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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】乾燥装置、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/04 20060101AFI20221109BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221109BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20221109BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F26B21/04 Z
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 301
F26B13/10 C
F26B3/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019011210
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2019163922
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018050417
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀明
(72)【発明者】
【氏名】星野 好昭
(72)【発明者】
【氏名】池上 廣和
(72)【発明者】
【氏名】梁川 宜輝
(72)【発明者】
【氏名】相良 亜弥佳
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-237548(JP,A)
【文献】特開平04-087662(JP,A)
【文献】実開昭48-094476(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/04
B41J 2/01
F26B 13/10
F26B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥対象上の液体組成物を温める乾燥手段と、
前記乾燥手段で温められて揮発した有機溶剤の揮発成分を含む気体を循環し、乾燥に再利用する気体循環手段と、
前記再利用される揮発成分の濃度を調整する濃度調整手段と、を備え、
前記乾燥手段は、前記乾燥対象に放射熱を与える放射加熱手段と、前記放射加熱手段で加熱される空気を前記乾燥対象に吹き付ける送風手段と、を含む
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記濃度調整手段は、前記気体循環手段内部の気体を前記前記気体循環手段の外部の気体と混合させ、前記有機溶剤の揮発成分の濃度を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記濃度調整手段は、前記有機溶剤を遮断または吸収可能なフィルタを有し、前記フィルタによって有機溶媒の濃度を低減させるように調整する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記乾燥対象の搬送方向に沿って配設された複数の循環経路入口を備え、
前記搬送方向において下流側に位置する前記循環経路入口から流入する前記気体の流量は、上流側に位置する前記循環経路入口から流入する前記気体の流量よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記気体循環手段による前記気体の循環率は、前記乾燥対象の種類、サイズ、枚数、前記液体組成物を付与する時間の少なくともいずれかに応じて決定される
ことを特徴とする請求項2又は4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記有機溶剤の濃度を検出する濃度検出手段を有し、
前記濃度調整手段は、前記有機溶剤濃度の検出結果に応じて循環率を決定する
ことを特徴とする請求項2、4又は5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記気体循環手段は、前記放射加熱手段及び前記送風手段が含まれる装置筐体内の気体を、前記装置筐体外の循環経路に排気する
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記放射加熱手段と前記送風手段とが、前記乾燥対象の搬送方向に沿って複数配置され、
前記放射加熱手段は、前記乾燥対象と、前記送風手段内の空気とを加熱する
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記乾燥対象の搬送方向に沿って前記送風手段が複数配置され、
前記循環経路は、前記気体循環手段が前記装置筐体内の気体を排気する循環経路入口と、前記複数の送風手段に対して装置前面側から分配して還流させる分配経路と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項10】
搬送される部材に液体を付与する液体付与手段と、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の乾燥装置と、を備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙、連帳紙、ウェブ、シートなどの加熱対象に液体を付与する印刷装置として、乾燥装置を備えて、付与された液体の乾燥を促進するものがある。
【0003】
例えば、加熱対象の移動方向に沿って、加熱対象の移動方向と直交する方向に長い長尺のヒータと、同じく加熱対象の移動方向と直交する方向に延びる長尺のノズルを有する送風機とを交互に配置して、ヒータによって温めた空気を送風機のノズルから加熱対象に吹き付けるようにしたものがある(特許文献1)。
【0004】
また、インクジェット記録装置における熱風乾燥装置として、送風源に空気を供給する吸気部と、排気部で回収された熱風を吸気部に供給する熱風循環部を備えたものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-168805号公報
