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特許7166740折り処理装置、画像形成システムおよび折り処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】折り処理装置、画像形成システムおよび折り処理方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 45/16 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
B65H45/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016106312
(22)【出願日】2016-05-27
(65)【公開番号】P2017210361
(43)【公開日】2017-11-30
【審査請求日】2019-02-08
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道貴
(72)【発明者】
【氏名】古橋 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】中川 友喜
(72)【発明者】
【氏名】星野 智道
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】藤田 年彦
【審判官】吉村 尚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240325(JP,A)
【文献】特開2015-47828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 7/00-7/20
B65H 29/12-29/24
B65H 29/32
B65H 43/00-43/08
B65H 45/00-45/30
B41J 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挟持して搬送される用紙に折り処理を行う折り処理装置であって、
第1駆動モータにより駆動され、搬送された用紙を受け取り、排紙方向へ搬送する一対の搬送ローラからなる第1の搬送部材と、
第2駆動モータにより駆動され、前記第1の搬送部材から搬送された前記用紙を前記排紙方向へ搬送するように回転する正転と当該排紙方向の反対方向へ搬送するように回転する逆転のいずれも可能な一対の搬送ローラからなる第2の搬送部材と、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に保持された状態で、前記第2の搬送部材が前記逆転をしたことで撓んだ前記用紙をニップで折り込む一対の搬送ローラからなる第3の搬送部材と、
前記第1駆動モータと前記第2駆動モータの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に前記用紙を保持した状態で、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材により前記用紙を前記排紙方向に、折り位置に対応して予め設定された量だけ搬送した後に、前記第2の搬送部材を逆転することにより前記用紙を前記排紙方向の反対方向へ搬送して折り処理を行う際に、
前記第2駆動モータの駆動の停止制御を開始する時点から、前記第2駆動モータが逆転し定速状態になる時点の間の期間において、前記第2駆動モータに対して積分ゲインを用いたフィードバック制御により行う、
ことを特徴とする折り処理装置。
【請求項2】
挟持して搬送される用紙に折り処理を行う折り処理装置であって、
第1駆動モータにより駆動され、搬送された用紙を受け取り、排紙方向へ搬送する一対の搬送ローラからなる第1の搬送部材と、
第2駆動モータにより駆動され、前記第1の搬送部材から搬送された前記用紙を前記排紙方向へ搬送するように回転する正転と当該排紙方向の反対方向へ搬送するように回転する逆転のいずれも可能な一対の搬送ローラからなる第2の搬送部材と、
前記第2の搬送部材を構成する一対の搬送ローラの一方と、前記第2の搬送部材を構成する一対の搬送ローラとは異なる搬送ローラとで構成される一対の搬送ローラからなる第3の搬送部材であって、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に保持された状態で、前記第2の搬送部材が前記逆転をしたことで撓んだ前記用紙をニップで折り込む一対の搬送ローラからなる第3の搬送部材と、
前記第1駆動モータと前記第2駆動モータの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に前記用紙を保持した状態で、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材により前記用紙を前記排紙方向に、折り位置に対応して予め設定された量だけ搬送した後に、前記第2の搬送部材を逆転することにより前記用紙を前記排紙方向の反対方向へ搬送して折り処理を行う際に、
前記第2駆動モータの駆動の停止制御を開始する時点から、前記第2駆動モータが逆転し定速状態になる時点の間の期間において、前記第2駆動モータに対して積分ゲインを用いたフィードバック制御により行う、
ことを特徴とする折り処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の折り処理装置において、
前記制御部は前記第1駆動モータおよび前記第2駆動モータの駆動を制御し、前記第1駆動モータに対して積分ゲインを用いたフィードバック制御を行うことを特徴とする折り処理装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の折り処理装置において、
前記第1および第2駆動モータはDCモータであることを特徴とする折り処理装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の折り処理装置と、
前記用紙に画像を形成する画像形成装置と、を備えた画像形成システム。
【請求項6】
請求項に記載の画像形成システムにおいて、
前記折り処理装置が前記画像形成装置内に収納されていることを特徴とする画像形成システム。
【請求項7】
挟持して搬送される用紙に行う折り処理方法であって、
第1駆動モータにより駆動される一対の搬送ローラからなる第1の搬送部材によって搬送された用紙を受け取り、排紙方向へ搬送する第1の工程と、
