(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させるフォト陽極フィルム、その製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C23F 13/08 20060101AFI20221025BHJP
C01F 17/288 20200101ALI20221025BHJP
C01G 23/053 20060101ALI20221025BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20221025BHJP
C23F 13/14 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C23F13/08
C01F17/288
C01G23/053
C23F13/02 L
C23F13/14
(21)【出願番号】P 2022090525
(22)【出願日】2022-06-02
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202210052649.2
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518229179
【氏名又は名称】青▲島▼理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 小影
(72)【発明者】
【氏名】金 祖権
(72)【発明者】
【氏名】蒋 継宏
(72)【発明者】
【氏名】任 鵬程
(72)【発明者】
【氏名】陳 兆毅
(72)【発明者】
【氏名】王 暁晴
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106555188(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108034950(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105386061(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00-13/22
C01F 17/00-17/38
C01G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FTO伝導性ガラス又はITO伝導性ガラスとなる清潔な導電性基板は、一層のTiO
2ゾルがスピンコーティングされて焙焼された後に取り出され、
TiO
2
ゾルがスピンコーティングされた導電性基板はチタン酸ブチルと濃塩酸の体積比が1:15-1:75となる混合溶液に加えられて、100-180℃にて水熱反応を8-20時間行い、反応器が冷却された後に
水熱反応により得られた導電性基板を洗浄して乾燥し、前記清潔な導電性基板
の表面にTiO
2ナノワイヤフィルムを製造して取得し、前記焙焼の後取り出しは、焙焼の昇温速度5℃/ minで450-700℃に昇温した後、0.5-1時間保温した後に140-150℃に冷却した後に取り出すように行う、TiO
2
ナノワイヤフィルムを準備するステップIと、
モル濃度を0.01mol/L-0.07mol/Lとして、セリウムソースがセリウムを含む有機塩又は無機塩となり、セリウムソースの溶液であって、
モル濃度を0.014mol/L-0.05mol/Lとして、硫黄ソースが硫黄を含む有機塩又は無機塩となり、硫黄ソースの溶液であって、
前記TiO
2ナノワイヤフィルムは、前記セリウムソースと前記硫黄ソースのモル比が1:20-1:80となる前記セリウムソースの溶液と前記硫黄ソースの溶液との混合溶液に加えられて、120-180℃にて二次水熱反応を12-20時間行い、反応器が冷却された後に得られた溶液を洗浄して乾燥する、TiO
2-Ce
2S
3を準備するステップIIと、
光誘起還元法によりZタイプヘテロ結合フォト陽極フィルムであるAg-TiO
2-Ce
2S
3を準備するステップIIIと、
を含む、ことを特徴とする海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させるフォト陽極フィルムの製造方法。
【請求項2】
チタン酸ブチルと無水アルコールの体積比が1:3-1:3.75となり、氷酢酸とチタン酸ブチルの体積比が1:5-1:8となり、
濃硝酸と水が体積比1:10-1:20で混合された硝酸溶液であって、水とエタノールが体積比1:1-1:50で混合されたエタノール溶液であって、
前記TiO
2ゾルを準備するプロセスは、フラスコには、前記無水アルコールが加えられて室温で激しく攪拌され、前記チタン酸ブチルと前記氷酢酸を順次滴下し、滴下済みに20分で攪拌し続けて均一で透明な淡黄色溶液を得、前記淡黄色溶液が激しく攪拌されている中で前記硝酸溶液と前記エタノール溶液が体積比1:1で配合しておいた硝酸-エタノール溶液を滴下し、滴下済み、1時間攪拌し続けて均一で前記透明なTiO
2ゾルを準備するように行う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の、海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させるフォト陽極フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ステップIIIは、AgNO
3水溶液と安定剤を一定の体積比で混合して攪拌しているうちにKBH
4水溶液を添加することで、Agを含む還元溶液を得って、Agを含む還元溶液をTiO
2-Ce
2S
3の表面にスピンコーティングする又は滴下する後、光源により前記TiO
