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特許7163859画像形成装置、および画像形成装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】画像形成装置、および画像形成装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221025BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019081809
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020181001
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 暢康
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-282162(JP,A)
【文献】特開2007-241155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
H05B 1/00- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成部と、
加熱部材を有し、前記画像形成部によって前記画像が形成された前記用紙を加熱して、前記用紙に前記画像を定着させる定着部と、
前記定着部における温度を検出する検出部と、
前記検出部の検出温度、および目標温度の偏差に応じた前記加熱部材の点灯率のPID制御であって、比例項または積分項を少なくとも含んだ上で、自装置の動作条件に対応する値の定数項をさらに含む式に応じた制御を行うPID制御部と、
前記動作条件に応じた動作の終了時において、当該動作の実行中における前記加熱部材の平均点灯率を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記平均点灯率の値によって、前記動作条件に対応する前記定数項の値を更新する更新部と、
を有する、画像形成装置。
【請求項2】
前記PID制御部は、前記式に前記積分項が含まれる場合、前記動作条件に応じた動作の開始時において、前記積分項における前記偏差の累積値をリセットする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記動作条件は、前記用紙の紙種および坪量に関する条件を含む、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記動作条件および前記定数項の値を対応付けるテーブルを記憶する記憶部をさらに有し、
前記PID制御部は、前記動作条件に応じた動作の開始時において、前記テーブルを参照し、前記動作条件に対応する前記定数項の値を取得して、取得した値の前記定数項を含む前記式に応じた制御を行い、
前記更新部は、前記動作条件に応じた動作の終了時において、前記算出部によって算出された前記平均点灯率の値によって、前記テーブルに含まれる前記定数項の値を更新する、請求項1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記検出温度の変動幅が第1の閾値以下である期間における前記点灯率に基づいて、前記平均点灯率を算出する、請求項1~4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記点灯率の変動幅が第2の閾値以下である期間における前記点灯率に基づいて、前記平均点灯率を算出する、請求項1~4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記平均点灯率が所定の範囲内に含まれるか否かを判断する判断部をさらに有し、
前記更新部は、
前記判断部によって前記平均点灯率が前記所定の範囲内に含まれると判断された場合、前記定数項の値を更新し、
前記判断部によって前記平均点灯率が前記所定の範囲内に含まれないと判断された場合、前記定数項の値を更新しない、請求項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記PID制御部は、自装置の環境条件および前記定着部のウォームアップ条件に基づいて補正された値の前記定数項を含む前記式に応じた制御を行う、請求項1~7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
用紙に画像を形成する画像形成部と、加熱部材を有し、前記画像形成部によって前記画像が形成された前記用紙を加熱して、前記用紙に前記画像を定着させる定着部と、前記定着部における温度を検出する検出部と、を有する画像形成装置の制御プログラムであって、
前記検出部の検出温度、および目標温度の偏差に応じた前記加熱部材の点灯率のPID制御であって、比例項または積分項を少なくとも含んだ上で、前記画像形成装置の動作条件に対応する値の定数項をさらに含む式に応じた制御を行うPID制御ステップと、
前記動作条件に応じた動作の終了時において、当該動作の実行中における前記加熱部材の平均点灯率を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおいて算出された前記平均点灯率の値によって、前記動作条件に対応する前記定数項の値を更新する更新ステップと、