第2駆動モータにより前記第1の搬送部材から搬送された前記用紙を前記排紙方向へ搬送するように回転する正転と当該排紙方向の反対方向へ搬送するように回転する逆転のいずれにも駆動される一対の搬送ローラからなる第2の搬送部材によって前記第1の搬送部材から搬送された前記用紙を搬送する第2の工程と、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に保持された状態で、前記第2の搬送部材が前記逆転をしたことで撓んだ前記用紙をニップで折り込む一対の搬送ローラからなる第3の搬送部材のニップに向けて前記用紙を撓ませて折り込む第3の工程と、
を有し、
制御部による前記第1駆動モータと前記第2駆動モータの駆動を制御する制御工程において、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に前記用紙を保持した状態で、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材により前記用紙を前記排紙方向に、折り位置に対応して予め設定された量だけ搬送した後に、前記第2の搬送部材を逆転することにより前記用紙を前記排紙方向の反対方向へ搬送して撓ませて折り処理を行う際に、
前記第2駆動モータの駆動の停止制御を開始させる時点から、前記当該第2駆動モータを逆転させて定速状態にした時点までの期間において、前記第2駆動モータに対して積分ゲインを用いたフィードバック制御を行う、
ことを特徴とする折り処理方法。
【請求項8】
挟持して搬送される用紙に行う折り処理方法であって、
第1駆動モータにより駆動される一対の搬送ローラからなる第1の搬送部材によって搬送された用紙を受け取り、排紙方向へ搬送する第1の工程と、
第2駆動モータにより前記第1の搬送部材から搬送された前記用紙を前記排紙方向へ搬送するように回転する正転と当該排紙方向の反対方向へ搬送するように回転する逆転のいずれにも駆動される一対の搬送ローラからなる第2の搬送部材によって前記第1の搬送部材から搬送された前記用紙を搬送する第2の工程と、
前記第2の搬送部材を構成する一対の搬送ローラの一方と、前記第2の搬送部材を構成する一対の搬送ローラとは異なる搬送ローラとで構成される一対の搬送ローラからなる第3の搬送部材のニップに向けて前記用紙を撓ませて折り込む第3の工程と、
を有し、
制御部による前記第1駆動モータと前記第2駆動モータの駆動を制御する制御工程において、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に前記用紙を保持した状態で、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材により前記用紙を前記排紙方向に、折り位置に対応して予め設定された量だけ搬送した後に、前記第2の搬送部材を逆転することにより前記用紙を前記排紙方向の反対方向へ搬送して撓ませて折り処理を行う際に、
前記第2駆動モータの駆動の停止制御を開始させる時点から、前記当該第2駆動モータを逆転させて定速状態にした時点までの期間において、前記第2駆動モータに対して積分ゲインを用いたフィードバック制御を行
ことを特徴とする折り処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り処理装置、画像形成システムおよび折り処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置から搬送された用紙に折り処理を施す用紙折り方式として、先端突き当て方式あるいは挟持反転方式などが知られている。先端突き当て方式は、上流の装置から搬送された用紙を下流に搬送する搬送経路から分岐した専用経路において、ストッパに突き当て、折り位置の調整および撓みの形成を行い、形成された撓みを折り部にニップさせて折り処理を行う方式である。また、挟持反転方式は、上流の装置から搬送された用紙を下流の装置に搬送する搬送経路内において、用紙を支持した状態で搬送部材を逆回転させることで形成された用紙撓みを、折り部にニップさせて折り処理を行う方式である。
【0003】
挟持反転方式は、上流の装置から搬送された用紙を下流の装置に搬送する搬送経路から分岐した専用経路が不要である。また、用紙の折り位置調整をストッパではなく、下流側の搬送部材の挟持反転によって行うことでストッパの移動範囲が不要である。そのため、用紙折り処理装置の小型化が実現可能である。このような長所を備えた挟持反転方式の用紙折り装置として、例えば特開2014-101164号公報(特許文献1)、特開2014-227284号公報(特許文献2)あるいは特開2014-240325号公報(特許文献3)に開示された技術が公知である。
【0004】
このうち特許文献1には、用紙を搬送する第1の搬送部材対と、前記第1の搬送部材対によって搬送される用紙を受け取り、後段に搬送する第2の搬送部材対と、前記第1の搬送部材対と前記第2の搬送部材対によって用紙を保持した状態で、前記第2の搬送部材対を逆方向に回転させて用紙を折る第3の搬送部材対と、を備えた用紙処理装置において、前記第2の搬送部材対の一方が前記第3の搬送部材対の一方を兼ねることを特徴とする技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献1と同様の前提の用紙処理装置において、前記第1の搬送部材対と前記第2の搬送部材対を同一の駆動源によって駆動することを特徴とする技術が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、用紙を折る第1の搬送部材対と、前記第1の搬送部材対によって折られた前記用紙を下流へ搬送する第2の搬送部材対と、前記第1の搬送部材対によって折られた前記用紙をさらに折る第3の搬送部材対と、を備え、前記第2の搬送部材対は、搬送駆動時には正逆回転可能であり、非駆動時には一方の回転方向にはロックされ、他方の回転方向には回転可能である技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術は、挟持反転方式を用い、さらに第2の搬送部材対の一方が第3の搬送部材対の一方を兼ねることにより、小型化について配慮されているが、モータ負荷については特に配慮されていない。すなわち、折り動作を行う際、搬送部材対を反転させるため、用紙を挟持反転する際に用紙サイズや紙厚によって、モータ負荷が大きく変化する場合がある。このようにモータ負荷が大きく変化した場合、モータの駆動に起因する搬送量のばらつきが生じ、折り位置がずれてしまうおそれがあるが、この点に関しては、特に配慮されてはいない。
【0008】
特許文献2および3には、搬送量のばらつきの原因となるモータ負荷の変動に対処するためフィードバック制御によってモータの駆動を制御し、正確な位置で折ることができるようにしている。
【0009】
