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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-25
(45)【発行日】2022-11-02
(54)【発明の名称】車両用計器装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/24 20060101AFI20221026BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01D11/24 B
B60K35/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019019299
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020126011
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】西山 裕季
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-127855(JP,A)
【文献】特開2007-272860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/00 - 13/28
B60K 35/00 - 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器装置本体に車両後方側から取付けられたアッパハウジングの上部に、前記計器装置本体の上を覆って車両前方側へ張り出す下り勾配の庇部を設け、
該庇部の下面に、車両前方側へ延びて、前記庇部の上面にヒケ部を生じさせるリブを設けたことを特徴とする車両用計器装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用計器装置であって、
前記リブが、前記庇部の車両前方側の縁部に達するまで延びていることを特徴とする車両用計器装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用計器装置であって、
前記リブが、車両前方側へ向かって徐々に小さくなる徐変形状部を有していることを特徴とする車両用計器装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用計器装置であって、
前記徐変形状部は、車両前方側へ向かって幅が狭くなる幅徐変部であることを特徴とする車両用計器装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の車両用計器装置であって、
前記徐変形状部は、車両前方側へ向かって高さが低くなる高さ徐変部であることを特徴とする車両用計器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用計器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、車室内の前部にインストルメントパネルなどの内装パネルを備えている。このインストルメントパネルには、車両用計器装置が収容設置されている。また、インストルメントパネルには、車両用計器装置の上側を覆うようにメーターフードが取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-127855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インストルメントパネルとメーターフードとの間には僅かな隙間(合わせ隙間)があり、この隙間からインストルメントパネルの内部へ(例えば、雨水や飲料などの)液体が入り込むと、隙間の下側に位置している車両用計器装置の内部の回路基板に損傷を与えるおそれがある。
【0005】
そのため、上記特許文献1では、車両用計器装置の背面側に設けられているロワカバーの内面に滴下防止リブ部を設けて、滴下防止リブ部によって、車両用計器装置の内部に侵入した液体が直接回路基板へ到達しないように保護していた。
【0006】
しかし、この滴下防止リブ部は、ロワカバーの車幅方向の中央部を頂点として、車幅方向の両側(左右)へ向かって下り勾配となる山形の傾斜形状とされて、液体を車幅方向へ導くものとなっていた。
【0007】
