(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】コンクリート検出器
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20221108BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20221108BHJP
G01F 23/263 20220101ALI20221108BHJP
【FI】
E21D11/10 A
E04G21/02 103Z
G01F23/263
(21)【出願番号】P 2019032603
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 常秀
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 冨弘
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-077241(JP,A)
【文献】特開平07-091050(JP,A)
【文献】実開昭63-101823(JP,U)
【文献】特開2018-035632(JP,A)
【文献】特開平06-002495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
E04G 21/02
G01F 23/263
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量形の棒状の近接スイッチと、コンクリート充填空間を形成する枠板に設けた検出開口内に、先端検出部が前記検出開口の内周面と間隔をおいた状態で前記近接スイッチを前記枠板に固定する固定手段とを備え、かつ、前記近接スイッチの先端検出部の周面を覆うように金属層が設けられているコンクリート検出器。
【請求項2】
前記金属層が、前記先端検出部の周面と端面を覆う金属製キャップの周壁によって構成されている請求項1に記載のコンクリート検出器。
【請求項3】
前記金属製キャップの端面はその中心部のみがコンクリート充填空間へ露出している請求項2に記載のコンクリート検出器。
【請求項4】
前記近接スイッチの先端検出部周囲を覆うように前記検出開口内に前記間隔を確保する厚みを有して装着される筒状の絶縁体をさらに備える請求項1ないし3のいずれかに記載のコンクリート検出器。
【請求項5】
前記固定手段は、前記近接スイッチの姿勢が目視できる状態で当該近接スイッチを固定するものである請求項1ないし4のいずれかに記載のコンクリート検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート検出器に関し、特に小型かつ安価なコンクリート検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルセントルの外周とトンネル内壁との間に形成された円弧状空間内へ覆工コンクリートを充填する際に、空間内のどの位置までコンクリートが充填されているかを検出することが求められており、このような用途に、静電容量式のレベルスイッチ(例えばシーエル計測工業(株)製 C-1000型)が使用されている。
【0003】
なお、コンクリート検出器としては、特許文献1に示された光センサを利用したもの、あるいは特許文献2に示されたコンクリート圧を検出するもの等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-240868号
【文献】特開平3-274421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで従来使用されている静電容量式の上記レベルスイッチは大型でかつ値段も比較的高い。一方、近年はIoT(Internet of Things)の進展に伴って、より精密な覆工コンクリート充填情報の提供が望まれており、そのためにはコンクリート検出器を多数設置する必要があって、小型かつ安価なコンクリート検出器の実現が待たれていた。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、従来に比して十分に小型で安価なコンクリート検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、静電容量形の棒状の近接スイッチ(4)と、コンクリート充填空間(S)を形成する枠板(P)に設けた検出開口(P1)内に、先端検出部(41)を前記検出開口(P1)の内周面と間隔(d)を離した状態で前記近接スイッチ(4)を前記枠板(P)に固定する固定手段(2)とを備え、かつ、前記近接スイッチ(4)の先端検出部(41)の周面を覆うように金属層(52)が設けられている。
【0008】
本第1発明によれば、近接スイッチを検出開口内に位置させるだけの簡易な構成で従来に比して十分に小型で安価なコンクリート検出器を実現することができる。特に金属層を設けたことによって先端検出部と検出開口の内周面との間隔を十分小さくできるから検出開口をより小さくすることが可能で、コンクリート検出器全体をよりコンパクトに設置することができる。また、金属層を設けたことによって確実な検出が可能になる。
【0009】
本第2発明では、前記金属層が、前記先端検出部(41)の周面と端面を覆う金属製キャップ(5)の周壁(52)によって構成されている。
