(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】電子機器、動作モード切り替え方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20221109BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20221109BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221109BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20221109BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H04N1/00 838
H04M1/00 U
H04N1/00 127B
G03G21/00 510
G03G21/00 390
B41J29/393 101
B41J29/38
(21)【出願番号】P 2019013389
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】篠原 光貴
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-003900(JP,A)
【文献】特開2009-182753(JP,A)
【文献】特開2018-144446(JP,A)
【文献】特開2014-127005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04M 1/00
G03G 21/00
B41J 29/393
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常使用することを目的とした第1の動作モード
から、保守を目的とした第2の動作モード
へ遷移するための通信を行う近距離無線通信手段と、
前記近距離無線通信手段を用いて、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードへ遷移する第1の制御手段と、
機器の無操作状態を検出し、前記無操作状態が一定時間続いたときに、前記第2の動作モードから、初期状態または前記第1の動作モードへ遷移
し、前記第2の動作モードを終了させる第2の制御手段を備え
、
前記第1の動作モードは、前記第2の動作モードへ遷移可能な動作モードAと、前記第2の動作モードへ遷移できない動作モードBとを有し、
前記第1の制御手段は、前記近距離無線通信手段の機能を、前記動作モードAでは有効にし、前記動作モードBでは無効にし、前記通信を行う携帯端末装置による認証に基づいて、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードへログインする電子機器。
【請求項2】
前記第2の動作モードから、前記初期状態または前記第1の動作モードへ遷移する際に、前記第2の動作モードへ再度遷移して作業を途中から開始するための情報を保存する遷移情報記憶手段をさらに備え、
前記第2の制御手段は、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードへ再度遷移した際に、前記遷移情報記憶手段により状態を復元することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記近距離無線通信手段は、前
記携帯端末装置の機器固有の識別番号を取得する識別番号取得手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記識別番号を用いた演算・照合を行って、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードを遷移することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2の制御手段により前記第2の動作モードから、前記初期状態または前記第1の動作モードへ遷移する際、前記第2の動作モードにおいて変更した設定を変更前の設定へ戻す第3の制御手段を、さらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
近距離無線通信手段
と通信を行う携帯端末装置による認証に基づいて、通常使用することを目的とした第1の動作モードから、保守を目的とした第2の動作モードへログインする電子機器のモード切り替え方法であって、
前記第1の動作モードは、前記第2の動作モードへ遷移可能な動作モードAと、前記第2の動作モードへ遷移できない動作モードBとを有し、
前記近距離無線通信手段の機能を、前記動作モードAでは有効にし、前記動作モードBでは無効にし、
前記近距離無線通信手段が
前記携帯端末装置と通信を行い、受信した情報に基づいて、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードへ遷移し、
機器の無操作状態を検出し、
前記無操作状態が一定時間続いたときに、前記第2の動作モードから、初期状態または前記第1の動作モードへ遷移
し、前記第2の動作モードを終了させるモード切り替え方法。
【請求項6】
近距離無線通信手段を備える電子機器に、請求項5に記載のモード切り替え方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、動作モード切り替え方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、一般ユーザーが通常使用する通常モードの他に、サービスマンがその電子機器の保守・メンテナンスを実施するためのサービスマン専用のメンテナンス(保守)モードが備えられた機器が存在する。メンテナンスモードは一般に、機器の利用状況や設定情報を確認・変更するためのモードであり、一般ユーザーが操作できないよう管理されている必要がある。そのため、サービスマンは電子機器をメンテナンスモードに移行させてから、機器のメンテナンスを行う。
例えば、特許文献1には、セキュリティー性と利便性の向上が図られた画像形成シテムが開示されている。
しかしながら、メンテナンスモードに移行した状態のままサービスマンがメンテナンス作業を中断してメンテナンス対象の機器から離れた場合、近くのユーザーがメンテナンスモードでの操作を行えるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、サービスマンがスムーズかつセキュリティー上安全にメンテナンス作業を進められる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明の電子機器は、通常使用することを目的とした第1の動作モードから、保守を目的とした第2の動作モードへ遷移するための通信を行う近距離無線通信手段と、前記近距離無線通信手段を用いて、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードへ遷移する第1の制御手段と、機器の無操作状態を検出し、前記無操作状態が一定時間続いたときに、前記第2の動作モードから、初期状態または前記第1の動作モードへ遷移し、前記第2のモードを終了させる第2の制御手段を備え、前記第1の動作モードは、前記第2の動作モードへ遷移可能な動作モードAと、前記第2の動作モードへ遷移できない動作モードBとを有し、前記第1の制御手段は、前記近距離無線通信手段の機能を、前記動作モードAでは有効にし、前記動作モードBでは無効にし、前記通信を行う携帯端末装置による認証に基づいて、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードへログインすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、保守対象の電子機器に対して、サービスマンがスムーズかつセキュリティー上安全にメンテナンス作業を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態の電子機器をMFPに適用するシステム構成例を表す図である。
