(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/20 20120101AFI20221102BHJP
【FI】
G06Q50/20
(21)【出願番号】P 2017251804
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】593197422
【氏名又は名称】株式会社管理工学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】501101408
【氏名又は名称】株式会社創造学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山階 正樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷 崇
(72)【発明者】
【氏名】柿原 範嘉
(72)【発明者】
【氏名】中島 竜也
(72)【発明者】
【氏名】橋川 貴宣
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-195146(JP,A)
【文献】登録実用新案第3056599(JP,U)
【文献】特開2003-216015(JP,A)
【文献】登録実用新案第3095317(JP,U)
【文献】特開2005-190404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験の受験者群の学力分布を推定するための情報処理装置であって、
教育機関に属する又は属していた複数の者であって、前記試験を受験した複数の者の前記試験の模擬試験の結果に基づいて、前記複数の者の学力分布を正規的分布として規定する総合偏差値の平均と標準偏差を算出する第1算出部と、
前記平均と標準偏差の各々について信頼区間を推定する第1推定部と、
前記平均について推定された信頼区間の限界値と前記標準偏差について推定された信頼区間の限界値とに基づいて前記受験者群の学力分布を推定する第2推定部と、
前記学力分布を示す画面を表示部に表示させる表示制御部と、
指定された前記試験の競争倍率に基づいて、前記推定された受験者群の学力分布を示す曲線により囲まれる領域のうち前記試験の合格者又は不合格者が占める領域の割合を算出する第2算出部と、
前記算出された割合と前記推定された受験者群の学力分布が示す曲線とに基づいて、前記試験の合否を分ける第1境界値を推定する第3推定部と
を備え
、
前記総合偏差値は、前記模擬試験の模試偏差値に通知簿点を加算して得た総合点に基づいて算出される
情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の者の前記試験の結果と前記複数の者の前記模擬試験の結果を回帰分析して回帰係数を導出する第3算出部と、
前記複数の者の各々について、前記導出された回帰係数と前記試験の結果に基づいて、前記模擬試験の結果又は前記模擬試験の結果に基づいて算出される評価値の推定値を算出する第4推定部と、
前記複数の者のうち前記試験の合格者について算出された推定値の中で最低の値である最低推定値と、前記複数の者のうち前記試験の不合格者について算出された推定値の中で最高の値である最高推定値とを、前記複数の者の前記試験の合否情報に基づいて特定する特定部と、
前記特定された最低推定値と最高推定値に基づいて、前記試験の合否を分ける第2境界値を推定する第5推定部と、
前記推定された第1境界値を、前記推定された第2境界値と比較することにより、前記推定された受験者群の学力分布の妥当性を検証する検証部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数の者の前記試験の結果と前記複数の者の前記模擬試験の結果を回帰分析して回帰係数を導出する第4算出部と、
前記複数の者の各々について、前記導出された回帰係数と前記模擬試験の結果に基づいて前記試験の結果の推定値を算出する第6推定部と、
前記複数の者の各々について、前記試験の結果と、算出された前記試験の結果の推定値の差分を算出する第5算出部と、
前記複数の者の各々について算出された差分の度数分布に基づいて標準偏差を算出する第6算出部と
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記妥当性を検証された学力分布と、前記推定された第1境界値又は第2境界値と、指定された者の前記試験の模擬試験の結果と、当該者が前記試験を受験した場合に予測される結果の振れ幅であって、前記第6算出部により算出された標準偏差により規定される振れ幅とを示す画面を表示部に表示させる表示制御部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験の合否予測を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験の合否予測を支援するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、模試の偏差値と内申点の相関を示す表であって、受験者の成績位置と合格ラインを示す表が印刷された受験試験冊子が記載されている。特許文献2には、志望校の合格者と不合格者の偏差値分布曲線を示すとともに、合格基準偏差値線と受験者の偏差値を示す偏差値分布グラフが印刷された成績表が記載されている。特許文献3には、志望校の合格者と不合格者の得点分布を示すとともに、得点区間ごとに合格ゾーン、挑戦ゾーンといったカテゴリを示す合否判定グラフが記載されている。特許文献4には、合否実績に基づく合否判定データと利用者の成績を照合して、合否判定データを出力する合否判定システムが記載されている。特許文献5には、既実施試験統計データから理論的学力分布曲線を求め、求めた曲線と受験者の得点結果との対応分析を行って合格可能性を出力する試験分析シミュレーションシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3095317号公報
【文献】実用新案登録第3056599号公報
【文献】特開平6-195146号公報
【文献】特開2001-350851号公報
【文献】特開平5-281900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの技術を背景になされたものであり、試験の合否予測を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明に係る情報処理装置は、試験の受験者群の学力分布を推定するための情報処理装置であって、教育機関に属する又は属していた複数の者であって、前記試験を受験した複数の者の前記試験の模擬試験の結果に基づいて、前記複数の者の学力分布を正規的分布として規定する平均と標準偏差を算出する第1算出部と、前記算出された平均と標準偏差の各々について信頼区間を推定する第1推定部と、前記平均について推定された信頼区間の限界値と前記標準偏差について推定された信頼区間の限界値とに基づいて前記受験者群の学力分布を推定する第2推定部とを備える。
【0006】
好ましい態様において、前記情報処理装置は、指定された前記試験の競争倍率に基づいて、前記推定された前記受験者群の学力分布を示す曲線により囲まれる領域のうち前記試験の合格者又は不合格者が占める領域の割合を算出する第2算出部と、前記算出された割合と前記推定された前記受験者群の学力分布が示す曲線とに基づいて、前記試験の合否を分ける第1境界値を推定する第3推定部とをさらに備える。
【0007】
さらに好ましい態様において、前記情報処理装置は、前記複数の者の前記試験の結果と前記複数の者の前記模擬試験の結果を回帰分析して回帰係数を導出する第3算出部と、前記複数の者の各々について、前記導出された回帰係数と前記試験の結果に基づいて、前記模擬試験の結果又は前記模擬試験の結果に基づいて算出される評価値の推定値を算出する第4推定部と、前記複数の者のうち前記試験の合格者について算出された推定値の中で最低の値である最低推定値と、前記複数の者のうち前記試験の不合格者について算出された推定値の中で最高の値である最高推定値とを、前記複数の者の前記試験の合否情報に基づいて特定する特定部と、前記特定された最低推定値と最高推定値に基づいて、前記試験の合否を分ける第2境界値を推定する第5推定部と、前記推定された第1境界値を、前記推定された第2境界値と比較することにより、前記推定された前記受験者群の学力分布の妥当性を検証する検証部とをさらに備える。
