IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許7167991アクリル繊維、該繊維を含む紡績糸及び編地
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】アクリル繊維、該繊維を含む紡績糸及び編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/16 20060101AFI20221101BHJP
   D01F 1/02 20060101ALI20221101BHJP
   D01F 6/54 20060101ALI20221101BHJP
   D02G 3/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
D04B1/16
D01F1/02
D01F6/54 A
D02G3/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020545367
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2020031250
(87)【国際公開番号】W WO2021039528
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2019152767
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 達彦
(72)【発明者】
【氏名】小野原 透雄
(72)【発明者】
【氏名】藤江 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 志茉
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特公昭39-022688(JP,B2)
【文献】特開平05-295615(JP,A)
【文献】特開昭57-167413(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066481(WO,A1)
【文献】特開2006-200062(JP,A)
【文献】中国実用新案第201981300(CN,U)
【文献】特開平06-207311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
A41B1/00-17/00
A41D1/00-31/32
D03D1/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンの含有量が0.5質量%以上1.9質量%以下であり、前記酸化チタンがアナターゼ型であり、断面形状が三角形であるアクリル繊維を40質量%以上含有し、目付が50g/m以上500g/m以下であり、UPFが25以上、紫外線遮蔽率が90%以上である編地。
【請求項2】
UPFが25以上である請求項に記載の編地。
【請求項3】
抗ピル性能が4級以上である請求項1又は2に記載の編地。
【請求項4】
L*値が50以上である請求項のいずれか一項に記載の編地。
【請求項5】
前記アクリル繊維が、結節強度と結節伸度の積(K積)が10以上35以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の編地
【請求項6】
前記アクリル繊維が、アクリロニトリル単位90質量%以上98質量%以下とアクリロニトリル単位以外のビニル系モノマー単位2質量%以上10質量%以下との2種のモノマー単位からなる請求項1~5のいずれか一項に記載の編地
【請求項7】
前記アクリル繊維の単繊維繊度が0.6dtex以上3.3dtex以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の編地
【請求項8】
前記アクリル繊維の単繊維の繊維長が25mm以上100mm以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の編地
【請求項9】
前記酸化チタンの一次粒子径が0.1μm以上1.0μm以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の編地
【請求項10】
