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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】物品
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/28 20060101AFI20221104BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20221104BHJP
   B41J 29/08 20060101ALI20221104BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20221104BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20221104BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221104BHJP
   G03G 21/16 20060101ALN20221104BHJP
   B43K 23/08 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J3/36 Z
B41J29/08
B41J29/13
H05K5/02 B
B41J2/01 301
G03G21/16 133
B43K23/08 130
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019009033
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020116807
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】大田 真志
(72)【発明者】
【氏名】平田 宗和
(72)【発明者】
【氏名】西岡 国彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智也
(72)【発明者】
【氏名】小山内 洋平
(72)【発明者】
【氏名】奈良井 聡
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴之
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-233777(JP,A)
【文献】特開2016-012700(JP,A)
【文献】特開2010-030272(JP,A)
【文献】特開平10-100442(JP,A)
【文献】特開2001-301272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0076045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 3/36
B41J 29/08
B41J 29/13
H05K 5/02
B41J 2/01
G03G 21/16
B43K 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体部材に対してカバー部材が装着される物品であって、
前記カバー部材は、前記本体部材を載せる底面部と、該底面部から装着方向へ延びる壁面部とを備え、該本体部材に装着された状態では該本体部材の外壁面を該壁面部で覆い、
前記壁面部の内壁面には、前記本体部材の外壁面に形成された被係合部と係合される係合部が形成され、
壁面部が該壁面部の外壁面側へ変位するように撓むことにより前記係合部と前記被係合部との係合が解除されるように構成され、
前記カバー部材の前記底面部の外壁面には、ユーザーの指を当てる位置を示す指当位置標示部が設けられていることを特徴とする物品
【請求項2】
求項1に記載の物品において、
前記係合部は、凹部又は凸部であり、
前記被係合部は、前記凹部又は前記凸部と嵌り合う凸部又は凹部であることを特徴とする物品。
【請求項3】
請求項2に記載の物品において、
前記係合部は、前記壁面部の前記内壁面における装着方向下流側部分に配置されており、
前記係合部は、凹部であり、
前記被係合部は、凸部であることを特徴とする物品。
【請求項4】
請求項2は3に記載の物品において、
前記本体部材に対する前記カバー部材の着脱時に前記凸部が摺動する相手側の部材の被摺動部分及び該凸部の少なくとも一方を、低摩擦部材としたことを特徴とする物品。
【請求項5】
請求項2至4のいずれか1項に記載の物品において、
前記本体部材及び前記カバー部材のうちの前記凹部が形成される部材には、該凹部の位置に対して前記カバー部材の装着方向上流側に位置する端部に、C面またはR面が設けられていることを特徴とする物品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の物品において、
前記被係合部が形成される前記本体部材の前記外壁面は、前記カバー部材の装着方向に対して直交する方向で互いに対向する2つの外壁であり、
前記係合部が形成される前記カバー部材の前記内壁面は、前記本体部材に対する前記カバー部材の装着時に前記2つの外側壁面にそれぞれ対向する2つの内壁であることを特徴とする物品。
【請求項7】
請求項6に記載の物品において、
前記本体部材は、前記カバー部材の装着方向に対して直交する断面形状が長尺形状であり、
前記2つの外壁面は、短尺方向に面することを特徴とする物品。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の物品において、
前記指当位置標示部は、ユーザーの指の滑りを防止する滑り防止手段を備えていることを特徴とする物品。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の物品において、
前記本体部材に対する前記カバー部材の装着移動中に前記係合部が前記被係合部へ向かうように、該本体部材に対する該カバー部材の移動をガイドするガイド手段を有することを特徴とする物品。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の物品において、
当該物品は、携帯型画像形成装置であることを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本体部材及び着脱部材のうちの一方の部材におけるカバー部の内壁面に形成された係合部が、カバー部によって覆われる他方の部材の被カバー部の外壁面に形成される被係合部に係合することで、本体部材に対して着脱部材が装着される物品が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、手動走査式印字装置本体(本体部材)にヘッドキャップ(着脱部材)が着脱可能に装着される手動走査式印字装置(物品)が開示されている。この印字装置は、ヘッドキャップの入口側端部の内壁面部分に凸部(係合部)が形成され、装置本体の外壁面には、この凸部に対応する凹部(被係合部)が形成されており、ヘッドキャップを装置本体に装着した時に凸部と凹部とが係合するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の物品においては、係合部が内壁面に形成されているカバー部を備えた一方の部材における外壁面の中で、当該カバー部に対応する外壁面部分がユーザーの指で押さえられてしまうと、着脱部材を本体部材からスムーズに取り外すことができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、本体部材に対してカバー部材が装着される物品であって、前記カバー部材は、前記本体部材を載せる底面部と、該底面部から装着方向へ延びる壁面部とを備え、該本体部材に装着された状態では該本体部材の外壁面を該壁面部で覆い、前記壁面部の内壁面には、前記本体部材の外壁面に形成された被係合部と係合される係合部が形成され、前壁面部が該壁面部の外壁面側へ変位するように撓むことにより前記係合部と前記被係合部との係合が解除されるように構成され、前記カバー部材の前記底面部の外壁面には、ユーザーの指を当てる位置を示す指当位置標示部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本体部材に対して着脱部材が着脱可能に装着される物品において、着脱部材を本体部材からスムーズに取り外せなくなる事態の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るHMPを斜め上方から見た外観斜視図。