【0008】
さらに好ましい態様において、前記情報処理装置は、前記複数の者の前記試験の結果と前記複数の者の前記模擬試験の結果を回帰分析して回帰係数を導出する第4算出部と、前記複数の者の各々について、前記導出された回帰係数と前記模擬試験の結果に基づいて前記試験の結果の推定値を算出する第6推定部と、前記複数の者の各々について、前記試験の結果と、算出された前記試験の結果の推定値の差分を算出する第5算出部と、前記複数の者の各々について算出された差分の度数分布に基づいて標準偏差を算出する第6算出部とをさらに備える。
【0009】
さらに好ましい態様において、前記情報処理装置は、前記妥当性を検証された学力分布と、前記推定された第1境界値又は第2境界値と、指定された者の前記試験の模擬試験の結果と、当該者が前記試験を受験した場合に予測される結果の振れ幅であって、前記第6算出部により算出された標準偏差により規定される振れ幅とを示す画面を表示部に表示させる表示制御部をさらに備える。
【0010】
また、本発明に係る情報処理装置は、学力の第1評価項目を第1軸とし、学力の第2評価項目を第2軸とする平面上に、前記第1評価項目の評価値と前記第2評価項目の評価値に該当する試験の合格者数と不合格者数を第3軸方向に延びる棒線で表す3次元棒グラフであって、指定された者の前記第1評価項目の評価値と前記第2評価項目の評価値に該当する棒線を、他の棒線と区別可能に表す3次元棒グラフを表示部に表示させる表示制御部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る情報処理装置によれば、試験の合否予測を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】過去生徒成績DB111の一例を示す図である。
【
図3】当年度生徒成績DB112の一例を示す図である。
【
図4】第1学力分布DB113の一例を示す図である。
【
図5】第2学力分布DB114の一例を示す図である。
【
図8】過去実績比較用の学力分布推定処理の一例を示すフロー図である。
【
図9】合否ボーダーの推定方法の具体例を示す図である。
【
図10】合否ボーダーの推定方法の具体例を示す図である。
【
図11】当年度シミュレーション用の学力分布推定処理の一例を示すフロー図である。
【
図12】合否ボーダー推定処理の一例を示すフロー図である。
【
図13】模試偏差値と入試得点の関係を示すグラフの一例を示す図である。
【
図14】学力分布検証処理の一例を示すフロー図である。
【
図15】振れ幅推定処理の一例を示すフロー図である。
【
図16】入試得点の実得点と推定値の差分の分布を表すグラフの一例を示す図である。
【
図17】学力位置表示制御処理の一例を示すフロー図である。
【
図21】過去実績比較用の合格可能性表示制御処理の一例を示すフロー図である。
【
図24】当年度シミュレーション用の合格可能性表示制御処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施形態
1-1.構成
図1は、本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。同図に示すシステムは、受験指導支援サーバ1と、同サーバと通信可能に接続されたクライアント装置2を備える。
【0014】
1-1-1.受験指導支援サーバ1の構成
受験指導支援サーバ1は、高校受験用の学習塾に所属する生徒に対する受験指導を支援するためのサーバである。具体的には、志望校への合格可能性を定量的かつ視覚的に提示する機能と、志望校の過去の受験者と比較した場合の塾生の学力位置を視覚的に提示する機能を備えるサーバである。前者の機能は、過去年度の志望校の受験者全体の学力分布に基づいて合格可能性を提示する機能(以下、「過去実績比較」という)と、過去3年間の志望校の受験者全体の学力分布の平均に基づいて、利用者が競争倍率を変えて合格可能性をシミュレートする機能(以下、「当年度シミュレーション」という)に分けられる。
【0015】
受験指導支援サーバ1は、HDD等の記憶装置と、CPU等の演算処理装置と、クライアント装置2と通信を行うための通信装置を備える。記憶装置は、演算処理装置により実行されるプログラムに加えて、
図1に示すように、過去生徒成績DB111と、当年度生徒成績DB112と、第1学力分布DB113と、第2学力分布DB114と、振れ幅DB115とを記憶する。
【0016】
過去生徒成績DB111は、学習塾に所属している又は所属していた生徒であって高校入試を受験した生徒の成績等を格納するためのデータベースである。
図2は、過去生徒成績DB111の一例を示す図である。過去生徒成績DB111は、同図に示すように、受験校と、入試年度と、生徒IDと、学力情報と、合否を対応付けて格納する。ここで、学力情報は、模試実施時期と、模試実施時期の通知簿点と、模試偏差値と、総合偏差値からなる。総合偏差値は、模試偏差値に通知簿点を加算して得た総合点に基づいて、同学年の塾生内で算出される偏差値である。
【0017】
当年度生徒成績DB112は、学習塾に所属している生徒であって、これから高校入試を受験する生徒の成績等を格納するためのデータベースである。
図3は、当年度生徒成績DB112の一例を示す図である。当年度生徒成績DB112は、同図に示すように、生徒IDと学力情報からなる。ここで、学力情報は、模試実施時期と、模試実施時期の通知簿点と、模試偏差値と、総合偏差値と、模試実施時期の志望校からなる。
【0018】
第1学力分布DB113は、各高校の入試に関する情報であって、過去実績比較に用いられる情報を格納するためのデータベースである。
図4は、第1学力分布DB113の一例を示す図である。第1学力分布DB113は、同図に示すように、高校と、入試年度と、学習塾内の受験者数と、競争倍率と、学力分布平均値と、学力分布標準偏差と、合否ボーダーと、学習塾内の合格者最低総合偏差値と、学習塾内の不合格者最高総合偏差値を対応付けて格納する。ここで、学力分布平均値と学力分布標準偏差は、高校の受験者全体(学習塾に所属しない生徒も含む)の学力分布を規定する平均と標準偏差の推定値である。合否ボーダーは、高校入試の合否を分ける総合偏差値の推定値である。
【0019】
第2学力分布DB114は、各高校の受験者全体の学力分布に関する情報であって、当年度シミュレーションに用いられる情報を格納するためのデータベースである。
図5は、第2学力分布DB114の一例を示す図である。第2学力分布DB114は、同図に示すように、高校と、入試年度と、学力分布平均値と、学力分布標準偏差と、平均補正値と、標準偏差補正値を対応付けて格納する。ここで、学力分布平均値と学力分布標準偏差は、高校の受験者全体(学習塾に所属しない生徒も含む)の学力分布を規定する平均と標準偏差の推定値である。平均補正値と標準偏差補正値は、後述する学力分布検証処理において特定される値であり、後述する当年度シミュレーション用の学力分布推定処理において学力分布を推定する際に参照される。
【0020】
振れ幅DB115は、模試ごとに、模試偏差値から推定される入試得点の振れ幅を規定する標準偏差を格納するためのデータベースである。
図6は、振れ幅DB115の一例を示す図である。振れ幅DB115は、同図に示すように、模試実施時期と、標準偏差(σ)と、2σを対応付けて格納する。
【0021】
受験指導支援サーバ1が備える演算処理装置は、記憶装置に記憶されるプログラムを実行することにより、
図1に示すように、過去生徒成績データ成形部121と、当年度生徒成績データ成形部122と、第1学力分布推定部123と、第2学力分布推定部124と、合否ボーダー推定部125と、学力分布検証部126と、振れ幅推定部127と、学力位置表示制御部128と、第1合格可能性表示制御部129と、第2合格可能性表示制御部130という機能を実現する。