【
図2】MFPのハードウェア構成例を説明する図である。
【
図3】一実施形態の電子機器と携帯端末装置との機能の一例を説明するブロック図である。
【
図4】一実施形態の電子機器のモードの遷移処理の一例を表すフローチャートである。
【
図5】遷移情報記憶手段より作業状態を復元する処理の一例を表すフローチャートである。
【
図6】遷移情報記憶手段へ作業状態を保存する処理の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る一実施形態の電子機器について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0008】
本発明の一実施形態は、サービスマンによるメンテナンスモードへの移行及びメンテナンス作業に際して、電子機器は、機器の無操作状態を検出し、所定時間機器への操作が無い状態が続いた場合に、メンテナンスモードから初期状態または通常のログイン状態に遷移する。このようにすれば、サービスマンや管理者等がメンテナンスモードを実行している途中で電子機器から離れて所定の時間が経過した場合についてセキュリティーを確保することができる。
【0009】
一実施形態の電子機器は、例えば、通常使用することを目的とした第1の動作モードと、保守を目的とした第2の動作モードとを切り替えるための通信を行う近距離無線通信手段と、近距離無線通信手段を用いて、第1の動作モードから第2の動作モードへ遷移する第1の制御手段と、機器の無操作状態を検出し、無操作状態が一定時間続いたときに、第2の動作モードから、初期状態または第1の動作モードへ遷移する第2の制御手段と、を備える。
【0010】
まず、一実施形態の電子機器をMFP(Multifunction Peripheral/Product/Printer)に適用するシステム構成の一例について説明する。
図1は、一実施形態の電子機器をMFPに適用するシステム構成例を表す図である。
図2は、MFPのハードウェア構成例を説明する図である。システムは、MFP900、携帯端末装置(「無線通信端末」とも称する)200およびICカード300を有する。MFP900と、携帯端末装置200およびICカード300は、近距離無線通信手段により通信を行う。
【0011】
MFP900は、一般ユーザーが使用し、サービスマンがメンテナンスを行う装置とする。MFP900は、後述する電子機器の各機能を実現可能とする。
携帯端末装置200は、サービスマンに関する認証情報を有し、MFP900へ送信することができる。携帯端末装置200は、サービスマンが保持し、使用する。
ICカード300は、ICカード毎に固有の識別情報を有し、MFP900へ送信することができる。ICカード300は、複数用意され、サービスマンおよび一般ユーザーが保持し、使用することを前提とする。
【0012】
次に、MFPのハードウェアの構成例を説明する。
図2に示されているように、MFP900は、コントローラ910、近距離通信部920、エンジン制御部930、操作パネル940、ネットワークI/F950を備えている。
【0013】
これらのうち、コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU(Central Processing Unit)901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)907、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ908、及び、記憶部であるHD(Hard Disk)909を有し、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
【0014】
これらのうち、CPU901は、MFP900の全体制御を行う制御部である。
NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0015】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM(Read Only Memory)902a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM(Random Access Memory)902bとからなる。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0016】
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。
ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDDコントローラ908およびMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC906は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931及びプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
【0017】
MEM-C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。
HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD909は、CPU901の制御にしたがってHD909に対するデータの読出又は書込を制御する。
AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0018】
また、近距離通信部920には、近距離通信回路920aが備わっている。近距離通信部920は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
更に、エンジン制御部930は、スキャナ部931及びプリンタ部932によって構成されている。
また、操作パネル940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル940bを備えている。コントローラ910は、MFP900全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル940からの入力等を制御する。スキャナ部931又はプリンタ部932には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれている。
【0019】
なお、MFP900は、操作パネル940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0020】
また、ネットワークI/F950は、通信ネットワーク800を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信部920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
以下の各実施形態では、一実施形態の電子機器の詳細について説明する。
【0021】
実施形態1.