図2】HMP本体から、カバー部材を取り外した状態を示す外観斜視図。
図3】スペーサー部材を離脱させた状態のHMP本体を斜め下方から見た外観斜視図。
図4】HMP本体で記録材上に画像形成する様子を示す説明図。
図5】HMP本体からインクジェットヘッド(インクカートリッジ)を取り出した状態を示す斜視図。
図6】HMP本体の電気回路の一部を示すブロック図。
図7】左側ローラユニットを取り付けた状態のHMP本体の下部ユニットを示す部分断面図。
図8】スペーサー部材を装着せず、記録材を載置された台の表面又は記録材の表面にローラを接触させて転動させながら走査するローラ接触形態のHMP本体の右側面図。
図9】スペーサー部材を装着して、記録材を載置された台の表面又は記録材の表面にローラを接触させないローラ非接触形態のHMP本体の右側面図。
図10】スペーサー部材を装着した状態のHMP本体を斜め下方から見た外観斜視図。
図11】ローラ非接触形態のHMP本体が湾曲軌道に沿って移動操作されている様子を示す説明図。
図12】左壁面部を除去してカバー部材の内部が見える状態にした斜視図。
図13】カバー部材の底面図。
図14】(a)は、保持状態において、カバー部材の底面部上にHMP本体を取り付けずにスペーサー部材だけを載せた状態を示す上面図。(b)は、同図(a)中のA-A断面を示す断面図。
図15】(a)は、非保持状態において、カバー部材の底面部上にHMP本体を取り付けずにスペーサー部材だけを載せた状態を示す上面図。(b)は、同図(a)中のA’-A’断面を示す断面図。
図16】(a)は、カバー部材をHMP本体に正しく装着させる場合における装着移動の途中状態を示す斜視図。(b)は、同図(a)の状態におけるY-Z平面に沿った断面図。
図17】(a)は、カバー部材をHMP本体に装着させる装着移動の途中状態を示すX-Z平面に沿った断面図。(b)は、HMP本体へのカバー部材の装着が完了した状態を示すX-Z平面に沿った断面図。
図18】(a)は、カバー部材の右壁面部の上端部にC面を設けた一例を示す拡大断面図であり、(b)は、カバー部材の右壁面部の上端部にR面を設けた一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、物品である携帯型画像形成装置としてのハンディモバイル型インクジェットプリンタ(以下、HMPという)に適用した一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るHMPの本体部材の基本的な構成について説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係るHMP10を斜め上方から見た外観斜視図である。
図2は、HMP10の本体部材であるHMP本体1から、着脱部材としてのカバー部材8を取り外した状態を示す外観斜視図である。
【0010】
本実施形態に係るHMP10は、本体部材としてのHMP本体1と、HMP本体1に対して着脱可能なスペーサー部材4と、HMP本体1に装着されたスペーサー部材4を収容した状態でHMP本体1に取り付けられる着脱部材としてのカバー部材8とから構成されている。カバー部材8は、ABS樹脂などの樹脂製であり、その内壁面上に凹部81が形成されている。HMP本体1にカバー部材8が取り付けられると、HMP本体1に設けられる被係合部としての2つの突起部16(1つは不図示)が、カバー部材8に設けられる係合部としての2つの凹部81(1つは不図示)に、それぞれスナップフィットによって引っ掛かる。これにより、HMP本体1にカバー部材8が装着された状態が保持される。HMP本体1からカバー部材8を取り外す場合、ユーザーはHMP本体1をカバー部材8から引き抜くことで、スナップフィットにより引っ掛かっていた突起部16が凹部81から外れ、HMP本体1からカバー部材8を取り外すことができる。
【0011】
図3は、スペーサー部材4をHMP本体1から離脱させた状態のHMP本体1とスペーサー部材4を斜め下方から見た外観斜視図である。
同図に示されるHMP本体1は、上部ユニット2と下部ユニット3とから主に構成されている。HMP本体1は、全体的におおよそ直方体形状をなしており、その走査方向(=印字方向:図中矢印X方向)の長さは、ユーザーが掌で掴める程度である。
【0012】
HMP本体1の筐体は、後述するインクジェットヘッドの記録部41(画像形成部)を用紙などの記録材に対面させる対向面である記録面30、これの反対面である上面31、記録面30における走査方向(図中矢印X方向)に対して直交する方向(図中矢印Y方向、以下「走査直交方向」という。)に延在する左側面32などを有している。また、走査直交方向に延在する右側面33、走査方向(X方向)に延在する背面34、走査方向に延在する正面35なども有している。HMP本体1は、通常、記録面30を鉛直方向下方に向けつつ、上面31を鉛直方向上方に向ける姿勢で使用される。
【0013】
上面31には、プリントボタン14と、電源ボタン15とが設けられている。また、上部ユニット2の左側面32側には、USB接続口6が設けられている。USB接続口6はUSBケーブルを接続するためのものである。HMP本体1の中に装着された充電式のバッテリーに対し、USB接続口6に接続したUSBケーブルを介して外部の電源から電力を供給することで、バッテリーを充電することができる。
【0014】
下部ユニット3の正面35側には、下部ユニット3の幅狭部37よりも幅の広い上部ユニット2の幅広部21が位置している。下部ユニット3の幅狭部37の左右側面32,33には、ユーザーがHMP本体1を把持して使用する際に手の指を当てる位置(通常は、親指と、中指又は薬指とをそれぞれ当てる位置)に、把持形状部38が形成されている。ユーザーは、使用時、すなわち、画像形成のためにHMP本体1を記録材の表面上で走査方向(図中矢印X方向)に移動させる時には、幅広部21が手首側にくるようにして、左右側面32,33の各把持形状部38にそれぞれ当てた指で下部ユニット3を挟み込むようにHMP本体1を把持する。
【0015】
走査直交方向において幅広部21が幅狭部37に比べて幅広になっているのは、カバー部材8をHMP本体1に取り付けたときに幅広部21の外壁面とカバー部材8の外壁面とが、図1に示すように略平面となるようにするためである。
【0016】
ユーザーは電源ボタン15を長押しすることによってHMP本体1の電源の入切(ON/OFF)を切り替えることができる。電源を入れた状態では、スマートフォンなどとの無線通信により、HMP本体1の上部ユニット2内に設けられた制御基板に対して画像情報を取得させることができる。その後、記録面30を記録材の表面に対面させる姿勢でHMP本体1を記録材の表面上に置いた後、プリントボタン14を一度押してから、図4に示すようにHMP本体1を走査方向(X方向)に沿って移動させることで、記録材Pの表面に画像を形成することができる。なお、HMP本体1は、ユーザーの移動操作(手動走査)によって走査方向に沿って往復移動させる場合、往路と復路のそれぞれで、記録材の表面に画像を形成することができる。
【0017】
記録材Pは、用紙などの紙類に限定されるものではなく、OHP、布、段ボール、包装容器、ガラス、基板などのあらゆる画像形成対象が含まれる。
