(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】クリーニング装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
G03G21/00 318
(21)【出願番号】P 2018223216
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】関根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】多和田 高明
(72)【発明者】
【氏名】矢部 謙治
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-003983(JP,A)
【文献】特開2018-049088(JP,A)
【文献】特開平08-272271(JP,A)
【文献】特開2018-146605(JP,A)
【文献】特開2005-300706(JP,A)
【文献】特開2005-301106(JP,A)
【文献】特開2017-126049(JP,A)
【文献】特開2004-093869(JP,A)
【文献】特開2010-197534(JP,A)
【文献】特開平07-248713(JP,A)
【文献】特開平06-282207(JP,A)
【文献】特開2009-223042(JP,A)
【文献】特開2006-098435(JP,A)
【文献】特開2000-155515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
G03G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被清掃部材の表面に当接して付着物を除去するクリーニングブレードと、前記表面の移動方向と直交する幅方向の前記クリーニングブレードの位置を変更する位置変更手段とを有するクリーニング装置において、
前記位置変更手段による位置変更量が20μm~100μmであ
り、
前記位置変更手段は、前記幅方向で変位可能に取り付けられた前記クリーニングブレードを前記幅方向の一方側に付勢する付勢手段と、前記クリーニングブレードの前記幅方向の他方側に設けられ、前記付勢手段で付勢される前記クリーニングブレードの位置を、互いに異なる位置で突き当てにより規制する複数の位置決め部を有する位置規制部材と、前記位置規制部材の前記クリーニングブレードと突き当たる前記位置決め部を切り替える切り替え手段とを備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
前記クリーニングブレードが弾性部材からなり、前記表面との当接部が硬度を高める材料の含浸あるいは被覆がされていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は2のクリーニング装置において、
前記表面との当接部のマルテンス硬度が1N/mm
2以上かつ10N/mm
2未満であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項3のクリーニング装置において、
前記マルテンス硬度が2N/mm
2以上かつ7N/mm
2以下であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
像担持体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備えた画像形成装置において、
クリーニング装置として請求項1乃至4のいずれか一に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記位置変更手段の位置変更のため駆動力を前記像担持体の駆動源から得ることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6の画像形成装置において、
前記駆動源、あるいは、前記駆動源によって回転駆動される回転体を正逆回転可能に構成し、画像形成動作中とは逆である逆回転時に、前記位置変更手段に位置変更のため駆動力を伝えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一に記載の画像形成装置において、
前記位置変更手段による位置変更は、一連の画像形成動作毎に行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項5乃至7のいずれか一に記載の画像形成装置において、
前記位置変更手段による位置変更は、画像形成動作を行っていない期間に行うことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動する被清掃部材の表面に当接して付着物を除去するクリーニングブレードと、表面の移動方向と直交する幅方向のクリーニングブレードの位置を変更する位置変更手段とを有するクリーニング装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、像担持体の逆回転動作においてクリーニングブレードを像担持体表面移動方向を横切る方向に横移動させるクリーニング装置を備えた画像形成装置が記載されている。これにより、クリーニングブレードのトナー凝集物、紙粉等の噛み込み物を、画像生産性を実用上問題視すべきほど低下させることなく、簡単に除去でき、クリーニングブレードによる像担持体上残留物の除去を安定化させることができるとしている。さらに、横移動させるときの横移動の停止位置を、横移動の開始位置とは異ならせるようにすることも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、数μm~数十μmといった微小な像担持体固着物に起因する画質低下が生じるおそれが残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、移動する被清掃部材の表面に当接して付着物を除去するクリーニングブレードと、前記表面の移動方向と直交する幅方向の前記クリーニングブレードの位置を変更する位置変更手段とを有するクリーニング装置において、前記位置変更手段による位置変更量が20μm~100μmであり、
前記位置変更手段は、前記幅方向で変位可能に取り付けられた前記クリーニングブレードを前記幅方向の一方側に付勢する付勢手段と、前記クリーニングブレードの前記幅方向の他方側に設けられ、前記付勢手段で付勢される前記クリーニングブレードの位置を、互いに異なる位置で突き当てにより規制する複数の位置決め部を有する位置規制部材と、前記位置規制部材の前記クリーニングブレードと突き当たる前記位置決め部を切り替える切り替え手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、数μm~数十μmといった微小な像担持体固着物の発生を抑制してこれに起因する画質低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】従来のクリーニングブレードと含浸ブレードの圧偏差の説明図。