【0022】
過去生徒成績データ成形部121は、図示せぬデータベースに格納されたデータから過去生徒成績データを成形して、第1学力分布推定部123、合否ボーダー推定部125及び振れ幅推定部127に出力する。ここで、過去生徒成績データは、学習塾に所属している又は所属していた生徒であって高校入試を受験した生徒の成績等を示すデータであって、年度単位で出力されるデータである。
図7は、過去生徒成績データの一例を示す図である。過去生徒成績データは、同図に示すように、生徒IDと、学力情報と、受験校と、合否と、入試得点の複数の組により構成される。ここで、学力情報は、模試実施時期と、模試実施時期の通知簿点と、模試偏差値と、総合偏差値からなる。また、過去生徒成績データ成形部121は、入試得点を除く過去生徒成績データを、入試年度と対応付けて過去生徒成績DB111に格納する。
【0023】
当年度生徒成績データ成形部122は、図示せぬデータベースに格納されたデータから当年度生徒成績データを成形して、当年度生徒成績DB112に格納する。ここで、当年度生徒成績データは、学習塾に所属している生徒であって、これから高校入試を受験する生徒の成績等を示すデータである。当年度生徒成績データのデータ構成の一例は、
図3に示す通りである。
【0024】
第1学力分布推定部123は、過去生徒成績データ成形部121により出力された過去生徒成績データと第1学力分布DB113に基づいて、各高校について、受験者全体(学習塾に所属しない生徒も含む)の学力分布を推定する。この学力分布は、過去実績比較のために推定される。具体的には、第1に、処理対象の高校に昨年度受験した塾生の数(標本数)が所定数以上存在するか否かを判定する。ここで、所定数とは、例えば20人である。所定数以上存在する場合には、第2に、処理対象の高校に昨年度受験した塾生の入試直近の総合偏差値分布の正規性を検定する。正規性検定には、例えばコルモゴロフ-スミルノフ検定(KS検定)を用いる。総合偏差値分布が正規分布している場合には、第3に、処理対象の高校に昨年度受験した塾生の入試直近の総合偏差値の平均と標準偏差を算出する。言い換えると、塾生の受験者の学力分布が受験者全体と同等の場合の学力分布(正規分布)を推定する。平均と標準偏差を算出すると、第4に、算出した平均と標準偏差の各々について95%信頼区間を推定する(
図9参照)。95%信頼区間を推定すると、第5に、平均について推定された限界値と標準偏差について推定された限界値とに基づいて学力分布を推定する。具体的には、平均の上限値と標準偏差の下限値により規定される、合否ボーダーが最も高くなる学力分布(正規分布)と、平均の下限値と標準偏差の上限値により規定される、合否ボーダーが最も低くなる学力分布(正規分布)を推定する(
図9参照)。3つの学力分布を推定すると、第6に、推定した学力分布の各々について、処理対象の高校の昨年度の競争倍率に基づいて合否ボーダーを推定する。具体的には、競争倍率に基づいて、推定した学力分布を示す正規分布曲線により囲まれる領域のうち不合格者が占める領域の割合を算出し、算出した割合と正規分布曲線に基づいて合否ボーダーを推定する(
図9及び10参照)。
【0025】
第2学力分布推定部124は、第1学力分布DB113に基づいて、各高校について、受験者全体(学習塾に所属しない生徒も含む)の学力分布を推定する。この学力分布は、当年度シミュレーションのために推定される。具体的には、第1に、処理対象の高校に過去3年度の各年度に受験した塾生の数(標本数)が所定数以上存在するか否かを判定する。ここで、所定数とは、例えば20人である。所定数以上存在する場合には、第2に、処理対象の高校の学力分布平均値と学力分布標準偏差の各々について過去3年度の平均を算出する。言い換えると、過去3年度の塾生の受験者の学力分布の平均が受験者全体と同等の場合の学力分布(正規分布)を推定する。各平均を算出すると、第3に、算出した平均と標準偏差を、直近年度の塾生の受験者の学力分布と受験者全体の学力分布の関係に基づいて補正する。具体的には、処理対象の高校と当年度とに対応付けられている平均補正値を第2学力分布DB114から読み出し、算出した平均に加算する。また、処理対象の高校と当年度とに対応付けられている標準偏差補正値を第2学力分布DB114から読み出し、算出した標準偏差に加算する。補正値を加算すると、補正値が加算された平均と標準偏差を、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0026】
合否ボーダー推定部125は、学力分布検証部126による検証を可能にするために、過去生徒成績データ成形部121により出力された過去生徒成績データに基づいて、入試得点を模試偏差値に換算し、尺度を一致させて、各高校について実際の合否ボーダーを推定する。具体的には、第1に、塾生全体の入試直近の模試偏差値と入試得点を回帰分析して回帰式(具体的には回帰係数(切片と傾き))を導出する(
図13参照)。ここで回帰式は、「入試得点=切片+傾き*模試偏差値」で表される。回帰式を導出すると、第2に、各塾生について、導出した回帰式と入試得点に基づいて模試偏差値を推定する。模試偏差値を推定すると、第3に、各塾生について、推定した模試偏差値に入試直近の通知簿点を加算して総合点を算出する。総合点を算出すると、第4に、各塾生について、模試毎に作成される総合点・総合偏差値換算表(図示略)を参照して、算出した総合点を総合偏差値に換算する。総合偏差値を特定すると、第5に、各高校について、合格者である塾生について特定された総合偏差値の中で最低の総合偏差値を特定して、高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、各高校について、不合格者である塾生について特定された総合偏差値の中で最高の総合偏差値を特定して、高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。
【0027】
各高校について合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値を特定すると、次に、各高校について以下の処理を実行する。まず、処理対象の高校について特定した合格者最低総合偏差値から不合格者最高総合偏差値を減じて得た差分が、「0」以上でありかつ閾値m以下であるか否かを判定する。ここで閾値mは、例えば「2」である。差分が「0」以上でありかつ閾値m以下である場合には、合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値の平均を合否ボーダーと推定する。一方、差分が「0」未満又は閾値mよりも大きい場合には、上記差分が閾値mよりも大きいか否かを判定する。上記差分が閾値mよりも大きい場合には、合否ボーダーを推定しない。一方、上記差分が閾値m以下である場合には(すなわち、上記差分が「0」未満である場合には)、処理対象の高校について、合格者である塾生について特定された総合偏差値の中で不合格者最高総合偏差値よりも高くかつ直近の総合偏差値を合否ボーダーと推定する。
【0028】
