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特許7163684ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び該ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたガスバリア性蒸着フィルム、包装材料、包装体
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  • 特許-ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び該ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたガスバリア性蒸着フィルム、包装材料、包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び該ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたガスバリア性蒸着フィルム、包装材料、包装体
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20221025BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20221025BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221025BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221025BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221025BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221025BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20221025BHJP
   C23C 14/20 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C08J7/00 Z CFD
B32B9/00 A
B32B27/00 H
B32B27/36
C08J5/18
B65D65/40 D
C23C14/08 A
C23C14/20 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018174731
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020045420
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】岸本 好弘
(72)【発明者】
【氏名】小西 健太
(72)【発明者】
【氏名】澤田 将徳
(72)【発明者】
【氏名】金高 秀成
(72)【発明者】
【氏名】塩田 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】岡野 愛
(72)【発明者】
【氏名】柴田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】竹井 理哲
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256254(JP,A)
【文献】特開2007-216504(JP,A)
【文献】特開昭63-125327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00
B32B 9/00
B32B 27/00
B32B 27/36
C08J 5/18
B65D 65/40
C23C 14/08
C23C 14/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜層を有するガスバリア性蒸着フィルムの基材層として用いるポリエチレンテレフタレートフィルム(ただし、ポリイミドを含む場合を除く。)であって、含水率を0.22質量%以上、0.33質量%以下としたことを特徴とする、ガスバリア性蒸着フィルム用ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層と、無機酸化物蒸着膜層とを有するガスバリア性蒸着フィルムであって、
該無機酸化物蒸着膜層は、酸化アルミニウムを主成分とし、該ポリエチレンテレフタレートフィルムに隣接して積層されていることを特徴とする、ガスバリア性蒸着フィルム。
【請求項3】
さらにバリア性被覆層を有するガスバリア性蒸着フィルムであって、
該バリア性被覆層は、前記無機酸化物蒸着膜層の、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムとは反対側の表面上に、隣接して積層されており、金属アルコキシドと、水酸基含有水溶性樹脂とを含む樹脂組成物から形成されたものであることを特徴とする、請求項2記載の、ガスバリア性蒸着フィルム。
【請求項4】
前記樹脂組成物中の、水酸基含有水溶性樹脂/金属アルコキシドの質量比が、5/95以上、20/80以下であることを特徴とする、請求項3に記載の、ガスバリア性蒸着フィルム。
【請求項5】
前記バリア性被覆層の厚みが、150nm以上、800nm以下であることを特徴とする、
請求項3または4に記載の、ガスバリア性蒸着フィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレンフタレートフィルムが、ポリエチレンテレフタレート合成工程とフィルム製膜工程とをインラインで行うことにより製造されたポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする、請求項2~5の何れか1項に記載のガスバリア性蒸着フィルム。
【請求項7】
請求項2~6の何れか1項に記載のガスバリア性蒸着フィルムからなる層と、シーラント層とを有することを特徴とする、ガスバリア性積層体。
【請求項8】
請求項7に記載のガスバリア性積層体から作製されたことを特徴とする、ガスバリア性包装材料。
【請求項9】
請求項8に記載のガスバリア性包装材料から作製されたことを特徴とする、ガスバリア性包装体。