【0010】
本第2発明によれば、先端検出部に金属製キャップを装着するだけの簡易な構造で金属層を設けることができるとともに、先端検出部の端面を摩耗から守ることができる。
【0011】
本第3発明では、前記金属製キャップ(5)の端面はその中心部(511)のみがコンクリート充填空間(S)へ露出している。
【0012】
本第3発明によれば、端面の中心部のみをコンクリート充填空間へ露出させたから、端面全面を露出させるのに比して、反応面積を少なくすることによって、硬化したコンクリートや水滴等の付着による影響を受けにくくし誤検出をより効果的に避けることができる。
【0013】
本第4発明では、前記近接スイッチ(4)の先端検出部(41)周囲を覆うように前記検出開口(P1)内に前記間隔(d)を確保する厚みを有して装着される筒状の絶縁体(3)をさらに備える。
【0014】
本第4発明によれば、絶縁体によって近接スイッチが確実に保持されるとともに、検出開口の液密性を簡易に確保することができる。
【0015】
本第5発明では、前記固定手段(2)は前記絶縁体(3)の姿勢が目視できる状態で当該絶縁体(3)を固定するものである。
【0016】
本第5発明によれば、絶縁体が適正に検出開口内に位置して液密性が確保されている等を目視で確認することができる。
【0017】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のコンクリート検出器は、従来に比して十分に小型で安価なものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】コンクリート検出器を設けたトンネルセントルの枠体の正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における、コンクリート検出器の全体断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における、コンクリート検出器の全体断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態における、検出器本体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0021】
(第1実施形態)
図1には本発明のコンクリート検出器Dtを設けたトンネルセントルMを示す。すなわち、内壁が円弧状をなすトンネルTの内方位置に円弧状をなすトンネルセントルMが位置しており、トンネルセントルMの外周とトンネルTの内壁との間に覆工コンクリートCを充填するための円弧状の充填空間Sが形成されている。トンネルセントルMは中央の天端フォームFaと、その左右端に公知の構造で回動可能に連結された側フォームFb、および側フォームFbの下端に公知の構造で回動可能に連結されたインバートフォームFcで構成されている。そして、各フォームFa~Fcの外周(より正確には外周を構成するスキンプレート)には詳細を以下に説明するコンクリート検出器Dtが、トンネルセントルMの外周方向へ所定の間隔をおいて複数設置されている。なお、
図1は覆工コンクリートCがインバートフォームFcから側フォームFbの下部にかけての充填空間S内に充填されつつあるところを示している。
【0022】
図2にはコンクリート検出器Dtの一部断面側面図を示す。
図2において、枠体としてのスキンプレートPには所定位置に円形の検出開口P1が設けてあり、スキンプレートPの外側面とその外方のトンネル内周壁(図示略)との間に充填空間Sが形成されている。そして、スキンプレートPの内側には検出開口P1に臨んで詳細を後述する検出器本体1が装着されており、検出器本体1から離れた位置には検出器本体1を固定するための詳細を後述する固定手段2が設けられている。
【0023】
図3には検出器本体1の断面図を示し、
図4にはその分解断面図を示す。検出器本体1を構成する絶縁体3は電気絶縁性の例えば樹脂で成形されており、先端部31が段付きに小径となった一定厚の円筒状となっている。絶縁体3の先端部31の外径は検出開口P1の内径にほぼ等しく、先端部31の長さはスキンプレートPの厚みに等しくなっている。これにより、絶縁体3はその先端部31が検出開口P1内に液密的に嵌着されている(
図3)。ここで、絶縁体3の先端部31の厚みは、後述する近接スイッチ4がスキンプレートPの影響を受けて誤作動しないだけの間隔dを検出開口P1内周との間に確保できる寸法としてある。
【0024】
絶縁体3の筒内には、棒状の静電容量型近接スイッチ4のやや小径となった先端検出部41が挿入されている。この先端検出部41には端面全面と周面を覆って金属製のキャップ5が被せられており、キャップ5の端壁51は絶縁体3の外側開口端面およびスキンプレートPの外側面と同一面に位置させられている(
図3)。
【0025】
このようなキャップ5の端壁51によって、スキンプレートPのケレン作業等で近接スイッチ4の先端検出部41が摩耗する等の問題が避けられるとともに、キャップ5の周壁52によって、先端検出部41の周面を覆うように金属層が設けられる。そして、金属層を設けたことによって、金属層が無い場合に比して検出開口P1内周との間の間隔dを小さくしてもスキンプレートPの影響を受けて誤作動することが無くなる。この結果、検出開口P1を小さくすることができて検出器本体1全体を小型化することができる。また、金属層を設けると上記近接スイッチ4がタッチセンサのように機能して、先端検出部41に誘電率の異なる物質、すなわち覆工コンクリートが接触するまで作動することは無い。これによって確実な検出が可能になる。