を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、および画像形成装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、定着部が備えるヒーターの点灯率のPID制御を行い、定着温度のリップルの発生を抑止する技術が知られている。例えば特許文献1には、ウォームアップ中、印刷中および待機中等の動作モード毎に、PID制御のパラメーターであるPID係数が変更され、温度リップルの発生を抑止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-241155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、印刷中には一種類のPID係数しか用いられず、例えば印刷中における用紙の種類の切り替え時や、用紙間での画像の安定化処理の実行時等における温度リップルの発生が、十分に抑止されないという問題がある。また、比例項、積分項および微分項にそれぞれ含まれる3つのPID係数を制御しなければならず、特に処理が複雑化する虞もある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の目的は、定着部における温度リップルの発生を容易に抑止できる画像形成装置、および画像形成装置の制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記の目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
(1)用紙に画像を形成する画像形成部と、加熱部材を有し、前記画像形成部によって前記画像が形成された前記用紙を加熱して、前記用紙に前記画像を定着させる定着部と、前記定着部における温度を検出する検出部と、前記検出部の検出温度、および目標温度の偏差に応じた前記加熱部材の点灯率のPID制御であって、比例項または積分項を少なくとも含んだ上で、自装置の動作条件に対応する値の定数項をさらに含む式に応じた制御を行うPID制御部と、前記動作条件に応じた動作の終了時において、当該動作の実行中における前記加熱部材の平均点灯率を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記平均点灯率の値によって、前記動作条件に対応する前記定数項の値を更新する更新部と、を有する、画像形成装置。
【0008】
(2)前記PID制御部は、前記式に前記積分項が含まれる場合、前記動作条件に応じた動作の開始時において、前記積分項における前記偏差の累積値をリセットする、上記(1)に記載の画像形成装置。
【0009】
(3)前記動作条件は、前記用紙の紙種および坪量に関する条件を含む、上記(1)または(2)に記載の画像形成装置。
【0010】
(4)前記動作条件および前記定数項の値を対応付けるテーブルを記憶する記憶部をさらに有し、前記PID制御部は、前記動作条件に応じた動作の開始時において、前記テーブルを参照し、前記動作条件に対応する前記定数項の値を取得して、取得した値の前記定数項を含む前記式に応じた制御を行い、前記更新部は、前記動作条件に応じた動作の終了時において、前記算出部によって算出された前記平均点灯率の値によって、前記テーブルに含まれる前記定数項の値を更新する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0011】
(5)前記算出部は、前記検出温度の変動幅が第1の閾値以下である期間における前記点灯率に基づいて、前記平均点灯率を算出する、上記(1)~(4)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0012】
(6)前記算出部は、前記点灯率の変動幅が第2の閾値以下である期間における前記点灯率に基づいて、前記平均点灯率を算出する、上記(1)~(4)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0013】
(7)前記平均点灯率が所定の範囲内に含まれるか否かを判断する判断部をさらに有し、前記更新部は、前記判断部によって前記平均点灯率が前記所定の範囲内に含まれると判断された場合、前記定数項の値を更新し、前記判断部によって前記平均点灯率が前記所定の範囲内に含まれないと判断された場合、前記定数項の値を更新しない、上記(1)~(6)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0014】
(8)前記PID制御部は、自装置の環境条件および前記定着部のウォームアップ条件に基づいて補正された値の前記定数項を含む前記式に応じた制御を行う、上記(1)~(7)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0015】
