(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】変形矯正装置、記録媒体搬送装置およびインクジェット画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/34 20060101AFI20221025BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221025BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20221025BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20221025BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B65H23/34
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J15/04
B41J15/16
F16C13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018212020
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】能見 亮太郎
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-249976(JP,A)
【文献】実公昭47-017234(JP,Y1)
【文献】特開平09-006163(JP,A)
【文献】特開2014-156114(JP,A)
【文献】特開平11-020972(JP,A)
【文献】特開2015-127258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/34
B41J 2/01
B41J 15/04-15/16
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体としての布を挟んで回転駆動可能な一対のローラーを備え、
前記一対のローラーは、隙間を有するように離間して配置され、
前記一対のローラーの少なくとも一方には、前記記録媒体の幅方向の端部に生じた変形が矯正されるように、溝が形成され
、
前記記録媒体の搬送方向における張力を調整する張力調整部を備え、
前記張力調整部は、前記隙間を保持しながら前記一対のローラーの相対位置を可変させる位置調整部を有する、
変形矯正装置。
【請求項2】
前記溝は、該溝が形成された前記ローラーの回転に伴って、前記布の幅方向の端部の折れを矯正するように、前記幅方向の位相が変わる、
請求項1に記載の変形矯正装置。
【請求項3】
前記一対のローラーは、前記布の厚みよりも大きい距離、かつ、前記折れのある端部の厚み以下の距離での隙間を有している、
請求項2に記載の変形矯正装置。
【請求項4】
前記一対のローラーは、前記布の厚みの2倍以上の距離、かつ、前記折れのある端部の厚み以下の距離での隙間を有している、
請求項2に記載の変形矯正装置。
【請求項5】
前記一対のローラーは、前記隙間が幅方向で一定となるように配置された円錐ローラーである、
請求項3または4に記載の変形矯正装置。
【請求項6】
前記溝は、前記一対のローラーの両方に設けられている、
請求項1から5のいずれかに記載の変形矯正装置。
【請求項7】
前記記録媒体の前記端部を加熱する加熱部を備える、
請求項1から
6のいずれかに記載の変形矯正装置。
【請求項8】
前記加熱部は、少なくとも一方の前記ローラーを加熱する熱源を備える、
請求項
7に記載の変形矯正装置。
【請求項9】
前記熱源は、前記少なくとも一方の前記ローラーに内蔵されている、
請求項
8に記載の変形矯正装置。
【請求項10】
前記一対のローラーは、一方の前記ローラーが回転すると他方の前記ローラーが逆方向に従動回転するように構成されている
請求項1から
9のいずれかに記載の変形矯正装置。
【請求項11】
前記溝は、該溝が形成された前記ローラーの回転に伴って、前記位相が前記幅方向の外側に移動する螺旋溝である、
請求項2に記載の変形矯正装置。
【請求項12】
前記溝と、前記ローラーの回転軸とのなす角度は、90度よりも大きく180度よりも小さい、