【0018】
図5は、HMP本体1からインクジェットヘッド40(インクカートリッジ)を取り出した状態を示す斜視図である。
本実施形態のHMP本体1は、図5に示すように、上部ユニット2が下部ユニット3に対して開閉するように下部ユニット3に支持されている。下部ユニット3の内部には、記録部41とインクタンクとを一体で備えるインクタンク一体型のインクジェットヘッド40(インクカートリッジ)が着脱可能に装着される。このとき、インクの液滴を吐出する記録部41が鉛直方向下方に向けられる。このインクジェットヘッド40は、記録部41からインクの液滴を吐出して画像を記録することで画像形成を行うものである。カートリッジ着脱機構の着脱操作部12aをユーザーが正面側に引くことで、インクジェットヘッド40がリフトアップし、インクジェットヘッド40を取り出すことが可能な状態となる。
【0019】
HMP本体1の記録面30には、図3に示すように、下部ユニット3内に装着されたインクジェットヘッド40の記録部41を外部に露出させるための開口30aが設けられている。インクジェットヘッド40の記録部41は、複数の吐出孔41aを有しており、圧電素子の駆動によってそれぞれの吐出孔41aからインクの液滴を個別に吐出することが可能である。
【0020】
インクジェットヘッド40においては、インクを吐出するための駆動源として、積層型圧電素子や薄膜型圧電素子等を用いた電気機械変換素子(圧電アクチュエータ等)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子、振動板と対向電極とからなる静電アクチュエータなどを用いることができる。
【0021】
記録部41の吐出孔41aから吐出されるインク(液体)は、吐出孔41aから吐出可能な粘度や表面張力を有する液体であればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。具体的には、インク(液体)は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等である。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0022】
記録面30には、記録材上におけるHMP本体1の位置を検知する検知手段としての位置検知センサー59、回転可能な左側第一ローラ17a、左側第二ローラ17b、右側第一ローラ18a、右側第二ローラ18bなどが設けられている。
【0023】
HMP本体1はユーザーによって走査方向に移動操作されるときに、記録材の表面上に接触している前述した4つのローラを転動させる。このようなローラが設けられていることで、ユーザーはHMP本体1を走査方向に沿って直進させることができ、走査方向に往復移動させることができる。このとき、記録材の表面や記録材を載せた台の表面に接触するのは、HMP本体1に設けられる4つのローラだけであり、記録面30と記録材の表面との間を所定の距離だけ離間させている。このため、インクジェットヘッド40の記録部41と記録材の表面との距離が一定に保たれ、所望の高画質の画像を形成することができる。
【0024】
位置検知センサー59は、記録材の表面までの距離や表面状態(例えば凹凸)を検知したり、HMP本体1の移動距離を検知したりするセンサーであり、例えばパソコンの光学式マウス(ポインティングデバイス)などで使用されているものと同様のものを利用できる。位置検知センサー59は、HMP本体1が置かれている場所(記録材)に光を照射し、その部分の状態を「模様」として読み取る。そして、位置検知センサー59の動きに対してその「模様」がどのように移動するのかを連続して捉えることで、移動量を算出する。
【0025】
図6は、HMP本体1の電気回路の一部を示すブロック図である。
制御基板57は、各種の演算処理やプログラム実行を行うCPU55、近距離無線通信用のBt(Bluetooth(登録商標))基板52、データを一時記憶するRAM53、ROM54、記録制御部56などを有している。この制御基板57は、上部ユニット2の中空内において、USB接続口6の裏側の位置に固定されている。
【0026】
Bt基板52は、スマートフォンやタブレット端末などの外部機器との近距離無線通信(Bluetooth通信)によってデータ通信を行うものである。また、ROM54は、HMP本体1のハードウェア制御を行うファームウェアや、インクジェットヘッド40の駆動波形データ等を格納するものである。また、記録制御部56は、インクジェットヘッド40を駆動させるためのデータ処理を実行したり、駆動波形を生成したりするものである。
【0027】
制御基板57には、ジャイロセンサー58、位置検知センサー59、LEDランプ14a、インクジェットヘッド40、プリントボタン14、電源ボタン15、バッテリー51などが電気的に接続されている。
【0028】
ジャイロセンサー58は、周知の技術により、HMP本体1の傾きや回転角度を検知して、その結果を制御基板57に送信するものである。LEDランプ14aは、プリントボタン14における光透過性の材料からなる外装カバーの内部に設けられ、プリントボタン14を発光させるものである。
【0029】
電源ボタン15を押してHMP本体1の電源を入れると、各モジュールに電力が供給され、CPU55はROM54に格納されているプログラムに基づいて起動動作を開始し、プログラムや各データをRAM53に展開する。画像データを外部機器から近距離無線通信によって受信すると、記録制御部56は、受信した画像データに応じた駆動波形を生成する。そして、位置検知センサー59によって検知された記録材の表面上の位置に応じた画像を形成するようにインクジェットヘッド40からのインクの吐出を制御する。
【0030】
また、制御基板57は、外部機器との近距離無線通信によって画像データの取得中であるときは、LEDランプ14aを点滅させることで、光透過性のあるプリントボタン14を発光点滅させる。その後、制御基板57は、画像データの取得が完了したら、LEDランプ14aを連続点灯させることで、プリントボタン14を連続発光させる。これを見たユーザーは、HMP本体1が画像データの取得を終えたことを知り、HMP本体1を記録材上に置いてプリントボタン14を押す。
【0031】
一方、制御基板57は、LEDランプ14aの連続点灯制御を開始すると、プリントボタン14が押されるのを待機する。そして、プリントボタン14が押されると、LEDランプ14aを点滅させることで、プリントボタン14を発光点滅させる。これを見たユーザーは、HMP本体1の走査方向への移動操作(手動走査)を開始する。
【0032】
HMP本体1の移動操作(手動走査)を終えたユーザーは、プリントボタン14をもう一度押す。これにより、制御基板57は、LEDランプ14aを消灯させて、プリントボタン14の発光を停止させる。また、プリントボタン14を押さずにHMP本体1を記録材から取り上げて、卓上などにそのまま置いたり、カバー部材8に取り付けて置いたりする場合もある。この場合、位置検知センサー59は、HMP本体1が記録材上から取り上げられたときに、位置の検知ができなくなるので、制御基板57は、位置検知センサー59が位置を検知しなくなったタイミングで、LEDランプ14aを消灯させて、プリントボタン14の発光を停止させる。
【0033】
なお、移動操作(手動走査)中にプリントボタン14を押し続ける必要はない。移動操作に先立ってプリントボタン14を押して離せば、位置検知センサー59による検知結果に基づく画像形成処理が、画像形成の終了まで、プリントボタン14がもう一度押されるまで、あるいは、位置検知センサー59による位置検知不能まで、継続される。
【0034】
本実施形態のHMP本体1は、走査直交方向(Y方向)において、記録部41の位置から外れた位置を、ローラユニット17,18における各ローラ17a,17b,18a,18bの配設位置にしている。このような配設位置では、HMP本体1を移動操作しているときに、形成直後画像部分に対してローラ17a,17b,18a,18bが接触することがない。よって、ローラ17a,17b,18a,18bの接触によって画像が乱れるのを回避することができる。
