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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】PD-1ペプチド阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20221107BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20221107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221107BHJP
   C07K 7/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221107BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/87 Z
C12N5/10
C07K7/00
A61K39/39
A61P37/04
A61P31/00
A61P31/04
A61K38/10
A61K38/16
A61P35/00
A61K39/00 H
A61K35/17 Z
A61K48/00
A61P33/06
A61P31/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020544737
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2018020209
(87)【国際公開番号】W WO2019168524
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】15/906,481
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519091317
【氏名又は名称】レイドス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス, ガブリエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】コトライア, ヴィナヤカ
(72)【発明者】
【氏名】パヌッチ, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】アヤラ, ラムセス
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする核酸;
(b)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを含むペプチドキャリアシステム;又は
(c)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを発現するCAR-T細胞
を含む、組成物。
【請求項2】
前記核酸を含み、ここで前記核酸は、DNA、cDNA、PNA、及びRNAからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ペプチドキャリアシステムを含み、ここで前記ペプチドキャリアシステムは、微粒子、ポリマーナノ粒子、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、親水性粘膜付着性ポリマー、チオール化ポリマー、ポリマーマトリクス、ナノエマルジョン、及びヒドロゲルからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする発現構築物。
【請求項5】
列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをコードし、(i)リボース糖の改変、(ii)リン酸結合の改変、及び(iii)塩基の改変からなる群より選択される少なくとも1種の改変を含む、RNA分子。
【請求項6】
前記少なくとも1種の改変は、リボ-ジフルオロトルイルヌクレオチド、4’-チオ改変RNA、ボラノホスフェート結合、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチル(2’-OMe)糖置換、2’-フルオロ(2’-F)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)糖置換、ロックド核酸(LNA)、及びL-RNAからなる群より選択される、請求項に記載のRNA分子。
【請求項7】
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする核酸分子;並びに
(b)薬学的に許容されるキャリア、
を含む医薬組成物。
【請求項8】
前記核酸分子は、RNA分子である、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年2月27日出願の米国特許出願第15/906,481号の優先権を主張する。米国特許出願第15/906,481号は、2017年9月15日出願の米国特許出願第15/705,333号の一部継続出願であり、2016年9月15日出願の米国特許出願第62/395,195号の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、本出願の配列表である2018年2月27日に作成され、「00047900254sequencelisting.txt」と命名された1.38kbのテキストファイルの内容を参照により組み込む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
技術分野
本開示は、概して、免疫調節ペプチドに関する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
過剰増殖性障害の進行を阻害する、感染性疾患を処置する、ワクチン接種に対する応答を増強する、敗血症を処置する、毛の再色素化を促進する、又は色素性皮膚病変の軽減を促進する方法であって、前記方法は、それを必要とする個体に、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド;(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むペプチド;(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むペプチド;及び(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むペプチドからなる群より選択される少なくとも1種のペプチドの有効量を投与することを含み、ここで前記投与は、
(a)前記少なくとも1種のペプチドをコードする核酸の投与;
(b)前記少なくとも1種のペプチドを含むペプチドキャリアシステムの投与;又は
(c)前記少なくとも1種のペプチドを発現するCAR-T細胞の投与、
を含む方法。
(項目2)
前記少なくとも1種のペプチドをコードする前記核酸の投与を含み、ここで前記核酸は、DNA、cDNA、PNA、及びRNAからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記少なくとも1種のペプチドを含む前記ペプチドキャリアシステムの投与を含み、ここで前記ペプチドキャリアシステムは、微粒子、ポリマーナノ粒子、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、親水性粘膜付着性ポリマー、チオール化ポリマー、ポリマーマトリクス、ナノエマルジョン、及びヒドロゲルからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記少なくとも1種のペプチドは、前記過剰増殖性障害の進行を阻害するために投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記過剰増殖性障害はがんである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記がんは黒色腫である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記患者に第2の治療を投与することをさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記第2の治療は、がんワクチンを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記第2の治療は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療を含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記第2の治療は、PD-1、PD-L1、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子(VISTA)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、インドールアミン(2,3)-ジオキシゲナーゼ(IDO)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、A2Aアデノシン受容体(A2AR)からなる群より選択される分子の活性を低減又は阻止することを含む、項目7に記載の方法。
