(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】原子炉冷却装置および原子力プラント
(51)【国際特許分類】
G21C 15/18 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
G21C15/18 L
G21C15/18 E
(21)【出願番号】P 2019088006
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】藤村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】光安 岳
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196700(JP,A)
【文献】特開平07-318678(JP,A)
【文献】特開平05-196778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の熱を冷却するための冷却媒体の自然循環通路と、
前記自然循環通路に接続された予備配管と、
前記予備配管に設けられたターボ機械とを備え、
前記自然循環通路は、
前記冷却媒体の排出口に接続され前記原子炉の周囲を覆って配置された前記冷却媒体の上昇通路と、
前記冷却媒体の導入口に接続され前記上昇通路の外側を覆って配置され前記上昇通路の下端において前記上昇通路と連通する前記冷却媒体の下降通路とを備え、
前記予備配管は、予備導入管として前記下降通路に接続され、
前記ターボ機械は、前記予備導入管から前記下降通路に向かって冷却媒体を圧送する
原子炉冷却装置。
【請求項2】
前記予備導入管の開口端には、前記予備導入管を閉塞し、前記ターボ機械の駆動と連動して前記予備導入管を開通させる開閉弁が設けられている
請求項
1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項3】
前記開閉弁は、電動弁である
請求項
2に記載の原子炉冷却装置。
【請求項4】
前記予備導入管における前記下降通路との接続部側には、前記予備導入管を閉塞し、前記ターボ機械の駆動と連動して前記予備導入管を開通させる開閉弁が設けられている
請求項
1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項5】
前記予備導入管における前記下降通路との接続部には、前記下降通路側から前記予備導入管側への冷却媒体の流入を防止するための逆止弁が設けられている
請求項
1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項6】
前記自然循環通路は、前記上昇通路の上部に接続された排出管と、前記下降通路の上部に接続された導入管とを備え、
前記導入管と前記排出管の開口部には、前記ターボ機械の駆動と連動して前記開口部を閉塞する閉塞部材が設けられている
請求項
1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項7】
前記上昇通路には、予備排出管が接続されている
請求項
1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項8】
前記予備排出管における前記上昇通路との接続部側には、前記予備排出管を閉塞し、前記上昇通路側の圧力が前記予備排出管側の圧力よりも所定以上に高くなることにより前記予備排出管を開通させる開閉弁が設けられている
請求項
7に記載の原子炉冷却装置。
【請求項9】
前記予備排出管における開口端側には、前記予備排出管を閉塞し、前記上昇通路側の圧力が前記開口端側の圧力よりも所定以上に高くなることにより前記予備排出管を開通させる開閉弁が設けられている
請求項
7に記載の原子炉冷却装置。
【請求項10】
前記ターボ機械は、圧縮機である
請求項1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項11】
前記冷却媒体は、空気である
請求項1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項12】
前記予備導入管における前記ターボ機械よりも開口端側に、湿分分離器が設けられている
請求項
1に記載の原子炉冷却装置。
【請求項13】
原子炉と、
原子炉の熱を
冷却するための冷却媒体の自然循環通路と、
前記自然循環通路に接続された予備配管と、
前記予備配管に設けられたターボ機械とを備
え、
前記自然循環通路は、
前記冷却媒体の排出口に接続され前記原子炉の周囲を覆って配置された前記冷却媒体の上昇通路と、
