(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】バリアブル印刷画像検品システム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20221025BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20221025BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B41J29/393 105
B41J5/30 Z
H04N1/00 002A
(21)【出願番号】P 2019047960
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩一郎
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-000876(JP,A)
【文献】特開2006-237825(JP,A)
【文献】特開2006-150746(JP,A)
【文献】特開2013-101495(JP,A)
【文献】特開2013-123117(JP,A)
【文献】特開2012-183754(JP,A)
【文献】特開2008-173803(JP,A)
【文献】特開2007-226616(JP,A)
【文献】特開2018-179699(JP,A)
【文献】特開2008-084174(JP,A)
【文献】特開2014-146253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0267512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
B41J 5/30
G06F 3/12
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に画像を印刷する印刷部と、
当該印刷部により印刷された印刷物を読み取りスキャン画像を生成する画像読取部と、
当該画像読取部により生成されたスキャン画像を予め用意された正解画像と比較することで、前記印刷物の異常を検査する検品部と、
バリアブル印刷に係る印刷データを解析し、当該バリアブル印刷において再利用オブジェクトが各印刷物内の同一箇所で利用される回数に基づいて、当該バリアブル印刷に係る複数の画像から予め定められた上限数以下の代表画像を抽出する抽出部と、
当該抽出された代表画像を前記印刷部により印刷させ、当該印刷された代表画像を前記画像読取部により読み取らせて生成されたスキャン画像を前記正解画像として登録する登録部と、
を備えるバリアブル印刷画像検品システム。
【請求項2】
前記上限数を設定するための設定部を備える請求項1に記載のバリアブル印刷画像検品システム。
【請求項3】
前記抽出部は、前記再利用オブジェクトの配置の組み合わせパターンのうち、利用回数が多いものから優先的に前記代表画像を抽出する請求項1又は2に記載のバリアブル印刷画像検品システム。
【請求項4】
前記バリアブル印刷に係る複数の画像のそれぞれを前記印刷部により印刷させ、当該印刷された各画像を前記画像読取部により読み取らせて各スキャン画像を生成させるバリアブル印刷制御部を備え、
前記検品部は、前記バリアブル印刷に係る複数の画像のそれぞれに対応する各スキャン画像のうち、比較すべき正解画像が存在しないスキャン画像に対し、前記正解画像のいずれかと一致する領域については、当該いずれかの正解画像と比較し、前記正解画像のいずれとも一致しない領域については、当該スキャン画像に対応する印刷前のラスタライズ画像と比較する請求項1から3のいずれか一項に記載のバリアブル印刷画像検品システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアブル印刷画像検品システムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置で印刷された用紙には、種々の理由で画像の汚れや傷等の異常が生じることがある。そのため、印刷直後の用紙をスキャナー等で読み取り、異常を検出する技術が存在する。この技術では、最初に1部目を印刷して目視確認し、問題がなかった場合に、その印刷物のスキャン画像を正解画像として登録し、2部目以降の印刷物のスキャン画像を正解画像と比較することで、異常を検出している。
【0003】
また、近年、用紙の所定領域内の画像を差し替えて印刷するバリアブル印刷が利用されている。PPML(Personalized Print Markup Language)やPDF/VT(Portable Document Format/Variable Transactional)等のバリアブル印刷用フォーマットにおいては、オブジェクトごとに、再利用可能かどうかの情報が埋め込まれている。再利用オブジェクトについては、ラスタライズ処理(RIP)後のデータを一時保管し、再度再利用オブジェクトの描画が行われる際に、RIP済みのデータを再利用することで、従来の印刷画像フォーマットと比較して処理時間を効率化することが可能である。