(9)用紙に画像を形成する画像形成部と、加熱部材を有し、前記画像形成部によって前記画像が形成された前記用紙を加熱して、前記用紙に前記画像を定着させる定着部と、前記定着部における温度を検出する検出部と、を有する画像形成装置の制御プログラムであって、前記検出部の検出温度、および目標温度の偏差に応じた前記加熱部材の点灯率のPID制御であって、比例項または積分項を少なくとも含んだ上で、前記画像形成装置の動作条件に対応する値の定数項をさらに含む式に応じた制御を行うPID制御ステップと、前記動作条件に応じた動作の終了時において、当該動作の実行中における前記加熱部材の平均点灯率を算出する算出ステップと、前記算出ステップにおいて算出された前記平均点灯率の値によって、前記動作条件に対応する前記定数項の値を更新する更新ステップと、を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置によれば、検出温度および目標温度の偏差に応じた加熱部材の点灯率のPID制御であって、比例項または積分項を少なくとも含んだ上で、自装置の動作条件に対応する値の定数項をさらに含む式に応じた制御を行う。そして、画像形成装置は、当該動作条件に応じた動作の実行中における加熱部材の平均点灯率を算出し、加熱部材の平均点灯率の値によって、当該動作条件に対応する定数項の値を更新する。画像形成装置は、加熱部材の平均点灯率の値によって定数項の値を更新するだけで、当該動作の開始直後における加熱部材の点灯率が、当該動作の実行中における加熱部材の平均点灯率に等しくなるように制御できる。これにより、画像形成装置は、当該動作の開始直後から、検出温度および目標温度の偏差が小さくなるように加熱部材の点灯率を制御でき、定着部における温度リップルの発生を容易に抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】定着部の概略構成を示す図である。
図3】制御部の機能構成を説明するためのブロック図である。
図4】動作条件および定数項の値を対応付けるテーブルの一例を示す図である。
図5】画像形成装置の処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6A】画像形成装置の作用効果を説明するための図である。
図6B】画像形成装置の作用効果を説明するための図である。
図6C】画像形成装置の作用効果を説明するための図である。
図6D】画像形成装置の作用効果を説明するための図である。
図7】画像形成装置の処理の手順の他の例を示すフローチャートである。
図8】画像形成装置の処理の手順のさらに他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法の比率は、説明の都合上誇張され、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
(画像形成装置)
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。図2は、定着部の概略構成を示す図である。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置1は、制御部10、記憶部20、通信部30、操作パネル40、給紙部50、搬送部60、画像形成部70および定着部80を備える。各構成要素は、信号をやり取りするためのバスを介して、相互に接続されている。
【0021】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)を備え、プログラムに従い、上述した各構成要素の制御や各種の演算処理を実行する。制御部10の機能構成については、図3を参照して後述する。
【0022】
記憶部20は、予め各種プログラムや各種データを記憶するROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、各種プログラムや各種データを記憶するハードディスク等を備える。
【0023】
通信部30は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、ユーザーのPC(Personal Computer)等の他の機器と通信するためのインターフェースを備える。通信部30は、例えば、ユーザーのPCから印刷ジョブを受信する。
【0024】
操作パネル40は、タッチパネルやテンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備え、表示部として各種情報を表示したり、操作受付部として各種操作を受け付けたりする。
【0025】
給紙部50は、印刷に使用される記録材としての用紙を収容する複数の給紙トレイ51を備え、給紙トレイ51に収容された用紙を一枚ずつ給紙する。
【0026】
搬送部60は、搬送路、搬送路に沿って配置された複数の搬送ローラー、および搬送ローラーを駆動する駆動モーター(図示せず)を備え、給紙部50によって給紙された用紙を搬送路に沿って搬送する。
【0027】
画像形成部70は、電子写真プロセス等の周知の作像プロセスを用いて、搬送部60によって搬送されてきた用紙に画像を形成する。
【0028】
定着部80は、画像形成部70によって画像が形成され、搬送部60によって搬送されてきた用紙を加熱および加圧して、用紙に画像を定着させる。定着部80は、図2に示すように、定着ローラー81、加圧ローラー82、加熱ローラー83、定着ベルト84および温度センサー85を備える。
【0029】
