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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】発汗分析装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20221101BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20221101BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61B5/00 N
G01N33/50 X
G01N27/00 Z
G01N27/00 J
A61B5/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019073297
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020171350
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優生
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓
(72)【発明者】
【氏名】都甲 浩芳
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108169307(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0131178(KR,A)
【文献】登録実用新案第3212682(JP,U)
【文献】特開2017-198577(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0289296(US,A1)
【文献】国際公開第2019/031256(WO,A1)
【文献】特開2017-080245(JP,A)
【文献】特開平10-221221(JP,A)
【文献】特開2015-158393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
G01N 27/00 -27/92
G01N 33/48 -33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルセンサと、
成分濃度算出部と、
電源制御部とを備え、
前記ウェアラブルセンサは、
着用者の身体に装着される基材と、
前記基材を貫通する孔状の流路と、
前記流路内の溶液の電気的特性に関する信号を検出するように構成された第1のセンサ部と、
前記流路を囲むように前記基材に配置されたヒータとを備え
前記基材は、前記着用者の皮膚と向かい合うように前記着用者の身体に装着され、
前記流路は、前記基材を貫通して、一方の開口が前記着用者の皮膚と向かい合うように形成され、
前記第1のセンサ部は、前記流路内に配置され、前記着用者の皮膚から分泌され前記流路内に流入した汗の中の分析対象成分に由来する電気信号を検出し、
前記ヒータは、前記流路の皮膚側の開口の周辺から前記流路内の第1のセンサ部の位置にかけて前記流路を囲むように前記基材に配置され、
少なくとも前記流路の内壁が親水性を有し、
前記成分濃度算出部は、前記ウェアラブルセンサの第1のセンサ部によって検出された電気信号から前記分析対象成分の濃度を算出し、
前記電源制御部は、前記分析対象成分の濃度の取得が終了したときに、前記ウェアラブルセンサのヒータに電力を供給して、前記ヒータを発熱させることを特徴とする発汗分析装置
【請求項2】
請求項1記載の発汗分析装置において、
前記電源制御部は、前記分析対象成分の濃度の値が安定したときに、前記分析対象成分の濃度の取得が終了したと判定することを特徴とする発汗分析装置。
【請求項3】
ウェアラブルセンサと、
成分濃度算出部と、
電源制御部とを備え、
前記ウェアラブルセンサは、
着用者の身体に装着される基材と、
前記基材を貫通する孔状の流路と、
前記流路内の溶液の電気的特性に関する信号を検出するように構成された第1のセンサ部と、
前記流路を囲むように前記基材に配置されたヒータと、
前記流路内の、前記第1のセンサ部に隣接した位置に配置された汗検出用の第2のセンサ部とを備え、
前記基材は、前記着用者の皮膚と向かい合うように前記着用者の身体に装着され、
前記流路は、前記基材を貫通して、一方の開口が前記着用者の皮膚と向かい合うように形成され、
前記第1のセンサ部は、前記流路内に配置され、前記着用者の皮膚から分泌され前記流路内に流入した汗の中の分析対象成分に由来する電気信号を検出し、
前記ヒータは、前記流路の皮膚側の開口の周辺から前記流路内の第1のセンサ部の位置にかけて前記流路を囲むように前記基材に配置され、
少なくとも前記流路の内壁が親水性を有し、
前記成分濃度算出部は、前記ウェアラブルセンサの第1のセンサ部によって検出された電気信号から前記分析対象成分の濃度を算出し、
