(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20221101BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B62D25/20 J
B62D25/20 K
B60R16/02 610J
(21)【出願番号】P 2019177466
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 純也
(72)【発明者】
【氏名】古川 巌大
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-253933(JP,A)
【文献】特開2017-013593(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013634(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044420(WO,A1)
【文献】特開2018-016214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08,25/20
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両であって、
ボディと、
前記ボディの後部に配置された低電圧部品と、
前記低電圧部品を前記ボディの複数の固定箇所に固定する少なくとも一つの取付部材とを備え、
前記複数の固定箇所は、前記低電圧部品よりも前方に位置する少なくとも一つの第1固定箇所と、前記低電圧部品よりも後方に位置する少なくとも一つの第2固定箇所と、を含み、
前記少なくとも一つの第1固定箇所の中心と、前記少なくとも一つの第2固定箇所の中心とは、上下方向における位置が互いに相違
しており、
前記電動車両に後面衝突が生じたときに、前記ボディから圧縮力を受けた前記低電圧部品が、単に前方へ押し出されるのではなく、上方又は下方へ回転するように姿勢を変化させるように構成されており、
前記ボディは、前記ボディの前記後部においてフロアを形成するリアフロアパネルと、前記低電圧部品の後方に位置するとともに前記リアフロアパネルの後端が接続されたバックパネルとを有し、
前記少なくとも一つの第1固定箇所は、前記リアフロアパネルに位置しており、
前記少なくとも一つの第2固定箇所は、前記バックパネルに位置している、
電動車両。
【請求項2】
前記少なくとも一つの第1固定箇所の中心は、前記少なくとも一つの第2固定箇所の中心よりも上方に位置する、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記リアフロアパネルは、前記少なくとも一つの第1固定箇所を有する前部エリアと、前記前部エリアと前記バックパネルとの間を延びているとともに前記前部エリアに対して下方に窪んでいる後部エリアとを有し、
前記低電圧部品は、前記リアフロアパネルの前記後部エリアと前記バックパネルとで画定された凹部内に配置されている、請求項
1又は2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記低電圧部品の全体は、前記リアフロアパネルの前記前部エリアよりも下方に位置する、請求項
3に記載の電動車両。
【請求項5】
前記少なくとも一つの取付部材は、
前記低電圧部品を前記ボディの前記少なくとも一つの第1固定箇所に固定する第1ブラケットと、
前記低電圧部品を前記ボディの前記少なくとも一つの第2固定箇所に固定する第2ブラケットとを有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項6】
前記少なくとも一つの取付部材は、前後方向に延びるブレースを有し、
前記ブレースの前端は、前記少なくとも一つの第1固定箇所に固定されており、
前記ブレースの後端は、前記少なくとも一つの第2固定箇所に固定されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項7】
前記ブレースは、前記前端と前記後端との間に位置する屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記前端と前記後端との間を結ぶ直線よりも上方に位置する、請求項
6に記載の電動車両。
【請求項8】
