(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】光伝送システム
(51)【国際特許分類】
H03M 13/25 20060101AFI20221019BHJP
H03M 13/41 20060101ALI20221019BHJP
H04B 10/2507 20130101ALI20221019BHJP
H04B 10/61 20130101ALI20221019BHJP
H04B 10/524 20130101ALI20221019BHJP
【FI】
H03M13/25
H03M13/41
H04B10/2507
H04B10/61
H04B10/524
(21)【出願番号】P 2018208960
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀人
(72)【発明者】
【氏名】増田 陽
(72)【発明者】
【氏名】谷口 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】木坂 由明
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0228419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/25
H03M 13/41
H04B 10/2507
H04B 10/61
H04B 10/524
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信器と、光受信器とを備える光伝送システムであって、
前記光送信器は、
シンボル系列に対して、非線形演算に相当する非線形トレリス符号化を行う信号符号化部と、
前記信号符号化部により符号化がなされたシンボル系列を変調して前記光受信器に送信する変調器と、
を備え、
前記光受信器は、
前記光送信器から送信された光信号を受光して電気信号に変換する受光部と、
前記電気信号に対してデジタル信号処理を行うことによって前記シンボル系列を復元するデジタル信号処理部と、
を備え
、
前記光送信器は、入力された情報データを用いて、グレイ符号化されたN(Nは2以上の整数)値シンボルを生成する信号生成部をさらに備え、
前記信号符号化部は、以下の式1~式3で示した非線形トレリス符号化処理によってN+2値シンボルを生成し、
前記デジタル信号処理部は、前記電気信号に対して所定の判定を行うことによってN+2値シンボルを復元し、復元した前記N+2値シンボルと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットのN+2値シンボルとを用いて、以下の式4~式6に基づいて、符号化前のN値シンボルを復元する
光伝送システム。
【数1】
【数2】
【請求項2】
前記光受信器は、前記電気信号を復調する際に、ビタビ復号を用いた系列推定に基づくシンボル判定を行うビタビ復号部をさらに備える、請求項1に記載の光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
データ通信需要の増大に伴い、大容量トラヒックの伝送を可能とする光信号変調技術や、光信号多重技術を用いた光伝送ネットワークが普及しつつある。特に、1波当たりの伝送速度が100Gbit/sec(以下「Gb/s」という。)以上の超高速光伝送システムにおいて、コヒーレント検波とデジタル信号処理技術を組み合わせたデジタルコヒーレント技術が広く用いられるようになってきている。これに対して、LTE(Long Term Evolution)に代表されるモバイル端末における大容量データ通信の普及により、上記のデジタルコヒーレント技術よりも安価に、すなわち、より簡易な送受信の装置構成によって100Gb/s級の超高速光伝送を実現することが求められている。
【0003】
簡易な装置構成で100Gb/s級の超高速光伝送を実現する方式として、光信号の強度情報に基づいてデータ信号の復調を行う直接検波方式が注目されている。その中でも、2値の強度変調信号であるNRZ(Non Return-to-Zero)方式に比べて、高い周波数利用効率を有する4値強度変調方式であるPAM4(4-level Pulse Amplitude Modulation)を用いた超高速光伝送方式の検討が特に進められている。
【0004】
デジタルコヒーレント技術を用いた100Gb/s級光伝送では、一般に偏波多重QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の変調方式(以下「PDM-QPSK」(Polarization Division Multiplexing)-QPSKという。)が用いられている。PDM-QPSKを用いた場合の変調速度は25GBd(GigaBaud)程度である。これに対して、PAM4の変調方式を用いて100Gb/s級の超高速光伝送を行う場合の変調速度は、50GBd程度となる。そのため、PAM4を用いた場合の信号スペクトルは、PDM-QPSK方式よりも広い周波数を占有する信号スペクトルとなる。
【0005】
広い周波数を占有するということは、100Gb/s級の超高速光伝送の実現のためにPAM4の変調方式を適用した場合、PDM-QPSK方式に比べて電気デバイスの帯域制限に起因する波形劣化の影響を大きく受けてしまうことを意味する。また、直接検波方式では、伝送ファイバの有する波長分散に起因した波形劣化をデジタル信号処理によって補償することができないため、PAM4方式を適用する際には波長分散に起因した信号品質劣化も大きな問題となる。波長分散に起因した信号品質劣化は変調速度の二乗に比例するため、特に50Gbaud以上の高速に変調された信号に対しては、波長分散に起因した信号品質劣化は顕著なものとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Joo Sung Park, Saul B. Gelfand and Michael P. Fitz, ” A Spectral Shaping Nonlinear Binary Coded Modulation with Gray-Mapped QAM Signals”, The 2010 Military Communications Conference - Unclassified Program - Waveforms and Signal Processing Track, pp. 2363-2368
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PAM4方式を用いた100Gb/s級超高速光伝送の実現においては、上述した通り、電気光デバイスによる帯域制限に起因した信号品質劣化、及び、光ファイバ伝送路が有する波長分散に起因した信号品質劣化が課題となる。
従来では、上記のような信号品質劣化を抑制するためにコヒーレント検波方式の信号に対するスペクトルの狭帯域化を実現する方式として、非線形トレリス符号化を用いる方式が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、非特許文献1に記載の方式は、直交位相振幅(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)変調信号に対する方式であるため、直接検波方式であるPAM4信号に適用することができない。そのため、スペクトルの狭帯域化を実現することができず、信号品質の劣化を抑制することができないという問題があった。なお、このような問題は、PAM4方式に限らず、任意の多値シンボルを用いる方式にも同様に生じる問題である。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、信号品質の劣化を抑制することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、光送信器と、光受信器とを備える光伝送システムであって、前記光送信器は、シンボル系列に対して、非線形演算に相当する非線形トレリス符号化を行う信号符号化部と、前記信号符号化部により符号化がなされたシンボル系列を変調して前記光受信器に送信する変調器と、を備え、前記光受信器は、前記光送信器から送信された光信号を受光して電気信号に変換する受光部と、前記電気信号に対してデジタル信号処理を行うことによって前記シンボル系列を復元するデジタル信号処理部と、を備える光伝送システムである。