しかし、特許文献2および3記載の技術では、駆動モータについてフィードバック制御により搬送量のばらつきを補正する制御を行っているが、基本的に速度補正制御であり、速度がずれたときに速度を補正する制御となっている。確かに速度補正を行うことによって搬送量のばらつきを補正することは可能であるが、搬送量のばらつきを招く位置ずれを直接補正するのではなく、速度制御によって補正するので、補正精度に欠ける場合がある。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、挟持反転方式の折り処理を行う際、モータに起因する折り位置の位置ずれをさらに低減し、高精度の折り品質を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の一態様は、挟持して搬送される用紙に折り処理を行う折り処理装置であって、第1駆動モータにより駆動され、搬送された用紙を受け取り、排紙方向へ搬送する一対の搬送ローラからなる第1の搬送部材と、第2駆動モータにより駆動され、前記第1の搬送部材から搬送された前記用紙を前記排紙方向へ搬送するように回転する正転と当該排紙方向の反対方向へ搬送するように回転する逆転のいずれも可能な一対の搬送ローラからなる第2の搬送部材と、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に保持された状態で、前記第2の搬送部材が前記逆転をしたことで撓んだ前記用紙をニップで折り込む一対の搬送ローラからなる第3の搬送部材と、前記第1駆動モータと前記第2駆動モータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材に前記用紙を保持した状態で、前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材により前記用紙を前記排紙方向に、折り位置に対応して予め設定された量だけ搬送した後に、前記第2の搬送部材を逆転することにより前記用紙を前記排紙方向の反対方向へ搬送して折り処理を行う際に、前記第2駆動モータの駆動の停止制御を開始する時点から、前記第2駆動モータが逆転し定速状態になる時点の間の期間において、前記第2駆動モータに対して積分ゲインを用いたフィードバック制御により行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、挟持反転方式の折り処理を行う際、モータに起因する折り位置の位置ずれをさらに低減し、高精度の折り品質を確保することができる。なお、前記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
図2図1における画像形成システムの制御構成を示すブロック図である。
図3】本発明の前提となる図1における折り処理装置の折り機構の一例を示す図である。
図4図3の折機構で実施されている2つ折り処理の動作説明図で、用紙が画像形成装置側から搬送される前の初期状態を示す。
図5】用紙が画像形成装置側から第1搬送路に搬入される状態を示す動作説明図である。
図6】用紙が第1および第2搬送部材によって折り位置側まで搬送される状態を示す動作説明図である。
図7】第2搬送部材が逆転し、用紙が2つ折り位置で第2搬送部材によって折り込まれるときの状態を示す動作説明図である。
図8】第2搬送部材によって2つ折りされた用紙が第2搬送路から第3搬送部材側に搬送される状態を示す動作説明図である。
図9】第3搬送部材によって用紙の折り目が強化され、用紙がさらに第2搬送路を搬送される状態を示す動作説明図である。
図10】用紙が第2搬送路から第1搬送路に搬送される状態を示す動作説明図である。
図11】第1搬送路に戻された2つ折りされた用紙が排紙される状態を示す動作説明図である。
図12】実施例1に係る折り処理装置の折り機構の要部構成と折り処理の動作を説明するための図である。
図13】実施例1の折り時における時間と用紙の搬送距離との関係を示す特性図である。
図14】実施例1における2つ折り時の制御手順を示すフローチャートである。
図15】実施例2に係る折り処理装置の折り機構の要部構成と折り処理の動作を説明するための図である。
図16】実施例2の折り時における時間と用紙Pの搬送距離との関係を示す特性図である。
図17】実施例2における2つ折り時の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、挟持反転方式の折り処理を行う際、モータ制御に積分ゲインを用いたフィードバック制御を取り入れ、負荷変動によるモータ回転ばらつきを補正するようにした。折り動作時は用紙折り込んで搬送するためモータ負荷が大きくなるが、モータ負荷の増大に起因するモータ回転のばらつきを補正することにより、用紙搬送量のばらつきを低減させ、高精度な折り品質を確保するようにした。
【0015】
以下、本発明の実施形態について、実施例を挙げ、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。図1において、本実施形態に係る画像形成システム1は、画像形成装置200、折り処理装置100および後処理装置300から基本的に構成されている。折り処理装置100は、画像形成装置200の排紙部に設けられた所謂洞内設置型のものである。折り処理装置100には、画像形成装置200によって画像形成された用紙が搬送され、折り処理装置100で所定の折り処理が施された後、さらに後処理装置300に送られる。後処理装置300では、折り処理された用紙、あるいは折り処理されない用紙に対して例えば整合処理、綴じ処理あるいは製本処理などの後処理が施される。なお、折り処理装置100を前段の画像形成装置200と、後段の後処理装置300との間に設け、インライン状に画像形成装置200、折り処理装置100および後処理装置300を並べるようにしてシステムを構築することも可能である。
【0017】
図2は、本実施形態における画像形成システムの制御構成を示すブロック図である。
【0018】
図2において、折り処理装置100はCPU100a、I/Oインターフェイス100b等を有するマイクロコンピュータを搭載した制御回路を備えている。CPU100aには、画像形成装置200のCPUあるいは操作パネル201の各スイッチ等、および図示しない各用紙検知センサからの信号が通信インターフェイス100cを介して入力される。CPU100aは、画像形成装置200側から入力された信号に基づいて所定の制御を実行する。さらに、CPU100aは、ドライバ、モータドライバを介してソレノイドおよびモータを駆動制御し、インターフェイスから装置内の用紙検知センサ情報を取得する。また、例えば制御対象に対してI/0インターフェイス100bを介してモータドライバによりモータの駆動制御を行い、用紙検知センサから用紙検知情報を取得する。なお、CPU100aによる制御は、例えば図示しないROMに格納されたプログラムコードをCPU100aが読み込んで図示しないRAMに展開し、当該RAMをワークエリアおよびデータバッファとして使用しながら前記プログラムコードで定義されたプログラムに基づいて実行される。
