IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図1
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図2
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図3
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図4
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図5
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図6
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図7
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図8
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図9
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図10
  • 特許-用紙搬送装置および画像形成装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】用紙搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/00 20060101AFI20221025BHJP
   B65H 29/70 20060101ALI20221025BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221025BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B65H5/00 A
B65H29/70
G03G15/00 551
G03G15/00 461
B65H5/06 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019069935
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020169071
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117673
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 了
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 隆央
【審査官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-43868(JP,A)
【文献】特開2017-97006(JP,A)
【文献】特開2017-111329(JP,A)
【文献】特開2016-157011(JP,A)
【文献】特開2012-250795(JP,A)
【文献】特開平3-31134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B65H 29/70
G03G 15/00
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送装置であって、
剛性ローラと弾性ローラとを有するローラ対であって、定着器を通過した後の用紙を前記剛性ローラと前記弾性ローラとで圧接して前記用紙のカールを矯正するカール矯正処理と、導電性あるいは半導電性の前記弾性ローラに電流あるいは電圧を印加することによって前記用紙を除電する除電処理との双方を実行するローラ対と、
前記除電処理における電流あるいは電圧の印加量を決定する除電制御手段と、
を備え、
前記除電制御手段は、前記用紙の坪量に応じて決定された基本印加量と、前記カール矯正処理に起因する剥離帯電の帯電量に応じて決定された補正量とに基づいて、前記印加量を決定することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙搬送装置において、
前記補正量は、前記剛性ローラと前記弾性ローラとの軸間距離に応じて決定されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の用紙搬送装置において、
前記補正量は、前記用紙の搬送速度に応じて決定されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の用紙搬送装置において、
前記剛性ローラは、導電性を有しているとともに、電気的に接地されていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の用紙搬送装置において、
前記剛性ローラの直径は、前記弾性ローラの直径よりも小さいことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の用紙搬送装置において、
前記弾性ローラは、発泡ゴムで形成されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の用紙搬送装置において、
前記弾性ローラは、シリコンゴムで形成されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の用紙搬送装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置などの内部において用紙を搬送する用紙搬送装置、およびそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、帯電させた感光体の表面に露光処理を施すことによって当該感光体の表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像が現像されてトナー像が感光体の表面に形成される。そして、当該トナー像が用紙(転写紙)に転写された後、当該用紙を定着器で加熱(および加圧)することによって、当該用紙にトナー像が形成される。
【0003】
このような画像形成装置では、定着器を構成する一対のローラのうちの一方のローラの剛性と他方のローラの剛性との大小関係等に起因して、定着器で加熱された用紙にカール(反り)が発生する。カールが発生した用紙がそのまま排紙されると、排紙部(排紙トレイ等)に排紙された用紙の積載性の悪化および/または後処理装置での紙詰まりなどの問題が生じ得る。このような問題の発生を防止するため、画像形成装置(用紙搬送装置)では、定着器よりも下流側において、用紙のカールを矯正するカール矯正処理が実行される。具体的には、当該カール矯正処理は、カール矯正ローラ対によって施される。当該カール矯正ローラ対は、弾性ローラ(たとえば発泡ゴムローラ)と剛性ローラ(たとえば金属ローラ)とで構成されており、当該弾性ローラは、用紙の湾曲面の内側の位置に配置される。たとえば、用紙が上向き凸に湾曲している場合には、弾性ローラは、用紙の下側(湾曲面の内側)の位置に配置される。そして、当該弾性ローラに剛性ローラが押し込まれて用紙が圧接された結果、当該用紙が逆向き(下向き凸)に湾曲し、当該用紙のカールが矯正される。
【0004】