請求項1から
11のいずれかに記載の変形矯正装置。
【請求項13】
前記一対のローラーは、前記記録媒体を搬送する搬送部の搬送方向における上流に配置されている、
請求項1から
12のいずれかに記載の変形矯正装置。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれかに記載の変形矯正装置と、
前記記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの搬送面に前記記録媒体を押し付ける押圧ローラーと、
を備える記録媒体搬送装置。
【請求項15】
請求項
14に記載の記録媒体搬送装置と、
前記記録媒体搬送装置によって搬送される前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
を備えるインクジェット画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形矯正装置、記録媒体搬送装置およびインクジェット画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙、布帛等の種々のシート状の記録媒体に対して高精細な画像を記録する装置として、インクジェット方式による画像形成装置(以下、インクジェット画像形成装置という。)が広く普及している。
【0003】
かかるインクジェット画像形成装置において、記録媒体(以下、単にシートともいう。)の種類によっては、画像形成前の搬送時にシートに皺が発生する場合がある。かかる皺が発生したシートに画像を形成すると製品品質が低下するため、画像形成対象となる記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置として、シートの皺とりを行うローラーを用いる構成が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット画像形成装置の記録媒体として布(特に、糸を編んで作られた布)を搬送する場合、かかる記録媒体の端部側に、曲がり(カール)や折れなどの、皺よりも大きな変形が生じやすい問題がある。このような折れ等の変形を矯正しないまま後処理工程(例えばプリント)を行った場合、記録媒体の端部側の画像形成が出来ず不良品になるおそれがあり、或いは、大きく変形した記録媒体の端部側に装置の各部に接触して、装置の故障等が発生するおそれがある。
【0006】
他方、特許文献1に記載の技術は、記録媒体の全体に発生する皺を改善するものであり、このような構成では、記録媒体の局所(すなわち端部)に発生した大きな変形を効果的に除去ないし矯正することは困難である。また、従来技術では、布などの皺を矯正することに主眼が置かれており、皺よりも大きな折れ等の変形を矯正するための技術が提案されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、記録媒体の端部側の変形を矯正することが可能な変形矯正装置、記録媒体搬送装置およびインクジェット画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る変形矯正装置は、
記録媒体としての布を挟んで回転駆動可能な一対のローラーを備え、
前記一対のローラーは、隙間を有するように離間して配置され、
前記一対のローラーの少なくとも一方には、前記記録媒体の幅方向の端部に生じた変形が矯正されるように、溝が形成され、
前記記録媒体の搬送方向における張力を調整する張力調整部を備え、
前記張力調整部は、前記隙間を保持しながら前記一対のローラーの相対位置を可変させる位置調整部を有する。
【0009】
本発明に係る記録媒体搬送装置は、
上記の変形矯正装置と、
前記記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの搬送面に前記記録媒体を押し付ける押圧ローラーと、
を備える。
【0010】
本発明に係るインクジェット画像形成装置は、
上記の記録媒体搬送装置と、
前記記録媒体搬送装置によって搬送される前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体の端部側の変形を矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】インクジェット画像形成装置における記録媒体搬送装置を上流側から見た図である。