学力分布検証部126は、第1学力分布推定部123により推定された学力分布の妥当性を、合否ボーダー推定部125により推定された実際の合否ボーダーに基づいて検証する。具体的には、まず、処理対象である高校について、合否ボーダー推定部125により推定された合否ボーダー(以下、本機能の説明で「合否ボーダー実績値」という)と、第1学力分布推定部123により推定された合否ボーダーの上限及び下限(以下、本機能の説明で「合否ボーダー推定値上限」、「合否ボーダー推定値下限」という)を比較する。合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値上限よりも大きい場合には、合否ボーダー実績値から合否ボーダー推定値上限を減じて得た差分が閾値mよりも大きいか否かを判定する。上記差分が閾値mよりも大きい場合には、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最高となる学力分布(ただし、平均にm/2を加算したもの)と推定する。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、当該学力分布について競争倍率に基づいて推定される合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、第1学力分布推定部123により推定された、塾生の受験者の学力分布が受験者全体と同等の場合の学力分布(言い換えると、合否ボーダーが中間の学力分布)を規定する平均を減じて得た差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、上記の合否ボーダーが中間の学力分布を規定する標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0029】
合否ボーダー実績値から合否ボーダー推定値上限を減じて得た差分が閾値m以下である場合には、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最高となる学力分布と推定する。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、当該学力分布に基づいて推定された合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが中間の学力分布を規定する平均を減じて得た差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、上記の合否ボーダーが中間の学力分布を規定する標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0030】
合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値上限以下であり、かつ合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値下限以上である場合には、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、塾生の受験者の学力分布と同等であると推定する。そして、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが中間の学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、これらの値に基づいて推定された合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、平均補正値「0」と標準偏差補正値「0」を、処理対象の高校と対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0031】
合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値下限よりも小さい場合には、合否ボーダー推定値下限から合否ボーダー実績値を減じて得た差分が閾値mよりも大きいか否かを判定する。上記差分が閾値mよりも大きい場合には、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最低となる学力分布(ただし、平均からm/2を減算したもの)と推定する。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、当該学力分布について競争倍率に基づいて推定される合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが中間の学力分布を規定する差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、上記の合否ボーダーが中間の学力分布を規定する標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0032】
合否ボーダー推定値下限から合否ボーダー実績値を減じて得た差分が閾値m以下である場合には、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最低となる学力分布と推定する。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、当該学力分布に基づいて推定された合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが中間の学力分布を規定する平均を減じて得た差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、上記の合否ボーダーが中間の学力分布を規定する標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0033】
振れ幅推定部127は、過去生徒成績データ成形部121により出力された過去生徒成績データに基づいて、模試ごとに、模試偏差値から推定される入試得点期待値と実際の入試でとる可能性のある入試得点の振れ幅(具体的には標準偏差)を推定する。具体的には、第1に、処理対象の模試の塾生全体の総合偏差値と入試得点を回帰分析して回帰式(具体的には回帰係数(切片と傾き))を導出する。ここで回帰式は、「入試得点=切片+傾き*模試偏差値」で表される。回帰式を導出すると、第2に、各塾生について、導出した回帰式と、処理対象の模試の総合偏差値とに基づいて入試得点を推定する。入試得点を推定すると、第3に、各塾生について、推定された入試得点と実際の入試得点の差分を算出する。差分を算出すると、第4に、塾生全体について算出された差分の分布(例えば度数分布)に基づいて標準偏差(σ)と2σを算出し、模試時期と対応付けて振れ幅推定部127に格納する。
【0034】
学力位置表示制御部128は、過去生徒成績DB111と当年度生徒成績DB112に基づいて、過去の受験者と比較した場合の塾生の学力位置を視覚的に示す3次元棒グラフデータを生成して、クライアント装置2に表示させる。この3次元棒グラフデータは、利用者により指定された模試時期の模試偏差値と通知簿点をx軸、y軸とする平面上に、模試偏差値と通知簿点に該当する、利用者により指定された高校の合格者数と不合格者数をz軸方向に延びる棒線で表す3次元の積み上げ棒グラフのデータである(
図18参照)。この3次元棒グラフにおいて、利用者により指定された塾生の模試偏差値と通知簿点に該当する棒線は、他の棒線と区別可能なように異なる表示態様で表示される。また、この3次元棒グラフは、任意の方向から観察可能になっている(
図19又は20参照)。
【0035】
学力位置表示制御部128は、3次元棒グラフデータを生成するにあたり、第1に、利用者により指定された生徒ID及び模試時期に対応する模試偏差値と通知簿点を当年度生徒成績DB112から読み出す。模試偏差値等を読み出すと、第2に、利用者により指定された高校、年度及び模試時期に対応する模試偏差値、通知簿点及び合否を過去生徒成績DB111から読み出す。模試偏差値等を読み出すと、第3に、読み出したデータに基づいて3次元棒グラフデータを生成する。3次元棒グラフデータを生成すると、第4に、当該データをクライアント装置2に送信する。
【0036】
第1合格可能性表示制御部129は、当年度生徒成績DB112、第1学力分布DB113及び振れ幅DB115に基づいて、塾生の志望校への合格可能性を定量的かつ視覚的に示す、過去実績比較用のグラフデータを生成して、クライアント装置2に表示させる。このグラフデータは、総合偏差値と確率密度(人数比率)を横軸、縦軸とするグラフであって、利用者により指定された高校の受験者全体の学力分布を示す正規分布曲線と、当該高校の合否ボーダーと、利用者により指定された塾生の総合偏差値及びその振れ幅とを重ねて示すグラフのデータである(
図22参照)。
【0037】