【
図5】ブレードホルダの移動量Xhとブレード先端の移動量Xbの説明図。
【
図6】ブレードホルダの移動量Xhと、ブレード先端の移動量Xbとの関係の説明図。
【
図7】ブレードホルダの移動量Xhとブレード先端の移動量Xbと関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を電子写真方式のカラー画像形成装置のクリーニング装置に適用した一実施形態について説明する。
図1は画像形成装置に関する一例を示した図である。カラー画像形成装置は中間転写ベルト11を有する転写ベルトユニット10と4つの画像ステーションが配置され、各画像ステーションには像担持体(以降は感光体ドラム)として20Y、20C、20M、20Bkをそれぞれ有し、その回りには専用の帯電装置30Y、30C、30M、30Bk、現像装置50Y、50C、50M、50Bk、クリーニング装置40Y、40C、40M、40Bkを有している。
【0009】
符号9で示すのはトナーを補給するトナーボトルであり、図中左からイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(Bk)のトナーが充填されており、ここから搬送経路によって、所定の補給量だけ各色の現像装置50Y、50C、50M、50Bkに補給される。
【0010】
画像形成動作は次のように行う。転写紙2が給紙カセット1より給紙ローラ3でフィードされ、転写紙2の先端がレジストローラ対4まで到達すると図示しないセンサによって検知され、この検出信号でタイミングを取りながら、レジストローラ対4によって転写紙2を2次転写ローラ5と中間転写ベルト11のニップ部に搬送する。
【0011】
あらかじめ帯電装置30Y、30C、30M、30Bkによって一様に帯電された感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、光書込み装置8によりレーザー光にて露光走査され、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bk上に静電潜像が作られる。各静電潜像は、それぞれ各色の現像装置50Y、50C、50M、50Bkにより現像され、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bk表面にイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナー像が形成される。
【0012】
次に1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkに電圧が印加され、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bk上のトナーが、中間転写ベルト11上に順次転写されていく。この時各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるように、上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト11上に形成された画像は、2次転写ローラ5の位置まで搬送され、転写紙2に2次転写される。
【0013】
各色のトナー像が転写された転写紙2は、定着装置6に搬送されて熱定着され、排紙ローラ7で排紙される。なお、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bk上の残留トナーは、それぞれのクリーニング装置40Y、40C、40M、40Bkのクリーニングブレードでクリーニングされ、その後、直流に交流成分のバイアスが重畳印加された帯電装置30Y、30C、30M、30Bkによって除電と同時に帯電され、次の作像に備える。また、中間転写ベルト11上の残留トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置13によってクリーニングされ、次の作像工程に備える。
【0014】
本発明は、クリーニング装置40Y、40C、40M、40Bkに適用されている。このクリーニング装置40Y、40C、40M、40Bkは感光体ドラムに先端部を当接させるクリーニングブレードとして、弾性部材からなり、感光体ドラム表面との当接部が硬度を高める材料の含浸あるいは被覆がされている含侵ブレードを用いている。
【0015】
電子写真方式のカラー画像形成装置において、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体上に残った残トナーを清掃するクリーニングブレードに、エッジ部分のマルテンス硬度が、その他の部分と比較して高い含浸ブレードを採用する方式が既に知られている(例えば特許文献2や特許文献3)。従来ブレードはJIS-Aが70の場合、マルテンス硬度は約0.7N/mm2程度あるのに対し、含浸ブレードのマルテンス硬度は約3~5N/mm2である。
【0016】
高マルテンス硬度のブレードは、ドラム表面の異物除去性に優れる。低コスト、省エネルギー化のため、ドラムへの潤滑剤の塗布装置を設けず、低融点トナーを採用した画像形成装置においては、ドラム表面にシリカ等の異物が付着し易く、従来のブレード(マルテンス硬度1N/mm2未満)では除去仕切れず、高マルテンス硬度ブレードの採用に至っている。
【0017】
ところが、従来、含浸ブレードを搭載したシステムにおいて、ブレードのドラムに対する当接圧を幅方向(表面移動方向と直交する方向)に均一にできず、局所的に低圧になったドラム表面に異物が付着するという問題があった。ブレードエッジ部には、加工や材料バラツキによる寸法ムラ、特性値ムラがある。マルテンス硬度が低い従来ブレードの場合、それらのムラをゴムが吸収して当接圧は均一にできたが、マルテンス硬度が高い含浸ブレードの場合、ゴムが吸収できず、それらのムラが当接圧のムラとして顕在化してしまう。そうなると、圧の弱い場所から添加剤やトナーが漏れ、クリーニング不良や、ドラム表面への異物付着に至る。総圧を上げることで圧ムラは改善するが、副作用としてブレード、感光体摩耗が増加し、耐久性に不利となる。
【0018】
図2は、従来のクリーニングブレードと含浸ブレードの圧偏差の説明図である。
図2(a)で示すように、両ブレードとも、感光体20に当接するエッジ部に微小な凹凸(図では2箇所の凹部52を拡大して描いている)が存在する同一の形状であると仮定する。ドラムへの当接圧は20gf/cm、クリーニング角度は79度に設定する。クリーニングブレードエッジ部の微小な凹凸(数μmレベル、部品限界公差。ここでは2μmとする)があったとする。このような微小な凹凸は部品限界公差から存在するばかりでなく、ドラムからエッジ部が受ける物理的な負荷によってブレードの当接部に欠けが生じことによっても生じる。