図3を参照して、一実施形態の電子機器および携帯端末装置の機能の一例について説明する。
まず、一実施形態の電子機器100の動作モードについて説明する。
電子機器100は、初期状態、第1の動作モードおよび第2の動作モードの3つの状態(モード)を有し、ICカード300または携帯端末装置200との通信に基づいて、3つの状態の間を遷移する。
【0022】
「初期状態」は、電子機器100の電源がONされており、ICカード300による認証を受け付けている状態(ICカード認証の待ち受け状態)である。
「第1の動作モード」は、ユーザーまたはサービスマンが有するICカード300との通信による認証に基づいて、ログインした状態である。一実施形態では、第1の動作モードは、サービスマンのICカード300でログインした第1の動作モードAと、ユーザーのICカード300によりログインした第1の動作モードBとの2種類を設定する。
【0023】
「第2の動作モード」は、サービスマンがメンテナンス作業を行う状態である。第2の動作モードは、例えば、課金情報など一般のユーザーが操作できない情報についてもアクセス可能な、サービスマンがメンテナンス作業を行うためのモード(メンテナンスモード)である。第2の動作モードは、サービスマンが所持する携帯端末装置200との通信による認証に基づいて、第1の動作モード(第1の動作モードA)から第2の動作モードへ遷移した状態(ログインした状態)である。
3つの状態の詳細については、
図4を参照して後述する。
【0024】
次に、電子機器100の機能ブロックについて説明する。
電子機器100は、制御部110、記憶部120、通信部130および操作部140を備える。
制御部110は、電子機器100の全体の動作を制御する。制御部110は、第1の制御手段111、第2の制御手段112および第3の制御手段113を有する。
【0025】
第1の制御手段111は、初期状態から第1の動作モードへの移行、および、第1の動作モードから第2の動作モードへの移行を制御する。
第2の制御手段112は、第2の動作モードから初期状態または第1の動作モードへの移行を制御する。
第3の制御手段113は、第2の動作モードから初期状態または第1の動作モードへ移行する場合に、第2の動作モードにおいて変更した設定を、変更前の設定へ戻す処理を行う。第3の制御手段113については、実施形態3で後述する。
【0026】
記憶部120は、ICカード認証、および携帯端末装置200による認証に必要な認証情報と、作業記録に関する作業記録情報とを記録する。記憶部120は、認証情報として、例えば、複数のサービスマンを識別する識別子(以降適宜「サービスマンID」と称する)、複数のユーザーを識別する識別子(以降適宜「ユーザーID」と称する)を保持する。
【0027】
また、記憶部120は、遷移情報記憶手段(「作業状態記憶手段」とも称する)121を有する。
遷移情報記憶手段121は、第2の動作モードで行う作業に関する情報を記憶する。作業に関する情報は、作業記録、作業中断記録などとする。遷移情報記憶手段121は、サービスマンIDと紐づけて作業に関する情報を保持する。遷移情報記憶手段121は、例えば、情報を保持するフォルダー名に、サービスマンIDを用いて、サービスマン毎の作業に関する情報を保持するとよい。
【0028】
さらに、記憶部120は、遷移情報記憶手段121に作業記録が保存されているか否かの情報を格納するレジスタ(以降適宜「作業記録レジスタ」と称する)を有する。なお、作業記録レジスタは、遷移情報記憶手段121に設けてもよい。
また、記憶部120は、制御部110が実行するプログラム、プログラムが使用する閾値、その他のデータ等を格納する。また、制御部110がプログラムを実行するときの作業領域として用いる。
【0029】
通信部130は、ICカード300または携帯端末装置200との通信を行う。通信部130は、ICカードリーダー131、近距離無線通信手段132を有する。
近距離無線通信手段132は、メンテナンス作業において、サービスマンが所持する携帯端末装置200との通信により、当該サービスマンのサービスマンIDを取得する。電子機器100は、例えば、記憶部120に、取得したサービスマンIDを、制御部110の各機能ブロックが参照可能になるよう保持してもよい。
操作部140は、情報を表示する画面、情報を入力する入力手段(例えば、マウス、キーボード、操作パネル)を有する。
【0030】
前述したMFP900では、電子機器100が備える各機能を、例えば、以下のように対応させて実現する。
