(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】活性光線硬化型インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20221025BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221025BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C09D11/38
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
(21)【出願番号】P 2019035979
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】大野 陽平
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 秀和
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/087052(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0330296(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101835857(CN,A)
【文献】特開昭62-106971(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188652(WO,A1)
【文献】特開2019-196438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41J 2/01
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル光重合性化合物と、ラジカル光重合開始剤と、色材と、を含む活性光線硬化型インクジェットインクであって、
下記の一般式(1)~(4)からなる群より選ばれた少なくとも1種以上のチオカルボニル化合物をさらに含む活性光線硬化型インクジェットインク。
【化1】
(一般式(1)中、X
1、X
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数が2以上10以下のアルケニル基、または下記に示す置換基Y
1のいずれかを表す。)
【化2】
(置換基Y
1中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、または下記の置換基Y
2のいずれかを表し、nは1から10の整数を表す。)
【化3】
(置換基Y
2中、mは1から10の整数を表す。)
【化4】
(一般式(2)中、R
4、R
5、R
6、R
7はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数1から10のアルキル基、メチルエステル基のいずれかを表し、lはそれぞれ独立に1から10の整数を表す。)
【化5】
(一般式(3)中、R
8、R
9、R
10はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、炭素数が1以上10以下のカルボニル基含有基、塩素原子、炭素数1から10のアルキル基、カルボキシル基のいずれかを表し、Z
1はニトリル基または炭素数が3以上15以下の芳香族環を表し、kはそれぞれ独立に0から10の整数を表す。)
【化6】
(一般式(4)中、R
11~R
15は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、炭素数が1以上10以下のカルボニル基含有基、塩素原子、炭素数1から10のアルキル基のいずれかを表し、Z
2はニトリル基または炭素数が3以上15以下の芳香族環を表す。)
【請求項2】
前記チオカルボニル化合物の含有量は、前記ラジカル光重合開始剤に対するモル比で0.5以上1.0以下である、請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項3】
ゲル化剤をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項4】
前記ラジカル光重合性化合物は、ポリプロピレンオキサイド構造またはポリエチレンオキサイド構造を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、記録媒体の表面に着弾させる工程と、
前記着弾した液滴に活性光線を照射して、前記液滴を硬化させる工程と、
を有する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線硬化型インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。インクジェット記録方式の一つとして、活性光線硬化型インクジェットインクの液滴を記録媒体に着弾させた後、活性光線(紫外線)を照射して硬化させて画像を形成する活性光線硬化型インクジェット方式がある。活性光線硬化型インクジェット方式は、インク吸収性のない記録媒体においても、高い耐擦過性と密着性を有する画像を形成できることから、近年注目されつつある。
【0003】
活性光線硬化型インクは水性インクと比べ耐水性が高いことから、屋外に設置される看板の印刷などにも用いられることが多い。しかしながら、屋外に設置される看板は太陽光にさらされることになるので耐水性だけでなく耐光性も要求されることになる。このような耐光性の要求に応えるために、例えば、特許文献1に記載の発明は、活性光線硬化型インク組成物にチオキサントン系光重合開始剤を含有させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1に記載の発明では、耐光性が必ずしも十分でない場合があることを見いだした。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐光性により優れた画像を形成することができる活性光線硬化型インクジェットインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ラジカル光重合性化合物と、ラジカル光重合開始剤と、色材と、を含む活性光線硬化型インクジェットインクであって、下記の一般式(1)~(4)からなる群より選ばれた少なくとも1種以上のチオカルボニル化合物をさらに含む活性光線硬化型インクジェットインクである。
【0007】
【0008】
(一般式(1)中、X1、X2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数が2以上10以下のアルケニル基、または下記に示す置換基Y1のいずれかを表す。)
【0009】
【0010】
(置換基Y1中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、または下記の置換基Y2のいずれかを表し、nは1から10の整数を表す。)
【0011】
【0012】
(置換基Y2中、mは1から10の整数を表す。)
【0013】
【0014】