【0035】
図7は、左側ローラユニット17を取り付けた状態のHMP本体1の下部ユニット3を示す部分断面図である。
下部ユニット3の壁には、加圧板バネ74が固定されている。この加圧板バネ74は、左側ローラユニット17の軸部材17cの長手方向における一端を他端側に向けて軸線方向に加圧することで、軸部材の長手方向における他端を下部ユニット3のケーシング内壁に押し当てている。
【0036】
このように加圧板バネ74によって左側ローラユニット17の軸部材17cを軸線方向に加圧して、左側第一ローラ17a及び左側第二ローラ17bの軸線方向へのガタツキを抑える(ガタツキを許容する空間を無くす)。これにより、ガタツキに起因する画像の乱れを抑えることができる。
【0037】
なお、左側ローラユニット17の軸部材17cを加圧板バネ74によって軸線方向に加圧する例について説明したが、右側ローラユニット18の軸部材18cも同様にして、加圧板バネによって軸線方向に加圧している。
また、加圧板バネをケーシングに固定する代わりに、ローラユニット17,18の軸部材17c,18cの端部に固定してもよい。加圧板バネをケーシングに組み付ける工程をなくして、組み立て費用を低減することができる。
【0038】
ここで、本実施形態のHMP本体1のようにローラ17a,17b,18a,18bを備えた構成においては、上述したとおり、ユーザーがHMP本体1を走査方向へ移動操作(手動走査)するときの直進走行性を確保できる。しかしながら、HMP本体1を湾曲軌道に沿って移動操作するときには、ローラ17a,17b,18a,18bが湾曲軌道に沿った移動操作を妨げ、良好な手動操作の邪魔になる。
【0039】
また、一行目の記録を行った後に続けて二行目の記録を行う場合、位置検知センサー59による位置検知が不能にならないように、記録面30を記録材の表面に対向させた姿勢のまま、走査直交方向へHMP本体1を移動させる改行操作が必要となる。この改行操作においても、HMP本体1のローラ17a,17b,18a,18bが走査直交方向への移動を妨げ、良好な改行操作の邪魔になる。
【0040】
そこで、本実施形態のHMP10は、HMP本体1の記録面30に対して着脱可能なスペーサー部材4を設け、スペーサー部材4の着脱によってHMP10の使用形態を、記録材Pを載置された台の表面又は記録材Pの表面にローラ17a,17b,18a,18bを接触させて転動させながら走査するローラ接触形態(図8参照)と、当該表面にローラ17a,17b,18a,18bを接触させないローラ非接触形態(図9参照)とにすることができる構成にしている。
【0041】
図10は、スペーサー部材4をHMP本体1に装着した状態のHMP本体1を斜め下方から見た外観斜視図である。
HMP本体1からスペーサー部材4を離脱させた場合、HMP10は、図8に示すように、記録材P等の表面にHMP本体1のローラ17a,17b,18a,18bを接触させて転動させながら走査するローラ接触形態で使用できる。これにより、ローラ17a,17b,18a,18bによる直進走行性によって、ユーザーはHMP本体1を容易に走査方向に沿って真っ直ぐに移動操作することができ、適切な画像を形成することができる。一方、HMP本体1の記録面30にスペーサー部材4を装着すると、HMP10は、図9に示すように、記録材P等の表面にHMP本体1のローラ17a,17b,18a,18bを接触させないで走査するローラ非接触形態で使用できる。
【0042】
スペーサー部材4は、下部ユニット3の記録面30に対して磁石で着脱されるようになっている。具体的には、スペーサー部材4には、HMP本体1の記録面30にスペーサー部材4を装着したとき、記録面30に露出している2つの磁性体である金属ネジのネジ頭39aに対向する位置に、それぞれ磁石42が位置するように設けられている。なお、本実施形態では、スペーサー部材4に設けられる磁性体が金属ネジ等の締結部材である例で説明するが、スペーサー部材4の金属フレーム等のフレーム部材であってもよい。このようなフレーム部材は、通常、剛性を確保するために金属製であり、磁性体として利用できる。
【0043】
また、図3に示すように、下部ユニット3の記録面30とスペーサー部材4との位置合わせのため、記録面30上には、位置合わせ突起39bと位置合わせ孔39cとが形成されている。そして、スペーサー部材4には、これらに対応する位置に、位置合わせ突起39bが入り込む位置合わせ孔43と、位置合わせ孔39cに入り込む位置合わせ突起が形成されている。これらの位置合わせ突起及び位置合わせ孔が相手側の位置合わせ孔及び位置合わせ突起と嵌り合うように、記録面30に対してスペーサー部材4が適切に位置合わせされると、スペーサー部材4上の磁石42が記録面30のネジ頭39aに対向し、図10に示すように磁石42の磁力によってスペーサー部材4が記録面30に装着、保持される。
【0044】
スペーサー部材4は、その本体がABS樹脂などの樹脂製であり、その記録材対向面(装着時に記録面30と対面する側とは反対側の面)には、HMP本体1を三点支持するための3つの突起44が設けられている。HMP本体1の記録面30に装着されたスペーサー部材4の突起44の先端は、図9に示すように、ローラ17a,17b,18a,18bよりも記録面30に対して記録材Pと対向する方向に遠い位置にある。このため、スペーサー部材4を装着した状態のHMP本体1が記録材P上に置かれると、突起44の先端が記録面30の表面に接触し、ローラ17a,17b,18a,18bを記録材Pの表面から浮かせる。これにより、HMP10はローラ非接触形態となる。
【0045】
ローラ非接触形態でHMP10を使用する場合、ユーザーは、HMP本体1を把持して、スペーサー部材4が装着された状態の記録面30が記録材Pの表面に対面するように置く。このとき、HMP本体1は、スペーサー部材4の3つの突起44によって、ローラ17a,17b,18a,18bが記録材Pの表面から浮いた状態で、記録材P上に三点支持される。そして、ユーザーは、記録材Pの表面に3つの突起44を摺動させるようにしてHMP本体1を移動操作(手動走査)し、記録材P上に画像を形成することができる。
【0046】
図11は、湾曲軌道に沿って移動操作されているローラ非接触形態のHMP本体1を示す斜視図である。
ローラ非接触形態では、ローラ17a,17b,18a,18bが記録材Pの表面から浮いた状態であるため、HMP本体1を走査方向(X方向)とは異なる方向への移動操作(手動操作)が、ローラ17a,17b,18a,18bによって邪魔されることがない。そのため、ローラ接触形態に比べて、HMP本体1の湾曲走行性が向上する。よって、湾曲軌道に沿ったHMP本体1の移動操作を容易に行うことができる。
【0047】
また、走査方向に沿って一行目の記録を行った後、走査直交方向の異なる位置に走査方向に沿って二行目の記録を行う場合、記録面30を記録材の表面に対向させた姿勢のまま、走査直交方向へHMP本体1を移動させる改行操作を行う場合にも、ローラ17a,17b,18a,18bによって邪魔されることがない。よって、ローラ接触形態に比べて、改行操作時の操作性が向上する。なお、ローラ非接触形態では、ローラ17a,17b,18a,18bによる直進走行性が得られないため、ユーザーは、ローラ17a,17b,18a,18bの補助がない状態で、走査方向へ直進させる必要がある。
【0048】
本実施形態のスペーサー部材4に設けられる3つの突起44は、いずれも、走査直交方向(Y方向)において、インクジェットヘッド40の記録部41(複数の吐出孔41a)の位置から外れた位置に配設されている。これにより、ローラ非接触形態での画像形成時に、形成直後画像部分を突起44で擦って画像を乱してしまうことを防止することができる。