制御部110および記憶部120がコントローラ910、通信部130が近距離通信部920、および、操作部140が操作パネル940により実現することができる。
近距離通信部920は、近距離通信回路920aが近距離無線通信手段132を実現し、ICカードリーダー131をさらに有するように構成するとよい。
【0031】
携帯端末装置200は、制御部210、記憶部220、通信部230および操作部240を備える。
制御部210は、携帯端末装置200の全体の動作を制御する。制御部210は、図示しないCPUやその他の電子部品で構成されている。制御部210は中央演算処理装置としてCPUを利用し、記憶部220等に記憶、入力されたプログラムやデータに基づき各種処理を実行する。
【0032】
記憶部220は、制御部210が実行するプログラム、プログラムが使用する閾値、その他のデータ等を格納する。また、制御部210がプログラムを実行するときの作業領域として用いる。
通信部230は、電子機器100との通信を行う。通信部230は、近距離無線通信手段231を有する。
操作部240は、情報を表示する画面、情報を入力する入力手段(例えば、マウス、キーボード、操作パネル)を有する。操作部240は、文字や数値などの入力、メニューやその他選択肢の選択、処理の実行やキャンセルなどの入力を利用者が行うことを可能にする。
【0033】
次に、一実施形態の電子機器の動作例を説明する。
図4は、一実施形態の電子機器のモードの遷移処理の一例を表すフローチャートである。
図4では、左側に3つの状態を表し、右側のフローチャートに各状態に対応する動作例を表す。
【0034】
ステップS1では、電子機器100は、第1の動作モード前の初期状態となっている。電子機器100は、電源がONされており、通信部130のICカードリーダー131が、ICカード認証を受け付けている状態(ICカード認証の待ち受け状態)である。このとき、近距離無線通信手段132の機能は無効となっている。
例えば、電子機器100は、電源が投入されたときに、ICカードリーダー131を待ち受け状態にし、近距離無線通信手段132の機能を無効にする初期設定を行うようにする。
【0035】
ステップS2では、電子機器100は、ICカード300がかざされたかどうか判定する処理を行う。電子機器100は、ICカードリーダー131においてICカード300の反応があれば(S2でYes)、ステップS3へ移行し、反応がなければ(S2でNo)、ステップS1のICカード認証の待ち受け状態を継続する。
【0036】
ステップS3では、電子機器100は、ICカードリーダーにかざしたICカード300がサービスマンのものかどうかを判定する。制御部110の第1の制御手段111は、ICカード300の認証情報と、記憶部120に記憶されている認証情報を照合して、ICカード300がサービスマンのものであれば(S3でYes)、ステップS4へ移行し、サービスマンのものでなければ(S3でNo)、ステップS6へ移行する。
【0037】
ステップS4では、第1の制御手段111は、近距離無線通信手段132の機能を有効にして、サービスマンの携帯端末装置200からの通信を許可する。
ステップS5では、電子機器100は、サービスマンが通常使用するモード(第1の動作モードA)へログインする。このとき、近距離無線通信手段132の機能は有効となっている。
【0038】
ステップS6では、第1の制御手段111は、近距離無線通信手段132の機能を無効のままにして、サービスマンの携帯端末装置200からの通信を不許可とする。
ステップS7では、電子機器100は、一般のユーザーが通常使用するモード(第1の動作モードB)へログインする。このとき、近距離無線通信手段132の機能は無効のため、本状態から直接メンテナンスモードへ移行不可となる。なお、電子機器100を、一度ステップS1の初期状態へ戻すためには、電源のON/OFF(電子機器100のリセット)、または、スリープ状態とする必要がある。
【0039】
ステップS8では、第1の制御手段111は、近距離無線通信手段132により一定時間内に近距離無線通信があったかどうかを判定する。通信があれば(S8でYes)、ステップS9へ移行し、通信なければ(S8でNo)、ステップS6へ移行する。
【0040】
ステップS9では、第1の制御手段111は、記憶部220に記憶された認証情報と、記憶部120に記憶された認証情報を照合して、ステップS8で発生した通信が、サービスマンが持参した携帯端末装置200から発生したかを判定する。サービスマンの携帯端末装置200であれば(S9でYes)、ステップS10へ移行し、サービスマン以外であれば(S9でNo)、ステップS6へ移行する。
