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  • 特許-無線通信システムおよび無線通信方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】無線通信システムおよび無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20221101BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20221101BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20221101BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20221101BHJP
   H04W 92/12 20090101ALI20221101BHJP
【FI】
H04W4/06 110
H04W28/18 110
H04W84/12
H04W74/08
H04W92/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019078172
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020178194
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 保彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 笑子
(72)【発明者】
【氏名】林 崇文
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/099135(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/186540(WO,A1)
【文献】特表2017-526274(JP,A)
【文献】特開2015-041898(JP,A)
【文献】国際公開第2018/136216(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/178417(WO,A1)
【文献】特開2015-159350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同報データ送信装置から送信された同報データを入力し、無線フレームに変換して複数の受信装置に同報送信する複数の送信装置と、
前記複数の送信装置から同報送信された無線フレームを受信し、前記同報データを取得する複数の受信装置と、
前記同報データ送信装置と前記複数の送信装置に接続される制御装置と、を備え、
前記複数の送信装置は、それぞれ前記同報データから同一の無線フレームを生成し、それぞれ同一のMCSかつ同一の送信タイミングで同報送信する同報送信手段を備え、
前記制御装置は、前記同報データ送信装置から送信される前記同報データのデータレートと、前記送信装置のMCSに対応する1回の送信データ量に応じて、前記送信装置における送信タイミングの周期を算出し、前記複数の送信装置に通知する手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
同報データ送信装置から送信された同報データを入力し、無線フレームに変換して複数の受信装置に同報送信する複数の送信装置と、
前記複数の送信装置から同報送信された無線フレームを受信し、前記同報データを取得する複数の受信装置と、
前記同報データ送信装置と前記複数の送信装置に接続される制御装置と、を備え、
前記複数の送信装置は、それぞれ前記同報データから同一の無線フレームを生成し、それぞれ同一のMCSかつ同一の送信タイミングで同報送信する同報送信手段を備え、
前記複数の送信装置の同報送信手段は、前記制御装置の通知に従ってランダムアクセス制御におけるランダムバックオフ値を共通の固定値に設定し、キャリアセンスにより信号を検出しないときに記送信タイミングで前記無線フレームの送信を開始する構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
同報データ送信装置から送信された同報データを入力し、無線フレームに変換して複数の受信装置に同報送信する複数の送信装置と、
前記複数の送信装置から同報送信された無線フレームを受信し、前記同報データを取得する複数の受信装置と、
前記同報データ送信装置と前記複数の送信装置に接続される制御装置と、を備え、
前記複数の送信装置は、
それぞれ前記同報データから同一の無線フレームを生成し、それぞれ同一のMCSかつ同一の送信タイミングで同報送信する同報送信手段と、
相互に受信するビーコン信号の受信電力値に基づいてエラー率が要求を満たすものとして選択したMCSを、前記制御装置に通知する手段と、を備え、