【0019】
図3は、従来から実施されている本発明の前提となる折り処理装置100の折り機構の構成の一例を示す図である。
【0020】
折り処理装置100は、第1搬送路W1および第2搬送路W2の2つの搬送路を備え、これら2つの搬送路W1,W2に沿って、第1ないし第3の複数の搬送部材F1,F2,F3が配置されている。第2搬送部材F2は第1搬送路W1と第2搬送路W2を挟んだように配置され、第1搬送路W1から第2搬送路W2に用紙Pを折って受け渡す機能を有する。
【0021】
第1搬送部材F1は第1搬送ローラ対R1から構成されている。第2搬送部材F2は第1ないし第4搬送ローラR2,R3,R4,R5から構成されている。第3搬送部材F3は第2搬送ローラ対R6から構成されている。第1および第2搬送ローラ対R1,R6(第1搬送部材F1および第3搬送部材F3)はそれぞれ第1および第3駆動モータM1,M3によって駆動され、用紙Pに搬送力を付与する。
【0022】
第1搬送ローラ対R1は第1搬送路W1の折り処理装置100の入口側に設けられ、前段の画像形成装置200から用紙を受け入れ、第1駆動モータM1によって駆動されて折り処理装置100の下流側に用紙Pを搬送する。
【0023】
第2搬送路W2は、図示しないが、用紙搬送方向下流側(排紙側)の端部W2aが第1搬送路W1の下流側で合流し、用紙搬送方向上流側の端部W2bが第1搬送ローラ対R1の上流側に合流するようになっている(図4)。そして、第1搬送路W1の第1搬送ローラ対R1の下流側の第2搬送部材F2の設置箇所で第2搬送路W2と連通経路W2cにより繋がっている。
【0024】
第2搬送部材F2では、第1および第2搬送ローラR2,R3が第1搬送路W1を挟んで対向し、両者間に第2ニップN2を形成している。また、第2および第3搬送ローラR3,R4が第1搬送路W1と第2搬送路W2との間に対向して配置され、両者間に第3ニップN3を形成している。そして、第3ニップN3によって案内される経路が、第1搬送路W1から第2搬送路W2に用紙を導く連通経路W2cとして機能する。さらに、第2および第4搬送ローラR3,R5が第2搬送路W2を挟んで対向し、両者間に第4ニップN4を形成している。
【0025】
これら第1ないし第4搬送ローラR2~R5は、第2搬送ローラR3を駆動する第2駆動モータM2により駆動される。すなわち、第2搬送部材F2は第2駆動モータM2によって駆動される。第2駆動モータM2は正逆両方向に回転可能であり、回転方向を変更することにより、用紙Pを搬送し、また折り処理を行う。なお、第2搬送部材F2は、搬送ローラ対だけでなく、粘着搬送ローラ対または吸着ベルトで構成されてもよい。
【0026】
第2搬送部材F2では、第2搬送ローラR3が駆動搬送ローラであり、第1、第3および第4搬送ローラR2,R4,R5はそれぞれ第2搬送ローラR3に接触して回転する従動搬送ローラである。また、第2搬送ローラR3と第3搬送ローラR4によって第1の折り手段が構成され、第2搬送ローラR3と第4搬送ローラR5によって第2の折り手段が構成される。
【0027】
第1、第3および第4搬送ローラR2,R4,R5はそれぞれ第1ないし第3圧縮ばね(弾性部材)S2,S3,S4によってそれぞれ第2搬送ローラR3側に向かって弾性力が付与され、第2搬送ローラR3との接触が保持される。これにより、第2搬送ローラR3から駆動力を得て、他の3つの搬送ローラR2,R4,R5が従動する。
【0028】
第1搬送ローラ対R1は駆動搬送ローラR1aと従動搬送ローラR1bとからなり、駆動搬送ローラR1aに前記第1駆動モータM1から駆動力が付与される。従動搬送ローラR1bは第1圧縮ばねS1によって駆動搬送ローラR1a側に弾性力が付与され、第1ニップN1で接触し、その状態で従動する。第2搬送ローラ対R6は駆動搬送ローラR6aと従動搬送ローラR6bとからなり、駆動搬送ローラR6aに前記第3駆動モータM3から駆動力が付与される。従動搬送ローラR6bは第5圧縮ばねS5によって駆動搬送ローラR6a側に弾性力が付与され、第5ニップN5で接触し、その状態で従動する。
【0029】
また、第1搬送路W1の第1搬送ローラ対R1の直前には第1用紙検知センサSN1が配置され、第1および第2搬送ローラR2,R3ニップ直後には第2用紙検知センサSN2が配置されている。さらに、第2搬送路W2の第2搬送ローラ対R6の第4搬送ローラR5から離れた側の直近には第3用紙検知センサSN3が配置されている。なお、第1用紙検知センサSN1は入口用紙検知センサとして、第2用紙検知センサSN2は排紙用紙検知センサとして、それぞれ機能する。
【0030】
本折り処理装置100では、図3に示した折り機構によって2つ折り、Z折り、内3つ折り、外3つ折りを行うことができる。これらの各折り動作は図3に示したCPU100aによって指示され、実行される。
【0031】
図4ないし図11は2つ折りする場合の各部の動作を示す従来から実施されている折り処理の動作説明図である。
【0032】
図4は用紙が画像形成装置200側から搬送される前の初期状態を示す。図4の状態から図5に示すように用紙Pが画像形成装置200側から第1搬送路W1に搬入される。用紙Pの先端P1を第1用紙検知センサ(入口用紙検知センサ)SN1が検出すると、第1駆動モータM1が回転を開始する。用紙Pが第1搬送ローラ対R1の第1ニップN1に進入すると、用紙Pは第1搬送ローラ対R1によって下流側の第2搬送部材F2側に搬送される。第2搬送部材F2に先端が達した用紙Pは、第1および第2搬送ローラR2,R3間の第2ニップN2に挟持され、さらに下流側まで搬送される。
【0033】
用紙Pの先端P1が第2用紙検知センサSN2によって検知された時点で、第2駆動モータM2は減速し、2つ折りに対応する予め設定された搬送量Δ0まで搬送される(図6)。当該搬送量Δ0の位置、言い換えれば、用紙Pの搬送方向の中央部が第3ニップN3で折られる位置に達すると一旦停止する。そして、逆方向の回転を開始する(図7)。その際、第1搬送ローラ対R1も第1および第2搬送ローラR2,R3と同期して停止し、その後、第1および第2搬送ローラR2,R3と同速で用紙Pを搬送方向下流側に搬送する。
【0034】
この場合、上流から搬送されてきた用紙Pが第2用紙検知センサSN2の検知位置を切った際に即座に第3駆動モータM3を停止させるのではなく、予め設定された搬送量Δ0経過後に停止し、あるいはその後、逆転させるように第2駆動モータM2は制御される。前記搬送量Δ0の設定には、ジョブを開始する前(用紙Pに画像形成を行う前)に用紙Pの搬送方向の長さのデータを画像形成装置200からCPU100aが受け取り、そのデータに基づいて自動的に移動量を算出し、その算出結果を使用する。算出しなくとも、用紙サイズと移動量との関係を予めテーブル化してROMに格納しておき、用紙サイズに応じて移動量を設定することもできる。