そのため、滴下防止リブ部が大掛かりなものとなっていた。これによって、例えば、車両用計器装置にデザイン上の制約などを生じさせていた。
【0008】
そこで、本発明は、主に、上記した問題点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
計器装置本体に車両後方側から取付けられたアッパハウジングの上部に、前記計器装置本体の上を覆って車両前方側へ張り出す下り勾配の庇部を設け、
該庇部の下面に、車両前方側へ延びて、前記庇部の上面にヒケ部を生じさせるリブを設けた車両用計器装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成によって、簡易な構成で計器装置本体内へ液体の侵入を防止できるようにすることなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態にかかる車両用計器装置の全体斜視図である。
図2図1の車両用計器装置の上部と、車両用計器装置を設置したインストルメントパネルおよびメーターフードの合わせ目の周辺を示す縦断面図である。
図3図1のアッパハウジングを車両前方側で且つ斜め下側から見た斜視図である。
図4】庇部、ヒケ部、リブの状態を示す、図1のアッパハウジングの上部の部分拡大斜視図である。
図5】アッパハウジングの庇部を車両前方側から見た部分拡大図である。
図6】庇部に設けたリブの長さを示す部分拡大斜視図である。このうち、(a)はリブが車両前方側の端部に達している状態を示す図、(b)はリブが車両前方側の端部に達していない状態を示す図である。
図7】徐変形状部を有するリブを示す図である。このうち、(a)は車両前方側から見た図、(b)は部分拡大斜視図である。
図8】比較例にかかる車両用計器装置周辺の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態にかかる車両用計器装置を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図8は、この実施の形態を説明するためのものである。図中の方向は、車両前後方向X、車幅方向Y、上下方向Zとなっており、車両用計器装置を車両に搭載した状態を基準としている。
【実施例1】
【0013】
<構成>この実施例の構成について説明する。
【0014】
図1は、この実施例にかかる車両用計器装置1の全体斜視図である。そして、この車両用計器装置1を、図2に示すように、自動車などの車両に設置する。
【0015】
即ち、自動車などの車両における、車室2内の前部にはインストルメントパネル3などの内装パネルが設けられている。このインストルメントパネル3に計器取付部4を設け、計器取付部4に車両用計器装置1を収容設置する。そして、インストルメントパネル3における計器取付部4の上部に対し、車両用計器装置1の上を覆うようにメーターフード5を取付ける。
【0016】
ここで、車両用計器装置1は、運転に必要な情報を表示するための装置である。車両用計器装置1には、例えば、速度計や、回転計や、燃料計や、水温計や、表示灯や警告灯などの、各種の計器表示部が設けられる。この実施例の車両用計器装置1は、上記したような各種の計器表示部を1つにまとめて表示できるようにしたコンビネーションメータとなっている。但し、この実施例の構造が適用可能な車両用計器装置1は、コンビネーションメータに限るものではない。
【0017】
インストルメントパネル3は、車室2の前部に設けられる樹脂製の大型の内装パネルであり、一般的なものは、運転席側から助手席側に亘る大きさを有している。
【0018】
計器取付部4は、インストルメントパネル3の運転席側や、運転席と助手席との中間部などに設けられた凹状部分や開口部やこれらを組み合わせた形状の部分のことである。計器取付部4は、少なくとも車両用計器装置1を収容設置できる大きさや形状に形成される。
【0019】
メーターフード5は、車両用計器装置1の表示面に対する外光の映り込みや、車両用計器装置1の表示が窓映りするのを防止するために、車両用計器装置1の上側部分を覆って乗員側へ延びるようにインストルメントパネル3に設けられる遮光部材である。メーターフード5は、インストルメントパネル3と一体に形成し難い複雑な形状をしているため、インストルメントパネル3とは別体に形成されて、インストルメントパネル3に取付けられる。インストルメントパネル3には、計器取付部4のほぼ上側の位置に、メーターフード5を取付けるためのフード取付部6が設けられる。そのため、インストルメントパネル3とメーターフード5との間(合わせ目など)には、外部からの液体7が入り込むことができる僅かな隙間8(合わせ隙間)が形成される。液体7は、例えば、雨水や飲料などが考えられる。この実施例では、隙間8は、車両用計器装置1の真上よりも若干車両後方側(または乗員にとっての手前側、図の左側)の位置に形成されている。