【0049】
次に、本実施形態に係るHMP10が備えるカバー部材8について説明する。
本実施形態のカバー部材8は、HMP本体1に装着されたスペーサー部材4を収容した状態でHMP本体1に装着可能となっている。本実施形態のカバー部材8は、図2に示すように、HMP本体1を載せる底面部80と、底面部80の図中上面から図中Z方向へ延びる3つの壁面部82,83,84とを備えている。3つの壁面部82,83,84は、それぞれ、底面部80上にHMP本体1が載った状態において、HMP本体1の下部ユニット3における幅狭部37の左側面32、右側面33及び背面34に対面する。
【0050】
本実施形態において、HMP本体1にカバー部材8を取り付ける場合の一例としては、図2に示すように卓上に置かれたカバー部材8に対し、3つの壁面部82,83,84に囲まれた空間内にHMP本体1の下部ユニット3の幅狭部37がはまり込むように、図中上方(Z方向)からHMP本体1を挿入する。これにより、HMP本体1に設けられる2つの突起部16がカバー部材8の左右壁面部82,83の内壁に形成された2つの凹部81にそれぞれスナップフィットによって引っ掛かる。その結果、HMP本体1にカバー部材8が取り付けられた状態が保持される。
【0051】
図12は、左壁面部82を除去してカバー部材8の内部が見える状態にした斜視図である。
本実施形態のカバー部材8は、インクジェットヘッド40の記録部41(複数の吐出孔41a)を保護する画像形成部保護部であるキャップ部85を有する。このキャップ部85は、HMP本体1にカバー部材8が装着された状態において、HMP本体1の記録面30に露出しているインクジェットヘッド40の記録部41に密着するように装着され、記録部41上の複数の吐出孔41aを覆う。これにより、HMP本体1にカバー部材8が装着された状態では、HMP本体1の吐出孔41aがキャップ部85内に密閉され、保護、保湿がなされる。
【0052】
本実施形態においては、HMP本体1からカバー部材8を取り外したときに、スペーサー部材4をHMP本体1に装着可能な装着状態と、スペーサー部材4をHMP本体1から離脱可能な離脱状態とにするように、スペーサー部材4の保持状態を切り替える着脱切替手段を有する。本実施形態の着脱切替手段は、カバー部材8に設けられ、カバー部材8にスペーサー部材4を保持させるカバー部材側保持状態と、HMP本体1にスペーサー部材4が保持可能となるHMP本体側保持状態(カバー部材8にスペーサー部材4を保持させない非保持状態)とを切り替えるものである。
【0053】
本実施形態において、スライドロック部材86は、底面部80に対して走査直交方向(Y方向)に沿ってスライド移動可能に構成されている。具体的には、カバー部材8の底面部80の下面には、図13に示すように、スライドロック部材86に固定されたスライド操作部86cが露出しており、このスライド操作部86cをユーザーが図中Y方向に沿ってスライド操作することにより、これに連動してスライドロック部材86がスライド移動する。
【0054】
図14(a)は、カバー部材8の底面部80上に、HMP本体1を取り付けずに、スペーサー部材4だけを載せた状態の上面図であり、図14(b)は、図14(a)中のA-A断面を示す断面図である。図14(a)及び(b)は、カバー部材8にスペーサー部材4を保持させるカバー部材側保持状態のものである。
ユーザーがスライド操作部86cを図中Y1方向へスライド操作すると、これに連動してスライドロック部材86が図中Y1方向へスライド移動する。スライドロック部材86には、スペーサー部材4に設けられる被ロック部45a,45bと係合するロック部86a,86bが設けられている。
【0055】
スライドロック部材86が図中Y1方向へスライド移動すると、図14(b)に示すように、スライドロック部材86上のロック部86aの端部がスペーサー部材4の被ロック部45aの上方に位置決めされる。もう1つのロック部86bも同様に、その端部が被ロック部45bの上方に位置決めされる。これにより、ユーザーがHMP本体1からカバー部材8を取り外すために、カバー部材8からZ方向へHMP本体1を引き抜く際、HMP本体1に磁力で装着されているスペーサー部材4は、その被ロック部45a,45bがカバー部材8のスライドロック部材86のロック部86a,86bの端部に引っ掛かり、引き抜かれるHMP本体1への追従が阻止されるロック状態(係合状態)となる。
【0056】
その結果、カバー部材8からHMP本体1が引き抜かれたとき、スペーサー部材4はカバー部材8側に保持される。したがって、ユーザーは、ローラを用いる使用形態(ローラ接触形態)のときは、図14(a)及び(b)に示すように、Y1方向へスライド操作することで、引き抜いた時にはスペーサー部材がHMP本体1から離脱した状態のHMP本体1を手にすることができ、そのまま画像形成作業を行うことができる。
【0057】
図15(a)は、カバー部材8の底面部80上に、HMP本体1を取り付けずに、スペーサー部材4だけを載せた状態の上面図であり、図15(b)は、図15(a)中のA’-A’断面を示す断面図である。図15(a)及び(b)は、HMP本体1にスペーサー部材4が保持可能となるHMP本体側保持状態(カバー部材8にスペーサー部材4を保持させない非保持状態)のものである。
ユーザーがスライド操作部86cを図中Y2方向へスライド操作すると、これに連動してスライドロック部材86が図中Y2方向へスライド移動する。スライドロック部材86が図中Y2方向へスライド移動すると、図15(b)に示すように、スライドロック部材86上のロック部86aの端部がスペーサー部材4の被ロック部45aの上方から外れた位置に退避する。もう1つのロック部86bも同様に退避する。
【0058】
これにより、スペーサー部材4は、その被ロック部45a,45bがカバー部材8のスライドロック部材86のロック部86a,86bの端部に引っ掛からない非ロック状態(非係合状態)になるので、ユーザーがHMP本体1からカバー部材8を取り外すために、カバー部材8からZ方向へHMP本体1を引き抜くと、スペーサー部材4は、HMP本体1に磁力で保持された状態で、HMP本体1とともにカバー部材8から取り外される。その結果、カバー部材8からHMP本体1が引き抜かれたとき、スペーサー部材4が磁力によってHMP本体1の記録面30に装着された状態となっている。
【0059】
したがって、ユーザーは、ローラを用いない使用形態(ローラ非接触形態)のときは、図15(a)及び(b)に示すように、Y2方向へスライド操作することで、引き抜いた時にはスペーサー部材がHMP本体1に装着された状態のHMP本体1を手にすることができ、そのまま画像形成作業を行うことができる。
【0060】
カバー部材8は、スペーサー部材4がカバー部材8に磁力によって保持されるように、スペーサー部材4の磁石と対向する位置に磁性体を有している。そのため、HMP本体1をカバー部材8に装着しない状態で、ユーザーがスライド操作部86cを図中Y2方向へスライド操作させて、スペーサー部材4を図14のロック状態から図15の非ロック状態にしたとしても、カバー部材8からスペーサー部材4を外れにくくなっている。そうすることで、カバー部材8のHMP本体1を挿入する側を下にしたときに、カバー部材8からスペーサー部材4が落ちてしまうのを防止できる。また、図15の非ロック状態でHMP本体1にスペーサー部材4とカバー部材8が装着された状態において、HMP本体1とスペーサー部材4との間の磁力がカバー部材8とスペーサー部材4との間の磁力より強くなっているので、図15の状態でHMP本体1をカバー部材8を取り外したときには、スペーサー部材4は、HMP本体1に装着された状態となって、カバー部材8から取り外される。
【0061】
図16(a)は、カバー部材8をHMP本体1に正しく装着させる場合における装着移動の途中状態を示す斜視図であり、図16(b)は、図16(a)の状態におけるY-Z平面に沿った断面図である。