(一般式(2)中、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数1から10のアルキル基、メチルエステル基のいずれかを表し、lはそれぞれ独立に1から10の整数を表す。)
【0015】
【0016】
(一般式(3)中、R8、R9、R10はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、炭素数が1以上10以下のカルボニル基含有基、塩素原子、炭素数1から10のアルキル基、カルボキシル基のいずれかを表し、Z1はニトリル基または炭素数が3以上15以下の芳香族環を表し、kはそれぞれ独立に0から10の整数を表す。)
【0017】
【0018】
(一般式(4)中、R11~R15は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、炭素数が1以上10以下のカルボニル基含有基、塩素原子、炭素数1から10のアルキル基のいずれかを表し、Z2はニトリル基または炭素数が3以上15以下の芳香族環を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクによれば、耐光性に優れた画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[活性光線硬化型インクジェットインク]
本発明の実施形態に係る活性光線硬化型インクジェットインクは、ラジカル光重合性化合物と、ラジカル光重合開始剤と、色材と、チオカルボニル化合物とを含む。また、本発明の実施形態に係る活性光線硬化型インクジェットインクは、ゲル化剤をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明によって上記の課題が解決できる理由は以下のように考えられる。
【0022】
画像の耐光性が悪化する原因のひとつは、画像の硬化に寄与せずに形成された画像中に残存するラジカル光重合開始剤が、太陽光などに含まれる紫外線によって分解してラジカル種を生じさせ、このラジカル種が色材を攻撃して色材の構造を破壊することであると考えられる。これに対し、本発明のインクによって形成された画像においては、上記チオカルボニル化合物が画像中に残存したラジカル光重合開始剤由来のラジカル種と反応して活性のないドーマント種に変換することにより、上記ラジカル種を捕捉して不可逆的に不活性化する。これにより、太陽光などの照射があっても、画像中のラジカル種の濃度が低く保たれ、色材を攻撃するラジカルが減るため、画像の耐光性を向上させることができると考えられる。
【0023】
以下、各成分について説明する。
【0024】
(チオカルボニル化合物)
チオカルボニル化合物は、下記の一般式(1)~(4)からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物である。
【0025】
なお、チオカルボニル化合物の含有量は、ラジカル光重合開始剤の含有量に対するモル比で0.5以上1.0以下であることが好ましく、0.6以上0.9以下であることがより好ましく、0.7以上0.8以下であることがより好ましい。チオカルボニル化合物の含有量がラジカル光重合開始剤の含有量に対するモル比で0.5以上であることで、形成された画像中のラジカル種の濃度が低く保たれ、画像の耐光性が良好になる。また、チオカルボニル化合物の含有量がラジカル光重合開始剤の含有量に対するモル比で1.0以下であることで、チオカルボニル化合物によってラジカル光重合性化合物の重合が過度に阻害されず、形成された画像の硬化性が良好になる。
【0026】
なお、活性光線硬化型インクジェットインクがゲル化剤を含むときは、上記チオカルボニル化合物はゲル化剤と疎水性相互作用することにより、硬化前および硬化後のインク中にゲル化剤を引き留めると考えられる。これにより、上記チオカルボニル化合物は、画像を形成したときにゲル化剤が析出することを抑制し、画像表面のブルーミングを抑制することができる。
【0027】
以下、上記チオカルボニル化合物について詳細に説明する。
【0028】
上記チオカルボニル化合物は、下記の一般式(1)~(4)のいずれかで表される化合物である。
【0029】
【0030】
(一般式(1)中、X1、X2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数が2以上10以下のアルケニル基、または下記に示す置換基Y1のいずれかを表す。)
【0031】
【0032】
(置換基Y1中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、または下記の置換基Y2のいずれかを表し、nは1から10の整数を表す。)
【0033】
【0034】
(置換基Y2中、mは1から10の整数を表す。)
【0035】
【0036】
(一般式(2)中、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数1から10のアルキル基、メチルエステル基のいずれかを表し、lはそれぞれ独立に1から10の整数を表す。)
【0037】
【0038】
(一般式(3)中、R8、R9、R10はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、炭素数が1以上10以下のカルボニル基含有基、塩素原子、炭素数1から10のアルキル基、カルボキシル基のいずれかを表し、Z1はニトリル基または炭素数が3以上15以下の芳香族環を表し、kはそれぞれ独立に0から10の整数を表す。)
【0039】
【0040】
(一般式(4)中、R11~R15は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、水酸基、炭素数が1以上10以下のカルボニル基含有基、塩素原子、炭素数1から10のアルキル基のいずれかを表し、Z2はニトリル基または炭素数が3以上15以下の芳香族環を表す。)
【0041】
上記一般式(1)のチオカルボニル化合物において、炭素数が2以上10以下のアルケニル基の例には、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が含まれる。
【0042】
形成された画像中でのラジカル種を捕捉しやすくして、画像の耐光性をより高める観点からは、上記一般式(1)のチオカルボニル化合物において、X1、X2は、アルケニル基、水酸基および置換基Y1であることが好ましく、炭素数3のアルケニル基であることがより好ましい。
【0043】
また、置換基Y1において、nは1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
【0044】
また、置換基Y1において、R1、R2、R3は、水酸基、カルボキシル基および置換基Y2であることが好ましく、これらの内で水酸基であることがより好ましい。また、置換基Y2において、mは、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
【0045】
なお、形成された画像中でのラジカル種を捕捉しやすくして、画像の耐光性をより高める観点からは、上記一般式(1)のチオカルボニル化合物において、X1とX2とは同一の官能基であることが好ましい。
【0046】