【文献】特許第5893428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、乾燥装置による乾燥で気化した有機溶剤を含む気体を再度乾燥装置内部に導入して循環すると、乾燥装置内部の有機溶剤蒸気濃度が上昇し、液体の乾燥性が低下するとともに、防爆安全性が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、気体の循環を行いつつ乾燥性の低下を抑制し、防爆安全性も向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る乾燥装置は、
乾燥対象上の液体組成物を温める乾燥手段と、
前記乾燥手段で温められて揮発した有機溶剤の揮発成分を含む気体を循環し、乾燥に再利用する気体循環手段と、
前記再利用される揮発成分の濃度を調整する濃度調整手段と、を備え、
前記乾燥手段は、前記乾燥対象に放射熱を与える放射加熱手段と、前記放射加熱手段で加熱される空気を前記乾燥対象に吹き付ける送風手段と、を含む
構成とした。
【0009】
本発明によれば、気体の循環を行いつつ乾燥性の低下を抑制し、防爆安全性も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例の概略説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
図3】同乾燥装置の平面説明図である。
図4】同乾燥装置の送風手段の斜視説明図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
図8】本発明の第5実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について図1を参照して説明する。図1は同実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例の概略説明図である。
【0012】
この印刷装置100は、インクジェット記録装置であり、搬送される部材(被搬送部材、加熱対象、乾燥対象)である連帳紙110に対して所要の色の液体であるインクを吐出付与する液体付与手段である液体吐出ヘッド111(111A~111D)を含む液体付与部101を有している。
【0013】
液体付与部101は、例えば、連帳紙110の搬送方向上流側から、4色分のフルライン型の液体吐出ヘッド111が配置され、連帳紙110に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を付与する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0014】
連帳紙110は、巻き出しローラ102から繰り出され、搬送部103の搬送ローラ112によって、液体付与部101に対向して配置された搬送ガイド部材113上に送り出され、搬送ガイド部材113で案内され、液体付与部101に対向して搬送(移動)される。
【0015】
液体付与部101によって液体が付与された連帳紙110は、本発明に係る乾燥装置(乾燥部)104を経て、排出ローラ114によって送られて、巻取りローラ105に巻き取られる。
【0016】
この印刷装置1の使用する液体(インク)の有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0017】
<有機溶剤>
使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0018】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0019】
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0020】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0021】
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0022】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、印刷媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0023】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0024】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0025】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
【0026】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
【0027】
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0028】
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0029】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0030】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0031】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0033】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0034】
顔料をインク中に分散させるには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
【0035】
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料等が使用できる。
【0036】
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
【0037】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