【0020】
そして、車両用計器装置1は、計器装置本体11の車両後方側にアッパハウジング12(図3の背面側から見た斜視図参照)を取付けた構成を有している。
【0021】
計器装置本体11は、車両用計器装置1の本体を構成する主要部品である。計器装置本体11は、正面側から見た全体形状がほぼ横長の長方形状とされている。計器装置本体11は、車両前方側(または乗員にとっての奥側)から順に、ロワカバー13、回路基板14、本体ハウジング15、表示板16を組み合わせた構成を有している。計器装置本体11は、乗員から表示が見易くなるように、車両後方側に設置された表示板16を後斜め上方へ向けた前傾状態で計器取付部4に設置される。
【0022】
アッパハウジング12は、計器装置本体11の後面側に設置された、ほぼ枠状の部材である。アッパハウジング12は、計器装置本体11に対し車両後方側から取付けられて、表示板16の表示領域を取り囲み、表示板16の表示を視認できるようにする。表示板16の表示領域は、横長のほぼ長円形状、または、これに類似した形状などとされている。
【0023】
アッパハウジング12は、表示板16の表示領域が臨む(または覗く)開口部12aを有する背面板12bと、背面板12bの周縁部に設けられて計器装置本体11(の本体ハウジング15)の外周部に突き当てられる外周側の枠部12cとを有している。
【0024】
開口部12aは、車両後方側へ突出する筒状体となっており、この筒状体は、下側が上側よりも大きく乗員側へ突出した形状を有している。枠部12cは、ほぼ全周に亘って連続したものとされている。枠部12cと計器装置本体11(の本体ハウジング15)との間は、周方向の複数箇所の位置で、爪固定部17(図1)によって車両前後方向Xに係止固定される。
【0025】
アッパハウジング12の開口部12aには、車両後方側の端面に透明な樹脂板で構成されたフロントカバー18が取付けられる。フロントカバー18とアッパハウジング12との間は、周方向の複数箇所の位置で、爪固定部19(図1)によって車両前後方向Xに係止固定される。
【0026】
ロワカバー13は、計器装置本体11の背面(車両前方側の面)を覆う保護部材である。ロワカバー13と、アッパハウジング12との間は、車両前方側からネジなどの固定具11a(図2)を用いて固定することができる。
【0027】
回路基板14は、計器装置本体11に使用される電子部品などを実装した部材である。
【0028】
本体ハウジング15は、回路基板14や表示板16を設置する部材である。本体ハウジング15に対し回路基板14は車両前方側に設置され、表示板16は車両後方側に設置される。
【0029】
表示板16は、車両用計器装置1において表示を行うための薄板状の部材である。表示板16には、各計器表示部のための表示領域が形成される。
【0030】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例の車両用計器装置1は、以下のような構成を備えることができる。
【0031】
(1)計器装置本体11に車両後方側から取付けられたアッパハウジング12の上部に、計器装置本体11の上を覆って車両前方側へ張り出す下り勾配の庇部21を設ける。
庇部21の下面に、車両前方側へ延びて、庇部21の上面にヒケ部22を生じさせるリブ23(図4)を設ける。
【0032】
ここで、アッパハウジング12の上部は、アッパハウジング12の枠部12cの上辺部よりも上側の位置のことである。庇部21は、枠部12cや計器装置本体11の上辺部よりも上側の位置に、枠部12cの上辺部や計器装置本体11の上辺部に対し、リブ23を設けるための隙間24(図2)を有して配設され、背面板12bの上縁部と車両後方側の位置で一体化されている。
【0033】
計器装置本体11の上を覆うとは、庇部21の少なくとも一部または全部(この実施例では、全部となっている)が、車幅方向Yから見て、計器装置本体11の上を通ってロワカバー13の上辺部の車両前方側の縁部の位置に達する程度まで車両前方側へ延ばされることである。これにより、庇部21は、少なくとも一部または全部が、アッパハウジング12の枠部12cの上辺部と、計器装置本体11の本体ハウジング15の上辺部との合わせ目25や、本体ハウジング15の上辺部とロワカバー13の上辺部との合わせ目26などを上から覆って、液体7が侵入しないようにブロックする(保護する)ことができるようになる。
