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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/06 20060101AFI20221108BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01F27/06
H01F30/10 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019165614
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021044400
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日比野 貴郁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-009486(JP,A)
【文献】実開昭56-007314(JP,U)
【文献】実開昭61-119316(JP,U)
【文献】実開平04-008414(JP,U)
【文献】実開昭57-100215(JP,U)
【文献】実開昭61-049426(JP,U)
【文献】実開昭56-121221(JP,U)
【文献】特開平11-126720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/06
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と当該鉄心に巻き回したコイルから構成される中身を、タンクに挿入した静止誘導機器であって、
鉄心とコイル固定用の締金具に中身固定用板取付座を固定し、前記中身固定用板取付座と前記タンクの内面間に、前記タンクの内面に当接する中身固定用板を設けたものであり、
前記中身固定用板取付座は、コ字状であり、前記コ字状の中身固定用板取付座に前記中身固定用板を挟み込み、
前記中身固定用板は、タンク内面方向にスライドして、ストッパー板により固定され、
前記ストッパー板は、楔状であり、前記中身固定用板のタンク内面とは反対側に挿入するものであることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項2】
鉄心と当該鉄心に巻き回したコイルから構成される中身を、タンクに挿入した静止誘導機器であって、
静止誘導機器は、単相変圧器を2段に積み重ねたものであり、
中間部において、鉄心とコイル固定用の締金具にコ字状の中身固定用板取付座を固定し、前記コ字状の中身固定用板取付座に中身固定用板を挟み込み、
上部において、鉄心とコイル固定用の締金具にL字状の中身固定用板取付座を固定し、前記L字状の中身固定用板取付座と前記タンクの内面間に、前記タンクの内面に当接する中身固定用板をはめたことを特徴とする静止誘導機器。
【請求項3】
請求項に記載の静止誘導機器において、
前記中間部のコ字状の中身固定用板取付座と、前記上部のL字状の中身固定用板取付座とは、前記中身に対し、反対側の位置に配置されていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項4】
鉄心と当該鉄心に巻き回したコイルから構成される中身を、タンクに挿入した静止誘導機器であって、
鉄心とコイル固定用の締金具に中身固定用板取付座を固定し、
前記中身固定用板取付座と前記タンクの内面間に、前記タンクの内面に当接する中身固定用板を設け、
前記中身固定用板は、タンク内面と一点以上で接触する形状で、電線を支えるための開口部を備えることを特徴とする静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、リアクトル等の静止誘導機器に関し、詳細には静止誘導機器において、鉄心、コイル、金具等から構成される中身構造の固定に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油入変圧器の中身は、主に巻線と鉄心及びそれらを組み合わせる状態で保持するための金具等から構成されている。この中身組立品をタンクに挿入し、タンク内面に設けた突起で固定し、絶縁油を充填している。
【0003】