【0010】
本発明の一態様は、上記の光伝送システムであって、前記光受信器は、前記電気信号を復調する際に、ビタビ復号を用いた系列推定に基づくシンボル判定を行うビタビ復号部をさらに備える。
【0011】
本発明の一態様は、上記の光伝送システムであって、前記光送信器は、入力された情報データを用いて、グレイ符号化されたN(Nは2以上の整数)値シンボルを生成する信号生成部をさらに備え、前記信号符号化部は、以下の式7~式9で示した非線形トレリス符号化処理によってN+2値シンボルを生成し、前記デジタル信号処理部は、前記電気信号に対して所定の判定を行うことによってN+2値シンボルを復元し、復元した前記N+2値シンボルと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットのN+2値シンボルとを用いて、以下の式10~式12に基づいて、符号化前のN値シンボルを復元する。
【0012】
本発明の一態様は、上記の光伝送システムであって、前記光送信器は、入力された情報データを用いて、グレイ符号化されたN(Nは2以上の整数)値シンボルを2系統生成する信号生成部をさらに備え、前記信号符号化部は、以下の式7~式9で示した非線形トレリス符号化処理によってN+2値シンボルを2系統生成し、前記デジタル信号処理部は、前記電気信号に対して所定の判定を行うことによって、2系統のN+2値シンボルをそれぞれ復元し、復元した複数の前記N+2値シンボルと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットの複数のN+2値シンボルとを用いて、以下の式10~式12に基づいて、符号化前のN値シンボルを復元する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、信号品質の劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】各タイムスロットにおけるシンボルと、連続するタイムスロット間のシンボル遷移の関係を示す図である。
【
図2】本発明における非線形トレリス符号化によって符号化された後のシンボルのシンボル遷移のイメージを示す図である。
【
図3】従来のPAM4信号の信号スペクトルと、本発明における非線形トレリス符号化を適用したPAM4信号の信号スペクトルとを示す図である。
【
図4】第1の実施形態における光伝送システムシステム構成を示す図である。
【
図5】第1の実施形態におけるデジタル信号処理部の内部構成を示す図である。
【
図6】数値シミュレーションによって評価した、帯域制限環境下における従来のPAM4信号と、本発明におけるNLTCP信号の伝送特性を示す図である。
【
図7】数値シミュレーションによって評価した、光ファイバ伝送環境下における従来のPAM4信号と本発明におけるNLTCP信号の伝送特性を示す図である。
【
図8】第2の実施形態におけるデジタル信号処理部の内部構成を示す図である。
【
図9】第4の実施形態における光伝送システムのシステム構成を示す図である。
【
図10】第4の実施形態におけるデジタル信号処理部の内部構成を示す図である。
【
図11】第4の実施形態においてビタビ復号によってシンボル判定を行う場合のデジタル信号処理部の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(概要)
まず、本発明の概要について、従来技術と比較しながら説明する。
従来のPAM4方式では、2ビットのデータ情報を0,1,2,3の4値シンボルの光強度に割り当てることで、2bit/symbolの伝送を実現している。
図1は、各タイムスロットにおけるシンボルと、連続するタイムスロット間のシンボル遷移の関係を示す図である。
図1に示すように、従来のPAM4方式の場合、例えばタイムスロットt=0においてシンボルSの値(シンボルレベル)が“2”であった場合、t=1におけるシンボルSとして0,1,2,3のいずれのシンボルSへの遷移が可能である。すなわち、従来のPAM4方式では、シンボルSの遷移に対する条件が課されていない形となる。ランダムな信号系列を伝送する場合は、各シンボルSから各シンボルSへの遷移確率は、すべての遷移に対して1/4である。このシンボル遷移を離散マルコフ連鎖のモデルに当てはめると、遷移確率行列Pは以下の式1のように表される。
【0016】
【0017】
ここで、行列の各要素pij(i,j=0,1,2,3)は、状態jから状態iへの遷移確率を表す。この遷移行列の固有値1に対する固有ベクトルqは以下の式2のように表される。
【0018】
【0019】
各状態(シンボル)の生起確率は1/4であり、各シンボルとも等確率に発生する。それに対して、本発明では、非線形トレリス符号化によって状態遷移確率を制御することにより、PAM4信号のスペクトルを狭帯域化し、帯域制限耐力及び波長分散耐力の向上を実現する。
【0020】
本発明における非線形トレリス符号化の手順を以下に示す。
タイムスロットn(nは1以上の整数)における符号化前のオリジナルの4値信号をunとすると、unは0,1,2,3の4値シンボルとなる。ここで、各シンボルにはグレイ符号化された2ビットが割り当てられているものとする。すなわち、隣接するシンボル間のハミング距離が1となるような符号化が適用されているものとする。例えば、シンボル0にビット01、シンボル1にビット00、シンボル2にビット10、シンボル3にビット11を割り当てたものはグレイ符号となっている。符号化後のシンボルをvnとすると、本発明における非線形トレリス符号化によって生成される符号化後シンボルは、以下の式3に基づいて生成される。
【0021】
【0022】
ここで、[.]はガウス記号であり、非線形な演算に相当する処理である。このような符号化を施すことにより、符号化後シンボルvnとして0,1,2,3,4,5の6値シンボルが得られる。この符号化後のシンボルvnの遷移確率行列Pは以下の式4のように表される。
【0023】
【0024】
式4からわかるように、本発明における非線形トレリス符号化を適用することで、符号化後のシンボルvnの遷移が一部制限されている。例えば、シンボル0から遷移可能なシンボルは、0,1,2,3の4つであり、シンボル4,5への遷移は許されていない。このように、本発明ではシンボル遷移に制限を課すことによって高周波のシンボル遷移の発生を抑圧し、信号スペクトルの狭帯域化を実現する。この遷移行列の固有値1に対する固有ベクトルqは、以下の式5のように表される。
【0025】
【0026】
各状態(シンボル)の生起確率は等確率ではなく、中央のシンボルほど高い確率で発生する。これは、本発明における非線形トレリス符号化が、確率整形に相当する処理であることを意味する。
【0027】
図2は、本発明における非線形トレリス符号化によって符号化された後のシンボルv
nのシンボル遷移のイメージを示す図である。
図2からわかるように、符号化前の情報であるu
nは、符号化後シンボルであるv
nの状態遷移に対応している。すなわち、本発明における非線形トレリス符号化は、状態遷移に情報を割り当てる方式となっており、その状態遷移に制限を課すことによって高周波成分の発生を抑圧する方式となっている。
【0028】
図3は、従来のPAM4信号の信号スペクトルと、本発明における非線形トレリス符号化を適用したPAM4信号(NLTCP信号)の信号スペクトルとを示す図である。
図3(A)は従来のPAM4信号の信号スペクトルを示す図であり、
図3(B)は本発明における非線形トレリス符号化を適用したPAM4信号(NLTCP信号)の信号スペクトルを示す図である。
図3において横軸は周波数を表し、縦軸は信号パワーを表す。なお、両者とも、ロールオフ係数0.01のレイズドコサインフィルタを適用している。
図3(A)及び(B)からわかるように、非線形トレリス符号化を適用することで、信号スペクトルの高周波成分が抑圧され、信号パワーが低周波領域に集中していることがわかる。