また、転写工程等を経た用紙は電荷を帯びており(帯電しており)、帯電した用紙がそのまま排紙されると、積層された用紙同士が静電吸着するなどの問題が生じ得る。このような問題の発生を防止するため、画像形成装置(用紙搬送装置)では、排紙部の直前(カール矯正ローラ対と排紙部との間)において、当該用紙を除電する除電処理が実行される。具体的には、当該除電処理は、除電ローラ対によって施される。当該除電ローラ対は、剛性ローラ(たとえば金属ローラ)と導電性(あるいは半導電性)の弾性ローラ(たとえばゴムローラ)とで構成されている。そして、除電処理では、たとえば、弾性ローラが接する用紙面の帯電極性とは逆の極性を有し且つ用紙の坪量に応じて決定された印加量の電流(あるいは電圧)が当該弾性ローラに印加される。これにより、用紙に帯電していた電荷が電気的に中和されて当該用紙が除電される。
【0005】
ところで、カール矯正ローラ対と除電ローラ対とを別個に設けるのではなく、カール矯正ローラ対と除電ローラ対とを一体化する(すなわち、カール矯正処理と除電処理との双方を一のローラ対によって実行する)技術が存在する(特許文献1参照)。これによれば、画像形成装置(用紙搬送装置)の小型化(および/またはコストダウン)等を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-31134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、カール矯正処理と除電処理とが一のローラ対によって実行される場合には、次述するように、用紙が良好に除電されない恐れがある。
【0008】
具体的には、カール矯正処理では、用紙のカールを矯正する向きに当該用紙を湾曲させるために弾性ローラに剛性ローラが押し込まれ、当該弾性ローラに剛性ローラが押し込まれた状態のローラ対の相互間を用紙が通過する。それ故、一定程度よりも大きな圧接力で用紙が弾性ローラに圧接されることによって当該用紙が弾性ローラ(弾性ローラの外周のうち剛性ローラが押し込まれている部分)に貼り付いた状態となり、その後、当該用紙が当該弾性ローラから剥離する際には、剥離帯電が生じる。
【0009】
上記技術(カール矯正ローラ対と除電ローラ対とが別個に設けられている技術)では、カール矯正ローラ対でのカール矯正処理の後に当該カール矯正ローラ対から用紙が剥離する際に剥離帯電が生じたとしても、その後の除電ローラ対での除電処理によって、除電ローラ対への到達時点での用紙の帯電電荷が除去される。
【0010】
これに対して、カール矯正処理と除電処理とが一のローラ対によって実行される場合には、カール矯正処理と除電処理とが当該一のローラ対によって実行された後に、当該一のローラ対から用紙が剥離する際に剥離帯電が生じる。それ故、当該一のローラ対への到達時点での用紙の帯電電荷が除電処理によって除去されたにもかかわらず、当該用紙が再び(新たに)電荷を帯びてしまい、結果として、用紙が良好に除電されない。
【0011】
そこで、この発明は、カール矯正処理と除電処理とを実行する一のローラ対において剥離帯電が発生する場合であっても用紙を良好に除電することが可能な用紙搬送装置、およびそれに関連する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、請求項1の発明は、用紙搬送装置であって、剛性ローラと弾性ローラとを有するローラ対であって、定着器を通過した後の用紙を前記剛性ローラと前記弾性ローラとで圧接して前記用紙のカールを矯正するカール矯正処理と、導電性あるいは半導電性の前記弾性ローラに電流あるいは電圧を印加することによって前記用紙を除電する除電処理との双方を実行するローラ対と、前記除電処理における電流あるいは電圧の印加量を決定する除電制御手段と、を備え、前記除電制御手段は、前記用紙の坪量に応じて決定された基本印加量と、前記カール矯正処理に起因する剥離帯電の帯電量に応じて決定された補正量とに基づいて、前記印加量を決定することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係る用紙搬送装置において、前記補正量は、前記剛性ローラと前記弾性ローラとの軸間距離に応じて決定されることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る用紙搬送装置において、前記補正量は、前記用紙の搬送速度に応じて決定されることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る用紙搬送装置において、前記剛性ローラは、導電性を有しているとともに、電気的に接地されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る用紙搬送装置において、前記剛性ローラの直径は、前記弾性ローラの直径よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る用紙搬送装置において、前記弾性ローラは、発泡ゴムで形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る用紙搬送装置において、前記弾性ローラは、シリコンゴムで形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る用紙搬送装置を備える画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1から請求項8に記載の発明によれば、用紙の坪量に応じて決定された基本印加量と、カール矯正処理に起因する剥離帯電の帯電量に応じて決定された補正量とに基づいて、除電処理における印加量が決定されるので、除電処理によって、剥離帯電における帯電電荷を打ち消すことが可能な電荷が用紙に残留する。その後、弾性ローラから当該用紙が剥離する際には、当該用紙に残留した電荷によって剥離帯電における帯電電荷が打ち消される。したがって、カール矯正処理と除電処理とを実行する一のローラ対において剥離帯電が発生する場合であっても、用紙を良好に除電することが可能である。
【0021】
特に、請求項2に記載の発明によれば、補正量が剛性ローラと弾性ローラとの軸間距離に応じて決定されるので、当該軸間距離に応じて異なる補正量を用いて除電処理における印加量が決定される。したがって、当該軸間距離にかかわらず常に同じ補正量を用いて印加量が決定される場合と比較して、より適切な印加量で除電処理を実行することが可能である。
【0022】
また特に、請求項3に記載の発明によれば、補正量が用紙の搬送速度に応じて決定されるので、当該搬送速度に応じて異なる補正量を用いて除電処理における印加量が決定される。したがって、用紙の搬送速度にかかわらず常に同じ補正量を用いて印加量が決定される場合と比較して、より適切な印加量で除電処理を実行することが可能である。
【0023】
また特に、請求項4に記載の発明によれば、導電性を有する剛性ローラが電気的に接地されているので、当該剛性ローラが接地電位と等電位化されることによって弾性ローラと剛性ローラとの間の電位差が安定する。それ故、決定された印加量の電流あるいは電圧が印加された際に、当該印加量に対応する電荷が弾性ローラと剛性ローラとにより確実に供給される。したがって、除電処理をより適切に行うことが可能である。
【0024】
また特に、請求項5に記載の発明によれば、剛性ローラの直径が弾性ローラの直径よりも小さいので、剛性ローラの直径が弾性ローラの直径よりも大きい場合と比較して、カール矯正処理において弾性ローラに剛性ローラが押し込まれた状態のローラ対の相互間を用紙が通過する際に、カール矯正のための湾曲度合いがより大きくなる。したがって、用紙のカールをより効果的に矯正することが可能である。