(項目11)
前記第2の治療はサイトカインを含む、項目7に記載の方法。
(項目12)
前記第2の治療は、CD40、OX40、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子関連タンパク質(GITR)、及び誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)からなる群より選択される分子のアゴニストを含む、項目7に記載の方法。
(項目13)
前記第2の治療は、4-1BBアゴニスト、4-1BBアンタゴニスト、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤、及びVEGFRの阻害剤からなる群より選択される治療剤を含む、項目7に記載の方法。
(項目14)
前記少なくとも1種のペプチドは、感染性疾患を処置するために投与される、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記感染性疾患は、マラリア又はB型肝炎である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記少なくとも1種のペプチドは、前記感染性疾患に対するワクチンへのワクチンアジュバントとして投与される、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記少なくとも1種のペプチドは、敗血症を処置するために投与される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記少なくとも1種のペプチドは、毛の再色素化を促進するために又は色素性皮膚病変の軽減を促進するために投与される、項目1に記載の方法。
(項目19)
(i)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド;(ii)配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド;(iii)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド;及び(iv)配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチド、からなる群より選択される最大で4種のペプチドをコードする発現構築物。
(項目20)
(i)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド;(ii)配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド;(iii)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド;及び(iv)配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群より選択される最大で4種のペプチドをコードし、(i)リボース糖の改変、(ii)リン酸結合の改変、及び(iii)塩基の改変からなる群より選択される少なくとも1種の改変を含む、RNA分子。
(項目21)
前記少なくとも1種の改変は、リボ-ジフルオロトルイルヌクレオチド、4’-チオ改変RNA、ボラノホスフェート結合、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチル(2’-OMe)糖置換、2’-フルオロ(2’-F)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)糖置換、ロックド核酸(LNA)、及びL-RNAからなる群より選択される、項目20に記載のRNA分子。
(項目22)
(a)(i)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド;(ii)配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド;(iii)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド;及び(iv)配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群より選択される最大で4種のペプチドをコードする核酸分子;並びに
(b)薬学的に許容されるキャリア、
を含む医薬組成物。
(項目23)
前記核酸分子は、RNA分子である、項目22に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】Jurkat細胞に対する抗ヒトPD-1抗体の飽和可能な結合を示すグラフ。
【0005】
図2】Jurkat細胞へのPD-L1 Fcの飽和可能な結合を示すグラフ。
【0006】
図3A】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドQP20の効果を示すグラフ。図3A、MFI;図3B、正規化された平均蛍光強度(MFI)。
図3B】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドQP20の効果を示すグラフ。図3A、MFI;図3B、正規化された平均蛍光強度(MFI)。
【0007】
図4A】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドHD20の効果を示すグラフ。図4A、MFI;図4B、正規化されたMFI。
図4B】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドHD20の効果を示すグラフ。図4A、MFI;図4B、正規化されたMFI。
【0008】
図5A】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドWQ20の効果を示すグラフ。図5A、MFI;図5B、正規化されたMFI。
図5B】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドWQ20の効果を示すグラフ。図5A、MFI;図5B、正規化されたMFI。
【0009】
図6A】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドSQ20の効果を示すグラフ。図6A、MFI;図6B、正規化されたMFI。
図6B】PD-1とPD-L1の結合に対するペプチドSQ20の効果を示すグラフ。図6A、MFI;図6B、正規化されたMFI。
【0010】
図7A】IL-2、NFAT、及びNF-κB応答エレメントを含有するプロモーターの制御下にあるルシフェラーゼレポーターのPD-1媒介性抑制の阻害をもたらすPD-1発現Jurkat T細胞とPD-L1発現CHO細胞間の相互作用に対する抗ヒトPD-1抗体の効果を示すグラフ。
【0011】
図7B】PD-1発現Jurkat T細胞とPD-L1発現CHO細胞間の相互作用に対する抗ヒトPD-1抗体の効果を示すグラフ(図7Aのデータは倍数阻害として表されている)。
【0012】
図8A】PD-1ペプチド阻害剤が、ルシフェラーゼレポーター発現の増加をもたらす、PD-1発現Jurkat T細胞とPD-L1発現CHO細胞間の相互作用を用量依存的に阻害することを示すグラフ。
【0013】
図8B】PD-1発現Jurkat T細胞とPD-L1発現CHO細胞間の相互作用に対する抗ヒトPD-1抗体の効果を示すグラフ(図8Bのデータは倍数阻害として表されている)。
【0014】
図9】ペプチドQP20、HD20、WQ20、SQ20、又はCQ-22との培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおける末梢血単核細胞(PBMC)によるIL-2産生を示すグラフ。