【0041】
ステップS10では、第1の制御手段111は、第2の動作モードにログインする。ログイン後、第1の制御手段111は、例えば、第2の制御手段112に、第2の動作モードへ移行したことを通知する(第2の制御手段112を起動する)。
【0042】
ステップS11では、第2の制御手段112は、過去にログインしたサービスマンの作業途中記録が遷移情報記憶手段121にあるか判定する。記録があれば(S11でYes)、ステップS12へ移行し、記録がなければ(S11でNo)。ステップ13へ移行する。第2の制御手段112は、例えば、遷移情報記憶手段121に作業記録が保存されているか否かの情報を格納する作業記録レジスタを参照して、作業記録の有無を判定する。
【0043】
ステップS12では、第2の制御手段112は、遷移情報記憶手段121から作業記録を読み出すための(作業状態を復元するための)作業記録読み出しプログラムを実行する。詳細は、
図5を参照して後述する。
ステップS13では、第2の制御手段112は、作業が中断されたかを判断するための(遷移情報記憶手段121へ作業状態を保存するための)無操作状態検出プログラム(「作業中断監視プログラム」とも称する)を実行する。詳細は、
図6を参照して後述する。
ステップS14では、第2の制御手段112は、中断されてから一定時間内に操作部へ何らかの入力がないかを判定する。操作部への入力がなければ(S14でYes)、作業は完了したとみなしステップS15へ移行する。入力があれば(S14でNo)、途中とみなしステップS1へ移行する。
【0044】
ステップS15では、第2の制御手段112は、ステップS14で作業完了したとみなされた状態のため、遷移情報記憶手段121からサービスマンの作業途中記録を消去する。
ステップS16では、第2の制御手段112は、作業記録レジスタを「0」に設定する。
このようにして、モードの遷移を終了する。
【0045】
次に、
図5を参照して、メンテナンスを中断したときに作業状態を復元するために、作業記録を読み出す処理を説明する。
図5は、遷移情報記憶手段より作業状態を復元する処理の一例を表すフローチャートである。
第2の制御手段112は、メンテナンスモードである第2の動作モードへログインしているサービスマンが、過去に遷移情報記憶手段121に保存した作業記録を読みだす(S12-1)。このとき、第2の制御手段112は、例えば、フォルダー名がサービスマンIDとなる情報を読み出す。
第2の制御手段112は、読み出した結果を操作部140に表示する(S12-2)。これにより、操作部140は、作業中断した時の画面となっている。
【0046】
第2の制御手段112は、読み出した結果を操作部140に表示した後、遷移情報記憶手段121から作業中断記録を削除する(S12-3)。
第2の制御手段112は、削除が完了したら、作業記録レジスタを「0」に設定する(S12-4)。
【0047】
次に、
図6を参照して、作業が中断されたかを判断する処理を説明する。
図6は、遷移情報記憶手段へ作業状態を保存する処理の一例を表すフローチャートである。
第2の制御手段112は、一定時間サービスマンからの操作がないかを判定する(S13-1)。操作がなければステップS13-2へ移行し、あれば作業が継続しているとみなす。一定時間は予め設定し、記憶部120内に保持する。
第2の制御手段112は、作業途中記録を保存するためのフォルダーを遷移情報記憶手段121に作成する(S13-2)。このとき、第2の制御手段112は、例えば、フォルダー名がサービスマンIDとなるフォルダーを作成する。
【0048】
第2の制御手段112は、ステップS13-2で作成したフォルダーに作業情報を保存する(S13-3)。
第2の制御手段112は、作業情報の保存が完了したら、作業記録レジスタを「1」に設定する(S13-4)。
【0049】
本実施形態の電子機器100によれば、特殊コマンドを入力することなく、メンテナンスができる第2の動作モードへ移行できる。また、サービスマンが電子機器100を離れた際に、サービスマンの不在を検知して自動で初期状態または第1の動作モードに移行するため、セキュリティーを確保できる。さらに、第2の動作モードへ再度遷移したときに、作業途中の状態からメンテナンス作業を開始することができる。
【0050】
実施形態2.
