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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20221109BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B32B27/18 A
B32B27/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018185601
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055135
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 沙織
(72)【発明者】
【氏名】後藤 脩
(72)【発明者】
【氏名】小紫 真友子
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/039003(WO,A1)
【文献】特開2011-212999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B05D1/00-7/00
E04F13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色基材上に表面保護層を有し、前記着色基材と前記表面保護層との間に無機系紫外線吸収剤含有層が配置されている化粧材であって、
前記無機系紫外線吸収剤含有層は、バインダー樹脂を含み、無機系紫外線吸収剤を10~30質量%の含有割合、及び、有機系紫外線吸収剤を15~30質量%の含有割合で含有し、
前記表面保護層は、バインダー樹脂を含み、紫外線吸収剤として有機系紫外線吸収剤のみを0.1~10質量%の含有割合で含有する、ことを特徴とする化粧材。
【請求項2】
前記無機系紫外線吸収剤含有層に含まれる無機系紫外線吸収剤の平均粒子径が、300nm以下である、請求項に記載の化粧材。
【請求項3】
前記表面保護層が、前記バインダー樹脂として電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む、請求項1又は2に記載の化粧材。
【請求項4】
前記着色基材は、基材層及び当該基材層の前記無機系紫外線吸収剤含有層と向き合う側に設けられた絵柄模様層を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の内外装材や建具等の建材、車両内装、家具若しくは家電製品等における表面材の用途に用いる化粧材として、プラスチックシートを基材として用い、これに色彩や模様、もしくは凹凸などを施すことにより美観を付与した化粧材(化粧シート)が用いられている。このような化粧材(化粧シート)は、必要に応じて、金属板、無機質板(石膏ボードなど)、木質板(MDF、パーチクルボード、積層板など)などの基板に貼り合わせられた上で、上記した用途に用いられている。
【0003】
このような化粧材では、通常、基材(プラスチックシート)に施された色彩や模様等の意匠が明確に視認されること(以下、本明細書において、意匠性という)が求められると共に、耐摩耗性、耐擦傷性等の表面特性が求められるが、例えば屋外のように光に曝される環境下で用いられる化粧材では、上記の特性に加えて、耐候性が要求される。
【0004】
化粧材において耐候性を得るための耐候剤としては、従来より、紫外線吸収剤が用いられている。紫外線吸収剤の中でも、有機系の紫外線吸収剤は、無機系の紫外線吸収剤と比較してより高い紫外線吸収性能と透明性とを得られるため、化粧材において広く用いられており、このような有機系の紫外線吸収剤を、基材(プラスチックシート)を保護する表面保護層に配合することが、一般に行われている。
例えば特許文献1には、絵柄層及び/又は着色層の上に、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物からなる紫外線吸収剤を含有する表面保護層を積層した化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-106506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機系の紫外線吸収剤は、添加量の増大に伴いブリードアウト(bleed out)が生じ易くなり、化粧材に含まれる有機系紫外線吸収剤の含有量が経時的に減少することにより、耐候性が低下するという問題があった。また、有機系の紫外線吸収剤は経時劣化し易く、長期間にわたって紫外線吸収性能を得ることが困難であるため、耐候性を維持することが困難であった。
一方、有機系の紫外線吸収剤に代えて、無機系の紫外線吸収剤を用いた場合、無機系の紫外線吸収剤は、有機系の紫外線吸収剤と比較して経時劣化し難いため、紫外線吸収性能を長期間にわたって得られるものの、無機系の紫外線吸収剤は、有機系の紫外線吸収剤と比較して紫外線吸収能が低いため、所望の紫外線吸収性能を得るためには、当該無機系の紫外線吸収剤を多量に添加する必要がある。このように、無機系の紫外線吸収剤を化粧材の表面保護層に多量に添加すると、外観が白濁したものとなり易く、基材(プラスチックシート)に施された色彩や模様等の意匠の視認性が損なわれ易いという問題があった。また、例えば表面保護層を架橋性の樹脂により形成した場合、無機系の紫外線吸収剤を多量に添加すると、表面保護層の架橋密度が十分に上がらず、耐候剤がブリードアウトし易くなるため、十分な耐候性を得られないという問題もあった。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、意匠性に優れ、かつ耐候性に優れた化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の化粧材は、着色基材上に表面保護層を有し、前記着色基材と前記表面保護層との間に無機系紫外線吸収剤含有層が配置されている化粧材であって、
前記無機系紫外線吸収剤含有層は、バインダー樹脂を含み、無機系紫外線吸収剤を10~30質量%の含有割合、及び、有機系紫外線吸収剤を15~30質量%の含有割合で含有し、
前記表面保護層は、バインダー樹脂を含み、紫外線吸収剤として有機系紫外線吸収剤のみを0.1~10質量%の含有割合で含有する、ことを特徴とする。
【0012】
本開示の化粧材において、前記無機系紫外線吸収剤含有層に含まれる無機系紫外線吸収剤の平均粒子径が、300nm以下であってもよい。
【0013】
本開示の化粧材において、前記表面保護層が、前記バインダー樹脂として電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含んでいてもよい。
【0014】
本開示の化粧材において、前記着色基材は、基材層及び当該基材層の前記無機系紫外線吸収剤含有層と向き合う側に設けられた絵柄模様層を有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、意匠性に優れ、かつ耐候性に優れた化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の化粧材10の一例を示す模式的断面図である。
図2図2は、本開示の化粧材10の一例を示す模式的断面図である。
図3図3は、本開示の化粧材10を基板12に貼着した化粧板の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本開示の実施の態様について詳細に説明するが、本開示は以下の実施の態様に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
本開示の化粧材は、着色基材上に、樹脂層である表面保護層を有し、前記着色基材と前記表面保護層との間に、無機系紫外線吸収剤を3~50質量%の含有割合で含有する樹脂層である無機系紫外線吸収剤含有層が配置されていることを特徴とする。
【0019】
図1は、本開示の化粧材10の一例を示す模式的断面図である。
図1に示す化粧材10は、着色基材5の一方の面に、透明樹脂層6、無機系紫外線吸収剤含有層7、表面保護層8が、この順に配置されて積層されたものである。
図1に示す例では、透明樹脂層6、無機系紫外線吸収剤含有層7及び表面保護層8が、その直下の層の全面を被覆するように、形成されている。
【0020】
着色基材5としては、少なくとも、化粧材として通常用いられる基材に相当する層である基材層1を有し、かつ、少なくとも無機系紫外線吸収剤含有層7が配置される側の面が、模様及び/又は色彩を有するものであればよい。