【0015】
図10】ペプチドQP20、HD20、WQ20、SQ20、又はCQ-22との培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-4産生を示すグラフ。
【0016】
図11】ペプチドQP20、HD20、WQ20、SQ20、又はCQ-22との培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-6産生を示すグラフ。
【0017】
図12】ペプチドQP20、HD20、WQ20、SQ20、又はCQ-22との培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-10産生を示すグラフ。
【0018】
図13】ペプチドQP20、HD20、WQ20、SQ20、又はCQ-22との培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-17a産生を示すグラフ。
【0019】
図14】ペプチドQP20、HD20、WQ20、SQ20、又はCQ-22との培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIFNγ産生を示すグラフ。
【0020】
図15】ペプチドQP20、HD20、WQ20、SQ20、又はCQ-22との培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるTNFα産生を示すグラフ。
【0021】
図16】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の様々な組み合わせとの培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-2産生を示すグラフ。
【0022】
図17】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の様々な組み合わせとの培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-4産生を示すグラフ。
【0023】
図18】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の様々な組み合わせとの培養後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-6産生を示すグラフ。
【0024】
図19】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の様々な組み合わせでの刺激後の、破傷風トキソイドリコールアッセイにおけるPBMCによるIL-10産生を示すグラフ。
【0025】
図20】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の様々な組み合わせでの刺激後のPBMCによるIL-17a産生を示すグラフ。
【0026】
図21】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の様々な組み合わせとの培養後のPBMCによるIFNγ産生を示すグラフ。
【0027】
図22】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の様々な組み合わせとの培養後のPBMCによるTNFα産生を示すグラフ。
【0028】
図23A】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20、又はCQ-22との培養後のドナーAからのPBMCによるIL-2産生を示すグラフ。
【0029】
図23B】ペプチドQP20、HD20、WQ20、又はSQ20及びこれらのペプチドの組み合わせとの培養後のドナーBからのPBMCによるIL-2産生を示すグラフ。
【0030】
図24A】ペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20、又はCQ-22との培養後のドナーAからのPBMCによるIL-17a産生を示すグラフ。
【0031】
図24B】ペプチドQP20、HD20、WQ20、又はSQ20及びこれらのペプチドの組み合わせとの培養後のドナーBからのPBMCによるIL-17a産生を示すグラフ。
【0032】
図25】B16-F10-LacZの腫瘍細胞を有し、ペプチドの組み合わせで処置したマウスにおける表面転移の数を示すグラフ。
【0033】
図26】実施例8で試験した各コホートの0.5×10個の脾細胞当たりのプラスモジウム・ヨエリのスポロゾイト周囲タンパク質(PyCS)特異的IFNγ分泌CD8 T細胞の平均数±標準偏差を示すグラフ。
【0034】
図27】感染後2及び3週目に、血清HBsAg(B型肝炎表面抗原)の平均レベルに対するQP20、HD20、WQ20、及びSQ20ペプチドの組み合わせの効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本開示は、4つのペプチド:
【表A】
を提供する。
【0036】
これらのペプチドは、太字で上記に示されているHH_のコア配列を共有し、チェックポイント受容体「プログラム死1」(PD-1)に対して強い親和性を有する。これらのペプチドは、PD-1とそのリガンドPD-L1との相互作用を阻止し、したがって、癌を含む、過剰増殖性障害の進行を阻害するため、又は個体の免疫応答を増強、刺激、及び/若しくは増加させることによってHIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、及び熱帯熱マラリア原虫などの病原体による持続性感染症を含む、感染性疾患を治療するために使用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、開示されるペプチドのうちのいずれかは、化学的方法又は組換え方法を使用して、安定性又は他の薬物動態特性を増強するために改変され得る。例えば、US 2017/0020956を参照のこと。改変としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1又はこれより多くのL-アミノ酸をその対応するD-形態で置き換えること、C末端残基及び/又はN末端残基上でのアセチル化、C末端残基及び/又はN末端残基上でのアミド化、環化、エステル化、グリコシル化、アシル化、ミリスチン酸又はパルミチン酸の結合、N末端グリシンの付加、親油性部分(例えば、長鎖脂肪酸)の付加、並びにPEG化。
【0038】
いくつかの実施形態において、開示されるペプチドのうちの1又はこれより多くは、様々な部分(例えば、アルブミン及びトランスサイレチン)にコンジュゲートして、そのペプチド(複数可)の血漿半減期を高めることができる。そのようなコンジュゲートを調製する方法は当技術分野において周知である(例えば、Penchala et al., 2015; Kontermann, 2016; Zorzi et al., 2017)。
【0039】
いくつかの実施形態において、開示されるペプチドのうちのいずれかは、パートナー分子(例えば、インビボでその半減期を増大させる及び/又は標的組織もしくは細胞への特異的送達を提供することが意図された抗体のようなペプチド又はタンパク質)にコンジュゲートされ得る。コンジュゲーションは、直接であってもよいし、リンカーを介することもできる。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、そのペプチドは、1又はこれより多くのアミノ酸を、パートナー分子に結合するために使用されるアミノ酸(例えば、リジン)で置換するために、又は例えば、1個、2個、3個、もしくは4個のグリシンスペーサー分子でのそのペプチドのN末端伸長によって、改変され得る。
【0040】
ペプチド、又は上記で記載されるとおりのそのペプチドの改変バージョンは、当該分野で公知の任意の方法(合成方法、組換え方法、又は両方)によって作製され得る。合成方法としては、固相及び液相方法が挙げられ、保護基の使用を含み得る。例えば、Bodanszky et al. (1976)、McOmie (1973)、Merrifield (1963)、Neurath et al. (1976)、Stuart & Young (1984)を参照のこと。
【0041】