【0004】
また、バリアブル印刷における再利用オブジェクトを検出し、再利用オブジェクトのRIP後の画像を記録しておき、その後使用される再利用オブジェクトのRIP結果と比較することで検品処理を行う画像処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、バリアブル印刷では、用紙ごとに画像の一部が異なるため、1部目の印刷物を読み取って生成されたスキャン画像と、2部目以降の印刷物を読み取って生成されたスキャン画像とを比較しても、画像異常を検出することができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1の技術は、再利用オブジェクト単位でRIP結果が正しいかどうかを判断するものであり、実際に印刷された印刷物を検品しているわけではないので、その後の印刷処理で異常があったとしても、異常を検出することはできない。
【0008】
本発明は、上記の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、バリアブル印刷時における画像検品を効率的かつ高精度に実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、用紙上に画像を印刷する印刷部と、当該印刷部により印刷された印刷物を読み取りスキャン画像を生成する画像読取部と、当該画像読取部により生成されたスキャン画像を予め用意された正解画像と比較することで、前記印刷物の異常を検査する検品部と、バリアブル印刷に係る印刷データを解析し、当該バリアブル印刷において再利用オブジェクトが各印刷物内の同一箇所で利用される回数に基づいて、当該バリアブル印刷に係る複数の画像から予め定められた上限数以下の代表画像を抽出する抽出部と、当該抽出された代表画像を前記印刷部により印刷させ、当該印刷された代表画像を前記画像読取部により読み取らせて生成されたスキャン画像を前記正解画像として登録する登録部と、を備えるバリアブル印刷画像検品システムである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバリアブル印刷画像検品システムにおいて、前記上限数を設定するための設定部を備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のバリアブル印刷画像検品システムにおいて、前記抽出部は、前記再利用オブジェクトの配置の組み合わせパターンのうち、利用回数が多いものから優先的に前記代表画像を抽出する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のバリアブル印刷画像検品システムにおいて、前記バリアブル印刷に係る複数の画像のそれぞれを前記印刷部により印刷させ、当該印刷された各画像を前記画像読取部により読み取らせて各スキャン画像を生成させるバリアブル印刷制御部を備え、前記検品部は、前記バリアブル印刷に係る複数の画像のそれぞれに対応する各スキャン画像のうち、比較すべき正解画像が存在しないスキャン画像に対し、前記正解画像のいずれかと一致する領域については、当該いずれかの正解画像と比較し、前記正解画像のいずれとも一致しない領域については、当該スキャン画像に対応する印刷前のラスタライズ画像と比較する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バリアブル印刷時における画像検品を効率的かつ高精度に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における画像検品システムのシステム構成図である。
【
図2】クライアント端末の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】印刷装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】バリアブル印刷における出力画像例を示す図である。
【
図6】バリアブル印刷画像に含まれる再利用オブジェクトの配置の組み合わせが正解画像の中にない場合の検品時の処理例を示す図である。
【
図7】クライアント端末に表示される検品設定画面の例である。
【
図9】印刷装置において実行される正解画像生成処理を示すフローチャートである。
【
図10】バリアブル印刷に係る印刷データに含まれるオブジェクト指定情報の例である。
【
図12】印刷装置において実行される出力画像検品処理を示すフローチャートである。
【
図13】印刷装置において実行される出力画像検品処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係るバリアブル印刷画像検品システムの実施の形態について詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0016】