【0021】
着色基材5としては、典型的には、前述した基材層1上に、後述する絵柄層3が設けられたものが挙げられる。
【0022】
着色基材5の別の例としては、例えば図2に示すように、基材層1と絵柄層3との間に、後述する着色層2が配置されたものであってもよく、また、基材層1上に設けられた絵柄層3上に、着色層2が配置されたものであってもよい。
【0023】
なお、着色基材5が着色層2を有する場合には、必ずしも絵柄層3を有していなくてもよい。また、基材層1自体が色彩又は模様を有する場合には、着色基材5としては、絵柄層3着色層2を有していなくてもよい。
【0024】
本開示で用いられる基材層1としては、通常の化粧材の基材材料として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックのフィルム又はシート、金属の箔、シート、又は板、木材などの木質系の板、窯業系無機素材(例えば石膏等)の板、織布または不織布を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料は、それぞれ単独で使用してもよく、異種材料を積層した積層体として用いてもよい。
これらの基材材料のうち、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材材料として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、基材の片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等の物理的処理、又は化学的表面処理等の易接着処理を行っても良い。
【0025】
図1及び図2においては図示しないが、基材層1には、当該基材層1と各層との層間密着性の強化等のためのプライマー層を形成してもよい。また、基材層1には、当該基材層1自体に、色彩を整えるための塗装が施されていてもよく、デザイン的な観点での模様が予め形成されていてもよい。
【0026】
基材層1として用いられるプラスチックとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。
合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合、エチレン-酢酸ビニル共重合、エチレン-ビニルアルコール共重合等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル、ポリエステル樹脂あるいはアクリル樹脂が耐候性、耐水性等の各種物性、印刷適正、成型加工適正、価格の観点から好ましい。
【0027】
基材層1は、透明又は半透明であってもよい。基材層1が透明又は半透明である場合には、基材に透視性があるので、基材層1の裏側、即ち、後述する無機系紫外線吸収剤含有層7が配置される側と反対側の面に、後述する絵柄層3を設けることができる。意匠性の観点からは着色してもよい。基材を着色する場合は、基材中に染料、顔料等の着色剤を添加できる。これらの着色剤の中では、退色を抑制しやすい顔料が好ましい。
顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン(チタン白)、沈降性硫酸バリウムおよびバライト等の白色顔料;カーボンブラック、アゾメチンアゾ系黒顔料、ペリレン系黒顔料等の黒色顔料;鉛丹、酸化鉄赤、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド等の赤色顔料;黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、イソインドリノンイエロー、ニッケル-アゾ錯体等の黄色顔料;ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料;等が挙げられる。
【0028】
基材層1の厚さについては特に制限はないが、基材層1の厚さは、例えば基材層1がフィルム又はシートである場合には、通常20~3200μm程度が好ましく、30~160μmがより好ましく、40~100μmの範囲が更に好ましい。また、基材層1として、紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20~150g/m程度、好ましくは30~100g/mの範囲が好ましい。
基材層1の厚さが上記範囲内であれば、化粧材として十分な強度を確保することができる。
【0029】
着色基材5は、必要に応じて、化粧材としての意匠性を高める目的で、着色層2を有していてもよい。前述したように、着色層2は、基材層1と絵柄層3との間に配置してもよいし(図2参照)、又は絵柄層3の上に配置してもよい。
着色層2は、不透明色で形成された層としてもよく、着色透明色で形成された層としてもよい。着色層が不透明色で形成された層である場合には、当該着色層は隠蔽層として機能する。着色層が着色透明色で形成された層とした場合には、基材層1が有する色彩や模様の色相を調整し、基材層1の表面に意図した色彩を与えることができる。
【0030】
着色層2の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。着色層2の形成に用いられるインキには、さらに、後述する無機系紫外線吸収剤や、有機系紫外線吸収剤を配合してもよい。
着色層2の形成に用いられるバインダーとしては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン、ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂などの中から選ばれる任意のものを、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
着色層2の形成に用いられる着色剤としては、基材中に染料、顔料等の着色剤を添加できる。これらの着色剤の中では、退色を抑制しやすい顔料が好ましい。
顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン(チタン白)、沈降性硫酸バリウムおよびバライト等の白色顔料;カーボンブラック、アゾメチンアゾ系黒顔料、ペリレン系黒顔料等の黒色顔料;鉛丹、酸化鉄赤、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド等の赤色顔料;黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、イソインドリノンイエロー、ニッケル-アゾ錯体等の黄色顔料;ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
着色層2を形成する場合、着色層2は、厚さ1~20μm程度のいわゆるベタ印刷層として形成することができる。
【0031】
絵柄層3は、基材層2に装飾性を与えるものである。絵柄層3は、印刷機を使用して、絵柄インキにより種々の模様を印刷することにより形成することができ、例えばグラビア印刷等により、厚さ0.5~20μm程度が好ましく、1~10μmがより好ましく、2~5μmがさらに好ましい層として形成することができる。
絵柄層3に形成される模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、皮表面の皮シボ柄、幾何学模様、文字、図形、またこれらを組合わせたものであってもよい。
絵柄層3に形成される模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるものであってもよく、模様を構成する個々の色の版を用意して行う多色印刷等によっても形成されるものであってもよい。
絵柄層3の形成に用いる絵柄インキとしては、着色層2の形成に用いるインキと同様のものを用いることができる。着色層2の形成に用いられるインキには、さらに、後述する無機系紫外線吸収剤や、有機系紫外線吸収剤を配合してもよい。
【0032】
着色基材5の厚さとしては、特に制限はないが、通常20~3200μm程度、好ましくは30~200μm、更に好ましくは40~110μmの範囲が好ましい。厚さが上記範囲内であれば、化粧材として十分な強度を確保することができるため、好ましい。
【0033】
透明樹脂層6は、必要に応じて、着色基材5と表面保護層8との間に配置される層であり、例えば、着色基材5と無機系紫外線吸収剤含有層7との間に配置することができる。透明樹脂層6を設けることにより、例えば表面保護層8に裂傷や割れが生じた場合に、着色層2や絵柄層3等の着色基材5に含まれる層を保護することができる。