【請求項10】
含水率を0.22質量%以上、0.33質量%としたポリエチレンテレフタレートフィルム(ただし、ポリイミドを含む場合を除く。)の表面に、物理蒸着法により、酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜を積層することを特徴とする、ガスバリア性蒸着フィルムの製造方法。
【請求項11】
無機酸化物蒸着膜の上に隣接して、金属アルコキシドと水酸基含有水溶性樹脂とを含む樹脂組成物を、塗布、乾燥することにより、バリア性被覆層を、さらに形成することを特徴とする、
請求項10に記載の、ガスバリア性蒸着フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項2に記載のガスバリア性蒸着フィルムの表面に、ドライラミネーション法または押出ラミネーション法によって、シーラント層を積層することを特徴とする、ガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項13】
ガスバリア性蒸着フィルムの製造方法における、ガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法であって、
リエチレンテレフタレートフィルム(ただし、ポリイミドを含む場合を除く。)の含水率を測定して、該含水率が、0.22質量%未満、または0.33質量%より大きい場合に、少なくとも、加熱処理、加湿処理、室温恒温処理からなる群から選ばれる1種以上の処理を行うことによって、該含水率を0.22質量%以上、0.33質量%以下に調節することを特徴とする、ガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。
【請求項14】
前記加熱処理を、30℃以上、120℃以下の環境下で行うことを特徴とする、請求項13に記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。
【請求項15】
前記加湿処理を、相対湿度30%RH以上、100%RH以下の環境下で行うことを特徴とする、請求項13または14に記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。
【請求項16】
前記室温恒温処理を、5℃以上、30℃未満の環境下で行うことを特徴とする、請求項13~15の何れか1項に記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。
【請求項17】
ガスバリア性積層体の製造方法における、ガスバリア性積層体の品質管理方法であって、
請求項13~16の何れか1項に記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法によってガスバリア性蒸着フィルムの品質管理を行うことを特徴とする、
ガスバリア性積層体の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーなどの電子デバイス、食品、医薬品、ペットフードなどの包装材料として好適に使用できる、酸素および水蒸気に対するバリア性に優れたガスバリア性蒸着フィルム用のポリエチレンテレフタレートフィルム、及び該ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたガスバリア性蒸着フィルム、包装材料、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパーなどの電子デバイスや、食品、医薬品等の分野では、内容物の変質を防止し、かつ機能や性質を維持できるように、温度、湿度などの影響を受けない、より高いバリア性を、安定して発揮し得るバリア性積層フィルムが求められ、樹脂基材上に、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の蒸着膜の薄膜からなるバリア層とバリア性の塗膜層を積層した多層構造のバリア性積層フィルムも開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラスチック材料からなる基材と、該基材上に設けられた第1の蒸着薄膜層と、該第1の蒸着薄膜層上に設けられ、少なくとも水溶性高分子を含むコーティング剤を塗布して形成されたガスバリア性中間層と、該中間層上に設けられた第2の蒸着薄膜層とからなる積層体、さらには、前記基材と第1の蒸着薄膜層との間にポリオールとイソシアネート化合物とシランカップリング剤とからなるプライマー層を設けた、ガスバリア性積層体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、合成樹脂製の基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一方の面に積層される一の平坦化層と、この一の平坦化層の外面に積層される無機酸化物又は無機窒化物から形成されているガスバリア層と、このガスバリア層の外面に積層される他の金属アルコキシド及び/又はその加水分解物を含む組成物を用いたゾル・ゲル法により形成されている平坦化層とを備える高バリア性にシートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、樹脂フィルムの表面に金属酸化物層と、樹脂層と、金属層とをこの順に、又は逆順に積層して、前記金属酸化物層が、SiOx(1.0≦x≦2.0)で示される酸化珪素であるガスバリア性の積層フィルムが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のような多層構造のバリア性積層フィルムは、製造法として工程が増えるための、原料費、装置稼働費などの単なるコストアップだけでなく、各層ごとでの品質のチェック、それに基づく品質管理修正、履歴管理など複雑な作業が要求される。
【0007】
そのため、上記のような製造上の問題を解決し、生産性の低下を招かない、バリア性に優れたバリアフィルムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2002/083408号公報
【文献】特開2005-324469号公報
【文献】特開2008-6762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたものであり、従来技術のよう