定着ローラー81は、無端ベルトである定着ベルト84に内接するように配置される。加圧ローラー82は、定着ベルト84を挟んで対向する定着ローラー81に対して、所定の荷重で圧着するように構成され、定着ローラー81との間にニップ(以下「定着ニップ」と称する)を形成する。加熱ローラー83は、加熱部材としてのヒーター831を内部に備え、定着ローラー81から離間して定着ベルト84に内接するように配置され、定着ベルト84を加熱する。加熱された定着ベルト84は、定着部80まで搬送されてきた用紙と共に定着ニップを通過することによって、用紙を加熱する。検出部としての温度センサー85は、加熱された定着ベルト84の温度を検出する。定着部80では、温度センサー85によって検出された温度(以下、単に「検出温度」と称する)が目標温度に等しくなるように、ヒーター831への電力供給、すなわちヒーター831の点灯率(以下「ヒーター点灯率」と称する)が制御される。
【0030】
定着ローラー81および加圧ローラー82は、例えば、芯金の外周にシリコンゴム等のゴムからなる弾性層を有するように構成される。また、ヒーター831の例としては、ハロゲンランプや抵抗発熱体、電磁誘導加熱(IH)方式の加熱手段等が挙げられる。ただし、定着ローラー81および加圧ローラー82、ならびにヒーター831等の構成は、上述した例に限定されない。例えば、加圧ローラー82は、金属製の基材の外周にPFAチューブ等の離型層を有するように構成されてもよいし、加熱ローラー83が備えるヒーター831よりも低い温度に設定された他のヒーターを、外部または内部に備えてもよい。
【0031】
なお、画像形成装置1は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでもよいし、上述した構成要素のうちの一部の構成要素を含まなくてもよい。
【0032】
(制御部)
続いて、制御部10の機能構成について説明する。図3は、制御部の機能構成を説明するためのブロック図である。図4は、動作条件および定数項の値を対応付けるテーブルの一例を示す図である。
【0033】
図3に示すように、制御部10は、プログラムを読み込んで処理を実行することによって、PID制御部11、確認部12、算出部13および更新部14として機能する。
【0034】
PID制御部11は、温度センサー85の検出温度および目標温度の偏差(差分)に応じた、ヒーター点灯率のPID制御を行う。PID制御部11は、検出温度が目標温度未満である場合において偏差が大きいほど、ヒーター点灯率を上昇させ、検出温度が目標温度を超える場合において偏差が大きいほど、ヒーター点灯率を低下させる。本実施形態では、PID制御部11は、以下の式(1)に応じた制御を行う。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、e(t)は、時間の経過に伴い変化する検出温度および目標温度の偏差を示す。本実施形態に係る式(1)は、偏差e(t)と、各係数K、KおよびKとに基づく比例項、積分項および微分項を含む通常のPID制御の式と比較すると、画像形成装置1の動作条件に対応する値(比率)の定数項Aをさらに含む点において特徴を有する。式(1)は、定数項Aに加えて、少なくとも比例項または積分項を含んでいればよく、比例項、積分項および微分項の全てを含まなくてもよい。例えば、式(1)は、係数KおよびKがゼロに設定されたP制御の式や、Kがゼロに設定されたPI制御の式であってもよい。なお、本実施形態では、少なくとも比例項または積分項と、定数項Aとを含む式(1)に応じた制御(例えば、P制御やPI制御等も含む)を、まとめてPID制御と称する。
【0037】
動作条件は、画像形成装置1の動作(例えば、印刷中の動作)に影響する条件であり、例えば図4に示すような、印刷に使用する用紙の種類(紙種および坪量)に関する条件や、定着ニップを通過する用紙の有無(通紙の有無)に関する条件等を含む。用紙の種類に関する条件は、操作パネル40を介して、給紙トレイ51毎に収容された用紙の種類を設定するユーザーの操作に基づいて、設定される。また、用紙は、用紙間における画像の安定化処理の実行中において、定着ニップを通過しないように制御される。ただし、動作条件は図4に示す例に限定されず、例えば、紙種の分類はエンボス紙等をさらに含んでもよい。
【0038】
上述したような定数項Aの値は、例えば図4に示すように、動作条件毎に異なる値に設定される。定数項Aの初期値は、シミュレーション等に基づいて算出された、各動作条件に応じた動作の実行中におけるヒーター831の平均点灯率(以下「ヒーター平均点灯率」と称する)の予測値であってもよい。また、図4に示す例では、画像の安定化処理の実行中に対応する定数項Aの値が、坪量毎に区分化されているが、当該坪量は、画像の安定化処理の実行直前まで定着ニップを通過していた用紙の坪量に対応するものとする。ただし、画像の安定化処理の実行中に対応する定数項Aの値は、図4に示す例に限定されず、例えば一種類の値に設定されてもよい。
【0039】
PID制御部11は、新たな動作条件に応じた動作の開始時において、例えば記憶部20に予め記憶されている図4に示すようなテーブル21を参照し、当該動作条件に対応する定数項Aの値(比率)を取得する。そして、PID制御部11は、取得した値を式(1)に含まれる定数項Aの値として設定し、式(1)に応じた制御を行う。なお、「動作条件に応じた動作の開始」には、待機状態から動作条件に応じた動作を開始する場合だけでなく、ある動作条件に応じた動作を終了して他の動作条件に応じた動作を開始する場合(変更後の動作条件に応じた動作の開始)も含まれるものとする。すなわち、「動作条件に応じた動作の開始」には、待機状態から任意の種類の用紙に対する印刷を開始する場合だけでなく、ある種類の用紙に対する印刷を終了して、他の種類の用紙に対する印刷を続けて開始する場合も含まれる。