変圧器の分類として単相変圧器と三相変圧器に分けることが出来る。単相変圧器では、鉄心を一脚としコイルを二脚使用する変圧器が一般的である。三相変圧器では、三脚もしくは五脚鉄心としコイルを三脚使用する変圧器が一般的である。また、単相と三相を両方得られる変圧器もあり、一例として単相変圧器を2台V結線接続するものがある。2台の変圧器の容量が同じものを同容量V結線変圧器、異なるものを異容量V結線変圧器という(以下、V結線変圧器)。V結線変圧器は単相の変圧器が2台必要となるため変圧器の設置面積の増加を考慮し、各相を上下二段積みに設置するものが一般的である。
【0004】
単相変圧器は、主に鉄心とコイル、また、鉄心とコイルを固定するバンドと締金具から構成されている(以下、単相中身構造)。単相中身構造は、締金具に取付けた中身固定用金具を通して、タンク内面に設けた中身固定座に対し、ボルトにより単相中身構造を固定している。また、下部締金具に設けた丸穴に変圧器底板に溶接した中身振れ止めを通すことで、単相中身構造を固定している。
【0005】
V結線変圧器は、単相変圧器と同様に、主に鉄心とコイル、また、鉄心とコイルを固定するバンドと締金具から構成され、上下各相を固定する連結金具を備えている(以下、V結線中身構造)。V結線中身構造は、連結金具に設けた穴もしくは上段の締金具に設けた中身固定金具を通して、タンク内面に設けた中身固定座に対し、ボルトによりV結線中身構造を固定している。また、下部締金具に設けた丸穴に変圧器底板に溶接した中身振れ止めを通すことで、V結線中身構造を固定している。
【0006】
変圧器の小型化が要求されている中で容量を小さく出来ない場合は、絶縁及び温度上昇値に留意した上でタンク内の鉄心、コイルから構成される中身構造の集積度を高めている。しかし、鉄心やコイルの他、各相を固定するため、締金具や中身固定金具または連結金具等の中身構造が動かないようにするために、タンク内面に設けている中身振れ止めと中身固定座があることで、中身構造をタンクへ挿入する上で、鉄心やコイルの寸法以外での制約が存在する。これは絶縁及び温度上昇値における確認因子となる他、組立作業性を損なう可能性につながるため、設計上の不確定要素となる。そのため、中身振れ止めと中身取付座を廃止しタンクへの挿入を容易にした上で、中身構造が移動しないような安定した固定構造とすることが求められている。
【0007】
変圧器中身の固定構造として、例えば特許文献1には、「多数の鉄心板を積層して成る鉄心およびこの鉄心の脚部に巻回されたコイルとから変圧器本体を構成し、この変圧器本体をベースを介して基礎に固定し、且つこの変圧器本体をケースによって包囲するようにしたものにおいて、前記ケースの下部を前記ベースに固定すると共に、このケースの上部をばね部材を介して前記変圧器本体に連結したことを特徴とする変圧器。」(特許請求の範囲、参照)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平3-129709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
単相変圧器またはV結線変圧器の中身構造をタンクへ固定するために、締金具と中身固定用金具または連結金具による各相の固定を行っている。そのため、中身固定用金具または連結金具の位置によりボルトによる締結が可能な位置が制限される。また、タンク内面に設けている中身固定座や中身振れ止めには一定の寸法精度が求められる。更に、中身構造をタンクに挿入する際にはボルト挿入方向を揃えるため、周方向の位置の制約があり、作業性の悪化を招いている。
【0010】
特許文献1記載の発明は、ばね部材を介して変圧器本体とケースの上部を連結するもので、中身構造のタンクへの挿入や中身構造の固定を容易にすることは考慮されていない。
【0011】
本発明は、これらの課題を解決するもので、中身構造のタンクへの挿入、および、中身構造のタンクへの固定を容易にした静止誘導機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための、本発明の「静止誘導機器」の一例を挙げるならば、鉄心と当該鉄心に巻き回したコイルから構成される中身を、タンクに挿入した静止誘導機器であって、鉄心とコイル固定用の締金具に中身固定用板取付座を固定し、前記中身固定用板取付座と前記タンクの内面間に、前記タンクの内面に当接する中身固定用板を設けたものであり、前記中身固定用板取付座は、コ字状であり、前記コ字状の中身固定用板取付座に前記中身固定用板を挟み込み、前記中身固定用板は、タンク内面方向にスライドして、ストッパー板により固定され、前記ストッパー板は、楔状であり、前記中身固定用板のタンク内面とは反対側に挿入するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中身固定用板をはめて中身構造を固定するので、中身構造をタンクへ挿入する際、タンク周方向の位置の制約がなくなり、中身構造のタンクへの挿入が容易になる。