【0038】
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
【0039】
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
【0040】
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
<顔料分散体>
色材に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
【0042】
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
【0043】
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0044】
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0045】
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0046】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0047】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0048】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0049】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0050】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0051】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0052】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
【0053】
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0055】
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
【0056】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0057】
【化1】

(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは整数を表わす。 R及びR’はアルキル基、アルキレン基を表わす。)
【0058】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0059】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
【0060】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0061】
【化2】
【0062】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0063】
【化3】
【0064】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCnF2n+1でnは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CnF2n+1でnは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。aは4~14の整数である。
【0065】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。
【0066】
この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR(いずれも、DuPont社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Du Pont社製のFS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0067】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0068】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0069】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0070】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0071】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0072】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0073】
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
【0074】
インクの表面張力としては、印刷媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
【0075】
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0076】
次に、第1実施形態に係る乾燥装置について図2ないし図4を参照して説明する。図2は同乾燥装置の概略説明図、図3は同乾燥装置の平面説明図、図4は同乾燥装置の送風手段の斜視説明図である。
【0077】
乾燥装置104は、乾燥対象である連帳紙110の移動方向(矢印Y方向:以下、「搬送方向Y」という。)に沿って、複数(ここでは計6個)の送風手段であるエアーナイフ120が配置されている。
【0078】
そして、各エアーナイフ120の外部であって、隣り合うエアーナイフ120、120の間には、エアーナイフ120の内部の空気を加熱する手段である放射加熱手段121が配置されている。
【0079】