図1に、本実施の形態におけるバリアブル印刷画像検品システムとしての画像検品システム100のシステム構成を示す。画像検品システム100は、クライアント端末10と、印刷装置20と、を有し、クライアント端末10と印刷装置20は、通信回線Nを介してデータ通信可能に接続されている。印刷装置20には、印刷された用紙上の画像を読み取る画像読取部30が内蔵されている。
【0017】
図2は、クライアント端末10の機能的構成を示すブロック図である。クライアント端末10は、制御部11、操作部12、表示部13、記憶部14、通信部15等を備える。
【0018】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Unit)等を備え、クライアント端末10の各部の処理動作を統括的に制御する。CPUは、ROMに記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を実行する。
【0019】
操作部12は、カーソルキー、文字・数字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、ユーザーによる操作入力を受け付ける。操作部12は、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とポインティングデバイスによる位置等の入力信号とを、操作信号として制御部11に出力する。例えば、操作部12は、正解画像の上限数を設定する際に用いられる。すなわち、操作部12は、設定部として機能する。正解画像とは、検品処理において検品対象画像と比較するために予め用意されている画像である。
表示部13は、LCD(Liquid Crystal Display)を備え、制御部11からの指示に従って、各種操作画面や各種処理結果を表示する。
【0020】
記憶部14は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等の記憶装置からなり、各種処理に関するデータ等を記憶する。
通信部15は、通信回線Nを介して印刷装置20等の外部装置との間でデータの送受信を行う。
【0021】
図3は、印刷装置20の機能的構成を示すブロック図である。印刷装置20は、制御部21、操作部22、表示部23、記憶部24、通信部25、原稿読取部26、印刷部27、画像読取部30等を備える。
【0022】
制御部21は、CPU、ROM、RAM等を備え、印刷装置20の各部の処理動作を統括的に制御する。CPUは、ROMに記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を実行する。
【0023】
操作部22は、数字入力キー、スタートキー、タッチパネル等を備えて構成され、ユーザーによる操作入力を受け付ける。操作部22は、キーやタッチパネルの操作により入力された操作信号を制御部21に出力する。
表示部23は、LCDを備え、制御部21からの指示に従って、各種操作画面や各種処理結果を表示する。
【0024】
記憶部24は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等の記憶装置からなり、各種処理に関するデータ等を記憶する。
通信部25は、通信回線Nを介してクライアント端末10等の外部装置との間でデータの送受信を行う。
【0025】
原稿読取部26は、原稿台に載置された原稿、又は、ADF(Auto Document Feeder)によって所定の読取位置に搬送された原稿の画像を読み取る。
【0026】
印刷部27は、用紙上に画像を印刷する。印刷部27は、例えば、電子写真方式の画像形成を行うものであり、感光体ドラム、感光体ドラムの帯電を行う帯電部、画像データに基づいて感光体ドラム表面を露光走査する露光部、感光体ドラムにトナーを付着させる現像部、感光体ドラム上に形成されたトナー像を用紙に転写する転写部、用紙上に形成されたトナー像を定着させる定着部等から構成される。なお、印刷部27における印刷方式については、これに限定されない。
【0027】
画像読取部30は、用紙搬送経路上の用紙搬送方向において印刷部27の下流に設けられており、印刷部27により印刷された印刷物を読み取りスキャン画像を生成する。画像読取部30は、ラインセンサー、エリアセンサー等によって構成され、光源から射出され用紙の表面で反射した光を受光素子で受光し、光の強度に応じた信号を出力する。
【0028】
バリアブル印刷実行時、クライアント端末10から印刷装置20にバリアブル印刷に係る印刷データが送信される。バリアブル印刷に係る印刷データは、PPMLやPDF/VT等のバリアブル印刷用フォーマットにより構成される。具体的には、バリアブル印刷に係る印刷データには、バリアブル印刷で利用されるオブジェクトのデータ、ページごとの各オブジェクトの配置情報(オブジェクトの指定及び配置領域)等が含まれる。オブジェクトには、複数ページから参照される再利用オブジェクトと、1回のみ参照される一時利用オブジェクト(固有オブジェクト)とがある。再利用オブジェクトについては、2回目以降の利用時に、ラスタライズ済みのデータを用いる。
