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特許7171644肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防のための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/277 20060101AFI20221108BHJP
   A61K 31/205 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/22 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221108BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221108BHJP
   C07C 255/36 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
A61K31/277
A61K31/205
A61K31/22
A61K31/661
A61P3/04
A61P3/10
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K9/48
A23L33/10
C07C255/36
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070284
(22)【出願日】2020-04-09
(62)【分割の表示】P 2016576053の分割
【原出願日】2015-07-02
(65)【公開番号】P2020143061
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/127,111
(32)【優先日】2015-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/020,797
(32)【優先日】2014-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517002373
【氏名又は名称】ナン グローバル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴジョン-ソリージャ,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴジョン-ロマニージョス,ガブリエル
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0262093(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0138301(US,A1)
【文献】米国特許第03810994(US,A)
【文献】The Journal of Biological Chemistry,2014年05月28日,Vol.289, No.28,p.19341-19350
【文献】Journal of Bone and Mineral Rese,2005年,Vol.20, No.9, Suppl.1,p.S218,Abstract No.SU125
【文献】Federation of American Societies for Experimental Biology,1982年,Vol.41, No.4,p.1087,Abstract No.4776
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A23L 33/00-33/29
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、及び/又は糖尿病の進行の治療若しくは予防において使用するための組成物であって、有効成分として、チロホスチン9又はその塩、並びにL-カルニチン、L-カルニチンクロリド、L-カルニチンブロミド、L-カルニチンオロテート、L-カルニチン酸アスパルテート、L-カルニチン酸ホスフェート、L-カルニチンフマレート、L-カルニチンラクテート、L-カルニチンマレエート、L-カルニチン酸マレエート、L-カルニチン酸オキサレート、L-カルニチン酸サルフェート、L-カルニチングルコースホスフェート、L-カルニチン酸タートレート、L-カルニチンアイオデート、L-カルニチンアスパルテート、L-カルニチンシトレート、L-カルニチン酸シトレート、L-カルニチン酸フマレート、L-カルニチングリセロホスフェート、L-カルニチンムケート、L-カルニチンオキサレート、L-カルニチンサルフェート、L-カルニチントリクロロアセテート、L-カルニチントリフルオロアセテート、L-カルニチンメタンスルホネート、L-カルニチンパモエート、L-カルニチン酸パモエート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンクロリド、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンブロミド、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンオロテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸アスパルテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸ホスフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンフマレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンラクテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンマレエート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸マレエート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸オキサレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸サルフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチングルコースホスフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンタートレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸タートレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンアイオデート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンアスパルテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンシトレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸シトレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸フマレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチングリセロホスフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンムケート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンオロテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンオキサレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンサルフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチントリクロロアセテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチントリフルオロアセテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンメタンスルホネート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンパモエート、及びC 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸パモエートから選択される第2の薬剤のみを含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、チロホスチン9又はその塩、及び第2の薬剤を実質的に同時に、又は互いの1時間以内に投与するためのものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、チロホスチン9又はその塩、及び第2の薬剤を連続的に投与するためのものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が約2mg~約200mgのチロホスチン9又はその塩、及び約50mg~約5000mgの第2の薬剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記糖尿病が、2型糖尿病である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記治療が、前記対象が糖尿病の徴候又は症状における改善を経ているかどうかを監視するステップを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
糖尿病の徴候又は症状における改善が、減少した空腹感、重量減少、増加したエネルギー、減少した血漿グルコース、減少した血漿トリグリセリド、増加したインスリン感受性、肥満度指数の改善、並びに改善した腎機能及び/又は肝機能からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、及び/又は糖尿病の進行の治療若しくは予防において使用するための組成物であって、チロホスチン9又はその塩、並びにL-カルニチン、L-カルニチンクロリド、L-カルニチンブロミド、L-カルニチンオロテート、L-カルニチン酸アスパルテート、L-カルニチン酸ホスフェート、L-カルニチンフマレート、L-カルニチンラクテート、L-カルニチンマレエート、L-カルニチン酸マレエート、L-カルニチン酸オキサレート、L-カルニチン酸サルフェート、L-カルニチングルコースホスフェート、L-カルニチン酸タートレート、L-カルニチンアイオデート、L-カルニチンアスパルテート、L-カルニチンシトレート、L-カルニチン酸シトレート、L-カルニチン酸フマレート、L-カルニチングリセロホスフェート、L-カルニチンムケート、L-カルニチンオキサレート、L-カルニチンサルフェート、L-カルニチントリクロロアセテート、L-カルニチントリフルオロアセテート、L-カルニチンメタンスルホネート、L-カルニチンパモエート、L-カルニチン酸パモエート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンクロリド、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンブロミド、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンオロテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸アスパルテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸ホスフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンフマレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンラクテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンマレエート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸マレエート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸オキサレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸サルフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチングルコースホスフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンタートレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸タートレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンアイオデート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンアスパルテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンシトレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸シトレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸フマレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチングリセロホスフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンムケート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンオロテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンオキサレート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンサルフェート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチントリクロロアセテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチントリフルオロアセテート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンメタンスルホネート、C 2-8 アルカノイルL-カルニチンパモエート、及びC 2-8 アルカノイルL-カルニチン酸パモエートから選択される第2の薬剤を含み、第2の薬剤の、チロホスチン9又はその塩に対する重量対重量比が、10よりも大きいが、700よりも小さい、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病及び重量増加の治療及び予防のための方法、組成物、及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
肥満、及び結果として生じる糖尿病等のメタボリック症候群は、現在及び未来の世界的健康にとって重大な脅威である。肥満という医学的状態は、早死に、並びに糖尿病に加えて、心臓疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、骨関節炎、高血圧症、脂質異常症、及びある特定の種類の癌等の様々な疾患の可能性を増加させる。世界保健機関は、1997年に、肥満が世界的に流行していることを公式に認め、世界中で6300万人を超える人々が、肥満及び糖尿病の両方への対処という難題に苦闘している。更に、世界的には、糖尿病の治療及び予防の両方に対して推測される医療費は、2013年のおよそ5480億米ドルから、2035年までにはおよそ6270億米ドルまで増加することが予測されている。
【0003】