【0040】
例えば、坪量65g/m(gsm)の普通紙に対する印刷の開始時において、PID制御部11は、テーブル21を参照し、式(1)に含まれる定数項Aの値を「50%」に設定する。また、印刷中において、坪量65g/mの普通紙(薄紙)から坪量200g/mの普通紙(厚紙)に用紙の種類が切り替えられる際、PID制御部11は、式(1)において「50%」に設定されていた定数項Aの値を、「65%」に設定する。また、坪量65g/mの普通紙間において画像の安定化処理が開始される際、PID制御部11は、式(1)において「50%」に設定されていた定数項Aの値を、「10%」に設定する。ただし、動作条件および定数項Aの値を対応付ける形態は、図4に例示するテーブル21の形態に限定されない。
【0041】
また、PID制御部11は、式(1)に積分項が含まれる場合、新たな動作条件に応じた動作の開始時において、積分項における偏差の累積値をリセットする。これにより、PID制御部11は、当該動作の開始直後(例えば、式(1)においてt=0)におけるヒーター点灯率が、テーブル21に含まれる定数項Aの値のみに依存するように制御できる。例えば、テーブル21に含まれる定数項Aの値が、シミュレーション等に基づいて算出されたヒーター平均点灯率の予測値である場合、PID制御部11は、当該動作の開始直後におけるヒーター点灯率が、自身の予測値に等しくなるように迅速に制御できる。したがって、PID制御部11は、当該動作の開始直後から、検出温度および目標温度の偏差が小さくなるようにヒーター点灯率を制御でき、温度リップルの発生を抑止できる。
【0042】
確認部12は、各動作条件に応じた動作の実行中における所定の周期毎に、PID制御部11によって制御されているヒーター点灯率を確認し、確認したヒーター点灯率に関する情報を記憶部20に記憶させる。所定の周期は、0.1~1秒程度(例えば0.2秒)であってもよいが、これに限定されない。
【0043】
算出部13は、記憶部20において記憶されている、各動作条件に応じた動作の実行中において確認されたヒーター点灯率に関する情報に基づいて、当該動作の実行中におけるヒーター平均点灯率を算出する。算出部13は、例えば、確認部12によって確認されたヒーター点灯率の合計値を、確認された回数で除算することによって、ヒーター平均点灯率を算出する。
【0044】
なお、ヒーター平均点灯率は、ヒーター831の点灯時間に基づいて算出されてもよい。より具体的には、確認部12が、各動作条件に応じた動作の実行中におけるヒーター831の点灯時間を確認し、算出部13が、ヒーター831の点灯時間の合計値を当該動作の実行時間で除算することによって、ヒーター平均点灯率を算出してもよい。
【0045】
更新部14は、直前に算出されたヒーター平均点灯率の値によって、テーブル21に含まれる定数項Aの値を更新する。更新部14の更新処理の詳細については、図5を参照して後述する。
【0046】
(処理)
続いて、本実施形態に係る画像形成装置1の処理の手順について説明する。
【0047】
図5は、画像形成装置の処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5のフローチャートに示すアルゴリズムは、記憶部20にプログラムとして記憶されており、制御部10によって実行される。
【0048】
図5に示すように、まず、制御部10は、PID制御部11として、新たな動作条件に応じた動作の開始時において、記憶部20に予め記憶されているテーブル21を参照し、当該動作条件に対応する定数項Aの値を取得する(ステップS101)。なお、式(1)に積分項が含まれる場合、制御部10は、ステップS101の時点において、積分項における偏差の累積値のリセットも行う。そして、制御部10は、ステップS101において取得した値を、式(1)に含まれる定数項Aの値として設定し、式(1)に応じた制御を行う、新たな動作条件に応じた動作を開始する(ステップS102)。
【0049】
続いて、制御部10は、式(1)に応じた制御を行いながら、確認部12として、所定の周期毎に実際のヒーター点灯率を確認し、確認したヒーター点灯率に関する情報を記憶部20に記憶させる(ステップS103)。そして、制御部10は、ステップS102において開始された、動作条件に応じた動作が終了したか否かを判断する(ステップS104)。なお、「動作条件に応じた動作の終了」には、動作条件に応じた動作を終了して待機状態に戻る場合だけでなく、ある動作条件に応じた動作を開始するために他の動作条件に応じた動作を終了する場合(変更前の動作条件に応じた動作の終了)も含まれるものとする。
【0050】
ステップS102において開始された動作が終了していないと判断した場合(ステップS104:NO)、制御部10は、当該動作が終了したと判断されるまで、ステップS103およびS104の処理を繰り返し実行する。すなわち、制御部10は、所定の周期毎に確認したヒーター点灯率に関する情報を、記憶部20に蓄積して記憶させることを繰り返す。そして、当該動作が終了したと判断した場合(ステップS104:YES)、制御部10は、ステップS105の処理に進む。そして、制御部10は、算出部13として、記憶部20において記憶されている、当該動作の実行中において確認されたヒーター点灯率に関する情報に基づいて、当該動作の実行中におけるヒーター平均点灯率を算出する(ステップS105)。すなわち、制御部10は、動作条件に応じた動作の終了時において、当該動作の実行中におけるヒーター平均点灯率を算出する。