前記冷却媒体の導入口に接続され前記上昇通路の外側を覆って配置され前記上昇通路の下端において前記上昇通路と連通する前記冷却媒体の下降通路とを備え、
前記予備配管は、予備導入管として前記下降通路に接続され、
前記ターボ機械は、前記予備導入管から前記下降通路に向かって冷却媒体を圧送する
原子力プラント。
【請求項14】
前記原子炉は、
炉心と液体金属冷却剤とを収容する内側炉容器と、
内側炉容器を収容する外側炉容器と、
前記内側炉容器と前記外側炉容器との間に充填された不活性ガスとを含む
請求項
13に記載の原子力プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉冷却装置および原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
自然対流を利用した原子炉用の受動冷却システムに関する技術として、下記特許文献1に記載のものがある。この文献には「液体金属冷却原子炉10では、…ガードベッセル19とサイロ31との間に筒状のヒートコレクタ34が設置される。このヒートコレクタ34とサイロ31との間に下降流通路35が形成され、ヒートコレクタ34とガードベッセル19との間に上昇流通路36が形成される。下降流通路35は、地表下に埋設されて空気導入口38を備えた吸気通路としての空気導入配管37に接続される。また、上昇流通路36は、地表下に埋設されて空気排出口40を備えた排気通路としての空気排出配管39に接続される。これらの下降流通路35、上昇流通路36、空気導入配管37及び空気排出配管39により、冷却用通路33が構成される。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した原子炉用の受動冷却システムでは、自然循環による冷却用通路が何らかの影響で閉塞すると、炉心にて発生した熱を除去するために必要な空気の循環量を確保することができず、原子炉の冷却が不十分となる。
【0005】
そこで本発明は、自然対流を利用した受動冷却システムにおける自然循環通路が閉塞した場合であっても、冷却性能を維持することが可能な原子炉冷却装置および原子力プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、原子炉の熱を冷却するための冷却媒体の自然循環通路と、前記自然循環通路に接続された補助配管と、前記補助配管に設けられたターボ機械とを備えた原子炉冷却装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自然対流を利用した受動冷却システムにおける自然循環通路が閉塞した場合であっても、冷却性能を維持することが可能な原子炉冷却装置および原子力プラントを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下側の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る原子力プラントの構成図である。
【
図2】実施形態に係る原子炉冷却装置の構成図(その1)である。
【
図3】実施形態に係る原子炉冷却装置の構成図(その2)である。
【
図4】実施形態に係る原子炉冷却装置の構成図(その3)である。
【
図5】実施形態の変形例に係る原子炉冷却装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の原子炉冷却装置および原子力プラントの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態および変形例においては、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
≪原子力プラント≫
図1は、実施形態に係る原子力プラント1の構成図であって、一例として本発明をタンク型の高速増殖炉を有する原子力プラント1に適用した場合の構成図である。この図に示す原子力プラント1は、一次冷却系を含む原子炉10と、二次冷却系20と、給水・主蒸気系30とを備える。またこの原子力プラント1は、原子炉10を受動的に冷却する原子炉冷却装置40を備えている。これらは、次のように構成されている。
【0011】
<原子炉10>
原子炉10は、炉心11と、炉心11を収容する内側炉容器12と、内側炉容器12を覆う外側炉容器13とを備えている。また内側炉容器12の内部には、中間熱交換器14および一次循環ポンプ15が収容されている。
【0012】
このうち炉心11は、核燃料の集合体であって核分裂性物質を含む。
【0013】
内側炉容器12は、原子炉容器であって、内部に一次冷却剤L1を収容し、さらに炉心11を一次冷却剤L1に浸漬させた状態で収容する。これにより内側炉容器12内を満たす一次冷却剤L1は、炉心11によって加熱される。一次冷却剤L1としては、ナトリウムなどの液体金属冷却剤が用いられる。