エアーナイフ120は、長尺のチャンバ(ハウジング)131を有し、チャンバ131の内部空間133に通じるスリット状の吹き出し口であるノズル132を備えている。なお、スリット状の吹き出し口132は、1本のスリットであっても、複数本のスリットを幅方向に並べたものでも良い。ノズル132は、搬送方向Yと交差する方向の幅に相当する長さを有している。
【0080】
また、本実施形態のエアーナイフ120は、チャンバ131の長手方向の一端部に、チャンバ131の内部空間133に気体を送り込む気流発生手段としてのファン134を備えている。気流発生手段としてのファン134としては、例えば、二重反転ファンなどを使用することで大きな風量を得ることができる。
【0081】
ここで、エアーナイフ120は、連帳紙110の移動方向(搬送方向Y)と交差する方向の一端部側に気流発生手段としてファン134が配置された第1送風手段である。
【0082】
エアーナイフ120Aのファン134によってチャンバ131の内部では矢印b方向の気流が生じ、ノズル132から図2の矢印d方向に気流が噴射される(吹き出される)。
【0083】
放射加熱手段121は、搬送方向Yにおいて隣り合うエアーナイフ120、120の間に配置されている。つまり、エアーナイフ120と放射加熱手段121とは交互に配置されている。
【0084】
これにより、1つの放射加熱手段121によって隣り合う2つのエアーナイフ120、120の内部の空気を加熱することができる。ただし、放射加熱手段121を例えば2つのエアー120毎に配置することもできる。
【0085】
放射加熱手段121としては、液体に含まれる水分の吸収波長帯域において極大波長を有する赤外線を照射する赤外線ヒータが好ましい。また、発熱体の材料としてカーボンを用いたカーボンヒータを用いることが好ましい。
【0086】
これらのエアーナイフ120及び放射加熱手段121によって、乾燥対象である連帳紙110上の液体組成物(インク)を乾燥する乾燥手段141を構成している。複数の乾燥手段141は、装置筐体(ハウジング)140によって囲まれている。
【0087】
乾燥装置104の下流側には、連帳紙110表面の温度を検出する温度検出手段150を備えている。温度検出手段150としては、非接触式の温度検出手段が好ましく、例えば赤外線式表面温度計が好ましい。
【0088】
そして、装置外装140の外部には、乾燥手段141で温められて揮発した有機溶剤の揮発成分を含む気体を循環し、乾燥に再利用する気体循環手段200が配置されている。
【0089】
気体循環手段200は、装置筐体140に設けられた乾燥装置内部の蒸気を含む気体を排気する循環経路入口となる排気口201を含む循環経路202と、循環経路202を複数の乾燥手段141のエアーナイフ120に分配して還流させる分配経路300と、循環用送風手段220とを有している。
【0090】
また、気体循環手段200の循環経路202に外気を導入する外気導入経路203を備え、外気を気体循環手段200の内部である循環経路202の気体に混合して有機溶剤の揮発成分の濃度を調整する濃度調整手段としての循環率調整手段210を備えている。
【0091】
次に、この乾燥装置104の動作概要について説明する。
【0092】
液体付与部101によって液体が付与された連帳紙110が搬送方向Yの方向に搬送されて乾燥装置104を通過する。
【0093】
乾燥装置104において、放射加熱手段121に通電することで放射加熱手段121からの放射される放射熱が搬送されている連帳紙110に直接的に与えられ、連帳紙110は放射熱によって加熱される。
【0094】
また、放射加熱手段121の放射熱によってエアーナイフ120のチャンバ131の内部空間133の空気が加熱される。そして、ファン134を駆動して吸気することによって、ノズル132から矢印d方向に加熱された空気(温風)が吹き出されて、搬送されている連帳紙110に吹き付けられる。
【0095】
連帳紙110は下流側に搬送された後、温度検出手段150によって連帳紙110の表面温度が検出される。このとき、連帳紙110の表面温度が所定の値となるように前記放射加熱手段121に投入される電力が制御される。
【0096】
以上の動作により、連帳紙110上の液体を加熱して液体(インク)の蒸気圧を上昇させ、連帳紙110及び液体は乾燥される。
【0097】
連帳紙110上の液体を加熱して蒸発させることによって生じた有機溶剤の揮発成分を含む気体は、循環用送風手段220によって、乾燥装置104に配置された排気口201から循環経路202内に排気される。
【0098】
循環経路202に排気された蒸気を含む空気は、循環経路202を通り、再度、エアーナイフ120のファン134の上流側に還流されることで、ファン134で吸気されてエアーナイフ120の内部空間133に導入される。
【0099】
エアーナイフ120に導入される気体は外気よりも高温となるので、インクの乾燥に必要な空気の温度に上昇するために、放射加熱手段121に投入される消費電力が低減される。
【0100】
また、循環経路202を流れる有機溶剤の蒸気濃度が高く含まれる気体は、外気導入経路203を備えた循環率調整手段210を介して外気と混合されることによって、蒸気濃度が低下される。
【0101】
このように、蒸気濃度が低下された気体が乾燥装置104内部に還流することによって、乾燥装置104の装置筐体140の内部における有機溶剤蒸気濃度の上昇が抑制される。これにより、液体の乾燥性の低下を抑制しつつ、防爆に対する安全性を向上することができる。
【0102】
ここで、循環率調整手段210で調整する「循環率」とは、乾燥装置104の排気口201から排気される流量Vex、外気から導入される空気の流量Veとするとき、Vex/(Vex+Ve)で示されるものである。
【0103】
次に、本発明の第2実施形態について図5を参照して説明する。図5は同実施形態に係る乾燥装置の概略説明図と、液体の加熱によって発生する有機溶剤の蒸気量を搬送方向Yに沿って示した説明図である。
【0104】
本実施形態では、連帳紙110の搬送方向Yに沿って複数の排気口201を配置している。ここでは、排気口201はエアーナイフ120の上方に配置している。
【0105】
前述したように、インクに含まれる有機溶剤は液体吐出ヘッド111のノズルにおける乾燥性及び吐出信頼性の点から、水よりも蒸気圧が低い溶剤が用いられているため、搬送上流側には、水分は蒸発するが、有機溶剤がほとんど蒸発しない乾燥区間Aがあり、水分の蒸発が概ね終了した位置Pから有機溶剤の蒸発が開始される。