【0026】
上記キャップ5の開口端面は絶縁体3の内周に形成された段付き面32に当接しており、この状態でキャップ5は絶縁体3の内周に接着固定されている。また、近接スイッチ4の後端からは信号線44が延出している。近接スイッチ4としては例えばオムロン(株)製E2K-X等が好適に使用できる。
【0027】
図2において、固定手段2はL字形に屈曲した抑え板21を備えており、その長辺の先端部はここに設けた開口211によって近接スイッチ4の中間ねじ部42に嵌装され、中間ねじ部42に螺合させたナット部材11を介して絶縁体3の後端面を押圧している。上記抑え板21の先端部には筒体22が形成されて、抑え板21の先端部を近接スイッチ4の中間ねじ部42に嵌装した際に当該中間ねじ部42と基端部43、さらに信号線44の基端部43からの取出し端が筒体22内に位置して外部から保護される。
【0028】
抑え板21の長辺基端部に設けた開口213にはボルト23が挿通されて、当該ボルト23はスキンプレートPの裏面に固着されたウェルドナット24に結合されている。そして、ボルト23をウェルドナット24に適度にねじ込むことによって絶縁体3が適当な力でスキンプレートPに圧接されて検出器本体1が固定される。このような固定手段2によれば、絶縁体3の姿勢を常に外部から目視することができるから、絶縁体3(および近接スイッチ4が検出開口P1内に適正に位置していることが確認できる。
【0029】
このようなコンクリート検出器によれば、充填空間S内に充填された覆工コンクリートCのコンクリート面が近接スイッチ4の先端検出部41を覆うキャップ5部分に至ると、近接スイッチ4がこれを検知して検出信号が出力される。これにより、覆工コンクリートCの充填位置を確認することができる。
【0030】
(第2実施形態)
図5には固定手段2の他の例を示す。ここでは、固定手段2を構成するウェルドナット25が検出器本体1の絶縁体3の外方を囲むように同心状に配設されてスキンプレートPの裏面に固着されている。そして、検出器本体1を覆うように円筒状の抑え部材6が上記ウェルドナット25にねじ込まれており、抑え部材6の内周に形成した段付き面61によって、近接スイッチ4の中間ねじ部42に螺合させたナット部材11を介して絶縁体3の後端面が押圧され、絶縁体3が適当な力でスキンプレートPに圧接されて検出器本体1が固定される。
【0031】
(第3実施形態)
図6、
図7に示す本実施形態では、検出器本体1を構成するキャップ5の形状が上記第1実施形態と異なり、これに応じて、キャップ5の周囲に設置される絶縁体3の形状も異なっている。他の構造は第1実施形態と同様であり、同一部分には同一符号を付してある。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
図6、
図7において、近接スイッチ4の先端検出部41に被せられる金属製のキャップ5には、その端壁51の中心部に小径の突出部511が形成されている。本実施形態ではこの突出部511は円柱状となっている。そして、キャップ5が被せられた上記先端検出部41を内部に受け入れる絶縁体3には、先端部31の中心に開口311が形成されて、キャップ5の上記突出部511が挿入できるようになっている。挿入された状態で突出部511の先端面は絶縁体先端部31の端面と同一面になる(
図6)。
【0033】
このような構造によると、充填空間Sへはキャップ5の端面中心部が突出部511によって露出するだけであるから、コンクリート検出器Dtを天端フォームFa(
図1)に設けた場合等に、上方のトンネルT内壁から水滴が落下してもその影響を最小限にとどめて水滴の付着による誤作動を効果的に防止することができる。また、本構造では、絶縁体3内にキャップ5を挿入しさらにこれに近接スイッチ4の先端検出部41を挿入してスキンプレートPに押し付けるだけで全体を固定できるから、設置が容易であり加工の手間も少なくなるため第1実施形態の構造よりも安価に実現できる。なお、要は近接スイッチ4の先端検出部41端面を一部のみ充填空間Sへ露出させればよいのであるから、キャップ5の端壁中心部に突出部511を形成する構造はあくまでこれを実現する場合の一例を示すに過ぎない。
【0034】
(その他の実施形態)
近接スイッチ4の先端検出部41に金属製キャップ5を装着するのに代えて、先端検出部41の周面に金属箔を巻回して金属層とし、先端検出部41の端面には耐摩耗性のある樹脂板等を貼着する構造としても良い。また耐摩耗性が問題とならない場合には、先端検出部41の端面をそのまま充填空間Sに露出させるようにしても良い。また絶縁体3は必ずしも必要なものではなく、空気層であっても良い。なお、上記実施形態ではトンネルセントルにコンクリート検出器を設ける場合について説明したが、本発明の用途はこれに限られない。
【符号の説明】
【0035】
1…検出器本体、2…固定手段、3…絶縁体、4…近接スイッチ、41…先端検出部、5…キャップ、51…端壁、511…突出部(中心部)、52…キャップの周壁(金属層)、6…抑え部材、P…スキンプレート(枠板)、P1…検出開口、S…コンクリート充填空間。