(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】情報共有システム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/62 20130101AFI20221026BHJP
G16H 10/60 20180101ALI20221026BHJP
【FI】
G06F21/62 354
G16H10/60
(21)【出願番号】P 2019042952
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519320697
【氏名又は名称】株式会社OPExPARK
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山北 博士
【審査官】吉田 歩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126652(JP,A)
【文献】特開2006-343944(JP,A)
【文献】特開2014-131217(JP,A)
【文献】特開2018-185796(JP,A)
【文献】特開2010-044625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0242144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/62
G16H 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の診察、検査、及び治療のうち少なくとも一つに使用される複数の医療用のデバイスから取得されるデバイス情報のそれぞれに、前記デバイス情報が取得された時刻及び前記デバイス情報の種類を表す情報を含んだタグ情報を関連づけた複数のタグ付きデバイス情報を、限定された利用者である特定利用者によって使用される内部ネットワークから、取得するように構成された情報取得部(63:S110)と、
前記情報取得部により取得された前記タグ付きデバイス情報のうち、前記特定利用者以外の利用者にも使用される外部ネットワークを介して前記特定利用者以外の利用者と共有することが要求される前記タグ付きデバイス情報を公開デバイス情報として、前記公開デバイス情報毎に、該公開デバイス情報に含まれた患者個人が特定される情報である個人情報が匿名化されるように前記公開デバイス情報を加工するように構成された匿名化部(63:S120)と、
前記匿名化部により加工された前記公開デバイス情報を匿名化デバイス情報として、同一時間に対応づけられる複数の前記匿名化デバイス情報を1画面で表示するための画像データである統合画像データを生成するように構成された画像生成部(63:S130)と、
前記統合画像データによって表示される統合画像から前記個人情報が示された要匿名化部位を抽出するように構成された確認部(63:S140)と、
前記確認部にて前記要匿名化部位が抽出されなかった場合に、前記外部ネットワークを介した前記匿名化デバイス情報の配信を許可するように構成された情報提供部(63:S150,S170)と、
を備える情報共有システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報共有システムであって、
前記確認部では、前記統合画像に対して文字認識及び顔認識のうち少なくとも一方を行う、
情報共有システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の情報共有システムであって、
前記確認部は、
前記統合画像を表示するように構成された表示部(62)と、
前記統合画像中において匿名化が必要な部位を入力する操作を受け付けるように構成された入力部(61)と、
備え、前記入力部が前記操作を受け付けた場合に、前記個人情報が抽出されたと判定する
情報共有システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の情報共有システムであって、
前記確認部により、前記統合画像から前記個人情報が抽出された場合に、抽出された前記個人情報が匿名化されるように前記匿名化デバイス情報を再加工するように構成された再匿名化部(63:S150,S160)
を更に備える情報共有システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術や治療で使用される医療用の機器から取得した医療情報を共有する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、病院が、患者の医療情報の分析及び統計処理等を外部の研究機関に委託する場合などに、第三者に知られてはならない情報を匿名化して送信する技術が記載されている。
【0003】