透明樹脂層6は、透明性を有する樹脂製の層であれば特に制限なく用いることができる。
透明樹脂層6として用いられる樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられ、この中でも加工性の観点からポリオレフィン樹脂が好ましい。また、これらの各樹脂を2種類以上混合して使用してもよく、或いはこれらの各樹脂を用いて形成される層を複数積層してもよい。
透明樹脂層6には、後述する無機系紫外線吸収剤や有機系紫外線吸収剤を含有させることが可能である。透明樹脂層6に無機系紫外線吸収剤や有機系紫外線吸収剤を含有させることにより、透明樹脂層6や、透明樹脂層6よりも着色基材5側に設けられた層の耐候性を高めることができる。なお、ここで透明とは、完全に透明であることだけを意味するものでなく、半透明であることをも包含するものである。
また、透明樹脂層6には、光安定剤、着色剤等の添加剤を含有させることも可能である。
【0034】
透明樹脂層6の形成は、例えば、透明樹脂層形成用組成物とウレタン系接着剤等の接着剤との共押しにより行ってもよいし、ドライラミネートにより行ってもよい。また、例えば絵柄層3上に透明樹脂層6を形成する場合には、絵柄層3上に、予め、例えばウレタン樹脂系の樹脂からなる接着性樹脂層4を設けた後、当該接着性樹脂層4を形成した着色基材5に対して、例えばTダイ押出機を用いた加熱溶融押出しによるエクストルージョンコートや熱ラミネーションを行うことによって、透明樹脂層6を形成してもよい。また、透明樹脂層6の表面には、適宜コロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。また、前述したように、透明樹脂層形成用組成物や接着剤には、さらに、後述する無機系紫外線吸収剤や、有機系紫外線吸収剤を配合してもよい。
透明樹脂層6の厚さとしては、特に制限はないが、通常20~150μm程度、好ましくは40~120μm、更に好ましくは60~100μmの範囲が好ましい。
また、接着性樹脂層4を向ける場合、その厚さとしては、特に制限はないが、通常0.1~30μm程度、好ましくは1~15μm、更に好ましくは2~10μmの範囲が好ましい。
【0035】
無機系紫外線吸収剤含有層7は、着色基材5と表面保護層8との間に配置される層であり、バインダー樹脂を主体とするマトリックス中に、無機系紫外線吸収剤を含有させた層である。無機系紫外線吸収剤含有層7の形成に用いるバインダー樹脂としては、当該無機系紫外線吸収剤含有層7に、後述する無機系紫外線吸収剤を所定量以上配合した状態において、隣接する他の層との間で良好な密着性を得る観点から、プライマー層の形成に通常用いられる樹脂を用いることが好ましい。無機系紫外線吸収剤含有層7の形成に用いる樹脂としては、例えば、プライマー層形成用の樹脂として汎用されている、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エ ステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合 体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合 を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール) 由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニ ル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂 (硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数 種を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体とアクリルポリオール樹脂との混合物をバインダーとして用いることができる。
【0036】
また、無機系紫外線吸収剤含有層7は、従来プライマー層形成用の樹脂として汎用されている樹脂をバインダー樹脂として用いることにより、当該無機系紫外線吸収剤含有層7と隣接する層との密着性に優れた、層間接着機能を有する層として形成してもよい。
【0037】
無機系紫外線吸収剤含有層7の形成に用いるウレタン樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂を好適に用いることができる。2液硬化型ウレタン樹脂としては、より好ましくは、そのポリオール成分として、ウレタン-アクリルブロック共重合体を用いることが好ましい。また、2液硬化型ウレタン樹脂としては、そのイソシアネート成分として、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、あるいはこれらの付加体、多量体等を単独で又は2種以上を組み合わせたものを用いることができ、これらの中でも、脂肪族イソシアネートや脂環式イソシアネートを用いることが、耐候密着性の点で好ましい。
さらに、前記ウレタン-アクリルブロック共重合体についても、そのウレタン重合体成分におけるイソシアネート成分として、脂肪族イソシアネートや脂環式イソシアネートを有することが、耐候密着性の点で好ましい。
なお、2液硬化型ウレタン樹脂の合成やウレタン-アクリルブロック共重合体の合成に用いるイソシアネート成分としては、脂環式イソシアネートと脂肪族イソシアネートとを併用しても良い。
【0038】
脂環式イソシアネートとしては、例えば、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、水素添加MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)、水素転化キシリレンジイソシアネート等を用いることができる。また、脂肪族イソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を用いることができる。
【0039】
ウレタン-アクリルブロック共重合体とは、アクリル重合体成分とウレタン重合体成分との両ブロックを含む共重合体である。
無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物として、アクリル重合体成分を含む樹脂を用いることで、表面保護層8を形成する樹脂成分として後述する電離放射線硬化性樹脂、具体的にはアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂を用いた場合に、無機系紫外線吸収剤含有層7が、表面保護層8との間で良好な密着性を有するものとすることができる。また、無機系紫外線吸収剤含有層7を形成する樹脂として、2液硬化型樹脂を用いた場合に、当該樹脂がウレタン重合体成分を含むことで、表面保護層8と無機系紫外線吸収剤含有層7との密着性が良好となる。特に、無機系紫外線吸収剤含有層7を形成する樹脂としてウレタン重合体成分を含む樹脂を用いることで、表面保護層形成用組成物として、ウレタンアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂を用いて形成した表面保護層8と無機系紫外線吸収剤含有層7との密着性が良好となる。
【0040】
ウレタン-アクリルブロック共重合体としては、例えば、(A)アクリル系単量体を主鎖に含み、末端や側鎖にヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有のアクリル重合体部分、(B)ポリエステル系ウレタン重合体成分及び/又はポリエーテル系ウレタン重合体成分、(C)ジイソシアネートの3成分の反応生成物からなり、これら3成分を反応させてプレポリマーを製造し、このプレポリマーに更に、ジアミン等の鎖延長剤を反応させて鎖延長することで得られるもの等を好適に使用できる。
なお、前記(B)のポリエステル系ウレタン重合体成分、ポリエーテル系ウレタン重合体成分は、それぞれ単体で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