【0029】
制御部21は、画像読取部30により生成されたスキャン画像を予め用意された正解画像と比較することで、印刷物の異常を検査する検品処理を行う。すなわち、制御部21は、検品部として機能する。検品処理では、印刷物の画像の色や位置が正しいか否か、汚れや傷等の異常の有無等を検査する。
なお、検品処理においては、複数の段階の検品レベル(「高」「中」「低」等)に応じて、スキャン画像から異常を検出する際のレベルを変更可能となっている。検品レベルが高いほど、検品処理で比較される画像間において、より小さな差異であっても異常として検出される。
【0030】
制御部21は、バリアブル印刷に係る印刷データを解析し、当該バリアブル印刷において再利用オブジェクトが各印刷物内の同一箇所で利用される回数に基づいて、当該バリアブル印刷に係る複数の画像(バリアブル印刷において印刷される各画像)から予め定められた上限数以下の代表画像を抽出する。すなわち、制御部21は、抽出部として機能する。
具体的には、制御部21は、再利用オブジェクトの配置の組み合わせパターンのうち、利用回数が多いものから優先的に代表画像を抽出する。
【0031】
制御部21は、抽出された代表画像を印刷部27により印刷させ、当該印刷された代表画像を画像読取部30により読み取らせて生成されたスキャン画像を、正解画像として登録する。すなわち、制御部21は、登録部として機能する。
【0032】
制御部21は、バリアブル印刷に係る複数の画像のそれぞれを印刷部27により印刷させ、当該印刷された各画像を画像読取部30により読み取らせて各スキャン画像を生成させる。すなわち、制御部21は、バリアブル印刷制御部として機能する。
【0033】
制御部21は、バリアブル印刷に係る複数の画像のそれぞれに対応する各スキャン画像のうち、比較すべき正解画像が存在しないスキャン画像に対し、正解画像のいずれかと一致する領域については、当該いずれかの正解画像と比較し、正解画像のいずれとも一致しない領域については、当該スキャン画像に対応する印刷前のラスタライズ画像と比較する。
【0034】
図4に、バリアブル印刷における出力画像例を示す。
図4では、レイアウト枠40内に3か所の可変領域(第1可変領域41、第2可変領域42、第3可変領域43。以下、まとめて可変領域41~43と記す場合もある。)が設けられており、可変領域41~43のそれぞれに再利用オブジェクトが配置されている。
図4では、第1可変領域41に「A」が配置され、第2可変領域42に「1」が配置され、第3可変領域43に「あ」が配置されている。仮に、可変領域41~43のそれぞれに10種類の再利用オブジェクトが配置され得る場合、全ての組み合わせパターンに対して正解画像を用意しようとすると、10×10×10=1000種類となる。このような方法では、正解画像を事前に準備するのに時間がかかる上に、バリアブル印刷の検品処理に用いる正解画像のデータ量も膨大になり、現実的ではない。
【0035】
図5に、正解画像の上限数を10に設定した場合の10個の正解画像の例を示す。制御部21は、クライアント端末10から送信されたバリアブル印刷に係る印刷データから、ページごとの再利用オブジェクトの配置情報を取得し、再利用オブジェクトの配置の組み合わせパターン(「A」+「1」+「あ」等)を取得する。次に、制御部21は、バリアブル印刷に含まれる再利用オブジェクトの配置の組み合わせパターンを利用回数が多い順にソートし、上位10個の組み合わせパターンを代表画像として抽出し、各代表画像を印刷するためのラスタライズデータを生成する。正解画像は、このようにして生成された代表画像のラスタライズデータに基づいて印刷部27により印刷した画像を、画像読取部30により読み取って生成されたスキャン画像の画像データである。
【0036】
バリアブル印刷において印刷される複数の画像(バリアブル印刷画像)のうち、画像に含まれる再利用オブジェクトの配置の組み合わせが正解画像のいずれかと一致するものについては、一致した正解画像と比較することで、印刷物の異常を検査することができる。
【0037】
一方、バリアブル印刷画像に含まれる再利用オブジェクトの配置の組み合わせが、正解画像の中にない場合の検品時の処理例を
図6に示す。
図6では、検品対象画像50の第1可変領域41に「C」が配置され、第2可変領域42に「3」が配置され、第3可変領域43に「か」が配置されている。
検品対象画像50の上部は、
図5に示した3番目の正解画像(「C」+「3」+「う」)の一部(「C」+「3」)と一致するため、検品対象画像50(スキャン画像)の上部については、3番目の正解画像(スキャン画像)の一部を切り出したものと比較して検品処理を行う。
検品対象画像50の下部は、
図5に示した10個の正解画像の中で部分的に一致する画像がないため、検品対象画像50(スキャン画像)の下部については、検品対象画像50を印刷する際に用いたラスタライズ画像(RIP画像)と比較して検品処理を行う。
【0038】
次に、