【0019】
図2(b)に示すように、通常の、マルテンス硬度の低いブレード(1N/mm
2未満)の場合、微小な凹凸はブレード先端の変形によって均される。この結果、接触エッジ接触ムラがなくなり、圧ムラもなくなる。ただし、マルテンス硬度が低いため、面圧を高くすることができない。すなわり、総圧を上げても、エッジ部が変形、ニップ幅が広がってしまい、面圧は高くならない。この結果、軸方向に多数の異物53が付着する。
【0020】
図2(c)に示すように、マルテンス硬度の高い含浸ブレード(1N/mm
2以上)の場合、微小な凹凸はブレード先端の変形に均されない。この結果、接触ムラが発生し、低圧部分(丸部)ができてしまう。その他の部分は高面圧になっているため、ドラム上に異物は付着しないが、低圧部分からトナー、添加剤などの異物53が漏れてしまう。同一箇所から異物が抜け続けると、ドラムに付着物として定着する。
【0021】
クリーニング装置を感光体ドラムなどともに画像形成装置本体から脱着可能なユニット(PCUユニット)内に構成した画像形成装置では、クリーニング装置のクリーニングブレード単体での交換はせずにユニット全体として寿命になるまで使用する場合が多い。この場合、上記ドラムへの異物固着が生じると、この異物付着に起因して低下した画質のままユニット寿命まで使用されることにもなる。
【0022】
そこで、本実施形態では、含浸ブレードの位置を定期的に動かす(変更する)ことで、ドラム表面の異物定着を防止する。
図3は(a)に示す位置と、(b)に示す位置との間の感光体ドラム軸方向(幅方向)の移動によって含浸ブレードの位置を変更する例の説明図である。
図3(a)のときの含浸ブレード51の位置であるA位置から
図3(b)のときの含浸ブレード51の位置であるB位置、また、B位置からA位置と位置を定期的に切り替えることで、低圧部分が長時間同じ場所に留まらないようにする。
【0023】
定期的とは例えば5000枚毎といった画像形成回数毎でも良いし、その他の予めさだめたタイミング毎でもよい。一連の画像形成(例えば ユーザが指示した一連の連続コピー)中にこのタイミングが到来したときは、一連の画像形成後に実行するようにしてもよい。また、画像形成中にブレードを移動させると画質に影響がでる可能性があるので、画像形成動作をおこなっていない期間(非画像形成動作中)に行うのが望ましい。
【0024】
低圧に晒された時間が短時間であれば、異物とドラムとの接着強度は弱いため、その後に通常面圧部分でドラムを擦ることで、接着強度が弱い付着物53aを容易に掻き取れ、ドラムに付着物として定着することを防止できる。
図3(b)には符号53aでA位置にあったときに生じた付着強度が弱く掻き取られた後の付着物が付着していた箇所を示す。
【0025】
図4は、ブレードの位置変更手段である移動機構の一例を示す斜視図である。含浸ブレード51は自由端が生じるように基端部がブレードホルダ54に接着により固定されている。このブレードホルダ54が、含浸ブレード51の先端が一定量(たとえば1mm程度)感光体ドラム20の表面に食い込む位置(感光体が存在しないとすれば、位置するであろう位置)でクリーニング装置のフレームにネジ止めによって取り付けている。通常のネジだと感光体ドラム軸方向の位置を変えられないため、ここでは例えば段ネジにより軸方向に変位可能に取り付けている。
【0026】
クリーニングブレードの幅方向の位置は、ブレードホルダ54を互いに幅方向の位置が異なる位置決め部24,25のいずれかに押し当てることで位置決めしている。図示の例では、クリーニングブレードホルダ54を駆動力を与えて移動させるための駆動ギヤ22がワンウェイクラッチ23の外周についている。ワンウェイクラッチ23の内輪と一体回転する箇所、例えば内輪の端面24と、この端面24に設けられた突起部25(図示の例では4個の半球状の突起)とが位置決め部として用いられる。ブレードホルダ54のワンウェイクラッチ23とは反対側に付勢用の圧縮スプリング55で設けられている。
【0027】
駆動ギヤ22が感光体ドラム20(感光体駆動源によって回転駆動される回転体であり正逆回転可能)の端部周面上に形成されている端部ギヤ21と噛み合っている。ワンウェイクラッチ23は感光体ドラム20の正回転C1時は駆動ギヤ22が空転して内輪には回転力が伝わらず、逆回転C2時には駆動を内輪に伝達するする向きで、取り付けられている。すなわち、ワンウェイクラッチ23は
図4(a)に示す感光体ドラム20の正回転C1時に、端部ギヤ21と噛み合う外輪が空転するだけで内輪は回転しない。よって、位置決め部24,25の移動はない。
【0028】
図4(b)に示す感光体ドラム20の逆回転C2時には、端部ギヤ21と噛み合う外輪の回転力が内輪に伝わって内輪端面24が回転する。この回転により、位置決め部24,25が移動する。この結果、例えば
図4(a)に示すブレードホルダ54が端面24に設けた突起部25に突き当たる位置と、例えば
図4(b)に示すブレードホルダ54が端面24そのものに突き当たる位置とを切り替えることができる。
【0029】
端面24そのものと突起部25とのどちらに当たるかでブレードの位置が異なる。この突起の高さよってブレードホルダ54やクリーニングブレード51の移動量(位置変更量)が決まる。このうちクリーニングブレード51の移動量を20μm~100μmの範囲内のものにする。例えば、突起部25の高さを100μmにする。このクリーニングブレード51の移動量の範囲については後に詳述する。
【0030】
クリーニングブレード51の先端部のマルテンス硬度は、1N/mm2以上であることが望ましいことは上述したが、上限は10N/mm2未満であることが望ましい。マルテンス硬度が10以上の場合は、感光体への追従性が極端に悪くなり、感光体-ブレードエッジ間に多数の微小Gapができてしまいクリーニング機能を果たせなくなるためである。本実施形態においては1N/mm2以上、かつ10N/mm2未満が望ましい。更に望ましくは、2N/mm2以上、かつ7N/mm2未満である。マルテンス硬度が低いと表面除去能力に劣り、高いと追従性が悪くなるなかで、2N/mm2以上、かつ7未満N/mm2が最もバランスが良い。
【0031】
また、以下の理由からも、マルテンス硬度は1N/mm
2以上が望ましく、2N/mm
2以上が更に望ましい。
図5は、
図4の機構で移動させたときの、ブレードホルダの移動量Xhと、ブレード先端の移動量Xbを図示したものである。符号53aなどは
図3におけると同じものを指す。ブレード先端部のマルテンス硬度が高いとXhとXbはほぼ同じ値となる。