2-Ce
2S
3の表面を80-200時間照射するように行う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の、海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させるフォト陽極フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の、海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させるフォト陽極フィルムの製造方法であって、
前記安定剤はポリゼニールピロリドン又はクエン酸塩であって、
前記AgNO
3水溶液の濃度は0.1mmol/L-0.1mmol/Lであって、
前記KBH
4水溶液の濃度は0.1mmol/L-1mmol/Lであって、
前記AgNO
3水溶液と前記安定剤の体積比は1:10-1:100となる、
ことを特徴とする、海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させるフォト陽極フィルムの製造方法である。
【請求項5】
鉄筋のフォトカソード保護用のフォト陽極フィルムであって、
前記フォト陽極フィルムはAg-TiO
2
-Ce
2
S
3
複合フォト陽極フィルムであって、Zタイプヘテロ結合フォト陽極フィルムであることを特徴とする、鉄筋のフォトカソード保護用のフォト陽極フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の鉄筋のフォトカソード保護用のフォト陽極フィルムの用途であって、
海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させることに使用することを特徴とする、用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋工事のコンクリートの構造の金属材料に対する腐食防止技術に関し、具体的に、海洋工事のコンクリート構造の鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フィルム、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋工事の鉄筋コンクリートは、長期にわたって海水や海風等環境におかれているので、よく腐食したり破壊されたりする一方で、メンテナンスされにくく、メンテナンスをしようとしてもできないこともある。従って、海洋工事におけるコンクリート構造に対する長期の腐食防止は、解決する必要性が大きくなってきている問題であって、海洋資源の開発、海洋工事の構築物の建設、及び海軍の現代化等も非常に重要である。
【0003】
カソード保護に関する基本的な原理は、鉄筋の電気化学腐食原理を利用して、鉄筋に負電流を人為的に印加することにより、局所的な電池における陰極区域を陽極の開回路電位に達させて鉄筋の表面にての電位を均一にして、その上に腐食電流をもう二度流させなくなる。カソード保護は、コンクリートが既に炭化されるか塩素イオンを大量に含む場合、コンクリートの保護層が薄くなり透水性と通気性を有する場合や鉄筋の表面が錆び付き層を有する場合等に用いられる受動的な対抗措置である。カソード保護は、犠牲陽極保護方法と外部印加電流方法に分類される。犠牲陽極保護方法は、作動原理が簡単で、規定外の操作電源と電力装置の必要がなく、施工が簡単で、サービス動態が安定であるが、保護の年限が短くなり、保護範囲が小さくなる欠陥が提示される。従って、新型のカソード保護の技術を早急に開発する必要がある。
【0004】
フォトカソード保護は、新たな電気化学防護の技術であり、現在、金属防護の分野において優れている効果を収めた。その原理は以下である。半導体材料は光照の輻射に晒す場合、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、正孔から光誘起電子を分離できる。半導体の伝導帯電位は金属の自己腐食電位よりも低い場合、光誘起電子がそれと電気的接続を形成した金属に伝達でき、当該金属の表面に集中でき、そして金属のカソード保護を実現できる。当該技術における一番明らかな特徴は、常温常圧下で半導体光電材料、光、大気及び水のみを用いて金属の耐食性保護を実現できるので、腐食と防護の分野においてとても魅力的な応用の見込みがある。
【0005】
しかし、目下、フォトカソード保護は、紫外線への応答により太陽スペクトルとよく対応できないTiO2を多く採用しているので、太陽エネルギーを有効に利用することができない。一層重要なのは、光陽極半導体TiO2の伝導帯電位が十分に低くないので、光誘起電子が高速で保護しようとする鉄筋に伝達できない又は保護しようとする鉄筋に全く伝達できなくいので、光電気化学カソード保護の効果は希望のレベルに達すことができない。
【0006】
Ce2S3は、狭バンドギャップ材料であり、ナノメートル顔料と光触媒体の調製によく用いられる。Ce2S3は、可視域にとても高い吸収性があり、また電気伝導電位が比較的低くなるので、海洋工事のコンクリート構造の鉄筋に対するカソード保護を実現し得る。
【0007】
従って、上記の先行技術における欠点に対して改善された技術案を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、先行技術に存在した課題を解決するために、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルム、その製造方法及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を実現するように、本発明は、以下の技術案を提供する。