具体的には、どの情報をどのように匿名化するかを指定し、取得した医療画像を、匿名化テンプレートを用いて、医療画像に関連したメタデータを除去することで匿名化し、ネットワークを介してクラウドサーバに匿名化された医療画像をアップロードする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者等による詳細な検討の結果、特許文献1に記載の従来技術には、以下の課題があることが見出された。すなわち、従来技術では、メタデータに明示された情報には対処できるが、例えば、偶然に画像に映り込んでいる書類や名札等に記載された情報等には対処できず、これらの情報を漏洩させてしまうおそれがあった。
【0006】
本開示の1つの局面は、不特定多数が利用するネットワークを介して共有される医療情報からの個人情報の漏洩を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、情報共有システムであって、情報取得部(63:S110)と、匿名化部(63:S120)と、画像生成部(63:S130)と、確認部(63:S140)と、情報提供部(63:S150,S170)と、を備える。
【0008】
情報取得部は、複数のタグ付きデバイス情報を、限定された利用者である特定利用者によって使用される内部ネットワークから取得する。タグ付きデバイス情報は、患者の診察、検査、及び治療のうち少なくとも一つに使用される複数の医療用のデバイスから取得されるデバイス情報のそれぞれに、デバイス情報が取得された時刻及びデバイス情報の種類を表す情報を含んだタグ情報を関連づけた情報である。
【0009】
匿名化部は、公開デバイス情報毎に、公開デバイス情報に含まれた患者個人が特定される情報である個人情報が匿名化されるように公開デバイス情報を加工する。公開デバイス情報は、情報取得部により取得されたタグ付きデバイス情報のうち、特定利用者以外の利用者にも使用される外部ネットワークを介して特定利用者以外の利用者と共有することが要求されるタグ付きデバイス情報である。
【0010】
画像生成部は、匿名化部により加工された公開デバイス情報を匿名化デバイス情報として、同一時間に対応づけられる複数の匿名化デバイス情報を1画面で表示するための画像データである統合画像データを生成する。確認部は、統合画像データによって表示される統合画像から個人情報が示された要匿名化部位を抽出する。情報提供部は、確認部にて要匿名化部位が抽出されなかった場合に、外部ネットワークを介した匿名化デバイス情報の配信を許可する。
【0011】
このような構成によれば、複数のデバイス情報が、デバイス情報毎に個別に匿名化されるだけでなく、統合画像の状態で実際に匿名化されているか確認された上で、特定利用者以外の利用者と共有されるため、共有されたデバイス情報からの個人情報の漏洩をより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】情報共有システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】情報提供システムの各部の機能を表す機能ブロック図である。
【
図3】タグ付きデバイス情報の構造を示す説明図である。
【
図4】タグ付きコメント情報の構造を示す説明図である。
【
図5】表示APにおいて読み出される情報を示す説明図である。
【
図7】コメント表示を含んだ統合画像の一例を示す説明図である。
【
図8】アップロード処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.全体構成]
図1に示す情報共有システム1は、複数の情報提供システム2と、サーバ7と、複数の外部端末装置8とを備え、これらは通信ネットワーク9を介して互いに接続されている。
【0014】
情報提供システム2は、例えば、病院毎に設置され、患者の診察、検査、及び治療のいずれかに用いられる様々な医療用のデバイスからデバイス情報を取得する。また、情報提供システム2は、それら複数のデバイス情報を時間軸に同期させて表示するための統合情報を生成して、通信ネットワーク9上のサーバ7にアップロードする。なお、情報提供システム2は、患者個人が特定される情報を個人情報として、統合情報に含まれる個人情報を匿名化した上でアップロードする。また、情報提供システム2は、病院に所属する限定された者(以下、特定利用者)が利用する内部ネットワークを形成する。
【0015】
外部端末装置8は、例えば、病院や医科大学など、医者、医療研究者、及び学生等が使用可能な場所に設置される。また、情報提供システム2に属する後述する内部端末装置6は、他の情報提供システム2に対して外部端末装置8として機能する。外部端末装置8は、通信ネットワーク9を介してサーバ7にアップロードされた統合情報を取得し、統合情報に基づく統合画像を閲覧する利用者間の情報共有、及びコミュニケーションを支援するためのアプリケーションを少なくとも実行する。なお、利用者には、統合情報を提供する提供者も含む。つまり、通信ネットワーク9は、特定利用者以外の利用者にも使用される外部ネットワークに相当する。