【
図3】本実施の形態における変形矯正装置の第1の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す変形矯正装置の動作等を説明する図である。
【
図5】変形矯正装置の第2の構成例を示す図である。
【
図6】変形矯正装置の第3の構成例を示す図である。
【
図7】変形矯正装置の第4の構成例を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す変形矯正装置の動作等を説明する図である。
【
図9】
図9A~
図9Cは、張力調整部および位置調整部の構成等を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るインクジェット画像形成装置としての画像記録装置1の一例を示す概略構成図である。画像記録装置1は、記録媒体搬送装置2および記録ヘッド3等を備えて構成される。このうち、記録媒体搬送装置2は、本発明の「搬送部」に対応する。
【0015】
本実施の形態において、記録媒体搬送装置2は、記録ヘッド3に対して記録媒体Pを搬送するための装置である。記録媒体搬送装置2は、所定の間隔をおいて平行に配置された複数(図示の例では2つ)のローラー21、22に亘って所定幅の無端状の搬送ベルト23が張架されている。これらローラー21、22間に架け渡された搬送ベルト23の上面は、記録媒体Pを密着させて載置する載置面(搬送面)とされている。なお、搬送ベルト23の表面には、搬送中の記録媒体Pを搬送ベルト23の上面に密着させるために、地張りと呼ばれる粘着剤が塗布されている。また、一方のローラー21は図示しない副走査モーターによって駆動される駆動ローラーであり、他方のローラー22は、従動ローラーである。
【0016】
記録媒体搬送装置2における搬送ベルト23の上面には、回転自在な押圧ローラー24が配置されている。押圧ローラー24は、記録媒体Pの搬送方向(
図1中の矢印A参照)における上流側のローラー22に対向する位置に配置されている。押圧ローラー24は、搬送ベルト23と共に記録媒体Pを挟持して、搬送ベルト23上に記録媒体Pを送り出す機能、および記録媒体Pを搬送ベルト23に押し当てることにより、粘着剤が塗布された搬送ベルト23の表面に記録媒体Pを密着させる機能を有する。
【0017】
さらに、記録媒体Pの搬送方向における押圧ローラー24の上流側には、搬送ベルト23上に送り出される記録媒体Pの端部の折れやカールなどの種々の変形を矯正するための端部変形矯正装置4が設けられている。端部変形矯正装置4は、本発明の変形矯正装置に対応する装置であって、以下は変形矯正装置4と称する。変形矯正装置4の詳細については後述する。
【0018】
記録媒体搬送装置2では、駆動ローラー21が副走査モーターの回転駆動によって、
図1中の反時計方向(矢印参照)に所定速度で回転することにより、従動ローラー22との間に架け渡された搬送ベルト23を回転移動させる。かかる動作により、搬送ベルト23の上面に載置(密着)されている記録媒体Pは、矢印Aで示す搬送方向(副走査方向)に沿って搬送される。
【0019】
一般に、インクジェット画像形成装置では、記録媒体Pとして、例えば、紙、布帛、プラスチックフィルム、ガラス板など、インクジェット記録の対象となる種々の媒体が使用され得る。
【0020】
これに対して、本実施の形態では、記録媒体Pとして布帛(布)を使用することを前提とする。具体的には、布帛すなわち繊維が編まれて成形された編物である布は、伸縮性が高く、温湿度の変化等によって端部のカールや折れ等の大きな変形が発生し易くなる。これに対して、記録媒体Pが紙の場合、端部のみのカールは発生しにくい。また、記録媒体Pがプラスチックフィルムやガラス板などの場合、端部の変形は殆ど発生しない。言い換えると、布は、後述の変形矯正装置4を用いることによって特に顕著な効果が得られることから、記録媒体Pとして好適に使用できる。なお、記録媒体Pとして使用される布は、所定サイズに裁断されたシート状であってもよいし、ロール状に巻回された元巻から連続して繰り出される長尺状であってもよい。
【0021】