また、中身構造のタンクへの固定が容易になる。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の単相変圧器の中身固定構造を示す図である。
図2】実施例1の中身固定構造の拡大図である。
図3】中身固定用板の形状例を示す図である。
図4】実施例2のV結線変圧器の中身固定構造を示す図である。
図5】実施例2の中身固定構造の拡大図である。
図6】実施例3のV結線変圧器の中身固定構造を示す図である。
図7】実施例3の中身固定構造の拡大図である。
図8】実施例3の中身固定構造の変形例の拡大図である。
図9】実施例3の中身固定構造の他の変形例の拡大図である。
図10】実施例4のV結線変圧器の中身固定構造を示す図である。
図11】実施例4の中身固定構造の拡大図である。
図12】実施例5の、中身固定用板安定楔の形状と使用方法を示す図である。
図13】実施例6の、中身振れ止めを使用しない中身固定構造を示す図である。
図14】現行の単相変圧器の中身固定構造を示す図である。
図15】現行のV結線変圧器の中身固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例の変圧器を説明する前に、現行の変圧器について説明する。
【0017】
図14に現行の単相変圧器の構造の一例を示し、図14(a)は上面図を、図14(b)は正面図を示す。単相変圧器10は、矩形状の鉄心102と、鉄心102の2つの脚に巻き回されたコイル103と、鉄心102の上部および下部に取り付けられた上締金具104および下締金具105とで変圧器中身が構成されている。変圧器中身はタンク101内に挿入され、上締金具104に取り付けられた中身固定用金具106と、タンクの内側に設けられた中身固定用座108とを、ボルトで締め付けることにより、変圧器中身をタンク内に固定する。図において、符号107は、コイルが接続されるタップ切替台を示す。
【0018】
図15に現行のV結線変圧器の構造の一例を示し、図15(a)は上面図を、図15(b)は正面図を示す。V結線変圧器は、下部相変圧器20に上部相変圧器25を積み重ねて構成され、下部相変圧器20は、鉄心102と、鉄心102に巻き回されたコイル103と、鉄心102の上部および下部に取り付けられた下部相上締金具111および下部相下締金具112とで構成され、また、上部相変圧器25は、鉄心102と、鉄心102に巻き回されたコイル103と、鉄心102の上部および下部に取り付けられた上部相上締金具109および上部相下締金具110とで構成されている。下部相変圧器20に上部相変圧器25を積み重ねて連結金具113により連結することにより変圧器中身を構成する。そして、変圧器中身をタンク101内に挿入し、連結金具113の上部と、タンク101の内側に設けられた中身固定座108とを、ボルト114で締め付けることにより、変圧器中身をタンク内に固定する。
【0019】
図14或いは図15に示す現行の変圧器においては、タンクの内側に取り付けた中身固定座108に、中身固定用金具106または連結金具113をボルトにより取り付けている。そのため、中身固定用金具106または連結金具113の位置によりボルトによる締結が可能な位置が制限される。また、タンク内面に設けている中身固定座108や中身振れ止めには一定の寸法精度が求められる。更に、中身構造をタンクに挿入する際にはボルト挿入方向を揃えるため、周方向の位置の制約があり、作業性の悪化を招いている。
【0020】
本発明は、これらの課題を解決するものである。
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0022】
図1に、本発明の実施例1の単相変圧器における中身固定構造を示す。図1(a)は単相変圧器の上面図を、図1(b)は単相変圧器の正面図を示す。
【0023】