【0025】
また特に、請求項6に記載の発明によれば、弾性ローラが発泡ゴムで形成されるので、発泡ゴムよりも高い硬度の材料で弾性ローラが形成される場合と比較して、弾性ローラに剛性ローラがより大きく押し込まれる。その結果、カール矯正処理において弾性ローラに剛性ローラが押し込まれた状態のローラ対の相互間を用紙が通過する際に、カール矯正のための湾曲度合いがより大きくなる。したがって、用紙のカールをより効果的に矯正することが可能である。
【0026】
また特に、請求項7に記載の発明によれば、弾性ローラがシリコンゴムで形成されるので、弾性ローラが耐熱性を有し、定着器によって加熱された用紙が当該弾性ローラを通過することに起因する当該弾性ローラの熱変形を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】ローラ対を示す斜視図である。
図3】ローラ対の概略構成を示す概念図である。
図4】カール矯正処理の様子を示す概念図である。
図5】カール矯正処理の様子を示す概念図である。
図6】除電処理の様子を示す模式図である。
図7】制御テーブルを示す図である。
図8】第2実施形態に係る制御テーブルを示す図である。
図9】第2実施形態の改変例に係る制御テーブルを示す図である。
図10】変形例に係る制御テーブルを示す図である。
図11】比較例に係る除電処理の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
<1.第1実施形態>
<1-1.装置概要>
画像形成装置1は、像担持体上の静電潜像を現像して画像を形成する装置である。ここでは、画像形成装置として、電子写真方式(詳細にはレーザー方式)の印刷出力装置、より詳細にはタンデム方式のフルカラー印刷出力装置が例示される。なお、図1等においては、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
【0030】
図1に示されるように、画像形成装置1は、複数(具体的には4つ)のイメージングユニット10(詳細には、10Y,10M,10C,10K)を備えている。具体的には、画像形成装置1は、イエローのイメージングユニット10Yと、マゼンタのイメージングユニット10Mと、シアンのイメージングユニット10Cと、ブラックのイメージングユニット10Kとを備えている。各イメージングユニット10は、それぞれ、最終出力画像のうちの各色成分(具体的には、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各成分)の画像を電子写真方式によって形成し、中間転写ベルト(中間転写体とも称される)21に転写する。そして、第2転写機(転写ローラ(2次転写ローラ))22において、中間転写ベルト21上に重畳された各色成分の画像がさらに用紙(転写材)に転写されることによって、当該用紙にフルカラー画像が形成される。なお、中間転写ベルト21は、各感光体から転写されたトナー画像を一時的に担持する像担持体である、とも表現される。
【0031】
4つのイメージングユニット10(10Y,10M,10C,10K)は、中間転写ベルト21の右側直線部分において、当該右側直線部分に沿って直列に配置されている。
【0032】
各イメージングユニット10は、それぞれ、感光体11と帯電器12と露光器(光書込装置)13と現像器14と第1転写器(1次転写器)15とクリーナ17とを有している。詳細には、各イメージングユニット10において、略円柱状の感光体11の外周を囲むように、現像器14と露光器13と帯電器12とクリーナ17と第1転写器15とがこの順序で時計回りに配置されている。このうち、第1転写器15(詳細には転写ローラ)は、中間転写ベルト21を隔てて、感光体11と対向する位置に配置されている。
【0033】
中間転写ベルト21は、複数のローラに巻き掛けられており、矢印R(図1)の向きに移動する。
【0034】
イメージングユニット10Kの下側(各イメージングユニット10の搬送経路上において上流側)には、給紙部30および給紙トレイ31等が設けられている。
【0035】
また、転写ローラ22の位置を通過した用紙の搬送方向下流側には定着器26が設けられている。
【0036】
当該定着器26のさらに搬送方向下流側には、ローラ対3が設けられている。当該ローラ対3の詳細構成については後述する。
【0037】
また、当該ローラ対3の搬送方向下流側には排紙部(排紙トレイ)27が設けられている。
【0038】
画像形成装置1は、ネットワーク等を介して接続された他の情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)から伝送されてきた画像データに基づく画像を、上述のような印刷機構を用いて印刷出力することによって、カラーページプリンタとして機能する。
【0039】
画像形成装置1は、コントローラ(制御部)9(図1参照)を備えている。
【0040】
コントローラ9は、画像形成装置1に内蔵され、画像形成装置1を統括的に制御する制御装置である。コントローラ9は、CPUおよび各種の半導体メモリ(RAMおよびROM等)とを備えるコンピュータシステムとして構成される。コントローラ9は、CPUにおいて、ROM(例えば、EEPROM)内に格納されている所定のソフトウエアプログラム(以下、単にプログラムとも称する)を実行することによって、各種の処理部を実現する。なお、当該プログラム(詳細にはプログラムモジュール群)は、USBメモリなどの可搬性の記録媒体、あるいはネットワーク等を介して画像形成装置1にインストールされてもよい。
【0041】
コントローラ9は、当該プログラムの実行により、除電制御部91を含む各種の処理部を実現する。
【0042】
除電制御部91は、ローラ対3での除電処理(後述)における印加量(印加値とも称される)を決定する処理を制御する制御部である。なお、印加量は、正負を含む概念である。
【0043】
<1-2.ローラ対3について>
つぎに、ローラ対3(図2)の構成等について説明する。図2は、ローラ対3(ローラ対3の基本構成)を示す斜視図である。
【0044】
ローラ対3は、剛性ローラ4と弾性ローラ5とによって構成されている。
【0045】
まず、剛性ローラ4について説明する。
【0046】
剛性ローラ4は、用紙PAの搬送方向に直交する方向(詳細にはX方向)に伸延する略円柱状部材である。
【0047】
剛性ローラ4は、軸部材(ローラ軸部材)41を有しており(図2参照)、当該軸部材41は、軸受部材(不図示)によって支持されている。剛性ローラ4は、当該剛性ローラ4(軸部材41)の回転軸周りに回転する。
【0048】
剛性ローラ4は、たとえば金属で形成されている。
【0049】
剛性ローラ4は、導電性を有しているとともに、電気的に接地されている(図3参照)。図3は、ローラ対3の概略構成を示す概念図である。
【0050】
剛性ローラ4の直径d(図3)は、弾性ローラ5の直径Dよりも小さい(d<D)ことが好ましい(後述)。
【0051】
つぎに、弾性ローラ5について説明する。
【0052】
弾性ローラ5は、用紙PAの搬送方向に直交する方向(詳細にはX方向)に伸延する略円柱状部材である。詳細には、弾性ローラ5は、剛性ローラ4に平行且つ当該剛性ローラ4に対向して配置されている。
【0053】