記録ヘッド3は、搬送ベルト23上の記録媒体Pが載置される面の上方に所定の間隔をおいて配設されており、その下面に設けられた多数のノズルからインク滴を吐出することにより、搬送ベルト23の回転移動によって搬送される記録媒体P上に所望の画像を記録するインクジェットヘッドである。
【0022】
一具体例では、記録ヘッド3は、図示しないキャリッジに搭載されて、間欠的に搬送される記録媒体Pの搬送方向と直交する主査方向に往復移動するシャトル型の記録ヘッドが用いられる。この場合、記録時(印刷ジョブの実行時)に、搬送ベルト23は、待機状態と駆動状態を繰り返す間欠動作を行うように、副走査モーターおよび駆動ローラー21の駆動が制御される。
【0023】
他の例として、記録ヘッド3は、搬送ベルト23の幅方向に亘って固定状に架け渡され、連続的に搬送される記録媒体P上にインク滴を吐出することによって画像を記録するライン型の記録ヘッドであってもよい。この場合、記録時に、搬送ベルト23は、連続的に移動(回転動作)するように、副走査モーターおよび駆動ローラー21の駆動が制御される。
【0024】
次に、
図2以下を参照して、変形矯正装置4の構成について詳述する。
【0025】
図2は、搬送方向における上流側(
図1の右側)から従動ローラー22等の右側の部位を抽出して示す図である。変形矯正装置4は、記録媒体搬送装置2に取り付けられており、
図1および
図2に示すように、従動ローラー22および押圧ローラー24の近傍(搬送方向における上流側)に配置されている。なお、変形矯正装置4は、従動ローラー22および押圧ローラー24の左右端側に各々設けられており、
図2では、右側の変形矯正装置4(4R)のみ示している。左側の変形矯正装置4(4L)は右側の変形矯正装置4(4R)と同等かつ対称的な構成であることから、以下は代表として、右側の変形矯正装置4(4R)の構成を説明する。
【0026】
図3は、変形矯正装置4の構成を抽出して示す斜視図である。
図3に示すように、変形矯正装置4は、略「L」字状に屈曲するように形成されたフレーム40に、一対のローラー41,42(この例では円柱ローラー)が所定の隙間を有するように離間して対向するように組み付けられた構成となっている。本実施の形態では、これらローラー41,42間の隙間が重要な要素となっており、この詳細については後述する。
【0027】
また、各ローラー41,42の回転軸は、上述した押圧ローラー24や従動ローラー22の回転軸と平行となるように配置されている(
図2参照)。そして、本実施の形態では、これらローラー対41,42の少なくとも一方(
図2および
図3の例では下側のローラー41)の表面に、溝部41cが形成されている。
【0028】
溝部41cは、ローラー41の回転軸(軸部41a,41b)とのなす角度が90度よりも大きく180度よりも小さくなるような螺旋状に形成されており、以下は「螺旋溝」と称する。螺旋溝41cは、ローラー41の回転方向に対して、搬送物(すなわち記録媒体P)に外向き(幅方向に沿った最端側)の延伸力が働く周回方向に形成される。言い換えると、螺旋溝41cの傾斜方向は、ローラー41の回転に伴って、溝の位相が幅方向の外側に移動する向きとなる。
図3では、ローラー41に螺旋溝41cが1本形成された構成例を示している。他の例として、複数本の螺旋溝が設けられる構成としてもよい。
【0029】
変形矯正装置4において、ローラー41の両側から突出している軸部41aおよび41bは、フレーム40の右側および左側の軸受けに各々、回転自在に支持されている。このうち、ローラー41の回転軸の一方の軸部41aには、他方のローラー42と連動するためのギア(歯車)41gが設けられている。
【0030】
図3および
図4に示すように、他方のローラー42は、片側の回転軸がフレーム40に回転自在に支持される。具体的には、ローラー42は、上述したローラー41の軸部41aと同方向に突出する軸部42aを有し、かかる軸部42aがフレーム40の片側(
図3および
図4では右側)の軸受けに回転自在に支持されている。また、ローラー42の軸部42aには、対向するローラー41と連動するためのギア(歯車)42gが設けられている。
【0031】
さらに、
図3および