また、前記(B)のポリエステル系ウレタン重合体成分としては、(1)ポリエステルポリオール成分にジアミン化合物を添加しウレタン骨格の一部をウレア化する、(2)ポリエステルポリオール成分にフェニル基を導入する、(3)アルコール成分をポリカーボネート系としたポリエステルポリオール成分にジアミン化合物を添加しウレタン骨格の一部をウレア化する、などによって作られた重合体等も、用いることが出来る。ウレタン-アクリルブロック共重合体のアクリル重合体成分と、ウレタン重合体成分の比率は、適宜調整すれば良いが、アクリル重合体成分:ウレタン重合体成分の質量比を40:60~60:40の範囲とすることが、密着性能が良好である点で好ましい。
【0041】
無機系紫外線吸収剤含有層7として、2液硬化型ウレタン樹脂を用いる場合、前記した、ウレタン-アクリルブロック共重合体を含む無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物として、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合やポリエステル系ウレタン-アクリル共重合、又はポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合及びアクリルポリオールを含むものを用いることができる。
なお、当該無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物は、更に、脂肪族イソシアネートや脂環式イソシアネート等のイソシアネート成分を混合することで、硬化させることができる。
【0042】
上記したポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合は、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子を、ラジカル重合開始剤を使用し、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1~6程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合のアクリル成分とウレタン成分との質量比は、特に制限されないが、耐候性、耐溶剤性の点で、ウレタン成分:アクリル成分の質量比を80:20~20:80の範囲とすることが好ましく、70:30~30:70の範囲とすることがより好ましい。
なお、アクリル成分及びウレタン成分の含有量が上記の範囲内であると過度に硬い塗膜となることがなく、十分な加工適性が得られ、折り曲げ加工時に樹脂表面上に白い筋(白化)が生じるといった問題が起こりにくい。
【0044】
ポリエステル系ウレタン-アクリル共重合は、ポリエステルジオールとジイソシアネートを反応させて得られるポリエステル系ポリウレタン高分子をラジカル重合開始剤として使用し、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。ジイソシアネートやアクリルモノマーは、上記したポリカーボネート系ウレタンアクリレートの重合に用いるものから適宜選択されるものである。
【0045】
また、アクリルポリオールは、ヒドロキシル基を有するアクリルモノマーの重合体である。例えば、上記アクリルモノマーに、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアクリレートを共重合させて合成することができる。これらのアクリルポリオールは、架橋剤としての機能を果たす。
【0046】
前記ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合とアクリルポリオールとの質量比は、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート単独の100:0から10:90の範囲が好ましく、より好ましくは100:0~30:70の範囲である。この範囲であると、十分な耐候性が得られる。なお、アクリルポリオールのみであると耐候性が低下するだけでなく、これがイソシアネートと反応を起こすため、経時で表面保護層との密着性が変化し、安定した性能が発現しない場合がある。
【0047】
また、無機系紫外線吸収剤含有層7は、上記2液硬化型ウレタン樹脂以外の硬化型樹脂組成物から形成されたものであってもよい。他の硬化型樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などの硬化型樹脂と、必要に応じて添加する硬化剤又は架橋剤を含んでなるものが挙げられる。
【0048】
また、無機系紫外線吸収剤含有層7の形成に用いるウレタン樹脂としては、熱可塑性ウレタン樹脂も使用できる。熱可塑性ウレタン樹脂は、代表的には、ジイソシアネートと、高分子ポリオールと、必要により低分子ジオール等の低分子多官能活性水素化合物とを反応させて得られる樹脂である。
熱可塑性ウレタン樹脂の合成に用いるジイソシアネートとしては、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタリンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、m-或いはp-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が使用される。或いは、これらのジイソシアネートの多量体又は付加体も使用できる。また、これらジイソシアネートは1種単独で使用してもよく、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
次に、熱可塑性ウレタン樹脂の合成に用いる高分子ポリオール(ここでいう高分子とは、低分子多官能活性水素化合物に対する対語としての意味であり、分子量1万未満のものも含む)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、又は2種以上混合して使用してもよい。なお、耐候密着性の点では、ポリエーテルポリオールよりポリエステルポリオールの方が好ましい。
なお、ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子ジオールとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等がある。
ここで、縮合ポリエステルジオールの合成に使用されるジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類;テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類等が、1種単独で、又は2種以上を混合して使用される。また、上記ラクトンには、ε-カプロラクトン等が使用される。
ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサブチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられ、これらは1種単独で使用してよもく、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
次に、低分子ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、或いは、環状基を有する低分子ジオール類として、ビス(ヒドロキメチル)シクロヘキサン、m或いはp-キシレングリコール、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-ジフェニルプロパン(ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物)等が挙げられ、これらは1種単独で、或いは2種以上混合して使用される。
【0051】
なお、無機系紫外線吸収剤含有層7の樹脂は、必ずしも前記したような、プライマー層の形成に汎用される、2液硬化型のウレタン樹脂には限られず、電離放射線硬化性の樹脂組成物から形成されたものであってもよい。電離放射線硬化性の樹脂組成物は、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物中には、上記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
【0052】
無機系紫外線吸収剤含有層7は、前記した樹脂成分を含む樹脂層中に、無機系紫外線吸収剤を3~50質量%の含有割合で含有する。
無機系紫外線吸収剤含有層7に、無機系紫外線吸収剤を3~50質量%の含有割合で含有することで、当該無機系紫外線吸収剤含有層7、及び無機系紫外線吸収剤含有層7よりも着色基材5側に設けられた層の紫外線による劣化を抑制することができ、優れた耐候性を得ることができる。