【0032】
図6は、比較のため従来のマルテンス硬度が1N/mm
2未満のクリーニングブレードを用いて
図4の機構で移動させたときの、ブレードホルダの移動量Xhと、ブレード先端の移動量Xbとの関係を示した図である。ブレード先端部のマルテンス硬度が低いとXh>Xbとなる。
【0033】
図7は、横軸にブレードホルダの移動量Xhを取り、縦軸にブレード先端の移動量Xbを取り、マルテンス硬度が異なるブレード毎に両者の関係を示したグラフである。
図5や
図6を用いて説明したのと同様の関係が現れている。ブレードが柔らかいと、先端とドラムの接触面積(ニップ)が大きく、摺動抵抗が大きい。更に、ブレード自体の強度も低いため
図6に示すようにブレードが変形(歪む)してしまう。この場合は、低圧部位置が移動しないばかりか、ブレードの姿勢も不安定になり、当接ムラ、偏摩耗、ひいてはクリーニング不良の原因となる。よって、
図7の実用範囲を満足できるマルテンス硬度のブレードを使うことが望ましい。この実用範囲は、1N/mm
2以上、かつ10N/mm
2未満の範囲である。
【0034】
(実験結果)
後述する(実施例)の「クリーニングブレード1」を「浸食時間」を変えて種々のマルテンス硬度で作製した。これらのクリーニングブレードを用い、温度10℃、湿度15パーセントの環境下で、A3用紙5000枚(ほぼ5Kmの走行距離)通紙し、ブレードホルダーを100μm移動させて位置を切り替えた(一度目に
図3のA位置にあったものをB位置に切り替えたら、その5000枚後には、二度目として
図3のB位置からA位置に切り替える。)。この位置切り替え後に、1000枚通紙したところ(合計6000枚通紙)で、評価を行った。種々のマルテンス硬度のクリーニングブレードについて、このような位置切り替えを行った場合と、行わなかった場合について、比較評価を行った。温度10℃、湿度15パーセントという低温低湿度の環境条件としたのは、最もブレードが硬くなって低圧部からの異物家抜けが生じ易いためである。
【0035】
その結果を表1に示す。表2は表1に示す性能判定の基準を示す。この表1に示す結果などから、当接部のマルテンス硬度が1N/mm2以上かつ10N/mm2未満のクリーニグブレード、特に、マルテンス硬度が2N/mm2以上かつ7N/mm2以下であるクリーニングブレードについて20μm~100μmの範囲の幅方向の位置の切り替えが異物除去性能を維持する観点から有効であることがわかった。
【0036】
このように高いマルテンス硬度のクリーニングブレードにおけるエッジ部がドラムから受ける物理的な負荷を原因とする欠けの大きさは、数μmから数十μmで、およそ100μmピッチで発生することが確認できた。移動量が欠けの大きさを超えないと、欠けを通過した異物を移動後の高圧力部で除去するということができない。よって、欠けの大きさ以上の移動量が必要である。100μmピッチ以上だと、移動した先にも欠けが発生する可能性があるため、それ以下の移動量としている。状況によってはピッチが、数十μmピッチで発生することもあるため、欠けの大きさを超える範囲でできるだけ小さな単位で移動させることが、更に望ましい。
【0037】
【0038】
【0039】
なお、
図4の移動機構では、ブレードホルダを100μm左右に移動させるだけであるため、A位置とB位置という2つの位置を選択的に取り得るのみである。このように選択的に取り得る位置を3つ以上用意してもよい。3つ以上の位置を用意する場合を含め、移動機構としては種々の移動機構を採用できる。例えば、バネでブレードホルダ等に接続し、アクチュエーターやソレノイド等の駆動源を使用して、ブレードを動かす機構を採用できる。この機構では、動かしたい距離を上記駆動源の回転数等を調整するも可能である。
【0040】
以下に、本実施形態で使用できる含浸タイプのクリーニングブレードについて説明する。
本実施形態のクリーニングブレードは、被清掃部材の表面に当接して、該被清掃部材表面に付着した残留物を除去する弾性部材を有してなり、支持部材、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0041】
前記クリーニングブレードは、支持部材と、該支持部材に一端が連結され、他端に所定長さの自由端部を有する平板状の弾性部材とからなることが好ましい。前記クリーニングブレードは、前記弾性部材の自由端側の一端である当接部が前記被清掃部材表面に長手方向に沿って当接するように配置されている。
【0042】
<残留物>
前記残留物としては、被清掃部材表面に付着しており、前記クリーニングブレードの除去対象となるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー、潤滑剤、無機微粒子、有機微粒子、ゴミ、埃又はこれらの混合物、などが挙げられる。
【0043】
<支持部材>
前記支持部材としては、その形状、大きさ、及び材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記支持部材の形状としては、例えば、平板状、短冊状、シート状、などが挙げられる。前記支持部材の大きさとしては、特に制限はなく、前記被清掃部材の大きさに応じて適宜選択することができる。
前記支持部材の材質としては、例えば、金属、プラスチック、セラミック、などが挙げられる。これらの中でも、強度の点から金属板が好ましく、ステンレススチール等の鋼板、アルミニウム板、リン青銅板が特に好ましい。
【0044】
<弾性部材>
前記弾性部材としては、その形状、材質、大きさ、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記弾性部材の形状としては、例えば、平板状、短冊状、シート状、などが挙げられる。前記弾性部材の大きさとしては、特に制限はなく、前記被清掃部材の大きさに応じて適宜選択することができる。
前記弾性部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高弾性が得られやすい点から、ポリウレタンゴム、ポリウレタンエラストマー、などが好適である。
【0045】
前記弾性部材は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを用いてポリウレタンプレポリマーを調製し、該ポリウレタンプレポリマーに硬化剤、及び必要に応じて硬化触媒を加えて、所定の型内にて架橋し、炉内にて後架橋させたものを遠心成型によりシート状に成型後、常温放置、熟成したものを所定の寸法にて、平板状に裁断することにより、製造される。
【0046】
前記ポリオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、などが挙げられる。