【0051】
続いて、制御部10は、更新部14として、テーブル21に含まれる、ステップS101において取得された定数項Aの値を、ステップS105において算出されたヒーター平均点灯率の値によって更新する(ステップS106)。そして、制御部10は処理を終了する。すなわち、制御部10は、動作条件に応じた動作の終了時において、テーブル21に含まれる当該動作条件に対応する定数項Aの値を、当該動作の実行中におけるヒーター平均点灯率の値によって更新する。そして、制御部10は、同じ動作条件に応じた動作を次回開始する際、今回更新した値を式(1)に含まれる定数項Aの値として設定することになる。これにより、制御部10は、当該動作を次回開始した直後におけるヒーター点灯率が、当該動作の今回の実行中における実際のヒーター平均点灯率に等しくなるように制御できる。したがって、制御部10は、当該動作の次回の開始直後から、検出温度および目標温度の偏差がより小さくなるようにヒーター点灯率を制御でき、温度リップルの発生をより効果的に抑止できる。
【0052】
(作用効果)
続いて、本実施形態に係る画像形成装置1の作用効果について説明する。図6A図6Dは、画像形成装置の作用効果を説明するための図である。
【0053】
画像形成装置1は、定数項Aを含む式(1)に応じた制御を実行することによって、図6Aに示すように、任意の種類の用紙に対する印刷の開始時において発生する温度リップルの大きさを、従来技術と比較して約半分以下に減少させることができる。また。画像形成装置1は、図6Bに示すように、薄紙から厚紙への用紙の種類の切り替え時における、目標温度の変更によって発生する温度リップルの大きさを、従来技術と比較して約半分以下に減少させることができる。逆に、画像形成装置1は、図6Cに示すように、厚紙から薄紙への用紙の種類の切り替え時において発生する温度リップルの大きさも、従来技術と比較して約半分以下に減少させることができる。さらに、画像形成装置1は、図6Dに示すように、用紙間における画像の安定化処理の実行時において発生する温度リップルの大きさを、従来技術と比較して約半分以下に減少させることができる。
【0054】
以上のように、画像形成装置1は、検出温度および目標温度の偏差に応じたヒーター点灯率のPID制御であって、比例項または積分項を少なくとも含んだ上で、自装置の動作条件に対応する値の定数項Aをさらに含む式(1)に応じた制御を行う。そして、画像形成装置1は、当該動作条件に応じた動作の実行中におけるヒーター平均点灯率を算出し、ヒーター平均点灯率の値によって、当該動作条件に対応する定数項Aの値を更新する。画像形成装置1は、ヒーター平均点灯率の値によって定数項Aの値を更新するだけで、当該動作の開始直後におけるヒーター点灯率が、当該動作の実行中におけるヒーター平均点灯率に等しくなるように制御できる。これにより、画像形成装置1は、当該動作の開始直後から、検出温度および目標温度の偏差が小さくなるようにヒーター点灯率を制御でき、定着部80における温度リップルの発生を容易に抑止できる。
【0055】
また、画像形成装置1は、式(1)に積分項が含まれる場合、動作条件に応じた動作の開始時において、積分項における偏差の累積値をリセットする。これにより、画像形成装置1は、当該動作の開始直後におけるヒーター点灯率が、定数項Aの値のみに依存するように制御でき、当該動作の開始直後におけるヒーター点灯率を、より容易に制御できる。
【0056】
また、動作条件は、搬送される用紙の紙種および坪量に関する条件を含む。これにより、画像形成装置1は、搬送する用紙の紙種および坪量毎に異なる値の定数項Aを含む式(1)に応じた、ヒーター点灯率の制御を行うことができる。したがって、画像形成装置1は、当該動作条件に応じた動作の開始直後から、搬送する用紙の紙種および坪量毎に最適なヒーター点灯率を設定できる。
【0057】
また、画像形成装置1は、動作条件および定数項Aの値を対応付けるテーブル21を記憶し、動作条件に応じた動作の開始時においてテーブル21を参照し、当該動作条件に対応する定数項Aの値を取得する。これにより、画像形成装置1は、動作条件毎に異なる複数の定数項Aの値を、テーブル21において容易に管理できる。
【0058】
また、画像形成装置1は、動作条件に応じた動作の終了時において、当該動作の実行中におけるヒーター平均点灯率を算出し、算出したヒーター平均点灯率の値によって、テーブル21に含まれる定数項Aの値を更新する。これにより、画像形成装置1は、同じ動作条件に応じた動作を次回開始する際、今回更新した値を式(1)に含まれる定数項Aの値として設定できる。そして、画像形成装置1は、当該動作を次回開始した直後におけるヒーター点灯率が、当該動作の今回の実行中における実際のヒーター平均点灯率に等しくなるように制御できる。したがって、画像形成装置1は、当該動作の次回の開始直後から、検出温度および目標温度の偏差がより小さくなるようにヒーター点灯率を制御でき、温度リップルの発生をより効果的に抑止できる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲内において、種々の変更や改良等がなされ得る。
【0060】
(変形例1)
上述した実施形態では、所定の周期毎に確認されたヒーター点灯率に関する情報が、記憶部20に記憶される場合を例に挙げて説明したが、ヒーター点灯率に関する情報は、所定の条件に基づいて記憶されてもよい。