上記一般式(2)のチオカルボニル化合物において、メチルエステル基は、エステル構造と、上記エステル構造を構成する酸素原子または炭素原子のいずれかに結合したメチル基と、を有する官能基を意味する。メチルエステル基の例には、メタノールでエステル化されたカルボキシル基(-COOCH3)の構造を有するもの、酢酸でエステル化された水酸基(-OCOCH3)の構造を有するものが含まれる。
【0047】
また、一般式(2)のチオカルボニル化合物において、lは1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
【0048】
形成された画像中でのラジカル種を捕捉しやすくして、画像の耐光性をより高める観点からは、上記一般式(2)のチオカルボニル化合物において、R4、R5、R6、R7は、水酸基、カルボキシル基およびエチル基であることが好ましく、これらの内で水酸基であることがより好ましい。なお、R4、R5、R6、R7は、これらのうち1つ以上3つ以下の置換基が水素であることが好ましい。
【0049】
なお、形成された画像中でのラジカル種を捕捉しやすくして、画像の耐光性をより高める観点からは、上記一般式(2)のチオカルボニル化合物において、R4とR5とは同一の官能基であることが好ましく、R6とR7とは同一の官能基であることが好ましい。
【0050】
上記一般式(3)、(4)のチオカルボニル化合物において、カルボニル基含有基の炭素数は1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがさらに好ましい。炭素数が1以上10以下のカルボニル基含有基の例には、カルボキシル基(-COOH)、エステル化したカルボキシル基(-COOR)、アルデヒド基(-COH)等が含まれる。ここでエステル化したカルボキシル基中のRは炭素数1から9のアルキル基が好ましく、炭素数1から4のアルキル基がより好ましく、炭素数1から3のアルキル基がより好ましい。
【0051】
上記一般式(3)、(4)のチオカルボニル化合物において、芳香族環の炭素数は3以上15以下であることが好ましく、6以上13以下であることがさらに好ましく、7以上10以下であることがさらに好ましい。炭素数が3以上15以下の芳香族環の例には、ベンゼン環、置換基を有していてもよいベンゼン環等が含まれる。置換基を有していてもよいベンゼン環の例には、安息香酸、安息香酸の誘導体、フェノール、フェノールの誘導体等が含まれる。
【0052】
上記一般式(3)のチオカルボニル化合物において、kは0以上10以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
【0053】
形成された画像中でのラジカル種を捕捉しやすくして、画像の耐光性をより高める観点からは、上記一般式(3)のチオカルボニル化合物において、R8、R9は、水酸基、および炭素数1から5のアルキル基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。同様に、上記一般式(3)のチオカルボニル化合物において、R10は、水酸基、および炭素数1から5のアルキル基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。
【0054】
なお、形成された画像中でのラジカル種を捕捉しやすくして、画像の耐光性をより高める観点からは、上記一般式(3)のチオカルボニル化合物において、R8とR9とは同一の官能基であることが好ましい。
【0055】
形成された画像中でのラジカル種を捕捉しやすくして、画像の耐光性をより高める観点からは、上記一般式(4)のチオカルボニル化合物において、R11~R15は、メチル基、水素原子および炭素数1から5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。なお、R11~R15は、これらのうち1つ以上3つ以下の置換基が水素であることが好ましい。
【0056】
チオカルボニル化合物の具体例には、ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、ビス[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}トリチオカーボネート、ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}トリチオカーボネート、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、2’-シアノブタン-2’-イル 4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオエート、2’-シアノブタン-2’-イル3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオエート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、シアノメチル 3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチル N-メチル-N-フェニルジチオカルバメート、S、S-ジベンジルトリチオカーボネート、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸等、メチル4-シアノー4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノエートが含まれる。
【0057】
これらのチオカルボニル化合物のうち、ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、ビス[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}トリチオカーボネート、ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}トリチオカーボネート、が好ましく、ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、2’-シアノブタン-2’-イル 4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオエート、2’シアノブタン-2’-イル3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオエートがより好ましい。
【0058】
(ラジカル光重合性化合物)
ラジカル光重合性化合物は、活性光線の照射により架橋または重合する化合物であれば特に制限されない。
【0059】
ラジカル光重合性化合物の含有量は、インクの全質量に対して1.0質量%以上97質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
ラジカル光重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。ラジカル光重合性化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル光重合性化合物は、単官能モノマーまたは多官能モノマーでありうる。
【0061】