【0034】
車両前方側へ張り出すとは、庇部21の少なくとも一部または全部(この実施例では、全部となっている)が、車幅方向Yから見て、計器装置本体11のロワカバー13の上辺部を通り越すように車両前方側へ延びていることである(張出部27)。これにより、庇部21は、少なくとも一部または全部が、計器装置本体11の厚みよりも車両前後方向Xに長い寸法を有するものとなる。そのため、庇部21は、計器装置本体11の上面に液体7が直接かからない状態で、液体7を車両前方側へ導いて排水することが可能になる。
【0035】
車両前方側に下り勾配とは、庇部21が、車幅方向Yから見て、水平に対し車両後方側が高くなり、車両前方側が低くなった状態に傾斜されていることである。庇部21は、排水勾配よりも大きな角度に傾斜させる。庇部21の上面は、計器装置本体11を前傾設置にすることで自然に下り勾配になるが、角度が足りないような場合には、庇部21の上面を計器装置本体11の前傾角度よりも急な勾配にすることが可能である。
【0036】
庇部21の勾配の角度は車両前後方向Xの全域に亘って一定としても良いし、途中で勾配が変わるようにしても良い。勾配は直線的なものとしても良いし、曲線的なものなどとしても良い。この実施例では、庇部21は、一定角度の直線状をした勾配にしている。
【0037】
なお、庇部21は、必ずしも下り勾配にしなくても、液体7をブロックする機能を得ることができるし、また、車両前方側へ向かう下り勾配にしなくても、排水機能を得ることができるが、排水経路を短くして効率的に排水を行わせるためには、車両前方側へ向かう下り勾配とするのが最も好ましい。
【0038】
庇部21は、アッパハウジング12の最上部に設けられて、液体7を受けるようにした部分のことである。庇部21は、アッパハウジング12の車幅方向Yの中央部などに部分的に設けても良いし、車幅方向Yの全域に亘って設けても良いが、車幅方向Yの全域に亘って設けるのが望ましい。この実施例では、庇部21は、車幅方向Yの中央部分が両端部分よりも高くなった凸形状となっているが(図1)、凸形状のない平坦な形状としても良い。なお、凸形状の庇部21は、フロントカバー18とアッパハウジング12との間の爪固定部19を上側に設けたことによって生じた形状である。
【0039】
更に、庇部21は、計器装置本体11の上部から側面の少なくとも一部(上部)または全部にまで及ぶように、車幅方向Yの両端部を下方へ所要量延長しても良い(側方延長部28、図1)。この側方延長部28により、計器装置本体11の側面の位置からの、計器装置本体11内部への液体7の侵入を防止することができる。
【0040】
また、側方延長部28の下端部には、車幅方向Yの外方へ僅かに延びる水切部28aなどを設けても良い。この水切部28aによって、側方延長部28の下端部の位置で水切れさせることができる。よって、計器装置本体11の側面の位置からの、計器装置本体11内部への液体7の侵入をより有効に防止することができる。
【0041】
車両前後方向Xへ延びるとは、ほぼ車両前後方向Xへ向かうといった程度の意味であり、必ずしもリブ23が正確に車両前後方向Xへ向いていたり、車両前後方向Xへ向いた真っ直ぐな直線状であったりする必要はない。但し、リブ23は、車両前後方向Xに正確に向いた真っ直ぐな直線状とするのが最も好ましい。
【0042】
ヒケ部22は、樹脂成形品において、成形不良とされる部分のことである。ヒケ部22は、樹脂成形品を成形する成形型の内部で溶融樹脂の流れに乱れが生じたり、溶融樹脂の硬化速度が他の部分よりも遅くなったりすることで発生し易い。このようなヒケ部22は、樹脂成形品の部分的な厚肉部や形状変化部などに生じ易い。この実施例では、庇部21に、部分的な厚肉部や形状変化部などとなるリブ23を設定して、リブ23の部分で溶融樹脂の流動速度や硬化速度を他の部分よりも遅くすることで、意図的にリブ23の位置の裏側(庇部21の上面)に、ヒケ部22を発生させるようにしている。
【0043】
リブ23は、樹脂成形品に形成された面外方向への張出部分などのことである。アッパハウジング12は、通常、所要の強度を確保できるように、ヒケ部22が発生しないギリギリの肉厚に設定されており、庇部21もアッパハウジング12の他の部分とほぼ同じ肉厚に形成されることになるので、庇部21に僅かなリブ23を形成しただけでも、庇部21の肉厚が部分的に過剰になって、リブ23の裏側にヒケ部22が発生される可能性が高い。