【0035】
第2駆動モータM2が逆回転すると、用紙Pは図7に示すように連通経路W2cにおいて第2および第3搬送ローラR3,R4によって形成される第3ニップN3側に膨らむ。そして、図8に示すように第3ニップN3に導かれて折り込まれ、折り目P2を先頭にして第2搬送路W2側に進む。なお、第1搬送ローラ対R1を停止させることなく排紙方向の回転を継続させて同様に制御することもできる。
【0036】
連通経路W2cでは、第1搬送路W1は第3ニップN3に面した側は開放され、そうでない側は閉鎖されているので、用紙Pは第3ニップN3側に膨らむ。しかし、ここでジャムが生じないように、図示しない案内爪を第1および第2搬送ローラR2,R3によって形成される第2ニップN2の直前に配置し、第1および第2搬送ローラR2,R3が逆転したときに、用紙Pの撓む方向を第3ニップN3方向に導くように構成することもできる。
【0037】
図8に示すように、第3ニップN3で折り込まれた用紙Pの折り目P2は、第2搬送路W2の下り勾配の傾斜に沿って第2搬送ローラ対R6方向に導かれ、第2搬送ローラ対R6の第5ニップN5で折り目が強化される。その後、第2搬送路W2と第1搬送路W1を繋ぐ接続搬送路W2dを通って第1搬送路W1の第1搬送ローラ対R1の上流側から当該第1搬送ローラ対R1の第1ニップN1に送り込まれる(図9図10)。
【0038】
第1搬送ローラ対R1の第1ニップN1に送り込まれた用紙Pは、第1搬送ローラ対R1によって第2搬送部材F2方向に搬送され、図11に示すように第2搬送部材F2の第1および第2搬送ローラR2,R3対に受け渡され、第1および第2搬送ローラR2,R3によって後段に排紙される。
【0039】
その際、2つ折りされた用紙の後端が第3用紙検知センサSN3を抜けたら第2および第3駆動モータM2,M3を停止させる。次紙がある場合には、図4からの動作を繰り返し、2つ折りした用紙を後段に、ここでは、後段の後処理装置300に排紙する。
【0040】
なお、後段に後処理装置300を備えていない場合には、後処理装置300に代えて設けられた排紙トレイ400に排紙するように構成することもできる。したがって、本画像形成システムの最小システム構成は、画像形成装置200と折り処理装置100とからなるシステムである。
【0041】
また、本折り処理装置100では、図3に示した折り機構によって2つ折り、Z折り、内3つ折り、外3つ折りを行うことができる。ここでは、2つ折りのみ、折り処理の動作を説明しているが、Z折り、内3つ折り、外3つ折りについては、前述の特許文献1に記載された技術と同様なので、他の折り処理の動作についての説明は省略する。
【実施例1】
【0042】
図12は、実施例1に係る折り処理装置の折り機構の要部構成と折り処理の動作を説明するための図である。図12(a)は用紙を第1搬送路の下流側に搬送する状態を示す図、図12(b)は折り動作を開始した直後の状態を示す図である。
【0043】
本実施例においては、折り機構は、積分ゲインを用いたフィードバック制御を含む折り処理制御により用紙に折りを施す。なお、前述の前提となる従来例と同等な各部には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、煩雑さを避けるため、従来例に付した参照符号は説明には使用するが図面では一部割愛する。
【0044】
図12において、折り処理装置100は折り機構50を含む。折り機構50は、第1搬送路W1および第2搬送路W2の2つの搬送路を備え、これら2つの搬送路W1,W2に沿って、第1、第2および第4搬送部材F1,F2,F4が配置されている。第1搬送部材F1は第1搬送路W1の入口側に配置され、第2搬送部材F2は第1搬送路W1の出口側に配置されている。第4搬送部材F4は第1搬送部材F1と第2搬送部材F2の中間部に第1搬送路W1に沿って、実施例1における第2搬送ローラR3と第3搬送ローラR4と同様の関係で並べて配置されている。この第4搬送部材F4は、第1搬送路W1と第2搬送路W2の間に挟まれたように配置され、第1搬送路W1から第2搬送路W2に用紙Pを折って受け渡す機能を有する。なお、本実施例では、第4搬送部材F4は、第2搬送部材F2とは離間した位置に配置されている。
【0045】
第1搬送部材F1は実施例1と同様に第1搬送ローラ対R1から構成されている。第2搬送部材F2は第2搬送ローラ対を構成する第1搬送ローラR2と第2搬送ローラR3から構成されている。第4搬送部材F4は第3搬送ローラR4と第5搬送ローラR7から構成され、折りローラ対として機能する。
【0046】
第1搬送ローラ対R1は第1駆動モータM1によって駆動され、第2搬送ローラ対は第2駆動モータM2によって駆動される。第4搬送部材F4である折りローラ対については、第4駆動モータM4が設けられ、例えばタイミングベルトによって駆動力が第5搬送ローラR7に伝達され、当該折りローラ対が駆動される。各駆動モータM1,M2およびM4は用紙Pに搬送力を付与し、第4駆動モータM4は、さらに用紙Pを折る力を付与する。
【0047】
実施例1の従来例との相違点は、折りに関連する搬送ローラを1台の駆動モータで駆動するか、2台の駆動モータで駆動するかという点である。従来例では、第1、第2および第3搬送ローラR2,R3,R4を第2駆動モータM2で駆動している。これに対し、実施例2では、第1および第2搬送ローラR2,R3を第2駆動モータM2で駆動し、第3搬送ローラR4および第5搬送ローラR7を第4駆動モータM4で駆動している。その他の各部は従来例1と同等に構成され、実施例1で図示していない構成は従来例に図示した構成と同様に構成されている。
【0048】
以下、実施例1における折り動作について、さらに図13の特性図を参照しながら説明する。図13の特性図は折り時における時間と用紙Pの搬送距離との関係を示す。
【0049】
この折り機構50では、図12(a)に示すように画像形成装置200から搬送された用紙Pを、第1搬送部材F1と、第2搬送部材F2で下流側(矢印A方向)に搬送する。用紙Pの先端が第2用紙検知センサSN2で検知された(T1)後、予め設定された搬送量Δ1(例えば距離Xmm)搬送し(T2)、第2搬送部材F2は停止し(T3)、第4搬送部材F4が矢印B方向に回転を開始する。第2搬送部材F2が停止すると、第1搬送部材F1と第2搬送部材F2との間で線速差が生まれ、図7にも示したように用紙Pに撓みが生じる。すなわち、用紙Pの先端側が停止した状態で第1搬送部材F1によって用紙Pがさらに矢印A方向に搬送されることから用紙Pに撓みが生じることになる。