前記少なくとも一つの第1固定箇所の中心と、前記少なくとも一つの第2固定箇所の中心とは、左右方向における位置が互いに相違する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項9】
前記低電圧部品よりも前方に位置する高電圧部品をさらに備える、請求項1から
8のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項10】
前記高電圧部品は、車輪を駆動するモータと、前記モータに接続された電力制御ユニットとの少なくとも一方を有する、請求項
9に記載の電動車両。
【請求項11】
前記低電圧部品の少なくとも一部と、前記高電圧部品の少なくとも一部との間で、左右方向における位置が一致している、請求項
9又は
10に記載の電動車両。
【請求項12】
前記高電圧部品の重心は、前記低電圧部品の重心に対して、左右方向の一方側に位置しており、
前記少なくとも一つの第2固定箇所の中心は、前記少なくとも一つの第1固定箇所の中心に対して、左右方向の他方側に位置している、請求項
11に記載の電動車両。
【請求項13】
前記低電圧部品は、少なくとも一つのプロセッサを有する電子制御ユニットである、請求項1から
12のいずれか一項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、電動車両に関する。なお、本明細書における電動車両とは、車輪を駆動するモータを有する自動車を広く意味する。電動車両には、例えば、外部の電力によって充電される電気自動車、モータとエンジンとを有するハイブリッド自動車、燃料電池を電源とする燃料電池車等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に、後面衝突において電動車両の高電圧部品を保護するための技術が開示されている。ここでいう高電圧部品とは、30ボルトを超える交流電圧又は60ボルトを超える直流電圧で動作する電気部品を意味する。高電圧部品には、例えば、車輪を駆動するモータや、モータへ供給される電力を制御する電力制御ユニットが含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】トヨタ自動車、「トヨタ技術公開集」、発行番号31263、発行日2018年8月31日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載されているように、電動車両では、後面衝突において高電圧部品を保護するための技術が必要とされている。この点に関して、高電圧部品は、後面衝突においてダメージを受けることがないように、車両の後面から離れて配置されることが好ましい。それに対して、高電圧部品に該当しない低電圧部品については、高電圧部品よりも後方に配置することが考えらえる。しかしながら、ボディの後部に低電圧部品が配置されていると、後面衝突において低電圧部品が前方へ押し出されて、例えば高電圧部品にダメージを与えるおそれがある。本明細書は、後面衝突において低電圧部品の前方への侵襲を抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電動車両は、ボディと、ボディの後部に配置された低電圧部品と、電子制御ユニットをボディの複数の固定箇所に固定する少なくとも一つの取付部材とを備える。複数の固定箇所は、低電圧部品よりも前方に位置する少なくとも一つ第1固定箇所と、低電圧部品よりも後方に位置する少なくとも一つ第2固定箇所とを含む。そして、少なくとも一つの第1固定箇所の中心と、少なくとも一つの第2固定箇所の中心とは、上下方向における位置が互いに相違する。
【0006】
上記した構造によると、電動車両に後面衝突が生じたときに、ボディの第1固定箇所及び第2固定箇所から、低電圧部品に対して前後方向に圧縮力が作用する。ここで、低電圧部品よりも前方に位置する第1固定箇所と、低電圧部品よりも後方に位置する第2固定箇所では、上下方向における位置が互いに相違する。従って、ボディから圧縮力を受けた低電圧部品は、単に前方へ押し出されるのではなく、上方又は下方へ回転するように姿勢を変化させる。これにより、低電圧部品の前方への移動が抑制されるので、例えばモータといった高電圧部品や、その他の構成要素が、低電圧部品によって侵襲されることを回避又は低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】電動車両10の全体の構成を模式的に示す側面図。
【