単相変圧器10は、矩形状の鉄心102と、鉄心102の2つの脚に巻き回されたコイル103と、鉄心102の上部および下部に取り付けられた上締金具104および下締金具105とで変圧器中身が構成されている。変圧器中身はタンク101内に挿入される。上締金具104には、両側に、溶接またはボルトによりL字状の中身固定用板取付座202が取り付けられている。変圧器中身をタンクに挿入後、中身固定用板取付座202と変圧器タンク101内面間に、非磁性材料の中身固定用板201をはめる。中身固定用板201はボルトや接着剤で中身固定用板取付座202に固定してもよい。中身固定用板201は、変圧器タンク101内面と当接する弓形形状(円弧状)とするのがよい。変圧器中身の両側に中身固定用板201をはめることで、変圧器中身が固定された構造となる。
【0024】
図2に、中身固定用板取付座202とタンク101の内側との間に中身固定用板201を挿入する状態の拡大図を示す。中身固定用板取付座202に中身固定用板201の一端を配置し、中身固定用板201を押し込むことにより、中身固定用板201がタンク内面に当接して、取り付けられる。
【0025】
図3に、中身固定用板201の変形例の形状を示す。図3(a)は弓形形状の両側を切り欠いたもの、図3(b)はタンク内面側を三角形状としたもの、図3(c)は、図3(a)のものにおいて中央に開口部209を設けたもの、図3(d)は図3(b)において中央に三角形状の開口部209を設けたもの、図3(e)は長方形状としたもの、図3(f)はタンク内面側を台形状としたもの、図3(g)は、図3(e)のものにおいて中央に開口部209を設けたもの、図3(h)は図3(f)において中央に開口部209を設けたものである。何れの中身固定用板201も、タンク内面に1点以上接触する構造である。
【0026】
図3(c)(d)(g)(h)に示すように、中身固定用板201に開口部209を設け、これに電線を通すことで、変圧器中身をタンク挿入時やタンク挿入後に電線とタンク内面との接触を減らすことが可能となる。
【0027】
本実施例によれば、中身固定用板をはめて中身構造を固定するので、タンクの内側に中身固定座を設ける必要が無く、中身構造をタンクへ挿入する際、周方向の位置の制約がなくなり、中身構造のタンクへの挿入が容易になる。また、ボルト締めを行う必要がなく、中身構造のタンクへの固定が容易になる。
【実施例2】
【0028】
図4に、実施例2のV結線変圧器における中身固定構造を示す。図4(a)はV結線変圧器の上面図を、図4(b)はV結線変圧器の正面図を示す。
【0029】
V結線変圧器は、下部相変圧器20に上部相変圧器25を積み重ねて構成され、下部相変圧器20は、鉄心102と、鉄心102に巻き回されたコイル103と、鉄心102の上部および下部に取り付けられた下部相上締金具111および下部相下締金具112とで構成され、また、上部相変圧器25は、鉄心102と、鉄心102に巻き回されたコイル103と、鉄心102の上部および下部に取り付けられた上部相上締金具109および上部相下締金具110とで構成されている。下部相変圧器20に上部相変圧器25を積み重ねて連結金具113で連結することにより、変圧器中身を構成する。そして、変圧器中身をタンク101内に挿入する。
【0030】
変圧器中身の固定は次のように行う。変圧器中身の中間部において、上部相下締金具110もしくは下部相上締金具111に中身固定用板取付座203を溶接またはボルトにて固定し、中身固定用板取付座203に中身固定用板201をスライドさせ、挟んだ構造とする。変圧器中身の中間部の固定については、図5の説明で詳述する。上部相下締金具110もしくは下部相上締金具111に中身固定用板201を挟んだ状態で、変圧器中身をタンク101に挿入する。変圧器中身の上部の固定については、実施例1と同様である。すなわち、上締金具109には溶接またはボルトによりL字状の中身固定用板取付座202を取り付けておく。そして、変圧器中身をタンク101に挿入した状態で、変圧器タンク上部から中身固定用板取付座202と変圧器タンク101内面間に中身固定用板201をはめる。中身固定用板201は、中身固定用板取付座202とボルトや接着剤で固定してもよい。
【0031】
なお、図では、変圧器中身の中間部と変圧器中身の上部とで反対側の位置に中身固定用板201を設けたが、変圧器中身の中間部或いは変圧器中身の上部において、両側に中身固定用板201を設けても良い。
【0032】