前記アクリル繊維は、紡績糸として編地に含有し、前記紡績糸は、前記アクリル繊維の含有率が30質量%以上であり、単糸、双糸または三子糸のいずれかであり、トータル番手が綿番手で10番以上40番以下である請求項1~9のいずれか一項に記載の編地
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル繊維、該繊維を含む紡績糸及び編地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル繊維は従来、他の合成繊維に比べて最も羊毛に類似した柔軟な風合い、保温性、嵩高性、優れた保温性を活かし、セーター等の衣料用途、カーペット等のインテリア用途に広く利用されている。しかしながら、アクリル繊維の織物・編物はその表面に毛羽、短毛等の絡まりあったピリングと呼ばれる毛玉が発生しやすく、外観を著しく損ない商品性を低下させるという実用上の欠点がある。かかる状況を背景としてピリングの発生を防止するために多くの提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1ではアクリロニトリル単位94.0質量%以上、アクリロニトリル単位以外のビニル系モノマー単位4.0~5.8質量%、およびスルホン酸基含有ビニルモノマー単位0.2~2.0質量%からなり、三角断面形状とすることで、抗ピル性を向上させたアクリル繊維が提案されている。
【0004】
一方、カーディガン、カットソーなど特に春夏用の外衣として用いられる薄手の衣料製品においては、日焼け予防としての紫外線遮蔽性や防透け性が求められる。繊維に紫外線遮蔽性や防透け性を付与する手段として、無機粒子を練り込む方法が提案されている。
【0005】
例えば特許文献2では、平均二次粒子径が100nm以上180nm以下である酸化チタンを2~7質量%含むことで紫外線遮蔽性を向上させたアクリル繊維が提案されている。
【0006】
例えば特許文献3では、特異な輝きと光沢を有し、吸塵性が少なく、耐汚染性に優れる、各角部が尖鋭な三角形状横断面を有するアクリロニトリル系重合体繊維が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-285778号公報
【文献】特開2018-53378号公報
【文献】特公昭39-22688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では抗ピル性は改善されるものの、酸化チタンを含有する示唆はなく、紫外線遮蔽効果が期待できるものではない。
特許文献2では、酸化チタンの粒子径が小さいので二次凝集が起こりやすく、繊維中の酸化チタンの含有量が多いため紡糸性が悪化するなどの問題が起こるという課題がある。加えて、特許文献2は、紡績糸に加工する際、カード工程のフライの発生を課題としているので、結節強度を高くする方向であり、結節強度を低くする抗ピル性は期待できるものではない。
特許文献3では、酸化チタンを少量含有させているが、この量では、紫外線防止効果が不足していると考えられるが、特許文献3は、輝きと光沢を与えることを課題としているため、酸化チタンの含有量を減少させる方向であり、紫外線防止効果が期待できるものではない。また、特許文献3には、結節強度と結節伸度の記載はあるが、その積(K積)は大きいものであり、抗ピル性にも課題があり、結節強度と結節伸度の調整方法も記載がないので、抗ピル性向上も期待できるものではない。
【0009】
本発明の目的は編地にした時に優れた紫外線遮蔽性能及び抗ピル性が得られる三角断面形状を有するアクリル繊維を提供することにあり、その繊維を含む紫外線遮蔽性能と抗ピル性に優れた編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
1.酸化チタンの含有量が0.3質量%以上1.9質量%以下であり、断面形状が三角形であるアクリル繊維。
2.酸化チタンの含有量が0.5質量%以上1.8質量%以下である前記1.に記載のアクリル繊維。
3.結節強度と結節伸度の積(K積)が10以上35以下である前記1.または2.に記載のアクリル繊維。
4.アクリロニトリル単位90質量%以上98質量%以下とアクリロニトリル単位以外のビニル系モノマー単位2質量%以上10質量%以下との2種のモノマー単位からなる前記1.~3.のいずれかに記載のアクリル繊維。
5.単繊維繊度が0.6dtex以上3.3dtex以下である前記1.~4.のいずれかに記載のアクリル繊維。