図4に示すように、変形矯正装置4では、上述した各ローラー41,42のギア41g,42gと噛み合う2つのギア43,44が、フレーム40に回転可能に取り付けられている。この例では、ギア43がローラー41のギア41gと噛み合い、ギア44がローラー42のギア42gと噛み合い、さらに、ギア43,44が互いに噛み合っている。
【0032】
かかる構成によれば、いずれか一方のローラー(41または42)が回転した場合、連結された4つのギア(41g,43,44,42g)が連動(従動回転)して、他方のローラー(42または41)が逆方向に強制的に連れ回る(
図3中の各矢印参照)。この結果、記録媒体Pが変形矯正装置4のローラー41,42に挟み込まれた際に、記録媒体Pの張力(送り方向の張力、以下同じ。)を確保することができる。また、
図3および
図4に示す例では、記録媒体Pが変形矯正装置4に突入した後に、例えば螺旋溝41cが形成されていない方のローラー(この例ではローラー42)がスリップして折れ等の矯正の実効性が弱められるといった不具合を防止することができる。
【0033】
本実施の形態では、変形矯正装置4のローラー41,42は、図示しない駆動源(モーター)により一定の速度で回転駆動される。一具体例では、かかるモーターの駆動力がローラー41のギア41gに伝達されることによって、ローラー41が回転し、他方のローラー42が連れ回り回転する。ここで、ローラー41,42を駆動するモーターは、搬送ベルト23の駆動源(副走査モーター)とは別個に設けられる。また、ローラー41,42の回転速度は、搬送ベルト23の搬送速度とは無関係な一定速度とされる。
【0034】
以下、記録媒体Pとして端部に折れ等の大きな変形がある布を給送して画像を形成する場合の、変形矯正装置4の動作等について説明する。
【0035】
印刷ジョブの実行に際し、記録媒体P(すなわち布)の搬送方向の先端側における端部が変形矯正装置4のローラー21、22に挟持されるようにセットされる。そして、変形矯正装置4の上述したモーターが回転することで、ローラー41,42の回転が開始する。続いて、記録媒体Pは、搬送ベルト23の上面と押圧ローラー24との間に挟み込まれ、搬送ベルト23上の地張りに接着され、記録ヘッド3に向けて搬送される。
【0036】
かかる搬送動作において、記録媒体Pの端側の部分は、互いに逆方向に回転する変形矯正装置4のローラー41,42に挟まれながら搬送される。このとき、記録媒体Pの端側の凹凸のある部分は、ローラー41の螺旋溝41cにより擦られ、当該螺旋溝41cの回転(すなわち位相の変化)に伴って、
図3中の白抜き矢印で示す当該記録媒体Pの最端方向(この例では右方向)に引っ張られる。すなわち、ローラー41の回転に伴って螺旋溝41cの位相が右方向に移動し、かかる移動に伴って、ローラー41,42に挟まれている記録媒体Pの端側の部分を右方向に拡げようとする延伸力が作用する。
【0037】
また、
図4に示すように、記録媒体Pの端側の変形した先端E(
図4の例では下側に折れ曲がっている先端E)は、ローラー41の回転(螺旋溝41cの位相の移動)により、螺旋溝41cの溝内に引っかかる。この後、ローラー41の回転に伴って螺旋溝41cの位相がさらに移動することにより、記録媒体Pの先端Eが、
図4中の白抜き矢印で示す記録媒体Pの最端方向(右方向すなわち折れを矯正する方向)に移動して延ばされることにより、折れが解消される。かくして、記録媒体Pの折れのある部位は、変形矯正装置4によって矯正され、折れがなくなった状態で下流側の押圧ローラー24および搬送ベルト23に供給される。
【0038】
本実施の形態によれば、上述のような変形矯正装置4の動作により、記録媒体Pの端側に生じた曲がりや折れ等の大きな変形を効果的に矯正して、記録ヘッド3に向けて記録媒体Pを送り出すことができる。したがって、本実施の形態の画像記録装置1によれば、記録媒体Pの端部側の画像形成を良好に行うことができる。
【0039】
図3および
図4に示す例では、記録媒体Pのカールないし折れが下向きに生じる場合を想定した構成例を説明した。
【0040】
他方、上述したカールないし折れの矯正作用は、記録媒体Pの端側の曲がった先端Eが螺旋溝41cに引っかかることによって実現される側面が強い。このため、
図3および
図4に示す構成例では、記録媒体Pのカールや折れが上向きに発生している場合、当該折れ等の矯正効果が弱くなるおそれがある。
【0041】