【0053】
無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤と比較してブリードアウトが生じ難く、また紫外線吸収剤自体の経時劣化が生じ難い。このため、本開示の化粧材は、無機系紫外線吸収剤含有層7に無機系紫外線吸収剤を含有させることにより、紫外線吸収剤として有機系紫外線吸収剤だけを化粧材に含有させた場合と比較して、長期間にわたって、良好な紫外線吸収性能を得ることができる。
これにより、着色基材5に含まれる絵柄層3や着色層2の劣化を長期間にわたって抑制することができる。即ち、着色基材5が有する色彩や模様の視認性を長期間にわたって維持することができ、優れた意匠性を維持することができる。また、無機系紫外線吸収剤含有層7の劣化や、当該無機系紫外線吸収剤含有層7よりも着色基材5側の層の劣化を抑制することができるため、長期間にわたって、表面材としての機能を良好な状態で維持することができ、優れた耐候性を得ることができる。
【0054】
また、本開示の化粧材は、無機系紫外線吸収剤を、表面保護層8と着色基材5との間に配置された無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させることで、化粧材の外部から水分が侵入したときに、当該水分が無機系紫外線吸収剤に到達し難い。このため、外部から侵入した水分と無機系紫外線吸収剤との反応や、これに伴う、無機系紫外線吸収剤の白化現象を抑制することができる。このため、着色基材5が有する模様や色彩を、表面保護層8側から明確に視認でき、意匠性に優れた化粧材とすることができる。
【0055】
また、本開示の化粧材は、無機系紫外線吸収剤を、表面保護層8と着色基材5との間に配置された無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させることで、当該無機系紫外線吸収剤含有層7中の無機系紫外線吸収剤は、化粧材の外部に露出せず、樹脂成分により取り囲まれた状態で、化粧材中に存在する。このため、化粧材に入射した入射光が、無機系紫外線吸収剤に入射するときに生じる屈折率差は、樹脂成分の屈折率(概ね、1.5)と、無機系紫外線吸収剤の屈折率(概ね、2.0)との差(概ね、0.5)となり、比較的小さい値に抑えられる。このため、無機系紫外線吸収剤含有層7に含有された無機系紫外線吸収剤においては、当該無機系紫外線吸収剤に光が入射したときの反射光の発生が抑制されるため、拡散反射に起因する白濁等の発生が抑制される。このため、着色基材5が有する模様や色彩を、表面保護層8側から明確に視認でき、意匠性に優れた化粧材とすることができる。
【0056】
これに対し、無機系紫外線吸収剤の一部が、化粧材の表面から露出し、大気と接触しているものが存在すると、当該無機系紫外線吸収剤に外部光が入射するときに生じる屈折率差は、大気の屈折率(1.0)と、無機系紫外線吸収剤の屈折率(概ね、2.0)との差(概ね、1.0)となり、屈折率差が大きくなる。即ち、化粧材の外部に露出した無機系紫外線吸収剤においては、当該無機系紫外線吸収剤に外部光が入射したときの反射光が増大し易いため、拡散反射に起因して化粧材の表面が白濁し易くなる。この場合、着色基材5が有する模様や色彩がぼやけて視認し難くなる等の不具合が発生することがある。
【0057】
また、無機系紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤と比較すると、紫外線吸収性能が若干劣るため、当該無機系紫外線吸収剤により所望の紫外線吸収性能を得るためには、ある程度多く量を化粧材に含有させる必要がある。仮に、表面保護層8だけに無機系紫外線吸収剤を添加して、十分な紫外線吸収能を得ようとした場合には、表面保護層8に、ある程度多くの量の無機系紫外線吸収剤を含有させる必要がある。この場合、後述する電離放射線硬化性樹脂により表面保護層8を形成する場合には、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が十分に上がらないため、当該表面保護層8に添加した耐候剤がブリードアウトし易くなる。このため、化粧材中に含まれる耐候剤の含有量が低下し、耐候性が低下し易くなる。
本開示の化粧材は、表面保護層8と着色基材5との間に配置した無機系紫外線吸収剤含有層7に、上記した所定量の範囲で無機系紫外線吸収剤を含有させているため、表面保護層8に無機系紫外線吸収剤を多量に添加しなくても、十分な紫外線吸収性能を得ることができる。このため、表面保護層8における架橋密度の低下や、これに伴う、表面保護層8における耐候剤のブリードアウトの発生を抑制することができ、優れた耐候性を得ることができる。
【0058】
無機系紫外線吸収剤含有層7は、上記したように、無機系紫外線吸収剤を、3~50質量%の含有割合で含有する。無機系紫外線吸収剤の含有割合が3質量%未満であると、十分な紫外線吸収性能を得られず、化粧材として十分な耐候性を得られなくなる。一方、無機系紫外線吸収剤の含有割合が50質量%を超えると、当該無機系紫外線吸収剤が、無機系紫外線吸収剤含有層7に過度に存在することにより、表面保護層8側から化粧材を視認したときに白濁した外観となり、着色基材5が有する模様や色彩がぼやけて視認し難くなるため、意匠性が低下する。
無機系紫外線吸収剤の含有割合は、意匠性の低下を抑制しつつ、高い耐候性を得る観点から、3~50質量%であることが好ましく、5~45質量%であることがより好ましく、10~30質量%が更に好ましい。
【0059】
無機系紫外線吸収剤としては、紫外線領域の波長を効果的に吸収する性質を有する無機系のものであれば、特に制限されずに用いることができる。無機系紫外線吸収剤としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化セリウムの中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの中でも、コストと紫外線吸収性能とのバランス、及び供給の安定性の点から、酸化チタン又は酸化亜鉛が好適であり、より好適には酸化亜鉛である。
【0060】
無機系紫外線吸収剤含有層7に含まれる無機系紫外線吸収剤の平均粒子径は、300nm以下であることが好ましい。無機系紫外線吸収剤の平均粒子径が300nmを超えると、無機系紫外線吸収剤自体の存在が肉眼で視認され易くなり、表面保護層8側から化粧材を視認したときに白濁した外観となり、着色基材5が有する模様や色彩がぼやけて視認し難くなり、意匠性が低下し易くなる。
無機系紫外線吸収剤含有層7に含まれる無機系紫外線吸収剤の平均粒子径は、より好ましくは200nm以下であり、より好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下である。
【0061】
平均一次粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求めることができる値である。
【0062】
無機系紫外線吸収剤は、耐候性を考慮して光触媒活性が低いものを選定する観点から、光觸媒活性を抑制する表面処理がされたものであることが好ましい。表面処理としては、例えば、無機金属含水酸化物で表面処理されて、無機含水酸化物微粒子で表面が覆われたものが好ましく挙げられる。無機金属含水酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニアの他、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛等が好ましく挙げられる。また、表面が未処理の酸化チタン、又は上記の無機金属含水酸化物で表面処理された酸化チタンを、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等のカップリング剤、又はシリコーンオイル、フッ素系オイル等で表面処理して、表面を疎水性や親油性にしたものも好ましく挙げられる。本発明においては、上記の表面処理を単独で施されたもの、又は複数の表面処理を組み合わせて施された無機系紫外線吸収剤を用いることができる。
【0063】
無機系紫外線吸収剤含有層7には、必要に応じて、有機系紫外線吸収剤を含有させることができる。
無機系紫外線吸収剤含有層7に、有機系紫外線吸収剤を補助的に含有させることで、無機系紫外線吸収剤含有層7、及び無機系紫外線吸収剤含有層7よりも着色基材5側に配置された層の紫外線による劣化を、より効果的に抑制することができる。また、無機系紫外線吸収剤含有層7に多量の無機系紫外線吸収剤を含有させなくても、高い紫外線吸収性能を得られるため、無機系紫外線吸収剤含有層7において高い透明性を得ることができる。