ラジカル光重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0062】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0063】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートなどの2官能の(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の(メタ)アクリレート;ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、ならびにこれらの変性物などが含まれる。上記変性物の例には、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)アクリレート、およびプロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)アクリレートが含まれる。
【0064】
ラジカル光重合性化合物は、エチレンオキサイド構造またはプロピレンオキサイド構造を含むことが好ましい。すなわち、ラジカル光重合性化合物はエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性された(メタ)アクリレート(以下、単に「変性(メタ)アクリレート」ともいう。)を含むことが好ましい。
【0065】
ラジカル光重合性化合物がエチレンオキサイド構造またはプロピレンオキサイド構造を含むことで、ラジカル光重合性化合物とチオカルボニル化合物との相溶性が高まり、チオカルボニル化合物が凝集してなる粗大粒子がインク中に析出しにくくなる。
【0066】
(ラジカル光重合開始剤)
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル光重合性化合物の重合を開始できるものであれば特に制限されない。
【0067】
ラジカル光重合開始剤の含有量は、活性光線の照射によってラジカル光重合性化合物が十分に硬化し、かつインクの吐出性を低下させない範囲において、任意に設定することができる。たとえば、ラジカル光重合開始剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
【0068】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
【0069】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0070】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0071】
(色材)
色材には、顔料および染料が含まれる。
【0072】
色材の含有量は、インクの全質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。色材の含有量が、インクの全質量に対して2質量%以上であると、得られる画像の発色が十分となる。また、色材の含有量がインクの全質量に対して20質量%以下であると、インクの粘度が高まりすぎない。
【0073】
顔料の例には、カラーインデックスに記載される下記の有機顔料および無機顔料が含まれる。
【0074】
赤またはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、および88、ならびにPigment Orange 13、16、20、および36が含まれる。
【0075】
青またはシアン顔料の例には、pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、および60が含まれる。
【0076】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、および50が含まれる。
【0077】
黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、および193が含まれる。
【0078】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、および26が含まれる。
【0079】
染料の例には、各種の油溶性染料が含まれる。
【0080】
(ゲル化剤)
本発明の実施形態に係る活性光線硬化型インクジェットインクはゲル化剤を含んでもよい。ゲル化剤は、常温では固体であるが、加熱すると液体となることにより、インクを温度変化に応じてゾルゲル相転移させることができる有機物である。ゲル化剤が活性光線硬化型インクジェットインクに含まれることで、ゲル化剤がインクドット表面近傍にカードハウス状の結晶構造を形成することにより重合時の酸素阻害を抑制するため、形成される画像の硬化性が良好になる。
【0081】
ゲル化剤の含有量は、インクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。ゲル化剤の含有量を1.0質量%以上とすることで、インクのピニング性を十分に高め、より高精細な画像を形成することができる。ゲル化剤の含有量を10.0質量%以下とすることで、形成した画像の表面にゲル化剤が析出しにくくなり、画像の光沢を他のインクによる画像の光沢により近づけることができ、かつ、インクジェットヘッドからのインク吐出性をより高めることができる。上記観点からは、本発明のインク中のゲル化剤の含有量は、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以上4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0082】
また、以下の観点から、ゲル化剤は、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。ゲル化剤がインク中で結晶化すると、板状に結晶化したゲル化剤によって形成された三次元空間に光重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という。)。カードハウス構造が形成されると、液体の光重合性化合物が前記空間内に保持されるため、インク液滴がより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、記録媒体に着弾したインク液滴同士が合一しにくくなり、より高精細な画像を形成することができる。
【0083】
カードハウス構造を形成するには、インク中で溶解している光重合性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。これに対して、インク中で溶解している光重合性化合物とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造を形成しにくい場合がある。
【0084】
結晶化によるカードハウス構造の形成に好適なゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸ならびにダイマージオールが含まれる。
【0085】
上記ケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジラウリルケトン、ジミリスチルケトン、ミリスチルパルミチルケトンおよびパルミチルステアリルケトンが含まれる。
【0086】