したがって、記録媒体Pの端部のカールや折れ等が下向きおよび上向きのいずれの場合でも対応できるようにする観点からは、
図5に示すように、螺旋溝を、一対のローラー41、42の両方に設けることが望ましい。
図5に示す構成例は、上側のローラー42にも螺旋溝(42c)を設けたこと以外は
図3および
図4で説明した構成と同様であるため、他の部分の説明を省略する。
【0042】
また、記録媒体Pを最端側に引っ張る力(延伸力)を強める観点からは、
図6~
図8に示すように、一対のローラー41、42の各々を、円錐ローラーとするとよい。
図6~
図8に示す構成例は、一対のローラー41、42の各々を円錐ローラーとしたこと以外は
図3および
図4で説明した構成と同様であるため、上述した構成と同等の部分には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0043】
ここで、
図6は、上述した
図3および
図4と同様に、記録媒体Pのカールないし折れが下向きに発生する場合を想定して、下側のローラー(円錐ローラー)41に螺旋溝41cを形成した例を示す。また、
図7および
図8は、記録媒体Pの端部のカールや折れ等が下向きおよび上向きのいずれの場合でも対応できるようにするため、螺旋溝を、一対のローラー(円錐ローラー)41、42の両方に設けた例を示す。
【0044】
なお、
図6~
図8に示す構成例では、いずれも、一方の円錐ローラーの大径側と他方の円錐ローラーの小径側とが対向するように配置されている。また、各々の円錐ローラー(41,42)の回転軸は、上述した押圧ローラー24や従動ローラー22の回転軸と平行となるように配置されている。このため、
図6~
図8に示す構成例では、記録媒体Pの搬送の際、円錐ローラー(41,42)によって挟持される記録媒体Pの端部側が、挟持されない記録媒体Pの中央側に対して下方に傾けられる(
図7等参照)。そして、
図6~
図8に示す構成例では、
図3~
図5で説明した円柱ローラーを使用する構成例と比較すると、この傾きにより、記録媒体Pを最端側に引っ張る力(延伸力)を強めることができる。
【0045】
上述した各構成例において、ローラー41およびローラー42の隙間は、記録媒体Pの厚みよりも大きな距離、かつ、記録媒体Pの折れた部位の厚み以下の距離に設定される。また、記録媒体Pの端部のカールないし折れをより効果的に矯正する観点からは、ローラー41およびローラー42の隙間は、記録媒体Pの厚みの2倍以上、かつ、記録媒体Pの折れた部位の厚み以下の距離に設定される。
【0046】
具体的には、ローラー41およびローラー42の隙間が記録媒体Pの折れた部位の厚みよりも大きな距離に設定された場合、記録媒体Pの端側の変形した先端が螺旋溝(41cまたは42c)に引っかかり難くなり、記録媒体Pの端側の折れ等が矯正し難くなる。
【0047】
一方、ローラー41およびローラー42の隙間が記録媒体Pの厚み以下の距離に設定された場合、ローラー41,42と記録媒体Pとの間で発生する摩擦力ひいては延伸力が過度に大きくなり、記録媒体Pの端側に発生した折れ等が矯正し難くなる。また、ローラー41,42の隙間が記録媒体Pの厚みより大きな距離かつ記録媒体Pの厚みの2倍未満の距離の場合、記録媒体Pの材質にもよるが、例えば記録媒体Pが糸を編んで作られた布の場合、上記の摩擦力等が過大化して折れ等が矯正し難くなる場合がある。
【0048】
したがって、ローラー41およびローラー42の隙間は、記録媒体Pの折れた部位の厚み以下の距離、かつ、少なくとも記録媒体Pの厚みよりも大きな距離、より好ましくは記録媒体Pの厚みの2倍以上の距離とする。加えて、ローラー41およびローラー42の隙間をこのような距離に設定ないし確保することにより、記録媒体P(布)の端部に折れ等の大きな変形が無い場合、ローラー41およびローラー42の表面を滑らせるように搬送させることができ、当該布の端部に不要なストレスが加わることを抑制できる。
【0049】
図9(
図9A~
図9C)は、記録媒体Pの搬送方向における張力を調整するための張力調整部の一構成例を説明する図である。本実施の形態では、張力調整部は、搬送部2(搬送ベルト23等)に対するローラー41および42の角度ないし相対位置を可変させる位置調整部を備えている。
【0050】
図9に示す位置調整部は、
図7および