【0106】
そのため、乾燥区間Aで発生する有機溶剤の蒸気濃度は低く、位置P以降の乾燥区間Bで発生する有機溶剤の蒸気濃度は高くなる。
【0107】
そこで、本実施形態では、連帳紙110の搬送方向Yに沿った方向に複数の排気口201(201a~201f)と、各排気口201(201a~201f)に接続された流量調節手段211(211a~211f)を備えている。
【0108】
そして、有機溶剤の蒸気濃度が低い乾燥区間Aの位置に対応する搬送方向上流側の流量調節手段211a~211cの開口量を少なく、有機溶剤の蒸気濃度が高い乾燥区間Bの位置に対応する搬送方向下流側の流量調節手段211d~211fの開口量を多くしている。
【0109】
これにより、乾燥対象の搬送方向に沿って配設された複数の循環経路入口(排気口201a~201f)のうち、搬送方向において下流側に位置する循環経路入口(排気口201d~201f)から流入する気体の流量は、上流側に位置する循環経路入口(排気口201a~201c)から流入する気体の流量よりも大きくなる。
【0110】
このように構成することで、有機溶剤の蒸気濃度が高い乾燥区間Bからの気体の流入量を(排気量)増加することができ、効率的に、乾燥装置104内部の蒸気濃度を低くすることができる。したがって、防爆安全性を更に向上することができる。
【0111】
流量調節手段211の開口量(流入量)は、ここでは、乾燥対象である印刷媒体の種類、サイズ、印刷枚数、印刷時間、印刷速度、液体組成物の種類、液体組成物の吐出量の少なくともいずれかに応じて決定することができる。
【0112】
次に、本発明の第3実施形態について図6を参照して説明する。図6は同実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
【0113】
本実施形態では、前記第2実施形態において、循環経路202内の有機溶剤濃度を検出する濃度検出手段としてのガス検知手段240を備えている。
【0114】
そして、調整制御手段250は、ガス検知手段240が検知した循環経路202内部に流れる気体の蒸気濃度(検出結果)が所定濃度以下のときには、循環量調整手段210を制御して、外気の導入量を少なくし、循環率を高くする。これにより、排気された気体の温度が高いまま還流されて、消費電力を少なくできる。
【0115】
一方、ガス検知手段240が検知した循環経路202内部に流れる気体の蒸気濃度が所定濃度を越えるときには、循環量調整手段210を制御して、外気の導入量を多くし、循環率を低くする。これにより、防爆安全性を確保することができる。
【0116】
なお、上記各実施形態においては、送風手段であるエアーナイフが搬送方向Yと直交する方向に配置される例で説明しているが、送風手段であるエアーナイフが搬送方向Yと直交以外の角度で交差する方向に配置される構成とすることもできる。
【0117】
また、上記各実施形態において、混合するために流入させる気体は、気体循環手段200の外部の気体であればよく、例えば、乾燥装置104内の溶媒の濃度が低い気体でもよい。溶剤の混合と同時に排気も行って濃度調整をする場合は、乾燥装置104の外部からの気体、又は、印刷装置100の外部からの気体を利用して混合させることが好ましい。
【0118】
次に、本発明の第4実施形態について図7を参照して説明する。図7は同実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
【0119】
本実施形態においては、濃度調整手段として、循環経路202中に、有機溶剤を遮断または吸収可能なフィルタ260を有している。このフィルタ260によって有機溶剤を遮断または吸収することで、有機溶媒の濃度を低減させるように調整する。
【0120】
このように、有機溶剤を遮断または吸収可能なフィルタ260を設けることで、外気への溶剤の放出量を抑制するためのフィルタと兼用することができ、装置構成が簡単になる
【0121】
次に、本発明の第5実施形態について図8を参照して説明する。図8は同実施形態に係る乾燥装置の概略説明図である。
【0122】
本実施形態では、前記第3実施形態において、循環率調整手段210と循環用送風手段220との間に、有機溶剤を遮断または吸収可能なフィルタ260を有している。
【0123】
このように、気体循環手段200の外部の気体とフィルタ260とを併用することで、フィルタ260交換の頻度を低減させることができる。また、高い濃度の有機溶媒が長時間滞留することを防ぐために有機溶媒を一定量排気することができる。
【0124】
また、上記の各実施形態において、搬送される部材が連帳紙である例について説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、連続用紙、ロール紙、ウェブなどの連続体、長尺なシート材のような記録媒体意外にも、壁紙、プリプレグ等の電子回路基板用シートのような被印刷物でも良い。
【0125】
また、乾燥対象には、インク等の液体で文字や図形等の画像を記録する以外にも、加飾・装飾などを目的として、パターン等の意味を持たない画像をインク等の液体で付与してよい。
【0126】
本願において、付与される液体は、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0127】
液体付与手段として液体吐出ヘッドを使用するとき、液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0128】
なお、本願における印刷は、画像形成、記録、印字、印写等とも同じ意味である。
【符号の説明】
【0129】
101 液体付与部
104 乾燥装置(乾燥部)
110 連帳紙(乾燥対象)
120 エアーナイフ(送風手段)
121 輻射加熱手段(加熱手段)
131 チャンバ
132 ノズル(吹き出し口)
133 内部空間
134 ファン(気流発生手段)
150 乾燥手段
200 気体循環手段
201 排気口(循環経路入口)
202 循環経路
203 外気導入経路
210 循環率調整手段
211 流量調節手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8