第1合格可能性表示制御部129は、グラフデータを生成するにあたり、第1に、利用者により指定された生徒ID及び模試時期に対応する総合偏差値を当年度生徒成績DB112から読み出す。総合偏差値を読み出すと、第2に、利用者により指定された模試時期に対応する標準偏差(σ)及び2σを振れ幅DB115から読み出す。標準偏差を読み出すと、第3に、利用者により指定された高校及び年度に対応する学力分布平均値、学力分布標準偏差及び合否ボーダーを第1学力分布DB113から読み出す。学力分布平均値等を読み出すと、第4に、読み出したデータに基づいてグラフデータを生成する。グラフデータを生成すると、第5に、当該データをクライアント装置2に送信する。
【0038】
なお、第1学力分布DB113に、利用者により指定された高校及び年度に対応する学力分布平均値、学力分布標準偏差及び合否ボーダーが格納されていない場合には、利用者により指定された高校及び年度に対応する合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値を第1学力分布DB113から読み出す。そして、読み出したデータに基づいてグラフデータを生成して、クライアント装置2に送信する。このグラフデータは、総合偏差値と確率密度(分布比率)を横軸、縦軸とする平面上に、利用者により指定された高校の合格者最低総合偏差値及び不合格者最高総合偏差値と、利用者により指定された塾生の総合偏差値及びその振れ幅とを重ねて示すグラフのデータである(
図23参照)。
【0039】
第2合格可能性表示制御部130は、当年度生徒成績DB112、第2学力分布DB114及び振れ幅DB115に基づいて、塾生の志望校への合格可能性を定量的かつ視覚的に示す、当年度シミュレーション用のグラフデータを生成して、クライアント装置2に表示させる。このグラフデータは、総合偏差値と確率密度(人数比率)を横軸、縦軸とするグラフであって、利用者により指定された高校の受験者全体の学力分布を示す正規分布曲線と、利用者により指定された競争率基づいて算出された合否ボーダーと、利用者により指定された塾生の総合偏差値及びその振れ幅とを重ねて示すグラフのデータである(
図22参照)。
【0040】
第2合格可能性表示制御部130は、グラフデータを生成するにあたり、第1に、利用者により指定された生徒ID及び模試時期に対応する総合偏差値を当年度生徒成績DB112から読み出す。総合偏差値を読み出すと、第2に、利用者により指定された模試時期に対応する標準偏差(σ)及び2σを振れ幅DB115から読み出す。標準偏差を読み出すと、第3に、利用者により指定された高校及び年度に対応する学力分布平均値と学力分布標準偏差を第2学力分布DB114から読み出す。学力分布平均値等を読み出すと、第4に、読み出した学力分布平均値等と、利用者により指定された競争倍率に基づいて合否ボーダーを算出する。具体的には、読み出した学力分布平均値と学力分布標準偏差により規定される正規分布曲線に囲まれる領域のうち不合格者が占める領域の割合を算出し、算出した割合と正規分布曲線に基づいて合否ボーダーを推定する(
図10参照)。合否ボーダーを算出すると、第5に、算出した合否ボーダーと読み出したデータに基づいてグラフデータを生成する。グラフデータを生成すると、第6に、当該データをクライアント装置2に送信する。
【0041】
なお、第2学力分布DB114に、利用者により指定された高校及び年度に対応する学力分布平均値と学力分布標準偏差が格納されていない場合には、利用者により指定された高校及び年度に対応する合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値を第1学力分布DB113から読み出す。そして、読み出したデータに基づいてグラフデータを生成して、クライアント装置2に送信する。このグラフデータは、総合偏差値と確率密度(分布比率)を横軸、縦軸とするグラフであって、利用者により指定された高校の合格者最低総合偏差値及び不合格者最高総合偏差値と、利用者により指定された塾生の総合偏差値及びその振れ幅とを重ねて示すグラフのデータである(
図23参照)。
【0042】
1-1-2.クライアント装置2の構成
クライアント装置2は、学習塾において塾生の受験指導を行う者(例えば塾講師)に使用されるコンピュータである。例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末やスマートフォンである。クライアント装置2は、受験指導支援サーバ1に対して条件を指定してグラフデータを要求し、当該サーバから送信されてくるグラフデータを表示装置に表示させる。
【0043】
1-2.動作
受験指導支援サーバ1の動作について説明する。具体的には、(1)過去実績比較用の学力分布推定処理と、(2)当年度シミュレーション用の学力分布推定処理と、(3)合否ボーダー推定処理と、(4)学力分布検証処理と、(5)振れ幅推定処理と、(6)学力位置表示制御処理と、(7)過去実績比較用の合格可能性表示制御処理と、(8)当年度シミュレーション用の合格可能性表示制御処理について説明する。
【0044】
1-2-1.過去実績比較用の学力分布推定処理
図8は、第1学力分布推定部123により実行される、過去実績比較用の学力分布推定処理の一例を示すフロー図である。第1学力分布推定部123は、過去生徒成績データ成形部121から出力される過去生徒成績データを受け付けると、各高校について、同図に示す処理を実行する。
【0045】
まず、第1学力分布推定部123は、処理対象の高校に昨年度受験した塾生の数(標本数)が所定数以上存在するか否かを判定する(Sa1)。所定数存在しない場合には(Sa2のNO)、本処理を終了する。一方、所定数存在する場合には(Sa2のYES)、処理対象の高校に昨年度受験した塾生の入試直近の総合偏差値分布の正規性を検定する(Sa3)。総合偏差値分布が正規分布していない場合には(Sa4のNO)、本処理を終了する。一方、総合偏差値分布が正規分布している場合には(Sa4のYES)、処理対象の高校に昨年度受験した塾生の入試直近の総合偏差値の平均と標準偏差を算出する(Sa5)。言い換えると、塾生の受験者の学力分布が受験者全体と同等の場合の学力分布(正規分布)を推定する。平均と標準偏差を算出すると、算出した平均と標準偏差の各々について95%信頼区間を推定する(Sa6)。
【0046】
図9は、ステップSa6~Sa8の処理の具体例を示す図である。ステップSa5において算出された平均と標準偏差が、同図の左端に示すように「55」と「3」である場合には、各々の95%信頼区間は「54~56」と「2~4」となる。
【0047】
95%信頼区間を推定すると、平均について推定された限界値と標準偏差について推定された限界値とに基づいて学力分布を推定する(Sa7)。具体的には、平均の上限値と標準偏差の下限値により規定される、合否ボーダーが最も高くなる学力分布(正規分布)と、平均の下限値と標準偏差の上限値により規定される、合否ボーダーが最も低くなる学力分布(正規分布)を推定する。例えば、ステップSa6において算出された平均と標準偏差の95%信頼区間が、
図9の中央に示すように「54~56」と「2~4」である場合には、合否ボーダーが最も高くなる学力分布として、平均「56」と標準偏差「2」により規定される学力分布が推定され、合否ボーダーが最も低くなる学力分布として、平均「54」と標準偏差「4」により規定される学力分布が推定される。なお、同図に示す、合否ボーダーが中間の学力分布は、ステップSa5において推定される学力分布である。
【0048】
3つの学力分布を推定すると、推定した学力分布の各々について、処理対象の高校の昨年度の競争倍率に基づいて合否ボーダーを推定する(Sa8)。具体的には、競争倍率に基づいて、学力分布を示す正規分布曲線により囲まれる領域のうち不合格者が占める領域の割合を算出し、算出した割合と正規分布曲線に基づいて合否ボーダーを推定する。
【0049】
図10は、合否ボーダーの推定方法の具体例を示す図である。仮に処理対象の高校の競争倍率が、同図に示すように「1.28」倍である場合には、正規分布曲線により囲まれる領域のうち下側21.9(=1-1/1.28)%の領域を画する総合偏差値が合否ボーダーとして推定される。競争倍率が「1.28」倍である場合には、