【0014】
外側炉容器13はガードベッセルとも称され、内側炉容器12との間に隙間を設けた状態で内側炉容器12の周囲を覆って配置される。内側炉容器12と外側炉容器13との間の空間は、内側炉容器12内の一次冷却剤L1が外側炉容器13にリークした場合に、一次冷却剤L1から炉心11が露出しない容積を有している。またこの空間内には不活性ガスGが充填され、内側炉容器12内の一次冷却剤L1が外側炉容器13にリークした場合に、一次冷却剤L1としてのナトリウムなどの液体金属冷却剤の酸化を防止している。
【0015】
中間熱交換器14は、次に説明する二次冷却系20から延設された管構造体14aが内設されている。この管構造体14aは、二次冷却剤L2としてナトリウムなどの液体金属冷却剤が充填され、二次冷却系20との間で二次冷却剤L2が循環する部分である。管構造体14a内を循環する二次冷却剤L2は、内側炉容器12内の一次冷却剤L1によって加熱される。
【0016】
一次循環ポンプ15は、内側炉容器12内の一次冷却剤L1中に浸漬され、内側炉容器12内において一次冷却剤L1を循環させる。これにより、タンク型の高速増殖炉においては、中間熱交換器14を収容する内側炉容器12が、一次冷却剤L1を循環させる一次冷却系となっている。このため、タンク型の高速増殖炉は、一次冷却系配管が不要であり、プラント全体のコンパクト化が可能な構成となっている。
【0017】
<二次冷却系20>
二次冷却系20は、二次冷却配管21と、蒸気発生器22と、二次循環ポンプ23とを有する。
【0018】
このうち二次冷却配管21は、蒸気発生器22と中間熱交換器14の管構造体14aとの間を2カ所において連通し、蒸気発生器22と中間熱交換器14の管構造体14aとの間で、二次冷却剤L2の循環経路を構成する。二次冷却配管21内には、二次冷却剤L2が充填されている。
【0019】
蒸気発生器22は、両端に二次冷却配管21を連通させた構成であって、内部に二次冷却剤L2が充填されている。この蒸気発生器22の内部には、細管22aが配設されている。この細管22aは、次に説明する給水・主蒸気系30に接続されたものであり、内部に水が供給される構成となっている。このような蒸気発生器22は、細管22a内に供給された水を、二次冷却剤L2によって加熱することによって水蒸気を発生させる。
【0020】
二次循環ポンプ23は、二次冷却配管21に設けられ、二次冷却配管21を介して蒸気発生器22と中間熱交換器14の管構造体14aとの間で二次冷却剤L2を循環させる。
【0021】
<給水・主蒸気系30>
給水・主蒸気系30は、主蒸気配管31、高圧タービン32、低圧タービン33、発電機34、復水器35、給復水系配管36、給水ポンプ37、および給水加熱器38を有する。
【0022】
このうち主蒸気配管31は、蒸気発生器22の細管22aに接続され、蒸気発生器22で発生させた蒸気を、高圧タービン32に導く。高圧タービン32と低圧タービン33とは、同軸上に配置され、主蒸気配管31を介して蒸気発生器22から供給された蒸気によって回転する。発電機34は、高圧タービン32および低圧タービン33と同軸上に連結され、高圧タービン32および低圧タービン33の回転によって稼動して発電を行う。
【0023】
復水器35は、低圧タービン33に接続され、低圧タービン33から蒸気が導かれる。復水器35内には冷却管35aが配設され、低圧タービン33から導かれた蒸気を凝縮して水に戻す。
【0024】
給復水系配管36は、復水器35と蒸気発生器22との間に配設され、復水器35と蒸気発生器22の細管22aとを連通させる。
【0025】
給水ポンプ37は、給復水系配管36に設けられ、復水器35で凝縮した水を、給復水系配管36を介して蒸気発生器22の細管22aに昇圧して給水する。給水加熱器38は、蒸気発生器22の細管22aに給水する水を加熱する。
【0026】
<原子炉冷却装置40>
次に、原子炉10を冷却する原子炉冷却装置40の構成を説明する。
図2は、実施形態に係る原子炉冷却装置40の構成図(その1)であって、原子炉10とその周辺についての垂直方向の断面と、原子炉冷却装置40を構成する各配管の接続状態を示す図である。また
図3は、実施形態に係る原子炉冷却装置の構成図(その2)であって、原子炉10とその周辺についての水平方向の断面と、原子炉冷却装置40を構成する各配管の接続状態を示す図である。
【0027】
これらの図に示す原子炉冷却装置40は、原子炉10の熱を冷却するための冷却媒体の自然循環通路を有し、特に原子炉停止時に発生する崩壊熱を除去するための冷却媒体の自然循環経路を有する。このような原子炉冷却装置40は、例えば冷却媒体として外気を取り込んで自然循環させる原子炉容器補助冷却系(Reactor Vessel Auxiliary. Cooling System:RVACS)を有する。