な多層構造を採らずにガスバリア性に優れたガスバリア性蒸着フィルムを作製するための、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び該ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたガスバリア性蒸着フィルム、積層体、包装材料、包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成する為に、酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜層を形成してなるガスバリア性蒸着フィルムの基材用のポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率を0.22質量%以上、0.33質量%以下としたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜層を有するガスバリア性蒸着フィルムの基材層として用いるポリエチレンテレフタレートフィルムであって、含水率を0.22質量%以上、0.33質量%以下としたことを特徴とする、ポリエチレンテレフタレートフィルム。
2.上記1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層と、無機酸化物蒸着膜層とを有するガスバリア性蒸着フィルムであって、
該無機酸化物蒸着膜層は、酸化アルミニウムを主成分とし、該ポリエチレンテレフタレートフィルムに隣接して積層されていることを特徴とする、ガスバリア性蒸着フィルム。
3.さらにバリア性被覆層を有するガスバリア性蒸着フィルムであって、
該バリア性被覆層は、前記無機酸化物蒸着膜層の、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムとは反対側の表面上に、隣接して積層されており、金属アルコキシドと、水酸基含有水溶性樹脂とを含む樹脂組成物から形成されたものであることを特徴とする、上記2記載の、ガスバリア性蒸着フィルム。
4.前記樹脂組成物中の、水酸基含有水溶性樹脂/金属アルコキシドの質量比が、5/95以上、20/80以下であることを特徴とする、上記3に記載の、ガスバリア性蒸着フィルム。
5.前記バリア性被覆層の厚みが、150nm以上、800nm以下であることを特徴とする、
上記3または4に記載の、ガスバリア性蒸着フィルム。
6.前記ポリエチレンフタレートフィルムが、ポリエチレンテレフタレート合成工程とフィルム製膜工程とをインラインで行うことにより製造されたポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする、上記2~5の何れかに記載のガスバリア性蒸着フィルム。
7.上記2~6の何れかに記載のガスバリア性蒸着フィルムからなる層と、シーラント層とを有することを特徴とする、ガスバリア性積層体。
8.上記7に記載のガスバリア性積層体から作製されたことを特徴とする、ガスバリア性包装材料。
9.上記8に記載のガスバリア性包装材料から作製されたことを特徴とする、ガスバリア性包装体。
10.含水率を0.22質量%以上、0.33質量%としたポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、物理蒸着法により、酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜を積層することを特徴とする、ガスバリア性蒸着フィルムの製造方法。
11.無機酸化物蒸着膜の上に隣接して、金属アルコキシドと水酸基含有水溶性樹脂とを含む樹脂組成物を、塗布、乾燥することにより、バリア性被覆層を、さらに形成することを特徴とする、
上記10に記載の、ガスバリア性蒸着フィルムの製造方法。
12.上記2に記載のガスバリア性蒸着フィルムの表面に、ドライラミネーション法または押出ラミネーション法によって、シーラント層を積層することを特徴とする、ガスバリア性積層体の製造方法。
13.ガスバリア性蒸着フィルムの製造方法における、ガスバリア性蒸着フィルムの品質
管理方法であって、
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率を測定して、該含水率が、0.22質量%未満、または0.33質量%より大きい場合に、少なくとも、加熱処理、加湿処理、室温恒温処理からなる群から選ばれる1種以上の処理を行うことによって、該含水率を0.22質量%以上、0.33質量%以下に調節することを特徴とする、ガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。
14.前記加熱処理を、30℃以上、120℃以下の環境下で行うことを特徴とする、上記13に記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。
15.前記加湿処理を、相対湿度30%RH以上、100%RH以下の環境下で行うことを特徴とする、上記13または14に記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。16.前記室温恒温処理を、5℃以上、30℃未満の環境下で行うことを特徴とする、上記13~15の何れかに記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法。
17.ガスバリア性積層体の製造方法における、ガスバリア性積層体の品質管理方法であって、
上記13~16の何れかに記載のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法によってガスバリア性蒸着フィルムの品質管理を行うことを特徴とする、
ガスバリア性積層体の品質管理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多層構造を採らずにガスバリア性に優れたガスバリア性蒸着フィルムを作製するための、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び該ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたガスバリア性蒸着フィルム、積層体、包装材料、包装体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のガスバリア性蒸着フィルムの一例を示す断面図である。