ペプチドの組換え生成は、任意の適切な発現系においてそのペプチドをコードする任意のヌクレオチド配列(複数可)を使用して行われ得る。開示されるペプチドのうちの1又はこれより多くをコードする核酸分子は、そのコード配列に作動可能に連結される制御エレメントを含む発現カセットへと組み込まれ得る。制御エレメントとしては、イニシエーター、プロモーター(誘導性、抑制性、及び構成性のプロモーターが挙げられる)、エンハンサー、及びポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。シグナル配列を含むことができる。その発現カセットは、そのペプチド(複数可)の生成のために適切な宿主細胞へと導入され得るベクターの中で提供することができる。発現カセット及び発現ベクターを構築する方法は、周知である。発現ベクターは、以下の段落において記載される発現カセットのうちの1又はこれより多くを含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号1のアミノ酸配列から本質的になるペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする。
【0043】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号2のアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号2のアミノ酸配列から本質的になるペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする。
【0044】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号3のアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする。
【0045】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号4のアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号4のアミノ酸配列から本質的になるペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする。
【0046】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、開示されるペプチドのうちの2つのみ;例えば、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号2のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;(b)配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;(c)配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;(d)配列番号2のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;(e)配列番号2のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;あるいは(f)配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、をコードする。
【0047】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、開示されるペプチドのうちの3つのみ;例えば、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;(b)配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;(c)配列番号2のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド;あるいは(d)配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、をコードする。
【0048】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、開示されるペプチドのうちの4つ全て;すなわち、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチド、及び配列番号4のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるペプチドをコードする。
【0049】
治療的使用
開示されるペプチドは、多くの治療適用を有し、様々な目的でヒト及び獣医学的被験体の両方に投与することができる。「投与する」は、本明細書で使用される場合、以下で記載されるように、開示されるペプチド又はその改変バージョンの直接的投与、及び間接的投与(例えば、そのペプチド又はそのペプチドの改変バージョンをコードする核酸分子を使用)を含む。いくつかの実施形態において、投与は、1又はこれより多くの他の治療部分とともに行われる。「とともに(in conjunction with)」は、その1又はこれより多くの他の治療部分の投与と一緒の、その前の、又はその後の投与を含む。
【0050】
がんを含む過剰増殖性障害の処置
いくつかの実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、過剰増殖性障害(例えば、がん)の進行を阻害するために投与することができる。かかる阻害は、例えば、新生物又は前新生物(pre-neoplastic)細胞の増殖を低減すること、新生物又は前新生物細胞を破壊すること;及び転移を阻害すること又は腫瘍のサイズを減少させることを含むことができる。
【0051】
開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くを使用して処置することができるがんの例としては、黒色腫、リンパ腫、肉腫、及び結腸のがん、腎臓のがん、胃のがん、膀胱のがん、脳のがん(例えば、神経膠腫、神経膠芽腫、星細胞腫、髄芽腫)、前立腺のがん、膀胱のがん、直腸のがん、食道のがん、膵臓のがん、肝臓のがん、肺のがん、乳房のがん、子宮のがん、子宮頸部のがん、卵巣のがん、血液のがん(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、EBV-誘発性B細胞リンパ腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
併用がん治療
いくつかの実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、1もしくはこれより多くの治療又は免疫療法(例えば、以下で記載されるもの)とともに投与することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、PD-1の活性を低減又は阻止する第2の薬剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、デュルバルマブ)を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、PD-L1の活性を低減又は阻止する薬剤(例えば、アテゾリズマブ)を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、他の阻害性チェックポイント分子及び/又は免疫系を抑制する分子の活性を低減又は阻止する薬剤を含む。これらの分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
1. リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3; He et al., 2016; Triebel et al., 1990を参照のこと);
2. 細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4);
3. T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子(VISTA(c10orf54、PD-1H、DD1α、Gi24、Dies1、及びSISP1としても公知));US 2017/0334990、US 2017/0112929、Gao et al., 2017、Wang et al., 2011; Liu et al., 2015を参照のこと);