【0028】
この原子炉冷却装置40は、原子炉10を収容するコンクリート構造体41、コンクリート構造体41内に配設された筒状部材42、筒状部材42によって隔てられた下降通路43および上昇通路44を備える。また原子炉冷却装置40は、下降通路43に接続された導入管45、および上昇通路44に接続された排出管46を備え、これらによって原子炉10の熱を冷却するための空気(外気)の自然循環通路が構成される。さらにこの原子炉冷却装置40は、自然循環通路の他に、予備導入管50および予備排出管60を備える。以下、これらの各構成要素を説明する。
【0029】
[コンクリート構造体41]
コンクリート構造体41は、原子炉10を収容するための空間として収容部41aを備えている。コンクリート構造体41は、収容部41aの側壁および底面部において、原子炉10との間に間隔を保った状態で、収容部41a内に原子炉10を収容する。このようなコンクリート構造体41は、地表下を掘り下げて設けられている。
【0030】
[筒状部材42]
筒状部材42は、コンクリート構造体41の収容部41a内において、原子炉10の側周を囲んで配置され、収容部41aの底面部との間に隙間を保って設置されている。このような筒状部材42は、原子炉10からの輻射熱が伝達されるヒートコレクタとして機能する。
【0031】
[下降通路43]
下降通路43は、コンクリート構造体41における収容部41aの側壁と筒状部材42との間の空間部分であって、筒状部材42を囲む外側の空間部分である。この下降通路43は、以降に説明する導入管45から取り込んだ気体が、下方に向かって流れる気体の流通経路となる。
【0032】
[上昇通路44]
上昇通路44は、筒状部材42と原子炉10との間の空間部分であって、原子炉10を囲む空間部分である。この上昇通路44は、原子炉10からの輻射熱によって上昇通路44の内部の気体が暖められて上昇する部分である。このような上昇通路44においての気体の移動は、この上昇通路44と下端において連通している下降通路43からの気体の流入と、下降通路43においての気体の下降を引き起こす。
【0033】
[導入管45]
導入管45は、下降通路43に連通して設けられた外気導入用の配管であって、ここでは2本の導入管45を下降通路43に連通させた構成を例示している。各導入管45は、下降通路43の上端または上端付近のそれぞれの位置において、下降通路43に接続されている。各導入管45における下降通路43との接続位置は、地表下に埋設されていることとする。また各導入管45において、下降通路43との接続位置とは逆の端部は、外気の導入口45aとなる開口端であって、地上に配置されていることとする。
【0034】
この導入口45aには、導入管45を閉塞するための閉塞部材45bが設けられている。この閉塞部材45bは、例えば電動蓋であって、電源未投入の常時においては導入管45の導入口45aを開いて導入管45を開通させる。一方、閉塞部材45bは、電源の投入により導入管45の導入口45aを閉塞する。これにより、以降の動作説明に示すように、電源投入時において、導入管45内への気体の流入出による冷却効果の損失を防止する。このような閉塞部材45bは、以降に説明するターボ機械と連動して電源投入され、ターボ機械の駆動に連動して導入管45を閉塞する。
【0035】
なお、下降通路43に対する導入管45の接続本数は2本に限定されることはなく、特に原子炉停止時に発生する崩壊熱を除去するために必要な空気の循環量を確保できる範囲であれば、1本であっても3本以上の複数であってもよい。
【0036】
[排出管46]
排出管46は、上昇通路44に連通して設けられた気体排出用の配管であって、ここでは2本の排出管46を上昇通路44に連通させた構成を例示している。各排出管46は、上昇通路44の上端または上端付近のそれぞれの位置において、上昇通路44に接続されている。各排出管46における上昇通路44との接続位置は地表下に埋設されていることとする。また各排出管46は、上方に向かって延設されたスタックであって、上昇通路44で暖められた気体を効果的な上昇させる内径及び高さを有し、これにより自然循環経路においての空気の自然循環を達成する。各排出管46において、上昇通路44との接続位置とは逆の端部は、外気の排出口46aとなる開口端であって、地上に配置されていることとする。
【0037】