図2】ボディ12の後部12rにおける構成を模式的に示す側面図。
【
図3】ボディ12の後部12rにおける構成を模式的に示す平面図。
【
図4】後面衝突における電子制御ユニット22の挙動を模式的に示す側面図。
【
図5】後面衝突における電子制御ユニット22の挙動を模式的に示す平面図。
【
図6】一変形例のボディ12の後部12rにおける構成を模式的に示す側面図。
【
図7】同変形例のボディ12の後部12rにおける構成を模式的に示す平面図。
【
図10】前記変形例の後面衝突におけるブレース60及び電子制御ユニット22の挙動を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本技術の一実施形態において、少なくとも一つの第1固定箇所の中心は、少なくとも一つの第2固定箇所の中心よりも上方に位置していてもよい。このような構成によると、後面衝突において低電圧部品がボディから圧縮力を受けたときに、低電圧部品を上方へ押し上げることできる。通常、ボディの後部には荷室が設けられることが多く、高電圧部品といった重要な構成要素が、低電圧部品の上方に配置されることは少ない。従って、低電圧部品が上方へ押し上げられる構成であると、低電圧部品が他の重要な構成要素に対して侵襲することを効果的に抑制することができる。
【0009】
本技術の一実施形態において、ボディは、ボディの後部においてフロアを形成するリアフロアパネルと、低電圧部品の後方に位置するとともにリアフロアパネルの後端が接続されたバックパネルとを有してもよい。この場合、少なくとも一つの第1固定箇所は、リアフロアパネルに位置しており、少なくとも一つの第2固定箇所は、バックパネルに位置していてもよい。
【0010】
本技術の一実施形態において、リアフロアパネルは、少なくとも一つの第1固定箇所を有する前部エリアと、前部エリアとバックパネルとの間を延びているとともに前部エリアに対して下方に窪んでいる後部エリアとを有してもよい。この場合、低電圧部品は、リアフロアパネルの後部エリアとバックパネルとで画定された凹部内に配置されていてもよい。
【0011】
上記した実施形態において、低電圧部品の全体が、リアフロアパネルの前部エリアよりも下方に位置してもよい。即ち、低電圧部品の全体が、上記した凹部内に収容されていてもよい。このような構成によると、低電圧部品の上方に、例えばスペアタイヤといった、低電圧部品よりも大型な他の構成要素を配置しやすい。
【0012】
本技術の一実施形態において、少なくとも一つの取付部材は、低電圧部品をボディの少なくとも一つの第1固定箇所に固定する第1ブラケットと、低電圧部品をボディの少なくとも一つの第2固定箇所に固定する第2ブラケットとを有してもよい。ここで、第1ブラケット及び第2ブラケットの各々は、単一のブラケット部品で構成されてもよく、複数のブラケット部品で構成されてもよい。
【0013】
上記に代えて、又は加えて、少なくとも一つの取付部材は、前後方向に延びるブレースを有してもよい。この場合、ブレースの前端は、少なくとも一つの第1固定箇所に固定されており、ブレースの後端は、少なくとも一つの第2固定箇所に固定されていてもよい。即ち、少なくとも一つの第1固定箇所及び少なくとも一つの第2固定箇所の両者に対して、低電圧部品が単一の取付部材で固定されてもよい。
【0014】
上記した実施形態において、ブレースは、前端と後端との間に位置する屈曲部を有してもよい。この場合、屈曲部は、前端と後端との間を結ぶ直線よりも上方に位置してもよい。このような構成によると、電動車両に後面衝突が生じたときに、前後方向に延びるブレースには、その後端から前端に向けて圧縮力が作用する。このとき、ブレースの中間位置には屈曲部が存在しているので、ブレースはその屈曲部において折れ曲がるように変形する。特に、ブレースの屈曲部は、ブレースの前端と後端との間を結ぶ直線よりも上方に位置している。従って、ブレースは、屈曲部が上方へ突出するように(即ち、山折り状に)折れ曲がり、低電圧部品を上方へ移動させる。これにより、低電圧部品の前方への移動がさらに抑制される。
【0015】
本技術の一実施形態において、少なくとも一つの第1固定箇所の中心と、少なくとも一つの第2固定箇所の中心とは、左右方向における位置が互いに相違してもよい。このような構成によると、後面衝突において低電圧部品がボディから圧縮力を受けたときに、低電圧部品が左方又は右方へ回転するように姿勢を変化させる。これにより、低電圧部品の前方への移動がさらに抑制される。なお、他の実施形態として、少なくとも一つの第1固定箇所の中心と、少なくとも一つの第2固定箇所の中心との間で、左右方向における位置が互いに相違する場合、上下方向における位置については互いに相違しなくてもよい。