図5に、変圧器中身の中間部における中身固定用板取付座203に中身固定用板201を挿入した状態の拡大図を示す。下部相上締金具111にコ字状の中身固定用板取付座203を溶接またはボルトにて固定する。そして、中身固定用板取付座203のコ字状の孔部に中身固定用板201をスライドさせ、挟んだ構造とする。
【0033】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、変圧器中身の中間部と上部の両方でタンク内面を中身固定用板201により押さえることで、中間部からも押さえられるため、中身構造の振動を低減することが出来る。
【実施例3】
【0034】
図6に、実施例3のV結線変圧器における中身固定構造を示す。図6(a)はV結線変圧器の上面図を、図6(b)はV結線変圧器の正面図を示す。
【0035】
本実施例は、変圧器中身の中間部と上部の取り付けに、実施例2の図5と同様の取付構造を用いたものである。変圧器中身の中間部において、上部相下締金具110もしくは下部相上締金具111に中身固定用板取付座202を溶接またはボルトにて固定し、中身固定用板取付座202に中身固定用板201をスライドさせ、挟んだ構造とする。変圧器中身の上部の取り付けにおいて、上部上締金具109に1つ以上の中身固定用板取付座204を溶接またはボルトにて固定し、中身固定用板取付座204に中身固定用板201をスライドさせ、挟んだ構造とする。また、中身固定用板取付座204には1つ以上の開口部205を設けた構造とする。この状態で変圧器中身をタンク101へ挿入する。そして、上部上締金具109の中身固定用板取付座204において、中身固定用板201を中身固定用板取付座204からタンク内面方向に移動させ、中身固定用板取付座204の開口部205に中身固定用板201と同材質のストッパー板206を挿入し、中身固定用板201をタンク内面に接触させた状態で固定する。
【0036】
図7に、中身固定用板取付座204に挿入してある中身固定用板201を、中身固定用板取付座204からタンク内面方向へ移動させ、ストッパー板206を開口部205に挿入する時の拡大図を示す。図7(a)はその上面図、図7(b)は正面図、図7(c)~(e)はストッパー板の形状の例である。矢印で示すように、中身固定用板取付座204からタンク内面方向へ中身固定用板201を移動させ、矢印で示すように中身固定用板取付座204の開口部205へストッパー板206を挿入して、中身固定用板201を固定する。ストッパー板206は、中身固定用板201のタンク内側とは反対側に1つのストッパー板206を挿入しても良いが(図7(c))、図7(a)に矢印で示すように、ストッパー板206を2つに分割し(図7(d))、図の上下方向に移動させても良い。この場合、図7(e)のように、ストッパー板206を楔状とするのが好ましい。
【0037】
本実施例においても、変圧器中身の中間部と上部の両方でタンク内面を中身固定用板201で押さえることで、中間部からも押さえられるため、中身構造の振動を低減することが出来る。また、中身固定用板をタンク内面方向に移動させ、ストッパー板により固定することで、タンク径の異なるタンクにも変圧器中身を取り付けることができる。
【0038】
図8および図9に、実施例3の図7と同じ条件において中身固定用板201のスライド方式を変更した変形例の拡大図を示す。図8では、中身固定用板取付座204の寸法を中身固定用板201よりも小さいものを使用し、中身固定用板201を中身固定用板取付座204の両側からタンク内面方向へ移動させる。開いた隙間には中身固定用板201と同材質のストッパー板207を挿入し固定する。図8(c)および(d)にストッパー板207の形状の例を示す。ストッパー板207は、図8(c)のように一定幅のものでも良いが、図8(d)のように楔状とするのが好ましい。楔状とすることにより、中身固定用板201をタンク内面に押し付けることができる。
【0039】
図9では、中身固定用板取付座204の側面にねじ切りを施し、ボルト301にて中身固定用板201をタンク内面101方向へ移動させる構造である。ボルトを回転させることにより、中身固定用板201をタンク内面に押圧して固定することができる。
【実施例4】
【0040】
図10に、実施例4のV結線変圧器の固定構造を示す。実施例4は、実施例3と同じ条件において中身固定用板201の形状を変更したものである。
【0041】