【0016】
このような情報共有システム1は、例えば、手術後における手術解析や教育用途などの他、手術中におけるリアルタイムな検討やサポートなどにも用いられる。
[2.情報提供システム]
図1に示すように、情報提供システム2は、デバイス群3と、提供処理部4と、データベース5と、内部端末装置6とを備える。
【0017】
[2-1.デバイス群]
デバイス群3は、
図2に示すように、複数のデバイス31A~31Hを備える。各デバイス31A~31Hは、それぞれ、データを生成して提供処理部4に供給する。以下では、複数のデバイス31A~31Hを区別することなく、任意のデバイスを指す場合は、デバイス31と記す。
【0018】
デバイス31は、手術や治療時に使用される医療機器及び医療設備等である。具体的には、医療機器として、例えば、生体情報モニタ、呼吸機能モニタ、循環動態モニタ、鎮静モニタ、麻酔器、輸液ポンプ、シリンジ、血液浄化装置、人工心肺装置、補助循環装置等が挙げられる。医療設備として、例えば、手術ナビゲーションシステム(以下、手術ナビ)、IPカメラ、医療ガスシステム、内視鏡、顕微鏡、電気メス、ドリル、超音照射装置等が上げられる。また、デバイスには、空調システム、アイソレーションシステム等が含まれてもよい。
【0019】
そして、デバイス31から供給されるデータ(以下、デバイス情報)には、デバイス31による計測値、デバイス31から出力される動画や静止画、デバイス31の計測対象や観測対象に関する情報等が含まれてもよい。また、デバイス情報には、デバイス31の使用状況やエラーを含むデバイスの状態、デバイス31自体の設定値、及びデバイス31が扱うパラメータに関する設定値等が含まれてもよい。
【0020】
なお、手術ナビは、手術中における手術器具の3次元位置及び姿勢を取得する装置である。手術器具としては、電気メス及び鉗子の他、顕微鏡等も挙げられる。また、顕微鏡の焦点を3次元位置として特定してもよい。このとき、CT、MRI等により、患者の患部を予め撮影した3次元画像に対応付けて3次元位置を特定する。CTはComputed Tomographyの略であり、MRIはMagnetic Resonance Imagingの略である。
【0021】
[2-2.データベース]
データベース5は、HDD等の大容量メモリによって実現される。HDDは、Hard Disk Driveの略である。データベース5は、
図2に示すように、デバイス情報領域51と、コメント情報領域52と、匿名化情報領域53とを備える。デバイス情報領域51には、タグ付きデバイス情報T_Idvが格納される。コメント情報領域52には、タグ付きコメント情報T_Icmが格納される。匿名化情報領域53には、内部端末装置6による匿名化処理によって匿名化されたタグ付きデバイス情報T_Idvである匿名化デバイス情報、及び同様に匿名化されたタグ付きコメント情報T_Icmである匿名化コメント情報が一時的に格納される。また、タグ付きデバイス情報T_Idv及びタグ付きコメント情報T_Icmを総称して統合情報と称し、匿名化デバイス情報及び匿名化コメント情報を総称して匿名化情報と称する。
【0022】
図3に示すように、タグ付きデバイス情報T_Idvは、第1タグ情報T1と、デバイス情報Idvとを有する。
デバイス情報Idvは、手術、治療又は検査(以下、治療等)中に、デバイス群3に属するいずれかのデバイス31から取得される情報であり、具体的には、計測値及び設定値等を表すキャラクタデータ、及び治療等の様子を表す画像データ等が含まれる。キャラクタデータには、文字、数値、及び記号等が含まれ、画像データには、動画及び静止画のいずれも含まれる。
【0023】
第1タグ情報T1は、デバイス情報Idvに関する情報であり、事例識別タグT11、事例情報タグT12、時間タグT13、及びデータ種別タグT14が少なくとも含まれる。
【0024】
事例識別タグT11は、ある患者に対して治療等が施された場合に、ある期間の間連続して取得される一連のデバイス情報Idvを一意に識別するための識別情報である。事例識別タグT11は、一連のデバイス情報Idvの提供元となった情報提供システム2を識別できるように設定されてもよい。
【0025】
事例情報タグT12は、事例識別タグT11によって識別される治療等に関する情報を示す。具体的には、治療者(例えば、手術であれば執刀医)、病名、及び術名等の他、治療対象者の年齢や性別といった個人情報が含まれる。これに限らず、後日、教育用途等で使用する際に検索項目となり得る情報が含まれてもよい。
【0026】
時間タグT13は、デバイス情報Idvが取得された時刻(以下、取得時刻)を表す情報である。