水熱反応により清潔な導電性基板にTiO2ナノワイヤフィルムを製造するステップIと、
二次水熱反応によりTiO2ナノワイヤフィルムでCe2S3を生成することでTiO2-Ce2S3を準備するステップIIと、
光誘起還元法によりAg-TiO2-Ce2S3を準備するステップIIIと、
を含む、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法である。
【0010】
上記のような鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法であれば、好ましくは、ステップIは、具体的に、
FTO伝導性ガラス又はITO伝導性ガラスとなる清潔な導電性基板は、一層のTiO2ゾルがスピンコーティングされて高温で焙焼された後に取り出され、TiO
2
ゾルがスピンコーティングされた導電性基板はチタン酸ブチルと濃塩酸との体積比が1:10-1:1000となる混合溶液に加えられて、水熱反応を行い、反応器が冷却された後に水熱反応により得られた導電性基板を洗浄して乾燥し、清潔な導電性ガラスの表面にTiO2ナノワイヤフィルムを製造して取得する、TiO2
ナノワイヤフィルムを準備するステップである。
【0011】
上記のような鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法であれば、好ましくは、ステップIにおける高温での焙焼の後の取り出しは、具体的に、高温になるように焙焼の昇温速度5―20℃/ minで400-800℃に昇温して0.5-10時間保温し、後に130-170℃に冷却した後に取り出すように行う。
【0012】
上記のような鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法であれば、好ましくは、ステップIにおける水熱反応は、具体的に、90-200℃にて8-24時間行い、
ステップIIにおける二次水熱反応は、具体的に、90-200℃にて8-24時間行う。
【0013】
上記のような鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法であれば、好ましくは、前記TiO2ゾルを準備するプロセスは、具体的に、
チタン酸ブチルと無水アルコールの体積比が1:2-1:20となり、氷酢酸とチタン酸ブチルの体積比が1:5-1:30となり、
濃硝酸と水が体積比1:1-1:20で混合された硝酸溶液であって、水とエタノールが体積比1:1-1:100で混合されたエタノール溶液であって、
フラスコには、前記無水アルコールが加えられて室温で激しく攪拌され、チタン酸ブチルと氷酢酸を順次滴下し、滴下済みに、20分で攪拌し続けて均一で透明な淡黄色溶液を得って、前記淡黄色溶液が激しく攪拌されているうちに、前記硝酸溶液と前記エタノール溶液が体積比1:1で混合されておいた硝酸-エタノール溶液を滴下し、滴下済みに1時間攪拌し続けて均一で前記透明なTiO2ゾルを取得するように行う。
【0014】
上記のような鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法であれば、好ましくは、ステップIIは、具体的に、
セリウムソースが硝酸セリウム、塩化セリウム、酢酸セリウム又はクエン酸セリウムなどセリウムを含む有機塩又は無機塩となる、セリウムソースの溶液であって、
硫黄ソースがチオ尿素、チオアセトアミド又は亜硫酸ナトリウムなど硫黄を含む有機塩又は無機塩となる、硫黄含有の溶液であって、
前記セリウムソースの溶液と前記硫黄ソースの溶液のモル濃度がともに0.01mol/L-1mol/Lであって、TiO2-FTOは、前記セリウムソースと前記硫黄ソースのモル比が1:1-1:100となる前記セリウムソースの溶液と前記硫黄ソースの溶液の混合溶液に加えられて、二次水熱反応を行い、反応器が冷却された後に得られた溶液を洗浄して乾燥して、TiO2-Ce2S3を準備する。
【0015】
上記のような鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法であれば、好ましくは、ステップIIIは、具体的に、
AgNO3水溶液と安定剤を一定の体積比で混合し攪拌しているうちにKBH4水溶液を添加することで、Agを含む還元溶液を得って、Agを含む還元溶液をTiO2-Ce2S3の表面にスピンコーティングした又は加えた後、光源により当該TiO2-Ce2S3の表面を1-200時間照射するように行う。
【0016】
上記のような鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法であれば、好ましくは、
前記安定剤はポリゼニールピロリドン又はクエン酸塩であって、
前記AgNO3水溶液の濃度は0.01mmol/L-0.1mol/Lであって、
前記KBH4水溶液の濃度は0.01mmol/L-1mol/Lであって、
前記AgNO3水溶液と前記安定剤の体積比が1:1.5-1:100となり、
前記光源は、タングステンハロゲン電球、キセノン灯や太陽光である。
【0017】
鉄筋のフォトカソード保護用のフォト陽極フィルムであって、前記フォト陽極フィルムはAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムであって、Zタイプヘテロ結合フォト陽極フィルムである。
【0018】
鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムは、海洋工事のコンクリート構造の鉄筋のフォトカソード保護フォト陽極フィルムとする、用途である。
【発明の効果】
【0019】