運動及び食事の修正が実行可能な治療ではない人々の数は膨大であるが、それらの人々において重量減少の促進、重量増加の低減、又は糖尿病の進行の予防を行う有効、簡便、且つ安全な治療は存在していない。肥満及び糖尿病は、細胞内プロセス及び代謝プロセスの両方において欠陥を共有している、関連する障害である。実際、肥満患者の約90%は糖尿病でもある。肥満及び/又は糖尿病をもつ人々は、多くの場合、血漿中の高いトリグリセリドレベルのために苦労している。そのような代謝障害の別の特徴は、長期間にわたって急速に増加する場合がある、変動する血糖レベルである。したがって、そのような患者において、効果的に血中トリグリセリドレベルを低下させ、血糖レベルを安定化させる治療が非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肥満及び糖尿病の益々の流行、並びにそれによる健康及び財政上の帰結を併せた観点から、これらの代謝障害の予防及び治療は、世界的健康の未来のために最重要視される。したがって、肥満及び糖尿病を予防又は治療し、血中グルコース及び血中脂質のレベルを効果的に正常化する、経済的に負担可能であり、且つ安全な薬理学的介入に対する必要性が存在する。更に、必要とされる化合物及び合成物を生成する簡便な方法が、製薬目的にとって非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、及び/又は糖尿病の進行の治療若しくは予防のための方法を特徴とし、本方法は、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩が、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防に、治療上又は予防上有効な量であるように、それを必要とする対象に対して、この化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩若しくは前駆体、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩若しくは前駆体を投与することを含む。望ましくは、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩は、経口投与、局所投与、又は非経口投与用に製剤化された組成物中にある。
【0006】
一部の実施形態において、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩は、実質的に同時に(例えば、共に)、又は互いの1時間以内に投与される。他の実施形態において、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩は、連続的に投与される(例えば、互いの、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、10時間以内等)。
【0007】
様々な実施形態において、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩は、表1の化合物である。ある特定の実施形態において、化学的脱共役剤は、チロホスチン(tyrphostin)9である。
【0008】
好ましい実施形態において、チロホスチン9は、約2mg~約200mgの量で存在し、L-カルニチンは、約50mg~約5000mgの量で存在する。ある特定の実施形態において、チロホスチン9は、約10mgの量で存在し、L-カルニチンは、約700mgの量で存在する。好ましい実施形態において、チロホスチン9は、約5mg~約10mgの量で存在し、L-カルニチンは、約700mgの量で存在する。
【0009】
本発明の第2の態様は、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防のための方法を特徴とし、本方法は、組成物が、対象における、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防に有効であるように、それを必要とする対象に対して、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩を約2mg~約200mgの量で含むこの組成物を、経口投与することを含む。
【0010】
望ましくは、本組成物の単位剤形は、カプセル剤又は錠剤である。様々な実施形態において、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩は、表1の化合物である。好ましい実施形態において、化学的脱共役剤は、チロホスチン9若しくはその塩、又はその誘導体若しくは前駆体である。
【0011】
一部の実施形態において、本方法は、インスリン、スルホニルウレア、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、抗糖尿病剤、スタチン、及び重量減少補助剤からなる群から選択される1つ以上の治療剤を投与することを更に含み得る。
【0012】
ある特定の実施形態において、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩、或いは化学的脱共役剤、好ましくはチロホスチン9のみを含む本組成物は、1日に1回以上投与される。更なる実施形態において、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩、或いは化学的脱共役剤のみを含む本組成物は、少なくとも2日間~30日間投与される。他の実施形態において、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩、或いは化学的脱共役剤のみを含む本組成物は、30日間よりも長く投与される。
【0013】
前述の態様のうちのいずれかにおいて、糖尿病は、2型糖尿病である。ある特定の実施形態において、対象は、肥満又は過体重である。
【0014】
前述の態様のうちのいずれかにおいて、本方法は、本組成物の投与前、投与中、又は投与後の、生活習慣の修正又は食事介入を更に含み得る。一部の実施形態において、生活習慣の修正は、身体活動の増加を含む。他の実施形態において、食事介入は、低カロリー食療法又は超低カロリー食療法を含む。
【0015】
前述の態様のうちのいずれかにおいて、本方法は、対象が、糖尿病の徴候又は症状における改善を経ているかどうかを監視するステップを更に含み得る。ある特定の実施形態において、糖尿病の徴候又は症状における改善は、減少した空腹感、重量減少、増加したエネルギー、減少した血漿グルコース、減少した血漿トリグリセリド、増加したインスリン感受性、肥満度指数の改善、並びに改善した腎機能及び肝機能からなる群から選択される。
【0016】
前述の態様のうちのいずれかにおいて、本組成物(例えば、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその塩若しくは誘導体を含む)は、血漿グルコースの減少又は血漿トリグリセリドの減少、及び/或いは体重増加の予防、体重減少/スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防において、相乗効果をもたらし得る。該相乗効果は、チロホスチン9による単剤療法が、他の事情が同じならば、チロホスチン9及びL-カルニチンタートレートの同時投与で置き換えられた場合(実施例3を参照)、体熱産生状態(thermogenicity)及び重量減少率(又はスリミング率)の両方が著しく増加するという観察結果から明白である。
【0017】
本発明の第3の態様は、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びこの化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩を対象に投与して、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少/スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防を行うための説明書を含むキットを特徴とする。一部の実施形態において、化学的脱共役剤は、表1の化合物、又は表1の化合物の塩若しくは前駆体若しくは誘導体である。好ましい実施形態において、化学的脱共役剤は、チロホスチン9であり、これは、L-カルニチン、又はその塩若しくは誘導体と実質的に同時に投与される。
【0018】
ある特定の実施形態において、本キットは、L-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩、及びこのL-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩を、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩と同時に、又は連続的に対象に投与して、肥満の治療、体重増加の予防、体重減少/スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防を行うための説明書を更に含む。
【0019】
他の実施形態において、本キットは、インスリン、スルホニルウレア、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、抗糖尿病剤、スタチン、及び重量減少補助剤からなる群から選択される1つ以上の治療剤を更に含み得る。
【0020】
上記態様のうちのいずれかの、ある特定の実施形態において、L-カルニチン、又はその誘導体若しくは塩は、L-カルニチンタートレート、L-カルニチンクロリド、L-カルニチンブロミド、L-カルニチンオロテート、L-カルニチン酸アスパルテート、L-カルニチン酸ホスフェ-ト、L-カルニチンフマレート、L-カルニチンラクテート、L-カルニチンマレエート、L-カルニチン酸マレエート、L-カルニチン酸オキサレート、L-カルニチン酸サルフェート、L-カルニチングルコースホスフェート、L-カルニチン酸タートレート、L-カルニチンアイオデート、L-カルニチンアスパルテート、L-カルニチンシトレート、L-カルニチン酸シトレート、L-カルニチン酸フマレート、L-カルニチングリセロホスフェート、L-カルニチンムケート、L-カルニチンオキサレート、L-カルニチンサルフェート、L-カルニチントリクロロアセテート、L-カルニチントリフルオロアセテート、L-カルニチンメタンスルホネート、L-カルニチンパモエート、L-カルニチン酸パモエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン、C2-8アルカノイルL-カルニチンクロリド、C2-8アルカノイルL-カルニチンブロミド、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸アスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸ホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンフマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンラクテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンマレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸マレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸オキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸サルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチングルコースホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンタートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸タートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアイオデート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンシトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸シトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸フマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチングリセロホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンムケート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンサルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリクロロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリフルオロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンメタンスルホネート、C2-8アルカノイルL-カルニチンパモエート、及びC2-8アルカノイルL-カルニチン酸パモエートからなる群から選択される。好ましい実施形態において、本組成物は、約2mg~約200mgのチロホスチン9、又はその塩若しくは前駆体、及び約50mg~約5000mgのL-カルニチン、又はその塩若しくは誘導体を含む。
【0021】
本発明の第4の態様は、チロホスチン9を調製するための方法を特徴とし、本方法は、4-ヒドロキシ-3,5ジ-tert-ブチルベンズアルデヒドを提供すること、及びこの4-ヒドロキシ-3,5ジ-tert-ブチルベンズアルデヒドを、マロノジニトリル及びアミン塩基触媒と、任意選択で溶媒中において反応させ、それにより、この反応がチロホスチン9を生成するようにすることを含み得る。
【0022】
ある特定の実施形態において、反応は、約1時間熱を加えることによって行われる。他の実施形態において、アミン塩基触媒は、アンモニア、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、及びサルコシン、又はそれらの付加塩からなる群から選択される。好ましい実施形態において、付加塩は、酢酸アンモニウムである。更なる他の実施形態において、溶媒は、エタノール、メタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される。好ましい実施形態において、エタノールは、無水エタノールである。
【0023】
本発明の第5の態様は、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン、又はその塩若しくは誘導体を含む相乗性組成物を特徴とし、L-カルニチン、又はその塩若しくは誘導体の、化学的脱共役剤、又はその前駆体若しくは塩に対する重量対重量比は、10よりも大きいが、700よりも小さい(例えば、10、約10.5、約11、約12、約14、約15、約20、約25、約30、約50、約80、約90、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約625、約650、約675、約680、又は約690)。
【0024】
定義
本明細書で使用する場合、用語「予防」は、予防的治療、又は本明細書に記載される疾患、障害、若しくは病態のうちの1つ以上の症状若しくは進行を防止する治療を指す。治療は、例えば、疾患、障害、又は病態の発症に先立つ事象の前又は後に開始することができる。本発明の組成物、又はその単位服用量の薬学的組成物の投与を含む治療は、急性、短期間、又は慢性であってもよい。投与される用量は、予防治療又は治療処置の過程で変動してもよい。
【0025】
「治療」は、疾患又は障害と戦い、臨床結果等の有益又は所望される結果を得るという目的のための管理レジメンに患者を供することを意味する。有益又は所望される結果としては、限定されるものではないが、生活の質における改善;1つ以上の症状又は病態の緩和又は軽快;疾患、障害、又は病態の程度の縮減;疾患、障害、又は病態の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと);疾患、障害、又は病態の広まりの予防;疾患、障害、又は病態の進行の遅延又は緩慢化;疾患、障害、又は病態の軽快又は緩和;及び検出可能又は検出不可能に関わらない寛解(部分的又は全体的に関わらない)を挙げることができる。
【0026】
「重量増加の予防」は、重量増加の制御、抑制、及び低減を意味する。重量増加を予防することによって、例えば、以下のうちの少なくとも1つ以上が達成される:体脂肪又は体重における低下又は維持、血漿トリグリセリドレベルの低下又は維持、重量増加の停止、高血糖症における低減、並びに/或いは糖尿病の発生率若しくは重症度における低下、又は高脂血症及び/若しくは高トリグリセリド血症における低減。
【0027】
「重量減少の促進」は、対象における重量低減を達成することを意味する。例えば、本明細書に記載される組成物の投与は、例えば体重の少なくとも1、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は最大50%の重量低減をもたらし得る(対象への本組成物の投与前、すなわちベースライン体重で測定した場合)。本発明の文脈において、重量低減は、重量低減後に達成された、対象の重量の維持も包括し、また血漿トリグリセリドレベルの維持も包括する。