前記高分子量ポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールと脂肪族二塩基酸との縮合体であるポリエステルポリオール;エチレンアジペートエステルポリオール、ブチレンアジペートエステルポリオール、ヘキシレンアジペートエステルポリオール、エチレンプロピレンアジペートエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートエステルポリオール、エチレンネオペンチレンアジペートエステルポリオール等のアルキレングリコールとアジピン酸とのポリエステルポリオール等のポリエステル系ポリオール;カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンエステルポリオール等のポリカプロラクトン系ポリオール;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等のポリエーテル系ポリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン-ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフエニルメタン、4,4’-ジアミノジフエニルメタン等の二価アルコール;1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、1,1,1-トリス(ヒドロキシエトキシメチル)プロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の三価又はそれ以上の多価アルコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記ポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記硬化触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、などが挙げられる。
前記硬化触媒の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~0.5質量%が好ましく、0.05質量%~0.3質量%がより好ましい。
【0050】
前記弾性部材のJIS-A硬度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60度以上が好ましく、65度~80度がより好ましい。前記JIS-A硬度が、60度未満であると、ブレード線圧が得られにくく、像担持体との当接部面積が拡大し易いため、クリーニング不良が発生することがある。
前記弾性部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、JIS-A硬度の異なる2種類以上のゴムを一体成型した積層物を用いることが、耐摩耗性と追随性を両立できる点で好ましい。
ここで、前記弾性部材のJIS-A硬度は、例えば、高分子計器株式会社製 マイクロゴム硬度計 MD-1などを用いて測定することができる。
【0051】
前記弾性部材のJIS K6255規格に準拠した反発弾性率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すうことができるが、23℃で、35%以下が好ましく、20%~30%がより好ましい。前記反発弾性係数が、35%を超えると、クリーニングブレードの弾性部材にタック性が生じて、クリーニング不良が生じてしまうことがある。
ここで、前記弾性部材の反発弾性係数は、例えば、JIS K6255規格に準拠し、23℃において、株式会社東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用いて測定することができる。
前記弾性部材の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0mm~3.0mmが好ましい。
【0052】
前記弾性部材の前記被清掃部材の表面に当接する当接部は、分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含有する紫外線硬化性組成物の硬化物を含んでいる。
前記「当接部が、分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含有する紫外線硬化性組成物の硬化物を含む」とは、前記当接部の表面だけでなく内部に含まれてもよく、前記当接部に表面層を形成した場合には、前記当接部の内部に含まれており、かつ当接部に表面層を形成している場合、なども含まれる。
また、前記弾性部材の少なくとも当接部に紫外線硬化性組成物の硬化物が含まれていれば、前記弾性部材の当接部以外の部位にも紫外線硬化性組成物の硬化物が含まれていてもかまわない。
【0053】
<<紫外線硬化性組成物>>
前記紫外線硬化性組成物は、分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0054】
-分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物- 前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、分子内に嵩高い特殊な脂環構造を有しているので、官能基数が少なく、かつ分子量が小さい(メタ)アクリレート化合物を用いることができるので、前記弾性部材の当接部に含浸されやすく、前記当接部の硬度を効率よく向上させることができる。また、当接部に表面層を設けた場合には表面層の割れや剥がれを防止できる。
【0055】
前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物の脂環構造の炭素数は、6~12が好ましく、8~10がより好ましい。前記炭素数が、6未満であると、当接部の硬度が弱くなることがあり、12を超えると、立体障害が起きる可能性がある。
前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物の官能基数は、2~6が好ましく、2~4がより好ましい。前記官能基数が、2未満であると、当接部の硬度が弱くなることがあり、6を超えると、立体障害が起きる可能性がある。
前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物の分子量は、500以下であることが好ましい。前記分子量が500を超えると、分子サイズが大きくなるため弾性部材に含浸しにくくなり、高硬度化が困難となることがある。
【0056】
前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、官能基が少なくても特殊な環状構造により架橋点の不足を補うことができる点から、トリシクロデカン構造を有する(メタ)アクリレート化合物及びアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0057】