図7を参照して、クライアント端末10の表示部13に表示される検品設定画面131について説明する。
検品設定画面131には、モード選択領域61、正解画像設定領域62、画像検品設定領域63、OKボタン64、キャンセルボタン65が含まれる。
【0039】
モード選択領域61は、「正解画像生成モード」又は「出力画像検品モード」のいずれかのモードを選択するための領域である。
正解画像生成モードは、正解画像の上限数に応じて代表画像を抽出して用紙上に印刷し、印刷物を画像読取部30で読み取ってスキャン画像を生成し、正解画像として登録する処理を実行するモードである。
出力画像検品モードは、用紙上に印刷された出力画像を画像読取部30で読み取り、出力画像に異常がないか等、検品を行う処理を実行するモードである。
【0040】
正解画像設定領域62には、正解画像上限数指定領域62Aが含まれる。
正解画像上限数指定領域62Aは、正解画像生成モードにおける正解画像の上限数を指定するための領域である。
【0041】
画像検品設定領域63には、検品レベル選択領域63A、正解画像参照ボタン63Bが含まれる。
検品レベル選択領域63Aは、「高」「中」「低」の中から検品レベルを選択するための領域である。
操作部12からの操作により、正解画像参照ボタン63Bがクリックされると、
図8に示す正解画像一覧画面132が表示される。正解画像一覧画面132は、正解画像を利用者に通知する画面である。操作部12からの操作により、正解画像一覧画面132内のOKボタン71がクリックされると、正解画像一覧画面132は閉じられる。
【0042】
OKボタン64は、検品設定画面131のモード選択領域61において選択されたモードに対応する処理の実行を指示するためのボタンである。
キャンセルボタン65は、検品設定画面131における設定をキャンセルするためのボタンである。
【0043】
次に、画像検品システム100における動作について説明する。
<正解画像生成処理>
まず、正解画像生成処理について説明する。
利用者は、クライアント端末10において、バリアブル印刷に係る印刷データを指定するとともに、正解画像の上限数を設定する。具体的には、利用者が操作部12からの操作により、表示部13に表示される検品設定画面131(
図7参照)のモード選択領域61において、「正解画像生成モード」を選択し、正解画像設定領域62の正解画像上限数指定領域62Aに正解画像の上限数を入力し、OKボタン64をクリックすると、制御部11は、通信部15を介して、バリアブル印刷に係る印刷データと正解画像の上限数を印刷装置20に送信する。印刷装置20では、正解画像生成処理が開始される。
【0044】
図9は、印刷装置20において実行される正解画像生成処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部21のCPUとROMに記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0045】
制御部21は、通信部25を介して、クライアント端末10からバリアブル印刷に係る印刷データと正解画像の上限数を取得する(ステップS1)。
【0046】
次に、制御部21は、バリアブル印刷に係る印刷データを解析して、ページごとに設定されている各可変領域41~43に配置される再利用オブジェクトの組み合わせパターンを抽出する(ステップS2)。
【0047】
図10に、バリアブル印刷に係る印刷データに含まれるオブジェクト指定情報の例を示す。オブジェクト指定情報には、ページごとに、第1可変領域41に配置される再利用オブジェクト、第2可変領域42に配置される再利用オブジェクト、第3可変領域43に配置される再利用オブジェクトが対応付けられている。
【0048】
次に、制御部21は、ステップS2で抽出された再利用オブジェクトの組み合わせパターンの中から、利用回数が多い順に再利用オブジェクトの組み合わせパターンを選択し、最大で[上限数]個の代表画像を抽出する(ステップS3)。なお、制御部21は、ステップS2で抽出された再利用オブジェクトの組み合わせパターンの数が[上限数]未満である場合には、再利用オブジェクトの組み合わせの全パターンを代表画像とすればよい。
【0049】
次に、制御部21は、各代表画像のラスタライズデータを生成する(ステップS4)。具体的には、制御部21は、各代表画像について、可変領域41~43のそれぞれに、指定されている再利用オブジェクトをラスタライズ処理して合成する。なお、同一の再利用オブジェクトを2回目以降利用する場合には、ラスタライズ済みのデータを利用する。
【0050】
次に、制御部21は、印刷部27を制御して、生成された各代表画像のラスタライズデータに基づいて、用紙上に各代表画像を印刷させる(ステップS5)。
次に、制御部21は、画像読取部30を制御して、各代表画像の印刷物をスキャンさせ、各代表画像のスキャン画像を生成させる(ステップS6)。
【0051】