【0050】
撓みは、図12(b)に示すように第4搬送部材F4(折りローラ対)のニップの直前の空間に形成され、撓みが最大になった時点でニップに進入し、2つに折られながら第2搬送路W2に導かれる。その際、第2搬送部材F2を回転駆動する第2駆動モータM2は停止状態にあり、用紙Pは第2搬送部材F2のニップN2に挟まれているが、第4搬送部材F4の搬送力により用紙Pの逆方向(反矢印A方向)の移動が許容される。これを確実に行わせるために、例えば一方向クラッチを第2搬送部材F2に設けてもよい。
【0051】
ここで、第2搬送部材F2が用紙Pを前記予め設定された距離Xmm搬送する際に、第1搬送部材F1と第2搬送部材F2が略等速で用紙Pを下流側に搬送する期間を第1期間a1とし、第2搬送部材F2が減速し始めてから停止するまでの期間を第2期間a2とする。また、用紙Pが第2搬送部材F2の停止により前記距離Xmmの位置で停止している期間を第3期間bとする。第3期間bが終了した時点で、第4搬送部材F4による用紙Pの折り込みが開始される。第2期間a2は、第2駆動モータM2の駆動の停止制御を開始させるタイミングT2から停止が完了するタイミングT3の間の期間である。この期間に第1搬送部材F1と第2搬送部材F2の間で撓みが形成され、第2駆動モータM2に負荷変動が生じ、搬送距離の目標値(図13点線)と実測値(図13実線)で偏差が生じる。なお、ここでいう負荷変動は、用紙Pの搬送負荷以外に用紙Pの撓みによる反力によって生じるもので、搬送部材から駆動系を伝達し、駆動モータ側に負荷として生じるものを意味する。
【0052】
すなわち、第2駆動モータM2を停止させるにしても瞬間的に停止するものではなく、タイミングベルトなどの動力伝達系のタイムラグもあり、第2搬送部材F2が完全に停止するのは、モータ停止から遅れたタイミングとなる。また、第2駆動モータM2が停止し、あるいは第2搬送部材F2が減速している間にも、用紙Pには第2搬送部材F2によって搬送力が付与されているので、第2搬送部材F2が減速し、あるいは停止した状態でも用紙Pは第1搬送部材F1の搬送力によって矢印A方向に押し込まれる。そのため、用紙Pの先端を第2用紙検知センサSN2で検知してから距離Xmmで用紙Pの搬送を停止させようとしても、第2期間a2で図13に示す偏差によって距離Xmmの位置に誤差が生じる。
【0053】
従来では、この偏差を速度補正制御で対処していたが、速度補正だけでは誤差を所望の範囲まで小さくすることが難しかった。そこで、本実施例では、搬送量の補正に位置補正をかけるため、第2駆動モータM2の停止制御にPID(Proportional, Integration and Differential)制御を実行する。PID制御は、駆動モータとしてDCモータを使用する場合に好適な制御で、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、その積分および微分の3つの要素によって行う方法である。PID制御は、目標との差(偏差)の大きさに比例した操作を行う比例制御(P)、目標との差(偏差)をなくすような制御を行う積分制御(I)、および変換に対してそれを抑えるような操作を行う微分制御(D)を組み合わせて制御する。その際、例えば目標速度と測定速度の偏差を検出し、検出された速度偏差に対して比例(P)+積分(I)+微分(D)による演算処理が施され、当該制御が実施される。
【0054】
本実施例では、この演算処理結果に基づいて、CPU100aはDCモータの駆動に必要な電力を出力するための信号を図2に示すモータドライバに出力して駆動モータをPID制御する。本実施例では、CPU100aによって制御すると説明しているが、例えばASICなどの制御用ICを使用してこの種の制御を行うこともできる。PID制御の一例としては、例えば本出願人の出願に係る特開2004-185056号公報などが挙げられる。PID制御は一般に使用されている公知の制御手法である。同公報からも分かるように、PID制御は制御対象に応じて、言い換えれば実機の構成および制御条件に応じて各定数が設定され、実行される。
【0055】
本実施例では、第2期間a2で生じる偏差を、積分ゲインを用いたフィードバック制御、すなわちPID制御で打ち消す。すなわち、第2搬送部材F2を駆動する第2駆動モータM2の回転ばらつきをPID制御により補正することにより、搬送量のばらつきを低減させ、距離Xmmで精度よく停止させ、結果として高精度な折り品質を確保することができる。
【0056】
その他、特に説明しない各部および各部の動作は、公知例として説明した前提となる技術と同様であり、本実施例のPID制御を前記技術に適用することにより、2つ折り、Z折り、内3つ折り、外3つ折りをPID制御で精度よく行うことができる。
【0057】
図14は本実施例における2つ折り時の制御手順を示すフローチャートである。本制御手順では、第1用紙検知センサSN1が用紙Pの先端を検知すると(S101:YES)、第1搬送部材F1の搬送が開始される(S102)。用紙Pの先端が第2搬送部材F2のニップN2の直前まで搬送されると(S103:YES)、第2搬送部材F2は搬送方向(矢印A方向)に回転を開始する(S104)。そして、予め設定された搬送量Δ1(距離Xmm)搬送されると(S105:YES)、第2搬送部材F2の回転を停止させる。このS105で距離Xmmの搬送が行われる間、前述のPID制御が実行される。
【0058】
第2搬送部材F2の回転が停止すると、第4搬送部材F4の回転を開始させる(S107)。第4搬送部材F4のニップで折り込まれた用紙Pの折り目P2は、第2搬送ローラ対R6の第5ニップN5で折り目が強化される。その後、第2搬送路W2と第1搬送路W1を繋ぐ接続搬送路W2dを通って第1搬送路W1の第1搬送部材F1により第2搬送部材F2方向に搬送され、第2搬送部材F2に受け渡され、後段に排紙される。その際、2つ折りされた用紙Pの後端が第3用紙検知センサSN3に検知され(S108:YES)、さらに用紙後端が第1搬送部材F1を抜けたら第2および第4駆動モータM2,M4を停止させる(S109)。
【0059】
この処理を1枚ごとに繰り返すことにより連続して2つ折りの用紙Pを生成することができる。
【実施例2】
【0060】
図15は、実施例2の折り機構を示す図である。実施例2は積分ゲインを用いたフィードバック制御を含む折り処理を行う他の実施例である。図15(a)は用紙を第1搬送路下流側に搬送する状態を示す図、図15(b)は折り動作を開始した直後の状態を示す図である。折り機構の各部の構成は実施例1と同様であるため、説明は省略し、実施例2における折り動作について、さらに図16の特性図を参照しながら説明する。図16の特性図は折り時における時間と用紙Pの搬送距離との関係を示す。