【0016】
本技術の一実施形態において、電動車両は、低電圧部品よりも前方に位置する高電圧部品をさらに備えてもよい。本技術によると、後面衝突において低電圧部品の前方への侵襲を抑制することができる。従って、低電圧部品よりも前方に高電圧部品を配置しても、高電圧部品が低電圧部品によって侵襲されることを、回避又は低減することができる。ここで、高電圧部品が低電圧部品よりも前方に位置するとは、高電圧部品の少なくとも一部が、低電圧部品の前端部分よりも前方に位置することを意味し、両者の上下方向及び左右方向における位置関係は問わないものとする。
【0017】
高電圧部品は、車輪を駆動するモータと、モータに接続された電力制御ユニットとの少なくとも一方を有してもよい。このようなモータや電気部品は、高電圧で動作する高電圧部品の典型例であり、低電圧部品の侵襲から保護される必要が高いためである。また、いくつかの実施形態では、モータや電力制御ユニットを車輪の近くに配置した結果、それらが車両後部に位置する低電圧部品の前方及び/又は下方に位置することもある。
【0018】
上記した実施形態では、低電圧部品の少なくとも一部と、高電圧部品の少なくとも一部との間で、左右方向における位置が一致してもよい。本技術によると、後面衝突において低電圧部品の前方への侵襲を抑制することができる。従って、このような構成であっても、高電圧部品が低電圧部品によって侵襲されることを、回避又は低減することができる。
【0019】
上記した実施形態では、高電圧部品の重心が、低電圧部品の重心に対して、左右方向の一方側に位置していてもよい。この場合、少なくとも一つの第2固定箇所の中心は、少なくとも一つの第1固定箇所の中心に対して、左右方向の他方側に位置していてもよい。このような構成によると、後面衝突において低電圧部品がボディから圧縮力を受けたときに、左右方向に関しては、低電圧部品を高電圧部品から離れる方向へ押し出すことできる。これにより、高電圧部品が低電圧部品によって侵襲されることを、効果的に回避又は低減することができる。
【0020】
本技術において、低電圧部品は、少なくとも一つのプロセッサを有する電子制御ユニットであってもよい。即ち、低電圧部品は、そのサイズ及び重量が比較的に大きくてもよい。一例ではあるが、低電圧部品の重量は、例えば500グラム以上であってもよく、あるいは、1キログラム以上であってもよい。
【0021】
本明細書において単に前後方向との記載は、電動車両における前後方向を意味するものとする。同様に、単に左右方向との記載は、電動車両における左右方向を意味し、単に上下方向との記載は、電動車両における上下方向を意味する。例えば、電動車両が水平面上に配置されたときに、電動車両の上下方向は、鉛直方向と一致する。また、電動車両の左右方向は、電動車両の車軸に平行な方向であり、電動車両の前後方向は、水平面に平行かつ電動車両の車軸に垂直な方向となる。
【実施例】
【0022】
図面を参照して、実施例の電動車両10について説明する。
図1に示すように、電動車両10は、ボディ12と、複数の車輪14f、14rとを含む。ボディ12は、特に限定されないが、金属で構成されている。ボディ12の内部には、客室や荷室が画定されている。複数の車輪14f、14rには、一対の前輪14fと、一対の後輪14rとが含まれる。なお、車輪14f、14rの数については、四つに限定されない。
【0023】
電動車両10は、モータ16と、バッテリユニット18と、電力制御ユニット20と、電子制御ユニット22とをさらに備える。モータ16は、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つ(例えば、一対の後輪14r)を駆動する。バッテリユニット18は、電力制御ユニット20を介してモータ16に接続されており、モータ16へ電力を供給する。バッテリユニット18は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力によって繰り返し充電可能に構成されている。電力制御ユニット20は、DC-DCコンバータ及び/又はインバータを内蔵しており、バッテリユニット18とモータ16との間で伝達される電力を制御する。電子制御ユニット22は、プロセッサを有しており、例えばユーザの操作に応じて電力制御ユニット20へ制御指令を与える。なお、電動車両10は、バッテリユニット18に代えて、又は加えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源を備えてもよい。