本発明が製造したAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムは、海洋工事のコンクリート構造の鉄筋のフォトカソード保護用のフォト陽極フィルムとして応用できる。当該複合フィルムは、可視光線の吸収と利用を増強でき、Ag-TiO2-Ce2S3の吸収帯を860nmに赤移動させることにより光利用の効率を高める。ヘテロ結合構造は正孔から光誘起電子を効果に分離することに有利であって、またAg量子ドットを導入することで光誘起電荷キャリアの分離と伝達をさらに促すことができる。単純なTiO2やCe2S3と比較すると、本発明が製造した複合フィルムは、海洋工事のコンクリート鉄筋のフォトカソード保護に対する光触媒活性を著しく向上させることができ、海洋工事のコンクリート鉄筋にフォトカソード保護を効率的な実現でき、海洋工事のコンクリート構造の耐久性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に製造されたAg-TiO
2-Ce
2S
3のSEMであり、左図は5000倍で拡大したSEMであり、右図は10000倍で拡大したSEMである。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1に製造されたTiO
2ナノワイヤフィルム、Ce
2S
3フィルム、Ag-TiO
2-Ce
2S
3のカップリング鉄筋に断続的光を照射することで得られた光誘起開回路電位(OCP)である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例2に製造されたTiO
2ナノワイヤフィルム、Ce
2S
3フィルム、Ag-TiO
2-Ce
2S
3の光誘起電流-タイム(J-t)カーブである。
【
図4】
図4は、本発明の実施例3に製造されたTiO
2ナノワイヤフィルム、Ag-TiO
2-Ce
2S
3のモット-ショットキ(M-S)カーブである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例4に製造されたTiO
2ナノワイヤフィルム、Ag-TiO
2-Ce
2S
3のフォト応答性能テストパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルム、その製造方法、及び当該Ag-TiO2-Ce2S3複合フィルムを、海洋工事のコンクリート構造の鉄筋のフォトカソード保護のフォト陽極フィルムとする用途を提供する。
【0022】
本発明は、Ag-TiO2-Ce2S3複合フィルムを海洋工事のコンクリート構造のフォトカソード保護用のフォト陽極として採用し、ヘテロ結合構造とAg量子ドットの導入は光に対する吸収利用の効率を著しく高め、光誘起電子の分離効率を向上できる。Ag-TiO2-Ce2S3の吸収帯端を860nmに赤方移動させることにより光利用の効率を高めることができる。Ce2S3の伝導帯と価電子帯の位置はTiO2の伝導帯と価電子帯の位置とマッチすることによりZタイプ電子伝導経路を構成できるので、光誘起電子の分離効率を向上させるだけでなく、低い伝導帯電位を留保するもでき、光誘起電子はフォト陽極から鉄筋の表面までに伝達することに便利である。Ag量子ドットを導入するとその表面にプラズマの共振効果を利用できるので、光に対する吸収能力を強める一方で、Ce2S3の価電子帯の正孔を捕獲してTiO2の伝導帯電子と荷電再結合を行うことでZタイプ電子伝導経路を構成でき、よって誘起電荷キャリアの分離と伝達をさらに促すことができる。本発明のZタイプヘテロ結合となるAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムは、鉄筋にフォトカソード保護電流を提供し、海洋工事のコンクリート鉄筋についてフォトカソード保護を効率的な実現し、海洋工事のコンクリート構造の耐久性を改善することができる。
【0023】
本発明は、
水熱反応により清潔な導電性基板にTiO2ナノワイヤフィルムを製造するステップIと、
二次水熱反応によりTiO2ナノワイヤフィルムでCe2S3を製造することでTiO2-Ce2S3を製造して取得するステップIIと、
光誘起還元法によりAg量子ドットをTiO2-Ce2S3の表面に取得する、即ちAg-TiO2-Ce2S3を生じるステップIIIと、
を具体的に含む、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フォト陽極フィルムの製造方法を提供する。
【0024】
本発明の具体的な実施例における製造方法は、
清潔な導電性基板には、一層のTiO2ゾルがスピンコーティングされて高温で焙焼された後に取り出され、TiO
2
ゾルがスピンコーティングされた導電性基板はチタン酸ブチルと濃塩酸の体積比が1:10-1:1000(例えば、1:20、1:50、1:100、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900)となる混合溶液に加えられて、水熱反応を行い、反応器が冷却された後に水熱反応により得られた導電性基板を洗浄して乾燥し、清潔な導電性ガラスの表面にTiO2ナノワイヤフィルムを製造して取得する、TiO2
ナノワイヤフィルムを準備するステップIと、
TiO2-FTOは、セリウムソースの溶液と硫黄ソースの溶液との混合溶液に加えられて、二次水熱反応を行い、反応器が冷却された後に得られた溶液を洗浄して乾燥する、TiO2-Ce2S3を準備するステップIIと、
AgNO3水溶液と安定剤を体積比1:1.5―1:100(例えば、1:2、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90)で混合し攪拌しているうちにKBH4水溶液を添加することで、Agを含む還元溶液を得、Agを含む還元溶液をTiO2-Ce2S3の表面にスピンコーティングした又は加えた後、光源により1-200時間(例えば、5時間、10時間、20時間、50時間、100時間、200時間)照射するように行う、Ag-TiO2-Ce2S3を準備するステップIIIと、を具体的に含む。