また、無機系紫外線吸収剤含有層7に有機系紫外線吸収剤を含有させることにより、例えば透明樹脂層6等の、無機系紫外線吸収剤含有層よりも着色基材5側に配置された層への紫外線の入射量が低減される。このため、これらの層や、当該無機系紫外線吸収剤含有層7自体に含まれる、無機系紫外線吸収剤の紫外線による励起や、これに伴う光触媒反応による樹脂成分の分解反応を抑制することができる。
【0064】
無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させる有機系紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤を好適に用いることができる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。このような紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0065】
また、無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させる有機系紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤に限られず、ベンゾトリアゾール系ものであってもよい。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3-[3-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
また、無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させる有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系であってもよい。
【0066】
無機系紫外線吸収剤含有層7における有機系紫外線吸収剤の含有割合は、30質量%以下であることが好ましい。
当該無機系紫外線吸収剤含有層7に含まれる有機系紫外線吸収剤の含有割合を、30質量%以下とすることで、当該有機系紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制されるため、紫外線吸収性能を長期間にわたって良好に保つことができる。
【0067】
無機系紫外線吸収剤含有層7には、必要に応じて、光安定剤を含有させることができる。無機系紫外線吸収剤含有層7に含有させる光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を好適に用いることができる。
無機系紫外線吸収剤含有層7に配合する光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2’-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキロキシ-2,2,6,6-テトラメ チルピペリジン-4-yl)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3, 5-トリアジンなどが挙げられる。
【0068】
また、無機系紫外線吸収剤含有層7には、必要に応じて、硬化剤、接着性向上剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、溶剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0069】
無機系紫外線吸収剤含有層7の形成は、上記樹脂組成物をそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態で用い、例えばグラビア印刷等の公知の印刷方法又はロールコート等の公知の塗布方法等によって行うことができる。
無機系紫外線吸収剤含有層7を形成する際には、無機系紫外線吸収剤含有層7の形成面に、必要に応じ適宜、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面易接着処理を行っても良い。プライマー層の厚みは、用途等にもよるが、通常、1~10μm程度である。なお、無機系紫外線吸収剤含有層7を、電離放射線硬化型の樹脂により形成する場合、電離放射線硬化性の樹脂組成物の硬化は、後述する表面保護層8の形成において説明するのと同様にして行うことができる。
【0070】
無機系紫外線吸収剤含有層7の厚さとしては、特に制限はないが、通常1~10μm程度、好ましくは2~8μm、更に好ましくは3~6μmの範囲が好ましい。
【0071】
表面保護層8は、化粧材の表面の保護としての役割を有しており、バインダー樹脂として使用される樹脂材料としては、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等から適宜選択することができる。また、形態としても、水系、エマルジョン系、溶剤系、無溶剤系など種々の形態のものが使用でき、1液硬化型樹脂、硬化剤を用いる2液硬化型樹脂、さらには紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により架橋、硬化する電離放射線硬化性樹脂も用いることができる。
【0072】
本開示の化粧材における表面保護層8としては、電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化により得られた樹脂で構成されることが好ましい。
具体的には、従来電子線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。
具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本開示においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0075】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0076】
なお、本開示の化粧材における表面保護層8としては、電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物の架橋硬化により得られた樹脂で構成されていてもよい。
表面保護層8の形成に紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、樹脂組成物100質量部に対して、光重合用開始剤を0.1~5質量部程度添加することが望ましい。
光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマー、又はカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等を用いることができる。
また、光増感剤としては、例えばp-ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本開示においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は溶剤の使用量を低減することが可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0077】
その他、表面保護層8には、得られる硬化樹脂層として所望する物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。表面保護層8に配合する添加剤としては、例えば耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
【0078】
表面保護層8には、必要に応じて、有機系紫外線吸収剤を配合することができる。
表面保護層8に有機系紫外線吸収剤を配合することで、表面保護層8に無機系紫外線吸収剤を多量に含有させなくても、高い紫外線吸収性能を得ることができる。このため、少なくとも表面保護層8自体の、紫外線による劣化を抑制することができ、かつ表面保護層8における白濁や白化現象が抑制され、表面保護層8としての透明性が高く、化粧材として高い意匠性を得ることができる。
また、表面保護層8に、有機系紫外線吸収剤を含有させることで、例えば無機系紫外線吸収剤含有層7等の、着色基材5側の層への紫外線の入射量が低減される。このため、これらの層や、当該表面保護層8自体に含まれる、無機系紫外線吸収剤の紫外線による励起や、これに伴う光触媒反応による樹脂成分の分解反応を抑制することができる。