当該弾性ローラ5は、軸部材(ローラ軸部材)51を有しており(図2参照)、当該軸部材51は、軸受部材(不図示)によって支持されている。詳細には、弾性ローラ5は中空状の弾性部材を有しており、軸部材51は当該弾性部材の中空部を貫通して設けられる。弾性ローラ5は、当該弾性ローラ5の回転軸(剛性ローラ4の回転軸に平行な回転軸)周りに回転する。詳細には、当該弾性ローラ5は、剛性ローラ4とは逆向きに回転する。
【0054】
弾性ローラ5は、用紙PAの非印字面側(印字面の反対面側)に配置され、剛性ローラ4は、当該用紙PAの印字面側に配置される(図4参照)。なお、図4では、用紙PAの上側が印字面側であり、用紙PAの下側が非印字面側である。
【0055】
ここにおいて、定着器26を構成する一対のローラのうちの一方のローラ26A(図1)の剛性と他方のローラ26Bの剛性との大小関係等に起因して、ここでは、用紙PAが印字面側(図4の上側)に向けて凸状に湾曲(カール)する。詳細には、定着器26では、当該一対のローラのうち比較的低い剛性のローラ26A(図1)が用紙PAの上側(印字面側)に配置され、当該一対のローラのうち比較的高い剛性のローラ26Bが下側(非印字面側)に配置される。そして、用紙PAが定着器26を通過する際には、下側のローラ26Bが上側のローラ26Aに押し込まれる。その結果、定着器26を通過した用紙PAが、上側に向けて凸状に(上向き凸に)湾曲する。
【0056】
当該用紙PAのカールを矯正するため(当該用紙PAを逆向き(下向き凸)に湾曲させるため)、弾性ローラ5は、当該用紙PAの湾曲面の内側(非印字面側(図4の下側))の位置に配置される。詳細には、ローラ対3では、定着器26を構成する一対のローラ26A,26Bの配置関係とは逆に、ローラ対3のうち比較的低い剛性のローラ(弾性ローラ5)が下側(非印字面側)に配置され、ローラ対3のうち比較的高い剛性のローラ(剛性ローラ4)が上側(印字面側)に配置される。そして、後述するように、カール矯正処理では、剛性ローラ4(上側のローラ)が弾性ローラ5(下側のローラ)に押し込まれる(図4参照)ことによって、用紙PAが弾性ローラ5側(下側)に向けて凸状に湾曲して当該用紙PAのカールが矯正される。
【0057】
なお、定着器26を構成する一対のローラのうちの一方のローラ26Aの剛性と他方のローラ26Bの剛性との大小関係等に起因して用紙PAが非印字面側に向けて凸状に湾曲する場合には、上記の配置関係とは逆に、弾性ローラ5が当該用紙PAの印字面側に配置され、剛性ローラ4が非印字面側に配置される。
【0058】
弾性ローラ5(詳細には、弾性ローラ5の用紙接触部)は、発泡シリコンゴムで形成されている。詳細には、当該弾性ローラ5は、導電性の発泡シリコンゴムで形成されている。なお、これに限定されず、弾性ローラ5が半導電性の発泡シリコンゴムで形成されてもよい。
【0059】
当該弾性ローラ5(詳細には、弾性ローラ5の軸部材51)は、印加部59(図3)に電気的に接続されている。除電処理(後述)においては、除電制御部91によって決定された印加量の電流が当該印加部59を用いて弾性ローラ5に印加される。なお、ここでは、電流の印加量を調整することによって除電制御が行われるが、これに限定されず、電圧の印加量を調整することによって除電制御が行われてもよい。
【0060】
ローラ対3は、当該剛性ローラ4と弾性ローラ5との双方で用紙PAを挟持して、当該用紙PAを下流側へと搬送する。この際、ローラ対3では、カール矯正処理と除電処理とが実行される。以下では、カール矯正処理と除電処理とについて説明する。
【0061】
<1-3.カール矯正処理について>
まず、カール矯正処理について、図4等を参照しながら説明する。図4は、カール矯正処理の様子を示す概念図である。
【0062】
カール矯正処理は、定着器26を通過した後の用紙PAを剛性ローラ4と弾性ローラ5とで圧接して当該用紙PAのカール(反り)を矯正(デカール)する処理である。用紙PAのカールが矯正されることによれば、排紙トレイ等に排紙(排出)された用紙PAの積載性の悪化および/または後処理装置での紙詰まりなどの問題の発生を防止することが可能である。当該カール矯正処理は、デカール処理などとも称される。
【0063】
カール矯正処理は、剛性ローラ4と弾性ローラ5とのうちの一方のローラを他方のローラに向けて押圧することによって行われる。ここでは、弾性ローラ5を剛性ローラ4に向けて押圧することによってカール矯正処理が行われる。
【0064】
具体的には、弾性ローラ5の軸部材51の両端部側には、軸受(ベアリング)52がそれぞれ設けられている(図2参照)。また、ローラ対3には、押圧力付与部(不図示)がさらに設けられている。押圧力付与部は、弾性ローラ5(弾性ローラ5の軸受52)を剛性ローラ4に向けて押圧する部材である。詳細には、押圧力付与部は、当該軸受52に対して押圧力を付与することによって、弾性ローラ5を剛性ローラ4に向けて押圧する。当該押圧力付与部としては、たとえば偏心カムが例示される。当該偏心カムは、弾性ローラ5の軸受52(図2)における剛性ローラ4の配置側とは反対側の位置にて当該軸受52に当接して設けられる。また、当該偏心カムは、当該偏心カムを回転させる駆動部(不図示)からの回転力に応じて、弾性ローラ5の回転軸に平行な軸周りに回転することが可能である。そして、当該偏心カムの回転(偏心カムの回転角度の調整)に応じて剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離W(図3)が調整される(切り替えられる)。たとえば、偏心カムの回転に応じて当該軸間距離Wが距離W0(図3)から軸間距離W1(図4)にまで狭まり、弾性ローラ5が剛性ローラ4に向けて押圧される。当該押圧力付与部(ここでは偏心カム)は、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wを調整(切り替える)する調整部などとも称される。
【0065】
カール矯正処理では、このようにして弾性ローラ5が剛性ローラ4に向けて押圧され、剛性ローラ4が発泡シリコンゴムの弾性ローラ5に押し込まれる(図4参照)。そして、弾性ローラ5に剛性ローラ4が押し込まれた状態の両ローラ4,5の相互間を当該用紙PAが通過する。その結果、用紙PA(印字面側に向けて凸状に湾曲した用紙PA)が、弾性ローラ5側(すなわち、湾曲面の内側)に向けて凸状に湾曲する(図4参照)。換言すれば、上向き凸に湾曲していた用紙PAが下向き凸(元の湾曲の向きとは逆向き)に湾曲する。
【0066】
これにより、用紙PAのカールが矯正される。
【0067】
このようにして用紙PAのカールを矯正するにあたっては、剛性ローラ4の直径d(図3)が弾性ローラ5の直径Dよりも小さい(d<D)ことが好ましい。具体的には、この場合、当該剛性ローラ4の直径dが弾性ローラ5の直径Dよりも大きい(d>D)場合と比較して、カール矯正処理において弾性ローラ5に剛性ローラ4が押し込まれた際に、カール矯正のための湾曲度合いがより大きくなる。したがって、用紙PAのカールをより効果的に(良好に)矯正することが可能である。
【0068】
また、弾性ローラ5が発泡ゴム(ここでは発泡シリコンゴム)で形成されているので、発泡ゴムよりも高い硬度の材料で弾性ローラ5が形成される場合と比較して、カール矯正処理において弾性ローラ5に剛性ローラ4がより大きく(深く)押し込まれる。その結果、カール矯正処理において弾性ローラ5に剛性ローラ4が押し込まれた状態の両ローラ4,5の相互間を用紙PAが通過する際に、カール矯正のための湾曲度合いが更に大きくなる。したがって、用紙PAのカールを更に効果的に矯正することが可能である。
【0069】