図2】本発明のガスバリア性蒸着フィルムの別態様の一例を示す断面図である。
図3】本発明のガスバリア性積層体の一例を示す断面図である。
図4】本発明における酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜層を成膜する装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図面を用いながら説明する。但し、本発明はこれら具体的に例示された形態や各種具体的に記載された構造に限定されるものではない。
【0015】
なお、各図においては、解り易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
【0016】
<ポリエチレンテレフタレートフィルム>
工業用に利用される一般的なポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率は、おおよそ0.1~1質量%であるが、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、これを基材として用いたガスバリア性蒸着フィルムのガスバリア性を向上させる為に、含水率を0.22質量%以上、0.33質量%以下としたものである。
【0017】
該含水率が上記の範囲であれば、ガスバリア性蒸着フィルムにおいて良好なガスバリア性が発現される。
【0018】
該含水率が上記範囲よりも小さいと、無機酸化物蒸着膜とポリエチレンテレフタレートフィルムの界面での反応に関与できる水が少なすぎて、ガスバリア性蒸着フィルムのガス
バリア性が不十分になり易い。
【0019】
また、該含水率が上記範囲よりも大きいと、無機酸化物蒸着膜の蒸着時における該界面での反応に水の影響が大きく作用し過ぎて、無機酸化物蒸着膜の膜質が均質にならない虞があり、ガスバリア性蒸着フィルムのガスバリア性が不安定になり易い。
【0020】
本発明において、ポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率は、カールフィッシャー水分測定装置によって測定されるものである。詳細な測定方法は、実施例に記載した通りであるが、要は、含水率は、(試料から出てきた水分量[g])/(試料重量[g])なる式から算出されるものである。
【0021】
ポリエチレンテレフタレートフィルムは、1層であっても、2層以上の多層構成であってもよく、多層構成の場合には、同一組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。
【0022】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5μm以上、100μm以下が好ましく、5μm以上、25μm以下がより好ましい。
【0023】
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、含水率が0.22質量%以上、0.33質量%以下のポリエチレンテレフタレートフィルムを選別して用いることもできるが、その数値範囲外の含水率を有するフィルムであっても、加熱処理、加湿処理、室温恒温処理からなる群から選ばれる1種以上の処理を行って、含水率を上記数値内に調節することによって、ガスバリア性蒸着フィルムの基材として用いることができる。
【0024】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムには、ポリエチレンテレフタレート樹脂のペッレトを溶融、製膜して製造されるポリエチレンテレフタレートフィルムや、ポリエチレンテレフタレートの合成工程とフィルムの製膜工程とをインラインで行うことにより製造されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることもできる。
【0025】
前者のポリエチレンテレフタレートフィルムは、含水率が0.22質量%以上、0.33質量%以下のポリエチレンテレフタレートフィルムを得易い面で有利であり、後者のポリエチレンテレフタレートフィルムは、コスト面で有利である。
【0026】
さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムには、積層対象物との接着性を上げるために、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系などの樹脂からなる易接着層と呼ばれる薄膜が設けられていることが多いが、このようなポリエチレンテレフタレートフィルムも本発明では使用できる。
【0027】
本発明のガスバリア性蒸着フィルムを作製する際には、この易接着層の薄膜上に無機酸化物蒸着膜層を設けることができる。易接着層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ極薄の膜である為、ポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率に影響を及ぼさない。
【0028】
ポリエチレンテレフタレートフィルムは、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を含有することができる。添加剤として、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料などが挙げられる。添加剤は、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる層を形成する樹脂組成物全体中に、5質量%以上、50質量%以下で含有されることが好ましく、5質量%以上、20質量%以下の範囲で含有されることがより好ましい。
【0029】
<ガスバリア性蒸着フィルム>
図1に示したように、本発明のガスバリア性蒸着フィルム1は、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材層2と、無機酸化物蒸着膜層3とを有し、無機酸化物蒸着膜層3は、基材層2のポリエチレンテレフタレートフィルムに隣接して積層されている。
【0030】