【0028】
「糖尿病の進行の予防」は、この疾患のいかなる段階においても、糖尿病の進行を制御、抑制、及び低減することを意味する。本明細書で使用する場合、用語「糖尿病」は、限定されるものではないが、インスリン依存性糖尿病(IDMM)としても知られるI型糖尿病、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)としても知られるII型糖尿病、尿崩症、妊娠糖尿病、及び境界型糖尿病(例えば、前糖尿病)を含む。
【0029】
「L-カルニチン誘導体」は、アルコールの水素原子がアシル基によって置換される、エステルの加水分解等の化学反応又は酵素反応を通じて、L-カルニチンを生成可能な化学物質を意味する。
【0030】
「化学的脱共役剤の塩」は、その任意の付加塩(例えば、脱共役剤を薬学的に許容される酸と反応させることで得ることができる塩)、或いは酸性フェノールの(又はチオフェノールの)プロトンを、薬学的に許容される金属カチオン、又はアンモニウム、若しくは置換したアンモニウム、若しくはホスホニウム、若しくはスルホニウムカチオンで置き換えることによって得ることが可能な、任意のフェノキシド又はチオフェノキシド塩を意味する。
【0031】
「チロホスチン9塩」は、チロホスチン9分子のフェノールのプロトンが、薬学的に許容される金属カチオン(ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウム)によって、或いはアンモニウムイオン、又は薬学的に許容される、置換したアンモニウム、ホスホニウム、若しくはスルホニウムイオンによって置き換えられている、化学物質を意味する。
【0032】
「チロホスチン9誘導体」又は「チロホスチン9前駆体」は、化学的手段又は酵素的手段によってチロホスチン9を生成可能な化学物質(フェノールエステル等)を意味する。
【0033】
「スリミング」は、体の寸法(胸囲、ウエスト、及び/又はヒップの測定値)の低下(例えば、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、70%、80%、又は90%の低下)を通じてスリムになる、又はより細くなるプロセスを意味する。
【0034】
「体熱産生」は、ミトコンドリアにおける内因性及び/又は外因性脱共役剤の活動の結果である、エネルギー消費及び熱産生の活性化を意味する。
【0035】
「肥満度指数(BMI)の増加の予防」は、対象のBMIの制御、抑制、及び/又は低減を意味する。
【0036】
「組成物」は、本明細書に記載され、且つ哺乳動物における疾患の治療のため、又は一般的な健康を促進及び維持するための治療用レジメン若しくは予防的レジメンの一部として製造若しくは販売されている物質又は2つ以上の物質を含むシステムを意味する。薬学的組成物は、例えば、単位剤形の経口投与用に(例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、ゲルキャップ、若しくはシロップ剤);局所投与用に(例えば、クリーム、ゲル、ローション、若しくは軟膏として);静脈内投与用に(例えば、粒子状栓子を含まない無菌溶液若しくはコロイド分散液として、並びに静脈内使用にとって好適な溶媒システムで);又は、本明細書に記載される任意の他の製剤として、製剤化することができる。
【0037】
「有効量」は、薬剤が、臨床結果等の有益又は所望される結果をもたらすのに十分な量であることを意味し、したがって、「有効量」は、その薬剤が適用されている状況に依存する。
【0038】
「投与」又は「投与する」は、該組成物の活性成分(複数可)の、その(それらの)作用部位(複数可)との接触をもたらすように、ある投与量の組成物を提供する方法を意味する。好ましい投与方法は、様々な因子、例えば本組成物の構成成分、並びに疾患、障害、又は病態の性質及び重症度に左右され得る。
【0039】
「実質的に同時に」投与するとは、本明細書に記載される、ある投与量の2つ以上の組成物又は2つ以上の物質(例えば、化学的脱共役剤及びL-カルニチン)を、対象に対して、実質的に同時に、一緒に、又は共に提供する方法を意味する。
【0040】
「連続的に」投与するとは、ある投与量の2つ以上の組成物又は2つ以上の物質を、相次いで(例えば、15分以内、30分以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、又は10時間以内)提供する方法を意味する。例えば、本明細書に記載される物質又は組成物(例えば、化学的脱共役剤及びL-カルニチン)の連続的投与は、例えば、L-カルニチンの投与後1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、又は10時間以内に化学的脱共役剤を投与することを含み得、逆もまた同様である。
【0041】
「治療剤」又は「予防剤」は、単一の組成物中に一緒に製剤化される、1つ以上の活性剤(例えば、本明細書に記載される化合物のうちのいずれか)、又は対象に対して共に投与される、1つ以上の活性剤(例えば、本明細書に記載される化合物のうちのいずれか)を意味する。
【0042】
「対象」は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、サル、ロバ、ウマ、ウシ、ブタ、マウス、ラット等)を意味する。
【0043】
「腸内の」とは、消化管の任意の部分に関与する投与を意味する。腸内投与としては、錠剤、カプセル剤、又は滴剤の形態での口からの投与(すなわち、経口投与)、胃栄養チューブ、十二指腸栄養チューブ、又は直腸投与を挙げることができる。
【0044】
「局所の」とは、局所的又は全身的投与、特に皮膚投与、吸入投与、点眼薬、及び/又は点耳薬を意味する。
【0045】
「非経口の」とは、本発明の組成物を、経口摂取以外の手段、特に液体形態での体への注入によって投与することを意味する。非経口投与としては、静脈内投与、動脈内投与、骨内注入、筋肉内投与、脳内投与、側脳室内投与、及び皮下投与を挙げることができる。
【0046】
「化学的脱共役剤」は、膜越しにプロトンを輸送することができる化合物を意味し、プロトンがミトコンドリア内膜を越えて輸送された場合、ATP合成が迂回される。例えば、化学的脱共役剤は、限定されるものではないが、表1に列挙される化合物である。一部の実施形態において、化学的脱共役を通じて、グルコースの酸化に由来するエネルギーの大部分は熱として放出されるため、細胞は、同じ数のATP分子を生成するために、通常の(基本)条件の場合よりも遥かに多い数のグルコース分子の酸化を行わなければならない。
【0047】
「肥満」又は「過体重」は、肥満度指数(BMI)が30kg/m2を上回る対象を意味する。
【0048】
「生活習慣の修正」は、体重減少、維持、又は他の健康上の懸念に対処するという目標を持ちながら、増加した活動を組み込むための、対象の通常の日常的慣習における変更を意味する。例えば、生活習慣の修正は、肥満を治療するために医師によって処方され得る。生活習慣の修正としては、限定されるものではないが、運動の増加、喫煙の減少、及び/又は食事プランの関与を挙げることができる。
【0049】
「監視」は、対象の進捗、及び対象が治療の下で病態における改善を経ているかどうかを観察及び判定することを意味する。監視はまた、治療前又は後に行われてもよい。例えば、本明細書において、監視は、対象が、糖尿病の徴候又は症状における改善を経ているかどうかを判定するために使用される。
【0050】
「相乗効果」は、2つ以上の活性剤(例えば、本明細書に記載される化合物のうちのいずれか)が一緒に投与され、結果として得られた効果が、本発明の組成物を用いて治療されている対象に対して単独で投与した場合の各薬剤の相加効果よりも大きい場合を意味する。
【0051】
「アミン塩基触媒」は、ただ1つの電子対を有する塩基性窒素原子を含有する有機化合物を意味し、これは、いかなる永続的化学変化も受けることなく、化学反応速度を上昇させるように機能する。代表的なアミン塩基触媒としては、限定されるものではないが、アンモニア、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、及びサルコシン、又はそれらの塩が挙げられる。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「L-カルニチン塩」は、妥当な医学的判断の範囲内において、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに、不適当な毒性、炎症、アレルギー応答等を伴わずに好適であり、且つ妥当な利益/リスク比に見合うL-カルニチン塩を表す。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知である。例えば、薬学的に許容される塩については、Bergeら、J. Pharmaceutical Sciences 66:1~19頁、1977年及びPharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use、(P. H. Stahl及びC. G. Wermuth編)、Wiley-VCH、2008年に記載されている。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離及び精製過程においてその場で調製されてもよく、又は遊離塩基を好適な有機若しくは無機酸と反応させることで別個に調製してもよい。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、並びに、限定されるものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含む、無毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「約」は、列挙された値の±25%の量を指す。
【0054】
本明細書で使用する場合、別途指示の無い限り、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味する。加えて、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「この(the)」は、別途文脈が明確に規定しない限り、複数の指示対象を含む。
【0055】
本発明の他の特色及び利点は、以下の発明を実施するための形態、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明者等は、L-カルニチンと組み合わされた化学的脱共役剤[例えば、チロホスチン9(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジリデン)-マロノニトリルとも呼ばれる]が、重量、血漿グルコースレベル、及び/又は血漿トリグリセリドレベルを低下する上で相乗効果をもたらすことを発見した。本発明者等はまた、チロホスチン9を含む組成物が、肥満及び/又はメタボリック症候群に悩む対象に対して経口投与された場合、重量減少/スリミング及びトリグリセリドレベルの低下をもたらすことを示した。更に、本発明者等は、チロホスチン9の投与が、糖尿病の対象において、血漿グルコースレベル及び血漿トリグリセリドレベルの安定化に寄与することを示した。加えて、本発明者等は、本明細書において、当該技術分野において現在利用可能な方法よりも簡便な、チロホスチン9の合成方法を提供する。したがって、本発明は、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防において使用するための、化学的脱共役剤(例えば、チロホスチン9)を単独で含む組成物、及びそれを他の治療剤(例えば、L-カルニチン)と共に含む組成物を特徴とする。
【0057】
治療剤
化学的脱共役剤
酸化的リン酸化反応の既知の化学的脱共役剤としては、限定されるものではないが、下の表1に示され、米国特許出願公開第2004-0138301号に見出される化合物が挙げられる。この出願公開は、参照により本明細書に組み込まれる。このような化合物は、ミトコンドリア呼吸を安全に増進することが知られており、この代謝作用の増加から利益を得る、肥満及び糖尿病、特に2型糖尿病を含む病態の治療において有用であり得る。一部の実施形態において、脱共役剤はまた、β細胞からのインスリン放出を低減することができ、これは糖尿病の予防において有用であり得る。
【0058】
【表1】
【0059】
チロホスチン9
本発明は、チロホスチン9(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジリデン)マロノニトリルとも呼ばれる)、及びその誘導体又は塩を含む組成物を特徴とする。チロホスチン9は、酸化的リン酸化反応の強力な脱共役剤として、並びに前駆脂肪細胞の成長した脂肪細胞への分化の阻害因子として振る舞い、それにより脂肪細胞の形成を防止することができる。チロホスチン9は、下に示される構造分子式を有する。
【0060】
【化1】
【0061】
チロホスチンは、チロシンリン酸化反応を低下させるベンジリデンマロノニトリルの誘導体であるため、単一のメディエーターのみならず、チロシンキナーゼによる細胞シグナル伝達にも影響を及ぼす。チロホスチンは、炎症関連疾患及び過剰増殖疾患の治療のための潜在的薬物として、集中的に調査されてきた(Dimitrova P., Ivanovska N. OA Inflammation 1(1):4 (2013))。チロホスチン9の生理学的特性は周知であり、この化合物が、非常に低い毒性の(インビトロ及びインビボにおいて)細胞保護剤であり、これは、ヒト好中球のTNF誘導性呼吸バーストを阻害するが、その殺菌活性は阻害しないこと、並びにこの化合物が、不適当な血管内膜過形成を特徴とする病態の治療において有益であり得ることが示されている。更に、チロホスチン9に構造的に非常に類似する多くのチロホスチンが、転写因子Nrf2の核移行の誘導を通じて、細胞保護遺伝子を強力に活性化することが示されており(Turpaev K.ら、Biochem. Pharmacol. 82(5):535-47 (2010))、チロホスチン9が、この経路を通じて細胞保護効果を生じている可能性が非常に高い。チロホスチン9及び関連するベンジリデンマロン酸誘導体は、実施例1に概説されるように得ることができる(下を参照)。
【0062】
実施例1の方法は、チロホスチン9及び関連する化合物を調製するために使用することができ、これらの化合物としては、限定されるものではないが、3,4-ジヒドロキシベンジリデン-マロノニトリル、3,5-ジヒドロキシベンジリデン-マロノニトリル、3-メトキシ-4,5-ジヒドロキシベンジリデンマロノニトリル、3,4,5-トリヒドロキシベンジリデン-マロノニトリル、及び3-ヒドロキシベンジリデン-マロノニトリルが挙げられる。本発明はまた、2つ以上のチロホスチン9の塩又は誘導体の混合物に加えて、チロホスチン9、その誘導体、及びチロホスチン9のうちの1つ以上の塩又は誘導体の混合物も提供する。一部の実施形態において、実施例1の変化形態を、類似の材料を得るために使用してもよい。チロホスチン9に関連する、ベンジリデン-及びシンナミリデン-マロン酸誘導体の更なる組成物が、欧州特許出願公開第EP0322738号に開示されており、この出願公開は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
チロホスチン9はまた、様々な化学薬品業者から商業的に得ることもできる。例えば、チロホスチン9は、以下の企業から入手可能である:RG-50872、Malonaben、SF 6847(Santa Cruz Biotechnology)、BML-EI215(Enzo Life Sciences)、ab141561(Abcam)、Sigma-T182(Sigma-Aldrich)、SF-6847(Selleck Chemicals)、及びAG-17(Cayman Chemical)。
【0064】
L-カルニチン
本発明はまた、チロホスチン9を、L-カルニチン、その誘導体及び塩と共に含む組成物を特徴とする。L-カルニチン及びその塩は、循環器疾患の治療において、並びに重量減少用の栄養補助食品において有用であり得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、L-カルニチンは、脂質の代謝作用を助長する場合がある。本発明の化合物は、限定されるものではないが、L-カルニチン、L-カルニチンの塩、アルカノイルL-カルニチン、及びアルカノイルL-カルニチンの塩を含む。
【0065】