以下、具体的な処理について実施形態で説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態における光伝送システム100のシステム構成を示す図である。光伝送システム100は、光送信器10及び光受信器20を備える。光送信器10と光受信器20とは、光ファイバ30を介して接続される。光ファイバ30は、光送信器10と光受信器20とを接続する伝送路である。
【0030】
光送信器10は、信号生成部11、信号符号化部12、DA変換器13、増幅部14、信号光源15及び光変調器16を備える。
信号生成部11は、外部から送信対象となるデータ情報を入力し、入力されたデータ情報を用いて、グレイ符号化された4値シンボルun(0,1,2,3)を生成する。
【0031】
信号符号化部12は、信号生成部11によって生成された4値シンボルun(0,1,2,3)に対して非線形トレリス符号化処理を行うことによって6値シンボルvn(0,1,2,3,4,5)を生成する。具体的には、信号符号化部12は、4値シンボルun(0,1,2,3)に対して、上記の式3で示した非線形トレリス符号化処理を行うことによって6値シンボルvn(0,1,2,3,4,5)を生成する。
【0032】
DA変換器13は、信号符号化部12によって生成された6値シンボルvn(0,1,2,3,4,5)のデジタル信号をアナログ信号に変換する。DA変換器13は、アナログ信号を増幅部14に出力する。
増幅部14は、DA変換器13から出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光変調器16に印加する。
【0033】
信号光源15は、光変調器16に対して連続光を送出する。
光変調器16は、増幅部14によって増幅されたアナログ信号で、信号光源15から送出された連続光を変調することによって、6値の光強度変調信号であるNLTCP信号を生成する。光変調器16は、生成したNLTCP信号を、光ファイバ30を介して光受信器20に送信する。なお、信号光源15と、光変調器16は、必ずしも分離されている必要はなく、光変調器16は信号光源15から送出された連続光を直接変調することによって、6値の光強度変調信号であるNLTCP信号を生成してもよい。
【0034】
光受信器20は、受光部21、AD変換器22及びデジタル信号処理部23を備える。
受光部21は、光送信器10から送信されたNLTCP信号を直接検波してNLTCP信号の光強度情報を取得する。受光部21は、取得した光強度情報をアナログの電気信号に変換してAD変換器22に出力する。
AD変換器22は、受光部21から出力されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。
デジタル信号処理部23は、デジタル信号を処理することによって、非線形トレリス符号化前の4値シンボルであるunを取得する。
【0035】
図5は、第1の実施形態におけるデジタル信号処理部23の内部構成を示す図である。
デジタル信号処理部23は、デジタルフィルタ231、信号判定部232、信号復号部233、ビットデマッピング部234、加算器235及びタップ更新部236を備える。
デジタルフィルタ231は、複素タップで構成されており、NLTCP信号の波形整形を行う。デジタルフィルタ231は、波形整形後のNLTCP信号を信号判定部232及び加算器235に出力する。デジタルフィルタ231は、一般的な線形フィルタであるFIR(Finite Impulse Response)フィルタや、高次の伝達関数を記述可能なボルテラフィルタ等が用いられる。
【0036】
信号判定部232は、波形整形後のNLTCP信号に対して閾値判定を行うことによって6値シンボルvnを取得する。信号判定部232は、取得した6値シンボルvnを信号復号部233及び加算器235に出力する。
信号復号部233は、信号判定部232から出力された6値シンボルvnと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットの6値シンボルvn-1とを用いて、以下の式6に基づいた処理を実行することで符号化前の4値シンボルであるunを復元する。
【0037】
【0038】
ただし、信号復号部233は、式6によって得られたunが、un<0であった場合にはun=0とし、un>3であった場合にはun=3とする。
【0039】
ビットデマッピング部234は、信号復号部233によって復元された4値シンボルであるunに対してグレイ復号を行うことによってunからビット情報であるデータ情報を復元する。
加算器235は、デジタルフィルタ231から出力された値と、信号判定部232から出力された値とを取り込む。なお、加算器235は、デジタルフィルタ231から出力された値をマイナスの符号を付与して取り込む。加算器235は、取り込んだ2つの値を加算、すなわち信号判定部232から出力された値から、デジタルフィルタ231から出力された値を減算し、減算により算出した減算値をタップ更新部236に出力する。
【0040】
タップ更新部236は、信号判定部232による判定後の値と、信号判定部232による判定前の値との差分に基づいて、デジタルフィルタ231のタップ係数を更新する。具体的には、タップ更新部236は、デジタルフィルタ231から出力された値と、信号判定部232から出力された値との差分が最小となるように、すなわち減算値が0となるようにデジタルフィルタ231のタップ係数を更新する。これにより、復調の精度が向上する。
【0041】
図6は、数値シミュレーションによって評価した、帯域制限環境下における従来のPAM4信号と、本発明におけるNLTCP信号の伝送特性を示す図である。
図6(A)は帯域制限環境下におけるPAM4信号の伝送特性を示す図であり、
図6(B)は帯域制限環境下における本発明のNLTCP信号の伝送特性を示す図である。
図6において、横軸は受信パワーを表し、縦軸はビット誤り率を表す。また、
図6(A)及び(B)ともに信号の変調速度は56Gbaudであり、伝送容量は112Gb/sである。
【0042】
図6(A)に示すように、従来のPAM4信号は、変調速度の25%に相当する14GHzの帯域制限環境下では、受信パワーを十分に大きくした場合であっても、帯域制限による波形劣化が伝送性能を律速してしまう。そのため、短距離光伝送システムにおいて広く用いられているKP4-FECの誤り訂正限界である2.5×10
-4を下回るビット誤り率(BER)を達成することができない。
【0043】
それに対して、
図6(B)に示すように、本発明におけるNLTCP信号は、14GHzの帯域制限環境下であってもKP4-FECの誤り訂正限界を達成することが可能である。
【0044】
図7は、数値シミュレーションによって評価した、光ファイバ伝送環境下、すなわち波長分散環境下における従来のPAM4信号とNLTCP信号の伝送特性を示す図である。
図7(A)は光ファイバ伝送環境下におけるPAM4信号の伝送特性を示す図であり、
図7(B)は光ファイバ伝送環境下における本発明のNLTCP信号の伝送特性を示す図である。
図7において、横軸は受信パワーを表し、縦軸はビット誤り率を表す。また、
図7(A)及び(B)ともに信号の変調速度は56Gbaudであり、伝送容量は112Gb/sである。また、信号に対する帯域制限は30GHzとしている。
【0045】
図7(A)に示すように、従来のPAM4信号は、-32ps/nmの波長分散環境下では受信パワーを十分に大きくした場合であっても、波長分散による波形劣化が伝送性能を律速してしまう。そのため、KP4-FECの誤り訂正限界を達成することができない。 それに対して、
図7(B)に示すように、本発明におけるNLTCP信号は、-48ps/nmの波長分散環境下であってもKP4-FECの誤り訂正限界を達成することが可能である。
以上のように、本発明における非線形トレリス符号化を適用することで、PAM4信号に対して飛躍的な帯域制限耐力の向上および波長分散耐力の向上を実現することが可能である。
【0046】