次に、利用者は、各代表画像の印刷物又はスキャン画像を確認し、各代表画像に問題があるか否かの判断結果を操作部22から入力する。例えば、代表画像の印刷物自体に異常がある場合や、代表画像のスキャン画像に異常がある場合には、正解画像に適さない。なお、各代表画像のスキャン画像は、表示部23又はクライアント端末10の表示部13に表示させた状態で確認すればよい。
制御部21は、操作部22からの入力内容に基づいて、各代表画像に問題があるか否かを判断する(ステップS7)。
各代表画像に問題がある場合には(ステップS7;YES)、ステップS5に戻り、再度、各代表画像の印刷からやり直す。
【0052】
ステップS7において、各代表画像に問題がない場合には(ステップS7;NO)、制御部21は、各代表画像のスキャン画像を正解画像として記憶部24に登録する(ステップS8)。つまり、制御部21は、[上限数]以下の正解画像(スキャン画像の画像データ)を記憶部24に記憶させる。
【0053】
また、制御部21は、記憶部24に記憶されている正解画像管理テーブルに正解画像の情報を格納する。
図11に示すように、正解画像管理テーブルには、正解画像ごとに、正解画像ID、第1可変領域41に配置される再利用オブジェクト、第2可変領域42に配置される再利用オブジェクト、第3可変領域43に配置される再利用オブジェクト、固有領域、スキャン画像特定情報が対応付けられて格納される。
正解画像IDは、複数の正解画像のそれぞれを識別するための識別情報である。
固有領域は、正解画像内で1回のみ利用されるオブジェクト(一時利用オブジェクト・固有オブジェクト)が配置されている領域を示す情報である。固有領域は、例えば、矩形領域の対角線の両端の座標等で表される。固有領域は、正解画像を生成する際に自動的に認識された領域でもよいし、利用者が指定した領域であってもよい。また、正解画像内に固有領域が存在しない場合には、固有領域は「なし」となり、正解画像内に固有領域が複数存在する場合には、固有領域として複数の領域情報を含むこととなる。
スキャン画像特定情報は、正解画像として登録されたスキャン画像の画像データを特定するための情報(ファイル名、データ格納場所等)である。
以上で、正解画像生成処理が終了する。
【0054】
<出力画像検品処理>
次に、出力画像検品処理について説明する。
実際にバリアブル印刷を行う際、利用者は、クライアント端末10において、バリアブル印刷に係る印刷データを指定するとともに、出力画像の検品動作を指示する。具体的には、利用者が操作部12からの操作により、表示部13に表示される検品設定画面131(
図7参照)のモード選択領域61において、「出力画像検品モード」を選択し、OKボタン64をクリックすると、制御部11は、通信部15を介して、バリアブル印刷に係る印刷データ、出力画像検品指示、画像検品設定領域63の検品レベル選択領域63Aにおいて選択されている検品レベルを印刷装置20に送信する。印刷装置20では、選択された検出レベルでの出力画像検品処理が開始される。なお、バリアブル印刷に係る印刷データは、必ずしもこのタイミングで印刷装置20に送信する必要はなく、既に印刷装置20に保存されているバリアブル印刷に係る印刷データを特定するための情報を印刷装置20に送信することとしてもよい。
【0055】
図12及び
図13は、印刷装置20において実行される出力画像検品処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部21のCPUとROMに記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0056】
制御部21は、クライアント端末10から取得したバリアブル印刷に係る印刷データ、又は、予め保存されているバリアブル印刷に係る印刷データに基づいて、バリアブル印刷の各ページ(バリアブル印刷画像)のラスタライズデータを生成する(ステップS11)。具体的には、制御部21は、ページごとに、可変領域41~43のそれぞれに、指定されている再利用オブジェクトを配置し、既にラスタライズ済みのデータが存在する場合にはこれを利用して、ラスタライズデータを生成する。
【0057】
ここで、制御部21は、iを1に設定する(ステップS12)。
次に、制御部21は、iページ目の再利用オブジェクトの組み合わせに対応する正解画像があるか否かを判断する(ステップS13)。具体的には、制御部21は、iページ目の各可変領域41~43に配置された再利用オブジェクトの組み合わせと完全に一致する正解画像があるか否かを判断する。
【0058】
iページ目の再利用オブジェクトの組み合わせに対応する正解画像がある場合には(ステップS13;YES)、制御部21は、この正解画像の正解画像IDを、iページ目と対応付けて記憶部24に記憶させる(ステップS14)。
【0059】
ステップS13において、iページ目の再利用オブジェクトの組み合わせに対応する正解画像がない場合には(ステップS13;NO)、制御部21は、iページ目に含まれる再利用オブジェクトの一部が、印刷物内の同一箇所で、いずれかの正解画像の一部と一致するか否かを判断する(ステップS15)。