この排出口46aには、排出管46を閉塞するための閉塞部材46bが設けられている。この閉塞部材46bは、例えば電動蓋であって、電源未投入の常時においては、排出管46の排出口46aを開いて排出管46を開通させる。一方、閉塞部材46bは、電源の投入により排出管46の排出口46aを閉塞する。これにより、電源投入時において、排出管46内への気体の流入出による冷却効果の損失を防止する。このような閉塞部材46bは、以降に説明するターボ機械と連動して電源投入され、ターボ機械の駆動に連動して排出管46を閉塞する。
【0038】
なお、上昇通路44に対する排出管46の接続本数は2本に限定されることはなく、特に原子炉停止時に発生する崩壊熱を除去するために必要な空気の循環量を確保できる範囲であれば、1本であっても3本以上の複数であってもよい。
【0039】
[予備導入管50]
予備導入管50は、下降通路43に連通して設けられた予備配管である。この予備導入管50は、自然循環通路において特に吸引力が強く外部からの異物の侵入によって閉塞し易い導入管45に代わって、下降通路43に空気を導入するためのものである。このような予備導入管50は、下降通路43に対して直接接続された構成となっている。下降通路43は、原子炉10の周囲を覆って設けられているため、開口幅が広く閉塞し難く、予備導入管50の接続部分として適している。下降通路43に対する予備導入管50の接続部は、図示したように、例えばコンクリート構造体41における収容部41aの側壁であり、好ましくは内側炉容器12よりも上部であることとする。
【0040】
予備導入管50において下降通路43との接続位置とは逆の端部は、気体が導入される予備導入口50aとなっている。このような予備導入管50には、予備導入口50a側から順に、第1開閉弁51、ターボ機械52、第2開閉弁53、および逆止弁54が設けられている。
【0041】
このうち第1開閉弁51は、予備導入管50における予備導入口50aに近接して設けられ、常時においては予備導入管50を閉塞し、次に説明するターボ機械52と連動して予備導入管50を開通させる。このような第1開閉弁51は、例えば電動弁が用いられる。この第1開閉弁51は、電源未投入の常時においては予備導入管50を閉塞することで、予備導入管50内への異物の侵入を防止する。またこの第1開閉弁51を電動弁とすることにより、ターボ機械52の駆動のタイミングに合わせて予備導入管50を開通させることができるため、ターボ機械52による予備導入管50からの空気の圧送を、効率的に実施することが可能である。このような第1開閉弁51は、ターボ機械52と共に、導入管45に設けた閉塞部材45b、および排出管46に設けた閉塞部材46bと連動して、電源が投入される。
【0042】
ターボ機械52は、第1開閉弁51と連動して駆動され、第1開閉弁51が予備導入管50を開通させた状態において、導入管45側に気体を圧送する。このようなターボ機械52は、原子炉停止時に発生する炉心11の崩壊熱を除去するために必要な空気の循環量を確保できる程度の圧送能力を有することが重要である。このようなターボ機械52は、炉心11が発する崩壊熱の熱量、冷却媒体として用いる空気の物性、および流路内の流速、さらには流路内における圧力損失を考慮すると、例えば羽根車が遠心式のものであって、圧縮機が用いられる。このようなターボ機械52は、第1開閉弁51と共に、導入管45に設けた閉塞部材45b、および排出管46に設けた閉塞部材46bと連動して、電源が投入される。
【0043】
第2開閉弁53は、予備導入管50において導入管45との接続位置に近接して設けられ、常時において予備導入管50を閉塞し、ターボ機械52の駆動と連動して予備導入管50を開通させる。このような第2開閉弁は、例えば電動弁が用いられる。この第2開閉弁53は、電源未投入の常時においては予備導入管50を閉塞することで、下降通路43から予備導入管50内へ気体の流入を防止し、自然循環による冷却効果の損失を防止する。第2開閉弁53を電動弁とすることにより、ターボ機械52の駆動のタイミングに合わせて予備導入管50を開通させることができるため、ターボ機械52による予備導入管50からの空気の圧送を、効率的に実施することが可能である。なお、第2開閉弁53は、空気作動弁であってもよい。この場合、第2開閉弁53は、予備導入口50a側の圧力が、下降通路43側の圧力に対して所定以上に高くなった状態で、予備導入管50を開通させるように設けられる。
【0044】
逆止弁54は、予備導入管50において下降通路43との接続位置に近接して、または接続位置に設けられ、下降通路43から予備導入管50への気体の流入を防止する。これにより、自然循環による冷却効果の損失を防止する。
【0045】
以上のような各部材が設けられた予備導入管50は、導入管45よりも総開口面積が小さく設計されていることが好ましい。また、予備導入管50は、ターボ機械52の下流側よりも上流側の管内の流速を遅くする必要がある。このため予備導入管50は、ターボ機械52の下流側よりも上流側の内径が大きく設計されていることとする。