【0044】
よって、一般的な場合、ヒケ部22は製品にとって悪いものであると考えられているので、庇部21の下面にリブ23を設けることは、庇部21の上面にヒケ部22を生じさせるおそれがあるという理由により、一切行わない、または、設けるのであればヒケが発生しない程度の小さなリブに抑えるようにするのが当業者の常識であると考えられる。
【0045】
これに対し、この実施例では、上記したように、リブ23によって意図的にヒケ部22を発生させるようにするが、ヒケ部22は、リブ23を大きくすると大きくなり、リブ23を小さくすると小さくなるので、リブ23の大きさによってヒケ部22の大きさや形状を比較的容易にコントロールすることができる。
【0046】
この実施例では、図5に示すように、まず、庇部21を、ヒケ部22が発生しないギリギリの肉厚tに設定すると共に、この肉厚tが車幅方向Yのほぼ全域に亘って均一な状態で続くようにする。そして、この庇部21の下面に高さh(>0)および幅w(>0)の矩形断面をしたリブ23を設ける。この際、リブ23は、上記した隙間24の内部に収まる高さhとする。これにより、リブ23は、裏側(庇部21の上面)にヒケ部22を発生可能なものとなる(隙間24>h>0、w>0)。
【0047】
次に、リブ23の高さhおよび幅wを、庇部21の肉厚tの2~3倍程度以下の寸法の範囲内に設定する(3t>h>0、3t>w>0)。好ましくは、リブ23の高さhおよび幅wは、庇部21の肉厚tの半分~2倍程度の寸法の範囲内に設定する(2t>h>0.5t、2t>w>0.5t)。更に好ましくは、リブ23の高さhおよび幅wは、庇部21の肉厚tとほぼ等しい寸法から肉厚tの1.5倍程度の寸法の範囲内に設定する(1.5t>h>1t、1.5t>w>1t)。これにより、ヒケ部22は、液体7の排水にとって有効な大きさに形成され、液体7を集める集水部や、液体7を排水するための排水部または排水経路などとして使うことができるものとなる。
【0048】
このようなリブ23やヒケ部22は、庇部21に対して、単数、または、車幅方向Yに所要の間隔を有して複数本設けることができる。複数本のリブ23およびヒケ部22は、庇部21の車幅方向Yの全域に亘って均等な間隔で設けるのが好ましいが、庇部21の車幅方向Yの一部にのみ設けたり、車幅方向Yに不均等な間隔で設けたりしても良い。この実施例では、リブ23やヒケ部22は、庇部21の車幅方向Yの中央部の高くなっている部分のみに対して、車幅方向Yにほぼ均等な間隔で複数設けるようにしているが、庇部21の車幅方向Yの両側の低くなっている部分に対しても設けても良い。なお、複数本のリブ23およびヒケ部22は、液体7を車両前方側へ導くことができる範囲内であれば、途中で合流や分岐や交差などをさせても良い。
【0049】
(2)図6(a)に示すように、リブ23は、庇部21の車両前方側の縁部21aに達するまで延ばしても良い。
【0050】
ここで、リブ23は、庇部21の車両前後方向Xの全域に亘って連続して設けることが望ましいが、不連続としても良いし、庇部21の車両前後方向Xの一部に対してのみ設けても良い。
【0051】
この際、図6(b)に示すように、リブ23は、庇部21の車両前方側の縁部21aに達しない程度の長さに設けることができる。しかし、この実施例では、リブ23を、庇部21の車両前方側の縁部21aに達するまで延ばすことで、ヒケ部22を、庇部21の車両前方側の縁部21aに達するまで延びるよう発生させている。このように、ヒケ部22が、庇部21の車両前方側の縁部21aに達することで、庇部21の車両前方側の縁部21aで液体7を液切れし易くできる。
【0052】
なお、車両後方側については、リブ23は、庇部21の車両後方側の縁部に達するまで延ばしても良いし、達しない長さに設けても良い。これにより、ヒケ部22を、庇部21の車両後方側の縁部に達するように発生させたり、達しないように発生させたりできる。
【0053】
(3)図7に示すように、リブ23は、車両前方側へ向かって徐々に小さくなる徐変形状部31を有しても良い。
【0054】