前記トリシクロデカン構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、などが挙げられる。
前記トリシクロデカン構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、商品名:A-DCP(新中村化学工業株式会社製)、などが挙げられる。
【0058】
前記アダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-アダマンタンジメタノールジアクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジメタクリレート、1,3,5-アダマンタントリメタノールトリアクリレート、1,3,5-アダマンタントリメタノールトリメタクリレート、などが挙げられる。
前記アダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、商品名:X-DA(出光興産株式会社製)、商品名:X-A-201(出光興産株式会社製)、商品名:ADTM(三菱ガス化学株式会社製)、などが挙げられる。
【0059】
前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記紫外線硬化性組成物に対して、20質量%~100質量%が好ましく、50質量%~100質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%未満であると、特殊な環状構造による高硬度化が損なわれてしまうことがある。
前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(特に、トリシクロデカン構造を有する(メタ)アクリレート化合物又はアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。)が、前記弾性部材の前記被清掃部材の表面に当接する当接部に含まれていることは、例えば、赤外顕微鏡、又は液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0060】
前記紫外線硬化性組成物は、前記分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物以外にも、分子量が100~1,500の(メタ)アクリレート化合物を含有することができる。
前記分子量が100~1,500の(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクレリート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11-ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,18-オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、PEG400ジ(メタ)アクリレート、PEG200ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・ヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、官能基数が3~6のペンタエリスリトールトリアクリレート構造を有する化合物が好ましい。
前記官能基数が3~6のペンタエリスリトールトリアクリレート構造を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。
【0061】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、重合禁止剤、希釈剤、などが挙げられる。
【0062】
-光重合開始剤-
前記光重合開始剤としては、光のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合を開始させるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、などが挙げられる。これらの中でも、光ラジカル重合開始剤が特に好ましい。
【0063】
前記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物、などが挙げられる。
【0064】
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4-ジエチルチオキサントン、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記光ラジカル重合開始剤としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、イルガキュア 651、イルガキュア 184、DAROCUR 1173、イルガキュア 2959、イルガキュア 127、イルガキュア 907、イルガキュア 369、イルガキュア 379、DAROCUR TPO、イルガキュア 819、イルガキュア 784、イルガキュア OXE 01、イルガキュア OXE 02、イルガキュア 754(以上、チバ・スペシャリティーケミカルズ社製);Speedcure TPO(Lambson社製);KAYACURE DETX-S(日本化薬株式会社製);Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記光重合開始剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記紫外線硬化性組成物に対して、1質量%~20質量%が好ましい。
【0067】
-重合禁止剤-