【0046】
また予備導入管50の長さは、例えばテロ対策のために、ターボ機械52と原子炉10との距離を相当程度に離間させることが可能な設計であることが好ましい。例えばターボ機械52と原子炉10との距離を直線距離で100m程度離間させるとすると、予備導入管50の長さは、そのレイアウトも考慮して150m程度となる。
【0047】
なお、以上のような予備導入管50は、配置本数が1本に限定されることはなく、特に導入管45が閉塞した場合に、原子炉停止時に発生する崩壊熱を除去するために必要な空気の循環量を確保できる範囲であれば、複数本であってもよい。しかしながら、予備導入管50は、ターボ機械52等の動力機械を備えているため、少ない本数であることが好ましい。また予備導入管50は、導入管45から分岐させたものであってもよい。
【0048】
[予備排出管60]
予備排出管60は、上昇通路44に連通して設けられた気体排出用の予備配管であって、ここでは上昇通路44に対して直接接続された構成となっている。上昇通路44は、下降通路43の周囲を覆って設けられているため、開口幅が広く閉塞し難く、予備排出管60の接続部分として適している。上昇通路44に対する予備排出管60の接続部は、図示したように、例えば筒状部材42を貫通させた部分であり、好ましくは内側炉容器12よりも上部であることとする。予備排出管60において排出管46との接続位置とは逆の端部は、気体が排出される予備排出口60aとなっている。
【0049】
以上のような予備排出管60には、上昇通路44との接続側から順に、第1空気作動弁61および第2空気作動弁62が設けられている。これらの第1空気作動弁61と第2空気作動弁62とは、予備排出管60の両端に配置され、予備排出口60a側の圧力に対して、上昇通路44との接続部側の圧力が所定以上に高くなった状態で、予備排出管60を開通させる開閉弁である。これらの開閉弁は、第1空気作動弁61、第2空気作動弁62の順に予備排出管60を開通させる。
【0050】
以上のように、予備排出管60における上昇通路44との接続側に第1空気作動弁61を設けたことにより、電源未投入の常時において排出管46が開通している状態においては、上昇通路44から予備排出管60への気体の流入が防止される。これにより、排出管46内での気体の上昇効果が妨げられることがなく、自然対流による冷却効果が維持される。さらに、予備排出管60における予備排出口60aに第2空気作動弁62を設けたことにより、予備排出管60への異物の侵入を防止することができる。
【0051】
以上のような各部材が設けられた予備排出管60は、排出管46よりも総開口面積が小さく設計されて、例えば断面は円形であって、口径が1m程度であることとする。なお、以上のような第1空気作動弁61および第2空気作動弁62を備えた予備排出管60は、配置本数が1本に限定されることはなく、に排出管46が閉塞した場合に、原子炉停止時に発生する崩壊熱を除去するために必要な空気の循環量を確保できる範囲であれば、複数本であってもよい。また予備排出管60は、排出管46から分岐させたものであってもよい。
【0052】
<原子炉冷却装置40の動作>
以上のように構成された原子炉冷却装置40の動作として、まず常時における動作を説明し、次に原子炉冷却装置40に電源を投入した状態の動作を説明する。
【0053】
先ず、常時において、原子炉冷却装置40は、電源未投入の状態にある。したがって、導入管45に設けられた閉塞部材45bおよび排出管46に設けられた閉塞部材46bは開いた状態であり、導入管45および排出管46は開通した状態となっている。一方、予備導入管50に設けた第1開閉弁51および第2開閉弁53は、予備導入管50を閉塞した状態となっている。
【0054】
以上の状態においては、例えば原子炉停止時に原子炉10から崩壊熱が発生した場合、輻射熱によって上昇通路44内の気体が暖められる。そして暖められた気体が上昇通路44内を上昇し、上昇通路44に接続された排出管46の排出口46aから暖められた気体が排出される。また、気体の上昇によって上昇通路44内が負圧なると、下端において上昇通路44と連通している下降通路43から上昇通路44に対して気体が供給される。さらに下降通路43には、導入管45の導入口45aから取り込まれた外気が供給される。
【0055】
以上により、原子炉冷却装置40においては、原子炉10で発生した崩壊熱が、導入管45の導入口45aから取り込まれた外気の自然循環によって受動的に冷却される。
【0056】