L-カルニチン及びその誘導体の好適な塩としては、L-カルニチンタートレート、L-カルニチンクロリド、L-カルニチンブロミド、L-カルニチン酸アスパルテート、L-カルニチン酸ホスフェ-ト、L-カルニチンフマレート、L-カルニチンラクテート、L-カルニチンマレエート、L-カルニチン酸マレエート、L-カルニチン酸オキサレート、L-カルニチン酸サルフェート、L-カルニチングルコースホスフェート、L-カルニチン酸タートレート、L-カルニチンアイオデート、L-カルニチンアスパルテート、L-カルニチンシトレート、L-カルニチン酸シトレート、L-カルニチン酸フマレート、L-カルニチングリセロホスフェート、L-カルニチンムケート、L-カルニチンオロテート、L-カルニチンオキサレート、L-カルニチンサルフェート、L-カルニチントリクロロアセテート、L-カルニチントリフルオロアセテート、L-カルニチンメタンスルホネート、L-カルニチンパモエート、L-カルニチン酸パモエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン、C2-8アルカノイルL-カルニチンクロリド、C2-8アルカノイルL-カルニチンブロミド、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸アスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸ホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンフマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンラクテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンマレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸マレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸オキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸サルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチングルコースホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンタートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸タートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアイオデート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンシトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸シトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸フマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチングリセロホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンムケート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンサルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリクロロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリフルオロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンメタンスルホネート、C2-8アルカノイルL-カルニチンパモエート、及びC2-8アルカノイルL-カルニチン酸パモエートが挙げられる。
【0066】
本発明はまた、2つ以上のL-カルニチンの塩の混合物に加えて、L-カルニチン及び1つ以上のL-カルニチンの塩の混合物も提供する。本組成物は、補助剤中でL-カルニチン又はその塩が組み合わされることが既知の追加的な活性成分のうちのいずれか、例えばヒドロキシクエン酸、コエンザイムQ10、ピコリン酸クロム、γリノレン酸、レスベラトロール、ω-3酸、抗酸化剤、並びに/又はビタミンB複合体、ビタミンC、副腎抽出物、及びパントテン酸等のビタミンを更に含み得る。
【0067】
本組成物は更に、ウコン(Curcuma longa)、クロフサスグリ、ヤマモモ樹皮、シロコヤマモモ(Myrica cerifera)、黒米(Oryza sativa L. indica)、チャノキ(Camellia sinensis)、カカオ(Theobroma cacao)、アムラ(Emblica officinalis)、マテチャ(Ilex paraguariensis)、カスカラサグラダ樹皮、カスカラサグラダ(Rhamnus purshiana)、アラビアゴムモドキ(Acacia nilotica)、カキ、ブルーベリー葉、ブドウ種子、チャデブグレ(Cordia salicifolia)、オトギリソウ(Hypericum perforatum)、クズ(Pueruria thomsonn)、ケッパー(Capparis spinosa)、ホウライアオカズラ(Gymnema sylvestre)、ニワトコの実、ニワトコ(Sambicus)、ダイダイ(Citrus aurantium)、グリーンコーヒー(Coffea canefora)ビーン、ムラサキフトモモ(Sygium cumini)、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)、ショウガ(Zingiber officinalis)、カワラケツメイ(Cassia nomame)、シカクヤブガラシ(Cissus quadrangularis)、リンゴ、クランベリー、ローズヒップ、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、カンゾウ根、コロハ、ヨヒンベ、シロヤナギ、トウチュウカンソウ(Cordyceps sinensis)、アシュワガンダ、アストラガルス、チョウセンニンジン、マツブサ、シベリアニンジン、高麗人参、グッグル(Commiphora mukul)、ニガウリ(Momordica charantia)、ガルシニアカンボジア(Garcinia cambogia)、ビロウドアオイ(Althaea officinalis)、ココノエカズラ(Bougainvillea spectabilis)、アルファルファ(Medicago sativa)、セイヨウカノコソウ(Valeriana officinalis)、ダミアナ、カモミール、カバカバ、トケイソウ、ホップ、タツナミソウ、サンザシ、ラベンダー、ツクシ、タンポポ、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、クマコケモモ、パセリ、ガラナ、トウガラシ属、及びネギ属の粉末若しくは抽出物、又は有効成分を含んでもよい。
【0068】
本発明は更に、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム、テトラデシルチオ酢酸(TTA)、甲状腺ホルモン又はそれらの前駆体、甲状腺機能の促進剤、クレブス回路代謝物質、UCP-1、UCP-2、UCP-3、PUMP(植物脱共役ミトコンドリアタンパク質)等の内因性脱共役タンパク質(複数可)、又はその(それらの)前駆体(複数可)、作動薬(複数可)、若しくは促進剤、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、プロリン、チロシン、共役リノール酸、アドレナリン分泌促進剤、脂肪酸又はエステル、β作動薬、グルカゴン、アルブタミン、バソプレッシン、ユビキノン、コエンザイムQ1、コエンザイムQ2、メラトニン、オレイルエストロン(oleylestrone)等のエストロゲンの脂肪酸エステル、グルコマンナン、メントール、ペパーミント精油、タイム精油、元素硫黄、及びポリコサノールを含んでもよい。
【0069】
L-カルニチン及びその塩は、米国特許第4,254,053号、同第4,602,039号、同第5,412,113号、及び同第7,303,765号に記載されている方法で便宜的に調製することができ、これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本発明の組成物はまた、酸化的リン酸化反応の化学的脱共役剤、インスリン、スルホニルウレア、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、抗糖尿病剤、スタチン、又は重量減少補助剤等の、重量増加の予防、重量減少の促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防を行うことが知られている化合物と共に使用することもできる。
【0071】
抗糖尿病剤及び抗肥満剤
本発明の組成物は、インスリン及びインスリン類似体、並びに経口活性血糖降下剤を含む、好適な抗糖尿病剤と共に製剤化及び投与することができる。経口活性血糖降下剤としては、限定されるものではないが、スルホニルウレア、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、及びメグリチニドを挙げることができる。薬学的に利用可能なスルホニルウレアの例としては、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリボルヌリド、グリクラジド、グリメピリド、グリピジド、トラザミド、及びトルブタミドが挙げられる。ビグアナイドの例としては、2型糖尿病、特に過体重又は肥満の対象における一般的治療薬である、メトホルミン(N,N-ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミド又はグルコファージとも呼ばれる)が挙げられる。αグルコシダーゼ阻害剤は、糖尿病を有する対象における炭水化物の消化作用を抑止するために使用でき、限定されるものではないが、ミグリトール((2R,3R,4R,5S)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオール又はGlysetとも呼ばれる)及びボグリボース((1S,2S,3R,4S,5S)-5-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルアミノ)-1-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラオールとも呼ばれる)を挙げることができる。チアゾリジンジオンの例としては、限定されるものではないが、ロシグリタゾン((RS)-5-[4-(2-[メチル(ピリジン-2-イル)アミノ]エトキシ)ベンジル]チアゾリジン-2,4-ジオン又はAvandiaとも呼ばれる)、ピオグリタゾン((RS)-5-(4-[2-(5-エチルピリジン-2-イル)エトキシ]ベンジル)チアゾリジン-2,4-ジオン又はActosとも呼ばれる)、ロベグリタゾン(5-[(4-[2-([6-(4-メトキシフェノキシ)ピリミジン-4-イル]-メチルアミノ)エトキシ]フェニル)メチル]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン又はDuvieとも呼ばれる)、及びトログリタゾン((RS)-5-(4-[(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-イル)メトキシ]ベンジル)チアゾリジン-2,4-ジオン、又はRezulin、Resulin、Romozin、若しくはNoscal)を挙げることができる。メグリチニドの例としては、限定されるものではないが、レパグリニド((S)-(+)-2-エトキシ-4-[2-(3-メチル-1-[2-(ピペリジン-1-イル)フェニル]ブチルアミノ)-2-オキソエチル]安息香酸又はPrandinとも呼ばれる)、ナテグリニド(3-フェニル-2-[(4-プロパン-2-イルシクロヘキサンカルボニル)アミノ]プロパン酸又はStarlixとも呼ばれる)、及びミチグリニド((2S)-2-ベンジル-4-[(3aR,7aS)-オクタヒドロ-2H-イソインドール- 2-イル]-4-オキソブタン酸又はGlufastとも呼ばれる)を挙げることができる。一部の実施形態において、本発明の組成物は、スタチン等の抗高脂血症剤又は補助剤と共に製剤化されてもよく、又は投与されてもよい。スタチンの例としては、限定されるものではないが、ロバスタチン、プラバスタチン、及びシンバスタチンが挙げられる。
【0072】
重量減少補助剤
ヒトによる消費にとって安全な1つ以上の重量減少補助剤を、本発明の組成物に添加することができる。これらには、天然、合成、又はそのような物質の任意の組み合わせが含まれる。例えば、補助剤としては、限定されるものではないが、L-オルニチン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-フェニルアラニン、共役リノール酸、γリノレン酸、ピコリン酸クロム、耐糖因子、硫酸バナジル、ギムネマシルベスタ、ブロメライン、パンクレアチン、パパイン、コエンザイムQ10、クルクミン、メギ、クマコケモモ、シリマリン、テウクリウムポリウム(Teucrium polium)、コリン、イノシトール、ヒト成長ホルモン、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、カフェイン、キサンテン(例えば、フコキサンチン)、コーラナッツ、オオバコ、イェルバ・マテ、グアラーナ、チョウセンニンジン、中鎖トリグリセリド、ヒドロキシクエン酸(HCA)、ケルプ、レシチン、ジヒドロキシアセトン、ピルベート、クレアチン、ヨウ素、ナイアシン、ヒバマタ、ホワイトビーン(white bean)抽出物、グルコマンナン、キトサン、レスベラトロール、レスベラトロール誘導体、ビタミンD、hCG、カプサイシン、チア、フーディア、リンゴ酢、ヤシ油、ダイダイ、及びビタミンB群を挙げることができる。
【0073】
薬学的組成物及び製剤
本発明の組成物は、当該技術分野において既知の様々な方法で投与することができる。当業者には理解されるように、投与の経路及び/又は形態は、所望の結果に応じて異なることとなる。本組成物は、予防的治療及び/又は治療処置のために、非経口投与、鼻腔内投与、局所(topical)投与、経口投与、又は経皮手段等による局所投与(local administration)用に製剤化することができる。本組成物は、下で更に考察されるように、経口摂取によって、又は局所適用によって、又は非経口的に(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、若しくは皮下注射によって)投与することができる。投与の更なる経路としては、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜内(intraepidural)、並びに経鼻、点眼、強膜内、眼窩内、直腸、又はエアロゾル吸入投与が挙げられる。
【0074】
経口投与
経口使用のための製剤としては、無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中の活性成分(複数可)を含有する錠剤が挙げられ、そのような製剤は当業者に既知である(例えば、ここに参照によって組み込まれる、米国特許第5,817,307号、同第5,824,300号、同第5,830,456号、同第5,846,526号、同第5,882,640号、同第5,910,304号、同第6,036,949号、同第6,036,949号、及び同第6,372,218号)。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤又は充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖質、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギネート、又はアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、α化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はポリエチレングリコール);並びに潤滑剤、流動促進剤、及び抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水添植物油、又はタルク)であってもよい。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、香味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤等であり得る。
【0075】