また、弾性ローラ5がシリコンゴム(ここでは発泡シリコンゴム)で形成されているので、弾性ローラ5が耐熱性を有し、定着器26によって加熱された用紙PAが弾性ローラ5を通過することに起因する当該弾性ローラ5の熱変形を抑制することが可能である。
【0070】
なお、ここでは、弾性ローラ5を剛性ローラ4に向けて押圧することによってカール矯正処理が行われているが、これに限定されず、逆に、剛性ローラ4を弾性ローラ5に向けて押圧することによってカール矯正処理が行われてもよい。
【0071】
<1-4.除電処理について>
次に、除電処理について説明する。
【0072】
除電処理は、導電性(あるいは半導電性)の弾性ローラ5に電流を印加することによって用紙PA(用紙PAに帯電している電荷)を除電する処理である。用紙PAが除電されることによれば、排紙されて積層された用紙同士が静電吸着するなどの問題の発生を防止することが可能である。
【0073】
図7は、除電処理における印加量を決定するための制御テーブル80(81)を示す図である。
【0074】
当該制御テーブル80(81)における左から2番目の列には、基本印加量(μA(マイクロアンペア))が規定されている。
【0075】
基本印加量は、ローラ対3に到達した用紙PAの帯電量に応じて予め定められた電流値である。詳細には、基本印加量は、当該用紙PAの帯電電荷を打ち消すことが可能な量の電荷を弾性ローラ5の表面に供給するための電流値である。当該基本印加量は、弾性ローラ5が接する用紙面(ここでは非印字面)の帯電極性とは逆の極性を有する。また、当該基本印加量は、用紙の坪量(g(グラム)/m(平方メートル))に応じて予め決定される。
【0076】
詳細には、用紙の坪量が複数の区分C1~C11に分けられ、各区分C1~C11に属する用紙PAがローラ対3に到達した時点で当該用紙PAに帯電している電荷を除去することが可能な電流値が、各区分C1~C11の用紙PAに関する基本印加量として決定される。
【0077】
たとえば、区分C1(60~75g/m)の用紙PAに関する基本印加量は、つぎのような実験の結果に基づいて決定される。
【0078】
当該実験では、ローラ対3を用紙PAが通過する際に剥離帯電が生じないように(詳細には、カール矯正処理が実行されず且つ剥離帯電が生じる速度(通常の用紙搬送速度V1等)よりも十分に遅い速度で)区分C1の用紙PAが搬送されるとともに、弾性ローラ5に電流(定電流)が印加される。そして、当該用紙PAが弾性ローラ5から剥離した後、排紙された用紙PAが帯電しているか否か(用紙PAが除電されたか否か)が判断される。排紙された用紙PAが帯電しているか否かは、たとえば、排紙トレイ等に積層された用紙に静電吸着が発生しているか否かによって判断される。
【0079】
このような実験が、排紙された用紙PAが帯電していないと判断されるまで、弾性ローラ5に印加する電流(定電流)の電流値を変更しながら行われる。そして、排紙された用紙PAが帯電していないと判断された際に弾性ローラ5に印加されていた電流の電流値が、区分C1の用紙PAに関する基本印加量として決定される。
【0080】
たとえば、或る電流値「-60μA」の電流が弾性ローラ5に印加された場合において、排紙された用紙PAが帯電していないときには、当該或る電流値「-60μA」が、区分C1の用紙PAに関する基本印加量として決定される。
【0081】
詳細には、当該或る電流値「-60μA」に対応する電荷Q20(図11)と同量且つ逆極性の電荷(すなわち、「60μA」に対応する電荷)が、用紙PAの非印字面における帯電電荷Q10として推定される。そして、当該或る電流値「-60μA」(「60μA」に対応する電荷と同量且つ逆極性の電荷を打ち消すことが可能な電流値)が、区分C1の用紙PAに関する基本印加量として決定されて制御テーブル81に規定される。
【0082】
他の区分C2~C11についても同様である。なお、用紙PAの坪量が大きい程、ローラ対3に到達した時点における用紙PAの帯電量(帯電量の絶対値)は小さいものの、当該帯電量は多少のバラツキを有する。
【0083】
つぎに、当該制御テーブル80(81)における左から3番目の列には、剥離帯電補正量(後述)が規定されている。
【0084】
ここにおいて、たとえば区分C1の用紙PAに対してカール矯正処理と除電処理とが実行される場合において、仮に基本印加量「-60μA」の電流が弾性ローラ5に印加されるときには、次述するように、弾性ローラ5から用紙PAが剥離する際の剥離帯電に起因して当該用紙PAが再び(新たに)電荷を帯びてしまう。
【0085】
図11は、比較例に係る除電処理の様子を示す模式図である。
【0086】
具体的には、基本印加量「-60μA」の電流が弾性ローラ5に印加されると、弾性ローラ5の表面に負極性の電荷Q20が供給される。より具体的には、用紙PAの非印字面の帯電電荷(ローラ対3に当該用紙PAが到達した時点で当該用紙PAに帯電している電荷)Q10の極性(ここでは正極性)とは逆の極性を有し且つ当該用紙PAの非印字面の帯電電荷Q10と同等量の電荷Q20が、弾性ローラ5の表面に供給される(図11の上段参照)。また、剛性ローラ4には、弾性ローラ5に帯電した電荷と同量且つ逆極性の電荷(すなわち、用紙PAの印字面の帯電電荷の極性とは逆の極性の電荷)が誘起される。
【0087】
この状態で用紙(区分C1の用紙)PAがローラ対3を通過すると、弾性ローラ5の表面の電荷Q20によって用紙PAの非印字面の帯電電荷Q10の全てが電気的に中和されて除去されるとともに、剛性ローラ4の表面の電荷によって用紙PAの印字面の帯電電荷の全てが電気的に中和されて除去される(図11の中段参照)。
【0088】
このように基本印加量の電流が弾性ローラ5に印加されることによって、用紙PAの帯電電荷の全てが除去される。
【0089】
ただし、上述したように、カール矯正処理では、用紙PAのカールを矯正する向きに当該用紙PAを湾曲させるために弾性ローラ5に剛性ローラ4が押し込まれ、弾性ローラ5に剛性ローラ4が押し込まれた状態のローラ対3の相互間を用紙PAが通過する(図4参照)。それ故、一定程度よりも大きな圧接力で用紙PAが弾性ローラ5に圧接されることによって当該用紙PAが弾性ローラ5(弾性ローラ5の外周のうち剛性ローラ4が押し込まれている部分)に貼り付いた状態となり、その後、当該用紙PAが当該弾性ローラ5から剥離する際に剥離帯電が生じる。その結果、用紙PAに帯電していた電荷Q10が除電された(図11の中段参照)にもかかわらず、剥離帯電によって当該用紙PAが再び(新たに)電荷Q40を帯びてしまう(図11の下段参照)。
【0090】
このように剥離帯電によって用紙PAが再び電荷を帯びることを抑制するために、除電制御部91は、基本印加量を剥離帯電補正量(次述)に基づいて補正して、除電処理における印加量(最終印加量)を決定する。
【0091】
剥離帯電補正量(μA)は、カール矯正処理に起因する剥離帯電の帯電量(剥離帯電量)に応じて予め決定された電流値である。詳細には、ローラ対3(詳細には弾性ローラ5)からの用紙PAの剥離に際して発生する剥離帯電の帯電電荷を打ち消すことが可能な量の電荷を弾性ローラ5の表面に供給するための電流値(剥離帯電の帯電極性とは逆の極性を有する電流値)が、剥離帯電補正量として制御テーブル80(81)に規定される。
【0092】
剥離帯電補正量は、たとえば、次のような実験の結果に基づいて決定される。
【0093】