【0025】
導電性基板はFTO伝導性ガラス又はITO伝導性ガラスとなる。清潔な導電性基板を製造する具体的なステップは、導電性基板を順に、洗浄剤の水溶液を内蔵する容器、NaOHのエタノール溶液を内蔵する容器、エタノールと脱イオン水を内蔵する容器に入れて、それぞれの前記容器に超音波洗浄を10-30分行って、そして使用のために洗浄した導電性基板を40-100℃にて乾燥しておくこと、を含む。
【0026】
洗浄剤は、粉末洗剤、石けん、洗浄液又は衣料用洗剤である。
【0027】
TiO2ゾルを準備するプロセスは、具体的に、
チタン酸ブチルと無水アルコールの体積比が1:2-1:20(例えば、1:5、1:8、1:10、1:15)となり、氷酢酸とチタン酸ブチルの体積比が1:5-1:30(例えば、1:8、1:10、1:15、1:20、1:25)となり、
濃硝酸と水が体積比1:10-1:20(例えば、1:1、1:5、1:10、1:15)で混合された硝酸溶液であって、水とエタノールが体積比1:1-1:100(例えば、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90)で混合されたエタノール溶液であって、
フラスコには、前記無水アルコールが加えられて室温で激しく攪拌され、前記チタン酸ブチルと前記氷酢酸を順次滴下し、滴下済みに20分で攪拌し続けて均一で透明な淡黄色溶液を得って、前記淡黄色溶液が激しく攪拌されて硝酸とアルコールが体積比1:1で混合された硝酸-エタノール溶液を滴下して、滴下済みに、1時間攪拌し続けて均一で前記透明なTiO2ゾルを準備することである。
【0028】
本発明の具体的な実施例のステップIにおける高温での焙焼の後の取り出しは、具体的に高温になるように焙焼の昇温速度5―20℃/ min(例えば、6℃/ min、8℃/ min、10℃/ min、15℃/ min)で400-800℃(例えば、500℃、600℃、700℃)に昇温され、該温度にて0.5-10時間(例えば、1時間、2時間、5時間、8時間、10時間)保温し、後に130-170℃(例えば、140℃、150℃、160℃)に冷却した後に取り出すように行う。
【0029】
本発明の具体的な実施例のステップIにおける水熱反応は、具体的には、90-200℃(例えば、100℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃)にて反応を8-24時間(例えば、10時間、12時間、15時間、18時間、20時間、22時間)行う;二次水熱反応は、具体的には、90-200℃(例えば、100℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃)にて反応を8-24時間(例えば、10時間、12時間、15時間、18時間、20時間、22時間)行う。
【0030】
本発明の具体的な実施例のステップIIにおけるセリウムソースは硝酸セリウム、塩化セリウム、酢酸セリウム又はクエン酸セリウムなど、セリウムを含む有機塩又は無機塩となる;
硫黄ソースはチオ尿素、チオアセトアミド又は亜硫酸ナトリウムなど硫黄を含む有機塩又は無機塩となる;
前記セリウムソースの溶液と前記硫黄ソースの溶液のモル濃度を全部0.01mmol/L-1mol/L(例えば、0.1mmol/L、1mmol/L、10mmol/L、100mmol/L)として、セリウムソースと硫黄ソースのモル比が1:1-1:100(例えば、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90)となる。
【0031】
本発明の具体的な実施例における安定剤はポリゼニールピロリドン又はクエン酸塩である。
【0032】
ステップIIIにおけるAgNO3水溶液の濃度は0.01mmol/L-0.1mol/L(例えば、0.1mmol/L、1mmol/L、10mmol/L、50mmol/L)である;KBH4水溶液の濃度は0.01mmol/L-0.1mol/L(例えば、0.1mmol/L、1mmol/L、10mmol/L、50mmol/L)である。
【0033】
ステップIIIにおける光源は、タングステンハロゲン電球、キセノン灯や太陽光である。
【0034】
<実施例1>
本発明は、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムの製造方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0035】
水熱反応の実験の前に、フィルムとガラスとの付着力を高めるために、導電性ガラスを完全に洗浄する。FTO導電性基板を順に粉末洗剤の水を内蔵するビーカー、NaOHのエタノール溶液を内蔵するビーカー、エタノールと脱イオン水を内蔵するビーカーに入れ、それぞれのビーカーに超音波洗浄を15分行って、そして使用のために洗浄した導電性基板を60℃にて乾燥する。二口フラスコには、前記無水アルコール30mlが加えられて室温で激しく攪拌され、チタン酸ブチル10mlと氷酢酸2mlを順次滴下し、滴下済み20分で攪拌し続けて均一で透明な淡黄色溶液を得、前記淡黄色溶液が激しく攪拌されているうちに硝酸-エタノール溶液(硝酸溶液は濃硝酸と水が体積比1:10で混合されたもので、エタノール溶液は水とエタノールが体積比1:50で混合されたもので、硝酸溶液とエタノール溶液が体積比1:1で混合された)を滴下して、滴下済みに、1時間攪拌し続けて均一で前記透明なTiO2ゾルを得る。得られたTiO2ゾルを2-3滴導電性ガラスの中間にスピンコーティングし、その後、導電性ガラスを鉛直方向に坩堝に入れて、昇温速度5℃/ minで450℃に昇温した後、1時間保温した後、温度を150℃前後に下げて導電性ガラスを取り出す。