【0060】
iページ目に含まれる再利用オブジェクトの一部が、印刷物内の同一箇所で、いずれかの正解画像の一部と一致する場合には(ステップS15;YES)、制御部21は、この正解画像の正解画像IDと、一致する領域(一致領域)とを、iページ目と対応付けて記憶部24に記憶させる(ステップS16)。なお、iページ目に含まれる一部の領域が、或る正解画像の一部と一致し、iページ目に含まれる別の領域が、他の正解画像の一部と一致する場合には、それぞれの領域について、正解画像IDと一致領域とを、iページ目と対応付けておく。
【0061】
ステップS15において、iページ目に含まれる再利用オブジェクトの一部が、印刷物内の同一箇所で、いずれの正解画像とも一致しない場合には(ステップS15;NO)、制御部21は、対応する正解画像がないことを、iページ目と対応付けて記憶部24に記憶させる(ステップS17)。
このようにして、ページ単位で、対応する正解画像との関連付けが行われる。
【0062】
ステップS14、ステップS16又はステップS17の後、制御部21は、全ページ分の処理が終了したか否かを判断する(ステップS18)。
処理が終了していないページが残っている場合には(ステップS18;NO)、制御部21は、iに1を加算して(ステップS19)、ステップS13に戻り、処理を繰り返す。
【0063】
ステップS18において、全ページ分の処理が終了した場合には(ステップS18;YES)、
図13に移り、iを1に設定する(ステップS20)。
【0064】
次に、制御部21は、印刷部27を制御して、iページ目のラスタライズデータに基づいて、用紙上にiページ目のバリアブル印刷画像を印刷させる(ステップS21)。
次に、制御部21は、画像読取部30を制御して、iページ目のバリアブル印刷画像の印刷物をスキャンさせ、スキャン画像を生成させる(ステップS22)。
【0065】
次に、制御部21は、iページ目の再利用オブジェクトの組み合わせに対応する正解画像があるか否かを判断する(ステップS23)。すなわち、制御部21は、ステップS22で生成されたスキャン画像に対し、比較すべき正解画像が存在するか否か、言い換えると、iページ目に正解画像IDが対応付けられているか否かを判断する。
【0066】
iページ目の再利用オブジェクトの組み合わせに対応する正解画像がある場合(ステップS23;YES)、すなわち、iページ目に正解画像IDが対応付けられている場合には、制御部21は、iページ目のスキャン画像(検品対象画像)を、この正解画像IDが示す正解画像と比較することで検品処理を行う(ステップS24)。
なお、検品対象画像を正解画像と比較する際、
図11に示す正解画像管理テーブルから当該正解画像に対応する固有領域を取得し、固有領域については、比較の対象外とする。
【0067】
ステップS23において、iページ目の再利用オブジェクトの組み合わせに対応する正解画像がない場合には(ステップS23;NO)、制御部21は、iページ目に含まれる再利用オブジェクトの一部が、印刷物内の同一箇所で、いずれかの正解画像の一部と一致するか否かを判断する(ステップS25)。すなわち、制御部21は、ステップS22で生成されたスキャン画像に対し、正解画像のいずれかと一致する領域があるか否か、言い換えると、iページ目に正解画像IDと一致領域が対応付けられているか否かを判断する。
【0068】
iページ目に含まれる再利用オブジェクトの一部が、印刷物内の同一箇所で、いずれかの正解画像の一部と一致する場合(ステップS25;YES)、すなわち、iページ目に正解画像IDと一致領域が対応付けられている場合には、制御部21は、iページ目のスキャン画像(検品対象画像)に対して、正解画像IDが示す正解画像と一致する領域については当該正解画像と、一致する正解画像がない領域についてはiページ目のラスタライズ画像と比較することで検品処理を行う(ステップS26)。ここで、iページ目に、複数の正解画像IDと一致領域の組が対応付けられている場合には、一致領域ごとに、iページ目のスキャン画像と、当該一致領域に対応する正解画像IDにより特定される正解画像とを比較することで検品処理を行う。
なお、検品対象画像の一部の領域を正解画像の対応する領域と比較する際、
図11に示す正解画像管理テーブルから当該正解画像に対応する固有領域を取得し、固有領域については、比較の対象外とする。
【0069】
ステップS25において、iページ目に含まれる再利用オブジェクトの一部が、印刷物内の同一箇所で、いずれの正解画像とも一致しない場合(ステップS25;NO)、すなわち、iページ目に対応する正解画像がないことが対応付けられている場合には、制御部21は、iページ目のスキャン画像(検品対象画像)の全領域を、iページ目のラスタライズ画像と比較することで検品処理を行う(ステップS27)。
【0070】
ステップS24、ステップS26又はステップS27の後、制御部21は、検品処理の結果、出力画像に問題があったか否かを判断する(ステップS28)。具体的には、制御部21は、検品処理において、出力画像の色、位置、汚れ、傷等について、何らかの異常が検出されたか否かを判断する。