4. T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3;US 2017/0198041、US 2017/0029485、US 2014/0348842、Sakuishi et al., 2010を参照のこと);
5. キラー免疫グロブリン様受容体(KIR; US 2015/0290316を参照のこと);
6. インドールアミン(2,3)-ジオキシゲナーゼ(IDO; Mellemgaard et al., 2017を参照のこと)を阻害する作用物質;
7. B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA; US 2016/09222114を参照のこと);及び
8. A2Aアデノシン受容体(A2AR; Beavis et al., 2015; US 2013/0267515; US 2017/0166878; Leone et al., 2015; Mediavilla-Varela et al., 2017; Young et al., 2016を参照のこと)。
【0056】
LAG-3の活性を低減又は阻止する薬剤としては、BMS-986016、IMP321、及びGSK2831781(He et al., 2016)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
CTLA-4の活性を低減又は阻止する薬剤としては、イピリムマブ及びトレメリムマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
VISTAの活性を低減又は阻止する薬剤としては、低分子(例えば、CA-170)、及び抗体(例えば、Le Mercier et al., 2014)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
TIM-3の活性を低減又は阻止する薬剤としては、抗体(例えば、MBG453及びTSR-022;Dempke et al., 2017を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
KIRの活性を低減又は阻止する薬剤としては、モノクローナル抗体(例えば、IPH2101及びリリルマブ(BMS-986015(以前のIPH2102))が挙げられるが、これらに限定されない;Benson & Caligiuri, 2014を参照のこと。
【0061】
IDOの活性を低減又は阻止する薬剤としては、エパカドスタット及びUS 2017/0037125で開示される薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
BTLAの活性を低減又は阻止する薬剤としては、ペプチド(例えば、Spodzieja et al., 2017)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
A2ARの活性を低減又は阻止する薬剤としては、CPI-444及びビパデナントのような低分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、サイトカイン(例えば、インターロイキン7)を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、刺激性チェックポイント分子のアゴニストを含む。これらの分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
1. CD40;
2. OX40;
3. グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子関連タンパク質(GITR);及び
4. 誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)。
【0066】
CD40のアゴニストとしては、CD40アゴニストモノクローナル抗体(例えば、cp-870,893、ChiLob7/4、ダセツズマブ、及びルカツムマブが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Vonderheide et al., 2007; Khubchandani et al., 2009; Johnson et al., 2010; Bensinger et al., 2012; Vonderheide and Glennie, 2013; Johnson et al., 2015を参照のこと。
【0067】
OX40のアゴニストとしては、OX40アゴニスト抗体(例えば、MOXR0916、MED16469、MED10562、PF-045618600、GSK3174998、及びINCCAGN01949)、及びOX40L-Fc融合タンパク質(例えば、MEDI6383)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Huseni et al., 2014; Linch et al., 2015; Messenheimer et al., 2017を参照のこと。Shrimali et al., 2017もまた参照のこと。
【0068】
GITRのアゴニストとしては、MEDI1873が挙げられるが、これに限定されない。例えば、Schaer et al., 2012; Tigue et al., 2017を参照のこと。
【0069】
ICOSのアゴニストとしては、ICOSアゴニスト抗体JTX-2011及びGSK3359609が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Harvey et al., 2015; Michaelson et al., 2016を参照のこと。
【0070】
他の実施形態において、その第2の治療は、ウレルマブのような4-1BBアゴニスト(Shindo et al., 2015);4-1BBアンタゴニスト(US 2017/0174773を参照のこと);クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、PF-06463922、NVP-TAE684、AP26113、TSR-011、X-396、CEP-37440、RXDX-101のような、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK; Wang et al., 2014; US 2017/0274074)の阻害剤;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC;US 2017/0327582を参照のこと)の阻害剤;アキシチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、チボザニブ、ベバシズマブのようなVEGFR阻害剤;並びに/又はバルリルマブのような抗CD27抗体を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、がんワクチン(例えば、Duraiswamy et al., 2013)を含む。「がんワクチン」は、がんワクチンが投与される個体における特定の抗原に対する免疫応答を誘導することが意図される免疫原性組成物である。がんワクチンは、典型的には、腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導又は刺激することができる腫瘍抗原を含有する。「腫瘍抗原」は、標的腫瘍の表面上に存在する抗原である。腫瘍抗原は、非腫瘍細胞が発現しない分子であり得るか、又は例えば、非腫瘍細胞が発現する分子の改変バージョン(例えば、ミスフォールドされるか、切断されるか、又はそうでなければ変異したタンパク質)であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療を含む。例えば、John et al., 2013; Chong et al., 2016を参照のこと。
【0073】
さらなる治療的使用
いくつかの実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、例えば、ウイルス、真菌、細菌、及び原生動物、並びに蠕虫によって引き起こされる慢性感染症を含む感染性疾患を処置するために投与することができる。
【0074】
ウイルス病原体の例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV1及びHSV2を含むHSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、並びにA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、及びC型肝炎ウイルスが挙げられる。