6.単繊維の繊維長が25mm以上100mm以下である前記1.~5.のいずれかに記載のアクリル繊維。
7.前記酸化チタンがアナターゼ型であり、一次粒子径が0.1μm以上1.0μm以下である前記1.~6.のいずれかに記載のアクリル繊維。
8.前記1.~7.のいずれかに記載のアクリル繊維の含有率が30質量%以上である紡績糸であって、単糸、双糸または三子糸のいずれかであり、トータル番手が綿番手で10番以上40番以下である紡績糸。
9.前記1.~7.のいずれかに記載のアクリル繊維を40質量%以上含有し、目付が50g/m以上500g/m以下であり、UPFが25以上、紫外線遮蔽率が90%以上である編地。
10.前記8.に記載の紡績糸を80質量%以上含有する編地。
11.UPFが25以上である前記10.に記載の編地。
12.紫外線遮蔽率が90%以上である前記10.または11.に記載の編地。
13.抗ピル性能が4級以上である前記10.~12.のいずれかに記載の編地。
14.L値が50以上である前記10.~13.のいずれかに記載の編地。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、編地にした時に優れた紫外線遮蔽性能及び抗ピル性が得られる三角断面形状を有するアクリル繊維を得ることができ、その繊維を含む紫外線遮蔽性能と抗ピル性に優れた編地を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のアクリル繊維は、酸化チタンの含有量が0.3質量%以上1.9質量%以下であり、断面形状が三角形である。
酸化チタンの含有量が0.3質量%以上であれば、高い紫外線遮蔽性能を得られるので好ましく、1.9質量%以下であれば二次凝集などで紡糸性が悪化しないので好ましい。
上記観点から、酸化チタンの含有量は0.5質量%以上1.8質量%以下がより好ましく、1.1質量%以上1.7質量%以下がさらに好ましい。
断面形状が三角形であれば、繊維側面に平面の部分が多く、繊維に紫外線が当たった際に反射が起こりやすいため、高い紫外線遮蔽性能を得られるので好ましい。上記観点から頂点が欠けた欠三角形、各辺の長さは、同じ長さが好ましいが、辺同士の長さの差が50%以内であれば、長さが異なる三角形であってもよい。また、各辺は直線状が好ましいが、辺の一部が曲線で合ってもよく、外に膨れてもよく、内側に凹んでいてもよい。
断面形状は、繊維軸方向に対する垂直方向の断面である。
【0013】
本発明のアクリル繊維は、後述する結節強伸度における結節強度と結節伸度の積(K積)が10以上35以下であることが好ましい。K積が10以上であれば紡績工程での折損が少なく工程通過性が良好となりやすく、K積が35以下であれば高い抗ピル性を持ち商品性の高い編地とすることができやすくなる。上記観点からK積は13以上33以下がより好ましく、15以上30以下が更に好ましい。
【0014】
本発明のアクリル繊維は、アクリロニトリル単位90質量%以上98質量%以下とアクリロニトリル単位以外のビニル系モノマー単位2質量%以上10質量%以下との2種のモノマー単位からなることが好ましい。
アクリロニトリル単位が90質量%以上であると良好な強度を有しやすく、紡績工程での工程通過性も良好で優れた紡績糸を得ることができやすく、98質量%以下であると紡糸工程での延伸性が良好となりやすい。上記観点から、アクリロニトリル単位は91質量%以上97質量%以下がより好ましく、92質量%以上96質量%以下が更に好ましい。
アクリロニトリル単位以外のビニル系モノマー単位が2質量%以上であると紡糸工程での延伸性が良好となりやすいため好ましく、10質量%以下であると優れた強度を得やすくなるので好ましい。
上記観点から、アクリロニトリル単位以外のビニル系モノマー単位は3質量%以上9質量%以下がより好ましく、4質量%以上8質量%以下が更に好ましい。
【0015】
アクリロニトリル単位以外のビニル系モノマーとしてはアクリロニトリルと共重合可能な成分であればよく、アクリル酸、メタクリル酸、若しくはこれらのアルキルエステル類、酢酸ビニル、アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、さらに目的によってはビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソーダ、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸ソーダ、ソディウムパラスルホフェニールメタリルエ-テル等のイオン性不飽和単量体を用いることができる。