出力画像に問題があった場合には(ステップS28;YES)、ステップS21に戻り、再度、同じページの画像の印刷からやり直す。
【0071】
ステップS28において、出力画像に問題がなかった場合には(ステップS28;NO)、制御部21は、全ページ分の処理が終了したか否かを判断する(ステップS29)。
処理が終了していないページが残っている場合には(ステップS29;NO)、制御部21は、iに1を加算して(ステップS30)、ステップS21に戻り、処理を繰り返す。
【0072】
ステップS29において、全ページ分の処理が終了した場合には(ステップS29;YES)、出力画像検品処理が終了する。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態によれば、バリアブル印刷において再利用オブジェクトが各印刷物内の同一箇所で利用される回数に基づいて、当該バリアブル印刷に係る複数の画像から予め定められた上限数以下の代表画像を抽出し、当該抽出された代表画像を印刷部27により印刷させ、当該印刷された代表画像を画像読取部30により読み取らせて生成されたスキャン画像を正解画像として登録するので、バリアブル印刷時における画像検品を効率的かつ高精度に実現することができる。
【0074】
具体的には、正解画像の数に上限を設けることで、正解画像の生成に要する時間を短縮させるとともに、正解画像のデータ量を低減させることができる。したがって、効率的な画像検品が可能となる。
また、利用回数が多い再利用オブジェクトの配置の組み合わせパターンに対しては、実際に印刷し、スキャンして生成した正解画像を用いることで、精度の高い画像検品が可能となる。同じ再利用オブジェクトを使用したとしても、印刷する用紙のどの位置に配置されるかによって、トナーやインクの付着特性や、正解画像の作成時(スキャン時)における光の当たり方が異なる。本実施の形態では、利用者が印刷結果を目視確認し、品質上問題ないと判断した画像を正解画像として保存しておき、このような正解画像と比較するため、印刷時における異常も検出することができる。
【0075】
また、比較すべき正解画像が存在しないバリアブル印刷画像のスキャン画像に対し、正解画像を利用できる領域については、正解画像との比較に基づいて異常を検査するので、精度の高い画像検品を実現することができる。
また、バリアブル印刷画像のスキャン画像の、正解画像のいずれとも一致しない領域については、当該スキャン画像に対応する印刷前のラスタライズ画像との比較に基づいて異常を検査することができる。ラスタライズ画像と比較する領域については、登録された正解画像と比較する場合と比べて検品精度が劣る傾向にあるが、最低限の画像検品を実現することができる。
【0076】
また、利用者が正解画像の上限数を設定することができるので、個々のバリアブル印刷に応じて、正解画像の数を変更することができる。
【0077】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るバリアブル印刷画像検品システムの例であり、これに限定されるものではない。システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0078】
例えば、上記実施の形態では、クライアント端末10で正解画像の上限数を設定することとしたが、印刷装置20の表示部23に表示される設定画面に対して、操作部22からの操作により、正解画像の上限数を設定することとしてもよい。また、正解画像の上限数は、予め固定されていてもよい。
【0079】
また、画像検品システム100に含まれる各機能部が、複数の装置に分かれていてもよいし、1台の装置にまとめられていてもよい。例えば、クライアント端末10において実行される各機能が印刷装置20に含まれることとしてもよい。また、画像読取部30と検品機能を含む検品装置が、印刷装置20とは別に独立して設けられていてもよい。
【0080】
以上の説明では、各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピューター読み取り可能な媒体としてROMを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)を適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 クライアント端末
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 記憶部
15 通信部
20 印刷装置
21 制御部
22 操作部
23 表示部
24 記憶部
25 通信部
27 印刷部
30 画像読取部
40 レイアウト枠
41 第1可変領域
42 第2可変領域
43 第3可変領域
50 検品対象画像
62A 正解画像上限数指定領域
100 画像検品システム
131 検品設定画面
132 正解画像一覧画面
N 通信回線