上記エステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、セロチン酸ミリシル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸オレイル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。
【0087】
上記エステルワックスの市販品の例には、日本エマルジョン社製、EMALEXシリーズ(「EMALEX」は同社の登録商標)、ならびに理研ビタミン社製、リケマールシリーズおよびポエムシリーズ(「リケマール」および「ポエム」はいずれも同社の登録商標)が含まれる。
【0088】
上記石油系ワックスの例には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびペトロラクタムを含む石油系ワックスが含まれる。
【0089】
上記植物系ワックスの例には、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウおよびホホバエステルが含まれる。
【0090】
上記動物系ワックスの例には、ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウが含まれる。
【0091】
上記鉱物系ワックスの例には、モンタンワックスおよび水素化ワックスが含まれる。
【0092】
上記変性ワックスの例には、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、12-ヒドロキシステアリン酸誘導体およびポリエチレンワックス誘導体が含まれる。
【0093】
上記高級脂肪酸の例には、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸が含まれる。
【0094】
上記高級アルコールの例には、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが含まれる。
【0095】
上記ヒドロキシステアリン酸の例には、12-ヒドロキシステアリン酸が含まれる。
【0096】
上記脂肪酸アミドの例には、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミドおよび12-ヒドロキシステアリン酸アミドが含まれる。
【0097】
上記脂肪酸アミドの市販品の例には、日本化成社製、ニッカアマイドシリーズ(「ニッカアマイド」は同社の登録商標)、伊藤製油社製、ITOWAXシリーズ、および花王株式会社製、FATTYAMIDシリーズが含まれる。
【0098】
上記N-置換脂肪酸アミドの例には、N-ステアリルステアリン酸アミドおよびN-オレイルパルミチン酸アミドが含まれる。
【0099】
上記特殊脂肪酸アミドの例には、N,N’-エチレンビスステアリルアミド、N,N’-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミドおよびN,N’-キシリレンビスステアリルアミドが含まれる。
【0100】
上記高級アミンの例には、ドデシルアミン、テトラデシルアミンおよびオクタデシルアミンが含まれる。
【0101】
上記ショ糖脂肪酸のエステルの例には、ショ糖ステアリン酸およびショ糖パルミチン酸が含まれる。
【0102】
上記ショ糖脂肪酸のエステルの市販品の例には、三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルシリーズ(「リョートー」は同社の登録商標)が含まれる。
【0103】
上記合成ワックスの例には、ポリエチレンワックスおよびα-オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックスが含まれる。
【0104】
上記合成ワックスの市販品の例には、Baker-Petrolite社製、UNILINシリーズ(「UNILIN」は同社の登録商標)が含まれる。
【0105】
上記ジベンジリデンソルビトールの例には、1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトールが含まれる。
【0106】
上記ジベンジリデンソルビトールの市販品の例には、新日本理化株式会社製、ゲルオールD(「ゲルオール」は同社の登録商標)が含まれる。
【0107】
上記ダイマージオールの市販品の例には、CRODA社製、PRIPORシリーズ(「PRIPOR」は同社の登録商標)が含まれる。
【0108】
これらのゲル化剤のうち、よりピニング性を高める観点からは、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドが好ましく、上記観点からは、下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスがさらに好ましい。下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、本発明のインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。また、下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、本発明のインク中に、いずれか一方のみが含まれていてもよいし、双方が含まれていてもよい。
【0109】
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G1)において、R1およびR2は、いずれも炭素数が9以上25以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。
【0110】
一般式(G2):R3-COO-R4
一般式(G2)において、R3およびR4は、いずれも炭素数が9以上25以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。
【0111】
上記一般式(G1)で表されるケトンワックスまたは上記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基の炭素数が9以上であるため、ゲル化剤の結晶性がより高まり、かつ、上記カードハウス構造においてより十分な空間が生る。そのため、光重合性化合物が上記空間内に十分に内包されやすくなり、インクのピニング性がより高くなる。また、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基の炭素数が25以下であるため、ゲル化剤の融点が過度に高まらないため、インクを出射するときにインクを過度に加熱する必要がない。上記観点からは、R1およびR2は炭素原子数11以上23未満の直鎖状の炭化水素基であることが特に好ましい。
【0112】
また、インクのゲル化温度を高くして、着弾後により急速にインクをゲル化させる観点からは、R1もしくはR2のいずれか、またはR3もしくはR4のいずれかが飽和している炭素原子数11以上23未満の炭化水素基であることが好ましい。上記観点からは、R1およびR2の双方、またはR3およびR4の双方が飽和している炭素原子数11以上23未満の炭化水素基であることがより好ましい。
【0113】