データ種別タグT14は、デバイス情報Idvの生成元となったデバイス31を特定するための識別情報を含む。なお、一つのデバイス31から複数のデバイス情報Idvが取得される場合は、いずれのデバイス情報Idvであるかを特定するための識別情報も含む。
【0027】
図4に示すように、タグ付きコメント情報T_Icmは、第2タグ情報T2と、コメント情報Icmとを有する。
コメント情報Icmは、内部端末装置6を介して入力される情報であり、具体的には、テキストデータ、音声データ、及び画像データのうち少なくとも一つが含まれる。なお、画像データには、手書きの文字や図を表すビットマップデータ等が含まれてもよい。
【0028】
第2タグ情報T2は、コメント情報Icmに関する情報であり、事例識別タグT21と、コメント識別タグT22と、入力者情報タグT23と、コメント対象タグT24と、時間タグT25と、時間タグT26と、コメント種別タグT27とが少なくとも含まれる。
【0029】
事例識別タグT21は、第1タグ情報T1における事例識別タグT11と同様のものであり、コメント情報Icmの対象となるデバイス情報Idvに対応付けられた事例識別タグT11が用いられる。
【0030】
コメント識別タグT22は、コメント情報Icmを、個々に識別するための情報である。この情報は、コメントに対するコメントを可能にするための情報である。
入力者情報タグT23は、コメントを入力した入力者を識別するための情報である。
【0031】
コメント対象タグT24は、コメントの対象を特定するための情報である。コメント対象には、データ種別タグT14で識別されるデバイス情報Idvの全体又はその一部が含まれてもよい。デバイス情報Idvの一部とは、例えば、デバイス情報Idvがデバイス31による測定値である場合、実際に表示される数字やグラフであってもよい。また、コメント対象には、デバイス情報Idvを特定しない情報全体(すなわち、デバイス情報Idvが表示された画面全体)、及びコメント識別タグT22により特定されるコメントが含まれてもよい。
【0032】
時間タグT25は、コメント対象の取得時刻、即ち、上述の時間タグT13と同じ時間軸の時刻を表す情報である。
時間タグT26は、コメント情報Icmの入力時にコメント対象が指定された時刻を表す情報である。時間タグT26は、統合情報の再生が行われている現在の時刻(以下、再生時刻)を表す。但し、統合情報の再生がリアルタイムで行われている場合、即ち、統合情報の生成と再生とが同時に行われている場合は、時間タグT26は、時間タグT25と同じ値となってもよい。
【0033】
コメント種別タグT27は、コメント情報Icmの形式を表す情報であり、テキストデータ、音声データ、画像データ、音声認識データ、動作解析データ等が含まれてもよい。
[2-3.提供処理部]
図1に戻り、提供処理部4は、CPU4Aと、例えば、RAM、ROM等の半導体メモリ(以下、メモリ4B)と、を有するマイクロコンピュータを備える。
【0034】
提供処理部4は、機能的には、
図2に示すように、複数のプロバイダ41A~41Hと、ミドルウェア43とを備える。以下では、複数のプロバイダ41A~41Hを区別することなく任意のプロバイダを指す場合は、プロバイダ41と記す。
【0035】
各プロバイダ41には、それぞれデバイス31のいずれか一つが接続される。プロバイダ41は、接続されたデバイス31との間で情報のやり取りを仲介する。
ミドルウェア43は、プロバイダ41に接続される様々なデバイス31に対して、プログラミング言語や通信プロトコルの違いよらず、統一的なアクセス手段をプロバイダ41と共に提供する通信インターフェースである。ここでは、ミドルウェア43として、ORiNが用いられる。ORiNは、Open Resource interface for the Networkの略である。
【0036】
ミドルウェア43は、内部端末装置6から情報生成開始の指令が入力されると、プロバイダ41を介してデバイス31からデバイス情報Idvを取得する。一つのデバイス31から取得されるデバイス情報Idvは、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。また、ミドルウェア43は、デバイス情報Idvを取得する毎に、第1タグ情報T1を生成する。更に、ミドルウェア43は、生成した第1タグ情報T1をデバイス情報Idvに付与することで、タグ付きデバイス情報T_Idvを生成し、データベース5のデバイス情報領域51に格納する。
【0037】
なお、第1タグ情報T1に属する各タグT11~T14の内容は、例えば、以下のようにして設定される。
事例識別タグT11及び事例情報タグT12は、ミドルウェア43に情報生成を開始させるときに、内部端末装置6を介して入力される情報が用いられる。
【0038】
時間タグT13は、現在時刻を取得することで生成される。現在時刻は、マイコンが有する時計機能から取得してもよいし、デバイス31からデバイス情報Idvと共に提供されるデバイス情報Idvの取得時刻を表す時刻情報を用いてもよい。