【0036】
濃塩酸6mLとチタン酸ブチル100μLを混合し均一に攪拌した後、反応器のポリテトラフルオロエチレン製炉内ライニング内に移し、TiO
2
ゾルがスピンコーティングされた導電性基板は反応器に加えられて180℃にて反応を8時間行う。反応器が冷却された後に反応により得られた導電性基板を洗浄して乾燥し、FTOの表面にTiO2ナノワイヤフィルムを製造して取得する。
【0037】
セリウムソースと硫黄ソースのモル比が1:20となるように硝酸セリウム(Ce(NO3)3、0.007mol/L)とチオアセトアミド(TAA、0.014mol/L)の混合溶液を準備し、当該混合溶液を攪拌した後に反応器の炉内ライニング内に移し、前記TiO2-FTOを下向きに反応器の炉内ライニング内に入れて置く。今度、水熱反応を180℃にし、反応時間を12時間とし、反応が終わった後、反応器の内部温度が室温に下がるまでに待って、TiO2-Ce2S3複合フィルムを製造して取得する。
【0038】
比較グループとしてCe2S3フィルムを準備する具体的な方法は、硝酸セリウム(Ce(NO3)3、0.007mol/L)とチオアセトアミド(TAA、0.014mol/L)の混合溶液を準備し、当該混合溶液を攪拌した後に反応器の炉内ライニング内に移し、水で洗浄したFTOを下向きに反応器の炉内ライニング内に入れて置く。今度、水熱反応を180℃とし、反応時間を12時間とし、反応が終わった後、反応器の内部温度が室温に下がるまでに待って、Ce2S3フィルムを製造し得る。
【0039】
クエン酸トリナトリウム二水和物0.2mmol/LとAgNO3水溶液0.1mmol/Lを準備し攪拌して、攪拌中、その混合溶液にKBH4溶液0.1mmol/Lを加えて、溶液200mLを準備し、それをTiO2-Ce2S3の表面にスピンコーティングし、次に、タングステンハロゲン電球で100時間照射することでAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムを製造して取得する。
【0040】
図1は、本発明の実施例に準備された試料の形態と構成を示す。Ag-TiO
2-Ce
2S
3複合フィルムは直径100-200nmのナノロッドアレイ構造であることを見ることができる。TiO
2ナノロッドの表面にはCe
2S
3修飾やAg修飾があることと、TiO
2ナノロッドアレイの頂部と側面が互いに接続されたCe
2S
3ナノシートネットワークで覆われることを観察できる。
【0041】
上記のように準備したAg-TiO
2-Ce
2S
3複合フィルムについてフォトカソード保護のテストを行う。準備しておいたフォト陽極材料Ag-TiO
2-Ce
2S
3ナノ複合フィルムは、金属とカップリングし、開回路電位(Open Circuit Potential、OCPと略称する)のテストを行う。フォト陽極材料Ag-TiO
2-Ce
2S
3ナノ複合フィルムは断続的光の照射下で、それが海洋工事のコンクリート構造の鉄筋とカップリングした後の電位変化を検出することで、鉄筋に対するフォト陽極材料のフォトカソード保護性能を判断する。同じ方法でTiO
2ナノワイヤとCe
2S
3ナノフィルムの機能についてテストをして、
図2は、その検出結果を示す。該図から、TiO
2は光照状態で電位が低下しなく、黒暗状態で電位が高まって、ここでTiO
2が鉄筋にカソード保護電流を提供できないことが分かる。しかし、光照状態でAg-TiO
2-Ce
2S
3ナノ複合フィルムとカップリングした鉄筋の腐食電位が-0.5Vから-1V前後に、500mVで低下することは、複合フィルムが鉄筋にカソード保護電流を効率良く提供できることを証明する。
【0042】
<実施例2>
本発明は、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムの製造方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0043】
水熱反応の実験の前に、フィルムとガラスとの付着力を高めるために、導電性ガラスを完全に洗浄する。FTO導電性基板を順に石けん水を内蔵するビーカーに、NaOHのエタノール溶液を内蔵するビーカーに、エタノールと脱イオン水を内蔵するビーカーに入れて、それぞれのビーカーに超音波洗浄を15分行って、そして使用するために洗浄した導電性基板を60℃にて乾燥する。二口フラスコには、前記無水アルコール30mlが加えられて室温で激しく攪拌され、チタン酸ブチル10mlと氷酢酸2mlを順次滴下し、滴下済みに20分攪拌し続けて均一で透明な淡黄色溶液を得、前記淡黄色溶液が激しく攪拌されているうちに硝酸-エタノール溶液(硝酸溶液は濃硝酸と水が体積比1:20で混合されたもので、エタノール溶液は水とエタノールが体積比1:10で混合されたもので、硝酸溶液とエタノール溶液が体積比1:1で混合された)を滴下して、滴下済みに、1時間攪拌し続けて均一で前記透明なTiO2ゾルを得る。配合しておいたTiO2ゾルを2-3滴導電性ガラスの中間にスピンコーティングし、その後導電性ガラスを鉛直方向に坩堝に入れておいて、昇温速度5℃/ minで600℃に昇温したあと0.5時間保温した後、温度を150℃に下げて、その後導電性ガラスを取り出す。
【0044】
濃塩酸3mLとチタン酸ブチル40μLを混合し均一に攪拌した後、反応器のポリテトラフルオロエチレン製炉内ライニング内に移し、TiO
2