【0024】
ここで、モータ16、バッテリユニット18及び電力制御ユニット20は、いわゆる高電圧部品であり、例えば30ボルトを超える交流電圧又は60ボルトを超える直流電圧で動作する電気部品である。一方、電子制御ユニット22は、そのような高電圧部品に該当しない低電圧部品である。モータ16、バッテリユニット18及び電力制御ユニット20といった高電圧部品は、電動車両10で衝突が生じたときに、ダメージを受けないように保護されることが望まれる。従って、モータ16、バッテリユニット18及び電力制御ユニット20は、ボディ12の後部12rに配置されているが、後面衝突による損傷を避けるために、電動車両10の後面10rからは離れて配置されている。一方、低電圧部品である電子制御ユニット22は、ボディ12の後部12rにおいて、モータ16及び電力制御ユニット20よりも後方に配置されている。なお、電子制御ユニット22は、ボディ12の後部12rに配置された低電圧部品の一例である。
【0025】
図2、
図3に示すように、ボディ12の後部12rは、リアフロアパネル40とバックパネル48とを有する。リアフロアパネル40は、ボディ12の後部12rにおいてフロアを形成している。バックパネル48は、電力制御ユニット20の後方に位置しており、ボディ12の後部12rにおいて後壁を形成している。バックパネル48には、リアフロアパネル40の後端40bが接続されている。電子制御ユニット22は、リアフロアパネル40、バックパネル48及び一対のサイドパネル(図示省略)で画定された荷室に配置されている。また、ボディ12は、バックパネル48の後方に配置されたバンパリインフォースメント50をさらに備える。バンパリインフォースメント50は、バックパネル48に沿って左右方向に延びている。
【0026】
一例ではあるが、本実施例におけるリアフロアパネル40は、前部エリア42と、前部エリア42とバックパネル48との間を延びている後部エリア44とを備える。後部エリア44は、前部エリア42に対して下方に窪んでおり、前部エリア42とバックパネル48との間に凹部46を画定している。リアフロアパネル40の凹部46には、電子制御ユニット22が配置されている。一方、モータ16及び電力制御ユニット20は、リアフロアパネル40の外側であって、凹部46の前方には位置している。電子制御ユニット22は、前後方向において、モータ16及び電力制御ユニット20と、バンパリインフォースメント50との間に位置している。
【0027】
電子制御ユニット22は、複数のブラケット30、32によって、ボディ12の複数の固定箇所34、36に固定されている。複数の固定箇所34、36には、電子制御ユニット22よりも前方に位置する二つの第1固定箇所34と、電子制御ユニット22よりも後方に位置する二つの第2固定箇所36とが含まれる。特に限定されないが、二つの第1固定箇所34は、リアフロアパネル40の前部エリア42に位置しており、二つの第2固定箇所36は、バックパネル48に位置している。
図2に示すように、二つの第1固定箇所34と、二つの第2固定箇所36とは、上下方向の位置が互いに相違する。詳しくは、二つの第1固定箇所34の中心C34は、二つの第2固定箇所36の中心C36よりも上方に位置している。また、
図3に示すように、二つの第1固定箇所34の中心C34と、二つの第2固定箇所36の中心C36とは、左右方向の位置も互いに相違している。
【0028】
複数のブラケット30、32は、取付部材の一例であり、第1ブラケット30と第2ブラケット32とを含む。第1ブラケット30は、電子制御ユニット22の前面に取り付けられており、ボディ12の二つの第1固定箇所34に固定されている。第2ブラケット32は、電子制御ユニット22の後面に取り付けられており、ボディ12の二つの第2固定箇所36に固定されている。第1ブラケット30及び第2ブラケット32の各々は、単一の部品で構成されているが、複数のブラケット部材で構成されてもよい。また、第1固定箇所34の数や、第2固定箇所36の数についても、二つに限定されない。
【0029】