【0075】
真菌病原体の例としては、アスペルギルス、カンジダ、コクシジオイデス、クリプトコッカス、及びヒストプラスマカプスラーツム(Histoplasma capsulatum)が挙げられる。
【0076】
細菌病原体の例としては、連鎖球菌細菌(例えば、化膿連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ、肺炎連鎖球菌)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、及びマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)が挙げられる。
【0077】
原生動物の例としては、肉質虫(例えば、エントアメーバ)、鞭毛虫(例えば、ジアルジア)、繊毛虫(例えば、バランチジウム)、及び胞子虫(例えば、熱帯熱マラリア原虫、クリプトスポリジウム)が挙げられる。
【0078】
蠕虫の例としては、扁形動物(Platyhelminths)(例えば、吸虫、条虫)、鉤頭動物(Acanthocephalins)、及び線虫が挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、(例えば、エフェクターT細胞を増加させること及び/又はT細胞の消耗を低減することにより)ワクチン接種に対する応答を高めるためにワクチンとともに、ワクチンアジュバントとして投与することができる。そのワクチンは、例えば、RNAワクチン(例えば、US 2016/0130345、US 2017/0182150)、DNAワクチン、組換えベクター、タンパク質ワクチン、又はペプチドワクチンであり得る。当技術分野で周知のように、かかるワクチンは、例えば、ウイルス様粒子を用いて送達することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、敗血症を処置するために投与することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、毛の色の再色素化を促進するために投与することができる。いくつかの実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、色素性皮膚病変の軽減を促進するために投与することができる。
【0082】
ペプチドの投与
いくつかの実施形態において、開示されるペプチド自体又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ペプチドキャリアシステムが使用される。多くのペプチドキャリアシステムは、当該分野で公知であり、微粒子、ポリマーナノ粒子、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、親水性粘膜付着性ポリマー、チオール化ポリマー、ポリマーマトリクス、ナノエマルジョン、及びヒドロゲルが挙げられる。Patel et al. (2014), Bruno et al. (2013), Feridooni et al. (2016)を参照のこと。任意の適切なシステムを使用することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、ペプチド又はタンパク質を発現及び分泌する、操作されたT細胞ベースの治療が、T細胞受容体と抗原との結合の部位においてPD-1阻害を送達するために使用することができる。そのT細胞ベースの治療は、例えば、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くを発現するCAR-T細胞であり得る。誘導性又は構成性いずれかの発現を使用することができる。
【0084】
他の実施形態において、開示されるペプチド又はその改変バージョンのうちの1又はこれより多くは、そのペプチド(複数可)をコードする1又はこれより多くの核酸(例えば、DNA、cDNA、PNA、RNA又はこれらの組み合わせ)を使用して送達される;例えば、US 2017/0165335を参照のこと。1又はこれより多くのペプチドをコードする核酸は、当該分野で公知の様々な送達システムを使用して送達することができる。核酸送達システムとしては、遺伝子銃;カチオン性脂質及びカチオン性ポリマー;リポソーム、微粒子、又はマイクロカプセル中への被包;エレクトロポレーション;ウイルスベースの、及び細菌ベースの送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベースのシステムとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、又は1もしくはこれより多くのウイルスのエレメントを含むハイブリッドウイルスのような改変されたウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。US 2002/0111323は、ペプチドを投与するために、「裸のDNA」、すなわち、「トランスフェクションを促進するタンパク質、ウイルス粒子、リポソーム製剤、荷電した脂質及びリン酸カルシウム沈殿剤」を含まない「非感染性、非免疫原性、非標的化DNA配列」の使用を記載する。細菌ベースの送達システムは、例えば、Van Dessel et al. (2015)及びYang et al. (2007)に開示されている。
【0085】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、そのペプチドをコードするRNA分子を介して投与される。いくつかの実施形態において、そのRNA分子は、ナノ粒子に被包される。いくつかの実施形態において、そのナノ粒子は、カチオン性ポリマー(例えば、ポリ-L-リジン、ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、キトサン、ポリ(β-アミノエステル))を含む。いくつかの実施形態において、そのナノ粒子は、カチオン性脂質又はイオン化可能な脂質を含む。いくつかの実施形態において、そのRNA分子は、生体活性リガンド(例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、コレステロール、ビタミンE、抗体、細胞透過性ペプチド)にコンジュゲートされる。例えば、Akinc et al. (2008), Akinc et al. (2009), Anderson et al. (2003), Behr (1997), Boussif et al. (1995), Chen et al. (2012), Dahlman et al. (2014), Desigaux et al. (2007), Dong et al. (2014), Dosta et al. (2015), Fenton et al. (2016), Guo et al. (2012), Howard et al. (2006), Kaczmarek et al. (2016), Kanasty et al. (2013), Kauffman et al. (2015), Kozielski et al. (2013), Leus et al. (2014), Lorenz et al. (2004), Love et al. (2010), Lynn & Langer (2000), Moschos et al. (2007), Nair et al. (2014), Nishina et al. (2008), Pack et al. (2005), Rehman et al. (2013), Schroeder et al. (2010), Tsutsumi et al. (2007), Tzeng et al. (2012), Won et al. (2009), Xia et al. (2009), Yu et al. (2016)を参照のこと。
【0086】