カバー部材8をHMP本体1に正しく装着するには、まず、HMP本体1に対するカバー部材8のX方向(第一方向)及びY方向(第二方向)の位置を、インクジェットヘッド40の記録部41上の正規の接触箇所Eにカバー部材8のキャップ部85の縁が対向することになる目標位置に定める。その後、図16に示すように、HMP本体1におけるインクジェットヘッド40の記録部41に対してカバー部材8のキャップ部85がZ方向に沿って真っすぐに接触するように、HMP本体1とカバー部材8とをZ方向に沿って相対移動(装着移動)させる。このような装着動作により、HMP本体1に設けられる2つの突起部16がカバー部材8の左右壁面部82,83の内壁に形成された2つの凹部81にスナップフィットによって引っ掛かり、HMP本体1にカバー部材8が装着される。
【0062】
本実施形態において、ユーザーはHMP本体1をカバー部材8から引き抜くことで、スナップフィットにより引っ掛かっていた突起部16が凹部81から外れ、HMP本体1からカバー部材8を取り外すことができる。このとき、ユーザーの引き抜く力によって、HMP本体1の左右側面32,33に形成されている各突起部16が、カバー部材8の左右壁面部82,83の内壁面に形成されている凹部81の内部から当該内壁面上に乗り上げる際に、カバー部材8の当該内壁面をその外壁面側へ押し出すことで、カバー部材8の左右壁面部82,83における上部が外壁面側へ変位するように撓む。このようにカバー部材8の左右壁面部82,83の上部が撓むことによって、凹部81の内部にはまり込んでいた突起部16が当該凹部81から容易に離脱でき、両者の係合解除が適切になされる。
【0063】
ところが、HMP本体1からカバー部材8を取り外す際、ユーザーは、カバー部材8の左右壁面部82,83における上部を指で挟むように把持することがある。このように把持された状態では、図17(b)の矢印Fで示すように、カバー部材8の左右壁面部82,83における上部(カバー部)が、内壁面側に向けて押さえられてしまい、カバー部材8の上部の外壁面側への撓みが阻害される。その結果、ユーザーが引き抜く力を加えても、HMP本体1の左右側面32,33に形成されている各突起部16が、カバー部材8の左右壁面部82,83の内壁面に形成されている凹部81の内部から容易に離脱できず、係合解除が困難となるため、HMP本体1からカバー部材8をスムーズに取り外すことができなくなる。
【0064】
そこで、本実施形態においては、図2に示すように、カバー部材8の外壁面における底面部80の側面部分に、ユーザーの指を当てる位置を示す指当位置標示部としての凹凸形状部88が形成されている。このような凹凸形状部88がカバー部材8の外壁面に形成されていることで、ユーザーがカバー部材8を把持する際に、ユーザーに対して凹凸形状部88に指を当てることを促すことができる。すなわち、カバー部材8の左右壁面部82,83の上部ではなく、底面部80の側面に形成されている凹凸形状部88に指を当てて把持するように、ユーザーの指を当てる位置を誘導することができる。凹凸形状部88が形成されている位置は、HMP本体1からカバー部材8を取り外す際にカバー部材8が撓む部分(カバー部材8の左右壁面部82,83の上部)から外れた位置にあるため、この凹凸形状部88に指を当ててユーザーがHMP本体1からカバー部材8を取り外す場合には、カバー部材8の撓みが阻害されることがなく、スムーズな取り外しが実現できる。
【0065】
なお、本実施形態では、凹凸形状部88を形成する位置は、その凹凸形状部88にユーザーの指が当てられた状態でHMP本体1からカバー部材8が取り外される場合に、カバー部材8の撓みが阻害されない位置であればよく、適宜設定することができる。例えば、カバー部材8の撓みの大部分がカバー部材8の左右壁面部82,83の上半分で生じる構成であれば、左右壁面部82,83に下半分の位置に凹凸形状部88を形成するようにしてもよい。ただし、本実施形態のように、カバー部材8の外壁面における底面部80の側面部分に凹凸形状部88を形成すれば、ユーザーの指で押さえる力が左右壁面部82,83を撓ませることがない位置であるため、好ましい。
【0066】
また、本実施形態において、凹凸形状部88は、図17(a)に示すように、HMP本体1からカバー部材8を取り外す際にカバー部材8が撓む部分(カバー部材8の左右壁面部82,83の上部)よりも、HMP本体1にカバー部材8を装着する装着方向の上流側に配置されている。カバー部材8の左右壁面部82,83における装着方向下流側は、装着時にHMP本体1が挿入される側であるため、左右壁面部82,83を撓ませて外壁面側へ変位させるように構成しやすい。したがって、カバー部材8が撓む部分よりも装着方向上流側に凹凸形状部88を配置することで、凹凸形状部88にユーザーが指を当てたときにカバー部材8の撓みが阻害されにくい構成を実現しやすい。
【0067】
本実施形態のように、装着時に互いに係合する係合部及び被係合部の一方を凹部とし、他方を凸部とすることで、簡易な構成でスナップフィットを実現できる。ここで、カバー部材8をスナップフィットでHMP本体1に着脱する構成において、係合部及び被係合部を凸部と凹部の組み合わせによって構成する場合、カバー部材の着脱中に凸部が相手側の部材面に摺動することになる。凸部が摺動によって摩耗すると、凹部への嵌り込みが浅くなり、装着時の保持力が弱まってしまうため、凸部の摩耗を抑制することが重要である。
【0068】
本実施形態では、図17に示すように、カバー部材8側に設けられる係合部(凹部81)を左右壁面部82,83の撓みが生じやすい装着方向下流側部分(上部)に配置した構成としている。この構成では、カバー部材8の左右壁面部82,83に形成される係合部(凹部81)は、カバー部材8の装着動作中(詳しくは、カバー部材8の左右壁面部82,83の間にHMP本体1が挿入されてから装着が完了するまでの間)、HMP本体1の左右側面32,33に対して接触又は近接して相対移動することになる。そのため、カバー部材8の係合部を凸部で構成すると、装着動作の間ずっとHMP本体1の左右側面32,33と摺動することになり、凸部の摩耗が促進される。これは、カバー部材8の取り外し動作中も同様であり、取り外し動作の間ずっとHMP本体1の左右側面32,33と摺動することになり、凸部の摩耗が促進される。
【0069】
そこで、本実施形態においては、カバー部材8の係合部を凹部81とし、この凹部81に係合するHMP本体1の被係合部を凸部である突起部16で構成している。この場合、HMP本体1の凸部である突起部16は、カバー部材8の装着動作の初期時(詳しくは、カバー部材8の左右壁面部82,83の間にHMP本体1が挿入されてから、突起部16がカバー部材8の左右壁面部82,83の上端に達するまでの間)は、突起部16がカバー部材8の左右壁面部82,83と摺動しないため、凸部である突起部16の摩耗が抑制できる。
【0070】
また、凸部である突起部16の摩耗を抑制するためには、突起部16自身や、突起部16が摺動する相手側の部材の被摺動部分(すなわち、カバー部材8の左右壁面部82,83の上部内壁面部分)を、低摩擦部材としてもよい。低摩擦部材は、例えば、突起部16や相手側の部材の被摺動部分それ自体の材質を、その周囲の部材の材質よりも低摩擦なものにする場合でも、その表面に低摩擦部材を張り付けたり低摩擦表面処理を施したりする場合でもよい。本実施形態では、図12に示すように、HMP本体1の突起部16が摺動するカバー部材8の左右壁面部82,83の上部内壁面部分に、低摩擦部材として、ナイロン(登録商標)製のシート89を張り付けている。このシート89は、突起部16に対し、カバー部材8の左右壁面部82,83の基材表面の摩擦係数よりも低い摩擦係数を示すものであれば、POM(ポリアセタール)やテフロン(登録商標)などの他の材質のものであってもよい。
【0071】