図4に示すように、電動車両10に後面衝突が生じると、ボディ12の第1固定箇所34及び第2固定箇所36から、電子制御ユニット22に対して前後方向に圧縮力Fが作用する。前述したように、電子制御ユニット22よりも前方に位置する第1固定箇所34と、電子制御ユニット22よりも後方に位置する第2固定箇所36では、上下方向における位置が互いに相違する。従って、ボディ12から圧縮力Fを受けた電子制御ユニット22は、単に前方へ押し出されるのではなく、上方又は下方へ回転するように姿勢を変化させる。加えて、第2固定箇所36が第1固定箇所34よりも下方に位置するので、圧縮力Fを受けた電子制御ユニット22が、上方へ押し出されるように移動する。これにより、電子制御ユニット22の前方への移動が抑制されるので、モータ16や電力制御ユニット20といった高電圧部品が、電子制御ユニット22によって侵襲されることを回避又は低減することができる。
【0030】
加えて、二つの第1固定箇所34の中心C34と、二つの第2固定箇所36の中心C36とは、左右方向の位置も互いに相違している。従って、
図5に示すように、後面衝突において電子制御ユニット22がボディ12から圧縮力Fを受けたときに、電子制御ユニット22が左方又は右方へ回転するように姿勢を変化させる。これにより、電子制御部品の前方への移動がさらに抑制される。ここで、電子制御ユニット22と、高電圧部品であるモータ16及び電力制御ユニット20とは、左右方向における位置が部分的に一致している。但し、モータ16及び電力制御ユニット20の各重心G16、G20は、電子制御ユニット22の重心G22に対して左方にオフセットされている。これに対して、二つの第2固定箇所36の中心C36は、二つの第1固定箇所34の中心C34に対して右方にオフセットされている。このような構成によると、後面衝突において電子制御ユニット22がボディ12から圧縮力Fを受けたときに、左右方向に関しては、電子制御ユニット22をモータ16及び電力制御ユニット20から離れる方向へ押し出すことできる。これにより、高電圧部品が低電圧部品によって侵襲されることを、効果的に回避又は低減することができる。
【0031】
上記した実施例では、電子制御ユニット22が、二つのブラケット30、32によってボディ12に固定されている。これに対して、
図6、
図7に示すように、電子制御ユニット22が、単一のブレース60によってボディ12に固定されてもよい。即ち、ブレース60は、電子制御ユニット22をボディ12の複数の固定箇所64、66に固定する取付部材の他の一例である。ブレース60は、例えばスチール材といった金属で構成されている。但し、他の実施形態として、ブレース60は、繊維強化樹脂といった他の材料で構成されてもよい。ブレース60は、ボディ12に固定されており、前後方向に延びている。一例ではあるが、ブレース60は、電子制御ユニット22の上方に位置しており、電子制御ユニット22を上方から支持している。他の実施形態として、ブレース60は、電子制御ユニット22の下方に位置してもよく、あるいは、電子制御ユニット22の側方に位置してもよい。また、電子制御ユニット22は、二以上のブレース60によって、ボディ12に固定されてもよい。
【0032】
ブレース60の前端60aは、リアフロアパネル40の前部エリア42に位置するに二つの第1固定箇所64に、例えばボルトによって固定されている。一方、ブレース60の後端60bは、バックパネル48に位置する二つの固定箇所66に、例えばボルトによって固定されている。前述した実施例と同様に、二つの第1固定箇所64の中心C64は、二つの第2固定箇所66の中心C66よりも上方に位置している。その一方で、左右方向については、二つの中心C64、C66の位置が一致している。なお、他の実施形態として、ブレース60の前端60a及び/又は後端60bは、ボディ12に対して溶接又は他の態様で固定されてもよい。なお、第1固定箇所64の数及び第2固定箇所66の数は、二つに限定されず、一つ又は三つ以上であってもよい。
【0033】
図8、
図9に示すように、ブレース60は、前端60aと後端60bとの間に位置する屈曲部60cを有しており、概して山折り状に屈曲した形状を有している。従って、ブレース60の前端60aと後端60bとの間を直線Lで結んだときに、ブレース60の屈曲部60cが当該直線Lよりも上方に位置する。ここで、ブレース60はある程度の厚みを有しており、かつ、ボディ12に固定される前端60a及び後端60bの各部分は、ボディ12の形状に応じて様々な形状を有し得る。従って、ブレース60の形状を正確に定義すると、