図9の右端に示す3つの学力分布の合否ボーダーは、合否ボーダーが高い順に「54」、「52」、「51」となる。
【0050】
1-2-2.当年度シミュレーション用の学力分布推定処理
図11は、第2学力分布推定部124により実行される、当年度シミュレーション用の学力分布推定処理の一例を示すフロー図である。第2学力分布推定部124は、第1学力分布DB113に記録される各高校について、同図に示す処理を実行する。
【0051】
まず、第2学力分布推定部124は、処理対象の高校に過去3年度の各年度に受験した塾生の数(標本数)が所定数以上存在するか否かを判定する(Sb1)。所定数存在しない場合には(Sb2のNO)、本処理を終了する。一方、所定数存在する場合には(Sb2のYES)、処理対象の高校の学力分布平均値と学力分布標準偏差の各々について過去3年度の平均を算出する(Sb3)。言い換えると、過去3年度の塾生の受験者の学力分布の平均が受験者全体と同等の場合の学力分布(正規分布)を推定する。各平均を算出すると、算出した平均と標準偏差を、直近年度の塾生の受験者の学力分布と受験者全体の学力分布の関係に基づいて補正する(Sb4)。具体的には、処理対象の高校と当年度とに対応付けられている平均補正値を第2学力分布DB114から読み出し、算出した平均に加算する。また、処理対象の高校と当年度とに対応付けられている標準偏差補正値を第2学力分布DB114から読み出し、算出した標準偏差に加算する。補正値を加算すると、補正値が加算された平均と標準偏差を、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0052】
1-2-3.合否ボーダー推定処理
図12は、合否ボーダー推定部125により実行される合否ボーダー推定処理の一例を示すフロー図である。合否ボーダー推定部125は、過去生徒成績データ成形部121から出力される過去生徒成績データを受け付けると、同図に示す処理を実行する。
【0053】
まず、合否ボーダー推定部125は、塾生全体の入試直近の模試偏差値と入試得点を回帰分析して回帰式(具体的には回帰係数(切片と傾き))を導出する(Sc1)。
図13は、模試偏差値と入試得点の関係を示すグラフの一例を示す図である。同図に示す楕円E1は、プロットされた点の集合を模式的に示している。同図に示すように、模試偏差値と入試得点は強い相関があり、合否ボーダー推定部125は、回帰直線L1を表す回帰式を導出する。回帰式を導出すると、各塾生について、導出した回帰式と入試得点に基づいて模試偏差値を推定する(Sc2)。模試偏差値を推定すると、各塾生について、推定した模試偏差値に入試直近の通知簿点を加算して総合点を算出する(Sc3)。総合点を算出すると、各生徒について、模試毎に作成される総合点・総合偏差値換算表(図示略)を参照して、算出した総合点を総合偏差値に換算する(Sc4)。総合偏差値を特定すると、各高校について、合格者である塾生について特定された総合偏差値の中で最低の総合偏差値を特定して、高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する(Sc5)。また、各高校について、不合格者である塾生について特定された総合偏差値の中で最高の総合偏差値を特定して、高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する(Sc5)。
【0054】
各高校について合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値を特定すると、次に各高校についてステップSc6~Sc9の処理を実行する。まず、処理対象の高校について特定した合格者最低総合偏差値から不合格者最高総合偏差値を減じて得た差分が、「0」以上でありかつ閾値m以下であるか否かを判定する(Sc6)。「0」以上でありかつ閾値m以下である場合には(Sc6のYES)、合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値の平均を合否ボーダーと推定する(Sc9)。一方、「0」未満又は閾値mよりも大きい場合には(Sc6のNO)、上記差分が閾値mよりも大きいか否かを判定する(Sc7)。上記差分が閾値mよりも大きい場合には(Sc7のYES)、合否ボーダーを推定せず、本処理を終了する。一方、上記差分が閾値m以下である場合には(すなわち、上記差分が「0」未満である場合には)(Sc7のNO)、処理対象の高校について、合格者である塾生について特定された総合偏差値の中で不合格者最高総合偏差値よりも高くかつ直近の総合偏差値を合否ボーダーと推定する(Sc8)。
【0055】
1-2-4.学力分布検証処理
図14は、学力分布検証部126により実行される学力分布検証処理の一例を示すフロー図である。学力分布検証部126は、処理対象である高校について、合否ボーダー推定処理により推定された合否ボーダー(以下、本処理の説明で「合否ボーダー実績値」という)と、過去実績比較用の学力分布推定処理で推定された合否ボーダーの上限及び下限(以下、本処理の説明で「合否ボーダー推定値上限」、「合否ボーダー推定値下限」という)を受け付けると、同図に示す処理を実行する。
【0056】
まず、学力分布検証部126は、合否ボーダー推定処理で推定された合否ボーダー実績値と、過去実績比較用の学力分布推定処理で推定された合否ボーダー推定値上限及び下限を比較する(Sd1)。合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値上限よりも大きい場合には(Sd2のYES)、合否ボーダー実績値から合否ボーダー推定値上限を減じて得た差分が閾値mよりも大きいか否かを判定する(Sd6)。上記差分が閾値mよりも大きい場合には(Sd6のYES)、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最高となる学力分布(ただし、平均にm/2を加算したもの)と推定する(Sd8)。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、上記のステップSa8と同様に当該学力分布について競争倍率に基づいて推定される合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された平均を減じて得た差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0057】
ステップSd6の判定の結果、上記差分が閾値m以下である場合には(Sd6のNO)、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最高となる学力分布と推定する(Sd7)。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、当該学力分布に基づいて推定された合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された平均を減じて得た差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0058】
ステップSd2の判定の結果、合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値上限以下であり(Sd2のNO)、かつ合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値下限以上である場合には(Sd3のYES)、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、塾生の受験者の学力分布と同等であると推定する(Sd9)。そして、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された平均及び標準偏差、並びに、これらの値に基づいて推定された合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、平均補正値「0」と標準偏差補正値「0」を、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0059】