当該実験では、ローラ対3において通常の用紙搬送動作が行われるとともに、弾性ローラ5に電流が印加される。通常の用紙搬送動作は、剥離帯電を生じさせる動作であり、当該通常の用紙搬送動作としては、たとえば或る搬送速度V1で用紙PAを搬送するとともに或る軸間距離W1で用紙PAを圧接する動作が行われる。そして、当該用紙PAが弾性ローラ5から剥離した後、排紙された用紙PAが帯電しているか否か(用紙PAが除電されたか否か)が判断される。排紙された用紙PAが帯電しているか否かは、たとえば、排紙トレイ等に積層された用紙に静電吸着が発生しているか否かによって判断される。
【0094】
このような実験が、排紙された用紙PAが帯電していないと判断されるまで、弾性ローラ5に印加する電流の電流値を変更しながら行われる。そして、排紙された用紙PAが帯電していないと判断された際に弾性ローラ5に印加されていた電流の電流値と基本印加量との差分の電流値が、当該或る搬送速度V1で搬送され且つ或る軸間距離W1で圧接される用紙に関する剥離帯電補正量として決定される。
【0095】
たとえば、或る電流値「-30μA」の電流が弾性ローラ5に印加された場合において、排紙された用紙PAが帯電していないときには、当該或る電流値「-30μA」と基本印加量(たとえば「-60μA」)との差分の電流値「+30μA」(=-30-(-60))が、搬送速度V1で搬送され且つ軸間距離W1で圧接される用紙に関する剥離帯電補正量として決定される。
【0096】
詳細には、当該電流値「+30μA」に対応する電荷と同量且つ逆極性の電荷(すなわち、「-30μA」に対応する電荷)が、搬送速度V1で搬送され且つ軸間距離W1で圧接される用紙に関する剥離帯電における帯電電荷Q40(図11の下段参照)として推定される。そして、当該電流値「+30μA」(「-30μA」に対応する電荷と同量且つ逆極性の電荷を打ち消すことが可能な電流値)が剥離帯電補正量として決定される。
【0097】
このようにして決定された剥離帯電補正量(「30μA」)は、搬送速度V1で搬送され且つ軸間距離W1で圧接される用紙に関する共通の剥離帯電補正量として制御テーブル80(81)に規定される(図7参照)。ここでは、区分C1~C8の用紙が搬送速度V1で搬送されるとともに軸間距離W1で圧接され、当該区分C1~C8の用紙に共通の剥離帯電補正量として電流値「30μA」が制御テーブル80(81)に規定される。なお、図7等においては、電流値の「+」記号は省略されている。
【0098】
そして、当該制御テーブル80(81)に基づいて、除電処理が実行される。
【0099】
たとえば、区分C1(60~75g/m)の用紙PAがローラ対3を通過する場合には、次のようにして除電処理が実行される。
【0100】
具体的には、除電制御部91は、当該区分C1における基本印加量「-60μA」を当該区分C1における剥離帯電補正量(搬送速度V1で搬送され且つ軸間距離W1で圧接される用紙に関する共通の剥離帯電補正量)「30μA」に基づいて補正して、補正後の印加量(補正後の電流値)を除電処理における最終印加量として決定(算出)する。より具体的には、当該区分C1における基本印加量「-60μA」と剥離帯電補正量「30μA」との合計値「-30μA」(=-60+30)が、最終印加量として決定される。
【0101】
そして、印加部59(図3)は、除電制御部91によって決定された最終印加量(ここでは「-30μA」)の電流を弾性ローラ5に印加する。詳細には、用紙PAの帯電電荷Q10(図11)を打ち消すことが可能な量の電荷Q20を弾性ローラ5の表面に供給するための電流値と、剥離帯電の帯電電荷Q40(図11)を打ち消すことが可能な量の電荷を弾性ローラ5の表面に供給するための電流値との合計値(最終印加量)の電流が印加される。
【0102】
その結果、次述するように、剥離帯電における帯電電荷Q40を打ち消すことが可能な電荷Q30(図6)が用紙PAに残留し、カール矯正処理と除電処理とが施された用紙PAが弾性ローラ5から剥離する際に剥離帯電が発生したとしても、当該用紙PAの残留電荷Q30によって当該帯電電荷Q40が打ち消される。図6は、除電処理の様子を示す模式図である。
【0103】
具体的には、基本印加量「-60μA」ではなく、剥離帯電補正量「30μA」に基づき補正された補正後の印加量「-30μA」の電流(図7の最右欄(「最終印加量」の欄)参照)が弾性ローラ5に印加される。その結果、用紙PAの非印字面の帯電電荷Q10と同等量の電荷(非印字面の帯電極性とは逆の極性の電荷)Q20(「-60μA」に対応する電荷)(図11の上段参照)ではなく、補正後の印加量「-30μA」に対応する量の電荷Q25が弾性ローラ5の表面に供給される(図6の上段参照)。また、剛性ローラ4には、弾性ローラ5に供給される電荷と同量且つ逆極性の電荷が誘起される(図6参照)
この状態で用紙PAがローラ対3を通過すると、用紙PAの帯電電荷Q10の全てが除去されるのではなく、補正後の印加量「-30μA」に対応する電荷Q25と同量の電荷のみが用紙PAから除去される。そして、基本印加量「-60μA」と補正後の印加量「-30μA」との差分に対応する電荷と同量の電荷Q30(=Q10-Q25)は用紙PAに残留する(図6の中段参照)。換言すれば、剥離帯電で生じる帯電電荷Q40(「-30μA」に対応する電荷)を打ち消すことが可能な量の電荷Q30(「30μA」に対応する電荷)が用紙PAに残留する。
【0104】
そして、用紙PAが弾性ローラ5から剥離する際には、剥離帯電が発生したとしても、剥離帯電の帯電電荷Q40が用紙PAの残留電荷Q30(帯電電荷Q40とは逆極性の電荷)によって電気的に中和される。その結果、ローラ対3を通過した用紙PAは、帯電することなく(除電されて)排紙部27(図1)に排紙される。
【0105】
このように、基本印加量を剥離帯電補正量で補正した補正後の印加量(最終印加量)の電流を弾性ローラ5に印加することによって、剥離帯電における帯電電荷Q40を打ち消すことが可能な電荷Q30を用紙PAに残留させる。その結果、カール矯正処理と除電処理とが施された用紙PAが弾性ローラ5から剥離する際に剥離帯電が発生したとしても、残留電荷Q30によって剥離帯電における帯電電荷Q40が打ち消される。
【0106】
ところで、剥離帯電における帯電量(剥離帯電量)は、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離W(図3)に応じて変化する。この点を考慮して、ここでは、剥離帯電補正量が、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wに応じて決定(調整)される。
【0107】
ここにおいて、ローラ対3を通過する用紙PAの坪量が大きい程(用紙PAが厚い程)、カール矯正のためにより強い圧接力を要する。そのため、ここでは、区分C1~C8(60~255g/mの坪量)の用紙は、軸間距離(標準軸間距離とも称する)W1(図4)で圧接され、区分C9~C11(256~400g/mの坪量)の用紙(厚紙)は、軸間距離W1よりも小さな軸間距離W2(図5)で(すなわち、より強い圧接力で)圧接される。なお、軸間距離Wの調整(切替)は、弾性ローラ5側に設けられた偏心カム(不図示)の回転角度の調整等によって実現される。
【0108】
ただし、用紙PAが弾性ローラ5に強く圧接される程(剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wが小さい程)、用紙PAが弾性ローラ5に強く貼り付き、当該用紙PAが弾性ローラ5から剥がれる際に発生する剥離帯電の帯電量(帯電量の絶対値)は大きい。
【0109】