前述した電子機器100において、近距離無線通信手段132は、携帯端末装置200の機器固有の識別番号を取得する識別番号取得手段を備えるとよい。
第1の制御手段111は、識別番号取得手段が取得した識別番号を受け取り、識別番号を用いた演算・照合を行って、第1の動作モードと第2の動作モードを遷移する。
このようにすれば、携帯端末装置200の機器ごとに異なる演算により遷移を制御することができるため、さらにセキュリティーを確保できる。
【0051】
実施形態3.
実施形態1では、メンテナンス作業を中断する際に、作業記録を保存すること、および、中断したメンテナンス作業を再開するときに、作業記録を復元することについて説明した。本実施形態では、さらに、メンテナンス作業を中断する際に、メンテナンス作業前の設定に戻す処理を備えることを説明する。
第3の制御手段113は、第2の制御手段112により第2の動作モードから、初期状態または第1の動作モードへ遷移する際、第2の動作モードにおいて変更した設定を変更前の設定へ戻す。
また、第3の制御手段113は、上述した設定変更を行うため、第2の制御手段112により、第1の動作モードから第2の動作モードに遷移する際に、メンテナンス作業前の設定を記録する設定情報を保持する。
記憶部120は、例えば、設定情報記憶手段をさらに設けてもよい。第3の制御手段113は、設定情報記憶手段に、設定情報を書き込むこと、および設定情報を読み出すことを行う。なお、設定情報記憶手段に、設定情報を書き込む処理は、第2の動作モードへの移行したときに(例えば、
図4のステップS10)、第1の制御手段111または第2の制御手段112が行ってもよい。
【0052】
このようにすれば、サービスマンがメンテナンス作業途中に機器を離れた際に、ユーザーが機器をメンテナンス前と同様に通常使用することができる。
【0053】
その他の実施形態.