以上のように構成された光伝送システム100によれば、信号品質の劣化を抑制することが可能になる。具体的には、光送信器10において、4値シンボルに対して非線形トレリス符号化処理を行うことによって6値シンボルを生成して、生成した6値シンボルに基づく光信号(NLTCP信号を)を光受信器20に送信する。光送信器10で非線形トレリス符号化処理を行うことによって、符号化後のシンボルの遷移に制限を与える。これにより、各状態(シンボル)の生起確率が等確率ではなく、中央のシンボルほど高い確率で発生するようになる。この構成により、時間的にみて強度の急激な変化が少なくなるため高周波のシンボル遷移の発生を抑圧し、信号スペクトルの狭帯域化を実現することができる。そのため、電気光デバイスによる帯域制限に起因した信号品質劣化、及び、光ファイバ伝送路が有する波長分散に起因した信号品質劣化を抑制することが可能になる。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、光受信器においてMLSE(Maximum Likelihood Sequence Estimation:最尤系列推定)に基づいて復調を行う。
第2の実施形態において光送信器10の構成は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。光受信器20の構成は、デジタル信号処理部23に代えてデジタル信号処理部23aを備える点が第1の実施形態における光受信器20と構成が異なる。以下、相違点について説明する。
【0048】
図8は、第2の実施形態におけるデジタル信号処理部23aの内部構成を示す図である。
デジタル信号処理部23aは、信号復号部233a、ビットデマッピング部234、第1デジタルフィルタ237、ビタビ復号部238、第2デジタルフィルタ239、加算器240及びメトリック算出部241を備える。
【0049】
第1デジタルフィルタ237は、複素タップで構成されており、NLTCP信号の波形整形を行う。第1デジタルフィルタ237は、波形整形後のNLTCP信号をビタビ復号部238及び加算器240に出力する。第1デジタルフィルタ237は、FIRフィルタやボルテラフィルタ等の一般的な線形フィルタが用いられる。
【0050】
ビタビ復号部238は、第1デジタルフィルタ237から出力された波形整形後のNLTCP信号と、メトリック算出部241から出力されるメトリックとに基づいて6値シンボルvnに対する系列推定を行う。具体的には、ビタビ復号部238は、ビタビアルゴリズムに基づいて6値シンボルvnに対する系列推定を行う。ビタビ復号部238は、系列推定の結果として得られたメトリックのうち最もメトリックの小さいシンボル系列を送信系列vnとして採用する。メトリック算出部241から出力されるメトリックとしては、想定される系列の候補(候補系列)に対して第2デジタルフィルタ239によるデジタルフィルタ処理を施した時系列データと、第1デジタルフィルタ237から出力された時系列データ間のユークリッド距離が用いられる。
【0051】
第2デジタルフィルタ239は、複素タップで構成されており、入力された候補系列に対してデジタルフィルタ処理を施すことによって時系列データを取得する。第2デジタルフィルタ239は、取得した時系列データを加算器240に出力する。第2デジタルフィルタ239は、FIRフィルタやボルテラフィルタ等の一般的な線形フィルタが用いられる。特に、大きな非線形応答を有するシステムに対しては、第2デジタルフィルタ239としてボルテラフィルタを用いるとよい。
【0052】
なお、本発明における非線形トレリス符号化では、シンボルの遷移に制限が課せられているため、候補系列としては以下の24通りが考えられる。
【0053】
00
01
02
03
10
11
12
13
21
22
23
24
31
32
33
34
42
43
44
45
52
53
54
55
【0054】
すなわち、本実施例におけるシンボル系列vnの判定は、記憶長2の最尤系列推定(MLSE:Maximum Likelihood Sequence Estimation)そのものである。
【0055】
加算器240は、第1デジタルフィルタ237から出力された値と、第2デジタルフィルタ239から出力された値とを取り込む。なお、加算器240は、第2デジタルフィルタ239から出力された値をマイナスの符号を付与して取り込む。加算器240は、取り込んだ2つの値を加算、すなわち第1デジタルフィルタ237から出力された値(時系列データ)から、第2デジタルフィルタ239から出力された値(時系列データ)を減算し、減算により算出した減算値をメトリック算出部241に出力する。
【0056】
メトリック算出部241は、加算器240から出力された減算値、すなわち想定される系列の候補(候補系列)に対して第2デジタルフィルタ239によってデジタルフィルタ処理を施した時系列データと、第1デジタルフィルタから出力された時系列データとの間のユークリッド距離をメトリックとして算出する。
【0057】
信号復号部233aは、ビタビ復号部238によって採用された送信系列vnから、式6を用いることで符号化前の4値シンボルであるunを復元する。
ビットデマッピング部234は、信号復号部233aによって復元された4値シンボルであるunに対してグレイ復号を行うことによってunからビット情報であるデータ情報を復元する。
【0058】
以上のように構成された第2の実施形態における光伝送システム100によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
(第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、符号化前のシンボルとしてPAM4信号を対象としていたが、本発明は任意の多値シンボルに対しても適用可能である。そこで、第3の実施形態では、N値のPAM信号(PAM-N信号)に対して本発明における非線形トレリス符号化を適用した構成について説明する。
第3の実施形態における光送信器と光受信器の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
まず、第3の実施形態における光送信器10の構成について説明する。
信号生成部11は、外部から送信対象となるデータ情報を入力し、入力されたデータ情報を用いて、グレイ符号化されたN値シンボルun(0,1,…,N-1)を生成する。
信号符号化部12は、信号生成部11によって生成されたN値シンボルun(0,1,…,N-1)に対して非線形トレリス符号化処理を行うことによってN+2値シンボルvn(0,1,…,N+1)を生成する。具体的には、信号符号化部12は、N+2値シンボルvn(0,1,…,N+1)に対して、以下の式7~式9で示した非線形トレリス符号化処理を行うことによってN+2値シンボルvn(0,1,…,N+1)を生成する。
【0061】
【0062】
DA変換器13は、信号符号化部12によって生成されたN+2値シンボルvn(0,1,…,N+1)のデジタル信号をアナログ信号に変換する。DA変換器13は、アナログ信号を増幅部14に出力する。
増幅部14は、DA変換器13から出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光変調器16に印加する。
【0063】
信号光源15は、光変調器16に対して連続光を送出する。
光変調器16は、増幅部14によって増幅されたアナログ信号で、信号光源15から送出された連続光を変調することによって、N+2値の光強度変調信号であるNLTCP信号を生成する。光変調器16は、生成したNLTCP信号を、光ファイバ30を介して光受信器20に送信する。なお、信号光源15と、光変調器16は、必ずしも分離されている必要はなく、光変調器16は信号光源15から送出された連続光を直接変調することによって、N+2値の光強度変調信号であるNLTCP信号を生成してもよい。
【0064】
次に、第3の実施形態における光受信器20の構成について説明する。
受光部21は、光送信器10から送信されたNLTCP信号を直接検波してNLTCP信号の光強度情報を取得する。受光部21は、取得した光強度情報をアナログの電気信号に変換してAD変換器22に出力する。
AD変換器22は、受光部21から出力されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。
デジタル信号処理部23は、デジタル信号を処理することによって、非線形トレリス符号化前のN値シンボルであるunを取得する。
【0065】