ここで、徐変形状部31は、リブ23の大きさが長手方向(ほぼ車両前後方向X)に対して変化する部分のことである。徐変形状部31は、リブ23の長手方向の全域に亘って設けても良いし、リブ23の長手方向の一部に対して設けても良い。この実施例では、徐変形状部31を、リブ23の長手方向の全域に亘って設けるようにしている。徐変形状部31は、車両後方側が大きく、車両前方側が小さくなっている。リブ23に徐変形状部31を設けることで、ヒケ部22は、徐変形状部31の部分が、車両前方側へ向かって徐々に小さくなるように徐変される。
【0055】
(4)徐変形状部31は、車両前方側へ向かって幅が狭くなる幅徐変部32を有しても良い(w1>w2)。
【0056】
ここで、幅徐変部32は、徐変形状部31の幅寸法が長手方向(ほぼ車両前後方向X)に対して徐々に変化して行くようになっている部分のことである。幅徐変部32は、リブ23または徐変形状部31の長手方向の全域に亘って設けても良いし、リブ23または徐変形状部31の長手方向の一部に対して設けても良い。この実施例では、リブ23の長手方向の全域に亘って、幅徐変部32を設けている。
【0057】
幅徐変部32は、リブ23の車両後方側の部分の幅w1が広く、車両前方側の部分の幅w2が狭くなっている。徐変形状部31を幅徐変部32とすることで、ヒケ部22は、車両前方側へ向かって幅が狭くなって行くような幅徐変形状に形成生される。
【0058】
(5)徐変形状部31は、車両前方側へ向かって高さが低くなる高さ徐変部33を有しても良い(h1>h2)。
【0059】
ここで、高さ徐変部33は、徐変形状部31の高さ寸法が長手方向(ほぼ車両前後方向X)に対して徐々に変化して行くようになっている部分のことである。高さ徐変部33は、リブ23または徐変形状部31の長手方向の全域に亘って設けても良いし、リブ23または徐変形状部31の長手方向の一部に対して設けても良い。この実施例では、リブ23の長手方向の全域に亘って、高さ徐変部33を設けている。
【0060】
高さ徐変部33は、車両後方側の部分の高さh1が高く、車両前方側の部分の高さh2が低くなっている。徐変形状部31を高さ徐変部33とすることで、ヒケ部22は、車両前方側へ向かって深さが浅くなって行くような深さ徐変形状に形成される。
【0061】
なお、上記とは別に、庇部21が車両前方側へ向かって肉薄となるように、庇部21の肉厚を変化させることによっても、リブ23の裏面側に発生されるヒケ部22を、車両前方側へ向かって高さが低くなって行くように徐変させることが可能である。必要な場合には、庇部21の薄肉化と、高さ徐変部33とを組み合わせて、ヒケ部22の深さを徐変させるようにしても良い。
【0062】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0063】
車両用計器装置1では、インストルメントパネル3とメーターフード5との間には、構造的に、液体7(例えば、雨水や飲料など)が入り込むことができる隙間8(合わせ隙間)が形成されるのを避けることが難しい。そして、万一、この隙間8からインストルメントパネル3の内部へ液体7が入り込んだ場合には、隙間8の下側に位置する車両用計器装置1に悪影響を与えるおそれがある。
【0064】
そのため、車両用計器装置1は、インストルメントパネル3の内部へ入り込んだ液体7が、計器装置本体11の内部の回路基板14に到達しない構造にする必要がある。
【0065】
既存の車両用計器装置1では、図8に示すように、計器装置本体11を構成するロワカバー13と本体ハウジング15との合わせ目26や、本体ハウジング15とアッパハウジング12との合わせ目25が露出された状態になっていた。そして、車両用計器装置1の上部に不織布41や防水テープなどを貼ることなどによって、合わせ目25,26に防水処理を施していた。
【0066】
しかし、不織布41や防水テープを貼付ける防水処理は、部品費や加工費がかかる。また、不織布41や防水テープは、経年劣化や被水によって粘着力が低下し、剥がれるおそれがある。また、経年劣化によって不織布41や防水テープの表面がボロボロになると、コンタミ(異物混入現象)が発生する。
【0067】
そのために、不織布41や防水テープを不要化できる防水構造が求められる。 また、液体7が、計器装置本体11の内部の回路基板14に到達しないようにするための防水構造は、例えば、計器装置本体11に対するデザイン上の制約などにならないような、構成の簡単なものであることが求められる。
【0068】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0069】