また、本実施形態のカバー部材8には、図18(a)や図18(b)に示すように、凹部81の位置に対して当該カバー部材8の装着方向上流側に位置する端部(すなわち、カバー部材8の左右壁面部82,83の上端部)に、C面(図18(a))またはR面(図18(b))を設けてもよい。このようなC面やR面を設けることで、HMP本体1の突起部16がカバー部材8の左右壁面部82,83の上端部に当接して当該左右壁面部82,83の内壁面へ乗り上げる動きが滑らかになり、カバー部材8の左右壁面部82,83の間にHMP本体1を挿入するユーザー操作がスムーズになる。
【0072】
また、本実施形態では、被係合部である突起部16は、カバー部材8の着脱方向に対して直交する方向で互いに対向しているHMP本体1の左右側面32,33に形成され、係合部である凹部81は、HMP本体1に対するカバー部材8の装着時にHMP本体1の左右側面32,33にそれぞれ対向するカバー部材8の左右壁面部82,83の内壁面に形成されている。このように、2つの突起部16(あるいは2つの凹部81)が互いに対向する2つの側壁面にそれぞれ形成されていると、当該2つの側壁面のうちの一方に親指を当て他方に残りの指を当てるようにしてユーザーが把持しやすい。そのため、カバー部材8における2つの凹部81がユーザーの指で外壁面側から内壁面側に向けて押さえられて、カバー部材8の取り外しの際にカバー部材8の撓みが阻害され、HMP本体1からカバー部材8をスムーズに取り外すことができなくなる。本実施形態によれば、このように把持されやすい構成であっても、凹凸形状部88を設けることでスムーズな取り外しが実現できる。
【0073】
特に、本実施形態のように、HMP本体1はカバー部材8の着脱方向に対して直交する断面形状が略長方形状である長尺形状である場合、HMP本体1の左右側面32,33に(短尺方向に面する側面)に突起部16が設けられている場合、カバー部材8の取り外しの際にカバー部材8の撓みが阻害される位置をユーザーが把持しやすい。本実施形態によれば、このような構成であっても、凹凸形状部88を設けることでスムーズな取り外しが実現できる。
【0074】
また、本実施形態の凹凸形状部88は、カバー部材8の着脱方向に凹凸が並んで形成されている凹凸形状でありカバー部材8の着脱時に、当該凹凸形状部88の凹凸部分に指が引っ掛かって指が滑りにくい。すなわち、本実施形態の当位置標示部である凹凸形状部88は、ユーザーの指の滑りを防止する滑り防止手段としての機能を有している。これにより、カバー部材8をHMP本体1から取り外す操作が容易になる。なお、滑り防止手段は、このような凹凸形状以外でも、例えば、ユーザーの指に対する摩擦係数が高い表面状態を提供する高摩擦材であってもよい。
【0075】
また、本実施形態においては、HMP本体1に対するカバー部材8の装着移動中に凹部81が突起部16へ向かうように、HMP本体1に対するカバー部材8の移動をガイドするガイド手段が設けられている。具体的には、HMP本体1に対してカバー部材8をX方向の目標位置に位置決めしてガイドするガイド手段が設けられている。本実施形態のガイド手段は、図16等に示すように、カバー部材8に設けられるガイド突起87と、そのガイド突起87のY方向の移動を規制しながらガイド突起87をZ方向に沿って案内する、HMP本体1に設けられるガイド溝36とから構成されている。
【0076】
HMP本体1に設けられるガイド溝36は、Z方向に沿って延び、その溝幅(Y方向長さ)はカバー部材8のガイド突起87のY方向長さと略同一(ガイド溝36内をガイド突起87が摺動可能な僅かな隙間が形成される程度)である。したがって、HMP本体1のガイド溝36にカバー部材8のガイド突起87が入り込むことで、ガイド突起87のY方向両側部がガイド溝36のY方向両内側面に接触してY方向への移動が規制される。その結果、HMP本体1に対するカバー部材8のY方向位置は、Y方向の目標位置に位置決めされる。
【0077】
本実施形態のガイド突起87は、カバー部材の左右壁面部82,83の内壁下部にそれぞれ設けられている。このため、カバー部材8の左右壁面部82,83の間にHMP本体1の幅狭部37を進入させてX方向の位置決めがなされる当初の段階では、ガイド突起87は、HMP本体1の下方に位置し、HMP本体1のガイド溝36に入り込むことはない。そのため、本実施形態では、カバー部材8の左右壁面部82,83の間にHMP本体1の幅狭部37を進入させてX方向の位置決めをした後に、ガイド突起87がガイド溝36に入り込んでY方向の位置決めがなされる。
【0078】
このように、X方向及びY方向の位置決めを段階的に行うことで、両方向の位置決めを同時に行う場合よりもユーザー操作が容易となる。その結果、カバー部材8をHMP本体1の目標位置に向けて正しく装着されない不適切な装着移動を行うユーザー操作が抑制され、HMP本体1の突起部16がカバー部材8の凹部81に適切に嵌り込んで係合し、カバー部材8をHMP本体1に正しく装着できる。
【0079】
なお、本実施形態においては、カバー部材8(一方の部材)の左右壁面部82,83の上部(カバー部)によって覆われるHMP本体1(他方の部材)の左右側面32,33の外壁面に形成される被係合部が突起部16からなる凸部であり、これに係合する係合部が凹部81であったが、当該被係合部が凹部であり、当該係合部が凸部であってもよい。ただし、HMP本体1の小型化(X方向の小寸法化)のためにHMP本体1の外壁面上に凹部を形成することが困難である場合があるため、その場合にはHMP本体1の側を凸部とするのが好適である。
【0080】
また、本実施形態においては、他方の部材の被カバー部を覆うカバー部を備えた一方の部材がカバー部材8(着脱部材)であり、当該他方の部材がHMP本体1(本体部材)である例であったが、一方の部材がHMP本体1であり、当該他方の部材がカバー部材8である例であってもよい。
【0081】
また、本実施形態における指当位置標示部は、ユーザーの指の滑りを防止する滑り防止手段としての機能を備えた凹凸形状部88であるが、ユーザーの指を当てる位置を示すものであれば、このような滑り防止手段の機能がなくてもよい。したがって、指当位置標示部は、例えば、文字や絵柄などによってユーザーの指を当てる位置を示す表示部としてのシールを貼付したものであってもよい。
【0082】
また、本実施形態では、インクジェット方式のHMP10に本発明を適用した例について説明したが、本発明の構成は他の画像形成方法による装置にも適用できる。例えば、感熱方式、又は熱転写方式など適宜な方式の記録装置に適用できる。熱転写方式のHMP本体は、液体を収納する収納容器としてのインクリボンを備えるため、インクリボンの底部に凹所を形成し、凹所により形成されたスペースに記録材を検知する検知手段としての位置検知センサーを収容すればよい。
【0083】
また、本実施形態においては、物品として、携帯型画像形成装置であるHMP1を例に挙げて説明したが、本体部材に対して着脱部材が着脱可能に装着される構成を備える物品であれば、物品には特に制限はない。例えば、機器本体(本体部材)に対して着脱可能な電池カバー(着脱部材)を備えた各種電子機器、印鑑本体(本体部材)に対して着脱可能なキャップ(着脱部材)を備えた印鑑、筆記具本体(本体部材)に対して着脱可能なキャップ(着脱部材)を備えたボールペンや油性ペンなどの筆記具などが挙げられる。
【0084】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する
[第1態様]
第1態様は、本体部材(例えばHMP本体1)及び着脱部材(例えばカバー部材8)のうちの一方の部材(例えばカバー部材8)におけるカバー部(例えば左右壁面部82,83)の内壁面に形成された係合部(例えば凹部81)が、該カバー部によって覆われる他方の部材(例えばHMP本体1)の被カバー部(例えば左右側面32,33)の外壁面に形成される被係合部(例えば突起部16)に係合することで、該本体部材に対して該着脱部材が装着される物品(例えばHMP10)であって、前記一方の部材の前記カバー部が該カバー部の外壁面側へ変位するように撓むことにより前記係合部と前記被係合部との係合が解除されるように構成され、前記一方の部材の外壁面には、前記カバー部に対応する部分から外れた位置に、ユーザーの指を当てる位置を示す指当位置標示部(例えば凹凸形状部88)が設けられていることを特徴とするものである。