デジタル信号処理部23の構成は、第1の実施形態と同様である。すなわち、デジタル信号処理部23は、デジタルフィルタ231、信号判定部232、信号復号部233、ビットデマッピング部234、加算器235及びタップ更新部236を備える。
デジタルフィルタ231は、複素タップで構成されており、NLTCP信号の波形整形を行う。デジタルフィルタ231は、波形整形後のNLTCP信号を信号判定部232及び加算器235に出力する。デジタルフィルタ231は、一般的な線形フィルタであるFIRフィルタや、高次の伝達関数を記述可能なボルテラフィルタ等が用いられる。
【0066】
信号判定部232は、NLTCP信号に対して閾値判定を行うことによってN+2値シンボルvnを取得する。信号判定部232は、取得したN+2値シンボルvnを信号復号部233及び加算器235に出力する。
信号復号部233は、信号判定部232から出力されたN+2値シンボルvnと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットのN+2値シンボルvn-1とを用いて、以下の式10~式12に基づいた処理を実行することで符号化前のN値シンボルであるunを復元する。
【0067】
【0068】
ただし、信号復号部233は、式10~12によって得られたunが、un<0であった場合にはun=0とし、un>N-1であった場合にはun=N-1とする。
【0069】
ビットデマッピング部234は、信号復号部233によって復元されたN値シンボルであるunに対してグレイ復号を行うことによってunからビット情報であるデータ情報を復元する。
加算器235は、デジタルフィルタ231から出力された値と、信号判定部232から出力された値とを取り込む。なお、加算器235は、デジタルフィルタ231から出力された値をマイナスの符号を付与して取り込む。加算器235は、取り込んだ2つの値を加算、すなわち信号判定部232から出力された値から、デジタルフィルタ231から出力された値を減算し、減算により算出した減算値をタップ更新部236に出力する。
【0070】
タップ更新部236は、信号判定部232による判定後の値と、信号判定部232による判定前の値との差分に基づいて、デジタルフィルタ231のタップ係数を更新する。具体的には、タップ更新部236は、デジタルフィルタ231から出力された値と、信号判定部232から出力された値との差分が最小となるように、すなわち減算値が0となるようにデジタルフィルタ231のタップ係数を更新する。これにより、復調の精度が向上する。
【0071】
なお、ビタビ復号によってシンボル判定を行う場合のデジタル信号処理部の構成は、第2の実施形態と同様である。具体的には、信号復号部233は、採用された送信系列vnから、式10~式12を用いることで非線形トレリス符号化前のシンボルであるunを得る。その後の処理においては、第2の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0072】
以上のように構成された第3の実施形態における光伝送システム100によれば、任意の多値シンボルに対しても適用することができる。
【0073】
(第4の実施形態)
第1の実施形態から第3の実施形態では、本発明における技術を、直接検波方式を前提としたPAM信号に用いる構成を示した。本発明における技術は、コヒーレント検波方式を前提としQAM信号に対しても適用可能である。第4の実施形態では、16QAMに対して本発明における非線形トレリス符号化を適用した構成について説明する。
【0074】
図9は、第4の実施形態における光伝送システム100bのシステム構成を示す図である。光伝送システム100bは、光送信器10b及び光受信器20bを備える。光送信器10bと光受信器20bとは、光ファイバ30を介して接続される。
【0075】
光送信器10bは、信号生成部11b-1,11b-2、信号符号化部12b-1,12b-2、DA変換器13b-1,13b-2、増幅部14b-1,14b-2、信号光源15及び光ベクトル変調器17を備える。
図9において、信号生成部11b-1、信号符号化部12b-1、DA変換器13b-1及び増幅部14b-1は、データ情報Iに対して処理を行う機能部である。また、信号生成部11b-2、信号符号化部12b-2、DA変換器13b-1及び増幅部14b-1は、データ情報Qに対して処理を行う機能部である。
【0076】
なお、以下の説明では、信号生成部11b-1,11b-2について区別しない場合には信号生成部11bと記載する。また、以下の説明では、信号符号化部12b-1,12b-2について区別しない場合には信号符号化部12bと記載する。また、以下の説明では、DA変換器13b-1,13b-2について区別しない場合にはDA変換器13bと記載する。また、以下の説明では、増幅部14b-1,14b-2について区別しない場合には増幅部14と記載する。
【0077】
信号生成部11bは、外部から送信対象となるデータ情報を入力し、入力されたデータ情報を用いて、グレイ符号化された4値シンボルを2系統生成する。具体的には、信号生成部11b-1は、外部から送信対象となるデータ情報Iを入力し、入力されたデータ情報Iを用いて、グレイ符号化された4値シンボルuin(0,1,2,3)を生成する。信号生成部11b-2は、外部から送信対象となるデータ情報Qを入力し、入力されたデータ情報Qを用いて、グレイ符号化された4値シンボルuqn(0,1,2,3)を生成する。
【0078】
信号符号化部12bは、信号生成部11bによって生成された4値シンボルuin(0,1,2,3)及びuqn(0,1,2,3)それぞれに対して非線形トレリス符号化処理を行うことによって6値シンボルを2系統生成する。具体的には、信号符号化部12b-1は、4値シンボルuin(0,1,2,3)に対して、上記の式3で示した非線形トレリス符号化処理を行うことによって6値シンボルvin(0,1,2,3,4,5)を生成する。信号符号化部12b-2は、4値シンボルuqn(0,1,2,3)に対して、上記の式3で示した非線形トレリス符号化処理を行うことによって6値シンボルvqn(0,1,2,3,4,5)を生成する。
【0079】
DA変換器13bは、信号符号化部12bによって生成された6値シンボルvin(0,1,2,3,4,5)及びvqn(0,1,2,3,4,5) のデジタル信号をアナログ信号に変換する。具体的には、DA変換器13b-1は、信号符号化部12b-1によって生成された6値シンボルvin(0,1,2,3,4,5)のデジタル信号をアナログ信号に変換する。DA変換器13b-1は、アナログ信号を増幅部14b-1に出力する。DA変換器13b-2は、信号符号化部12b-2によって生成された6値シンボルvqn(0,1,2,3,4,5)のデジタル信号をアナログ信号に変換する。DA変換器13b-2は、アナログ信号を増幅部14b-2に出力する。
【0080】
増幅部14bは、DA変換器13bから出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光ベクトル変調器17に印加する。具体的には、増幅部14b-1は、DA変換器13b-1から出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光ベクトル変調器17に印加する。増幅部14b-2は、DA変換器13b-2から出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光ベクトル変調器17に印加する。
【0081】
信号光源15は、光ベクトル変調器17に対して連続光を送出する。
光ベクトル変調器17は、増幅部14b-1及び14b-2それぞれから出力されたアナログ信号を用いて独立に振幅変調を行う。具体的には、光ベクトル変調器17は、信号光源15から送出された連続光のIn-phase成分を、増幅部14b-1から出力されたアナログ信号で振幅変調する。光ベクトル変調器17は、信号光源15から送出された連続光のQuadrature成分を、増幅部14b-2から出力されたアナログ信号で振幅変調する。このように、光ベクトル変調器17は、信号光源15から送出された連続光を光ベクトル変調器17によって変調することで、36値の光複素振幅変調信号(NLTCQ信号)を生成する。In-phase成分の値がi、Quadrature成分の値がjとなる確率をrijとした場合、rij=si×sjとなる。ここで、sn(n=0,1,2,3,4,5)はそれぞれの成分がnという値をとる確率である。したがって、rijを成分とする6×6行列Rは、以下の式13のように表される。