【0061】
図7は、画像形成装置の処理の手順の他の例を示すフローチャートである。
【0062】
図7に示すステップS201およびS202以外の処理は、図5に示す処理と同様であるため、説明を省略する。変形例1に係る制御部10は、プログラムを読み込んで処理を実行することによって、所定の判断を行う判断部としても機能する。
【0063】
図7に示すように、制御部10は、判断部として、温度センサー85の検出温度の現在の変動幅を確認し(ステップS201)、検出温度の変動幅が第1の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS202)。第1の閾値は、数℃程度(例えば2℃)であってもよい。
【0064】
検出温度の変動幅が第1の閾値を超えると判断した場合(ステップS202:NO)、制御部10は、検出温度の変動幅が第1の閾値以下になるまで、ステップS201およびS202の処理を繰り返し実行する。そして、検出温度の変動幅が第1の閾値以下であると判断した場合(ステップS202:YES)、制御部10は、ステップS103の処理に進む。これにより、画像形成装置1は、検出温度の変動幅が第1の閾値を超える期間におけるヒーター点灯率に関する情報を、記憶部20に記憶させないで済む。したがって、画像形成装置1は、検出温度の変動幅が第1の閾値以下である期間、すなわち、検出温度が目標温度付近に落ち着いた後の期間におけるヒーター点灯率のみに基づいて、ヒーター平均点灯率を正確に算出できる。
【0065】
(変形例2)
変形例1では、検出温度の変動幅が第1の閾値以下であるか否かが判断される場合を例に挙げて説明したが、検出温度の変動幅の代わりに、ヒーター点灯率の変動幅に関する判断が行われてもよい。
【0066】
より具体的には、変形例2に係る制御部10は、図7に示すステップS201において、検出温度の変動幅を確認する代わりに、PID制御部11によって制御されているヒーター点灯率の変動幅を確認してもよい。そして、制御部10は、ステップS202において、検出温度の変動幅が第1の閾値以下であるか否かを判断する代わりに、ヒーター点灯率の変動幅が第2の閾値以下であるか否かを判断してもよい。第2の閾値は、数%程度(例えば7%)であってもよい。これにより、画像形成装置1は、検出温度の変動幅に対応するヒーター点灯率の変動幅に基づいて、変形例1に係る処理と同様の処理を実行できる。したがって、画像形成装置1は、ヒーター点灯率の変動幅が第2の閾値以下である期間、すなわち、変動が落ち着いた後の期間におけるヒーター点灯率のみに基づいて、ヒーター平均点灯率を正確に算出できる。
【0067】
(変形例3)
上述した実施形態では、ヒーター平均点灯率が算出される度に、テーブル21に含まれる定数項Aの値がヒーター平均点灯率の値によって更新される場合を例に挙げて説明したが、定数項Aの値は、所定の条件が満たされる場合のみ更新されてもよい。
【0068】
図8は、画像形成装置の処理の手順のさらに他の例を示すフローチャートである。
【0069】
図8に示すステップS301以外の処理は、図5に示す処理と同様であるため、説明を省略する。変形例3に係る制御部10は、変形例1に係る制御部10と同様に、プログラムを読み込んで処理を実行することによって、所定の判断を行う判断部としても機能する。
【0070】
図8に示すように、制御部10は、判断部として、ステップS105において算出されたヒーター平均点灯率が、所定の範囲内に含まれるか否かを判断する(ステップS301)。所定の範囲は、例えば、テーブル21に含まれる、ステップS104において終了したと判断された動作条件に対応する定数項Aの値を中央値として、±15%程度の範囲であってもよい。そして、ヒーター平均点灯率が所定の範囲内に含まれると判断した場合(ステップS301:YES)、制御部10は、ステップS106の処理に進む。一方、ヒーター平均点灯率が所定の範囲内に含まれないと判断した場合(ステップS301:NO)、制御部10は、そのまま処理を終了する。これにより、画像形成装置1は、所定の範囲内に含まれないヒーター平均点灯率の異常値等によって、テーブル21に含まれる定数項Aの値を誤って更新しないで済む。より具体的には、画像形成装置1は、例えば、給紙トレイに誤って収容された用紙の種類を、テーブル21に含まれる定数項Aの値に誤って対応させてしまい、テーブル21に含まれる定数項Aの値を誤って更新することを回避できる。あるいは、画像形成装置1は、突発的に発生した自装置の異常状態等がもたらすヒーター平均点灯率の異常値に基づいて、テーブル21に含まれる定数項Aの値を誤って更新することも回避できる。なお、変形例3は、変形例1または変形例2と組み合わせて用いられてもよい。
【0071】
(変形例4)
上述した実施形態では、式(1)に応じた制御が行われる場合を例に挙げて説明したが、他の式に応じた制御が行われてもよい。
【0072】
変形例4に係る制御部10は、上述した実施形態に係る式(1)の代わりに、ステップS102において、以下の式(2)に応じた制御を行う。
【0073】
【数2】
【0074】
変形例4に係る式(2)は、上述した実施形態に係る式(1)と比較すると、係数kによって補正された値の定数項(定数項kA)を含む点において特徴を有する。係数kは、例えば、画像形成装置1の環境条件に基づく係数k1と、定着部80のウォームアップ条件に基づく係数k2と、以下の式(3)とに基づいて算出される。ただし、係数kの算出方法は、式(3)に示す例に限定されない。