前記制御装置は、各送信装置から通知されたMCSのうちエラー率を最低とするMCSを選択して、前記複数の送信装置に通知する手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記無線フレームのMACヘッダの各フィールドに設定する共通のパラメータ値を前記複数の送信装置に通知する手段を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロードキャスト通信またはマルチキャスト通信により同報サービスを行う無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在最も広く普及している自律分散的なアクセス制御を行う無線通信システムの例としては、IEEE802.11標準規格(非特許文献1)に基づいた無線LANシステムがある。
【0003】
一般的に同報サービスとして、ブロードキャストとマルチキャストがある。IEEE802.11無線LANシステムでは、グループアドレス、すなわち宛先が複数の端末であるデータとして扱い方が定められている。IEEE802.11標準規格では、「10.3.6 Group addressed MPDU transfer procedure」に、同報データの基本的な伝送手順に関する規定があり、また「11.2 Power management 」には端末装置が省電力モードで動作している場合のデータ転送手順に関する規定がある。
【0004】
図5は、IEEE802.11標準規格における一般的なユニキャストフレーム送信時のフレーム転送手順を示す。APがアクセス制御手順に従ってユニキャストフレームを送信し、STAが正常に受信すると、ACKを返信する。
【0005】
図6は、IEEE802.11標準規格における同報フレーム(ブロードキャストフレーム/マルチキャストフレーム)を送信する手順を示す。APがユニキャストフレーム送信時と同様のアクセス制御手順に従い、同報フレームを送信する。しかし、STAは、正常に受信した場合にもACKを返信しない。これは、同報フレームの伝送では宛先が複数存在することから、それぞれのSTAがACKを返信すると衝突が生じるためである。よって、ブロードキャスト/マルチキャスト通信では、フレーム送信後の応答を返すという手順が存在しないため、ユニキャスト通信と比較して通信品質や信頼性が低くなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】IEEE Std 802.11-2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同報通信(ブロードキャスト/マルチキャスト通信)の単方向でのみ通信を行う場合は、双方向で通信を行う場合と比べて宛先となる通信相手からの応答フレームがないため、通信が成功したのか否か、通信品質の現状などのフィードバック情報を獲得することができない。そのため、現状では、無線フレームを送信しても伝搬路など通信環境が悪くフレームエラーが多発してコンテンツを正常に受信できないことや、逆にフレームエラー率を低くするために必要以上に低速レートを使用して容量が小さくなる課題があった。
【0008】
本発明は、同報通信において、単方向の通信でも通信品質や信頼性を高めることができる無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、同報データ送信装置から送信された同報データを入力し、無線フレームに変換して複数の受信装置に同報送信する複数の送信装置と、複数の送信装置から同報送信された無線フレームを受信し、同報データを取得する複数の受信装置とを備えた無線通信システムにおいて、複数の送信装置は、それぞれ同報データから同一の無線フレームを生成し、それぞれ同一のMCSかつ同一の送信タイミングで同報送信する同報送信手段を備える。
【0010】
第1の発明の無線通信システムにおいて、同報データ送信装置と複数の送信装置に接続される制御装置を備え、制御装置は、同報データ送信装置から送信される同報データのデータレートと、送信装置のMCSに対応する1回の送信データ量に応じて、送信装置における送信タイミングの周期を算出し、複数の送信装置に通知する手段を備える。
【0011】
第1の発明の無線通信システムにおいて、複数の送信装置の同報送信手段は、ランダムアクセス制御におけるランダムバックオフ値を共通の固定値に設定し、キャリアセンスにより信号を検出しないときに送信タイミングで無線フレームの送信を開始する構成である。
【0012】
第1の発明の無線通信システムにおいて、制御装置は、無線フレームのMACヘッダの各フィールドに設定する共通のパラメータ値を複数の送信装置に通知する手段を備える。
【0013】
第1の発明の無線通信システムにおいて、複数の送信装置は、相互に受信するビーコン信号の受信電力値を制御装置に通知する手段を備え、制御装置は、各送信装置の受信電力値に応じてMCSを算出し、複数の送信装置に通知する手段を備える。
【0014】