上記一般式(G1)で表されるケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン(炭素数:23-24)、ジベヘニルケトン(炭素数:21-22)、ジステアリルケトン(炭素数:17-18)、ジエイコシルケトン(炭素数:19-20)、ジパルミチルケトン(炭素数:15-16)、ジミリスチルケトン(炭素数:13-14)、ジラウリルケトン(炭素数:11-12)、ラウリルミリスチルケトン(炭素数:11-14)、ラウリルパルミチルケトン(11-16)、ミリスチルパルミチルケトン(13-16)、ミリスチルステアリルケトン(13-18)、ミリスチルベヘニルケトン(13-22)、パルミチルステアリルケトン(15-18)、バルミチルベヘニルケトン(15-22)およびステアリルベヘニルケトン(17-22)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0114】
一般式(G1)で表されるケトンワックスの市販品の例には、Alfa Aeser社製、18-PentatriacontanonおよびHentriacontan-16-on、ならびに花王株式会社製、カオーワックスT1が含まれる。
【0115】
一般式(G2)で表される脂肪酸またはエステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル(炭素数:21-22)、イコサン酸イコシル(炭素数:19-20)、ステアリン酸ステアリル(炭素数:17-18)、ステアリン酸パルミチル(炭素数:17-16)、ステアリン酸ラウリル(炭素数:17-12)、パルミチン酸セチル(炭素数:15-16)、パルミチン酸ステアリル(炭素数:15-18)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素数:13-14)、ミリスチン酸セチル(炭素数:13-16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(炭素数:13-20)、オレイン酸ステアリル(炭素数:17-18)、エルカ酸ステアリル(炭素数:21-18)、リノール酸ステアリル(炭素数:17-18)、オレイン酸ベヘニル(炭素数:18-22)およびリノール酸アラキジル(炭素数:17-20)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0116】
一般式(G2)で表されるエステルワックスの市販品の例には、日油株式会社製、ユニスターM-2222SLおよびスパームアセチ(「ユニスター」は同社の登録商標)、花王株式会社製、エキセパールSSおよびエキセパールMY-M(「エキセパール」は同社の登録商標)、日本エマルジョン株式会社製、EMALEX CC-18およびEMALEX CC-10(「EMALEX」は同社の登録商標)ならびに高級アルコール工業株式会社製、アムレプスPC(「アムレプス」は同社の登録商標)が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してインクに含有させてもよい。
【0117】
(重合禁止剤)
本発明の実施形態に係る活性光線硬化型インクジェットインクは重合禁止剤を含有してもよい。
【0118】
重合禁止剤の含有量は、インクの全質量に対して0.05質量%以下以上0.2質量%以下が好ましい。
【0119】
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが含まれる。
【0120】
(物性)
上記活性光線硬化型インクジェットインクは、25℃における粘度が2mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。また、上記活性光線硬化型インクジェットインクの粘度は、インクジェットヘッドから吐出する際のインク温度である20℃以上100℃未満の温度範囲において、7mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、8mPa・s以上13mPa・s以下であることがより好ましい。
【0121】
上記活性光線硬化型インクジェットインクは、ゲル化剤を含有するときは、80℃における粘度が3mPa・s以上20mPa・sであることが好ましく、6.0mPa・s以上15.0mPa・s以下であることがより好ましく、7.0mPa・s以上12.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。一方、隣り合うインク滴同士の合一を抑制するためには、着弾後の常温下におけるインクの粘度が一定以上であることが好ましい。具体的には、上記活性光線硬化型インクジェットインクは、ゲル化剤を含有するときは、25℃における粘度が1000mPa・s以上であることが好ましい。
【0122】
上記活性光線硬化型インクジェットインクの25℃における粘度、80℃における粘度、およびゲル化温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。具体的には、インクを100℃に加熱し、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で25℃まで冷却したときの、粘度の温度変化曲線を得る。そして、80℃における粘度と25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより、上記粘度を求めることができる。ゲル化温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求めることができる。
【0123】
レオメータは、Anton Paar社製 ストレス制御型レオメータ PhysicaMCRシリーズを用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
【0124】
(活性光線硬化型インクジェットインクの製造方法)
活性光線硬化型インクジェットインクの製造方法は、ラジカル光重合性化合物、ラジカル光重合開始剤、および色材を混合する。このとき、ゲル化剤を同時に混合してもよいし、上述したその他の成分を同時に混合してもよい。ゲル化剤を得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。このとき、ゲル化剤などの溶解性を高めるため、上記各成分を加熱しながら混合することが好ましい。
【0125】
このとき混合する各成分は、純度が高いものであることが好ましい。
【0126】
なお、顔料および分散剤を含む分散体をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して混合してもよい。このときも、分散剤などの溶解性を高めるため、顔料および分散剤などを加熱しながら混合して分散体を調製することが好ましい。
【0127】
分散体の調製は、たとえばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカーなどにより行うことができる。分散体は、顔料粒子の平均粒子径が0.08μm以上0.5μm以下、最大粒子径が0.3μm以上10μm以下、好ましくは0.3μm以上3μm以下となるように行われることが好ましい。
【0128】
[画像形成方法]