本発明のガスバリア性蒸着フィルムは、無機酸化物蒸着膜層3の膜質が、基材層2であるポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率に影響を受けて、ガスバリア性が変化する。
【0031】
本発明のガスバリア性蒸着フィルムは、基材として用いるポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率を0.22質量%以上、0.33質量%以下としたものであり、該含水率がこの範囲であれば、良好なガスバリア性が発現できる。
【0032】
図2に示したように、本発明のガスバリア性蒸着フィルム1は、無機酸化物蒸着膜層3上に隣接して、バリア性被覆層4が積層された構成にすることもできる。
【0033】
また更には、図示はされていないが、必要に応じて、種々の機能層を積層することもできる。
【0034】
[基材層]
ガスバリア性蒸着フィルムの基材層は、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる層である。
【0035】
基材層は、単層構成であっても、2層以上の多層構成であってもよく、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム以外の樹脂フィルムを含む多層構成であってもよいが、無機酸化物蒸着膜層が形成される基材層の最表面は、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる層で構成されている。
【0036】
[無機酸化物蒸着膜層]
本発明に係る無機酸化物蒸着膜層は、主成分として酸化アルミニウムを含む無機酸化物の薄膜であり、微量の、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、亜鉛、ジルコニウム等の金属の、酸化物、窒化物、炭化物、水酸化物等を含んでいてもよい。
【0037】
無機酸化物蒸着膜層の厚みは、5nm以上、100nm以下が好ましい。上記範囲よりも小さいとバリア性が不十分になり易く、上記範囲よりも大きいと無機酸化物蒸着膜層の剛性が強くなり過ぎて剥離等が発生し易い傾向になる。

[無機酸化物蒸着膜層の形成方法]
無機酸化物蒸着膜層は酸化アルミニウムを主成分とするため、無機酸化物蒸着膜を酸化アルミニウム蒸着膜として、以下を説明する。
【0038】
酸化アルミニウム蒸着膜を形成する蒸着法としては、物理蒸着法、化学蒸着の中から種々の蒸着法が適用できる。物理蒸着法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、クラスターイオンビーム法からなる群から選ぶことができ、化学蒸着法としては、プラズマCVD法、プラズマ重合法、熱CVD法、触媒反応型CVD法からなる群から選ぶことができる。本発明においては、物理蒸着法の蒸着法が好適である。
【0039】
図4を用いて、本発明の無機酸化物蒸着膜層の形成について説明する。
【0040】
蒸着膜成膜装置12内の減圧された蒸着膜成膜室12Cに、被蒸着基材搬送室12Aの搬送ローラー14でポリエチレンテレフタレートフィルムを搬送する。
【0041】
搬送されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、蒸着成膜処理する成膜ローラー23に巻きかけられる。
【0042】
そして、成膜ローラー23に対向して配置された蒸着成膜源24のターゲットを蒸発させてポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に蒸着膜を形成し、順次巻き取りローラー15で巻き取られロールになる。
【0043】
蒸着膜成膜手段24は抵抗加熱方式であり、蒸発源としてアルミニウム金属からなる線材を用い、酸素ガスを供給してアルミニウム蒸気を酸化しつつ、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に酸化アルミニウム蒸着膜を形成する。
【0044】
酸素ガスは、酸素単体であっても、アルゴンのような不活性ガスとの混合ガスでの供給であっても良いが、酸素量を調整できることが好ましい。
【0045】
また、アルミニウム金属の蒸発は、例えば、舟形(「ボートタイプ」という)蒸着容器に、ローラー23の軸方向にアルミニウム金属からなる線材を複数配置し、抵抗加熱式により加熱することで行うことができる。
【0046】
このような方法で、供給される熱量、温度を調節しながらアルミニウム金属を蒸発させ、かつ供給する酸素量を調整することにより、アルミニウム金属と酸素との反応を制御して、酸化アルミニウム蒸着膜を形成することができる。
【0047】
そして、酸化アルミニウム蒸着膜形成後に、さらに、加熱処理を施すこともできる。この加熱処理は、無機酸化物蒸着膜の組成を変化させるものであり、従来行われている蒸着時の不完全なストイキオメトリーの酸化アルミニウムを、完全なストイキオメトリーの酸化アルミニウムとする為に行う加熱処理とは異なる。
【0048】
加熱処理は、50℃以上、100℃以下の温度で行うことが好ましい。
【0049】
上記温度範囲よりも低温だと加熱処理効果が発現し難く、充分な効果を得る為には長時間の処理を要する為に生産性が悪化する。上記温度範囲よりも高温だと、被蒸着基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム部分が劣化し易くなる。
【0050】
[バリア性被覆層]
バリア性被覆層は、無機酸化物蒸着膜層を機械的・化学的に保護するとともに、ガスバリア性蒸着フィルムのバリア性能を向上させるものであり、無機酸化物蒸着膜層上に隣接して積層される。
【0051】
バリア性被覆層は、金属アルコキシドと水酸基含有水溶性樹脂とを含む樹脂組成物からなるバリア性被覆層用コート剤から形成される。バリア性被覆層内で、金属アルコキシドは、縮合反応生成物を生成しているが、水酸基含有水溶性樹脂との間で共縮合物を生成していてもよい。
【0052】
前記樹脂組成物中の水酸基含有水溶性樹脂/金属アルコキシドの質量比は、5/95以上、20/80以下が好ましく、7/93以上、15/85以下がより好ましい。上記範
囲よりも小さいと、バリア性被覆層の剛性が強くなり過ぎたり脆性が大きくなったりし易くなり、上記範囲よりも大きいと、バリア性被覆層のバリア効果が不十分になり易い傾向になる。