第2の発明は、複数の送信装置が、同報データ送信装置から送信された同報データを入力し、無線フレームに変換して複数の受信装置に同報送信し、複数の受信装置が、複数の送信装置から同報送信された無線フレームを受信し、同報データを取得する無線通信方法において、複数の送信装置は、それぞれ同報データから同一の無線フレームを生成し、それぞれ同一のMCSかつ同一の送信タイミングで同報送信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、同報データ送信装置から送信された同報データを複数の送信装置から同一の無線フレームとして、同一のMCSかつ同一の送信タイミングで同報送信し、受信装置で同一の無線フレームを重畳して受信することにより、見かけ上の受信電力値が向上してSINRが改善し、通信容量を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の無線通信システムの実施例構成を示す図である。
図2】本発明の無線通信システムの同報送信例を示すタイムチャートである。
図3】送信装置100の構成例を示す図である。
図4】制御装置20の構成例を示す図である。
図5】ユニキャストフレーム送信時のフレーム転送手順を示す図である。
図6】同報フレーム(ブロードキャスト/マルチキャストフレーム)を送信する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の無線通信システムの実施例構成を示す。
図1において、例えばコンテンツサーバなどの同報データ送信装置10は、ブロードキャストまたはマルチキャストする同報データを出力し、制御装置20を介して複数の送信装置100-1~100-Mに転送する。各送信装置100-1~100-Mは、それぞれ入力した同報データを無線フレームに変換し、受信装置200-1~200-Nに向けて同報送信し、グループアドレスで指定された受信装置が受信する。
【0018】
本発明の特徴は、複数の送信装置100-1~100-Mが、それぞれ同報データから同一の無線フレームを生成し、それぞれ同一のMCS(変調・符号化方式)かつ同一の送信タイミングで同報送信するところにある。例えば、図2に示すように、送信装置1,2が同一の無線フレームを同一のMCSかつ同一の送信タイミングで送信すると、受信装置1,2がそれぞれ送信装置1,2から送信された同一の無線フレームを重畳して受信する。これにより、受信装置1,2では、見かけ上の受信電力値が向上し、SINRを改善することができる。
【0019】
ここで、同一の送信タイミング、同一の無線フレーム、同一のMCSについて説明する。
【0020】
(同一の送信タイミングについて)
受信装置が複数の送信装置から送信された複数の無線フレームを重畳して受信し、一つの無線フレームとして受信処理するためには、複数の送信装置がそれぞれ無線フレームの送信タイミングを一致させる必要がある。なお、厳密には複数の送信装置から送信された無線フレームを受信装置が同時に受信する必要があるが、複数の送信装置が同時に送信すれば、受信装置における受信時間の差は、無線フレームの受信処理の際に吸収できるものとする。
【0021】
図1の構成では、制御装置20が各送信装置100-1~100-Mの送信タイミングを決定し、各送信装置に通知する。送信タイミングは、相対時間でもよいし絶対時間でもよい。制御装置20は、同報データ送信装置10の同報データのデータレートと、各送信装置の1回の送信データ量に応じて、各送信装置における送信タイミングの周期を算出する。例えば、同報データのデータレートが2Mbps 、MCSに対応する1回の送信データ量が1500バイト×10パケットとすると、送信タイミングの周期は、
1500×8×10/(2×106 )=0.06(秒)
となる。
【0022】
なお、この送信タイミングは、無線フレームを送信装置のアンテナから送信開始する時間を示す。アンライセンス帯でCSMA/CA制御を行う無線LANのような無線通信システムでは、送信タイミングになる前にキャリアセンスを行い、チャネル上に他の装置が送信する信号を検出しないときにランダムバックオフ制御を行い、さらに信号を検出しないときに無線フレームを送信する。したがって、複数の送信装置間でランダムバックオフ値を固定値に統一し、図2に示すようにキャリアセンス時間(CS)も一致させる必要がある。
【0023】
(同一の無線フレームおよび同一のMCSについて)
受信装置が重畳して受信した複数の無線フレームを同一フレームとして復調するためには、例えばOFDM通信の各無線フレームを同じシンボル位置で同じ位相で受信しなければならない。そのためには復調前のフレームのビット列を複数の送信装置間で揃えておく必要がある。
【0024】