図11に、中身固定用板取付座203および中身固定用板201の拡大図を示し、図11(a)は上面図、図11(b)は正面図であり、図11(c)は変形例の正面図である。図において、一つの中身固定用板取付座203に対し、一方の中身固定用板201aは中身固定用板取付座203に挟んだ状態で変圧器中身をタンク101へ挿入し、他方の中身固定用板201bはタンク挿入後、タンク内面と接触させた状態でボルト301とナット302による締結し固定する。また、ボルト、ナットでの締結以外にも、接着剤やキー溝を設け中身固定用板201a,201b同士を固定してもよい。
【0042】
図11(b)は、一方の中身固定用板201aと他方の中身固定用板201bにそれぞれ切り欠きを設け、この切り欠きで重ね合わせてボルト301とナット302により締結したものである。また、図11(c)は、1枚の中身固定用板201aの両側に中身固定用板201bを重ね合わせてボルト301とナット302により締結したものである。
【0043】
本実施例においても、変圧器中身の中間部と上部の両方でタンク内面を中身固定用板201で押さえることで、中間部からも押さえられるため、中身構造の振動を低減することが出来る。また、タンクの内側に中身固定座を設ける必要が無く、中身構造をタンクへ挿入する際、周方向の位置の制約がなくなり、中身構造のタンクへの挿入が容易になる。
【実施例5】
【0044】
図12に、実施例5の変圧器の、タンク内面と中身固定用板201との隙間を埋める軟性材料の中身固定用板安定楔401を示す。図12(a)は、中身固定用板安定楔401を3方向から見た図であり、図12(b)は、中身固定用板201に周方向から中身固定用板安定楔401を差し込んだ図であり、図12(c)は、中身固定用板201に高さ上方向から中身固定用板安定楔401を差し込んだ図である。
【0045】
図12(a)の3方向から見た図に示されるように、中身固定用板安定楔401は、外形が三角形状の楔であり、その中央部に中身固定用板201と略同一幅の、楔形状の切込み402が形成されている。図12(b)に示すように、変圧器タンクの互換性をもたせるために、タンク内面と中身固定用板201との間に隙間があるときは、中身固定用板安定楔401をタンク周方向から楔に設けた切込み402を中身固定用板201に合わせた状態でスライド、固定する。または、図12(c)に示すように、中身固定用板安定楔401をタンク高さ方向からタンク内面に沿って中身固定用板201との間に差し込むことにより固定を行う。
【0046】
本実施例によれば、中身固定用板安定楔を用いることで、径の異なるタンクにも変圧器中身を取り付けることができ、タンク径の互換性を付加できる。
【実施例6】
【0047】
図13に、実施例6の変圧器の固定構造を示す。図13(b)は正面図、図13(a)は、図13(b)のA-A’面を見た上面図である。
【0048】
本実施例においては、下締金具501の底面を円盤状にし、下締金具底面の外形をタンク内面以下の大きさとする。これにより、中身構造のタンク挿入時の作業性悪化を低減し、中身振れ止めを使用せずに中身構造の固定が可能となる。符号502は、鉄心102の位置決めを行う位置決め突起である。
【0049】
以上説明した複数の実施例は本発明の構成を限定するものではなく、任意の複数の実施例を組み合わせても、本発明が提供する効果は同様に得られる。
【0050】
また、上記各実施例では変圧器を例に説明したが、本発明は、リアクトルを含む静止誘導機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10…単相変圧器
20…下部相変圧器
25…上部相変圧器
101…変圧器タンク
102…鉄心
103…コイル
104…上締金具
105…下締金具
106…中身固定用金具
107…タップ切替台
108…中身固定座
109…上部相上締金具
110…上部相下締金具
111…下部相上締金具
112…下部相下締金具
113…連結金具
114…締結用ボルト
201…中身固定用板
202…中身固定用板取付座
203…中身固定用板取付座
204…中身固定用板取付座
205…中身固定用板取付座の開口部
206…ストッパー板
207…ストッパー板
209…中身固定用板の開口部
301…ボルト
302…ナット
401…中身固定用板安定楔
402…中身固定用板安定楔の切込み
501…下締金具
502…位置決め突起
図1
図2
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