錠剤は、コーティングされずともよく、又は任意選択で、消化管における分解及び吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたって持続的作用をもたらすように、既知の技法によってコーティングされてもよい。コーティングは、所定のパターンで化合物を放出するように適合されてもよく(例えば、放出制御製剤を達成するため)、又は胃を通過するまで薬剤(複数可)を放出しないように適合されてもよい(腸溶コーティング)。コーティングは、糖衣、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、及び/若しくはポリビニルピロリドンに基づく)、又は腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、シェラック、及び/若しくはエチルセルロースに基づく)であってもよい。更に、例えばモノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を採用してもよい。固形錠剤組成物は、意図せざる化学変化(例えば、活性物質の放出前の化学的分解)からその組成物を保護するように適合されたコーティングを含み得る。コーティングは、上記のEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている様式と類似する様式で、固体剤形に適用することができる。
【0076】
本発明の組成物は、錠剤中で共に混合されてもよく、又は分配されてもよい。一実施例において、第1の薬剤の放出前に、相当な部分の第2の薬剤が放出されるように、第1の薬剤が錠剤の内側に含有され、第2の薬剤が外側に存在する。
【0077】
経口使用のための製剤はまた、咀嚼錠として、或いは活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、及び/又は任意の薬学的に許容される賦形剤若しくは添加剤)と共に混合される、硬質ゼラチンカプセルとして、或いは活性成分が水又は油性媒体、例えば落花生油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油と共に混合される、軟質ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。経口使用のための製剤はまた、小袋として提供されてもよい。
【0078】
経口使用のための製剤は、持続放出性製剤又は持効性放出製剤/単位剤形として更に提供されてもよい。散剤及び顆粒剤を、錠剤及びカプセル剤の元で上に述べた成分を用いて、例えば混合機、流動床装置、又は噴霧乾燥設備を使用する従来の様式で調製することができる。本発明の化合物は、そのような組み合わせにおいて有効期間の延長が可能となる。
【0079】
局所製剤
本発明による薬学的組成物は、局所投与用に製剤化することができる。対象は、本明細書に記載される有効量の化合物を、皮膚への局所適用によって投与され得る。本発明の組成物は、限定されるものではないが、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、洗浄用液体洗浄液(cleansing liquid wash)及び固形棒、シャンプー、ペースト、散剤、フォーム、ムース、及びワイプを含む、多様な種類の製品へと製剤化することができる。これらの製品の種類には、限定されるものではないが、溶液、乳剤(例えば、マイクロエマルション及びナノエマルション)、ゲル、固形物、及びリポソームを含む、いくつかの種類の美容的に許容される局所的担体、又は皮膚科学的に(dermalogically)許容される担体が含まれ得る。他の担体が当業者によって製剤化されてもよい。
【0080】
本発明において有用である局所用組成物は、溶液として製剤化することができる。好ましくは、溶液は、水性溶媒(例えば、約50%~約99.99%、又は約90%~約99%の美容的に許容される水性溶媒)を含むべきである。より好ましくは、そのような組成物は約30%の溶媒を含有するべきであるが、これは製剤に応じて変動してもよい。そのような組成物としては、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、それらの混合物等を挙げることができる。
【0081】
局所用組成物はまた、皮膚軟化剤を含有する溶液として製剤化されてもよい。そのような組成物は、約2%~約50%の皮膚軟化剤(複数可)を含有することが好ましい。本明細書で使用する場合、「皮膚軟化剤」は、乾燥の予防又は軽減、及び皮膚の保護のために使用される材料を指す。多様な、好適な皮膚軟化剤が既知であり、本明細書で使用され得る。The International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、Wenninger及びMcEwen編、1656-61、1626、及び1654-55ページ(The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Assoc、Washington, D. C、第7版、1997年)は、好適な材料の多数の例を含む。ローションが溶液から作製されてもよい。ローションは、典型的には、約1%~約20%(より好ましくは、約5%~約10%)の皮膚軟化剤(複数可)、及び約50%~約90%(より好ましくは、約60%~約80%)の水を含有する。本発明の組成物は、クリームとして製剤化することができる。クリームは、典型的には、約5%~約50%(より好ましくは、約10%~約20%)の皮膚軟化剤(複数可)、及び約45%~約85%(より好ましくは、約50%~約75%)の水を含有する。溶液から製剤化することができる更に別の種類の製品は、軟膏である。軟膏は、動物油若しくは植物油の単一塩基、又は半固体の炭化水素で構成され得る。軟膏は、約2%~約10%の皮膚軟化剤(複数可)、及び約0.1%~約2%の増ちょう剤(複数可)を含有してもよい。上記のINCI Handbookは、本発明の組成物、方法、及びキットにおいて有用な、許容される増ちょう剤又は増粘剤のリストを含む。
【0082】
本発明において有用である局所用組成物はまた、好ましくは、乳剤として製剤化することができる。担体が乳剤である場合、約1%~約10%(好ましくは、約2%~約5%)の担体が、1つ以上の乳化剤で構成されるべきである。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、又はカチオン性であり得る。好適な乳化剤は、例えばINCI Handbook、1673-1686ページに見出すことができる。
【0083】
ローション及びクリームもまた、乳剤として製剤化することができる。典型的には、そのようなローションは、0.5%~約5%の乳化剤(複数可)を含有することが好ましい。そのようなクリームは、典型的には、約1%~約20%(好ましくは、約5%~約0%)の皮膚軟化剤(複数可)、約20%~約80%(好ましくは、30%~約70%)の水、及び約1%~約10%(好ましくは、約2%~約5%)の乳化剤(複数可)を含む。水中油型及び油注水型の、ローション及びクリーム等の単独乳剤スキンケア調製物が、美容分野において周知であり、本発明において有用である。水中油中水型等の多相乳剤組成物もまた、本発明において有用である。概して、そのような単独又は多相乳剤は、水、皮膚軟化剤、及び乳化剤を必須成分として含有する。
【0084】
本発明の局所用組成物は、ゲル(例えば、好適なゲル化剤(複数可)を用いる水性ゲル)として製剤化することができる。水性ゲル用の好適なゲル化剤としては、限定されるものではないが、天然ゴム、アクリル酸及びアクリレートポリマー及びコポリマー、並びにセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)が挙げられる。油(鉱物油等)用の好適なゲル化剤としては、限定されるものではないが、水素化ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー及び水素化エチレン/プロピレン/スチレンコポリマーが挙げられる。そのようなゲルは、典型的には、そのようなゲル化剤の約0.1重量%~約5重量%を構成する。ミクロゲルを、本製剤の小胞送達を増進するために使用することができる。
【0085】
本発明の組成物は、1つ以上の界面活性剤を含有してもよい。一実施形態において、本組成物は、起泡性界面活性剤を含有してもよい。起泡性界面活性剤は、水と組み合わせて機械的に撹拌したときに泡を生み出す界面活性剤である。一実施形態において、起泡性界面活性剤は、ASTM Annual Book of ASTM Standards 1001 Section 15 Volume 15.04に示されている、界面活性剤の発泡特性のための標準試験方法、D1173-53(5グラム/リットルの濃度、49℃の温度、及び8グレイン/ガロンの水の硬度を用いる)において、少なくとも50mm等、少なくとも20mmの初期泡高示数を有する。起泡性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性起泡性界面活性剤が挙げられる。アニオン性起泡性界面活性剤の非限定的例としては、サルコシネート、サルフェート、イセチオネート、タウレート、ホスフェート、ラクチレート、及びグルタメートからなる群から選択されるものが挙げられる。具体的な例としては、限定されるものではないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸アンモニウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイル乳酸ナトリウム、ラウロイル乳酸トリエタノールアミン、カプロイル乳酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、及びココイルグルタミン酸ナトリウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。非イオン性起泡性界面活性剤の非限定的例としては、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、起泡性スクロースエステル、アミンオキシド、及びそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。具体的な例としては、限定されるものではないが、C8-C14グルコースアミド、C8-C14アルキルポリグルコシド、スクロースココエート、ラウリン酸スクロース、ラウラミンオキシド、ココアミンオキシド、及びそれらの混合物から選択される非イオン性界面活性剤が挙げられる。両性起泡性界面活性剤の非限定的例は、両性イオン性起泡性界面活性剤も含むが、ベタイン、スルタイン、ヒドロキシスルタイン、アルキルイミノアセテート、イミノジアルカノエート、アミノアルカノエート、及びそれらの混合物からなる群から選択されるものである。本発明の両性界面活性剤の非限定的例としては、ラウロアンホジ酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、セチルジメチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ココアミドプロピルヒドロキシスルタイン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0086】
本発明の組成物は、1つ以上の追加的な化粧活性剤、並びに上述の構成成分を更に含有してもよい。化粧活性剤は、合成化合物、又は天然源若しくは化合物の混合物を含有する天然抽出物から単離、精製、若しくは濃縮された化合物であってもよい化合物であり、この化合物は、限定されるものではないが、抗酵母剤、抗真菌剤、及び抗菌剤等の抗微生物剤、抗炎症剤、抗老化剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛薬、日焼け止め剤、光防護剤、抗酸化剤、角質溶解剤、洗浄剤/界面活性剤、保湿剤、栄養剤、ビタミン、ミネラル、エネルギー賦活薬(energy enhancer)、発汗抑制剤、収斂剤、育毛促進剤、染毛剤、顔料、固化剤、皮膚調整剤、並びに臭マスキング剤又はpH変化剤等の賦香剤を含む、組織に対する美容効果又は治療上の効果を有する。一実施形態において、化粧活性剤は、限定されるものではないが、ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、D-パンテノール、オクチルメトキシシンナメート、二酸化チタン、サリチル酸オクチル、ホモサラート、アボベンゾン、カロテノイド、フリーラジカル捕捉剤、スピントラップ、レチノイン酸(トレチノイン)等のレチノイド、並びにレチノール及びパルミチン酸レチニル等のレチノイド前駆体、ビタミンE(α、β、若しくはδ-トコフェロール、及び/又はそれらの混合物)等のビタミン、セラミド、多価不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、酵素、酵素阻害剤、ミネラル、プロゲステロン等のホルモン、ヒドロコルチゾン等のステロイド、2-ジメチルアミノエタノール、塩化銅等の金属(限定されるものではないが、鉄又は亜鉛を含む)塩、Cu:Gly-His-Lys等の銅含有ペプチド、コエンザイムQ10、アミノ酸、ビタミン、アセチルコエンザイムA、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、リボース、NADH及びFADH2等の電子伝達物質、アロエベラ、ナツシロギク、及びダイズ等の植物抽出物、並びにそれらの誘導体及び混合物からなる群から選択され得る。化粧活性剤は、好ましくは、本発明の組成物中に本組成物の約0.001重量%~約20重量%、より好ましくは約0.005%~約10%、最も好ましくは約0.01%~約5%の量で存在することになる。
【0087】
本発明の組成物はまた、直腸送達用の坐薬(例えば、カカオバター及びそれらのグリセリド等の基剤を伴う)又は保持浣腸剤として製剤化することもできる。
【0088】
非経口組成物
本明細書に記載されるか、又は本発明の方法を用いて特定される化合物を含有する組成物は、注射、注入、又は留置(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内等)によって、剤形で、製剤で、又は好適な送達デバイス若しくは従来型の無毒性で、薬学的に許容される担体及びアジュバントを含有する留置剤を介して、非経口的に投与してもよい。そのような組成物の製剤化及び調製は、医薬製剤の分野の当業者には周知である。
【0089】
非経口使用のための組成物は、単位剤形(例えば、単一用量のアンプル)で提供されてもよく、又は好適な保存料が添加され得る、いくつかの用量を含むバイアルで提供されてもよい。本組成物は、溶液、懸濁剤、乳剤、注入デバイス、又は留置用の送達デバイスの形態であり得る。或いは、本組成物は、使用前に水又は別の好適なビヒクルで復元される乾燥散剤として提示されてもよい。活性剤(複数可)とは別に、本組成物は、好適な、非経口的に許容される担体及び/又は賦形剤を含んでもよい。活性剤(複数可)は、放出制御のために、ミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム等に組み込まれてもよい。更に、本組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、pH-調整剤、等張化剤、及び/又は分散剤を含んでもよい。
【0090】
上に示されるように、本発明による薬学的組成物は、無菌注射にとって好適な形態であり得る。そのような組成物を調製するために、好適な活性剤(複数可)は、非経口的に許容される液体ビヒクル中に溶解又は懸濁される。水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウム、又は好適な緩衝液を添加することによって好適なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンガー液、デキストロース溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液が、採用することができる、許容されるビヒクル及び溶媒の内にある。水性製剤もまた、1つ以上の保存料(例えば、メチル、エチル、又はn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート)を含有してもよい。化合物のうちの1つがかろうじて、又は僅かしか水に溶けない場合、溶解促進剤若しくは可溶化剤を添加してもよく、又は溶媒が、10~60%(w/w)のプロピレングリコール等を含んでもよい。
【0091】
投与量