図1の構成では、制御装置20が各送信装置100-1~100-Mに対して、同報データから生成する無線フレームのMACヘッダの各フィールドに設定する共通のパラメータ値を通知する。例えば、送信アドレスフィールドは、通常は個々の送信装置のMACアドレスやBSSIDが記載されるが、本発明における同一の無線フレームを生成する場合は当該送信アドレスフィールドには共通の値を設定する。また、Sequence Control値は、各送信装置で管理するのではなく、制御装置20が例えば同報データ送信装置10のIDとトラヒックフローのIDから一意に指定されるシーケンス番号を指定する。また、フラグメンテーションを行う場合には、そのサイズを制御装置20が各送信装置に指定する。このような指定の際には、規定の固定値でもよいし、任意に設定した値でもよい。
【0025】
さらに、受信装置が各無線フレームを同じシンボル位置で同じ位相で受信するためには、各送信装置のMCSも統一する必要がある。まず、各送信装置100-1~100-Mは、相互に受信するビーコン信号の受信電力値を観測し、およその距離を計算する。計算した距離の中間地点が合計受信電力値が最小になる地点であるので、この地点での電力値を勘案し、装置雑音を考慮したSINRを求め、エラー率が十分に小さいと考えられるMCSを選択する。各送信装置で求めたMCSを制御装置20に通知し、制御装置20が最低のMCSを選択して統一パラメータとして各送信装置に通知する。あるいは、各送信装置が観測した受信電力値を制御装置20に通知し、制御装置20で上記の処理を行い、共通のMCSを算出して各送信装置に通知してもよい。そして、各送信装置は、通知されたMCSを用いて無線フレームを同報送信する。なお、各送信装置で相互に受信電力値を観測できない場合は、制御装置20が設定するMCSを各送信装置に通知してもよい。
【0026】
図3は、送信装置100の構成例を示す。
図3において、送信装置100の入出力部101は、上位装置から転送されてくるデータをデータ判定部102に出力する。データ判定部102は、入力データを判定し、同報データ送信装置10から送信された同報データであれば同報データ送信キュー103に出力し、それ以外のデータであれば一般送信キュー104に出力する。なお、送信装置100が常に同報データ送信装置10からの同報データのみを受信する場合(例えばブロードキャスト専用の送信装置であった場合)は、データ判定部102と一般送信キュー104は不要である。この同報データには、同報データ送信装置10を示す発信元IDが付与され、例えば同報データを格納した無線フレームの発信元アドレスとして格納される。
【0027】
無線フレーム変調部105は、同報データ送信キュー103に格納された同報データまたは一般送信キュー104に格納されたデータを無線のフレームフォーマットに合わせて変調する。無線アクセス制御部106は、CSMA/CA等により各キューに対応するアクセス手順を経て送信権を獲得した場合に、対応するキューに格納されているデータを取り出して無線変復調部107、無線入出力部108を介して無線フレームとして送信する。
【0028】
制御情報管理部111は、制御装置20から無線フレームの送信タイミング、MACヘッダの情報、MCSの情報などが通知された場合に、送信タイミング管理部112、無線フレーム変調部105、無線変復調部107へそれぞれ通知する。無線フレーム変調部105は、通知されたMACヘッダの情報に基づいて、各送信装置が同報送信するための同一の無線フレームを生成する。送信タイミング管理部112は、送信タイミングに合わせて同報データを同報データ送信キュー103から取り出し、無線アクセス制御部106に対して送信タイミングに合わせて無線アクセス制御を開始するように制御する。無線変復調部107は、無線フレームを送信する際に、各送信装置に共通のMCSを使用して変調および符号化処理を行う。
【0029】
図4は、制御装置20の構成例を示す。
図4において、制御装置20は、同報データ送信装置10が送信する同報データをデータ入力部21で受け取り、バッファ機能を含むデータ管理部22で管理し、送信装置入出力部23を介して各送信装置に転送する。エリア内送信装置情報管理部24、パラメータ管理部25、送信タイミング制御部26は、各送信装置が同報データから同一の無線フレームを生成し、同一の送信タイミングかつ同一のMCSで送信するために必要な情報を収集し、上記のように生成した無線フレームの送信タイミング、MACヘッダの情報、MCSの情報を、エリア内送信装置情報管理部24から送信装置入出力部23を介して各送信装置に通知する。
【符号の説明】
【0030】
10 同報データ送信装置
20 制御装置
21 データ入力部
22 データ管理部
23 送信装置入出力部
24 エリア内送信装置情報管理部
25 パラメータ管理部
26 送信タイミング制御部
100 送信装置
101 入出力部
102 データ判定部
103 同報データ送信キュー
104 一般送信キュー
105 無線フレーム変調部
106 無線アクセス制御部
107 無線変復調部
108 無線入出力部
111 制御情報管理部
112 送信タイミング管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6