【0061】
実施例2における折り機構50では、図15(a)に示すように画像形成装置200から搬送された用紙Pを、第1搬送部材F1と、第2搬送部材F2で下流側(矢印A方向)に搬送する。用紙Pの先端が第2用紙検知センサSN2で検知された(T1)後、予め設定された搬送量Δ1(例えば距離Xmm)搬送する(T2)。第2搬送部材F2は用紙Pが前記距離Xmm搬送された時点(T3)で逆転するように制御される。この逆転開始に同期して第4搬送部材F4が矢印B方向に回転を開始し、逆転が定速になった(T4)後、所定量搬送し第2搬送部材F2のニップN2から抜けると停止する(T5)。
【0062】
この逆転の過程で2つ折りが行われる。すなわち、第2搬送部材F2が逆転すると、第1搬送部材F1と第2搬送部材F2との間で搬送方向が反対となり用紙Pに撓みが生じる。すなわち、用紙Pの先端側の搬送方向が矢印A方向から反矢印A方向に搬送方向を変更した状態で第1搬送部材F1によって用紙Pはさらに矢印A方向に搬送される。このため、用紙Pの搬送方向が第1搬送部材F1と第2搬送部材F2で対向する方向となることから用紙Pは開いた空間部に向かって撓むことになる。その際、第2搬送部材F2を回転駆動する第2駆動モータM2の回転方向が逆転しているので、用紙Pは第4搬送部材F4のニップ前の空間で撓み、さらに第1搬送部材F1と第2搬送部材F2によって押し込まれるようにして第4搬送部材F4のニップに導かれ、折り処理が施される。この間に第2搬送部材F2には、用紙Pの撓みによる弾性力と第1搬送部材F1からの搬送力により、矢印A方向に力を受け、第2搬送部材F2のニップN2に矢印A方向に押し込む力が生じる。
【0063】
ここで、第2搬送部材F2が用紙Pを前記予め設定された距離Xmm搬送する際に、第1搬送部材F1と第2搬送部材F2が略等速で用紙Pを下流側に搬送する期間を第1期間c1とし、第2搬送部材F2が減速し始めてから停止し、逆転を開始し、逆転定速状態になるまでの期間を第2期間c2とする。第2期間c2は、第2駆動モータM2の駆動の停止制御を開始させるタイミングT2から逆転定速状態になるタイミングT4の間の期間である。この期間に第1搬送部材F1と第2搬送部材F2の間で用紙Pに撓みが形成され、前記矢印A方向に押し込む力によって第2駆動モータM2に負荷変動が生じ、搬送距離の目標値(図16点線)と実測値(図16実線)で偏差が生じる。また、第3期間dは、第2駆動モータM2の逆転が定速になったタイミングT4から第2搬送部材F2のニップN2から抜けて停止するタイミングT5の間の期間である。
【0064】
すなわち、第2駆動モータM2を逆転させるにしても、駆動系は瞬間的に停止するものではなく、タイミングベルトなどの駆動系のタイムラグおよびバックラッシュの誤差もあり、モータの逆転開始から遅れたタイミングで第2搬送部材F2は逆転定速状態になる。また、逆転に際しては、実施例1における停止状態を挟んで逆転が行われるので、第2駆動モータM2が停止し、あるいは第2搬送部材F2が減速している間、用紙Pには第2搬送部材F2によって搬送力が付与され、また、自身の撓みによる弾性力も作用する。このため、第2搬送部材F2が減速し、あるいは停止した状態でも用紙Pは第1搬送部材F1の搬送力によって矢印A方向に押し込まれる。その結果、用紙Pの先端を第2用紙検知センサSN2で検知してから距離Xmmで用紙Pの搬送を停止させようとしても、第2期間a2で図15に示す偏差によって距離Xmmの位置に誤差が生じる。図16では、用紙Pの押し込みによる搬送ズレを符号Zで示す。
【0065】
なお、第2駆動モータM2がDCモータであれば、セトリングタイム(停止時間)を入れずに反転動作させることは可能であるが、前述のように駆動系のタイムラグやバックラッシュにより、動作遅れが生じる。
【0066】
そこで、本実施例においても、タイミングT2からT4の第2期間c2の間、第2駆動モータM2を逆転させるとともに実施例1と同様に積分ゲインを用いたPID制御を実施する。これにより、第1搬送部材F1が用紙Pを押し込むことによって生じたバックラッシュ誤差により生じた過搬送による搬送ズレZを、逆転動作を行うことで軽減することができる。図15では、距離Xmm搬送された時点で、搬送ズレZを伴うことなく反転している。また、目標値と実測値との偏差も積分ゲインを用いたPID制御で打ち消すことができるので、第2搬送部材F2の搬送量のばらつきを低減させることができる。本実施例においても、PID制御は制御対象に応じて、言い換えれば実機の構成および制御条件に応じて各定数が設定され、実行される。
【0067】
なお、公知例として説明した前提となる図3に示した構成に実施例1あるいは2のPID制御を適用することにより、2つ折り、Z折り、内3つ折り、外3つ折りをPID制御で精度よく行うことができる。
【0068】
図17は本実施例における2つ折り時の制御手順を示すフローチャートである。本制御手順では、第1用紙検知センサSN1が用紙Pの先端を検知すると(S201:YES)、第1搬送部材F1の搬送が開始される(S202)。用紙Pの先端が第2搬送部材F2のニップN2の直前まで搬送されると(S203:YES)、第2搬送部材F2は搬送方向(矢印A方向)に回転を開始する(S204)。そして、予め設定された搬送量Δ1(距離Xmm)搬送されると(S205:YES)、第2搬送部材F2を逆転させ、第4搬送部材F4の回転を開始させる(S206)。第4搬送部材F4のニップで折り込まれた用紙Pの折り目P2は、第2搬送ローラ対R6の第5ニップN5で折り目が強化される。
【0069】
その後、第2搬送路W2と第1搬送路W1を繋ぐ接続搬送路W2dを通って第1搬送路W1の第1搬送部材F1によって第2搬送部材F2方向に搬送され、第2搬送部材F2に受け渡され、後段に排紙される。その際、2つ折りされた用紙Pの後端が第3用紙検知センサSN3に検知され(S207:YES)、さらに用紙後端が第1搬送部材F1を抜けたら第2および第4駆動モータM2,M4を停止させる(S208)。この処理を1枚ごとに繰り返すことにより連続して2つ折りの用紙Pを生成することができる。
【0070】
また、実施例1および2では、第1駆動モータM1、第2駆動モータM2および第4駆動モータM4を使用し、第2駆動モータM2にPID制御を適用した例を例示した。この例では、第1駆動モータM1も第2駆動モータM2の停止あるいは逆転による反作用により用紙Pから反矢印A方向の力を受けるので、第1駆動モータM1についてもPID制御を実施することが望ましい。これにより押し込む側の搬送量も補正することができる。また、第4駆動モータM4についても2つ折り時に、第1駆動モータM1および第2駆動モータM2側から用紙Pを介して力を受けるので、第4駆動モータM4についても、PID制御を実施することが望ましい。これにより、折り位置精度をさらに向上させることができる。