前記電源制御部は、前記着用者の皮膚から分泌された汗が前記第1のセンサ部の位置まで到達したことを前記第2のセンサ部によって検出したときに、前記分析対象成分の濃度の取得が終了したと判定し、前記ウェアラブルセンサのヒータに電力を供給して、前記ヒータを発熱させることを特徴とする発汗分析装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発汗分析装置において、
前記基材の皮膚側の表面に設けられた撥水部をさらに備えることを特徴とする発汗分析装置
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発汗分析装置において、
前記流路の、前記皮膚と反対側の開口に設けられた多孔質膜または繊維をさらに備えることを特徴とする発汗分析装置
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発汗分析装置において、
前記成分濃度算出部によって算出された分析対象成分の濃度の値を外部装置に送信するように構成された通信部をさらに備えることを特徴とする発汗分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の汗の中の成分を分析するための発汗分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体には、筋肉や神経等の電気的な活動を行う組織があり、これらの組織を正常に稼働させ続けるために、主に自律神経系と内分泌系の働きにより、体内の電解質濃度を一定に保つ仕組みが備わっている。例えば、暑熱環境下への長時間の暴露や過度な運動等による発汗で体内の電解質が大量に失われ、体内の電解質濃度が正常値から外れると、熱中症に代表される様々な諸症状が生じることとなる。
【0003】
近年、こうした背景から、汗中の電解質濃度をモニタリングすることで、人体の電解質異常を把握する研究が行われている。例えば非特許文献1では、汗中の電解質イオン濃度をモニタリングするウェアラブルデバイスが提案されており、本デバイスによる計測結果より、電解質イオン濃度が脱水症状のバイオマーカとして有用であることが明らかになってきた。
【0004】
人体に装置を装着する形態で、汗中の電解質濃度を長時間連続測定することを考慮すると、例えば、激しい運動を一定時間実施し、その後休憩し、再度運動を実施するような場合、つまり、一定時間発汗し、その後、発汗が停止し、再度発汗した場合に、前回の発汗時の電解質イオンが乾燥して、乾燥した電解質イオンが塩としてセンサ部に固着し、その塩が再発汗時に再溶解して測定に影響を与えてしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Wei Gao,et al.,“Fully integrated wearable sensor arrays for multiplexed in situ perspiration analysis”,Nature,Vol.529,pp.509-526,2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、汗の乾燥による成分分析への影響を低減し、汗中の成分の長時間の分析を実現することができる発汗分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発汗分析装置は、ウェアラブルセンサと、成分濃度算出部と、電源制御部とを備え、前記ウェアラブルセンサは、着用者の身体に装着される基材と、前記基材を貫通する孔状の流路と、前記流路内の溶液の電気的特性に関する信号を検出するように構成された第1のセンサ部と、前記流路を囲むように前記基材に配置されたヒータとを備え前記基材は、前記着用者の皮膚と向かい合うように前記着用者の身体に装着され、前記流路は、前記基材を貫通して、一方の開口が前記着用者の皮膚と向かい合うように形成され、前記第1のセンサ部は、前記流路内に配置され、前記着用者の皮膚から分泌され前記流路内に流入した汗の中の分析対象成分に由来する電気信号を検出し、前記ヒータは、前記流路の皮膚側の開口の周辺から前記流路内の第1のセンサ部の位置にかけて前記流路を囲むように前記基材に配置され、少なくとも前記流路の内壁が親水性を有し、前記成分濃度算出部は、前記ウェアラブルセンサの第1のセンサ部によって検出された電気信号から前記分析対象成分の濃度を算出し、前記電源制御部は、前記分析対象成分の濃度の取得が終了したときに、前記ウェアラブルセンサのヒータに電力を供給して、前記ヒータを発熱させることを特徴とするものである。
また、本発明の発汗分析装置の1構成例において、前記電源制御部は、前記分析対象成分の濃度の値が安定したときに、前記分析対象成分の濃度の取得が終了したと判定することを特徴とするものである。