それ故、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wが小さい程、剥離帯電補正量の絶対値を大きくすることが好ましい。
【0110】
この点を考慮して、ここでは、剥離帯電補正量が、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wに応じて決定(変更)される。
【0111】
具体的には、軸間距離(標準軸間距離)W1で用紙が圧接される場合における剥離帯電の帯電電荷Q40(「-30μA」に対応する電荷)よりも一定程度多い電荷(たとえば「-50μA」に対応する電荷)が、軸間距離W2(<W1)で用紙が圧接される場合における剥離帯電の帯電電荷Q41(不図示)として推定される。そして、当該帯電電荷Q41(「-50μA」に対応する電荷)を打ち消すことが可能な電流値「50μA」が、軸間距離W2で圧接される用紙(区分C9~C11の用紙)に関する剥離帯電補正量(共通の剥離帯電補正量)として決定される。換言すれば、軸間距離W1で圧接される用紙(区分C1~C8の用紙)に関する剥離帯電補正量(たとえば「30μA」)に対して一定程度の電流値(たとえば「20μA」)を付加した電流値「50μA」(=30+20)が、軸間距離W2で圧接される用紙に関する剥離帯電補正量として決定される。なお、これに限定されず、軸間距離W2で圧接される用紙に関する剥離帯電補正量は、軸間距離W1で圧接される用紙に関する剥離帯電補正量「30μA」と同様の実験に基づいて決定されてもよい。
【0112】
そして、軸間距離W2で圧接される用紙(区分C9~C11の用紙)がローラ対3へと搬送される場合には、次のようにして除電処理が実行される。ここでは、区分C11(351~400g/m)の用紙PAがローラ対3へと搬送されることを想定する。
【0113】
除電制御部91は、区分C11における基本印加量「-10μA」を当該区分C11における剥離帯電補正量(軸間距離W2で搬送される用紙に関する共通の剥離帯電補正量)「50μA」に基づいて補正して、補正後の印加量「40μA」(=-10+50)を除電処理における最終印加量として決定(算出)する(図7参照)。そして、除電制御部91によって決定された補正後の印加量(最終印加量)(「40μA」)の電流が弾性ローラ5に印加される。
【0114】
その結果、用紙PAの非印字面の帯電電荷と同等量の電荷が弾性ローラ5の表面に供給されるのではなく、補正後の印加量「40μA」に対応する電荷が弾性ローラ5の表面に供給される。また、剛性ローラ4には、弾性ローラ5に供給される電荷と同量且つ逆極性の電荷が誘起される。
【0115】
そして、用紙PAがローラ対3を通過すると、用紙PAの帯電電荷(基本印加量「-10μA」の電流で打ち消すことが可能な電荷(換言すれば、「10μA」に対応する電荷))に対して、補正後の印加量「40μA」に対応する電荷を加えた電荷(すなわち、電流値「50μA」に対応する電荷)が用紙PAに帯電する。
【0116】
この状態で用紙PAが弾性ローラ5から剥離する際には、軸間距離W2が距離W1よりも小さいことに起因して比較的大きな剥離帯電が発生したとしても、当該剥離帯電の帯電電荷(「-50μA」に対応する帯電電荷)が用紙PAの残留電荷(「50μA」に対応する電荷)によって電気的に中和される。その結果、ローラ対3を通過した用紙PAは、帯電することなく排紙部27に排紙される。
【0117】
以上のように、第1実施形態では、基本印加量が剥離帯電補正量に基づいて補正されて、補正後の印加量が除電処理における最終印加量として決定されるので、除電処理が実行された結果、剥離帯電における帯電電荷Q40を打ち消すことが可能な電荷Q30が用紙PAに残留する(図6の中段参照)。その後、弾性ローラ5から当該用紙PAが剥離する際には、当該用紙PAに残留した電荷Q30によって剥離帯電における帯電電荷Q40が打ち消される。したがって、カール矯正処理と除電処理とを実行する一のローラ対3において剥離帯電が発生する場合であっても、用紙PAを良好に除電することが可能である。
【0118】
また、上記第1実施形態では、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wに応じて剥離帯電補正量が決定される(図7参照)ので、軸間距離Wに応じて異なる剥離帯電補正量を用いて除電処理における最終印加量が決定される。たとえば、軸間距離W1で圧接される用紙(区分C1~C8の用紙)がローラ対3を通過する際には、「30μA」の剥離帯電補正量を用いて最終印加量が決定される。また、軸間距離W2(<W1)で圧接される用紙(区分C9~C11の用紙)がローラ対3を通過する際には、「50μA」(>30μA)の剥離帯電補正量を用いて最終印加量が決定される。したがって、軸間距離Wにかかわらず常に同じ剥離帯電補正量を用いて最終印加量が決定される場合(たとえば、常に「30μA」の剥離帯電補正量(軸間距離W1で圧接される用紙PAに関する剥離帯電補正量)を用いて最終印加量が決定される場合)と比較して、より適切な印加量で除電処理を実行することが可能である。
【0119】
また、上記第1実施形態では、導電性を有する剛性ローラ4が電気的に接地されているので、除電処理をより適切に行うことが可能である。
【0120】
ここにおいて、仮に剛性ローラ4が電気的に接地されていない場合には、当該剛性ローラ4の帯電等に起因して、剛性ローラ4と弾性ローラ5との電位差が安定しない。この場合、除電制御部91によって決定された最終印加量の電流が弾性ローラ5に印加されたとしても、当該最終印加量に対応する電荷Q25(図6)が弾性ローラ5(および剛性ローラ4)に供給されず、結果として、用紙PAを良好に除電できない恐れがある。
【0121】
これに対して、導電性を有する剛性ローラ4が電気的に接地されている場合には、剛性ローラ4が接地電位(ゼロ電位)と等電位化されることによって剛性ローラ4と弾性ローラ5との電位差が安定する。それ故、除電制御部91によって決定された最終印加量の電流が弾性ローラ5に印加された際に、最終印加量に対応する電荷Q25が弾性ローラ5(および剛性ローラ4)により確実に供給される。したがって、除電処理をより適切に行うことが可能である。
【0122】
<2.第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0123】
上記第1実施形態では、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wに応じて剥離帯電補正量が決定されている(図7参照)。
【0124】
これに対して、この第2実施形態では、用紙の搬送速度Vに応じて剥離帯電補正量が決定(変更)される。
【0125】
ここにおいて、弾性ローラ5に貼り付いた用紙PAが当該弾性ローラ5から剥がされる速度が大きい程(端的に言えば、勢いよく剥がされる程)、剥離帯電量の絶対値は大きく、逆に、弾性ローラ5に貼り付いた用紙PAが当該弾性ローラ5から剥がされる速度が小さい程(ゆっくりと剥がされる程)、剥離帯電量の絶対値は小さい。それ故、用紙PAの坪量によって当該用紙PAの搬送速度Vが異なる場合には、用紙PAの搬送速度Vに応じて剥離帯電補正量が決定(調整)されることが好ましい。
【0126】
図8は、第2実施形態に係る制御テーブル82(80)を示す図である。
【0127】
ここでは、区分C1~C8(256g/m未満の坪量)の用紙(普通紙等)は、搬送速度(標準搬送速度とも称する)V1で搬送され、区分C9~C11(256g/m以上の坪量)の用紙(厚紙)は、当該搬送速度V1よりも小さい(遅い)搬送速度V2(V2<V1)で搬送されることを想定する。そして、剥離帯電補正量が、用紙PAの搬送速度Vに応じて決定(調整)される。