【0071】
加えて、前提となる図3に示した構成に実施例1あるいは2のPID制御を適用した場合も、第1、第2および第3駆動モータM1,M2,M3に同様のPID制御を実施すれば、2つ折り、Z折り、内3つ折り、外3つ折りについて、さらに折り位置の位置精度の高い折り処理が可能となる。なお、第1ないし第4駆動モータM1~M4についてのPID制御を実施する場合、各々の駆動モータについて目標とする搬送量になるように個々にパラメータを設定して補正を行うことになる。
【0072】
また、実施例1および2では、第1ないし第4駆動モータM1~M4としてDCモータが使用されている。このようにDCモータを使用することによって、分解能が高く、より細かいフィードバック制御が可能となる。そして、急激な負荷変動が発生しても脱調が起きないこと、および正転から逆転に切り替わる動作時においてもセトリングタイム(停止時間)を入れずに動作させることができるので、生産性の向上も図ることができる。
【0073】
以上のように、本発明を本実施形態に対応させれば、次のような効果を奏する。なお、以下の説明では、特許請求の範囲における各構成要素と本実施形態の各部について対応を取り、両者の用語が異なる場合には後者をかっこ書きで示し、両者の対応関係を明確にした。
【0074】
(1) 第1駆動モータM1により駆動され、搬送された用紙Pを受け取り、下流側へ搬送する第1の搬送部材(第1搬送部材F1)と、第2駆動モータM2により駆動され、前記第1の搬送部材(第1搬送部材F1)から搬送された前記用紙Pを下流へ搬送する第2の搬送部材(第2搬送部材F2)と、前記第1の搬送部材(第1搬送部材F1)と前記第2の搬送部材(第2搬送部材F2)に前記用紙Pを保持した状態で、前記第2の搬送部材(第2搬送部材F2)の搬送量に応じて折り長さを設定して折り処理を行う折り処理装置100において、前記第2駆動モータM2に対して積分ゲインを用いたフィードバック制御を行う制御部(CPU100a)を備えたので、第2の搬送部材(第2搬送部材F2)の搬送量を、積分ゲインを用いたフィードバック制御で位置補正制御することができる。
【0075】
このように速度制御に基づいて位置ズレを補正するのではなく、位置ズレを直接補正すると、速度制御に基づいて位置ズレを補正制御する場合に比べて、より一層位置ズレ補正精度を向上させることができる。その結果、挟持反転方式の折り処理を行う際、モータに起因する折り位置の位置ずれをさらに低減し、高精度の折り品質を確保することができる。
【0076】
(2) 前記(1)において、前記第2の搬送部材(第2搬送部材F2)は正逆転可能であるので、第2の搬送部材(第2搬送部材F2)の駆動系バックラッシュ誤差を低減することができる。
【0077】
(3) 前記(1)において、前記第1の搬送部材(第1搬送部材F1)および前記第2の搬送部材(第2搬送部材F2)の下流側に、撓んだ用紙Pをニップで折り込む第3の搬送部材(第4搬送部材F4)と、折られた用紙Pの搬送方向を正逆いずれかに設定する第4の搬送部材(第3搬送部材F3)と、を備えたので、3つ折りやZ折りなどの複数の折り処理を高精度の折り位置制御で実施することが可能となり、高精度な折り品質を確保できる。
【0078】
(4) 前記(1)において、前記制御部(CPU100a)は前記第1駆動モータM1および前記第2駆動モータM2の駆動を制御し、前記第1駆動モータM1に対して積分ゲインを用いたフィードバック制御を行うので、第1の搬送部材(第1搬送部材F1)の駆動にも積分ゲインを用いたフィードバック制御が含まれるので、第1の搬送部材(第1搬送部材F1)の搬送量を精度よく補正することが可能となり、より高精度な折り品質を確保できる。
【0079】
(5) 前記(1)ないし(4)において、前記第1および第2駆動モータM1,M2はDCモータであるので、分解能が高く、より細かいフィードバック制御が可能となり、急激な負荷変動でも脱調が生じることがない。
【0080】
(6) 前記(1)ないし(5)のいずれかに係る折り処理装置100と、前記用紙Pに画像を形成する画像形成装置200と、を備えた画像形成システム1としたので、前記(1)から(5)で述べた効果を層すする画像形成システムを提供することができる。
【0081】
(7) 前記(6)において、前記折り処理装置100が前記画像形成装置200内に収納されているので、画像形成装置200の設置に関し、省スペース化を図ることができる。
【0082】
(8) 第1駆動モータM1により駆動される第1の搬送部材(第1搬送部材F1)が、搬送されてきた用紙Pを受け取り、下流側へ搬送する第1の工程(S101,S102,S103、S201,S202,S203)と、第2駆動モータM2により駆動される第2の搬送部材(第2搬送部材F2)が、前記第1の工程で前記第1搬送部材F1から搬送された前記用紙Pを下流へ搬送する第2の工程(S104,S105、S204,S205)と、制御部(CPU100a)において前記第2駆動モータM2に対して積分ゲインを用いたフィードバック制御を行い、前記第1の搬送部材(第1搬送部材F1)と前記第2の搬送部材(第2搬送部材F2)に前記用紙を保持した状態で、前記第2の搬送部材(第2搬送部材F2)の搬送量に応じて折り長さを設定して折り処理を行う第3の工程(S106,S107、S206)と、を備えた折り処理方法によれば、第2の搬送部材(第2搬送部材F2)の搬送量を、積分ゲインを用いたフィードバック制御で位置補正制御することができる。この場合、位置ズレを直接補正するので、速度制御に基づいて位置ズレを補正制御する場合に比べて、より一層位置ズレ補正精度を向上させることができる。
【0083】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施例は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 画像形成システム
100 折り処理装置
100a CPU(制御部)
200 画像形成装置
M1 第1駆動モータ
M2 第2駆動モータ
F1 第1搬送部材(第1の搬送部材)
F2 第2搬送部材(第2の搬送部材)
F3 第3搬送部材(第4の搬送部材)
F4 第4搬送部材(第3の搬送部材)
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【文献】特開2014-101164号公報
【文献】特開2014-227284号公報
【文献】特開2014-240325号公報
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