また、本発明の発汗分析装置は、ウェアラブルセンサと、成分濃度算出部と、電源制御部とを備え、前記ウェアラブルセンサは、着用者の身体に装着される基材と、前記基材を貫通する孔状の流路と、前記流路内の溶液の電気的特性に関する信号を検出するように構成された第1のセンサ部と、前記流路を囲むように前記基材に配置されたヒータと、前記流路内の、前記第1のセンサ部に隣接した位置に配置された汗検出用の第2のセンサ部とを備え、前記基材は、前記着用者の皮膚と向かい合うように前記着用者の身体に装着され、前記流路は、前記基材を貫通して、一方の開口が前記着用者の皮膚と向かい合うように形成され、前記第1のセンサ部は、前記流路内に配置され、前記着用者の皮膚から分泌され前記流路内に流入した汗の中の分析対象成分に由来する電気信号を検出し、前記ヒータは、前記流路の皮膚側の開口の周辺から前記流路内の第1のセンサ部の位置にかけて前記流路を囲むように前記基材に配置され、少なくとも前記流路の内壁が親水性を有し、前記成分濃度算出部は、前記ウェアラブルセンサの第1のセンサ部によって検出された電気信号から前記分析対象成分の濃度を算出し、前記電源制御部は、前記着用者の皮膚から分泌された汗が前記第1のセンサ部の位置まで到達したことを前記第2のセンサ部によって検出したときに、前記分析対象成分の濃度の取得が終了したと判定し、前記ウェアラブルセンサのヒータに電力を供給して、前記ヒータを発熱させることを特徴とするものである。
また、本発明の発汗分析装置の1構成例は、前記基材の皮膚側の表面に設けられた撥水部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の発汗分析装置の1構成例は、前記流路の、前記皮膚と反対側の開口に設けられた多孔質膜または繊維をさらに備えることを特徴とするものである
【0008】
また、本発明の発汗分析装置の1構成例は、前記成分濃度算出部によって算出された分析対象成分の濃度の値を外部装置に送信するように構成された通信部をさらに備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流路のサイズ、流路内の第1のセンサ部の位置、および流路の内壁の親水性により、毛細管現象により第1のセンサ部の位置まで汗が達し、かつ流路の、皮膚と反対側の開口まで汗が達しないように、汗の表面張力を調整することができる。そして、本発明では、ヒータを設けたことにより、汗中の分析対象成分の濃度の取得後に、ヒータを発熱させて、皮膚と反対側の開口の方へ汗を移動させて蒸発させることができる。その結果、本発明では、ウェアラブルな形態での汗成分分析において、第1のセンサ部の表面への塩の固着を低減することができ、汗中の成分の長時間の分析を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例に係る発汗分析装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る発汗分析装置のMCU部の機能ブロック図である。
図3図3は、本発明の実施例に係る発汗分析装置のウェアラブルセンサの構成を示す断面図である。
図4図4は、本発明の実施例に係る発汗分析装置の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施例において着用者の汗が流路中を上昇する様子を示す断面図である。
図6図6は、本発明の実施例において着用者の汗が流路中を上昇してセンサ部の位置まで到達した様子を示す断面図である。
図7図7は、本発明の実施例において着用者の汗が皮膚と反対側に移動する様子を示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施例に係る発汗分析装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係る発汗分析装置の構成を示すブロック図である。発汗分析装置は、ウェアラブルセンサ1と、AFE(Analog Front End)部2と、ADC(Analog Digital Converter)部3と、記憶部4と、MCU(Micro Control Unit)部5と、通信部6と、電源部7とを備えている。
【0012】
ウェアラブルセンサ1は、着用者の皮膚から分泌される汗の中の分析対象成分に由来する電気信号を検出する。
AFE部2は、アナログフロントエンドを備えており、ウェアラブルセンサ1によって検出された微弱な電気信号を増幅する。
【0013】
ADC部3は、アナログ/デジタル変換器を備えており、AFE部2によって増幅されたアナログ信号を所定のサンプリング周波数でデジタルデータに変換する。
記憶部4は、ADC部3より出力されたデジタルデータを記憶する。記憶部4は、フラッシュメモリに代表される不揮発性メモリや、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような揮発性メモリ等で実現される。
【0014】