図8で上述した円錐形のローラー対(41,42)を保持するフレーム40を、搬送部2のフレームの側板28(
図1および
図2参照)に対して回転可能に構成している。
【0051】
一具体例では、位置調整部は、フレーム40におけるローラー対(41,42)の各々の軸部41a,42a(
図7等を参照)を支持する部分の略中間点に軸40aを設け、かかる軸40aが側板28に対して回転可能に設けられる(
図9A中に示す両矢印参照)。
【0052】
このような構成とすることにより、上述したローラー41,42同士の隙間を保持しつつ、搬送ベルト23等に対するこれら一対のローラー41,42の角度(相対位置)を変えることができる。そして、ローラー41,42の角度(相対位置)を変えることにより、
図9A~
図9Cに示すように、ローラー41,42に対する記録媒体Pの当接角を変えて、挟持される記録媒体Pの張力を調整ないし最適化することができる。一例では、記録媒体Pとして使用する布の伸縮性が高くなるほど、張力を弱くするように位置調整部を調節することで、端部の変形に対するより良い矯正効果が得られる。
【0053】
図9に示す例では、
図9Aが標準的な角度設定であり、記録媒体P(布)の張力の均衡が得られた状態を示す。
【0054】
これに対し、
図9Bは、
図9Aに示す状態からフレーム40を時計方向(
図9B中の矢印参照)に回転させて、ローラー41への記録媒体Pの当接面積を増やした状態を示す。この場合、記録媒体P(布)の張力は、
図9Aの場合よりも大きくなる。
【0055】
また、
図9Cは、
図9Aに示す状態からフレーム40を反時計方向(
図9C中の矢印参照)に回転させて、ローラー42への記録媒体Pの当接面積を増やした状態を示す。この場合、記録媒体P(布)の張力は、
図9Bの場合よりもさらに大きくなる。
図9Cに示す設定例は、記録媒体Pの端部の種々の変形に対する補正力が強くなり、記録媒体Pの張力も大きくなるため、記録媒体Pが伸縮性の弱い布のような場合に用いることができる。
【0056】
図9A~
図9Cに示す例は、ユーザーが手動で調整する構成例を説明とした。他の例として、フレーム40に図示しないソレノイド等の駆動源を接続し、記録媒体Pの種類(布の材質など)に応じて、制御部(画像記録装置1のCPUなど)の制御により、ローラー41,42の角度を変える構成としてもよい。
【0057】
また、任意的ないし付加的な例として、変形矯正装置4で矯正された記録媒体Pの端部側の変形が、搬送方向の下流側で復元することを抑制するために、記録媒体Pの端部を加熱する加熱部を設けてもよい。
【0058】
一具体例では、加熱部は、ローラー41,42の少なくともいずれか一方、好ましくは両方を加熱する熱源を備える構成とする。かかる熱源は、ローラー41,42の近傍(外部)またはローラー41,42の内部に配置(内蔵)されることができる。ローラー41,42の内部に熱源を配置する場合、ローラー41,42の内部に空洞を設け、かかる空洞に例えばハロゲンヒーターなどの熱源を配置すればよい。
【0059】
上述のような構成とすることで、記録媒体Pの端部がローラー41,42に挟持されて端部の変形が矯正される際に当該端部が加熱されることにより、ローラー41,42で矯正された端部の皺や折れ等が搬送方向の下流側で復元することを抑制できる。
【0060】
以上、詳細に説明したように、本実施の形態の変形矯正装置4によれば、記録媒体Pの端部側の折れなどの大きな変形を矯正することができる。また、変形矯正装置4を備えた記録媒体搬送装置2および画像記録装置1によれば、記録媒体Pの端部側の変形を矯正した状態で印刷等の後処理工程を実行できるので、不良品の発生を抑え、生産性を高めることができる。
【0061】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 画像記録装置(インクジェット画像形成装置)
2 記録媒体搬送装置(搬送部)
21 駆動ローラー
22 従動ローラー
23 搬送ベルト
24 押圧ローラー
28 側板
3 記録ヘッド(インクジェットヘッド)
4 端部変形矯正装置(変形矯正装置)
40 フレーム
40a 軸
41,42 ローラー
41a,41b 軸部
41c,42c 螺旋溝(溝部)
41g ギア
42a 軸部
42g ギア
43,44 ギア
P 記録媒体
E 記録媒体の先端