光性を両立できないことが分かった(比較例1)。
これに対し、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物が、スメクチック液晶性を有する高分子化合物であると、作製される偏光子の耐熱性および耐光性が良好となり、配向度と耐光性を両立できることが分かった(実施例1~7)。
また、実施例1と実施例3との対比から、液晶性化合物の重量平均分子量が3000以上であると、作製される偏光子の耐熱性がより良好となることが分かった。
また、実施例4と他の実施例との対比から、液晶性化合物がネマチック液晶性を持つ場合、作製される偏光子の配向度がより高くなることが分かった。