本態様においては、本体部材及び着脱部材のうちの一方の部材のカバー部が他方の部材の被カバー部を覆うように構成され、カバー部が当該カバー部の外壁面側へ変位するように撓むことで、カバー部の係合部と被カバー部の被係合部との係合が解除される。このような構成においては、本体部材から着脱部材を取り外す際、カバー部の外壁面側の部分をユーザーが指で押さえてしまうと、カバー部が外壁面側へ撓みにくくなってしまい、係合部と被係合部との係合が解除にくくなる。そのため、着脱部材を本体部材からスムーズに取り外すことができない。
そこで、本態様では、カバー部が内壁面に形成されている前記一方の部材の外壁面において、当該カバー部に対応する部分から外れた位置に、ユーザーの指を当てる位置を示す指当位置標示部が設けられている。これにより、本体部材から着脱部材を取り外す際にユーザーが指を当てる位置を、当該カバー部に対応する部分から外れた位置に誘導することが可能となる。その結果、本体部材から着脱部材を取り外す際に、カバー部の外壁面側の部分がユーザーの指で押さえられてしまうことが抑制され、着脱部材を本体部材からスムーズに取り外せなくなる事態の発生を抑制できる。
【0085】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記指当位置標示部は、前記カバー部よりも装着方向上流側に配置されていることを特徴とするものである。
前記一方の部材におけるカバー部よりも装着方向下流側は、着脱部材の装着時に、被カバー部を備える前記他方の部材が入ってくる側であるため、当該カバー部を撓ませて外壁面側へ変位させるように構成しやすい。したがって、当該カバー部(撓む部分)よりも装着方向上流側に指当位置標示部を配置することで、当該カバー部が撓みやすく、かつ、その指当位置標示部にユーザーが指を当ててもカバー部の撓みが阻害されにくい構成を実現しやすい。
【0086】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記係合部(例えば凹部81)は、凹部又は凸部であり、前記被係合部(例えば突起部16)は、前記凹部又は前記凸部と嵌り合う凸部又は凹部であることを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成でスナップフィットを実現できる。
【0087】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記係合部(例えば凹部81)は、前記一方の部材(例えばカバー部材8)の前記内壁面における装着方向下流側部分に配置されており、前記係合部は、凹部であり、前記被係合部(例えば突起部16)は、凸部であることを特徴とするものである。
これによれば、着脱部材の着脱時に、凸部である被係合部が凹部である係合部の形成された前記一方の部材の内壁面と摺動する距離が短くなり、凸部(被係合部)の摩耗を抑制しやすい。
【0088】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記本体部材に対する前記着脱部材の着脱時に前記凸部が摺動する相手側の部材の被摺動部分及び該凸部の少なくとも一方を、低摩擦部材(例えばシート89)としたことを特徴とするものである。
これによれば、凸部(被係合部)の摩耗を抑制できる。
【0089】
[第6態様]
第6態様は、第3乃至第5態様のいずれかにおいて、前記本体部材及び前記着脱部材のうちの前記凹部が形成される部材には、該凹部の位置に対して前記着脱部材の装着方向上流側に位置する端部に、C面またはR面が設けられていることを特徴とするものである。
これによれば、凸部が相手側の部材の端部に当接して凹部の形成された内壁面又は外壁面へ乗り上げる動きが滑らかになり、本体部材に対して着脱部材を装着させるユーザー操作がスムーズになる。
【0090】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記被係合部(例えば突起部16)は、前記着脱部材の着脱方向に対して直交する方向で互いに対向する2つの外側壁面(例えばHMP本体1の左右側面32,33)に形成され、前記係合部(例えば凹部81)は、前記本体部材に対する前記着脱部材の装着時に前記2つの外側壁面にそれぞれ対向する2つの内側壁面(例えばカバー部材8の左右壁面部82,83の内壁面)に形成されていることを特徴とするものである。
本態様のように、互いに対向する2つの外側壁面あるいは2つの内側壁面にそれぞれ被係合部や係合部が形成された構成では、当該2つの側壁面のうちの一方に親指を当て他方に残りの指を当てるようにしてユーザーが把持しやすい。そのため、本体部材から着脱部材を取り外す際、カバー部の両外壁面側をユーザーが指で押さえて、カバー部が外壁面側へ撓みにくくなってしまいやすい。本態様によれば、このような構成であっても、指当位置標示部を設けることでスムーズな取り外しが実現できる。
【0091】
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記一方の部材は前記着脱部材(例えばカバー部材8)であり、前記他方の部材は前記本体部材(例えばHMP本体1)であり、前記本体部材は、前記着脱部材の着脱方向に対して直交する断面形状が長尺形状であり、前記2つの外側壁面は、短尺方向に面することを特徴とするものである。
本態様によれば、着脱部材の取り外しの際に撓みが阻害される位置をユーザーが把持しやすい構成であるが、このような構成であっても、指当位置標示部を設けることでスムーズな取り外しが実現できる。
【0092】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記指当位置標示部は、ユーザーの指の滑りを防止する滑り防止手段を備えていることを特徴とするものである。
これによれば、着脱部材を本体部材から取り外すユーザー操作が容易になる。
【0093】
[第10態様]
第10態様は、第1乃至第9態様のいずれかにおいて、前記本体部材に対する前記着脱部材の装着移動中に前記係合部が前記被係合部へ向かうように、該本体部材に対する該着脱部材の移動をガイドするガイド手段(例えばガイド溝36及びガイド突起87)を有することを特徴とするものである。
これによれば、係合部と被係合部の適切な装着を実現できる。
【0094】
[第11態様]
第11態様は、第1乃至10態様のいずれかにおいて、当該物品は、携帯型画像形成装置(例えばHMP10)であることを特徴とするものである。
これによれば、本体部材から着脱部材を取り外す際に、カバー部の外壁面側の部分がユーザーの指で押さえられてしまうことが抑制され、着脱部材を本体部材からスムーズに取り外せなくなる事態の発生を抑制できる携帯型画像形成装置を提供できる。
【符号の説明】
【0095】
1 :HMP本体
2 :上部ユニット
3 :下部ユニット
4 :スペーサー部材
8 :カバー部材
10 :HMP
16 :突起部
30 :記録面
31 :上面
32 :左側面
33 :右側面
34 :背面
35 :正面
36 :ガイド溝
38 :把持形状部
40 :インクジェットヘッド
41 :記録部
80 :底面部
81 :凹部
82 :左壁面部
83 :右壁面部
85 :キャップ部
86 :スライドロック部材
87 :ガイド突起
88 :凹凸形状部
89 :シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【文献】特開平9-131926号公報
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