本発明の組成物は、当業者に既知の従来型の方法によって、薬学的に許容される剤形へと製剤化される。本発明の組成物中における活性成分の実際の投与量レベルは変更して、対象に対して有毒とならずに、特定の対象にとって所望される治療応答又は予防応答を達成するのに有効な活性成分の量、組成、及び投与形態を得るようにすることができる。選択される投与量レベルは、採用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、採用されている特定の薬剤の吸収速度、治療の持続期間、採用される特定の組成物と共に使用される他の薬物、物質、及び/又は材料、年齢、性別、重量、病態、治療されている対象の一般的な健康及び以前の病歴、並びに医療分野において周知の同様の因子を含む、様々な薬物動態因子に左右されることになる。本明細書に記載される任意の組成物の投与量はまた、所望される重量減少の量又は速度、糖尿病の進行の重症度又は段階、並びに治療される対象の年齢、重量、及び健康状態にも左右され得る。
【0092】
当業者である医師は、必要とされる本組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師は、本組成物中で採用される本発明の物質の用量を、所望される治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルから始め、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させてもよい。概して、本発明の組成物の好適な一日量は、治療効果又は予防効果を生み出すのに有効な最も低い用量である、その物質の量となる。そのような有効量は、一般に、上に記載された因子に左右されることになる。本発明の組成物は、都合のよいことに単位剤形で投与することができ、例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」(第20版、A. R. Gennaro編、2000年、Lippincott Williams & Wilkins)に記載されているように、薬学分野において周知の方法のいずれかによって調製することができる。好ましい治療上の投与量レベルは、本明細書に記載される症状、症候、及び病的状態のほとんどを有する対象に対して投与される用量1回について、約2mg~約200mg(例えば、2、4、6、8、10、20、40、60、80、100、125、150、175、及び200mg)のチロホスチン9、その誘導体及び塩である。好ましい投与量レベルは、約50mg~約5000mg(例えば、50、60、70、80、90、100、250、500、750、1000、2000、3000、4000、及び5000mg)のL-カルニチン、並びにその誘導体及び塩である。
【0093】
本組成物は、対象に対して単一の一日量で、又は複数回の用量で投与され得る。投与は、1日に1回若しくは複数回、毎週(若しくは、いくらかの他の複数日の間隔をおいて)、又は所与の回数(例えば2~10サイクル)、若しくは無期限に繰り返されるサイクルを伴う断続的スケジュールであり得る。例えば、本明細書に記載される組成物は、1日に1回、例えば2、3、4、5、6、7、8、10、15、20、25、30、又はそれ以上の日数の間、投与され得る。別の実施形態においては、組成物は、1日に1回以上、例えば1日に2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の回数、投与され得る。本組成物はまた、例えば30日間を超えて、例えば31日間、40日間、50日間、60日間、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、又は3年)、慢性的に投与することもできる。本発明の組成物は、少なくとも30日間以上投与されることが好ましい。治療の第1週の間は、全ての対象に対して、約10mgのチロホスチン9及び約700mg~約1400mgのL-カルニチンタートレート又はL-カルニチンフマレートという一日量が投与されることが好ましい。この1週間の終わりまでに対象から体熱の上昇及び/又は発汗の増加が報告されない場合、一日量を、20mgのチロホスチン9及び約1400~約2800mgのL-カルニチンフマレート又はタートレートに増加させ、同時に服用するべきである。
【0094】
熱感又は発汗の増進が第2週の終わりまでに報告されない場合にのみ、一日量が、約30mgのチロホスチン9及び約2100mg~約4200mgのL-カルニチンタートレート又はフマレートに増加されるべきである。並外れて肥満性の個体の場合にのみ、有効量において、1日当たりのチロホスチン9が30mgを上回ることが予期されるべきである。涼しい環境に身を置くこと(少なくとも、発汗時又は体温のピーク時)、並びに水分不足を避け、失われた電解質を補充することが推奨されるべきである。過量服用した場合(脈拍数の上昇及び患者の疲労によって証拠付けられる)には、適切な対応としては、患者の衣服を脱がせることで冷やすこと、ぬるま湯を吹きかけること、及び工業グレードの送風機で風を送ることが挙げられる。冷却が起こらない場合、体表、腋窩(auxiliary)、及び鼠径部に氷嚢を直ぐに適用するべきであり、並びに、低温のグルコース溶液及びバイカーボネート溶液の静脈内投与を行うべきである(1~2mEq/kg)。上述の対応がうまくいかない場合、尿量をマンニトールの投与により修正し、低血糖症を、50%飽和グルコース溶液の静脈内投与によって修正するべきである。重度又は持続的な代謝亢進が上述の対応では修正できない場合、直腸のプロピルチオウラシル(1000mg)、ヒドロコルチゾン(6時間で100mg)、又はデキサメタゾン(6時間で2mg)を、静脈内に投与すべきである。患者の興奮及び不穏状態は、ジアゼパムの適切な静脈内投与又は筋肉内投与によって回避することができる。
【0095】
任意の特定の対象について、具体的な投与体制は、個々のニーズ及び本化合物の投与を管理又は監督する人物の専門的判断に従って、経時的に調整されるべきであることが理解されるであろう。例えば、化合物の投与量は、より少ない用量が重量減少の促進又は糖尿病の治療において十分な活性を提供しない場合、増加することができる。反対に、本明細書に記載される方法によって評価したとき、重量減少又は糖尿病における改善が見られた場合、化合物の投与量は減少させてもよい。本組成物は、症状が起こっているとき、又は症状が和らぐまで投与することができる。治療の成功は、患者の食事のカロリー摂取量に決定的に依存するという観察結果について患者に完全に認識させることに対して、努力が払われるべきである。治療の開始時において、患者の重量増加率が著しい場合、彼/彼女は、彼/彼女のカロリー摂取量が有意に削減されなければ、彼/彼女の重量の縮減はほぼ期待できない旨を説明されるべきである。
【0096】
本明細書に記載される化合物は、任意選択で、製薬業界で一般的に使用されている無毒性酸付加塩又は金属錯体等の、薬学的に許容される塩として投与されてもよい。酸付加塩の例としては、酢酸、乳酸、パモ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、又はトリフルオロ酢酸等の有機酸;タンニン酸、カルボキシメチルセルロース等の高分子酸;及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸に由来するものが挙げられる。金属錯体としては、亜鉛、鉄等が挙げられる。
【0097】
本組成物は、上に記載される任意の有用な方法で調製することができる。例えば、少なくとも1つの治療剤をエタノール中に溶解させ、ポリエチレングリコール(PEG)の混合物に添加する。別の実施例においては、本組成物は、C-12からC-16の間で相違する炭素鎖を伴う中鎖脂肪酸の、ジメチルアラニンアミド等の皮膚浸透賦活薬を更に含む。より具体的には、活性化合物単独、又はその組み合わせを、軟膏の形態又はクリームの形態で調製してもよい。本組成物中の活性化合物は、0.5重量%~30重量%(w/w)の範囲内である。最も好ましい範囲は、5%~20%(w/w)である。別の実施形態においては、本組成物は、0.5%~2%、1%~2%、2.5%~5%、8%~12%、10%~20%、又は20~30%(w/w)の少なくとも1つの化合物(すなわち、チロホスチン9、その誘導体及び塩)を含む。一実行形態においては、活性化合物は、本組成物中に少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも25%(w/w)の量で存在し、例えば、チロホスチン9、その誘導体及び塩、又はL-カルニチン及びその塩であり得る。
【0098】
治療の方法
肥満
本明細書に記載される化合物及び組成物は、肥満の治療にとって有用である。肥満は、過剰な体脂肪が健康状態に対して負の効果を有し、健康問題の増加につながり得る程度にまで蓄積された医学的状態である。肥満は、過剰な食物摂取、身体活動の不足、感情的な問題、及び遺伝子感受性、並びに内分泌障害、ある特定の薬物、又は精神医学的病気の組み合わせによって引き起こされ得る。肥満を有する個体では、多くの身体状態及び精神状態のリスクが増加しているため、肥満は平均余命を縮めることが確認されている。肥満と関連付けられる病態の非限定的例としては、メタボリック症候群、2型糖尿病、高血圧、高い血中コレステロール、循環器疾患、閉塞性睡眠時無呼吸、ある特定の種類の癌、骨関節炎、喘息、高血圧症、不妊症、先天性欠損症、多嚢胞性卵巣症候群、鬱病、痛風、骨関節炎、偏頭痛、認知症、心筋梗塞、鬱血性心不全、多発性硬化症、及び手根管症候群が挙げられる。肥満は更に、血漿中の高いトリグリセリドレベル、及び血漿中で過剰な量のグルコースが循環する、高血糖症によって特徴付けることができる。したがって、本発明の組成物による治療は、肥満又は過体重の対象において、重量減少の促進だけでなく、高い血中グルコースレベル及び高いトリグリセリドの血漿レベルの正常化も行うことが示された。更に、肥満である対象の約90%が糖尿病でもあるため、本発明の治療方法は、糖尿病でもある肥満対象の集団もまた包括する。
【0099】
糖尿病
本明細書に記載される化合物及び組成物は、糖尿病の進行の治療又は予防にとって有用であり得る。糖尿病は、身体が十分なインスリンを産生しないため、又は細胞が産生されたインスリンに対して応答しないために人間が高血糖を有する、任意の代謝性疾患であり得る。したがって、本発明の組成物による治療は、糖尿病の対象における高い血糖レベルを正常化することが示されている。糖尿病の非限定的例としては、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、先天性糖尿病、嚢胞性線維症関連糖尿病、ステロイド糖尿病、成人の潜在性自己免疫性糖尿病、及び単一遺伝子糖尿病が挙げられる。糖尿病と関連付けられる合併症としては、限定されるものではないが、低血糖症、糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン性高浸透圧性昏睡、循環器疾患、慢性腎不全、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、糖尿病に関連する足の問題(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、及び糖尿病性網膜症が挙げられる。
【0100】
肥満及び糖尿病の組み合わせ
この患者集団に対する治療方法は、上に詳述される肥満患者に対して推奨される方法と本質的に同じである。
【0101】
肥満及び糖尿病の症状
一部の実施形態において、肥満及び/又は糖尿病を有する対象が、疾患、障害、又は病態の症状によって、本明細書に記載される組成物による治療の候補として特定される。先に記載した関連する疾患リスク(例えば、2型糖尿病、高血圧症、及び循環器疾患)に加えて、肥満の対象は、通常を上回るBMI、例えば約30kg/m2超(例えば、約29、31、32、33、34、又は35kg/m2)のBMI、及び通常よりも太いウエスト周囲、例えば、男性の場合約102cm超(例えば、約100、101、102、103、104、若しくは105cm)、又は女性の場合約88cm超(例えば、約86、87、89、90、91、若しくは92cm)のウエスト周囲を有するとして分類することができる。肥満と関連付けられる追加的な身体状態としては、息切れ、疲労感、関節又は筋肉の痛み、皮膚の問題、静脈瘤、及び不規則な月経周期を挙げることができる。一部の実施形態において、肥満の対象は、トリグリセリドの高い血漿レベル又は高トリグリセリド血症の病態、例えば、約150mg/dL超(例えば、約148、149、151、152、若しくは153mg/dL)のレベルによって特定される。肥満の対象は更に、絶食時に、血漿グルコースの通常のレベルよりも高い、例えば約100mg/dL(例えば、約98、99、101、102、又は103mg/dL)のレベルを有し得る。肥満の更なる非限定的症状としては、低減された、例えば約40mg/dL未満(例えば、約37、38、39、41、又は42mg/dL)の減少したHDLコレステロール、及び上昇した血圧、例えば約130mmHg超(例えば、約127、128、129、131、又は132mmHg)の収縮期の血圧を挙げることができる。更に、肥満の対象は前もって、肥満の症状又は病態における改善を伴わずに、生活習慣の修正、例えば身体活動の増加、及び/又は食事介入、例えば低カロリー食療法若しくは超低カロリー食療法を伴う治療を処方され得る。
【0102】
糖尿病(例えば、2型糖尿病)の非限定的症状としては、増加した空腹感及び口渇感、予期しない重量減少、減少したエネルギー、減少したインスリン感受性、肥満度指数の改善、及び低下した腎機能が挙げられる。一部の実施形態において、糖尿病を有する対象は、上昇した血漿グルコースレベルを有する個体であり得る。血漿グルコースレベルは、所定の期間食物又は液体をとらない絶食状態の後に判定され得る。絶食状態及び血漿グルコースレベルの判定の後、前糖尿病を有する対象(例えば、通常よりも高いが、糖尿病として診断されるほど高くはない血中グルコースレベルを有する対象)は、約100~約125mg/dLの血漿グルコースという範囲の血中グルコースを有し得、2型糖尿病を有する対象は、約126mg/dL超(例えば、約124、125、127、128、129、又は130mg/dL)の血漿グルコースという範囲の血中グルコースを有し得る。或いは、糖尿病及び前糖尿病の病態は、基準量のグルコースの投与によって判定することができる。ここでは、医師が、対象がグルコースを摂取する前、及びおよそ2~4時間後に血液サンプルを収集して、耐糖性を判定する。そして、前糖尿病を有する対象は、約140~約199mg/dLの血漿グルコースという範囲の血中グルコースを有し得、2型糖尿病を有する対象は、約200mg/dL超(例えば、約195、196、197、198、199、121、又は122mg/dL)の血漿グルコースという範囲の血中グルコースを有し得る。
【0103】
患者集団
本発明の組成物で治療されるべき対象としては、例えば、境界型糖尿病(例えば、前糖尿病であり、空腹時血漿グルコース試験において血糖レベルが100~125であり、経口グルコース負荷試験において血糖レベルが140~199であり、ヘモグロビンA1Cが5.7~6.4%である)、境界型過体重、糖尿病、過体重、肥満であると見なされる対象、又は健康的な重量の維持、重量増加の予防、若しくは重量減少の促進を所望する対象、並びに肥満及び2型糖尿病を有する対象を挙げることができる。健康的な重量の維持、重量増加の予防、又は重量減少の促進を所望する対象とは、以前肥満であり、重量を低減するために手術的医療行為(例えば、胃バイパス術、腹腔鏡下調節性胃バインディング術、胆膵路転換手術、垂直遮断胃形成術)を受けた対象であり得る。健康的な重量の維持、重量増加の予防、又は重量減少の促進を所望する対象とはまた、本発明の範囲内にあると見なされる健康な対象(例えば、肥満、過体重、前糖尿病、又は糖尿病ではない対象)でもあり得る。
【0104】
一部の実施形態においては、本発明の組成物で治療されるべき対象はまた、本組成物の投与前、投与中、又は投与後の、生活習慣の修正及び/又は食事介入に関与する。生活習慣の修正としては、限定されるものではないが、身体活動(例えば、運動)の増加、喫煙の減少、又は行動療法への参加を挙げることができる。食事介入としては、低カロリー食事統制(eating regiment)、超低カロリー食事統制、食事量制限、糖質/加糖飲料の回避を挙げることができる。
【0105】
対象の監視
上に記載されるように、本発明の組成物は、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、又は糖尿病の徴候若しくは症状における改善のために十分な期間及び量で投与される。本発明の方法はまた、本発明の組成物による治療に対する応答として、重量減少又は糖尿病の進行と関連付けられる症状を監視することを含み得る。病態の監視は、障害又は病態の状態(例えば、悪化若しくは改善)における情報を提供して、治療体制の変更を用意にし得る。重量増加、重量減少、及び糖尿病の進行はまた、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載される方法を用いて監視することもできる。監視方法の非限定的例は、BMIの判定、並びにグルコース及びトリグリセリドの血漿レベルの測定及び検出である。
【0106】