なお、上昇通路44を上昇して排出管46に供給された気体は、排出口46aから排出されるため、排出管46内の圧力は所定状態に保たれる。このため、排出管46に接続された予備排出管60に設けた第1空気作動弁61および第2空気作動弁62が開くことはない。
【0057】
次に、原子炉冷却装置40に電源を投入した場合の動作を説明する。
図4は、実施形態に係る原子炉冷却装置40の構成図(その3)であって、原子炉冷却装置40に電源を投入した場合の動作を説明するための図である。この図に示すように、原子炉冷却装置40に電源を投入した場合、閉塞部材45bは導入口45aを閉塞し、閉塞部材46bは排出口46aを閉塞する。一方、予備導入管50に設けた第1開閉弁51および第2開閉弁53は、予備導入管50を開通させる。さらに予備導入管50に設けたターボ機械52が作動し、予備導入管50の予備導入口50aから取り込んだ空気(例えば外気)を、下降通路43側に向かって圧送する。
【0058】
このような状態においては、原子炉10からの輻射熱によって上昇通路44内の気体が暖められると、暖められた気体が上昇通路44内を上昇し、上昇通路44に接続された排出管46に供給される。しかしながら、排出管46は閉塞部材46bによって閉塞されているため、排出管46および上昇通路44内の圧力が上昇する。これにより、上昇通路44に接続された予備排出管60の第1空気作動弁61が開き、続いて第2空気作動弁62が開き、これにより予備排出管60が開通する。そして、上昇通路44内の空気が予備排出管60の予備排出口60aから排出される。
【0059】
さらに、予備導入管50に設けたターボ機械52からの圧送により、予備導入管50の予備導入口50aから取り入れた気体が、下降通路43に送り込まれ、下降通路43の下端において下降通路43と連通している上昇通路44に気体が送り込まれる。これにより、原子炉10で発生した崩壊熱は、予備導入管50の予備導入口50aから導入され、ターボ機械52によって圧送された気体(例えば空気であって外気でよい)によって冷却される。
【0060】
<実施形態の効果>
以上説明した実施形態によれば、冷却媒体である空気の自然循環経路を構成する下降通路43に、ターボ機械52を有する予備導入管50を接続させたことにより、下降通路43に対して気体を圧送することが可能である。これにより、自然循環経路が何らかの原因で閉塞された場合であっても、下降通路43に対して自然循環経路に対して気体を供給し続けることが可能であり、炉心11の崩壊熱を除去するために必要な冷却能力を維持し続けることが可能である。
【0061】
≪実施形態の変形例≫
図5は、実施形態の変形例に係る原子炉冷却装置の構成図であって、原子炉10とその周辺についての垂直方向の断面と、各配管の接続状態を示す図であり、原子炉冷却装置40’に電源を投入した場合の動作を説明するための図である。この図に示す変形例の原子炉冷却装置40’は、
図2~
図4を用いて説明した実施形態の原子炉冷却装置40に対して、湿分分離器55を設けた構成である。湿分分離器55は、予備導入管50において、第1開閉弁51とターボ機械52との間に配置する。
【0062】
このような構成とすることにより、何らかの原因で原子炉10の外部に一次冷却剤L1としてのナトリウムなどの液体金属冷却剤が漏れ出した場合には、湿分分離器55によって水分を除去した気体を、下降通路43に供給して原子炉10の熱を冷却することが可能である。またこの場合、ターボ機械52の駆動に連動して、導入管45が閉塞部材46bによって閉塞される。このため、水分を含む外気の導入が遮断される。したがって、一次冷却剤L1であるナトリウムなどの液体金属冷却剤と水分とを接触させることなく、原子炉10の熱を冷却することができる。
【0063】
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、一例として、原子炉はタンク型の高速増殖炉に限定されることはなく、他の高速増殖炉であったり、沸騰水型や加圧水型のものであってもよい。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…原子力プラント
10…原子炉
11…炉心
12…内側炉容器
13…外側炉容器
40…原子炉冷却装置
42…下降通路(自然循環通路)
44…上昇通路(自然循環通路)
45…導入管(自然循環通路)
45a…導入口(導入間の開口部)
45b…閉塞部材
46…排出管(自然循環通路)
46a…排出口(排出管の開口部)
46b…閉塞部材
50…予備導入管(予備配管)
50a…予備導入口(予備導入管の開口端)
51…第1開閉弁
52…ターボ機械
53…第2開閉弁
54…逆止弁
55…湿分分離器
60…予備排出管
61…第1空気作動弁(開閉弁)
62…第2空気作動弁(開閉弁)
L1…一次冷却剤(液体金属冷却剤)
G…不活性ガス