ゾルがスピンコーティングされた導電性基板は反応器に加えられて100℃にて反応を20時間行う。反応器が冷却された後に反応により得られた導電性基板を洗浄して乾燥し、FTOの表面にTiO2ナノワイヤフィルムを製造して取得する。
【0045】
セリウムソースと硫黄ソースのモル比が1:50となるように塩化セリウム0.07mol/Lと亜硫酸アンモニウム0.04mol/Lの混合溶液を準備し、当該混合溶液をある程度で攪拌した後に反応器の炉内ライニング内に移し、次に前記TiO2-FTOを下向きに反応器の炉内ライニング内に入れておく。当該実施例における二次水熱反応を120℃とし、反応時間を20時間とし、反応が終わった後、反応器の内部温度が室温に下がるまでに待って、TiO2-Ce2S3複合フィルムを製造して取得する。
【0046】
比較グループとしてCe2S3フィルムを準備する方法は、塩化セリウム0.07mol/Lと亜硫酸アンモニウム0.04mol/Lの混合溶液を準備し、当該混合溶液を攪拌した後に反応器の炉内ライニング内に移し、水で洗浄したFTOを下向きに反応器の炉内ライニング内に入れておく。当該実施例における二次水熱反応を120℃とし、反応時間を20時間とし、反応が終わった後、反応器の内部温度が室温に下がるまでに待って、Ce2S3複合フィルムを製造して取得する。
【0047】
クエン酸トリナトリウム二水和物40mmol/LとAgNO3水溶液100mmol/Lを準備し攪拌しているうちに、その混合溶液にKBH4溶液0.5mmol/Lを加えて、溶液200mLを準備し、当該溶液を3-4滴TiO2-Ce2S3の表面に滴下し、次にキセノン灯で200時間照射することでAg-TiO2-Ce2S3を製造して取得する。
【0048】
断続的光の照射下でフォト陽極の試料を光誘起電流-タイム(Potoinducedcurrent-time,J-tと略称する)カーブでテストを行う。J-tカーブによりAg-TiO
2-Ce
2S
3複合フォト陽極フィルム複合材料の光電化学を増強するメカニズムについて研究を行う。同じな方法でそれぞれTiO
2ナノワイヤとCe
2S
3フィルムについて性能のテストを行う。
図3は、結果を示し、Ag-TiO
2-Ce
2S
3の光誘起電子が著しく増加し、光照の電流密度がTiO
2の電流密度に5倍以上になることが分かる。
【0049】
<実施例3>
本発明は、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムの製造方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0050】
水熱反応の実験の前に、フィルムとガラスとの付着力を高めるために、導電性ガラスを完全に洗浄する。FTO導電性基板を順に衣料用洗剤水を内蔵するビーカー、NaOHのエタノール溶液を内蔵するビーカー、エタノールと脱イオン水を含有するビーカーに入れて、それぞれのビーカーに超音波洗浄を15分行って、そして使用するために洗浄した導電性基板を60℃にて乾燥する。二口フラスコには、前記無水アルコール30mlが加えられて室温で激しく攪拌され、チタン酸ブチル10mlと氷酢酸2mlを順次滴下し、滴下済みに20分攪拌し続けて均一で透明な淡黄色溶液を得、前記淡黄色溶液が激しく攪拌されているうちに配合しておいた硝酸-エタノール溶液(硝酸溶液は濃硝酸と水が体積比1:20で混合されたもので、エタノール溶液は水とエタノールが体積比1:100で混合されたもので、硝酸溶液とエタノール溶液が体積比1:1で混合された)を滴下し、滴下済み、1時間攪拌し続けて均一で前記透明なTiO2ゾルを準備する。得られたTiO2ゾルを2-3滴導電性ガラスの中間にスピンコーティングし、その後に導電性ガラスを鉛直方向に坩堝に入れておいて、昇温速度5℃/ minで450℃に昇温した後1時間保温した後、温度を150℃に下げて、その後に導電性ガラスを取り出す。
【0051】
濃塩酸10mLとチタン酸ブチル500μLを混合し均一に攪拌した後、反応器のポリテトラフルオロエチレン製炉内ライニング内に移し、TiO
2
ゾルがスピンコーティングされた導電性基板は反応器に加えられて180℃にて反応を8時間行う。反応器が冷却された後に反応により得られた導電性基板を洗浄して乾燥し、FTOの表面にTiO2ナノワイヤフィルム(TiO2-FTOと表記)を製造して取得する。
【0052】
セリウムソースと硫黄ソースのモル比が1:80となるように塩化セリウム0.05mol/Lと亜硫酸アンモニウム0.4mol/Lの混合溶液を準備し、当該混合溶液をある程度で攪拌した後に反応器の炉内ライニング内に移し、前記TiO2-FTOを下向きに反応器の炉内ライニング内に入れておいた。今度、水熱反応を150℃とし、反応時間を15時間とし、反応が終わった後、反応器の内部温度が室温に下がるまでに待って、TiO2-Ce2S3複合フィルムを製造して取得する。
【0053】
ポリゼニールピロリドン0.01mmol/LとAgNO3水溶液0.1mmol/Lを準備し攪拌しているうちに、その混合溶液にKBH4水溶液0.6mmol/Lを加えて、溶液を10mL準備し、TiO2-Ce2S3の表面にスピンコーティングし、次にタングステンハロゲン電球で80時間照射することでAg-TiO2-Ce2S3を製造して取得する。
【0054】
比較グループとしてCe2S3フィルムを準備して、その具体的な方法は、塩化セリウム0.05mol/Lと亜硫酸アンモニウム0.4mol/Lの混合溶液を準備し、当該混合溶液をある程度で攪拌した後に反応器の炉内ライニング内に移し、水で洗浄したFTOを下向きに反応器の炉内ライニング内に入れておく。今度、水熱反応を150℃とし、反応時間を15時間とし、反応が終わった後、反応器の内部温度が室温に下がるまでに待って、Ce2S3フィルムを製造して取得する。
【0055】
本実施例に準備したフォト陽極材料Ag-TiO
2-Ce