重量減少又は維持の分析のための定量方法としては、BMIの測定が挙げられる。一部の実施形態において、BMIは、対象の体重及び身長を判定してその個体の体重をその身長の二乗で割ることによって本発明では監視することができ、値はkg/m2という単位で与えられる。BMIは更に、等値線、又は異なるBMIのカテゴリについて複数の色を用いて、BMIを体重及び身長の関数として表示する表を用いて、又はチャートによって監視することができる。BMIの値は、低体重から肥満までの範囲があり得、彼又は彼女の身長の人物にとって正常又は望ましい値から対象の体重がどれだけ離れているかを評価するために使用することができる。一部の実施形態においては、BMIの範囲は、過体重の対象の場合、約25kg/m2~約30kg/m2であり、肥満の対象の場合は約30kg/m2~約40kg/m2であり得る。一実施例においては、BMIが過体重又は肥満の対象にとっての範囲よりも下に低下し、体重が約1、2、3、5、10、又は15%減少するまで、先に記載されたように、治療薬又は栄養補助が投与又は修正される。
【0107】
糖尿病の徴候若しくは症状、又は重量減少と関連付けられる病態における改善の分析のための定量方法には、血漿グルコースレベル又は血漿トリグリセリドレベルを監視することが含まれ得る。血中グルコース試験は、対象から血液を抜き、その試料をグルコース含有量についてアッセイすることで行うことができる。典型的には、試料は、指の皮膚を穿刺することによって収集される(ピン痛覚検査)。持続血糖モニタリング(CGM)を使用して、示数を表示又は監視するように構成された受信機と通信するセンサを皮膚の下に配置することで、より頻繁な間隔で血中グルコースレベルを判定することができる。本発明の方法を用いることで、グルコースレベルは、上に記載されるようなグルコース投与及び監視の後、正常血糖のレベル、すなわち150~60mg/dL、140~70mg/dL、130~70mg/dL、125~80mg/dL、及び好ましくは120~80mg/dLのレベルにまで低減することができる。一部の実施形態においては、平均血中グルコースレベルは、HBA1cアッセイ(A1c又はグリコヘモグロビン)を用いて、血漿中のグリコヘモグロビンA1cの量を判定することで監視することができる。糖尿病の対象においては、この量は、約6.5%以上(例えば、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、及び又は6.6%)のヘモグロビンA1cであり得る。本発明の方法を用いることで、グルコースレベルは、糖尿病を有さない対象にとっての正常な範囲、例えば約4%~約5.6%のヘモグロビンA1cにまで低減することができる。トリグリセリドレベルもまた、同様の技法を用いて、対象が約9~約12時間の所定の期間絶食した後に血液サンプルを収集して、その後その対象の脂質プロフィールを判定することで監視することができる。この脂質プロフィールには、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、及びトリグリセリドが含まれ得る。本発明の方法を用いることで、トリグリセリドレベルは、糖尿病又は肥満を有する対象について、正常な範囲、例えば約150mg/dL未満(例えば、146、147、148、149、151、又は152mg/dL)のレベルにまで低減することができる。
【0108】
キット
本発明の組成物は、説明書のセットと一緒に、すなわちキットを形成するように使用することができる。本キットは、本明細書に記載される療法として本組成物を使用するための説明書を含み得る。例えば、この説明書は、本発明の化合物を使用して、それを必要とする対象における、肥満の治療、重量減少の促進、スリミングの促進、重量増加の低減、又は糖尿病の進行の予防若しくは治療を行うための、投薬及び治療体制を提供することができる。非限定的例は、例えば、2つの丸剤、丸剤及び散剤、坐薬及びバイアル中の液体、2つの局所用クリーム等を格納するキットを含む。本キットは、散剤形態を復元するためのバイアル、注射用のシリンジ、カスタマイズされた静脈内送達システム、吸入器等の、患者に対して単位服用量を投与することを補助する任意選択の構成要素を含んでもよい。本キットは、1人の患者のための単回使用単位服用量として、特定の患者のための複数回使用として(一定の用量で、又は治療の進行につれて、個々の化合物の効能は変動し得る)製造されてもよく、或いは本キットは、複数の患者に対する投与にとって好適な複数の用量を格納してもよい(「バルク包装」)。本キットの構成要素は、カートン、ブリスター包装、瓶、チューブ等の内部に集められてもよい。
【0109】
以下の実施例は、本発明の例証を意図するものであり、本発明を限定するものではない。
【0110】
[実施例]
[実施例1]
チロホスチン9及び関連するベンジリデンマロン酸誘導体の合成
A)3モル-g(703g)の4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンズアルデヒド(純度99.1%、Yongyi Chemicals Group Co., Ltd、Changzhou、Jiangsu、Chinaより購入)、及び2.5Lの無水エタノールを、機械的撹拌装置が設置され、還流凝縮器を備えている5Lの反応器に装入する。
B)3モル-g(198g)のマロノジニトリル(純度99.76%、Aceto Corporation、Port Washington、NY、USAより購入)を、撹拌中、反応器に迅速に添加する。
C)75gの酢酸アンモニウム(純度98.5%、Fermont、Monterreyより購入)を、撹拌中、迅速に添加する。反応混合物の色は、ベージュから黄色、その後オレンジ色に変化する。
D)反応器を加熱し、水浴を用いて還流させる。還流はまず浴温が約80℃に到達したときに観察され、1時間維持される。還流が始まる前に、完全な溶解が観察される。
E)水浴を取り外し、温度を50℃まで降下させる。
F)1.5Lの水を、活発に撹拌しながら反応混合物に添加する。沈殿物が現れる。
G)反応混合物を0℃に冷却する。
H)反応混合物を、北里フラスコに取り付けたブーフナー漏斗を用いて、減圧下で濾過する。
I)濾過ケーキを水でよく洗浄する。
J)一定の重量になるまで、湿った濾過ケーキを、60℃のオーブンで加熱して乾燥させる。
【0111】
この手順により、約800g(収率約95%)の淡黄色の微結晶性の固体が得られる。この固体は、141~142℃(未修正)で融解し、247nm及び365nmでUV吸収最大値を提示し、0.65のRf値を有し(溶離液としてベンゼンを、並びにMerckのTLCシリカゲル60 F254プラスチックサポート付きシートを用いる)、1つのスポットしか観察されない。この化合物及び標準のチロホスチン9(Cayman Chemicalから入手)の混融点もまた141~142℃(未修正)であり、その分光的性質及びクロマトグラフ的性質は、標準製品の性質と同一であった。この化合物は安定しており、有効期間が25~35℃で1年よりも長く、必要な場合はエタノールから再結晶することができる。
【0112】
[実施例2]
C57BL/6マウスにおける前臨床毒性研究及びインビボ研究
チロホスチン9の前臨床毒性研究を、ヒト細胞株(脳、肝臓、肺、腸、腎臓、及び筋肉)において実行し、その後C57BL/6マウスの食餌実験を行った。インビボマウス実験において、マウスには、0.175mg/kg/日の用量で15日間、チロホスチン9を経口投与した。これらの実験からの結果を以下に示した。
a)チロホスチン9の毒性は、全ての試験したヒト細胞株において低い
b)チロホスチン9は、角膜実質細胞の脂肪細胞への分化を阻害する
c)チロホスチン9は、タウロスポリン(taurosporine)よりも高い度合いで、カスパーゼ-3によって媒介される脂肪細胞のアポトーシスを促進し、アポトーシスの誘導は痩せたマウスよりも肥満のマウスにおいてより明白である
d)チロホスチン9は、脂肪細胞からの内臓脂質輸送を、脂肪細胞の大きさの低減を随伴して促進する
e)チロホスチン9は、肝細胞におけるグリコーゲンの貯蔵を促進する
f)チロホスチン9は、高脂肪食で成長した肥満のマウスによる摂取量を(約50%)削減するが、痩せたマウスにはそのような効果はない
g)チロホスチン9で15日間処置されたマウス(0.175mg/kg/日)は、組織化学的基準及び行動基準の両方によって判断したとき、毒性又は炎症を示さなかった
【0113】
[実施例3]
過体重、肥満、及び糖尿病の対象における予備試験
両方の性別の、過体重、肥満、及び/又は糖尿病の対象75名を伴う予備試験を、12か月の期間実行した。除外基準は、(1)直近の著しい重量増加、(2)損なわれた体温調節システム、(3)妊娠、(4)腎不全又は肝不全、(5)違法薬物又は身体の熱放散機構を損なう薬物の使用、(6)重度のリズム障害、(7)不安定な狭心症、(8)鬱血性心不全、(9)重度の脳血管疾患、(10)ペースメーカーの使用、(11)重度の肺の機能障害、(12)貧血症、(13)パーキンソン病、(14)35キログラム未満の体重、(15)広範囲の乾癬、(16)低血糖症の反復エピソード、(17)嚢胞性線維症、(18)脊髄損傷、(19)遺伝性筋疾患、(20)慢性又は反復性静脈血栓症、(21)未処置の甲状腺機能亢進症、(22)運動又は熱により誘導される血管浮腫、(23)発作性疾患、(24)統合失調症、及び(25)低カルシウム血症であった。
【0114】
発汗の低減、血管拡張作用の低下、心拍出量の低下、又は視床下部の抑制(hypothalamic depression)を引き起こす薬物は、治療前、治療中、及び治療直後には服用されなかった。
【0115】
16~72歳の肥満の参加者には、1日当たり1つ以上の硬質ゼラチンカプセルを経口投与した。このカプセルには各々、20mgの活性成分(すなわち、チロホスチン9)及び微結晶セルロースが含まれている。彼らには、彼らの食物摂取量の修正又は一連の運動を開始しないように指導した。全ての患者に対して、第1週の間は1日当たり1個のカプセルしか与えなかったが、第1週の終わりには、彼らのほとんどから、多量の発汗及び/又は体温の明確な上昇に気付いたことが報告された。その後、異なる投薬スケジュールが課され、難治性の個体には1日当たり2個又は3個のカプセルが投与され(すなわち、1日当たり40又は60mgのチロホスチン9)、一方で他の全てに対しては1日当たり1個のカプセルのみが投与され、結果的にこれらの人々は、試験期間を通じて1日当たり20mgのチロホスチン9を受容した。この試験の終わりまでに、全ての参加者(難治性及び非難治性)は、多量の発汗を報告し、及び/又は通常1日を通じて増減し多くの場合主要な食事の後にピークを迎える熱感の増加を経験した。
【0116】
参加者にはまた、多量の水を飲むことで脱水症状を予防するように、並びにカリウム及びマグネシウム補助剤の両方、又はV-8ジュース、又はゲータレードを摂取することで電解質を補充するように指導した。1日当たり2個のカプセルを服用した参加者は、第2週及び第3週の間はそれら2個を同時に服用し、その後第4週及び第5週の間は1個を朝、1個を夜服用するように切り替えるように頼んだ。1日当たり40mgのチロホスチン9を服用した参加者からは、2個のカプセルを朝服用したか夜服用したかに応じて、発汗/体温が夜間又は日中のいずれかでピークを迎えたことが報告された。第2週及び第3週の間は2個のカプセルを同時に服用し、その後1個を朝、1個を夜服用するように切り替えた参加者からは、発汗/熱感は、第2週及び第3週の間の方がより激しかったことが報告された。肥満の参加者は1ヶ月当たり平均4kg減少し、累積の重量減少は最大48kgであった。更に、治療は通常、非常に良好に許容され、「リバウンド効果」は観察されず、筋肉の質量損失は無視できるほどであり、有害効果は報告されなかった。
【0117】
全ての参加者が、治療の終わりまでに有意なスリミング、すなわちウエスト周囲並びに他の体測定値における有意な低減を経た。
【0118】
糖尿病の対象(ほとんどが肥満であり、全てが2型糖尿病を呈した)を同様に治療した。この群では、治療は血中グルコースレベルにおける有意な低下をもたらし、これはその後有効に管理されて、一部の場合においてはインスリン又は他の抗糖尿病薬が完全に不要になった。肥満の対象及び糖尿病の対象の両方において、上述の治療は、より低い血中脂質の値につながった。
【0119】
[実施例4]
チロホスチン9及びL-カルニチンタートレートの相乗効果
同様のBMIを有し、重量が過去30日間本質的に一定のままであった肥満の対象を採用し、彼らの食習慣、食物摂取量、又は生活習慣を修正しないように指導し、処置群A、群B、又は群Cのいずれかに無作為且つ盲目的に割り当てた。
【0120】
群Aの対象には、各々が20mgのチロホスチン9及び不活性賦形剤を含有するカプセルを、1日当たり2個投与(経口)した。群Bの対象には、各々が5mgのチロホスチン9及び約700mgのL-カルニチンタートレートを含有するカプセルを、1日当たり4個投与(経口)した。群Cの対象には、各々が20mgのチロホスチン9及び不活性賦形剤を含有するカプセルを朝に2個、並びに各々が約700mgのL-カルニチンタートレートを含有するカプセルを夜間に4個投与した。15日後、群Bの対象が群Aの対象と同様の重量減少(約2kg)を提示したのに対し、群Cの対象は、平均で約1kgしか減少しなかった。
【0121】
2週間の休薬期間後、新しい実験を開始した。群Aの対象には、各々が20mgのチロホスチン9及び不活性賦形剤を含有するカプセルを、1日当たり2個経口投与し、群Bの対象には、各々が5mgのチロホスチン9及び約700mgのL-カルニチンタートレートを含有するカプセルを、1日当たり8個与え、群Cの対象には、各々が20mgのチロホスチン9及び不活性賦形剤を含有するカプセルを朝に2個、並びに各々が約700mgのL-カルニチンタートレートを含有するカプセルを夜間に8個投与した。15日間の処置経過の後、群Bの対象は群Aの対象の約2倍の重量減少を呈し、群Bの対象からはより強力な体熱産生効果が報告されたのに対し、群Cの対象は、群Bの対象よりも有意に少ないが、群Aのメンバーよりは有意に多い重量減少を呈した。
【0122】
他の実施形態
前述の記載から、本発明を様々な使用法及び条件に対して適合させるために、本明細書に記載される本発明に対して変形及び修正を行い得ることは明らかである。そのような実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内にある。
【0123】
本明細書において言及された全ての刊行物、特許出願、及び特許は、各々の独立した刊行物、特許出願、又は特許が、具体的且つ個別に参照により組み込まれると示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は例えば以下の態様を含む。
[項1]
肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、及び/又は糖尿病の進行の治療若しくは予防のための方法であって、前記方法が、それを必要とする哺乳動物に対して、化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン又はその誘導体若しくは塩を投与することを含み、前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防に、治療上又は予防上有効な量である、方法。
[項2]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及び前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、経口投与、局所投与、又は非経口投与用に製剤化された組成物中にある、項1に記載の方法。
[項3]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及び前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、実質的に同時に、又は互いの1時間以内に投与される、項1に記載の方法。[項4]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及び前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、連続的に投与される、項1に記載の方法。
[項5]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩が、表1の化合物である、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