なかでもアクリル酸、メタクリル酸、若しくはこれらのアルキルエステル類、酢酸ビニル、アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデンが取扱い性・重合安定性・コストの点で好ましい。
【0016】
本発明のアクリル繊維は、単繊維繊度が0.6dtex以上3.3dtex以下であることが好ましい。
前記単繊維繊度が0.6dtex以上であると、紡績工程での通過性がよく高い生産性を出しやすく、3.3dtex以下であるとソフトタッチで良好な風合いの編地が得られ易い。
これらの観点から、前記単繊維繊度は1.2dtex以上3.0dtex以下がより好ましく、1.7dtex以上2.8dtex以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明のアクリル繊維は、単繊維の繊維長が25mm以上100mm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、単繊維繊度が細くても紡績糸の製造がし易い。この観点から本発明のアクリル繊維の繊維長は、30mm以上70mm以下がより好ましく、35mm以上55mm以下がさらに好ましい。
【0018】
本発明のアクリル繊維は、前記酸化チタンの一次粒子径が0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。前記一次粒子径が0.1μm以上であれば二次凝集が少ないので紡糸原液中の安定性がよく、1.0μm以下であれば十分に粒子径が小さいのでノズル詰り・糸切れなどが起こり難い。
前記酸化チタンの結晶構造は特に問わないが、アナターゼ型であると色味の違いから良好なダル感を持たせることができやすくなる。
したがって、前記酸化チタンは、アナターゼ型であり、一次粒子径が0.1μm以上1.0μm以下であることが特に好ましい。
【0019】
本発明のアクリル繊維は、従来公知の重合方法、例えば、懸濁重合にてアクリロニトリル共重合体を合成する。アクリロニトリル共重合体を溶解する溶剤は、特に限定はなく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、チオシアン酸ナトリウム、ロダンソーダが使用できる。中でも、凝固が早く、吐出孔の形状と同じ繊維断面にしやすい観点から、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0020】
紡糸方法は、特に限定はなく、例えば、湿式紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸、溶融紡糸が使用できる。中でも、凝固が早い湿式紡糸が好ましい。以下、アクリル繊維を湿式紡糸にて製造する方法について説明するが、これに限定されるものではない。
例えば、懸濁重合にて得られたアクリロニトリル共重合体を、溶剤と水とが混合した凝固液中で紡糸して凝固糸を得る。
【0021】
アクリロニトリル共重合体から凝固糸を得る過程において、凝固液に使用する溶剤は、アクリルニトリル共重合体を溶解する溶剤と同じが好ましい。また、凝固液の溶剤濃度は、25質量%以上45質量%以下が好ましい。溶剤濃度が25質量%以上であれば、繊維を延伸し易く、45質量%以下であれば、凝固が早くでき、吐出孔の形状と同じ繊維断面にし易い。これらの観点から、前記溶剤濃度は、30質量%以上40質量%以下がより好ましい。
凝固液の温度は、30℃以上50℃以下であることが好ましい。この温度範囲であれば、凝固が早くでき、吐出孔の形状と同じ繊維断面にし易い。この観点から、前記凝固液の温度は、35℃以上45℃以下であることがより好ましい。
【0022】
次に、得られた凝固糸を延伸する。
凝固糸の延伸は、湿熱延伸と乾熱延伸の2段、例えば、90℃以上の熱水(沸水)中で一段目の延伸(湿熱延伸)を施し、続いて油剤を付着させ熱ローラーで乾燥後、さらに乾熱状態で2段目の延伸(乾熱延伸)を施す。このように凝固糸の延伸を2段階で実施すると、K積の値をコントロールしやすいので好ましい。
湿熱延伸倍率は、3倍以上5倍以下、乾熱延伸は1.1倍以上1.5倍以下の範囲が好ましい。
【0023】
凝固糸を延伸後、必要に応じ緩和処理を行い、アクリル繊維が得られる。