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p-メトキシフェノール、クレゾール、t-ブチルカテコール、ジ-t-ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α-ナフトール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール)、4,4‘-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール化合物;p-ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p-キシロキノン、p-トルキノン、2,6-ジクロロキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジアセトキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジカプロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジアシロキシ-p-ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5-ジ-ブチルヒドロキノン、モノ-t-ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン等のキノン化合物;フェニル-β-ナフチルアミン、p-ベンジルアミノフェノール、ジ-β-ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物;ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸等のニトロ化合物;キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物;フェノチアジン等の硫黄化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
-希釈剤-
前記希釈剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;エタノール、プロパノール、1-ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記弾性部材の当接部に、分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含有する紫外線硬化性組成物の硬化物を含ませる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記弾性部材の当接部に、前記紫外線硬化性組成物をハケ塗り、ディップ塗工等で含浸させた後、紫外線を照射して硬化させる方法、(2)前記弾性部材の当接部に紫外線硬化性組成物をハケ塗り、ディップ塗工等で含浸させた後、当接部に紫外線硬化性組成物をスプレー塗工して表面層を形成し、紫外線を照射し硬化させる方法、(3)前記弾性部材の当接部に紫外線硬化性組成物をハケ塗り、ディップ塗工等で含浸させた後、紫外線を照射し硬化させ、その後、当接部に紫外線硬化性組成物をスプレー塗工して表面層を形成する方法、などが挙げられる。これらの中でも、前記(1)の方法が好ましい。
前記紫外線の照射条件については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、積算光量が500mJ/cm2~5,000mJ/cm2が好ましい。
【0070】
前記弾性部材の当接部に、分子内に炭素数6以上の脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物(特に、トリシクロデカン構造を有する(メタ)アクリレート化合物又はアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。)を含有する紫外線硬化性組成物の硬化物を含ませることにより、前記弾性部材の当接部が高硬度化し、当接部が捲れたり、変形するのを抑制することができる。更に、経時による当接部の摩耗によって内部が露出したときも内部への含浸作用により、同様に捲れや変形を抑制することができる。
【0071】
また、更に以下に本実施形態で使用する含浸クリーニングブレードについて説明する。
(製造例1)
-弾性部材1の作製-
特開2011-141449号公報の実施例1に記載のクリーニングブレードの作製方法を参照して、平均厚み1.8mm、11.5mm×32.6mmの平板状の弾性部材1とした。
得られた弾性部材1のJIS-A硬度は68度、反発弾性率は30%であった。
【0072】
(製造例2)
-弾性部材2の作製-
特開2011-141449号公報の実施例2に記載のクリーニングブレードの作製方法を参照して、平均厚み1.8mm、11.5mm×32.6mmの大きさの平板状の2層構造の弾性部材2を作製した。
得られた2層構造の弾性部材2の当接面側のJIS-A硬度は80度、反当接面側のJIS-A硬度は75度、反発弾性率は25%であった。
【0073】
(調製例1)
-紫外線硬化性組成物1の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物1を調製した。
・下記構造式で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A-DCP、官能基数2、分子量304)・・・50質量部
【化1】
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0074】
(調製例2)
-紫外線硬化性組成物2の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物2を調製した。
・下記構造式で表されるアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物1(出光興産株式会社製、X-DA、官能基数2、分子量276~304、1,3-アダマンタンジオールとアクリル酸との反応生成物)・・・50質量部
【化2】
ただし、式中、Rは水素原子、又はメチル基を表す。
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0075】
(調製例3)
-紫外線硬化性組成物3の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物3を調製した。
・下記構造式で表されるアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物2(1,3-アダマンタンジメタノールジアクリレート、出光興産株式会社製、X-A-201、官能基数2、分子量304)・・・50質量部
【化3】
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0076】
(調製例4)
-紫外線硬化性組成物4の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物4を調製した。
・下記構造式で表されるアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物3(三菱ガス化学株式会社製、ダイヤピュレストADTM、官能基数3、分子量388)・・・50質量部
【化4】
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0077】
(調製例5)
-紫外線硬化性組成物5の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物5を調製した。