(効果 1)アッパハウジング12の上部に、計器装置本体11よりも車両前方側へ張り出す下り勾配の庇部21を設けた。これにより、インストルメントパネル3の内部へ入り込んで車両用計器装置1の上に落下した液体7(例えば、雨水や飲料など)を、計器装置本体11の上を覆う庇部21で受けて、計器装置本体11へ直接達しないようにすることができると共に、庇部21で受けた液体7を車両前方側へ張り出す下り勾配の庇部21に沿って車両前方側へ排水することができる。そのため、計器装置本体11の内部に設置された回路基板14や電子部品などを液体7から有効に保護することができる。
【0070】
また、庇部21の下面に、車両前方側へ延びて、庇部21の上面にヒケ部22を生じさせるリブ23を設けた。これにより、庇部21の下面に設けたリブ23によって庇部21の上面にヒケ部22を生じさせて、ヒケ部22を液体7に対する集水部や排水部などとして積極的に利用することができるようになる。そのため、庇部21の下面にリブ23を設定するだけで、庇部21の上面に簡単確実に集水部や排水部を発生させることができる。よって、庇部21の上面に排水溝などを積極的に形成する必要がなくなり、その分、設計コストや金型コストを低減できる。
【0071】
そして、庇部21の上面に発生されたヒケ部22は、以下のようにして集水部や排水部として機能する。即ち、庇部21で受けた液体7は、液滴となって庇部21の上面に付着し、庇部21の上にそのまま留まろうとするが、液滴の近くにヒケ部22が存在すると、ヒケ部22は、窪みなどとなっているため、液滴は、表面張力などによってヒケ部22に引き寄せられることになる。これにより、ヒケ部22は集水部となり、液滴はヒケ部22に集められて大きくなると、大きくなった液滴は転がり易い状態になるため、ヒケ部22が存在するだけでも車両前方側へ張り出す下り勾配の庇部21に沿った液体7の排出が促進される。
【0072】
この際、リブ23を車両前方側へ延びるように形成することで、ヒケ部22も車両前方側へ延びるものとなる。そのため、車両前方側へ延びるヒケ部22は、下り勾配の庇部21に沿った液滴の流下を案内する排水部などとなる。よって、車両前方側へ延びるヒケ部22(集水部や排水部)によって液体7を効率的に車両前方側へ流下させることができる。
【0073】
そのため、わざわざ庇部21の上面に排水溝などを設定しなくても、ヒケ部22によって計器装置本体11内への液体7の侵入を確実に防止できる。また、計器装置本体11の上部(例えば、ロワカバー13と本体ハウジング15との合わせ目26や、本体ハウジング15とアッパハウジング12との合わせ目25など)に対して不織布41や防水テープを貼付けるなどの防水処理(目止め)を不要化することもできる。
【0074】
更に、車両用計器装置1は、車幅方向Yの寸法よりも車両前後方向Xの寸法が格段に短くなっているので、上記したような車両前方に下り勾配となる庇部21やヒケ部22によって液体7を車両前方側へ流下させることで、庇部21による排水経路を短くすることができる。よって、例えば、液体7を車幅方向Yへ流下させて排出するようにした場合などと比べて、液体7の排水経路が格段に短くなり、その分、車幅方向Yの排水経路を設けることによって生じる計器装置本体11のデザイン上の制約をなくして、デザイン自由度を上げることができる。
【0075】
しかも、集水部や排水部として機能するヒケ部22は、比較的僅かな窪みなどとなるため、設計によって意図的に形成される排水溝などと比べて外観上ほとんど分からないような状態で設けることが可能である。また、車両用計器装置1はインストルメントパネル3などの内装パネルの内部に設置される、外部からは見えない部品であるため、多少のヒケ部22があったとしても、外観不良とされなくて済む。よって、車両用計器装置1においては、上記したような機能性を有するヒケ部22を積極的に作ることが製品的に許容される。
【0076】
そして、ヒケ部22の大きさや形状は、リブ23の大きさによって比較的自由にコントロールできるので(リブ23を大きくするとヒケ部22は大きくなり、リブ23を小さくするとヒケ部22は小さくなる)、リブ23の設計によって所望のヒケ部22を得ることができる。
【0077】
また、庇部21の下面にリブ23を設けることで、庇部21やアッパハウジング12や(アッパハウジング12取付後の)計器装置本体11などを補強する効果を得ることもできる。リブ23の補強効果によって、例えば、庇部21が波打つように変形する不具合を防止して、庇部21やアッパハウジング12の形状を保持することができる。これに対し、庇部21の上面に単に排水溝を設けるようにした場合には、排水溝によって庇部21の強度が低下されてしまうので、庇部21が波打つように変形する不具合が生じ易い。