上記各実施形態では、第1の制御手段111、第2の制御手段112および第3の制御手段113の機能ブロックを用いて説明したが、機能ブロックの構成は一例を示したものであり、これらに限られるわけではない。例えば、第2の制御手段112が、無操作状態検出プログラムを実行する構成例を説明したが、無操作状態検出手段などの第2の制御手段112とは別の機能ブロックが実行するように構成してもよい。同様に、作業記録読み出しプログラムを、作業記録読み出し手段が実行してもよい。
【0054】
制御部110は、電子機器100に、少なくとも以下の手順を実行させるプログラムを実現するようにするとよい。
・近距離無線通信手段の通信により取得した、通常使用することを目的とした第1の動作モードと、保守を目的とした第2の動作モードとを切り替えるための情報に基づいて、第1の動作モードから前記第2の動作モードへ遷移する第1の遷移手順。
・機器の無操作状態を検出する無操作検出手順。
・無操作状態が一定時間続いたときに、第2の動作モードから、初期状態または第1の動作モードへ遷移する第2の遷移手順。
【0055】
上記各実施形態では、中断後のメンテナンス作業を同じサービスマンが再開する一態様を用いて説明した。電子機器は、複数のサービスマンが異なるメンテナンス作業を実行する場合に対応するように構成してもよい。
第2の制御手段112は、サービスマンIDに紐づけられた作業記録を遷移情報記憶手段121から読み出すことにより、サービスマン毎に作業記録を復元することができる。
また、遷移情報記憶手段121は、作業記録レジスタをサービスマンID毎に設けてもよい。あるいは、一つでも作業記録を保持している場合には作業記録レジスタを「1」に設定するようにしてもよい。
このようにすれば、サービスマンIDを用いて、作業記録などの情報を管理することが可能になり、各サービスマンに対応する作業記録を保存し、復元することができる。
【0056】
以上説明した通り、上記各実施形態では、通常使用することを目的とした第1の動作モードと保守を目的とした第2の動作モードとを設け、動作モードを切り替えるための通信を行う近距離無線通信手段と、近距離無線通信手段を用いて、第1の動作モードと第2の動作モードを遷移する第1の制御手段と、機器の無操作状態を検出し(機器の無操作状態を無操作状態検出手段により検出し)、一定時間無操作が続いた時に前記第2の動作モードから離れ、初期状態または第1の動作モードへ遷移する第2の制御手段とを備える電子機器の一例を説明した。
【0057】
このようにすれば、メンテナンスモードへ移行する際、サービスマンが専用のICカードを用いて機器にログインした後、携帯端末装置で近距離無線通信手段を用いて、メンテナンスモードへ移行するような認証フローとすることで、特殊コマンドの入力や外部ネットワークへの接続を行うことがなく、サービスマンのみがメンテナンスモードへ移行できるため、情報漏洩のリスクが減り、セキュリティー向上につながる。
【0058】
従来の電子機器では、サービスマンが電子機器の操作部から特殊コマンドを入力することでサービスマン専用のモードに移行する技術が考えられ既に知られていた。一実施形態の電子機器を用いることにより、例えば、特殊コマンドをユーザーが覚えてしまうと、いつでもメンテナンスモードに移行できて、ユーザーによって意図的に利用状況や設定情報が改ざんされてしまうという問題を解消することができる。加えて、特殊コマンドを失念してしまった場合に、コマンドの確認を行うための時間がかかり、お客様の業務を停止させてしまうという問題を解消することができる。
【0059】
また、メンテナンスモード時に機器の無操作状態が一定時間続いた場合、メンテナンス作業の途中経過を保存した後、メンテナンスモードと異なる状態へ自動的に遷移する手段を備えていて、同一サービスマンがメンテナンスモードに再度移行した際に、メンテナンス作業の途中経過を読み込むようなプログラムとすることで、作業を中断した時点から再開することができ、作業時間のロスを防ぐことができるため時短につながる。
例えば、メンテナンスモードに移行した状態のままサービスマンがメンテナンス作業を中断してメンテナンス対象の機器から離れた場合、近くのユーザーがメンテナンスモードでの操作を行えるという問題を解消することができる。加えて、ログアウト時に作業の途中経過が保存されないため、途中から再開させることができないという問題を解消することができる。
【0060】
さらに、メンテナンス作業の途中で、サービスマンが機器を離れ、その間にユーザーが機器を使用する場合、メンテナンス実施以前の状態へ設定が戻るような仕組みを構築することで、ユーザーが緊急で機器を使用したい場合にも対応できる。
【0061】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0062】
上記実施形態に記載された装置群は、本明細書に開示された一実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。
ある実施形態では、電子機器は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。同様に、携帯端末装置は、互いに通信するように構成された複数のコンピューティングデバイスを含むことができる。
【符号の説明】
【0063】
100 電子機器
110、210 制御部
120、220 記憶部
130、230 通信部
140、240 操作部
111 第1の制御手段
112 第2の制御手段
113 第3の制御手段
121 遷移情報記憶手段
131 ICカードリーダー
132 近距離無線通信手段
200 携帯端末装置
300 ICカード
900 MFP
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】