MCU部5は、記憶部4に格納されているデジタルデータから分析対象成分の濃度を算出する信号処理と、電源制御とを担っている。
図2はMCU部5の機能ブロック図である。MCU部5は、成分濃度算出部50と、電源制御部51として機能する。
【0015】
通信部6は、MCU部5によって得られた分析結果を、スマートフォン等の外部装置(不図示)に無線または有線により送信する。無線通信の規格としては、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)などがある。また、有線通信の規格としては、例えばイーサネット(登録商標)などがある。
電源部7は、発汗分析装置への電源供給の役割を担っている。
【0016】
図3はウェアラブルセンサ1の構成を示す断面図である。ウェアラブルセンサ1は、ウェアラブルセンサ1の着用者の皮膚100と向かい合うように着用者の身体に装着される基材10と、基材10を貫通して、一方の開口110が着用者の皮膚と向かい合うように形成された孔状の流路11と、流路11内に配置され、着用者の皮膚100から分泌され流路11内に流入した汗の中の分析対象成分に由来する電気信号を検出するセンサ部12(第1のセンサ部)と、流路11の皮膚100側の開口110の周辺から流路11内のセンサ部12の位置にかけて流路11を囲むように基材10に配置されたヒータ13と、基材10の皮膚100側の表面に設けられた撥水部14と、流路11内の、センサ部12に隣接した位置に配置された汗検出用のセンサ部15(第2のセンサ部)とを備えている。
【0017】
基材10としては、例えば親水性のガラス材料または親水性の樹脂材料からなるものがある。また、撥水性の材料の表面および流路11の内壁に親水性を付与する表面処理が施されたものを基材10としてもよい。基材10に形成された流路11の直径は、例えば数mm程度である。
【0018】
基材10に親水性の材料を用いる場合には、基材10の皮膚100側の表面(図3の下面)に撥水性の表面処理を施すようにして、撥水部14を形成すればよい。基材10に撥水性の材料を用いる場合には、皮膚100と反対側の基材10の表面(図3の上面)および流路11の内壁に親水性の表面処理を施し、基材10の皮膚100側の表面のみ撥水性の材料のままとすることにより、この皮膚100側の表面を撥水部14とすることができる。
【0019】
センサ部12の例としては、非特許文献1で使用されているイオン選択性電極、酵素電極、イオン感応性電界効果トランジスタ等の電気化学センサを挙げることができる。
センサ部12は、例えば流路11の内壁面に形成される。なお、汗中の複数の成分を分析するため、対象成分の選択性を有するセンサ部12を複数設けるようにしてもよい。
【0020】
ヒータ13は、流路11の皮膚100側の開口110の周辺から流路11内のセンサ部12の位置にかけて流路11を囲むように基材10に配置されている。ヒータ13としては、例えば白金等からなる金属発熱体、炭化けい素等からなる非金属発熱体、金属発熱体または非金属発熱体の表面を例えばガラス等の保護膜で覆った発熱体がある。後述のようにヒータ13の電力は電源部7から供給される。
【0021】
なお、図3の例では、ヒータ13が基材10の皮膚100側の表面および流路11の壁面に露出する例を示しているが、ヒータ13の表面を親水性のガラスまたは親水性の樹脂で覆うことにより、ヒータ13が基材10の皮膚100側の表面および流路11の壁面に露出しない形態としてもよい。露出しているヒータ13の表面が撥水性を有する場合には、少なくとも流路11の内壁が親水性を有するように、ヒータ13の表面を親水性の材料で覆うことが望ましい。
【0022】
図4は本実施例の発汗分析装置の動作を説明するフローチャートである。測定開始時には、毛細管現象および流路11の親疎水性パターン(流路11の内壁が親水性でその周辺の撥水部14が撥水性というパターン)により、着用者の皮膚100と流路11間に汗の液滴を形成させる。汗の分泌量増加と共に、汗と空気との界面が流路11内のみで移動し、図5に示すように、汗101は流路11内に導入されていく。そして、図6に示すように、汗101は流路11内のセンサ部12の位置に到達する。
【0023】
流路11の直径、流路11の長さ、流路11内のセンサ部12の位置、および流路11の内壁の親水性(ぬれ性)は、毛細管現象によりセンサ部12の位置まで汗101が達し、かつ流路11の、皮膚100と反対側の開口111まで汗101が達しないように設定すればよい。
【0024】
センサ部12は、汗101中の分析対象成分に由来する電気信号を検出する(図4ステップS1)。
AFE部2は、センサ部12によって検出された微弱な電気信号を増幅する(図4ステップS2)。
【0025】
ADC部3は、AFE部2によって増幅されたアナログ信号をデジタルデータに変換する(図4ステップS3)。ADC部3から出力されたデジタルデータは、記憶部4に格納される(図4ステップS4)。
【0026】