ステップSd3の判定の結果、合否ボーダー実績値が合否ボーダー推定値下限よりも小さい場合には(Sd3のNO)、合否ボーダー推定値下限から合否ボーダー実績値を減じて得た差分が閾値mよりも大きいか否かを判定する(Sd4)。上記差分が閾値mよりも大きい場合には(Sd4のYES)、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最低となる学力分布(ただし、平均からm/2を減算したもの)と推定する(Sd10)。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、上記のステップSa8と同様に当該学力分布について競争倍率に基づいて推定される合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された平均を減じて得た差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0060】
ステップSd4の判定の結果、上記差分が閾値m以下である場合には(Sd4のNO)、処理対象である高校の受験者全体の学力分布を、第1学力分布推定部123により推定された、合否ボーダーが最低となる学力分布と推定する(Sd5)。そして、推定した学力分布を規定する平均及び標準偏差、並びに、当該学力分布に基づいて推定された合否ボーダーを、処理対象の高校と入試年度とに対応付けて第1学力分布DB113に格納する。また、推定した学力分布を規定する平均から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された平均を減じて得た差分と、推定した学力分布を規定する標準偏差から、処理対象の高校について上記のステップSa5において算出された標準偏差を減じて得た差分とを、補正値として、処理対象の高校と当年度とに対応付けて第2学力分布DB114に格納する。
【0061】
以上説明した学力分布検証処理によれば、学力分布推定処理で塾生を標本として推定された受験者全体の学力分布の妥当性を、合否ボーダー推定処理で入試得点の観点から推定された合否ボーダーに基づいて検証することで、推定された学力分布の信頼性を担保することができる。
【0062】
1-2-5.振れ幅推定処理
図15は、振れ幅推定部127により実行される振れ幅推定処理の一例を示すフロー図である。振れ幅推定部127は、過去生徒成績データ成形部121から出力される過去生徒成績データを受け付けると、同図に示す処理を実行する。
【0063】
まず、振れ幅推定部127は、処理対象の模試の塾生全体の総合偏差値と入試得点を回帰分析して回帰式(具体的には回帰係数(切片と傾き))を導出する(Se1)。仮に、総合偏差値と入試得点が、上述した
図13に例示する関係を示す場合、振れ幅推定部127は回帰直線L1を表す回帰式を導出する。回帰式を導出すると、各塾生について、導出した回帰式と、処理対象の模試の総合偏差値とに基づいて入試得点を推定する(Se2)。入試得点を推定すると、各塾生について、推定された入試得点と実際の入試得点の差分を算出する(Se3)。差分を算出すると、塾生全体について算出された差分の分布に基づいて標準偏差(σ)と2σを算出し、模試時期と対応づけて振れ幅推定部127に格納する(Se4)。
【0064】
図16は、入試得点の実得点と推定値の差分の分布を表すグラフの一例を示す図である。同図に示すように、67%の塾生は±σの範囲に含まれ、96%の塾生は±2σの範囲に含まれる。
【0065】
1-2-6.学力位置表示制御処理
図17は、学力位置表示制御部128により実行される学力位置表示制御処理の一例を示すフロー図である。学力位置表示制御部128は、クライアント装置2の利用者からグラフデータの要求を受け付けると、同図に示す処理を実行する。
【0066】
まず、学力位置表示制御部128は、利用者により指定された生徒ID及び模試時期に対応する模試偏差値と通知簿点を当年度生徒成績DB112から読み出す(Sf1)。模試偏差値等を読み出すと、利用者により指定された高校、年度及び模試時期に対応する模試偏差値、通知簿点及び合否を過去生徒成績DB111から読み出す(Sf2)。模試偏差値等を読み出すと、ステップSf1及びSf2で読み出したデータに基づいて3次元棒グラフデータを生成する(Sf3)。3次元棒グラフデータを生成すると、当該データをクライアント装置2に送信する(Sf4)。
【0067】
図18は、ステップSf4の結果、クライアント装置2に表示される3次元棒グラフの一例を示す図である。3次元棒グラフは、同図に示すように、通知簿点と模試偏差値をx軸、y軸とする平面上に、合格者数と不合格者数をz軸方向に延びる棒線で表す3次元の積み上げ棒グラフである。同グラフにおいて、青色と茶色の棒線の高さは合格者数を表し、赤色と桃色の棒線の高さは合格者数を表している。茶色の棒線と桃色の棒線と矢印A1は、利用者により指定された塾生の模試偏差値と通知簿点が該当する棒線を示している。この3次元棒グラフは、利用者の操作に応じて任意の方向から観察可能となっており、
図19は、x軸とz軸がなす平面に相対して観察した3次元棒グラフの一例を示す図である。同図に示す3次元棒グラフによれば、塾生の通知簿点は受験者全体の中で下位であることがわかる。一方、
図20は、y軸とz軸がなす平面に相対して観察した3次元棒グラフの一例を示す図である。同図に示す3次元棒グラフによれば、塾生の模試偏差値は受験者全体の中で中位であることがわかる。
【0068】
以上説明した学力位置表示制御処理によれば、志望校の過去の受験者と比較した場合の塾生の学力位置を視覚的に提示することができる。
【0069】
1-2-7.過去実績比較用の合格可能性表示制御処理
図21は、第1合格可能性表示制御部129により実行される、過去実績比較用の合格可能性表示制御処理の一例を示すフロー図である。第1合格可能性表示制御部129は、クライアント装置2の利用者からグラフデータの要求を受け付けると、同図に示す処理を実行する。
【0070】
まず、第1合格可能性表示制御部129は、利用者により指定された生徒ID及び模試時期に対応する総合偏差値を当年度生徒成績DB112から読み出す(Sg1)。総合偏差値を読み出すと、利用者により指定された模試時期に対応する標準偏差(σ)及び2σを振れ幅DB115から読み出す(Sg2)。標準偏差を読み出すと、利用者により指定された高校及び年度に対応する学力分布平均値、学力分布標準偏差及び合否ボーダーが第1学力分布DB113に格納されているか否かを判定する(Sg3)。格納されている場合には(Sg4のYES)、学力分布平均値等を第1学力分布DB113から読み出す(Sg5)。学力分布平均値等を読み出すと、ステップSg1、Sg2及びSg5において読み出したデータに基づいてグラフデータを生成する(Sg6)。グラフデータを生成すると、当該データをクライアント装置2に送信する(Sg7)。
【0071】
図22は、ステップSg7の結果、クライアント装置2に表示されるグラフの一例を示す図である。表示されるグラフは、同図に示すように、総合偏差値と分布比率を横軸、縦軸とするグラフであって、高校の受験者全体の学力分布を示す正規分布曲線L2と、当該高校の合否ボーダーを示す線L3と、塾生の総合偏差値を示す線L4と、67%の塾生が収まる総合偏差値の振れ幅R1と、96%の塾生が収まる総合偏差値の振れ幅R2を重ねて示すグラフである。同図に示すグラフによれば、塾生は受験者全体の中で下位に位置し、入試得点が低い方に振れた場合には不合格になる可能性があることがわかる。
【0072】