いくつかの実施形態において、RNA分子は、免疫系が分解又は認識するその機会を低減するように改変される。リボース糖、リン酸結合、及び/又は個々の塩基が改変され得る。例えば、Behlke (2008), Bramsen (2009), Chiu (2003), Judge & MacLachlan (2008), Kauffman (2016), Li (2016), Morrissey (2005), Prakash (2005), Pratt & MacRae (2009), Sahin (2014), Soutschek (2004), Wittrup & Lieberman (2015)を参照のこと。いくつかの実施形態において、その改変は、リボ-ジフルオロトルイルヌクレオチド、4’-チオ改変RNA、ボラノホスフェート結合、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチル(2’-OMe)糖置換、2’-フルオロ(2’-F)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)糖置換、ロックド核酸(LNA)、及びL-RNAのうちの1又はこれより多くのものである。
【0087】
投与経路、医薬組成物、及びデバイス
上記の段落で記載される活性薬剤のうちのいずれかの有効量を含む医薬組成物は、薬学的に許容されるビヒクルを含む。その「薬学的に許容されるビヒクル」は、その活性薬剤(複数可)の生物学的活性に影響しない1種又はこれより多くの物質を含んでよく、患者に投与された場合、有害反応を引き起こさない。医薬組成物は、液体であってもよく、又は凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥組成物は、組成物の再構成に使用するのに適する液体、典型的には、注射用水(WFI)と共にキットに提供され得る。医薬組成物の他の適切な形態としては、懸濁剤、エマルジョン、及び錠剤が挙げられる。
【0088】
投与経路としては、注射又は注入(例えば、硬膜外、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下)、経皮(例えば、US 2017/0281672)、粘膜(例えば、鼻内又は口腔)、肺、及び局所(例えば、US 2017/0274010)投与が挙げられる。例えば、US 2017/0101474を参照のこと。
【0089】
投与は、全身又は局所であり得る。局所注入及び注射に加えて、移植物は、局所投与を達成するために使用することができる。適切な材料の例としては、シラスティック膜(sialastic membrane)、ポリマー、線維性マトリクス、及びコラーゲンマトリクスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
局所投与は、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、経皮パッチ(例えば、マイクロニードルパッチ)、又は当該分野で周知の他の適切な形態によるものであり得る。
【0091】
投与はまた、制御された放出によるもの、例えば、マイクロニードルパッチ、ポンプ及び/又は適切なポリマー材料を使用するものであり得る。適切な材料の例としては、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
上記で記載される活性薬剤のうちのいずれかを含むデバイスとしては、シリンジ、ポンプ、経皮パッチ、スプレーデバイス、膣リング、及びペッサリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例
【0093】
実施例1.ペプチドライブラリーのスクリーニング
TriCo-20(商標)(TRICO-20(商標))及びTriCo-16(商標)(TRICO-16(商標))ファージディスプレイペプチドライブラリー(Creative Biolabs,45-1 Ramsey Road,Shirley,NY 11967)を、可溶性組換えヒトPD-1受容体の結合体を特定するためにスクリーニングした。パニングの第4ラウンド後、特異的結合体についての明白な濃縮が観察され、個々のペプチドは、クローンファージELISAにおいて弱い特異的結合体として確認された。パニングの第5ラウンドにより、さらに濃縮した。表1に、クローンファージELISAにおいて強い特異的結合を示した4つのペプチドを記載する。
【表1】
【0094】
実施例2.競合PD-1:PD-L1結合阻害アッセイ
簡単に説明すると、Jurkat細胞上の細胞表面PD-1の検出は、ヒトPD-L1-Fc融合タンパク質と細胞をインキュベートし、その後、蛍光標識抗ヒトFc抗体での組換え分子の検出によって達成した。フローサイトメトリーを、PD-1とPD-L1組換えタンパク質との間の結合を検出するために行った。次いで、定量的な結合測定値を、平均蛍光強度(MFI)によって決定した。
【0095】
図1及び図2に示すように、PD1のJurkat細胞表面発現及びこれらの細胞へのPD-L1の結合を確認した。その結果を図3A~B、図4A~B、図5A~B、及び図6A~Bに示す。
【0096】
実施例3.細胞ベースのレポーターアッセイ
細胞ベースのレポーターアッセイを用いて、上記で特定した4つのペプチドの結合が、PD-1とそのリガンドPD-L1との相互作用を阻止するのに十分であったかどうかを評価した。該アッセイの成分には、該アッセイにおいて測定可能な効果をもたらすヒトPD-1及びルシフェラーゼレポーターを安定に発現するJurkat T細胞株、ヒトPD-L1を安定に発現したCHO細胞株、及びPD-1とPD-L1の相互作用を阻止する陽性対照抗PD-1抗体が含まれる。Jurkat T細胞株におけるルシフェラーゼレポーターは、プロモーター領域におけるIL-1、NFAT、又はNF-κB応答エレメントによって誘発される。Jurkat T細胞をCD3で前処理し、該アッセイで使用するためにすぐに凍結保存する。Jurkat T細胞とPD-L1発現細胞株との相互作用は、ルシフェラーゼ構築物が活性化される細胞内メカニズムを阻害し、それによってルシフェラーゼ発現を防止する。Jurkat T細胞上のPD-1又はCHO細胞上のPD-L1のいずれかに結合してそれらの相互作用を十分に防止する分子は、Jurkat T細胞がルシフェラーゼを産生するのを可能にする。CellTiter-Glo(登録商標)(CELLTITER-GLO(登録商標)、Promega)を用いて、ルシフェラーゼ発現を測定した。
【0097】
抗PD-1対照抗体を用いた陽性対照アッセイの結果を、図7A~Bに示す。これらの結果は、対照抗体が、20μΜの抗体濃度で約8のピーク倍数阻害を有して、用量依存的にルシフェラーゼ発現を回復することを実証する。
【0098】
上記で特定されたペプチドのアッセイの結果を図8A~Bに示す。これらの結果は、4つのペプチドの各々が、約25μΜの濃度で約1.5のピーク倍数阻害を有して、用量依存的にルシフェラーゼ発現を回復することを実証する。
【0099】
実施例4.個々のペプチドを用いた破傷風トキソイドリコールアッセイ
ペプチド1~4を、ヒトPBMCベース破傷風抗原リコールアッセイで試験した。「ペプチドCQ-22」を、陰性対照として使用した。
【0100】
PBMCを、ヒトのドナーの血漿から取得して、破傷風トキソイドのリコールについてインビトロで試験した。必要になるまで適切なPBMCを凍結保存し、次いで、解凍し、96ウェルプレートで培養した。破傷風トキソイドをペプチド1~4の存在下又は非存在下で培養物に添加し、サイトカインの産生及び細胞表面T細胞活性化マーカーを調べた。
【0101】
これらのアッセイの結果を図9~15に示し、表2に定性的にまとめる。表中の「x」は、全く効果がないことを示し、「-」は可能性のある低効果を示し、「+」はある程度の効果を示し、「++」は明確な効果を示す。
【表2】
【0102】
結果は、最高濃度のペプチドで、IL-6、IL-17α、IFNγ、及びTNFα産生の適度な増強に向かう傾向を実証した。IL-2産生の有意な増強は検出されなかった。
【0103】
実施例5.ペプチドの組み合わせを用いた破傷風トキソイドリコールアッセイ
ペプチドの組み合わせを、異なるPBMCドナー及び破傷風トキソイドの異なるロット番号を用いて、上記の抗原リコールアッセイで試験した。結果を図16、17、18、19、20、21、及び22に示す。これらの結果は、4つのペプチドQP20、HD20、WQ20、及びSQ20の4つのペプチド組み合わせの組み合わせがIL-2産生の増加及びIL-17a産生の減少をもたらすことを実証した。
【0104】
図23A~B及び図24A~Bに示すように、IL-2及びIL-17aの産生に対するペプチドQP20、HD20、WQ20、及びQP20の効果は、ドナー特異的であると考えられる。
【0105】
実施例6.BIACORE(登録商標)アッセイ