成分濃度算出部50は、記憶部4に格納されているデジタルデータから分析対象成分の濃度を算出する(図4ステップS5)。汗101中の成分濃度の例としては、例えば乳酸濃度、グルコース濃度、ナトリウムイオン濃度、カリウムイオン濃度などがある。なお、非特許文献1から明らかなように、成分濃度を算出する技術は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
通信部6は、成分濃度算出部50によって算出された成分濃度の値をスマートフォン等の外部装置(不図示)に送信する(図4ステップS6)。
次に、電源制御部51は、例えば流路11内の、センサ部12に隣接した位置に設けられた水検出センサ部15がセンサ部12の位置まで汗101が到達したことを検出したときに、成分濃度の取得が終了したと判定する(図4ステップS7においてYES)。
【0028】
あるいは、電源制御部51は、成分濃度算出部50によって算出された成分濃度の値の単位時間あたりの変化量が所定の閾値以下のとき、成分濃度の値が安定したと判定し、成分濃度の取得が終了したと判定してもよい。
【0029】
電源制御部51は、成分濃度の取得が終了したと判定したとき、電源部7からヒータ13に電力を供給させて、ヒータ13を発熱させる(図4ステップS8)。ヒータ13の発熱(ヒータON)により流路11の皮膚側からセンサ部12にかけての位置が加熱されると、汗101は、熱毛管現象およびマランゴニ効果により流路11中を、ヒータ13が設置されていない低温側の開口111(皮膚100と反対側の開口111)の方へと移動し、開口111とその周辺の基材10の表面とから蒸発する(図7)。こうして、汗101をウェアラブルセンサ1から排除することができる。
【0030】
なお、開口111に、メンブレンフィルタ等の多孔質膜や、レーヨン、シルク、綿等の吸水性及び放湿性の高い繊維を配置してもよい。これにより、成分濃度測定済みの汗101を開口111で排除および乾燥させる効率を上げることが可能である。
【0031】
電源制御部51は、ヒータ13への電力供給開始時点から一定時間が経過したときに(図4ステップS9においてYES)、ヒータ13への電力供給を停止する(図4ステップS10)。ヒータ13の発熱が停止(ヒータOFF)したことにより、汗101の流路11内への導入が再開される。
こうして、例えば着用者から測定終了の指示があるまで(図4ステップS11においてYES)、ステップS1~S10の処理を繰り返し実行する。
【0032】
以上、本実施例により、ウェアラブルな形態での汗成分分析において、センサ部12の表面への塩の固着を低減することができ、汗中の成分の長時間の分析を実現することができる。流路11の開口111の周辺の基材10の表面には、乾燥した電解質イオンに由来する塩が付着する可能性があるが、皮膚100およびセンサ部12から離れた位置にあるため、基材10の表面に付着した塩が再発汗時に溶解してセンサ部12に到達する可能性は低い。
【0033】
また、本実施例では、着用者の皮膚100と流路11との間に生じる汗101の液滴の体積と、この液滴と接触する領域のウェアラブルセンサ1の表面積とを予め見積もることができれば、着用者の単位面積あたりの発汗速度および累積発汗量を算出することができる。
【0034】
すなわち、成分濃度算出部50は、ヒータ13がONになる度に上記の既知の体積を加算することで、ヒータOFFから次のヒータONまでの経過時間の総計における着用者の累積発汗量を算出することができる。
また、成分濃度算出部50は、ヒータ13がONになる度に、上記の既知の体積を、直前のヒータOFFからヒータONまでの経過時間と上記の表面積とで除することにより、着用者の単位面積あたりの発汗速度を算出することができる。
【0035】
本実施例で説明した記憶部4とMCU部5とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図8に示す。コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、ADC部3と通信部6と電源部7等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の発汗分析方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、人の汗の中の成分を分析する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…ウェアラブルセンサ、2…AFE部、3…ADC部、4…記憶部、5…MCU部、6…通信部、7…電源部、10…基材、11…流路、12…センサ部、13…ヒータ、14…撥水部、15…水検出センサ部、50…成分濃度算出部、51…電源制御部、100…皮膚、101…汗、110,111…開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8