【0082】
【0083】
光受信器20bは、AD変換器22b-1,22b-2、デジタル信号処理部23b、局発光源24及びコヒーレント受信器25を備える。
局発光源24は、受信信号光に干渉させる局発光を出力する。
コヒーレント受信器25は、光送信器10bから送信されたNLTCQ信号を局発光に基づいてコヒーレント検波することで、NLTCQ信号の複素振幅情報を出力する。ここで、NLTCQ信号の複素振幅情報とは、I成分のアナログ電気信号とQ成分のアナログ電気信号である。
【0084】
AD変換器22bは、コヒーレント受信器25から出力されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。具体的には、AD変換器22b-1は、I成分のアナログ電気信号をデジタル信号に変換する。AD変換器22b-2は、Q成分のアナログ電気信号をデジタル信号に変換する。
デジタル信号処理部23bは、デジタル信号を処理することによって、非線形トレリス符号化前のシンボルであるuin,uqnを取得する。
【0085】
図10は、第4の実施形態におけるデジタル信号処理部23bの内部構成を示す図である。
デジタル信号処理部23bは、デジタルフィルタ231b、信号判定部232b、信号復号部233b-1,233b-2、ビットデマッピング部234b-1,234b-2、加算器235b、タップ更新部236b、IQ合成部242、位相推定部243及びIQ分離部244を備える。
【0086】
IQ合成部242は、AD変換器22b-1及び22b-2から出力されるデジタル信号それぞれを実部(Iチャネル成分のデジタル信号)と虚部(Qチャネル成分のデジタル信号)として取り込む。IQ合成部242は、取り込んだ各信号を複素信号として合成する。具体的には、IQ合成部242は、AD変換器22b-1から出力されるデジタル信号を実部とし、AD変換器22b-2から出力されるデジタル信号を虚部として取り込み、取り込んだ各信号を複素信号として合成する。
【0087】
デジタルフィルタ231bは、複素タップで構成されており、NLTCQ信号の波形整形を行う。デジタルフィルタ231bは、波形整形後のNLTCQ信号を位相推定部243に出力する。デジタルフィルタ231bは、一般的な線形フィルタであるFIRフィルタや、高次の伝達関数を記述可能なボルテラフィルタ等が用いられる。
位相推定部243は、信号光と局発光源24による局発光との位相差を補償する。位相推定部243は、補償後の信号(NLTCQ信号)を信号判定部232b及び加算器235bに出力する。
【0088】
信号判定部232bは、NLTCQ信号に対して36値のQAM信号として閾値判定を行う。信号判定部232bは、閾値判定により得られた信号を加算器235b及びIQ分離部244に出力する。
IQ分離部244は、信号判定部232bから出力された信号を実部(Iチャネル成分のデジタル信号)と虚部(Qチャネル成分のデジタル信号)に分離することで、2系統の6値シンボルvin,vqnを取得する。IQ分離部244は、取得した6値シンボルvinを信号復号部233b-1に出力し、6値シンボルvqnを信号復号部233b-2に出力する。
【0089】
信号復号部233bは、IQ分離部244から出力された6値シンボルvin,vqnと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットの6値シンボルvin-1,vqn-1とを用いて、式6に基づいた処理を実行することで符号化前の4値シンボルであるuin,uqnを復元する。具体的には、信号復号部233b-1は、IQ分離部244から出力された6値シンボルvinと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットの6値シンボルvin-1とを用いて、式6に基づいた処理を実行することで符号化前の4値シンボルであるuinを復元する。また、信号復号部233b-2は、IQ分離部244から出力された6値シンボルvqnと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットの6値シンボルvqn-1とを用いて、式6に基づいた処理を実行することで符号化前の4値シンボルであるuqnを復元する。
【0090】
ただし、信号復号部233b-1は、式6によって得られたuinが、uin<0であった場合にはuin=0とし、uin>3であった場合にはuin=3とする。また、信号復号部233b-2は、式6によって得られたuqnが、uqn<0であった場合にはuqn=0とし、uqn>3であった場合にはuqn=3とする。
【0091】
ビットデマッピング部234bは、信号復号部233bによって復元された4値シンボルであるuin,uqnに対してグレイ復号を行うことによってuin,uqnからビット情報であるデータ情報I,Qを復元する。具体的には、ビットデマッピング部234b-1は、信号復号部233b-1によって復元された4値シンボルであるuinに対してグレイ復号を行うことによってuinからビット情報であるデータ情報Iを復元する。ビットデマッピング部234b-2は、信号復号部233b-2によって復元された4値シンボルであるuqnに対してグレイ復号を行うことによってuqnからビット情報であるデータ情報Qを復元する。
【0092】
加算器235bは、位相推定部243から出力された値と、信号判定部232bから出力された値とを取り込む。なお、加算器235bは、位相推定部243から出力された値をマイナスの符号を付与して取り込む。加算器235bは、取り込んだ2つの値を加算、すなわち信号判定部232bから出力された値から、位相推定部243から出力された値を減算し、減算により算出した減算値をタップ更新部236bに出力する。
【0093】
タップ更新部236bは、信号判定部232bによる判定後の値と、信号判定部232bによる判定前の値との差分に基づいて、デジタルフィルタ231bのタップ係数を更新する。具体的には、タップ更新部236bは、位相推定部243から出力された値と、信号判定部232bから出力された値との差分が最小となるように、すなわち減算値が0となるようにデジタルフィルタ231bのタップ係数を更新する。これにより、復調の精度が向上する。
【0094】
次に、ビタビ復号によってシンボル判定を行う場合のデジタル信号処理部の構成について
図11を用いて説明する。
図11は、第4の実施形態においてビタビ復号によってシンボル判定を行う場合のデジタル信号処理部23cの内部構成を示す図である。
デジタル信号処理部23cは、信号復号部233c-1,233c-2、ビットデマッピング部234c-1,234c-2、第1デジタルフィルタ237c、ビタビ復号部238c-1,238c-2、第2デジタルフィルタ239c、加算器240c-1,240c-2、メトリック算出部241c-1,241c-2、IQ合成部242、位相推定部243c、IQ合成部245、IQ分離部246、加算器247及びメトリック算出部248を備える。
【0095】
第1デジタルフィルタ237cは、複素タップで構成されており、NLTCQ信号の波形整形を行う。第1デジタルフィルタ237cは、波形整形後のNLTCQ信号を位相推定部243cに出力する。第1デジタルフィルタ237cは、FIRフィルタやボルテラフィルタ等の一般的な線形フィルタが用いられる。
【0096】
位相推定部243cは、信号光と局発光源24による局発光との位相差を補償する。位相推定部243cは、補償後の信号(NLTCQ信号)をIQ分離部244c及び加算器247cに出力する。
IQ分離部244cは、位相推定部243cから出力された信号を実部(Iチャネル成分のデジタル信号)と虚部(Qチャネル成分のデジタル信号)に分離する。IQ分離部244cは、Iチャネル成分の信号をビタビ復号部238c-1及び加算器240c-2に出力し、Qチャネル成分の信号をビタビ復号部238c-2及び加算器240c-1に出力する。
【0097】