【0053】
バリア性被覆層の厚みは、100nm以上、800nm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと、バリア性被覆層のバリア効果が不十分になり易くなり、上記範囲よりも厚いと、剛性が強くなり過ぎたり脆性が大きくなったりし易くなる。
【0054】
本発明において、バリア性被覆層は、例えば、以下の方法で形成することができる。まず、金属アルコキシド、水酸基含有水溶性樹脂、反応促進剤(ゾルゲル法触媒、酸等)、及び溶媒としての水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール等の有機溶媒を混合して、樹脂組成物からなるバリア性被覆層用コート剤を調製する。
【0055】
次いで、無機酸化物蒸着膜層の上に、常法により、上記のバリア性被覆層用コート剤を塗布し、乾燥する。この乾燥工程によって、前記縮合または共縮合反応が更に進行し、塗膜が形成される。第一の塗膜の上に、更に上記の塗布、乾燥の操作を繰り返して、2層以上の複数層からなる塗膜を形成してもよい。
【0056】
さらに、必要に応じて、20~200℃、好ましくは30~150℃、より好ましくは40~100℃、かつ基材層を構成する樹脂の軟化点以下の温度で、3秒~10分間の加熱処理を行い、乾燥することができる。乾燥条件は、乾燥の対象となるガスバリア性蒸着フィルムの形態や形質、バリア性被覆層用コート剤の組成によって異なる。
【0057】
これによって、無機酸化物蒸着膜層の上に、上記バリア性被覆層用コート剤によるバリア性被覆層を形成することができる。
【0058】
[金属アルコキシド]
金属アルコキシドは、一般式R1 nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は水素原子または炭素数1~8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。1分子中の複数のR1、R2のそれぞれは、同一であっても、異なっていてもよい。)で表される。
【0059】
金属アルコキシドのMで表される具体的な金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、スズ、鉛、ボラン、その他等を例示することができ、例えば、MがSi(ケイ素)であるアルコキシシランを使用することが好ましい。
【0060】
アルコキシシランは、一般式R1 nSi(OR2m(ただし、n+m=4。)で表される。
【0061】
上記において、OR2の具体例としては、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-プロポキシ基、ブトキシ基、3-メタクリロキシ基。3-アクリロキシ基、フェノキシ基、等のアルコキシ基またはフェノキシ基等が挙げられる。
【0062】
上記において、R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、p-スチリル基、3-クロロプロピル基、トリフルオロメチル基、ビニル基、γ-グリシドキシプロピル基、メタクリル基、γ-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0063】
アルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、フェニルフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等の各種アルコキシシランやフェノキシシラン等が挙げられる。
【0064】
アルコキシシランにおいて、R1がビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基等の官能基を有する有機基の場合には、一般的にシランカップリング剤と呼ばれる。
【0065】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、あるいは、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0066】
上記の金属アルコキシドは、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよく、特に、シランカップリング剤を併用することが好適である。シランカップリング剤を併用する場合には、全金属アルコキシド中の2質量%以上、15質量%以下をシランカップリング剤にすることが好ましい。
【0067】
[水酸基含有水溶性樹脂]
本発明において、水酸基含有水溶性樹脂は、金属アルコキシドと脱水共縮合し得るものであり、ケン化度は、90%以上、100%以下が好ましく、95%以上、100%以下がより好ましく、99%以上、100%以下が更に好ましい。ケン化度が上記範囲よりも小さいと。バリア性被覆層の硬度が低下し易くなる。
【0068】
水酸基含有水溶性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、2官能フェノール化合物と2官能エポキシ化合物との重合体、等が挙げられ、各々を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、共重合させて用いてもよい。これらの中で、特に、柔軟性と親和性に優れることから、ポリビニルアルコール系樹脂が好適である。
【0069】
ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ一ルや、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化して得られたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することができる。
【0070】
このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のPVA-124(ケン化度=99%、重合度=2,400)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセ
ノールNM-14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を挙げることができる。
【0071】
<ガスバリア性蒸着フィルムの品質管理方法>