【0039】
データ種別タグT14は、取得されたデバイス情報Idvの種類を表す情報であり、プロバイダ41に接続されたデバイス31に応じて、予め用意された情報が用いられる。
[2-4.内部端末装置]
図1に示すように、内部端末装置6は、入力部61と、表示部62と、端末処理部63とを備える。
図1では、情報提供システム2に一つの内部端末装置6が示されているが、情報提供システム2は、複数の内部端末装置6を備えてもよい。
【0040】
表示部62は、例えばタッチパネル方式の液晶ディスプレイであり、MPR画像等の3次元画像と生体情報等の測定結果を表す波形データや数値、各種の操作ボタン、各機器の設定値、レイアウト値とを表示可能である。MPRは、Multi Planar Reconstructionの略である。
【0041】
入力部61は、例えば、上述の液晶ディスプレイに設けられたタッチパネル、キーボード、マウス、マイク、カメラ、及びモーションセンサ等の入力機器である。入力部61は、これら入力機器を介した入力操作に対応するテキストデータ、位置データ、音声データ、画像データ等を端末処理部63に対して出力する。
【0042】
端末処理部63は、CPU63Aと、例えば、RAM、ROM等の半導体メモリ(以下、メモリ63B)と、を有するマイクロコンピュータを備える。端末処理部63は、データベース5に格納される統合情報に関連した1つ以上のアプリケーション(以下、AP)を実行する。ここでは、端末処理部63は、
図2に示すように、表示AP631、コメント付与AP632、アップロードAP633を少なくとも実行する。
【0043】
[2-4-1.表示AP]
表示AP631は、事例識別タグT11,T21によって特定される同一事例に関する一連のデバイス情報Idv及びコメント情報Icmを、時間的に同期させて表示部62の表示画面に表示させるアプリケーションである。
【0044】
具体的には、入力部61を介して指定される時間Sに対応したデバイス情報Idv及びコメント情報Icmを表示部62の表示画面に表示する。但し、静止画を表示する動作モードでは、時間Sは、入力部61からの入力に応じて変更され、動画を表示する動作モードでは、時間Sは、入力部61からの初期値の入力後は、表示周期に合わせて自動的に更新される。
【0045】
端末処理部63は、時間Sを取得すると、データベース5から、表示対象とされる事例について、時間S以前で最新の時刻を表す時間タグT13,T25が付与されたデバイス情報Idv及びコメント情報Icmを取得する。なお、最新の時刻の探索には、遡ることのできる上限時間が決められてもよい。
【0046】
例えば、
図5に示すように、データベース5のデバイス情報領域51には、A~Dで識別される4種類のデバイス情報が格納され、コメント情報領域52には、a,cで識別される2種類のコメント情報が格納されているとする。
図5では、時間Sが9時00分Xミリ秒である場合、時及び分を省略し、ミリ秒を単位として「X」と表示される。つまり、
図5における「A」の欄に示す数値の列は、デバイス種別Aのデバイス情報Idvに付与された時間タグT13の内容を示す。
【0047】
時間Sが「100」である場合、時間S以前で最新の時間タグT13を有するデバイス情報は、
図5中に丸印で示した通りである。即ち、種類Aでは時間タグT13が「97」のデバイス情報である。種類Bでは時間タグT13が「100」のデバイス情報である。種類Cでは時間タグT13が「99」のデバイス情報である。種類Dでは時間タグT13が「98」のデバイス情報である。
【0048】
また、時間S以前で最新の時間タグT25を有するコメント情報は、種類aでは時間タグT25が「93」のコメント情報である。種類cでは、上限時間範囲内に該当するコメント情報が存在しないことを意味する。
【0049】
端末処理部63は、読み出したデバイス情報Idvを、その時点で設定されているレイアウトに従って表示させるための画像データである統合画像データを生成する。以下では、統合像データによって表示される画像を統合画像という。
【0050】
統合画像のレイアウトの一例として、例えば、
図6に示すように、モニタ領域A1、映像領域A2、ナビ画像領域A3、時間領域A4等を有していてもよい。モニタ領域A1は、生体情報をモニタするグラフ等が表示される領域である。モニタ領域A1では、生体情報を数値及びグラフ形式で表示される。映像領域A2は、治療対象をカメラ等で撮影した動画が表示される領域である。ナビ画像領域A3は、手術ナビにより検出される3次元位置が、予め用意された患部の3次元画像と共に表示される領域である。ナビ画像領域A3では、検出位置を含みかつ互いに異なる断面を示す三つの断面画像が三面図形式で表示される。時間領域A4は、統合情報の時系列が存在する時間範囲を時間軸で表現し、その時間軸上で、時間Sを表示するための領域である。時間領域A4には、時間軸と共に、イベントの発生時刻を表すバルーン状の表示が行われてもよい。なお、統合画像のレイアウトを変更する専用のアプリケーションが存在してもよい。