ビタビ復号部238cは、IQ分離部244cから出力された信号と、メトリック算出部241cから出力されるメトリックとに基づいて6値シンボルvin,vqnそれぞれに対する系列推定を行う。具体的には、ビタビ復号部238c-1は、ビタビアルゴリズムを用いて、実部(Iチャネル成分)に対応する信号と、メトリック算出部241c-1から出力されるメトリックとに基づいてIチャネル成分における6値シンボルvinに対する系列推定を行う。ビタビ復号部238c-1は、系列推定の結果として得られたメトリックのうち最もメトリックの小さいシンボル系列を送信系列vinとして採用する。メトリック算出部241c-1から出力されるメトリックとしては、vin,vqnそれぞれに対して想定される系列の候補(候補系列)をIQ合成部245によって複素数に合成したうえで、第2デジタルフィルタ239cによってデジタルフィルタ処理を施した時系列データの虚数成分と、第1デジタルフィルタ237cから出力された時系列データの虚数成分との間のユークリッド距離が用いられる。
【0098】
また、ビタビ復号部238c-2は、ビタビアルゴリズムを用いて、虚部(Qチャネル成分)に対応する信号と、メトリック算出部241c-2から出力されるメトリックとに基づいてQチャネル成分における6値シンボルvinに対する系列推定を行う。ビタビ復号部238c-2は、系列推定の結果として得られたメトリックのうち最もメトリックの小さいシンボル系列を送信系列vqnとして採用する。メトリック算出部241c-2から出力されるメトリックとしては、vin,vqnそれぞれに対して想定される系列の候補(候補系列)をIQ合成部245によって複素数に合成したうえで、第2デジタルフィルタ239cによってデジタルフィルタ処理を施した時系列データの実数成分と、第1デジタルフィルタ237cから出力された時系列データの実数成分との間のユークリッド距離が用いられる。
【0099】
信号復号部233cは、ビタビ復号部238cによって採用された送信系列vin,vqnから、vin,vqnそれぞれに対して式6を適用することで非線形トレリス符号化前のシンボルであるuin,uqnを復元する。具体的には、信号復号部233c-1は、ビタビ復号部238c-1によって採用された送信系列vinから、vinに対して式6を適用することで非線形トレリス符号化前のシンボルであるvqnを復元する。信号復号部233c-2は、ビタビ復号部238c-2によって採用された送信系列vqnから、vqnに対して式6を適用することで非線形トレリス符号化前のシンボルであるuqnを復元する。
【0100】
ビットデマッピング部234cは、信号復号部233cによって復元された4値シンボルであるuin,uqnに対してグレイ復号を行うことによってuin,uqnからビット情報であるデータ情報I,Qを復元する。具体的には、ビットデマッピング部234c-1は、信号復号部233c-1によって復元された4値シンボルであるuinに対してグレイ復号を行うことによってuinからビット情報であるデータ情報Iを復元する。ビットデマッピング部234c-2は、信号復号部233c-2によって復元された4値シンボルであるuqnに対してグレイ復号を行うことによってuqnからビット情報であるデータ情報Qを復元する。
【0101】
IQ合成部245は、入力されたvin,vqnそれぞれに対して想定される系列の候補(候補系列)を複素数に合成する。
第2デジタルフィルタ239cは、複素タップで構成されており、IQ合成部245によって合成された複素数に対してデジタルフィルタ処理を施すことによって時系列データを取得する。第2デジタルフィルタ239cは、取得した時系列データをIQ分離部246及び加算器247cに出力する。第2デジタルフィルタ239cは、FIRフィルタやボルテラフィルタ等の一般的な線形フィルタが用いられる。特に、大きな非線形応答を有するシステムに対しては、第2デジタルフィルタ239cとしてボルテラフィルタを用いるとよい。
【0102】
IQ分離部246は、第2デジタルフィルタ239cから出力された信号を実部と虚部に分離する。IQ分離部246は、実部に対応する信号(Iチャネル成分の信号)を加算器240c-2に出力し、虚部に対応する信号(Qチャネル成分の信号)を加算器240c-1に出力する。
【0103】
加算器247cは、位相推定部243cから出力された値と、第2デジタルフィルタ239cから出力された値とを取り込む。なお、加算器247cは、位相推定部243cから出力された値をマイナスの符号を付与して取り込む。加算器247cは、取り込んだ2つの値を加算、すなわち第2デジタルフィルタ239cから出力された値から、位相推定部243cから出力された値を減算し、減算により算出した減算値をメトリック算出部248cに出力する。
【0104】
メトリック算出部248cは、加算器247cから出力された減算値をメトリックとして算出する。
加算器240c-1は、IQ分離部246から出力された値(Qチャネル成分の信号)と、IQ分離部244cから出力された値(Qチャネル成分の信号)とを取り込む。なお、加算器240c-1は、IQ分離部244cから出力された値をマイナスの符号を付与して取り込む。加算器240c-1は、取り込んだ2つの値を加算、すなわちIQ分離部246から出力された値から、位相推定部243cから出力された値を減算し、減算により算出した減算値をメトリック算出部241c-1に出力する。
【0105】
加算器240c-2は、IQ分離部246から出力された値(Iチャネル成分の信号)と、IQ分離部244cから出力された値(Iチャネル成分の信号)とを取り込む。なお、加算器240c-2は、IQ分離部244cから出力された値をマイナスの符号を付与して取り込む。加算器240c-2は、取り込んだ2つの値を加算、すなわちIQ分離部246から出力された値から、位相推定部243cから出力された値を減算し、減算により算出した減算値をメトリック算出部241c-2に出力する。
【0106】
メトリック算出部241c-1は、加算器240c-1から出力された減算値をメトリックとして算出する。
メトリック算出部241c-2は、加算器240c-2から出力された減算値をメトリックとして算出する。
【0107】
以上のように構成された第4の実施形態における光伝送システム100bによれば、コヒーレント検波方式にも適用することが可能になる。
【0108】
(第5の実施形態)
本発明は、任意の多値シンボルを有するQAM信号に対して適用可能である。そこで、第5の実施形態では、N2値のQAM信号に対して本発明における非線形トレリス符号化を適用した構成について説明する。
第5の実施形態における光送信器と光受信器の構成は、第4の実施形態と同様である。
【0109】
まず、第5の実施形態における光送信器10bの構成について説明する。
信号生成部11bは、外部から送信対象となるデータ情報を入力し、入力されたデータ情報を用いて、グレイ符号化されたN値シンボルを2系統生成する。具体的には、信号生成部11b-1は、外部から送信対象となるデータ情報Iを入力し、入力されたデータ情報Iを用いて、グレイ符号化されたN値シンボルuin(0,1,…,N-1)を生成する。信号生成部11b-2は、外部から送信対象となるデータ情報Qを入力し、入力されたデータ情報Qを用いて、グレイ符号化されたN値シンボルuqn(0,1,…,N-1)を生成する。
【0110】
信号符号化部12bは、信号生成部11bによって生成されたN値シンボルuin(0,1,…,N-1)及びuqn(0,1,…,N-1)それぞれに対して非線形トレリス符号化処理を行うことによってN+2値シンボルを2系統生成する。具体的には、信号符号化部12b-1は、N値シンボルuin(0,1,…,N-1)に対して、上記の式7~式9で示した非線形トレリス符号化処理によってN+2値シンボルvin(0,1,…,N+1)を生成する。信号符号化部12b-2は、N値シンボルuqn(0,1,…,N-1)に対して、上記の式7~式9で示した非線形トレリス符号化処理によってN+2値シンボルvqn(0,1,…,N+1)を生成する。
【0111】