図9に示すように、ブレース60の前端60aと後端60bとの間の区間60d、60eにおいて、ブレース60の長手方向に延びる中心軸Aに着目したときに、屈曲部60cにおける中心軸Aの位置A3が、中心軸Aの両端A1、A2を結ぶ直線Lよりも上方に位置する。なお、ブレース60には、一つに限られず、複数の屈曲部60cが設けられてもよい。この場合、複数の屈曲部60cのうちの少なくとも一つが、ブレース60の前端60aと後端60bとの間を結ぶ直線Lよりも上方に位置すればよい。
【0034】
上記した構造によると、
図10に示すように、電動車両10に後面衝突が生じたときに、前後方向に延びるブレース60には、その後端60bから前端60aに向けて圧縮力Fが作用する。このとき、ブレース60の中間位置には屈曲部60cが存在しているので、ブレース60はその屈曲部60cにおいて折れ曲がるように変形する。特に、ブレース60の屈曲部60cは、ブレース60の前端60aと後端60bとの間を結ぶ直線Lよりも上方に位置している(
図9参照)。従って、ブレース60は、屈曲部60cが上方へ突出するように(即ち、山折り状に)折れ曲がり、電子制御ユニット22を上方へ持ち上げる。電子制御ユニット22が上方へ持ち上げられることで、電子制御ユニット22の前方への移動が抑制されるので、例えばモータ16や電力制御ユニット20といった高電圧部品のような、電子制御ユニット22の前方及び/又は下方に位置する構成要素が、電子制御ユニット22によって侵襲されることを回避又は低減することができる。なお、ブレース60の前端60aの厚みは、それに隣接する区間60dの厚みよりも大きい。従って、前端60aとそれに隣接する区間60dとの境界位置では応力が集中しやすく、その位置でもブレース60が折れ曲がることが想定されている。
【0035】
本実施例の電動車両10では、ブレース60の後端60bが、ブレース60の前端60aよりも下方に位置している。このような構成によると、電動車両10に後面衝突が生じたときに、ブレース60を意図した形状(即ち、
図10に示す山折りの形状)へ変形させやすく、電子制御ユニット22をより確実に上方へ押し上げることができる。加えて、
図8、
図9に示すように、ブレース60の屈曲部60cから後端60bまでの区間60eは、後端60bに向かって下方に傾斜している。この点においても、電動車両10に後面衝突が生じたときに、ブレース60を意図した形状へ変形させやすく、電子制御ユニット22をより確実に上方へ押し上げることができる。一方、ブレース60の前端60aから屈曲部60cまでの区間60dについては、特に限定されないが、前後方向に沿って水平に延びている。
【0036】
上述のように、ブレース60の後端60bが、ブレース60の前端60aよりも下方に位置していると、後面衝突においてブレース60が山折りの形状へ変形しやすくなる。従って、ブレース60の後端60bが前端60aよりも下方に位置するときは、ブレース60の中間位置に必ずしも屈曲部60cを設ける必要はない。同様に、ブレース60に屈曲部60c設けられていれば、後面衝突においてブレース60が山折りの形状へ変形しやすくなる。従って、ブレース60が屈曲部60cを有するときは、ブレース60の後端60bが前端60aに対して必ずしも下方に位置する必要はない。また、ブレース60を用いた本変形例においても、前述した実施例と同様に、一又は複数の第1固定箇所64の中心C64と、一又は複数の第2固定箇所66の中心C66との間で、左右方向における位置が互いに相違してもよい。
【0037】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
10:電動車両
12:ボディ
12r:ボディの後部
14:車輪
16:モータ
18:バッテリユニット
20:電力制御ユニット
22:電子制御ユニット
30:第1ブラケット
32:第2ブラケット
34:第1固定箇所
36:第2固定箇所
40:リアフロアパネル
42:リアフロアパネルの前部エリア
44:リアフロアパネルの後部エリア
46:凹部
48:バックパネル
50:リアバンパリインフォースメント
60:ブレース
60a:ブレースの前端
60b:ブレースの後端
60c:ブレースの屈曲部
60d:ブレースの前端から屈曲部までの区間
60e:ブレースの屈曲部から後端までの区間
G16:モータ16の重心
G20:電力制御ユニット20の重心
G22:電子制御ユニット22の重心
P34:二つの第1固定箇所34の中心
P36:二つの第2固定箇所36の中心