緩和処理は、加圧スチームで行うのが好ましく、その圧力は、抗ピル性向上の観点から、0.10MPa以上0.18MPa以下であることが好ましく、0.11MPa以上0.16MPa以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の含有率が30質量%以上である。
前記アクリル繊維の含有率が30質量%以上であれば、高い紫外線遮蔽性能と高い抗ピル性が得られる。前記観点から、前記アクリル繊維の含有率が35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の紡績糸は単糸、双糸、三子糸のいずれかであり、それらのいずれでも良いが、紡績糸の強度と風合いの観点から、双糸が好ましい。
【0026】
本発明の紡績糸は、トータル番手が、綿番手で10番以上40番以下である。前記綿番手が10番以上であれば、糸が太くなり過ぎず、春夏向けの薄い生地を作りやすくでき、40番以下であれば紫外線遮蔽効果を得られやすくなる。
これらの観点から、前記紡績糸のトータル番手は、13番以上35番以下がより好ましく、15番以上30番以下がさらに好ましい。
また、前記のとおり、本発明の紡績糸の番手は、トータル番手としていることから、双糸であれば、20/2~80/2の範囲となる。
【0027】
本発明の編地の第一の形態は、前記アクリル繊維を40質量%以上含有し、目付が50g/m以上500g/m以下であり、UPFが25以上、紫外線遮蔽率が90%以上である。
前記アクリル繊維を40質量%以上含有する編地であれば、紫外線遮蔽性能と抗ピル性を高くできる。これらの観点から、前記アクリル繊維を45質量%以上含有することがより好ましく、50質量%以上含有することが更に好ましい。
前記記載の編地の目付は50g/m以上であれば良好な紫外線遮蔽性能を示し、500g/m以下であれば主な用途である夏用衣料に適している。上記観点から、編地の目付は75g/m以上450g/m以下がより好ましく、100g/m以上400g/m以下がさらに好ましい。
紫外線遮蔽性としてUPFが25以上であれば十分な紫外線遮蔽性能を有しており、30以上あればより好ましく、35以上出ればさらに好ましい。同様に紫外線遮蔽率は90%以上であればよく、93%以上であればより好ましく、95%以上であればさらに好ましい。
【0028】
本発明の編地の第二の形態は、前記紡績糸の含有率が80質量%以上である。
前記紡績糸の含有率が80質量%以上であれば良好な紫外線遮蔽性能を示す。この観点から、前記紡績糸の含有率は85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0029】
第二の形態の編地は、UPFが25以上であることが好ましい。UPFが25以上であれば十分な紫外線遮蔽性能を有しており、30以上あればより好ましく、35以上あればさらに好ましい。同様に紫外線遮蔽率は90%以上であることが好ましく、93%以上であればより好ましく、95%以上であればさらに好ましい。
【0030】
第二形態の編地は、抗ピル性が4級以上であることが好ましい。
抗ピル性が4級以上であれば、衣服に毛玉が付きにくくなる。
また、第二形態の編地は、L値が50以上であることが好ましい。L値が50以上であれば、淡色でも紫外線遮蔽効果が得られる効果を奏する。この観点から、L値は70以上であることがより好ましく、85以上がさらに好ましい。
【実施例
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。尚、実施例における各項目の測定は次の方法に拠った。
(単繊維繊度の測定方法)
オートバイブロ式繊度測定器(サーチ制御電気社製、DeniorComputerDC-11)を使用し、温度25℃、湿度65%の条件下で単繊維繊度(dtex)を測定した。測定は、25回行い、平均値を使用した。
【0032】
(強伸度、結節強伸度、及びK積の測定)
JIS-L1015-8.7(引張強さ及び伸び率)、8.8(結節強さ)に準拠して、標準状態における強伸度(強度(cN/dtex)、伸度(%))、結節強伸度(結節強度(cN/dtex)と結節伸度(%))を求め、結節強度と結節伸度の積をK積とした。
【0033】
(UPF)
衣料品による紫外線防止効果を客観的に評価するために定めたれている指標UPF(紫外線防止指数)のAS/NZS4399に準拠して編地を測定した。
【0034】
(紫外線遮蔽率)