DA変換器13bは、信号符号化部12bによって生成されたN+2値シンボルvin(0,1,…,N+1)及びvqn(0,1,…,N+1)のデジタル信号をアナログ信号に変換する。具体的には、DA変換器13b-1は、信号符号化部12b-1によって生成されたN+2値シンボルvin(0,1,…,N+1)のデジタル信号をアナログ信号に変換する。DA変換器13b-1は、アナログ信号を増幅部14b-1に出力する。DA変換器13b-2は、信号符号化部12b-2によって生成されたvqn(0,1,…,N+1)のデジタル信号をアナログ信号に変換する。DA変換器13b-2は、アナログ信号を増幅部14b-2に出力する。
【0112】
増幅部14bは、DA変換器13bから出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光ベクトル変調器17に印加する。具体的には、増幅部14b-1は、DA変換器13b-1から出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光ベクトル変調器17に印加する。増幅部14b-2は、DA変換器13b-2から出力されたアナログ信号の信号パワーを増幅して、光ベクトル変調器17に印加する。
【0113】
信号光源15は、光ベクトル変調器17に対して連続光を送出する。
光ベクトル変調器17は、増幅部14b-1及び14b-2それぞれから出力されたアナログ信号を用いて独立に振幅変調を行う。具体的には、光ベクトル変調器17は、信号光源15から送出された連続光のIn-phase成分を、増幅部14b-1から出力されたアナログ信号で振幅変調する。光ベクトル変調器17は、信号光源15から送出された連続光のQuadrature成分を、増幅部14b-2から出力されたアナログ信号で振幅変調する。このように、光ベクトル変調器17は、信号光源15から送出された連続光を光ベクトル変調器17によって変調することで、(N+2)2値の光複素振幅変調信号(NLTCQ信号)を生成する。
【0114】
次に、第5の実施形態における光受信器20bの構成について説明する。
局発光源24は、受信信号光に干渉させる局発光を出力する。
コヒーレント受信器25は、光送信器10bから送信されたNLTCQ信号を局発光に基づいてコヒーレント検波することで、NLTCQ信号の複素振幅情報を出力する。ここで、NLTCQ信号の複素振幅情報とは、I成分のアナログ電気信号とQ成分のアナログ電気信号である。
【0115】
AD変換器22bは、コヒーレント受信器25から出力されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。具体的には、AD変換器22b-1は、I成分のアナログ電気信号をデジタル信号に変換する。AD変換器22b-2は、Q成分のアナログ電気信号をデジタル信号に変換する。
デジタル信号処理部23bは、デジタル信号を処理することによって、非線形トレリス符号化前のシンボルであるuin,uqnを取得する。
【0116】
デジタル信号処理部23bの構成は、第4の実施形態と同様である。
IQ合成部242は、AD変換器22b-1及び22b-2から出力されるデジタル信号それぞれを実部と虚部として取り込む。IQ合成部242は、取り込んだ各信号を複素信号として合成する。具体的には、IQ合成部242は、AD変換器22b-1から出力されるデジタル信号を実部とし、AD変換器22b-2から出力されるデジタル信号を虚部として取り込み、取り込んだ各信号を複素信号として合成する。
【0117】
デジタルフィルタ231bは、複素タップで構成されており、NLTCQ信号の波形整形を行う。デジタルフィルタ231bは、波形整形後のNLTCQ信号を位相推定部243に出力する。デジタルフィルタ231bは、一般的な線形フィルタであるFIRフィルタや、高次の伝達関数を記述可能なボルテラフィルタ等が用いられる。
位相推定部243は、信号光と局発光源24による局発光との位相差を補償する。位相推定部243は、補償後の信号(NLTCQ信号)を信号判定部232b及び加算器235bに出力する。
【0118】
信号判定部232bは、NLTCQ信号に対して(N+2)2値のQAM信号として閾値判定を行う。信号判定部232bは、閾値判定により得られた信号を加算器235b及びIQ分離部244に出力する。
IQ分離部244は、信号判定部232bから出力された信号を実部と虚部に分離することで、2系統のN+2値シンボルvin,vqnを取得する。IQ分離部244は、取得したN+2値シンボルvinを信号復号部233b-1に出力し、N+2値シンボルvqnを信号復号部233b-2に出力する。
【0119】
信号復号部233bは、IQ分離部244から出力されたN+2値シンボルvin,vqnと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットのN+2値シンボルvin-1,vqn-1とを用いて、式10~式12に基づいた処理を実行することで、符号化前のN値シンボルであるuin,uqnを復元する。具体的には、信号復号部233b-1は、IQ分離部244から出力されたN+2値シンボルvinと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットのN+2値シンボルvin-1とを用いて、式10~式12に基づいた処理を実行することで符号化前のN値シンボルであるuinを復元する。また、信号復号部233b-2は、IQ分離部244から出力されたN+2値シンボルvqnと、既に判定済みであるひとつ前のタイムスロットのN+2値シンボルvqn-1とを用いて、式10~式12に基づいた処理を実行することで符号化前のN値シンボルであるuqnを復元する。
【0120】
ただし、信号復号部233b-1は、式10~式12によって得られたuinが、uin<0であった場合にはuin=0とし、uin>N-1であった場合にはuin=N-1とする。また、信号復号部233b-2は、式10~式12によって得られたuqnが、uqn<0であった場合にはuqn=0とし、uqn>N-1であった場合にはuqn=N-1とする。
【0121】
ビットデマッピング部234bは、信号復号部233bによって復元されたN値シンボルであるuin,uqnに対してグレイ復号を行うことによってuin,uqnからビット情報であるデータ情報I,Qを復元する。具体的には、ビットデマッピング部234b-1は、信号復号部233b-1によって復元されたN値シンボルであるuinに対してグレイ復号を行うことによってuinからビット情報であるデータ情報Iを復元する。ビットデマッピング部234b-2は、信号復号部233b-2によって復元されたN値シンボルであるuqnに対してグレイ復号を行うことによってuqnからビット情報であるデータ情報Qを復元する。
【0122】
以上のように構成された第5の実施形態における光伝送システム100bによれば、任意の多値数のQAMに対しても適用することができる。
【0123】
上述した実施形態における光送信器10,10b及び光受信器20,20bの一部または全ての機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0124】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0125】
10、10b…光送信器, 11、11b-1、11b-2…信号生成部, 12、12b-1、12b-2…信号符号化部, 13、13b-1、13b-2…DA変換器, 14、14b-1、14b-2…増幅部, 15…信号光源, 16…光変調器, 17…光ベクトル変調器, 20、20b…光受信器, 21…受光部, 22、21b-1、21b-2…AD変換器, 23、23a、23b、23c…デジタル信号処理部, 24…局発光源, 25…コヒーレント受信器, 231、231b…デジタルフィルタ, 232、232b…信号判定部, 233、233a、233b-1、233b-2…信号復号部, 234、234b-1、234b-2…ビットデマッピング部, 235、235b…加算器, 236、236b…タップ更新部, 237、237c…第1デジタルフィルタ, 238、238c-1、238c-2…ビタビ復号部, 239、239c…第2デジタルフィルタ, 240、240c-1、240c-2…加算器, 241、241c-1、241c-2…メトリック算出部, 242…IQ合成部, 243、243c…位相推定部, 244、244c…IQ分離部, 245…IQ合成部, 246…IQ分離部, 247、247c…加算器, 248…メトリック算出部