BIACORE(登録商標)アッセイを、25℃でBIACORE(登録商標)T-200を用いて行った。該アッセイ及び再生緩衝液は、10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.05%のP20を含有していた。固定化緩衝液は、10mMの酢酸ナトリウム、pH5.0であった。リガンドを固定化するために使用した流速は、5μl/分であった。動態分析のための流速は、30μl/分であった。
【0106】
スカウティング
ヒトPD-1受容体の12,000応答単位(RU)及びマウスPD-1受容体の6000 RUを、アミンカップリング法(EDC/NHS)によってCM5チップのフローセル2及びフローセル4上に直接固定化した。非占有部位を、1Mのエタノールアミンでブロックした。スカウティングを、結合の有無を確認するために、25μΜの単一検体濃度で行った。フローセル1をブランクとして保持し、基準減算(reference subtraction)に使用した。リガンドへの検体の結合をリアルタイムで監視した。
【0107】
完全な動態
スカウティングの結果に基づいて、新しいチップへより高いRUのリガンドを固定し、25μΜの検体濃度とそれに続いて12.5、6.25、3.125、1.562、0.78及び0μΜ濃度に連続希釈して、又は示されるように完全な動態を行った。速いオン速度及びオフ速度により、定常状態の平衡動態によってKDを決定した。
【0108】
カイ二乗(χ2)分析を、実際のセンサーグラム及びBIANALYSIS(登録商標)ソフトウェア(黒線)から生成されたセンサーグラムの間で行い、分析の精度を決定した。1~2内のχ2値は有意(正確)とみなされ、1を下回るχ2値は非常に有意(高精度)である。結果を表3にまとめる。
【表3】
【0109】
これらの結果は、4つのペプチドの各々がヒトPD-1とマウスPD-1の両方に結合することを示している。QP20及びSQ20は、マウスPD-1に対して最も高い親和性を示した。HD20及びSQ20は、ヒトPD-1に対して最も高い親和性を示した。
【0110】
実施例7.実験的転移モデル
ペプチドの有効性を、B16-F10-LacZ実験的転移モデルで評価した。このモデルにおいて、細胞内酵素のβガラクトシドをコードするLacZ遺伝子を発現するようにトランスフェクトされたB16-F10-LacZ細胞を、同系マウスの尾静脈に注射する。細胞は、循環を通って移動し、肺に定着し、腫瘍を形成する。マウスを移植後2週間で屠殺する。酵素がその基質X-galを切断する場合、生成物は二量体化し、色を変え、エクスビボで検出することができる。その後、肺の表面上の転移性腫瘍の数を、解剖顕微鏡下で腫瘍の手動計数によって定量する。
【0111】
簡単に説明すると、研究0日目に、マウス(N=7)に、尾静脈への静脈内注射によってB16-F10-LacZ腫瘍細胞(マウス当たり5×10又は1×10個の細胞)を移植した。研究2、5、7、9及び12日目に、尾静脈注射によってマウスの静脈内にペプチド組み合わせ(用量あたり200μg、20μg、又は2μgの各ペプチド)を投与した。臨床試験の詳細及び体重を治療中に定期的に記録した。マウスを研究14日目に屠殺し、その肺を摘出し、染色した。腫瘍転移数を数えた。処置群を表4に記載する。
【表4】
結果を図25に示す。マウスに両方の細胞濃度で移植したときに、良好な用量応答が観察された。最高用量(200μg)のペプチド混合物で処置したマウスは最も少ない腫瘍(平均97)を有し、最低用量(2μg)のペプチド混合物で処置したマウスは最も多くの腫瘍(平均205)を有していた。同様に、高い腫瘍数を移植した2つの群において、未処置群は有意により多くの腫瘍を有していた。これは、組み合わせた4つのペプチドがインビボでのB16-F10-LacZ腫瘍増殖に対して用量依存的効果を示したことを示す。さらに、該ペプチド組み合わせは、マウスに十分に許容され、動物の健康にいかなる急性の悪影響も及ぼさなかった。
【0112】
実施例8.マラリアワクチンの免疫原性に対するペプチド組み合わせの効果
予防ワクチンアジュバントとしてのペプチド組み合わせの免疫原性を、マラリアのマウスモデルで評価した。プラスモジウム・ヨエリのスポロゾイト周囲タンパク質(AdPyCS)を発現するアデノウイルスに基づくマラリアワクチンで免疫したBalb/cマウスに、200μgのペプチド組み合わせ、抗PD-1mAb、抗PDL1 mAb、又は陰性対照ペプチドオボアルブミン(OVA)を、AdPyCSによる免疫付与後1、3、5、及び7日目に与えた(表5)。追加のアジュバントをAdPyCS抗原に添加しなかったことに留意されたい。免疫付与の12日後に脾臓を回収し、脾臓PyCS特異的IFNγ分泌CD8T細胞数を、ELISpotアッセイによって決定した。ELISpotアッセイのために、脾細胞をPyCSのH-2Kd制限CD8T細胞エピトープであるSYVPSAEQIペプチド(配列番号5)で刺激したことに留意されたい。
【表5】
【0113】
図26は、各コホートについて0.5×10個の脾細胞当たりのCSP特異的IFNγ分泌CD8T細胞の平均数±標準偏差を示す。AdPyCS単独(コホート1)及びペプチド組み合わせ(コホート3)、抗PD-1抗体(コホート4)又は抗PD-L1抗体(コホート5)の間の有意差を、一元配置ANOVA検定を用いて検出した(***p<0.001、及びp<0.05)。これらの結果は、該ペプチド組み合わせ(コホート3)がインビボで機能的に活性があり、AdPyCS単独(コホート1)に対してCSP特異的IFNγ分泌CD8T細胞の数を約1.6倍増加させ、抗PD-1又は抗PD-L1抗体(コホート4及び5)での変化と類似していたことを実証する。
【0114】
実施例9.敗血症のモデルにおける生存に対するペプチド組み合わせの効果
敗血症はT細胞機能及び生存を負に変化させ得るが、これは、PD-1:PDL1相互作用が阻止された場合に逆になり得、生存率が改善される。したがって、CD1マウスを盲腸結紮及び穿刺(CLP)に供して、腹腔内腹膜炎を誘導した敗血症の代表的な、臨床的に関連するモデルでペプチド組み合わせの有効性を評価した。この研究のために、ペプチド組み合わせ又は抗PD-1抗体のいずれか200μgを、手術の2、24、48、72及び96時間後に静脈内投与した。ビヒクル対照群も含めた。各群には6匹のマウスがいた。全てのマウスを、罹患率及び死亡率の兆候について毎日2回チェックした。該ペプチド組み合わせの投与により、該ペプチド組み合わせが2倍高い生存率を示し、ビヒクル対照群を上回って延命効果が増強された(表6)。さらに、該ペプチド組み合わせの群における生存率は、抗PD-1抗体での処置をわずかに上回った。
【表6】
【0115】
実施例10.HBV感染マウスにおける血清HBsAgレベルに対するペプチド組み合わせの効果
T細胞の消耗及び免疫寛容におけるPD-1の役割が実証されているB型肝炎ウイルス(HBV)マウスモデルでQP20、HD20、WQ20、及びSQ20ペプチドの組み合わせを評価した(Tzeng et al.,2012;Ye et al.,2015)。PD-1は、持続的HBV感染を有するマウスの肝臓T細胞において上昇しているが、感染をクリアした動物では上昇しない。このモデルにおいて、PD-1/PD-L1の相互作用の抗PD-1mAbによる阻害により、肝臓T細胞による抗原特異的IFNγ産生を増加させ、HBVの持続性を逆転することの両方が示された(Tzeng et al.,2012)。持続的HBVのこのマウスモデルは、QP20、HD20、WQ20、及びSQ20ペプチド組み合わせが、インビボでのT細胞消耗を無くし、ウイルス感染を制御する際に免疫系を助けることができるかどうかを試験する機会を提供した。
【0116】
HBV感染マウスを、感染2日前、及び感染後1、3、6、9、12、14、17及び20日目の9時点で、生理食塩水(陰性対照)、200μgのQP20、HD20、WQ20、及びSQ20ペプチド組み合わせ、又は200μgの抗PD-1 mAbで処置した。血清HB表面抗原(HBsAg)のレベルを、感染後7、14、及び21日目にELISAにより監視し(血清HBsAgのより高いレベルは、より高いウイルス力価を反映している)、QP20、HD20、WQ20、及びSQ20ペプチドの組み合わせの免疫増強活性を検出した。QP20、HD20、WQ20、及びSQ20ペプチドの組み合わせで処置した群は、陰性対照生理食塩水と比較して、感染後2及び3週目に血清HBsAgの有意に低い平均レベルを示した(p<0.05、一元配置ANOVA、Tukeyの多重比較検定)(図27)。
参考文献
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27
【配列表】
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