【0051】
端末処理部63は、コメント情報Icmを、統合画像と共に表示させるための表示データであるコメント表示データを生成する。以下では、コメント表示データによって表示される表示をコメント表示という。なお、統合画像上におけるコメント表示の表示位置及び表示形式は、コメント情報Icmのコメント種別、又はコメント対象となるデバイス情報Idvのデータ種別に応じて、予め設定されている。なお、コメント表示の表示位置及び表示形式を変更する専用のアプリケーションが存在してもよい。
【0052】
端末処理部63は、統合画像データ及びコメント表示データを、表示用データとして表示部62に出力することで、統合画像とコメント表示とを表示部62の表示画面に表示させる。
図6は、コメント情報が存在しない場合又はコメント情報を非表示とする設定である場合、
図7は、コメント情報を表示する設定である場合の表示例である。
【0053】
図7中の符号C1は、コメント対象となるパラメータに関連付けて入力されたコメントである。符号C2は、タッチパネルを利用してコメント対象となる画像上に手書き入力された線図や文字を含むコメントである。符号C3は、ナビ画像領域A3に表示されたMPR画像により特定される3次元位置をコメント対象とするコメントである。符号C4は、MPR画像上で指定された点をコメント対象とするコメントである。符号C5は、画面全体をコメント対象とするコメントが表示される表示領域である。この表示領域には、タイムラインTLに対応づけてコメントが表示される。また、コメント対象がコメントである場合、符号C51,C52に示すように、コメントが重ねて表示される。
【0054】
[2-4-2.コメント付与AP]
コメント付与AP632は、表示AP631により表示部62に統合画面が表示されているときに、統合画面に関するコメントを入力するためのアプリケーションである。
【0055】
端末処理部63は、入力部61からの指示によりコメント付与AP632を起動する。コメント付与AP632では、入力部61にて、統合画面の一部又は全部を指定する操作がなされると、これに続けて入力部61から入力される情報をコメント情報Icmとして取得する。コメント付与AP632では、コメント情報Icmを取得する毎に、第2タグ情報T2を生成する。更に、コメント付与AP632では、生成した第2タグ情報T2をコメント情報Icmに付与することで、タグ付きコメント情報Icmを生成し、データベース5のコメント情報領域52に格納する。なお、データベース5に格納されたタグ付きコメント情報T_Icmは、コメント情報を表示する設定である場合、表示AP631によって、直ちに表示部62での表示に反映される。
【0056】
第2タグ情報T2に属する各タグT21~T27の内容は、例えば、以下のようにして生成される。
事例識別タグT21は、コメント付与AP632の起動時に、表示AP631によって再生中の統合情報を特定する事例識別タグT11が用いられる。
【0057】
コメント識別タグT22は、コメント情報Icmを一意に識別するための識別情報であり、コメント情報Icmの入力がある毎に生成される。
入力者情報タグT23は、コメント入力者を識別する情報であり、入力部61を介して入力されてもよいし、内部端末装置6の起動時に利用者に入力させるユーザID等を用いてもよい。
【0058】
コメント対象タグT24は、入力部61により指定されたコメント対象を特定する情報が生成される。コメント対象がデバイス情報Idvである場合は、データ種別タグT14に含まれるデバイス31を特定する情報を用いてもよい。コメント対象がコメントである場合は、コメント識別タグT22の値を用いてもよい。
【0059】
時間タグT25は、コメント対象を指定するための入力であるコメント指定入力が行われたタイミングに対応した取得時刻を取得して設定される。時間タグT26は、当該タイミングに対応した再生時刻を取得して設定される。なお、取得時刻とは、コメント指定入力が行われたタイミング以前に表示AP631で取得された時間S、又は、当該タイミングで表示されているデバイス情報Idvに対応づけられた時間タグT13が示す時刻である。また、再生時刻とは、コメント対象が指定されたタイミングで、マイコンが有する時計機能から取得される現在時刻である。
【0060】
コメント種別タグT27は、入力されたコメントの種別を特定する情報であり、コメントの入力に用いた入力機器に応じて設定される。コメントの種別には、例えば、キーボードを介した文字入力、タッチパネルを介した手書き入力、マイクを介した音声入力、カメラを介した画像入力等がある。
【0061】