紫外線遮蔽率は、紫外線遮蔽率(%)=100-[波長280~400nmの平均透過率(%)]の式を用いて算出した。
【0035】
(抗ピル性)
抗ピル性はJIS-L-1076 A法に準拠して測定した。
【0036】
(目付)
目付はJIS-L-1096-8.3.2(標準状態における単位面積当たりの質量)に準拠して測定した。
【0037】
(実施例1)
アクリロニトリル単位が93質量%、酢酸ビニル単位が7質量%からなる共重合体を水系懸濁重合により得た。この共重合体の0.5質量%ジメチルホルムアミド溶液の25℃における還元粘度は2.0であった。
この共重合体をジメチルアセトアミドに溶解して共重合体濃度24質量%のアクリロニトリル共重合体溶液とした。このアクリロニトリル共重合体溶液に、ジメチルアセトアミドに平均粒径0.6μmの6酸化チタンを20質量%含有・分散した分散液を、最終のアクリル繊維中の酸化チタン含有率が1.7質量%となるように添加し紡糸原液とした。
前記紡糸原液を75℃に調節し、ジメチルアセトアミド35質量%、温度40℃の凝固液中に、一辺80μmの正三角形の形状をした吐出孔から押し出して湿式紡糸し、次いで沸水中で溶剤を洗浄しながら3.5倍の延伸を施し、続いて油剤を付着させ、熱ローラーで乾燥後、さらに乾熱状態で1.3倍に延伸した。その後、0.13MPa(1.3kg/cm)の加圧スチーム中で緩和処理を行って、単繊維繊度が2.2dtexの繊維を得た。
繊維物性を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
アクリロニトリル単位95質量%、酢酸ビニル単位4.4質量%、メタリルスルホン酸ソーダ単位0.6質量%からなる共重合体を水系懸濁重合により得た。この共重合体の0.5質量%ジメチルホルムアミド溶液の25℃における還元粘度は1.6であった。
この共重合体をジメチルアセトアミドに溶解して共重合体濃度24質量%のアクリロニトリル共重合体溶液とした。このアクリロニトリル共重合体溶液を紡糸原液とした。
前記紡糸原液を75℃に調節し、ジメチルアセトアミド35質量%、温度40℃の凝固液中に、直径45μmの丸形の形状をした吐出孔から押し出して湿式紡糸し、次いで沸水中で溶剤を洗浄しながら4.5倍の延伸を施し、続いて油剤を付着させ熱ローラーで乾燥後、0.23MPa(2.3kg/cm)の加圧スチーム中で緩和処理を行って、単繊維繊度が2.2dtexの繊維を得た。
【0039】
(比較例2)
アクリロニトリル単位が93質量%、酢酸ビニル単位が7質量%からなる共重合体を水系懸濁重合により得た。この重合体の0.5質量%ジメチルホルムアミド溶液の25℃における還元粘度は2.0であった。
この共重合体をジメチルアセトアミドに溶解して共重合体濃度24質量%のアクリロニトリル共重合体溶液とした。このアクリロニトリル共重合体溶液に、ジメチルアセトアミドに平均粒径0.6μmのアナターゼ型酸化チタンを20質量%含有・分散した分散液を、最終のアクリル繊維中の酸化チタン含有率が1.7質量%となるように添加し紡糸原液とした。
前記紡糸原液を75℃に調節し、ジメチルアセトアミド35質量%、温度40℃の凝固液中に、直径60μmの丸形の形状をした吐出孔から押し出して湿式紡糸し、次いで沸水中で溶剤を洗浄しながら4.5倍の延伸を施し、続いて油剤を付着させ熱ローラーで乾燥後、0.23MPa(2.3kg/cm)の加圧スチーム中で緩和処理を行って、単繊維繊度が1.7dtexの繊維を得た。
【0040】
(実施例2~5)
実施例1で得られた繊維を38mmにカットし、表2記載の混率にて、2インチ紡により綿番手で30/2の紡績糸となし、14ゲージ丸編み機を用いて、天竺組織に製編したのち、常法によりオフホワイトで染色を行い目付250g/mの編地を作製した。
【0041】
(比較例3及び4)
比較例1及び2で得られた繊維を38mmにカットし、表2記載の混率にて、2インチ紡により30/2の紡績糸となし、14ゲージ丸編み機を用いて、天竺組織に製編したのち、常法により黄色に染色を行い目付250g/mの編地を作製した。
比較例3は、繊維に酸化チタンが含有されていないため、UPF、紫外線遮蔽率は低いものであった。
また、比較例4は、酸化チタンが含有されているのもかかわらず、UPF、紫外線遮蔽率は低いものであった。これは、繊維の断面形状が丸であることに起因するものと考えられる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】