【0078】
更に、例えば、計器装置本体11の上部に、リブ23に対する受部などを設けるようにすれば、リブ23は、計器装置本体11に対してアッパハウジング12を車両後方側から取付ける際のガイドや位置決め部としても使うことができる。これにより、リブ23は、上記した補強リブとしての機能以外にも、ガイドリブや位置決めリブなどとしての機能を持つことができる。
【0079】
(効果 2)リブ23は、庇部21の車両前方側の縁部21aに達するまで延ばしても良い。これにより、リブ23によって庇部21の上面に形成されるヒケ部22は、庇部21の車両前方側の縁部21aにまで達するものとなる。そのため、庇部21の上面の液体7をヒケ部22に沿って庇部21の車両前方側の縁部21aまで確実に導いて、庇部21の車両前方側の縁部21aから確実に水切れさせることができる。
【0080】
また、リブ23を庇部21の車両前方側の縁部21aに達するまで延ばすことで、庇部21の車両前方側の縁部21aを補強することができる。
【0081】
(効果 3)リブ23は、車両前方側へ向かって徐々に小さくなる徐変形状部31を有しても良い。これにより、リブ23によって庇部21の上面に形成されるヒケ部22は、徐変形状部31の部分で車両前方側へ向かって小さくなる徐変形状になる。そのため、徐変形状のヒケ部22によって、ヒケ部22に集められた庇部21の上面の液体7を車両前方側へ移動させ易くすることができる。
【0082】
即ち、徐変形状のヒケ部22は、車両後方側のヒケの大きな部分がより多くの液体7を集めて液滴を大きく成長させる機能を発揮し、徐変形状の部分が液体7の液滴を車両前方側へ転がり易くする機能を発揮し、車両前方側のヒケの小さな部分が液体7の液滴を水切れし易くする機能(水切れ促進機能)を発揮することができる。これにより、液体7の液滴の車両前方側への排出をより促進することが可能になる。
【0083】
また、ガイドとしてのリブ23は、(長手方向に対する)徐変形状部31を有することで、計器装置本体11にアッパハウジング12を取付ける際のガイドを行い易くすることができる。例えば、車両前方側の部分を小さくすることで、取付けの初期に余裕代を持たせて嵌め易くすることができ、また、車両後方側の部分を大きくすることで、取付けの後期に、緊密で位置精度の高い固定状態を得られるようにすることが可能になる。
【0084】
(効果 4)徐変形状部31は、車両前方側へ向かって幅が狭くなる幅徐変部32であっても良い(w1>w2)。これにより、リブ23の幅徐変部32の位置で庇部21の上面に形成されるヒケ部22は、車両前方側へ向かって幅が狭くなるような幅徐変形状になる。
【0085】
そのため、液体7の液滴に対するヒケ部22の接触幅が車両前方側へ向かって徐々に狭くなって行き、これによって、液体7の液滴を車両前方側へ移動させ易くすると共に、幅徐変部32の車両前方側の位置で液体7の液滴を切り易く(水切れし易く)することができる。
【0086】
また、リブ23が幅徐変部32を有することで、リブ23に幅方向のガイド機能を持たせることができる。
【0087】
(効果 5)徐変形状部31は、車両前方側へ向かって高さが低くなる高さ徐変部33であっても良い(h1>h2)。これにより、リブ23の高さ徐変部33の位置で庇部21の上面に形成されるヒケ部22は、車両前方側へ向かって浅くなるような深さ徐変形状になる。
【0088】
そのため、液体7の液滴に対するヒケ部22の入り込み深さが車両前方側へ向かって徐々に浅くなって行き、これによって、液体7の液滴を車両前方側へ移動させ易くすると共に、高さ徐変部33の車両前方側の位置で液体7の液滴を切り易く(水切れし易く)することができる。
【0089】
また、リブ23が高さ徐変部33を有することで、リブ23に高さ方向のガイド機能を持たせることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 車両用計器装置
11 計器装置本体
12 アッパハウジング
21 庇部
22 ヒケ部
23 リブ
21a 縁部
31 徐変形状部
32 幅徐変部
33 高さ徐変部
X 車両前後方向
Y 車幅方向
Z 上下方向
h 高さ
t 肉厚
w 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8