[2-4-3.アップロードAP]
アップロードAP633は、情報提供システム2が接続された外部の通信ネットワーク9の利用者と、情報提供システム2の内部で生成された統合情報を共有するために、統合情報をサーバ7にアップロードする際に実行するアプリケーションである。
【0062】
アップロードAP633の処理内容を、
図8のフローチャートを用いて説明する。
アップロードAP633は、入力部61を介して、アップロードする統合データを特定する事例識別データを指定した指示が入力されると起動する。
【0063】
処理が起動すると、S110にて、端末処理部63は、指定された事例識別データにて特定される一連のタグ付きデバイス情報T_Idv及びタグ付きコメント情報T_Icm、すなわち統合情報を、データベース5から取得する。ここで取得されるタグ付きデバイス情報T_Idvに含まれるデバイス情報Idvが、公開デバイス情報に相当する。
【0064】
続くS120では、取得した統合情報に含まれる個々のデバイス情報Idv及びコメント情報Icmに対する匿名化処理を実行する。
この匿名化処理では、
図9に示すように、まず、S210にて、端末処理部63は、S110にて取得したデバイス情報Idv及びコメント情報Icmのいずれかを対象情報として選択する。
【0065】
続くS220では、端末処理部63は、対象情報に関連づけられるタグ情報(すなわち、メタデータ)に含まれる個人情報を匿名化する。具体的には、例えば、事例情報タグT12に含まれる個人情報を表すテキストデータを処理対象として、そのテキストデータを削除するか、或いは伏せ字に置き換える。つまり、統合画像に、タグ情報が利用した表示が含まれたとしても、個人情報が表示されることがないようにする。
【0066】
続くS230では、端末処理部63は、データ種別タグT14又はコメント種別タグT27を参照して、対象情報が画像データであるか否かを判定する。S230にて、肯定判定された場合、処理はS240に移行され、否定判定された場合、処理はS250に移行される。
【0067】
S240では、端末処理部63は、対象情報によって表示される画像に対する画像処理により顔認識を実行し、顔であると判定された領域にマスキングが施されるように、対象情報を加工することによって、対象情報を匿名化し、S280に処理を進める。
【0068】
S250では、端末処理部63は、対象情報がテキストデータであるか否かを判定する。S250にて、肯定判定された場合、処理はS260に移行され、否定判定された場合、処理はS270に移行される。
【0069】
S260では、端末処理部63は、対象情報に患者の個人情報が含まれるか否かを探査し、個人情報が含まれる場合には、個人情報を表すテキストデータを削除するか、伏せ字に置き換えることで、対象情報を匿名化し、S280に処理を進める。例えば、対象情報がコメント情報Icmであった場合、コメントにも個人情報が含まれる可能性があるため、これを匿名化する。
【0070】
S270では、画像データ及びテキストデータ以外のデータ形式の対象情報に対して、その対象情報に応じた加工を実行して、S280に処理を進める。例えば、音声データである場合には、音声認識等を用いて個人情報が発せられている部分を削除又はマスクする。
【0071】
S280では、端末処理部63は、S210~S270の処理で匿名化された対象情報を、データベース5の匿名化情報領域53に格納する。
続くS290では、端末処理部63は、S120にて取得された全てのデバイス情報Idv及びコメント情報Icmについて、上述のS210~S280の処理を実行したか否かを判定する。S280にて否定判定された場合、処理はS210に戻され、肯定判定された場合、処理は終了する。
【0072】
つまり、匿名化処理では、個々のデバイス情報Idv及びコメント情報Icmを単位として、匿名化を実施する。匿名化処理によって匿名化されたデバイス情報Idvが匿名化デバイス情報に相当する。
【0073】
図8に戻り、S120の匿名化処理に続くS130では、端末処理部63は、S110で取得される全種類のデバイス情報Idvを1画面で表示する統合画像データを生成する。
【0074】
続くS140では、端末処理部63は、S130で生成された統合画像データによって表示される画像である全統合画像から、匿名化が必要な要匿名化部位を抽出する確認処理を実行する。この確認処理では、全統合画像に対する画像認識、具体的には、顔認識及び文字認識のうち少なくとも一方を行うことで要匿名化部位を抽出する。例えば、全統合画像に偶然映り込んでいる書類や名札に記載されている個人情報等を検出する。画像認識だけでなく、統合画像データによる画像を表示部62の表示画面に表示し、内部端末装置6のオペレータに要匿名化部位を、入力部61を介して入力させてもよい。
【0075】