【0128】
具体的には、搬送速度(標準搬送速度)V1で用紙が搬送される場合における剥離帯電の帯電電荷Q40(「-30μA」に対応する電荷)よりも一定程度少ない電荷(たとえば「-10μA」に対応する電荷)が、搬送速度V2(<V1)で用紙が搬送される場合における剥離帯電の帯電電荷Q42(不図示)として推定される。そして、当該帯電電荷Q42(「-10μA」に対応する電荷)を打ち消すことが可能な電流値「10μA」が、搬送速度V2で搬送される用紙(区分C9~C11の用紙)に関する剥離帯電補正量(共通の剥離帯電補正量)として決定される。換言すれば、搬送速度V1で搬送される用紙(区分C1~C8の用紙)に関する剥離帯電補正量(たとえば「30μA」)に対して一定程度の電流値(たとえば「20μA」)を差し引いた電流値「10μA」(=30-20)が、搬送速度V2で搬送される用紙(区分C9~C11の用紙)に関する剥離帯電補正量として決定される。なお、これに限定されず、搬送速度V2で搬送される用紙に関する剥離帯電補正量は、搬送速度V1で搬送される用紙に関する剥離帯電補正量「30μA」と同様の実験に基づいて決定されてもよい。
【0129】
そして、除電処理においては、基本印加量が剥離帯電補正量に基づいて補正されて、補正後の印加量が除電処理における最終印加量として決定(算出)される。
【0130】
このように、第2実施形態では、用紙PAの搬送速度Vに応じて剥離帯電補正量が決定される(図8参照)ので、搬送速度Vに応じて異なる剥離帯電補正量を用いて除電処理における最終印加量が決定される。たとえば、搬送速度V1で搬送される用紙(区分C1~C8の用紙)がローラ対3を通過する際には、「30μA」の剥離帯電補正量を用いて最終印加量が決定される。また、搬送速度V2(<V1)で搬送される用紙(区分C9~C11の用紙)がローラ対3を通過する際には、「10μA」(<30μA)の剥離帯電補正量を用いて最終印加量が決定される。したがって、搬送速度Vにかかわらず常に同じ剥離帯電補正量を用いて最終印加量が決定される場合(たとえば、常に「30μA」の剥離帯電補正量(搬送速度V1で搬送される用紙PAに関する剥離帯電補正量)を用いて最終印加量が決定される場合)と比較して、より適切な印加量で除電処理を実行することが可能である。
【0131】
なお、ここでは、剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離Wに代えて用紙PAの搬送速度Vに応じて剥離帯電補正量が決定されているが、これに限定されず、たとえば、軸間距離Wと搬送速度Vとの双方に応じて剥離帯電補正量が決定されてもよい。図9は、この改変例に係る制御テーブル84(80)を示す図である。
【0132】
この場合、図9に示されるように、区分C9~C11の用紙に関する剥離帯電補正量としては、区分C1~C8の用紙に関する剥離帯電補正量「30μA」に対して「20μA」の電流値を付加し(第1実施形態参照)且つ「20μA」の電流値を差し引いた(第2実施形態参照)電流値「30μA」(=30+20-20)が決定される。詳細には、区分C9~C11の用紙が軸間距離W2で圧接されることに基づいて、区分C1~C8の用紙(軸間距離W1で圧接され且つ搬送速度V1で搬送される用紙)に関する剥離帯電補正量「30μA」に対して「20μA」の電流値が付加され、さらに、区分C9~C11の用紙が搬送速度V2で搬送されることに基づいて、「20μA」の電流値が差し引かれる。そして、電流値「30μA」(=30+20-20)が、区分C9~C11の用紙(軸間距離W2で圧接され且つ搬送速度V2で搬送される用紙)に関する剥離帯電補正量として決定される。
【0133】
<3.変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0134】
たとえば、上記各実施形態(特に第1実施形態)では、用紙の坪量に応じて軸間距離W(剛性ローラ4と弾性ローラ5との軸間距離W)が切り替えられる場合に、軸間距離Wに応じて剥離帯電補正量が決定されているが、これに限定されず、紙種に応じて軸間距離Wが切り替えられる場合に、当該軸間距離Wに応じて剥離帯電補正量が決定されてもよい。
【0135】
ここにおいて、上質紙の特性等に起因して、一定程度(たとえば90g/m)よりも小さな坪量の上質紙(端的に言えば、薄い上質紙)のカール量が当該一定程度よりも小さな坪量の普通紙(薄い普通紙)のカール量よりも大きいことがある。換言すれば、薄い上質紙がカールし易い特性を有することがある。このような薄い上質紙に対してカール矯正処理が実行される場合には、比較的大きなカールを矯正するため、軸間距離Wを距離W1(図4)から例えば距離W2(図5)にまで低減して、薄い普通紙よりも強い圧接力で薄い上質紙を圧接することが好ましい。
【0136】
ただし、上述したように、軸間距離Wが小さい程(用紙PAへの圧接力が大きい程)、カール矯正処理に起因する剥離帯電の帯電量の絶対値は大きい。それ故、軸間距離Wが小さい程、剥離帯電補正量の絶対値を大きくすることが好ましい。
【0137】
この点を考慮して、この改変例では、用紙の紙種に応じて軸間距離Wが切り替えられる場合に、剥離帯電補正量が当該軸間距離Wに応じて決定される。
【0138】
図10は、この改変例に係る制御テーブル83(80)を示す図である。なお、この制御テーブル83は、特定の紙種の用紙(たとえば上質紙)がローラ対3を通過する際に用いられる。当該特定の紙種以外の種類の用紙(たとえば普通紙)がローラ対3を通過する際には、第1実施形態と同様に図7の制御テーブル81(80)が用いられる。
【0139】
この改変例では、区分C1~C3の上質紙は、軸間距離W2(<W1)で圧接されて搬送される。そして、制御テーブル83においては、図10に示されるように、区分C1~C3の上質紙における剥離帯電補正量(軸間距離W2で圧接される上質紙に関する共通の剥離帯電補正量)として、「30μA」(図7参照)ではなく、「50μA」の電流値がそれぞれ規定される。具体的には、区分C1~C3の普通紙に関する剥離帯電補正量(「30μA」(図7))に対して一定程度の電流値(たとえば「20μA」)を付加した電流値「50μA」(=30+20)が、区分C1~C3の上質紙(軸間距離W2で圧接される上質紙)に関する共通の剥離帯電補正量として決定されて制御テーブル83に規定される。なお、これに限定されず、軸間距離W2で圧接される用紙に関する剥離帯電補正量は、軸間距離W1で圧接される用紙に関する剥離帯電補正量「30μA」と同様の実験に基づいて決定されてもよい。
【0140】
そして、区分C1~C3の上質紙がローラ対3を通過する際には、除電制御部91は、図10における基本印加量「-60μA」と剥離帯電補正量「50μA」との合計値「-10μA」を、除電処理における印加量(最終印加量)として決定(算出)する。
【0141】
このように、用紙の紙種に応じて軸間距離Wが切り替えられる場合に、剥離帯電補正量が当該軸間距離Wに応じて決定されてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1 画像形成装置
3 ローラ対
4 剛性ローラ
5 弾性ローラ
41 剛性ローラの軸部材
51 弾性ローラの軸部材
26 定着器
80 制御テーブル
91 除電制御部
PA 用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11