本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率を製造方法における管理基準に採用することで、ガスバリア性蒸着フィルムの品質管理を行うことができる。
【0072】
具体的には、ガスバリア性蒸着フィルムの生産工程において、ガスバリア性蒸着フィルムの基材として用いるポリエチレンテレフタレートフィルムから含水率測定用のサンプルを採集し、含水率を測定して、含水率の測定値を基準範囲の、0.22質量%以上、0.33質量%以下と比較して、該ポリエチレンテレフタレートフィルムに対する含水率調節工程の実施必要の有無を検討することができる。
【0073】
例えば、含水率測定値が0.22質量%未満であれば、含水率を高めるために、加湿処理を、相対湿度30%RH以上、100%RH以下の範囲で、含水率測定値に対応した環境を選んで行うことができる。上記の相対湿度は、製品の含水率の調整に適した範囲であり、上記範囲よりも低ければ、含水率を高める効果を得難く、上記範囲よりも高ければ、製品であるガスバリア性蒸着フィルムのブロッキングやかびの発生などを生じる恐れがある。
【0074】
また、含水率測定値が0.33質量%を超えていれば、含水率を下げるために、加熱処理を、30℃以上、120℃以下の範囲で、含水率測定値に対応した環境を選んで行うことができる。上記範囲よりも低ければ、含水率を下げる効果を得難く、上記範囲よりも高ければ、製品であるガスバリア性蒸着フィルムに、熱しわ・熱たわみなどを発生させる恐れがある。
【0075】
さらに、含水率測定値が基準範囲から僅かに外れているだけの場合には、室温恒温処理を行うことによって微差を解消することができる。室温恒温処理は、5℃以上、30℃未満の範囲で行うことが好ましい。
【0076】
なお、各処理の時間は、ポリエチレンテレフタレートフィルム巻きの、巻き太さや熱伝導率などを考慮して、適宜決定することができる。
【0077】
このような品質管理を行うことで、ポリエチレンテレフタレートフィルムのロスを低減すると伴に、その後の工程における原料ロス、製造工程時間ロスなどが低減でき、効率良くガスバリア性蒸着フィルムを製造することができる。
【0078】
<ガスバリア性積層体>
図3に示されたように、本発明のガスバリア性積層体5は、本発明のガスバリア性蒸着フィルム1の最表面に、更に、少なくとも、ヒートシール可能なシーラント層6を、接着剤を介して、あるいは介することなく、積層したものである。図3はバリア性被覆層4上にシーラント層6を積層した例である。
【0079】
シーラント層6は、ガスバリア性蒸着フィルム1の、無機酸化物蒸着膜層3側またはバリア性被覆層4側に積層されていることが好ましい。
【0080】
更に必要に応じて、包装材料に用いた場合に付与したい機能、例えば、遮光性を付与するための遮光性層、装飾性、印字を付与するための印刷層、絵柄層、レーザー印刷層、臭気を分解又は吸着する消臭層など各種機能層を層構成として含むことも出来る。
【0081】
[シーラント層]
シーラント層は、1種または2種以上のヒートシール性樹脂を含む層であり、加熱によって接着することができる層であり、樹脂フィルムを用いたドライラムネーションあるいは共押出を含む押出ラミネーションや、樹脂塗布膜等から形成される層である。
【0082】
シーラント層は、単層であっても、2層以上の多層構成であってもよい。多層構成の場合には、それぞれの層の組成が同一であってもよく、異なっていてもよく、ヒートシール性樹脂のみからなる層や、ヒートシール性樹脂を含まない層を含むこともできる。更には、種々の機能を備えた機能層や、接着剤層を含むこともできる。しかし、包装材料の片面最表層を構成する層は、ヒートシール性に優れた樹脂を含むことが好ましい。
【0083】
ヒートシール性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、α-オレフィン共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エラストマー等の樹脂、及びこれらの樹脂を混合した混合樹脂を用いることができる。
【0084】
また、シーラント層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤、顔料、滑剤、充填剤、補強剤、改質用樹脂等の種々の無機又は有機添加剤等の1種ないし2種以上を、適宜含有することができる。その含有率としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に含有することができる。
【0085】
<ガスバリア性積層体の品質管理方法>
本発明においては、上記のガスバリア性蒸着フィルムの品質管理を行うことによって、ガスバリア性積層体の品質管理を行うことができる。
【0086】
このような品質管理を行うことで、ガスバリア性蒸着フィルムのロスを低減すると伴に、その後の工程における原料ロス、製造工程時間ロスなどが低減でき、効率良くガスバリア性積層体を製造することができる。
【0087】
<ガスバリア性包装材料>
本発明のガスバリア性包装材料は、本発明のガスバリア性積層体から作製される包装材料である。
【0088】
本発明のガスバリア性積層体に、更に、用途に応じた機能フィルムを積層させて、ガスバリア性包装材料を作製することもできる。
【0089】
例えば、レトルト用の包装材料であれば、耐ピンホール構造として、ナイロンフィルムを、また耐熱構造として耐熱シーラントCPPなどを積層した多層フィルムの包装材料である。或いは、液体紙容器用の包装材料であれば、紙を積層した積層体の包装材料である。
【0090】
<ガスバリア性包装体>
本発明のバリア包装体は、本発明のガスバリア性包装材料から作製される包装体である。
【0091】
例えば、多層フィルムからなるガスバリア性包装材料のシーラント層を熱融着させるようなヒートシール加工によって、ピロー包装袋、三方シール、四方シール、ガセットタイ
プ等の形態のガスバリア性包装体を作製できる。また、紙を積層した積層体の包装材料であれば、酒、ジュース等のゲーベルトップ型の液体紙容器包装体を作製できる。
【実施例
【0092】
下記のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、下記のバリア性被覆層用コート剤を調製して、以下の実施例、比較例を行った。