【0075】
【数3】
【0076】
ここで、係数k1は、例えば、画像形成装置1が設置された環境の温度(機内温度または機外温度)に関する係数であってもよい。この場合において、温度が15℃未満であるとき、係数k1が1.1に設定され、温度が15℃以上25℃未満であるとき、係数k1が1.0に設定され、温度が25℃以上であるとき、係数k1が0.9に設定されてもよい。また、係数k2は、例えば、定着部80のウォームアップが開始されてからの経過時間に関する係数であってもよい。この場合において、経過時間が5分以内であるとき、係数k2が1.2に設定され、経過時間が5分を超えて、かつ10分以内であるとき、係数k2が1.1に設定され、経過時間が10分を超えるとき、係数k2が1.0に設定されてもよい。そして、例えば、環境の温度が15℃未満であり、ウォームアップが開始されてからの経過時間が5分以内である場合、式(3)に基づいて、kが1.32に設定されてもよい。このように、画像形成装置1は、設置された環境の温度が低いほど、さらに定着部80のウォームアップが開始されてからの経過時間が短いほど、定数項kAの値を大きく設定でき、ヒーター点灯率を高く設定できる。これにより、画像形成装置1は、自装置の環境条件や定着部80のウォームアップ条件も考慮して、ヒーター点灯率を制御でき、温度リップルの発生をより効果的に抑止できる。
【0077】
また、変形例4に係る制御部10は、ステップS106において、テーブル21に含まれる定数項Aの値を更新する際、ヒーター平均点灯率の値を設定されている係数kの値で除算して得られる値によって、定数項Aの値を更新してもよい。これにより、画像形成装置1は、自装置の環境条件や定着部80のウォームアップ条件に影響されない、正規化されたヒーター平均点灯率の値によって、定数項Aの値を更新できる。なお、変形例4は、変形例1または変形例2、および変形例3と組み合わせて用いられてもよい。
【0078】
その他、上述した実施形態では、定着部80において、ヒーター831を内部に備える加熱ローラー83および定着ベルト84が、定着ローラー81側に設けられる場合を例に挙げて説明したが、定着部80の構成は上述した例に限定されない。例えば、定着ローラー81の内部にヒーターが設けられ、加熱ローラー83および定着ベルト84が省略されてもよい。あるいは、定着部80は、定着ローラー81側に定着ベルト84が設けられる上ベルト定着方式に代えて、加圧ローラー82側に定着ベルトが設けられる下ベルト定着方式や、定着ローラー81側および加圧ローラー82側の両方にそれぞれ定着ベルトが設けられる上下ベルト定着方式を実現する構成を備えてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、印刷中における動作条件に対応する定数項Aの値が設定される場合を例に挙げて説明したが、他の動作条件に対応する定数項Aの値がさらに設定されてもよい。例えば、定着部80のウォームアップ中に対応する定数項Aの値や、画像形成装置1の待機中に対応する定数項Aの値等が、さらに設定されてもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、画像形成装置1を一つの装置として説明したが、画像形成装置1について、例えば、各種の判断処理を実行する情報処理装置と、画像形成処理を実行する装置とが、別々に構成され、バスを介して接続されてもよい。
【0081】
また、上述した実施形態に係る処理は、上述したステップ以外のステップを含んでもよいし、上述したステップのうちの一部のステップを含まなくてもよい。また、ステップの順序は、上述した実施形態に限定されない。さらに、各ステップは、他のステップと組み合わされて一つのステップとして実行されてもよく、他のステップに含まれて実行されてもよく、複数のステップに分割されて実行されてもよく、他のステップと同時に実行されてもよい。
【0082】
また、上述した実施形態に係る画像形成装置1における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウエア回路、およびプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現され得る。上述したプログラムは、例えば、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され、記憶される。また、上述したプログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、画像形成装置1の一機能としてそのソフトウェアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置、
10 制御部、
11 PID制御部、
12 確認部、
13 算出部、
14 更新部、
20 記憶部、
30 通信部、
40 操作パネル、
50 給紙部、
60 搬送部、
70 画像形成部、
80 定着部、
81 定着ローラー、
82 加圧ローラー、
83 加熱ローラー、
831 ヒーター(加熱部材)、
84 定着ベルト、
85 温度センサー(検出部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8