前記化学的脱共役剤が、チロホスチン9又はその塩若しくは前駆体である、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、L-カルニチンタートレート、L-カルニチンクロリド、L-カルニチンブロミド、L-カルニチンオロテート、L-カルニチン酸アスパルテート、L-カルニチン酸ホスフェ-ト、L-カルニチンフマレート、L-カルニチンラクテート、L-カルニチンマレエート、L-カルニチン酸マレエート、L-カルニチン酸オキサレート、L-カルニチン酸サルフェート、L-カルニチングルコースホスフェート、L-カルニチン酸タートレート、L-カルニチンアイオデート、L-カルニチンアスパルテート、L-カルニチンシトレート、L-カルニチン酸シトレート、L-カルニチン酸フマレート、L-カルニチングリセロホスフェート、L-カルニチンムケート、L-カルニチンオキサレート、L-カルニチンサルフェート、L-カルニチントリクロロアセテート、L-カルニチントリフルオロアセテート、L-カルニチンメタンスルホネート、L-カルニチンパモエート、L-カルニチン酸パモエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン、C2-8アルカノイルL-カルニチンクロリド、C2-8アルカノイルL-カルニチンブロミド、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸アスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸ホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンフマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンラクテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンマレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸マレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸オキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸サルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチングルコースホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンタートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸タートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアイオデート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンシトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸シトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸フマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチングリセロホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンムケート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンサルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリクロロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリフルオロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンメタンスルホネート、C2-8アルカノイルL-カルニチンパモエート、及びC2-8アルカノイルL-カルニチン酸パモエートからなる群から選択される、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
前記チロホスチン9が、約2mg~約200mgの量の単位剤形で存在し、L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、約50mg~約5000mgの量で存在する、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
前記チロホスチン9が、約10mgの量でカプセル剤又は錠剤中に存在し、前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、約700mgの量で存在する、項8に記載の方法。
[項10]
前記チロホスチン9が、約5mgの量でカプセル剤又は錠剤中に存在し、前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、約700mgの量で存在する、項8に記載の方法。
[項11]
肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防のための方法であって、前記方法が、それを必要とする哺乳動物に対して、化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩を約2mg~約200mgの量で含む組成物を、経口投与することを含み、前記組成物が、前記対象における、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少の促進、スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防に有効である、方法。
[項12]
前記組成物が、カプセル剤又は錠剤である、項11に記載の方法。
[項13]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩が、表1の化合物である、項11に記載の方法。
[項14]
前記化学的脱共役剤が、チロホスチン9若しくはその塩、又はその誘導体若しくは前駆体である、項11に記載の方法。
[項15]
インスリン、スルホニルウレア、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、抗糖尿病剤、スタチン、及び重量減少補助剤からなる群から選択される1つ以上の治療剤を投与することを更に含む、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及び前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩、或いは化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩を約2mg~約200mgの量で含む前記組成物が、1日に1回以上投与される、項1~15のいずれか一項に記載の方法。
[項17]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及び前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩、或いは化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩を約2mg~約200mgの量で含む前記組成物が、少なくとも2日間~30日間投与される、項1~16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及び前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩、或いは化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩を約2mg~約200mgの量で含む前記組成物が、30日間よりも長く投与される、項1~17のいずれか一項に記載の方法。[項19]
前記糖尿病が、2型糖尿病である、項1~18のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
前記哺乳動物が、肥満又は過体重である、項1~19のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン又はその誘導体若しくは塩、或いは化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩を約2mg~約200mgの量で含む前記組成物の投与前、投与中、又は投与後の、生活習慣の修正又は食事介入を更に含む、項1~20のいずれか一項に記載の方法。
[項22]
前記生活習慣の修正が、身体活動の増加を含む、項21に記載の方法。
[項23]
前記食事介入が、低カロリー食療法又は超低カロリー食療法を含む、項21に記載の方法。
[項24]
前記対象が、肥満及び/又は糖尿病の徴候又は症状における改善を経ているかどうかを監視するステップを更に含む、項1~23のいずれか一項に記載の方法。
[項25]
肥満及び/又は糖尿病の徴候又は症状における改善が、減少した空腹感、重量減少、増加したエネルギー、減少した血漿グルコース、減少した血漿トリグリセリド、増加したインスリン感受性、肥満度指数の改善、改善した腎機能及び/又は肝機能からなる群から選択される、項24に記載の方法。
[項26]
前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、血漿グルコースの減少又は血漿トリグリセリドの減少、及び/或いは肥満の治療、体重増加の予防、体重減少/スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防において、相乗効果をもたらす、項1~25のいずれか一項に記載の方法。
[項27]
前記哺乳動物が、イヌである、項1~26のいずれか一項に記載の方法。
[項28]
a)化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及び
b)前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩を対象に投与して、肥満の治療、重量増加の予防、重量減少/スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防を行うための説明書
を含むキット。
[項29]
前記化学的脱共役剤が、表1の化合物、又は表1の化合物の塩若しくは前駆体若しくは誘導体である、項28に記載のキット。
[項30]
前記化学的脱共役剤が、チロホスチン9である、項28に記載のキット。
[項31]
c)L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩、及びd)前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩を、前記化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩と同時に、又は連続的に対象に投与して、肥満の治療、体重増加の予防、体重減少/スリミングの促進、又は糖尿病の進行の治療若しくは予防を行うための説明書を更に含む、項28に記載のキット。
[項32]
前記L-カルニチン又はその誘導体若しくは塩が、L-カルニチンタートレート、L-カルニチンクロリド、L-カルニチンブロミド、L-カルニチンオロテート、L-カルニチン酸アスパルテート、L-カルニチン酸ホスフェ-ト、L-カルニチンフマレート、L-カルニチンラクテート、L-カルニチンマレエート、L-カルニチン酸マレエート、L-カルニチン酸オキサレート、L-カルニチン酸サルフェート、L-カルニチングルコースホスフェート、L-カルニチン酸タートレート、L-カルニチンアイオデート、L-カルニチンアスパルテート、L-カルニチンシトレート、L-カルニチン酸シトレート、L-カルニチン酸フマレート、L-カルニチングリセロホスフェート、L-カルニチンムケート、L-カルニチンオキサレート、L-カルニチンサルフェート、L-カルニチントリクロロアセテート、L-カルニチントリフルオロアセテート、L-カルニチンメタンスルホネート、L-カルニチンパモエート、L-カルニチン酸パモエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン、C2-8アルカノイルL-カルニチンクロリド、C2-8アルカノイルL-カルニチンブロミド、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸アスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸ホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンフマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンラクテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンマレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸マレエート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸オキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸サルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチングルコースホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンタートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸タートレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアイオデート、C2-8アルカノイルL-カルニチンアスパルテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンシトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸シトレート、C2-8アルカノイルL-カルニチン酸フマレート、C2-8アルカノイルL-カルニチングリセロホスフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチンムケート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオロテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンオキサレート、C2-8アルカノイルL-カルニチンサルフェート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリクロロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチントリフルオロアセテート、C2-8アルカノイルL-カルニチンメタンスルホネート、C2-8アルカノイルL-カルニチンパモエート、及びC2-8アルカノイルL-カルニチン酸パモエートからなる群から選択される、項28に記載のキット。
[項33]
インスリン、スルホニルウレア、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、抗糖尿病剤、スタチン、及び重量減少補助剤からなる群から選択される1つ以上の治療剤を更に含む、項28~32のいずれか一項に記載のキット。
[項34]
チロホスチン9を調製するための方法であって、前記方法が、
a)4-ヒドロキシ-3,5ジ-tert-ブチルベンズアルデヒドを提供すること、及び
b)前記4-ヒドロキシ-3,5ジ-tert-ブチルベンズアルデヒドを、マロノジニトリル及びアミン塩基触媒と、任意で溶媒中において反応させること
を含み、
前記反応が、チロホスチン9を生成する、方法。
[項35]
前記反応が、約1時間熱を加えることによって行われる、項34に記載の方法。
[項36]
前記アミン塩基触媒が、アンモニア、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、及びサルコシン、又はそれらの付加塩からなる群から選択される、項34に記載の方法。
[項37]
前記アンモニアの付加塩が、酢酸アンモニウムである、項36に記載の方法。
[項38]
前記溶媒が、エタノール、メタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される、項34に記載の方法。
[項39]
前記エタノールが、無水エタノールである、項38に記載の方法。
[項40]
化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩、及びL-カルニチン又はその塩若しくは誘導体を含む相乗性組成物であって、L-カルニチン又はその塩若しくは誘導体の、化学的脱共役剤又はその前駆体若しくは塩に対する重量対重量比が、10よりも大きいが、700よりも小さい、相乗性組成物。