(ポリエチレンテレフタレートフィルム)
・フィルム1:含水率0.257質量%、12μm厚。
・フィルム2:含水率0.256質量%、12μm厚。
・フィルム3:含水率0.255質量%、12μm厚。
・フィルム4:含水率0.228質量%、12μm厚。
・フィルム5:含水率0.227質量%、12μm厚。
・フィルム6:含水率0.224質量%、12μm厚。
・フィルム7:含水率0.322質量%、12μm厚。
・フィルム8:含水率0.216質量%、12μm厚。
【0093】
(バリア性被覆層用バリアコート剤の調製)
水300g、イソプロピルアルコール146g及び0.5N塩酸7.3gを混合してpH2.2に調整した溶液に、テトラエトキシシラン175gとグリシドキシプロピルトリメトキシシラン9.2gを10℃となるよう冷却しながら混合して、溶液Aを調製した。
【0094】
ケン化度99%以上で重合度2400のポリビニルアルコール14.7g、水324g、イソプロピルアルコール17gを混合した溶液Bを調製した。
【0095】
A液とB液を重量比3.5:6.5となるよう混合して得られた溶液をバリア性被覆層用バリアコート剤とした。
【0096】
[実施例1]
(酸化アルミニウム蒸着膜形成)
まず、フィルム1を巻き取ったロールを準備した。
【0097】
次に、下記の条件で、このフィルム1に無機酸化物蒸着膜として厚さ12nmの酸化アルミニウム蒸着膜を形成して、ロール巻きを得た。
このガスバリア性蒸着フィルムの酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。
【0098】
(酸化アルミニウム成膜条件)
・真空蒸着法の加熱手段:反応性抵抗加熱方式
・真空度:8.1×10-2Pa
・搬送速度:400m/min
・酸素のガス供給量:8000sccm
【0099】
[実施例2~7、比較例1]
ポリエチレンテレフタレートフィルムを、表1に記載されたものに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、ガスバリア性蒸着フィルムを得て、同様に測定した。
【0100】
[実施例8]
先ず、実施例1と同様に操作して、ガスバリア性蒸着フィルムのロール巻きを得た。
【0101】
次に、該ロール巻きからA4サイズのガスバリア性蒸着フィルムを切り出し、その酸化アルミニウム蒸着膜上に、上記で調製したバリア性被覆層用コート剤をアプリケーターを
用いてコーティングした。
【0102】
その後、180℃で60秒間、オーブンにて加熱処理して、厚さ約400nmのバリア性被覆層を酸化アルミニウム蒸着膜上に形成して、バリア性被覆層を含むガスバリア性蒸着フィルムを得た。
【0103】
そして、酸素透過度と水蒸気透過度を測定した。
【0104】
[実施例9~14、比較例2]
ポリエチレンテレフタレートフィルムを、表2に記載されたものに変更した以外は、実施例8と同様に操作して、バリア性被覆層を含むガスバリア性蒸着フィルムを得て、同様に測定した。
【0105】
<測定方法>
[含水率]
カールフィッシャー水分測定装置(三菱ケミカルアナリテック(株)社製、CA-200,VA-236S)を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率を測定した。
【0106】
約1gの該積層部からなるフィルムを、25±2℃、相対湿度45±10%RHの環境下で3日間以上保管した後に、短冊状に折り畳んで、測定セルの半分以下の高さになるようにセットし、下記の条件及び環境下で含水率を測定した。各サンプルをn=3で測定し、その平均値を含水率として採用した。
滴定継続時間:10分
終点感度:0.1μg/秒
加熱温度:120℃
窒素ガス流量:250ml/分
測定環境:25±2℃、相対湿度45±10%RH
カールフィッシャー試薬:三菱ケミカル(株)社製「アクアミクロンAX/CXU
【0107】
[酸素透過度]
酸素透過度測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を用いて、ガスバリア性蒸着フィルム基材のポリエチレンテレフタレートフィルム面が酸素供給側になるようにセットして、JIS K 7126準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下における酸素透過度を測定した。
【0108】
[水蒸気透過度]
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN―W3-34G)を用いて、ガスバリア性蒸着フィルム基材のポリエチレンテレフタレートフィルム面がセンサー側になるようにセットして、JIS K 7129に準拠して、40℃、相対湿度100%RH環境下における水蒸気透過度を測定した。
【0109】
[結果まとめ]
実施例1~7及び比較例1の測定結果を表1に、実施例8~14及び比較例2の測定結果を表2にまとめた。
【0110】
実施例1~7のガスバリア性蒸着フィルムは、良好な酸素バリア性と水蒸気バリア性を示したが、比較例1のガスバリア性蒸着フィルムは、酸素バリア性および水蒸気バリア性が著しく悪かった。
【0111】
実施例8~14のガスバリア性蒸着フィルムは、良好な酸素バリア性と水蒸気バリア性を示したが、比較例2のガスバリア性蒸着フィルムは、水蒸気バリア性が著しく悪かった。
【0112】
以上より、ポリエチレンテレフタレートフィルムの含水率が本願規定の0.22~0.33質量%を満たす本願発明のガスバリア性蒸着フィルムは良好な酸素バリア性と水蒸気バリア性を示したが、該規定を満たさないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた比較例1と2のガスバリア性蒸着フィルムは、劣った酸素バリア性および/または水蒸気バリア性を示した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【符号の説明】
【0115】
1 ガスバリア性蒸着フィルム
2 ポリエチレンテレフタレートフィルム
3 無機酸化物蒸着膜層
4 バリア性被覆層
5 ガスバリア性積層体
6 シーラント層
12 蒸着膜成膜装置
12A 被蒸着基材搬送室
12C 蒸着膜成膜室
14 ガイドロール
15 巻き取りローラー
23 成膜ローラー
24 蒸着膜成膜手段
図1
図2
図3
図4