続くS150では、端末処理部63は、S140の確認処理によって個人情報が抽出されたか否かを判定する。S150にて肯定判定された場合、処理はS160に移行され、否定判定された場合、処理はS170に移行される。
【0076】
S160では、端末処理部63は、S140にて抽出された要匿名化部位が匿名化されるように、匿名化情報領域53に格納された要匿名化部位に対応するデバイス情報Idvを加工する再匿名化処理を実行して、処理をS170に進める。再匿名化処理では、匿名化処理と同様の処理を自動で行ってもよいし、内部端末装置6のオペレータにデバイス情報Idvを加工させてもよい。
【0077】
S170では、端末処理部63は、データベース5の匿名化情報領域に格納されている匿名化情報、すなわち、匿名化されたタグ付きデバイス情報T_Idvと匿名化されたタグ付きコメント情報T_Icmとを、サーバ7に送信して処理を終了する。これにより、指定された事例に関する一連の統合情報が匿名化された上で、サーバ7にアップロードされる。
【0078】
なお、S140の確認処理によって要匿名化部位が抽出された場合、S160にて再匿名化処理を実行する代わりに、アップロードを中止してもよい。また、再匿名化処理にでは、再匿名化されたデバイス情報Idvを用いてS140~S160を繰り返してもよい。更に、ここでは、確認処理を、デバイス情報Idvに基づく全統合画像に対してだけ実行するが、コメント情報Icmに基づくコメント表示に対しても同様に実行してもよい。
【0079】
本実施形態において、S110が情報取得部に相当し、S120が匿名化部に相当し、S130が画像生成部に相当し、S140が確認部に相当し、S150及びS170が情報提供部に相当し、S150及びS160が再匿名化部に相当する。
【0080】
[6.効果]
以上詳述した情報共有システム1によれば、以下の効果を奏する。
(1)情報共有システム1では、情報提供システム2からサーバ7に統合情報をアップロードする時に、統合画像を構成する要素である個々のデバイス情報Idv及びコメント情報Icmを単位として匿名化処理を実行する。さらに、アップロードの対象となる事例に含まれる全種類のデバイス情報を1画面で表示する全統合画像に対して画像認識を行うことにより、統合画像中の要匿名化部位が抽出される否かを確認し、要匿名化部位が抽出されなければ、アップロードを許可する。
【0081】
つまり、統合画像が不特定多数の利用者に公開される前に、実際に公開され得る画像を用いて要匿名化部位の抽出、再度の匿名化を実行する。従って、予期しない方法で統合画像に個人情報が映り込んでいる場合でも公開前にこれを修正できるため、個人情報の漏洩を抑制できる。
【0082】
(2)情報共有システム1では、コメント情報Icmについても匿名化を行うため、個人情報を含んだコメントによって、個人情報が漏洩することを抑制できる。換言すれば、個人情報を含んだコメントがあったとしても、公開される前には匿名化されるため、制限のない自由なコメントをコメント付与APによって残すことができる。
【0083】
[7.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0084】
(a)上記実施形態では、情報提供システム2にて確認処理を行っているが、個々の情報に対する匿名化処理までを情報提供システム2に実行させてサーバ7にアップロードし、実際に配信する前に、サーバ7に確認処理を行わせてもよい。
【0085】
(b)本開示に記載の端末処理部63及びそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の端末処理部63及びそれらの手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の端末処理部63及びそれらの手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。端末処理部63及び端末処理部63に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0086】
(c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0087】
(d)上述した情報共有システム1の他、当該情報共有システム1を構成する内部端末装置6としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1…情報共有システム、2…情報提供システム、3…デバイス群、4…提供処理部、5…データベース、6…内部端末装置、7…サーバ、8…外部端末装置、9…通信ネットワーク、31A~31H…デバイス、41A~41H…プロバイダ、43…ミドルウェア、51…デバイス情報領域、52…コメント情報領域、53…匿名化情報領域、61…入力部、62…表示部、63…端末処理部、表示AP…631、コメント付与AP…632、アップロードAP…633。