・上記構造式で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A-DCP、官能基数2、分子量304)・・・25質量部
・下記構造式で表されるペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセルサイテック社製、PETIA、官能基数3、分子量298)・・・25質量部
【化5】
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0078】
(調製例6)
-紫外線硬化性組成物6の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物6を調製した。
・上記構造式で表されるアダマンタン構造を有する(メタ)アクリレート化合物2(1,3-アダマンタンジメタノールジアクリレート、出光興産株式会社製、X-A-201、官能基数2、分子量304)・・・25質量部
・上記構造式で表されるペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセルサイテック社製、PETIA、官能基数3、分子量298)・・・25質量部
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0079】
(調製例7)
-紫外線硬化性組成物7の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物7を調製した。
・上記構造式で表されるペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセルサイテック社製、PETIA、官能基数3、分子量298)・・・50質量部
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0080】
(調製例8)
-紫外線硬化性組成物8の調製-
下記の組成から、常法により紫外線硬化性組成物8を調製した。
・下記構造式で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック社製、DPHA、官能基数6、分子量578)・・・59質量部
【化6】
・重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)・・・5質量部
・溶媒(シクロヘキサノン)・・・55質量部
【0081】
<トナーの製造例>
重合法により、平均円形度が0.98、体積平均粒径が4.9μmのトナー母体粒子を作製した。得られたトナー母体粒子100質量部に対し、小粒径のシリカ微粒子(クラリアント株式会社製、H2000)1.5質量部、小粒径の酸化チタン微粒子(テイカ株式会社製、MT-150AI)0.5質量部、及び大粒径のシリカ微粒子(電気化学工業株式会社製、UFP-30H)をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、トナーを作製した。
【0082】
(実施例)
<クリーニングブレードの作製>
前記紫外線硬化性組成物1の固形分濃度が50質量%となるように希釈剤(シクロヘキサノン)で希釈した液中に、前記弾性部材1の像担持体と当接する側の先端から2mmの部分を浸漬した後、3分間風乾した。風乾後、紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社製、UVC-2534/1MNLC3)を用いて紫外線照射(140W/cm×5m/min×5パス)を行った。次いで、熱乾燥機を用いて機内温度100℃で15分間乾燥を行った。ブレードエッジのマルテンス硬度は浸食時間を変えて、調整した。
【0083】
また、クリーニングブレード長手方向の画像領域と画像領域外端部で浸食時間を変えて、ブレードエッジマルテンス硬度に差をつけた。具体的には、
図8(a)及び
図8(b)に示す様に、感光体表面の画像領域と当接するブレード中央部51bと、感光体表面の画像領域外と当接するブレード端部51aとで浸食時間を変え、ブレード端部51aの先端稜線部とブレード中央部51bの先端稜線部とでマルテンス硬度に差をつけた。
次に、表面硬化処理後の弾性部材1を支持部材としての板金からなるブレードホルダに接着剤により固定し、クリーニングブレード1を作製した。
【0084】
なお、クリーニングブレードエッジのマルテンス硬度は、Fischer社の微小硬度計H-100を用いて、下記の条件で測定した。
・クリーニングブレードのマルテンス硬度
最大荷重:1[mN]
最大荷重までの到達時間:10秒
クリープ時間:5秒
荷重現象時間:10秒
【0085】
ブレードエッジの硬度はマルテンス硬度で測定するのが好適である。ポリウレタンゴム材質の数mm厚の基材に数μm~数十μmの厚みで高硬度化したエッジ部分そのものの硬度を測定するには、圧子の押し込み量が数μ~数十μ単位と微小なマルテンス硬度で計測する。マイクロ硬度計等で測定すると、押し込み量が大きく基材の硬度の影響を受けるために、高硬度化した部分そのものの硬度が測定できない。そのために、ブレードエッジの挙動を左右するエッジ部分の含浸状態の差が明確にできなかった。
【0086】
以上、本実施形態では、局所的に低圧になっている時間を短くすることができる。よって、低圧期間が長く、低圧部分が、ドラム上同一箇所に継続し続けることで、ブレードとドラムの間を抜けたトナーが蓄積、加圧され続けて異物が付着から定着になってしまうのを防止できる。具体的には、ブレード位置を動かし、低圧の位置を移動させることで、局所的に低圧になっている時間を短くし、移動後の高圧で除去することで異物の蓄積を防ぐことができ、異物固着を防止できる。
【0087】
なお、以上の実施形態では、マルテンス硬度が高い含浸ブレードを用いたものであるが、マルテンス硬度が高ければ含浸ブレード以外のブレードを用いるものにも有効である。また、マルテンス硬度が高く20μm程度の低圧部部が生じ易いクリーニングを用いるものであるが、20μm程度の低圧部部が生じ易いクリーニングを用いるものであれば、他のクレーニングブレードを用いるものにも有効である。
【符号の説明】
【0088】
20 :感光体
21 :端部ギヤ
22 :駆動ギヤ
23 :ワンウェイクラッチ
24 :端面
25 :突起部
40 :クリーニング装置
51 :クリーニングブレード
52 :凹部
53 :異物
53a :付着物
54 :クリーニングブレードホルダ
55 :圧縮スプリング
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【文献】特開2007-041350号公報
【文献】特開2017-126049号公報
【文献】特開2018-049088号公報