本発明の他の実施形態に関する画像形成方法は、1)前述の活性光線硬化型インクジェットインクの液滴をインクジェット記録装置のノズルから吐出して記録媒体の表面に着弾させる工程と、2)記録媒体上に着弾した前記活性光線硬化型インクジェットインクの液滴に、活性光線を照射して、活性光線硬化型インクジェットインクの液滴を硬化させる工程と、を含む。
【0129】
(第1の工程)
第1の工程では、インクジェットインクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の、形成すべき画像に応じた位置に着弾させる。
【0130】
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型などの電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型などの電気-熱変換方式などのいずれでもよい。
【0131】
インク液滴は、加熱した状態でインクジェットヘッドから吐出することで、吐出安定性を高めることができる。吐出される際のインクの温度は、35℃以上100℃以下であることが好ましく、吐出安定性をより高めるためには、35℃以上80℃以下であることがより好ましい。特には、インクの粘度が7mPa・s以上15mPa・s以下、より好ましくは8mPa・s以上13mPa・s以下となるようなインク温度において吐出を行うことが好ましい。
【0132】
上記活性光線硬化型インクジェットインクがゲル化剤を含むときは、インクジェットヘッドからのインクの吐出性を高めるために、インクジェットヘッドに充填されたときのインクの温度を、当該インクのゲル化温度+10℃以上、ゲル化温度+30℃以下に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内のインクの温度が、ゲル化温度+10℃未満であると、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化して、インクの吐出性が低下しやすい。一方、インクジェットヘッド内のインクの温度がゲル化温度+30℃を超えると、インクが高温になりすぎるため、インク成分が劣化することがある。
【0133】
インクの加熱方法は、特に制限されない。例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプおよびヘッド直前の前室インクタンクなどのインク供給系、フィルター付き配管ならびにピエゾヘッドなどの少なくともいずれかをパネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水などによって加熱することができる。
【0134】
吐出される際のインクの液滴量は、記録速度および画質の面から、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
【0135】
記録媒体は、特に制限されず、通常の非コート紙、コート紙などの他、合成紙ユポ(登録商標)、軟包装に用いられる各種プラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PPフィルム、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムがある。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。
【0136】
なお、インク液滴が着弾する際の記録媒体の温度は、20℃以上40℃以下に制御されていることが、インクのゲル化の観点から好ましい。
【0137】
(第2の工程)
第2の工程では、第1の工程で記録媒体に着弾させたインクに活性光線を照射して、インクの硬化膜からなる画像を形成する。
【0138】
活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などから選択することができるが、好ましくは紫外線であり、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光をLED光源から照射することが好ましい。LED光源の例として、Phoseon Technology社製の水冷LED(ピーク波長395nm)が挙げられる。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプなど)と比較して、輻射熱が少ない。したがって、活性光線照射時に、インクが溶け難く、光沢ムラなどを生じさせ難い。
【0139】
ここで、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光を照射する場合、記録媒体表面もしくはインク液滴表面におけるピーク照度を、0.5W/cm2以上10.0W/cm2以下とすることが好ましく、1.0W/cm2以上5.0W/cm2以下とすることが好ましい。
【0140】
活性光線の照射は、インクが記録媒体に着弾してから0.001秒から1.0秒までの間に行うことが好ましく、高精細な画像を形成するためには、0.001秒から0.5秒までの間に行うことがより好ましい。
【0141】
一方、活性光線の照射は、2段階に分けて行ってもよい。この場合、インクが記録媒体に着弾してから0.001秒から2.0秒までの間に活性光線を照射してインクを仮硬化させ、全印字終了後、さらに活性光線を照射してインクを本硬化させることができる。活性光線の照射を2段階に分けることで、インクの硬化収縮が生じ難くなる。
【実施例】
【0142】
以下、本実施形態の具体的な実施例を比較例とともに説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0143】
1. 活性光線硬化型インクジェットインク
1-1. 顔料分散液(M:マゼンタ)の調製
下記の分散剤、活性光線硬化性化合物および重合禁止剤を、ステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌して溶解させた。得られた溶液を室温まで冷却後、下記のマゼンタ顔料1を21質量部加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gとともにガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去して、下記組成の顔料分散液を調製した。
【0144】
[顔料分散液の組成]
・分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9質量部
・ラジカル光重合性化合物:APG-200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学社製) 70質量部
・重合禁止剤:Irgastab UV10(チバ・ジャパン社製) 0.02質量部
・マゼンタ顔料:Pigment Red 122(大日精化社製、クロモファインレッド6112JC) 21質量部
【0145】
1-2. 活性光線硬化型インクジェットインクの調製
下記のゲル化剤、ラジカル光重合性化合物、重合禁止剤、ラジカル光重合開始剤、チオカルボニル化合物と、上記の顔料分散液を用いて活性光線硬化型インクジェットインクを調製した。
【0146】
ゲル化剤は以下のものを用いた。
・脂肪族ジケトン(カオーワックスT1、花王社製)
【0147】
ラジカル光重合性化合物は以下のものを用いた。