2S
3についてモット-ショットキ(M-S)カーブでテストを行い、平帯電位を得る。同じな方法でTiO
2ナノワイヤについて性能をテストする。結果は、
図4の示すようである。TiO
2の平帯電位は-0.24Vであるが、Ag-TiO
2-Ce
2S
3複合フォト陽極フィルムの平帯電位は-1.16Vであり、電子伝導経路がZタイプ電子伝導なので、複合フィルムの伝導帯電位が比較的低い電位に維持されたこととなると分かる。よって、光照状態で海洋工事のコンクリート構造の鉄筋にカソード保護を提供できる。
【0056】
<実施例4>
本発明は、鉄筋のフォトカソード保護用のAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムの製造方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0057】
水熱反応の実験の前に、フィルムとガラスとの付着力を高めるために、導電性ガラスを完全に洗浄する。FTO導電性基板を順に石けん水を内蔵するビーカー、NaOHのエタノール溶液を内蔵するビーカー、エタノールと脱イオン水を内蔵するビーカーに入れて、それぞれのビーカーに超音波洗浄を15分に行って、そして使用するために洗浄した導電性基板を60℃にて乾燥する。二口フラスコには、前記無水アルコール30mlが加えられて室温で激しく攪拌され、チタン酸ブチル8mlと氷酢酸1mlを順次滴下し、滴下済みに20分で攪拌し続けて均一で透明な淡黄色溶液を得、前記淡黄色溶液が激しく攪拌されているうちに配合しておいた硝酸-エタノール溶液(硝酸溶液は濃硝酸と水が体積比1:20で混合されたもので、エタノール溶液は水とエタノールが体積比1:100で混合されたもので、硝酸溶液とエタノール溶液が体積比1:1で混合された)を滴下し、滴下済み、1時間攪拌し続けて均一で前記透明なTiO2ゾルを得る。得られたTiO2ゾルを2-3滴導電性ガラスの中間にスピンコーティングし、その後に導電性ガラスを鉛直方向に坩堝に入れておいて、昇温速度5℃/ minで700℃に昇温したあと、1時間保温した後、温度を140℃に下げて、その後に導電性ガラスを取り出す。
【0058】
脱イオン水3mL、塩酸3mL、及びチタン酸ブチル200μLを混合し均一に攪拌した後、反応器のポリテトラフルオロエチレン製炉内ライニング内に移し、TiO
2
ゾルがスピンコーティングされた導電性基板は反応器に加えられて100℃にて反応を18時間行う。反応器が冷却された後に反応により得られた導電性基板を洗浄して乾燥し、FTOの表面にTiO2ナノワイヤフィルム(TiO2-FTOを記す)を製造して取得する。
【0059】
セリウムソースと硫黄ソースのモル比が1:80となるようにクエン酸セリウム10mmol/Lとチオアセトアミド0.05mol/Lの混合溶液を準備し、当該混合溶液をある程度で攪拌した後に反応器の炉内ライニング内に移し、次に前記TiO2-FTOを下向きに反応器の炉内ライニング内に入れておく。今度、水熱反応を140℃とし、反応時間を20時間とし、反応が終わった後、反応器の内部温度が室温に下がるまでに待って、TiO2-Ce2S3複合フィルムを製造して取得する。
【0060】
クエン酸トリナトリウム二水和物2mmol/LとAgNO3水溶液0.1mol/Lを準備し攪拌しているうちに、その混合溶液にKBH4水溶液1mmol/Lを加えて、溶液200mLを準備しTiO2-Ce2S3の表面にスピンコーティングし、太陽光で180時間照射することでAg-TiO2-Ce2S3を製造して取得する。
【0061】
本実施例に準備したフォト陽極材料についてフォト応答性能をテストする。同じな方法でTiO
2ナノワイヤに性能をテストする。結果は、
図5の示すようである。TiO
2の吸収帯端は420nmにあるが、Ag-TiO
2-Ce
2S
3複合フォト陽極フィルムの吸収帯端は860nmにあって顕著な赤移動があり、フォト陽極の光利用の効率を高める。
【0062】
要約すれば、本発明が準備したAg-TiO2-Ce2S3複合フィルムは、海洋工事のコンクリートの鉄筋のフォトカソード保護用のフォト陽極フィルムとして応用できる。複合フィルムは、可視光線の吸収と利用を増強でき、Ag-TiO2-Ce2S3の吸収帯を860nmに赤方移動させることにより光利用の効率を高める。ヘテロ結合構造は正孔から光誘起電子を効果に分離することに有利であって、またAg量子ドットを導入することで光誘起電荷キャリアの分離と伝達をさらに促す。単純なTiO2やCe2S3と比較すると、本発明が準備した複合フィルムは、海洋工事のコンクリートの鉄筋構造のフォトカソード保護に対する光触媒活性を著しく向上でき、海洋工事のコンクリート構造の鉄筋にフォトカソード保護を効率的な実現でき、海洋工事のコンクリート構造の耐久性を改善できる。
【要約】 (修正有)
【課題】海洋工事用鉄筋のフォトカソード保護用複合フォト陽極フィルムであって、可視光線の吸収と利用を増強でき、光利用の効率を高め、海洋工事のコンクリート構造の鉄筋のフォトカソード保護に対する光触媒活性を明らかに向上でき、海洋工事のコンクリートの鉄筋にフォトカソード保護を効率的な実現できる、複合フォト陽極フィルム、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】水熱反応により清潔な導電性基板にTiO
2ナノワイヤフィルムを製造するステップIと、二次水熱反応によりTiO
2ナノワイヤフィルムでCe
2S
3を製造することでTiO
2-Ce
2S
3を準備して取得するステップIIと、光誘起還元法によりAg-TiO
2-Ce
2S
3を準備するステップIIIとを含む海洋工事用鉄筋の耐腐性を向上させるフォト陽極フィルムの製造方法を提供する。
【選択図】
図1