また、表面保護層8に有機系紫外線吸収剤を含有させることで、例えば絵柄層3等の、表面保護層8よりも着色基材5側に存在する層における柄の退色を抑制することができる。
また、表面保護層8に有機系紫外線吸収剤を含有させることで、例えば基材層1等の、着色基材5側に存在する層の劣化を抑制することができる。
表面保護層8を、電子線硬化性樹脂組成物により形成した場合、当該表面保護層に配合する有機系紫外線吸収剤としては、前述の無機系紫外線吸収剤含有層の説明において述べた、トリアジン系紫外線吸収剤を好適に用いることができる。
【0079】
表面保護層8における、有機系紫外線吸収剤の含有割合は、10質量%以下であることが好ましい。表面保護層8に含まれる有機系紫外線吸収剤の含有割合が10質量%を超えると、当該有機系紫外線吸収剤のブリードアウトが発生し易くなり、当該表面保護層8に含まれる紫外線吸収剤の含有量が経時的に低下することで、耐候性が低下し易くなる。
表面保護層8に含まれる有機系紫外線吸収剤の含有割合を、8質量%以下とすることで、当該有機系紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制されるため、紫外線吸収性能を長期間にわたって良好に保つことができる。
表面保護層8における、有機系紫外線吸収剤の含有割合は、無機系紫外線吸収剤の光触媒作用を抑制する効果を得つつ、当該吸収剤のブリードアウトを抑制する観点から、0.1質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。
【0080】
表面保護層8に含有させる有機系紫外線吸収剤としては、前述したものの中でも、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を用いることにより、前述した無機系紫外線吸収剤を光励起する、380nm付近の波長の光を効率的に吸収でき、当該無機系紫外線吸収剤による光触媒作用を効果的に抑制できるため好ましい。
【0081】
また、表面保護層8には、望ましくは、前述した無機系紫外線吸収剤が含有されていないことが好ましいが、15質量%以下の含有割合の範囲内であれば、表面保護層8に無機系紫外線吸収剤が配合されていてもよい。
表面保護層8に無機系紫外線吸収剤を含有させることにより、主に表面保護層における耐候性を補助的に補うことができる。例えば、表面保護層8に配合する有機系紫外線吸収剤の量を少ない量に抑えた場合でも、無機系紫外線吸収剤を表面保護層8に補助的に配合することで、表面保護層8や、当該表面保護層8よりも着色基材5側の層における耐候性を補うことができる。但し、表面保護層8における紫外線吸収剤の含有割合は、無機系紫外線吸収剤含有層7における無機系紫外線吸収剤の含有割合よりも少ないことが好ましい。
表面保護層8における白化現象や白濁を抑制し、透明保護層8における透明性を得る点から、無機系紫外線吸収剤の含有割合は、15質量%以下とすることが好ましい。
表面保護層8における無機系紫外線吸収剤の含有割合は、優れた耐候性を有しつつ、高い意匠性を得る観点から、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
表面保護層8における無機系紫外線吸収剤の含有割合は、0.5~10質量%であることがより好ましい。
【0082】
表面保護層8には、必要に応じて、光安定剤を配合することができる。
表面保護層8に配合する光安定剤としては、前述の無機系紫外線吸収剤含有層の説明において述べた、ヒンダードアミン系光安定剤を好適に用いることができる。
【0083】
表面保護層8に含有させる耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα-アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30~200%程度とすることがよい。これらの中でも球状のα-アルミナが好ましい。
表面保護層8には、さらに、重合禁止剤として例えばハイドロキノン、p-ベンゾキノン等、架橋剤として例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物等、充填剤として例えば硫酸バリウム、タルク等、着色剤として例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー等、赤外線吸収剤として例えば、ジチオール系金属錯体等を含有させることができる。
【0084】
本開示においては、例えば前記の電子線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び前述した無機系紫外線吸収剤や有機系紫外線吸収剤等の各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電子線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を、表面保護層形成用組成物として調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本開示においては、このようにして調製された塗工液を、着色基材5上に形成された層の表面に、硬化後の厚さが1~20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、好ましくは2~20μm程度であることが好ましい。
【0085】
上記のようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して架橋硬化することで該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加圧電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加圧電圧70~300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy、好ましくは10~50kGyの範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することができる。
【0086】
なお、図1~2においては図示しないが、各層の間には、各層の間の層間密着性の強化等を目的として、適宜プライマー層を形成してもよい。プライマー層を形成する樹脂としては、前述した無機系紫外線吸収剤含有層の説明において、プライマー層の形成に通常用いられる樹脂として説明したのと同様の樹脂を用いることができる。また、プライマー層は、各層の間だけでなく、例えば着色基材5の裏面に形成してもよい。この場合、プライマー層は、化粧材を他の部材に貼着する際の貼着層として用いることができる。
【0087】
本開示の化粧材は、各種基板に貼着して化粧板として使用することができる。具体的には、図3に示すように、基板12に接着剤層11を介して化粧材10を貼着することにより、化粧板20とすることができる。被着体となる基板12は、特に限定されず、基材層1に用いられる材料として前述したような、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。
これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧材との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。これらの処理方法は、前述した基材層1に施すものと同様である。
【0088】
以上のようにして製造される化粧板は、該化粧板を任意に切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等 の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
【実施例
【0089】
次に、本開示の実施の態様について詳細に説明するが、本開示は以下の実施の態様に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(評価方法)
(1)意匠性(初期外観)の評価(目視)
得られた化粧材の意匠性(外観)を、目視により下記の基準で評価した。
A : ヘイズ無く、意匠性が十分保持されている
B : ややヘイズがあるが、意匠性は実使用上問題ない
C : ヘイズが高く、意匠性が大きく損なわれている
(2)耐候性促進試験(初期外観からの外観変化の度合い)
アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用いブラックパネル温度63℃にて、照度100mW/cm、20時間照射し、4時間結露で試験した後(以下、S-UV試験という)、1000時間後に目視で観察をして、外観変化の度合いを評価した。
A : 外観変化は確認されなかった
B : 軽微な外観変化が確認された
C : 著しい艶低下、クラック等が確認された
【0090】
実施例1
基材としてポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm)を準備した。該ポリプロピレン樹脂シート表面に、両面コロナ放電処理を施した後、当該基材の一方の面に、2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂をバインダーとして含有する印刷インキをグラビア印刷法により塗布して、木目模様の絵柄層(厚さ:3μm)を形成して、着色基材を形成した。
他方の面に2液硬化型ウレタン-硝化綿混合樹脂(硬化剤として、樹脂100質量部に対して、ヘキサメチレンジイソシアネートを5質量部含有)を含む樹脂組成物を塗布して裏面プライマー層(厚さ:3μm)を形成した。
次いで、絵柄層の上に、透明樹脂であるポリウレタン樹脂系接着剤をグラビア印刷法により塗布して接着層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成した後、透明樹脂であるポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、透明樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
次いで、透明樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記組成の無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂組成物100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)5質量部とを混合した組成物を、グラビア印刷法により透明樹脂層の表面に塗布して、無機系紫外線吸収剤含有層(乾燥後の厚さ:4μm)を形成した。
次に、無機系紫外線吸収剤含有層上に、下記組成の電離放射線硬化性樹脂組成物をロールコート法により塗布して、未硬化樹脂層を形成し、電子線(加圧電圧:175KeV、5Mrad(50kGy))を照射して未硬化樹脂層を架橋硬化させることにより、表面保護層(厚さ:5μm)を形成して、積層シートを得た。その後、積層シートの表面保護層側からエンボス加工を施して、表面保護層側の表面に、最大深さ50μmの凹部を有する木目導管模様を形成し、化粧材を得た。得られた化粧材について、上記の評価方法に基づき評価を行った。
【0091】
(無機系紫外線吸収剤含有層形成用樹脂組成物)
樹脂組成物の組成:
ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体及びアクリルポリオール樹脂の混合物[バインダー];65質量%
酸化亜鉛[無機系紫外線吸収剤];表1に示す量(但し、表1に示す量は、無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物の全量に対する、固形分換算での質量%とする。)。粒径は表1に示す粒径値。
有機系紫外線吸収剤A(ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」、BASF社製))、有機系紫外線吸収剤B(ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN400」、BASF社製));
表1に示す量(但し、表1に示す量は、有機系紫外線吸収剤A:有機系紫外線吸収剤B=3:12の質量比で混合した混合物としての量であり、無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物の全量に対する、固形分換算での量とする。)
ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製);
無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物の全量に対して、3質量%
【0092】
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
ウレタンアクリレートオリゴマー(電離放射線硬化性樹脂、重量平均分子量:4,000、官能基数:3);75質量部
酸化亜鉛(粒径20nm)[無機系紫外線吸収剤];表1に示す量(但し、表1に示す量は、電離放射線硬化性樹脂組成物の全量に対する、固形分換算での量とする。)
ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」,BASF社製)[有機系紫外線吸収剤];
電離放射線硬化性樹脂組成物の全量に対して、1質量%
ヒンダードアミン光安定剤(ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、「TINUVIN123」、BASF社製);
電離放射線硬化性樹脂組成物の全量に対して、2.5質量部
【0093】
比較例A2~A3
無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物に対する無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
【0094】
比較例A4
電離放射線硬化性樹脂組成物に対する無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
【0095】
比較例A5
無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物に対する無機系紫外線吸収剤の添加量、及び 電離放射線硬化性樹脂組成物に対する無機系紫外線吸収剤の添加量を、それぞれ表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
【0096】
比較例A6、実施例7
電離放射線硬化性樹脂組成物に対する有機系紫外線吸収剤の添加量を、それぞれ表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
【0097】
比較例1~2
無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物に対する無機系紫外線吸収剤の添加量を、表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
【0098】
比較例3
無機系紫外線吸収剤含有層形成用組成物に対する無機系紫外線吸収剤の添加量、及び 電離放射線硬化性樹脂組成物に対する無機系紫外線吸収剤の添加量を、それぞれ表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、化粧材を得た。
【0099】
実施例1、比較例A2~A6、実施例7及び比較例1~3で得られた化粧材について、上記した評価方法に基づき、意匠性及び耐候性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示すように、無機系紫外線吸収剤である酸化亜鉛を、無機系紫外線吸収剤含有層に3~50質量%の含有割合で配合した実施例1、比較例A2~A6、実施例7の化粧材では、意匠性に優れ、また高い耐候性を得られることが確認できた。
一方比較例1では、無機系紫外線吸収剤含有層における酸化亜鉛の含有量が3質量%未満であったため、耐候性の点で劣るものであった。
また、比較例2では、無機系紫外線吸収剤含有層における酸化亜鉛の含有量が50質量%を超えていたため、高い耐候性を得られたものの、意匠性の点で劣っていた。
また、比較例3では、実施例3と対比すると、実施例3の無機系紫外線吸収剤含有層における酸化亜鉛より多い量の酸化亜鉛を、表面保護層に含有しているにもかかわらず、耐候性の点で劣っており、また、意匠性の点でも劣っていた。
【符号の説明】
【0102】
1 基材層
2 着色層
3 絵柄層
4 接着性樹脂層
5 着色基材
6 透明樹脂層
7 無機系紫外線吸収剤含有層
8 表面保護層
10 化粧材
11 接着剤層
12 基板
20 化粧板
図1
図2
図3