・ポリエチレングリコール#400ジアクリレート
・4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート
・6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート
・メトキシポリエチレングリコール#550アクリレート
・1,9-ノナンジオールジアクリレート
・トリメチロールプロパントリアクリレート
・ペンタエリスリトールトリアクリレート
【0148】
重合禁止剤は以下のものを用いた。
・Irgastab UV10(チバスペシャリティケミカル社製)
【0149】
ラジカル光重合開始剤は以下のものを用いた。
・DAROCURE TPO(チバスペシャリティケミカル社製)
【0150】
チオカルボニル化合物として以下のものを用いた。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
上記の各成分を表1の組成に従って混合して得た混合物を80℃に加熱して攪拌した。得られた溶液を加熱下において#300の金属メッシュフィルタで濾過した後、冷却してインク1~10を調製した。
【0155】
【0156】
2. 画像の作製
2-1.記録媒体
インク1~10を用いて、以下の記録媒体に画像を形成した。
・印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量128g/m2 王子製紙社製)
【0157】
2-2.画像の作製条件
インク1~10について、ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、80℃±2℃に制御した。吐出条件は、液適量14pl、印字速度0.5m/sec、射出周波数10.5kHz、印字率100%とし、記録媒体に対し5cm×5cmのベタ印字部分を形成した。着弾後はUV光を露光面照度1,200mW/cm2に集光し、記録媒体上にインク組成物が着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。紫外線ランプには、LEDランプ(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション製)を使用した。
【0158】
3. 評価
(耐光性)
各インクで形成した画像について、強光条件下にさらす前後の画像の反射濃度の変化から耐光性試験を行った。具体的には、まず、X-Rite900(日本平板機材社製)を用いてプリント濃度1近辺での画像の反射濃度を測定した。次に、低温XeウェザーメータXL75(スガ試験機社製)を用いて、照度70000lxで、7日間、20℃、50RHの強光条件下に各画像をさらした。次に、強光条件下にさらした後の画像の反射濃度を、X-Rite900(日本平板機材製)を用いて測定した。強光条件下にさらす前後の反射濃度の変化から、反射濃度残存率(%)を求めた。なお、濃度が不足した画像は、プリント濃度1近辺ではなく最高濃度の部分の反射濃度の変化を測定した。耐光性のレベルは以下のようにランク評価した。なお、プリント濃度は、X-Rite900を用いて入射された光量に対して反射された光量の比(反射率)を求め、反射率の逆数(入射光強度/反射光強度)に対して常用対数をとることで求めた。
【0159】
A: 反射濃度残存率が85%以上
B: 反射濃度残存率が70~85%未満
C: 反射濃度残存率が50~70%未満
D: 反射濃度残存率が50%未満
本発明では、Bランク以上が実用可能である。
【0160】
(こすり耐性(硬化性))
各インクで形成した画像について、「JIS規格 K5701-1 6.2.3 耐摩擦性試験」に記載の方法に則りこすり耐性を評価した。具体的には、適切な大きさに切り取った記録媒体を画像上に設置し、荷重をかけて擦り合わせた。その後、画像濃度低下の程度を目視観察し、下記の基準に基づき評価した。
【0161】
◎:100回以上擦っても、画像の変化がまったく視認されない。
○:100回以上擦ると、表面にやや跡が付くが濃度低下はなく、実用上許容範囲にある。
△:100回擦った段階で画像濃度の低下が認められるが、実用上許容範囲にある。
×:50回未満の擦りで、明らかな画像濃度低下が認められ、実用に耐えない品質である。
【0162】
(ブルーミング)
上記のインクを用いて、記録媒体である印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量128g/m2 王子製紙社製)に形成した5cm×5cmのベタ画像を、40℃の環境下で1か月間保管した。保管後の画像を目視観察し、下記の基準に従ってブルーミングを評価した。
○:画像表面に析出物が認められない。
△:画像表面に薄らとした析出物が存在しており、目視で確認できる。
×:画像表面が粉状の物質で覆われており、目視で明らかに確認できる。
【0163】
(分散安定性)
各インクを、ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に、湿潤膜厚として20μmとなるように塗布した。その後、ルーペ(100倍)を用いて観察を行い、粗大粒子の有無を確認した。
【0164】
評価結果を以下の表2に示す。
【0165】
【0166】
実施例のインク1~7はチオカルボニル化合物を有するので、これらのインクで形成した画像は耐光性評価がAまたはBと良好であった。
【0167】
比較例のインク8~10はチオカルボニル化合物を有さないので、これらのインクで形成した画像は耐光性評価がCと不良であった。
【0168】
実施例のインク2~7と、比較例のインク8~10を比べると、いずれのインクもゲル化剤を含むが、実施例のインク2~7による画像ではゲル化剤の析出(ブルーミング)が見られなかった。これは、実施例のインク2~7はチオカルボニル化合物を含み、チオカルボニル化合物が疎水性相互作用によりゲル化剤の析出を抑制しているためと考えられる。
【0169】
実施例のインク1~4、6、7と、実施例のインク5とを比較すると、実施例のインク1~4、6、7は、チオカルボニル化合物の含有量が、ラジカル光重合開始剤に対するモル比で0.5以上であるので、これらのインクで形成した画像は耐光性がより良好であった。
【0170】
実施例のインク2~5、7と、実施例のインク1とを比較すると、実施例のインク2~5、7はゲル化剤を含むので、実施例1と比べて硬化性がより良好であった。
【0171】
実施例のインク6はゲル化剤を含むものの、チオカルボニル化合物の含有量が、ラジカル光重合開始剤に対するモル比で1.0より多いため、実施例のインク2~5、7と比較して硬化性が劣った。これは実施例6のインクでは、チオカルボニル化合物の量が多すぎたためラジカル光重合性化合物の重合が阻害されたためと考えられる。
【0172】
実施例のインク1~6と、実施例のインク7とを比較すると、実施例のインク1~6では粗大粒子が見られずインクの分散安定性がより良好であった。これは実施例のインク1~6のラジカル光重合性化合物がポリエチレンオキサイドを含むためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクによれば、耐光性の高い画像を得ることができる。そのため、本発明は、活性光線硬化型インクジェットインクの進展および普及に貢献することが期待される。