一方、ステップSg3の判定の結果、学力分布平均値等が第1学力分布DB113に格納されていない場合には(Sg4のNO)、第1合格可能性表示制御部129は、利用者により指定された高校及び年度に対応する合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値を第1学力分布DB113から読み出す(Sg8)。合格者最低総合偏差値等を読み出すと、ステップSg1、Sg2及びSg8において読み出したデータに基づいてグラフデータを生成する(Sg9)。グラフデータを生成すると、当該データをクライアント装置2に送信する(Sg10)。
【0073】
図23は、ステップSg10の結果、クライアント装置2に表示されるグラフの一例を示す図である。表示されるグラフは、同図に示すように、総合偏差値と分布比率を横軸、縦軸とするグラフであって、高校の合格者最低総合偏差値を示す線L5と、不合格者最高総合偏差値を示す線L6と、塾生の総合偏差値を示す線L4と、67%の塾生が収まる総合偏差値の振れ幅R1と、96%の塾生が収まる総合偏差値の振れ幅R2を重ねて示すグラフである。同図に示すグラフによれば、塾生は、入試得点が低い方に振れた場合には不合格になる可能性があることがわかる。
【0074】
以上説明した合格可能性表示制御処理によれば、志望校への合格可能性を定量的かつ視覚的に提示することができる。特に、受験者全体の中での塾生の学力位置を視覚的に提示することができる。また、塾生の入試得点が振れた場合に合格できるかどうかを視覚的に提示することができる。
【0075】
1-2-8.当年度シミュレーション用の合格可能性表示制御処理
図24は、第2合格可能性表示制御部130により実行される、当年度シミュレーション用の合格可能性表示制御処理の一例を示すフロー図である。第2合格可能性表示制御部130は、クライアント装置2の利用者からグラフデータの要求を受け付けると、同図に示す処理を実行する。
【0076】
まず、第2合格可能性表示制御部130は、利用者により指定された生徒ID及び模試時期に対応する総合偏差値を当年度生徒成績DB112から読み出す(Sh1)。総合偏差値を読み出すと、利用者により指定された模試時期に対応する標準偏差(σ)及び2σを振れ幅DB115から読み出す(Sh2)。標準偏差を読み出すと、利用者により指定された高校及び年度に対応する学力分布平均値と学力分布標準偏差が第2学力分布DB114に格納されているか否かを判定する(Sh3)。格納されている場合には(Sh4のYES)、学力分布平均値等を第2学力分布DB114から読み出す(Sh5)。学力分布平均値等を読み出すと、読み出した学力分布平均値等と、利用者により指定された競争倍率に基づいて合否ボーダーを算出する(Sh6)。具体的には、読み出した学力分布平均値と学力分布標準偏差により規定される正規分布曲線に囲まれる領域のうち不合格者が占める領域の割合を算出し、算出した割合と正規分布曲線に基づいて合否ボーダーを推定する(
図10参照)。合否ボーダーを算出すると、算出した合否ボーダーと、ステップSh1、Sh2及びSh5において読み出したデータに基づいてグラフデータを生成する(Sh7)。グラフデータを生成すると、当該データをクライアント装置2に送信する(Sh8)。ステップSh8の結果、クライアント装置2に表示されるグラフの一例は、
図22に示す通りである。
【0077】
一方、ステップSh3の判定の結果、学力分布平均値等が第2学力分布DB114に格納されていない場合には(Sh4のNO)、利用者により指定された高校及び年度に対応する合格者最低総合偏差値と不合格者最高総合偏差値を第1学力分布DB113から読み出す(Sh9)。合格者最低総合偏差値等を読み出すと、ステップSh1、Sh2及びSh9において読み出したデータに基づいてグラフデータを生成する(Sh10)。グラフデータを生成すると、当該データをクライアント装置2に送信する(Sg11)。ステップSh11の結果、クライアント装置2に表示されるグラフの一例は、
図23に示す通りである。
【0078】
以上説明した合格可能性表示制御処理によれば、志望校への合格可能性を定量的かつ視覚的に提示することができる。特に、受験者全体の中での塾生の学力位置を視覚的に提示することができる。また、塾生の入試得点が振れた場合に合格できるかどうかを視覚的に提示することができる。また、競争倍率を変更した場合の合否ボーダーをシミュレーションすることができる。
【0079】
2.変形例
上記の実施形態は下記のように変形してもよい。なお、下記の2以上の変形例は互いに組み合わせてもよい。
【0080】
2-1.変形例1
上記の過去実績比較用の学力分布推定処理のステップSa1、Sa3及びSa5において、第1学力分布推定部123は処理対象の高校に昨年度受験した塾生のデータを参照しているが、参照される塾生のデータは過去複数年度のデータであってもよい。
【0081】
上記の過去実績比較用の学力分布推定処理のステップSa3及びSa5において、第1学力分布推定部123は入試直近の総合偏差値を参照しているが、参照される総合偏差値は必ずしも入試直近のものでなくてもよい。また、参照される総合偏差値は、必ずしも1つの模試時期に対応する総合偏差値でなくてもよく、複数回の模試時期に対応する総合偏差値の平均であってもよい。以上述べた内容は、上記の合否ボーダー推定処理のステップSc1及びSc3において合否ボーダー推定部125により参照される模試偏差値についても同様である。
【0082】
2-2.変形例2
上記の過去実績比較用の学力分布推定処理のステップSa6において、第1学力分布推定部123は平均と標準偏差の各々について95%信頼区間を推定しているが、推定される信頼区間の信頼度は必ずしも95%でなくてもよい。
【0083】
2-3.変形例3
上記の過去実績比較用の学力分布推定処理のステップSa8において、第1学力分布推定部123は競争倍率に基づいて不合格者が占める領域の割合を算出し、算出した割合に基づいて合否ボーダーを推定しているが、不合格者に代えて合格者が占める領域の割合を算出し、算出した割合に基づいて合否ボーダーを推定するようにしてもよい。これは、上記の当年度シミュレーション用の合格可能性表示制御処理のステップSh6において第2合格可能性表示制御部130が合否ボーダーを推定する場合についても同様である。
【0084】
2-4.変形例4
上記の当年度シミュレーション用の学力分布推定処理のステップSb1及びSb3において、第2学力分布推定部124は過去3年度の塾生のデータを参照しているが、参照されるデータは必ずしも過去3年度でなくてもよい。例えば、過去2年度や過去4年度であってもよい。
【0085】
2-5.変形例5
図18~20に例示する3次元棒グラフでは、棒線の色と矢印A1により塾生の棒線を他の棒線と区別可能に示しているが、棒線の形状や明滅といった他の表示態様により他の棒線と区別可能に示してもよい。
【0086】
2-6.変形例6
上記の実施形態では学習塾の生徒が受験指導の対象となっているが、受験指導の対象は学校等の他の教育機関に属する生徒であってもよい。
【0087】
2-7.変形例7
上記の実施形態では高校入試を受験する生徒が受験指導の対象となっているが、受験指導の対象は大学入試や中学入試等の他の入試を受験する生徒であってもよい。大学入試を受験する生徒を受験指導の対象とする場合には、通知簿点を考慮しないようにしてもよい。また、入試に限らず、資格試験を受験する生徒を受験指導の対象としてもよい。
【0088】
2-8.変形例8
受験指導支援サーバ1で実行されるプログラムは、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記録されて配布されてもよい。または、インターネット等のネットワークを介して配信されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…受験指導支援サーバ、2…クライアント装置、111…過去生徒成績DB、112…当年度生徒成績DB、113…第1学力分布DB、114…第2学力分布DB、115…振れ幅DB、121…過去生徒成績データ成形部、122…当年度生徒成績データ成形部、123…第1学力分布推定部、124…第2学力分布推定部、125…合否ボーダー推定部、126…学力分布検証部、127…振れ幅推定部、128…学力位置表示制御部、129…第1合格可能性表示制御部、130…第2合格可能性表示制御部