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特許7173380ポリマー、ポリマーの製造方法、ポリマー溶液および感光性樹脂組成物
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  • 特許-ポリマー、ポリマーの製造方法、ポリマー溶液および感光性樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ポリマー、ポリマーの製造方法、ポリマー溶液および感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20221109BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221109BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20221109BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20221109BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20221109BHJP
【FI】
C08F8/14
G02B5/20 101
G03F7/038 501
C08F290/12
C08F290/14
C08G75/045
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021574809
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034280
(87)【国際公開番号】W WO2022065225
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2020158807
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020201731
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田邊 潤壱
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131351(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154439(WO,A1)
【文献】特開2018-172700(JP,A)
【文献】特表2013-536287(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133741(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041747(US,A1)
【文献】国際公開第2020/226052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、283/01、
290/00-290/14、299/00-299/08、
301/00
C08G 75/045
G02B 5/20
G03F 7/038
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(P)で表される、ポリマー。
【化1】
(一般式(P)中、
Yは、2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される1~6価の炭素数1以上30以下の有機基であり、
Chainは、下記一般式(AE-1)で表される構造単位および下記一般式(AE-2)で表される構造単位を含み、
【化2】
(一般式(AE-1)中、Zは1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。Qは水素原子または置換または未置換の炭素数1~6のアルキル基である。Xは酸素原子、または炭素数1~4のアルキレン基を表し、Qの前記アルキル基とXの前記アルキレン基の何れかの炭素原子とが結合して環を形成してもよい。一般式(AE-2)中、Rは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。
nは1~6の整数である。YにはChain以外の他の構造が結合していてもよい。)
【請求項2】
前記チオール基含有化合物は3官能以上のチオール基含有化合物を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記チオール基含有化合物はエステル構造を含む、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記Chainは、さらに下記一般式(NB)で表される構造単位を含む、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー。
【化3】
(一般式(NB)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、a1は0、1または2である。)
【請求項5】
前記Zが、下記一般式(1a)で表される基を含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー。
【化4】
(一般式(1a)中、Rは水素原子、メチル基またはエチル基である。)
【請求項6】
前記Chainは、下記一般式(D)で表される構造単位を含む、請求項1~5のいずれかに記載のポリマー。
【化5】
(一般式(D)中、Rは、多官能(メタ)アクリロイル基を含む基である。)
【請求項7】
前記Rが、(メタ)アクリロイル基を2~6個含む基を少なくとも1種含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリマー。
【請求項8】
前記Rが、下記一般式(1b)、(1c)または(1d)で表される基を少なくとも1種含む、請求項1~7のいずれかに記載のポリマー。
【化6】
(一般式(1b)中、
kは2または3であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するXは同一であっても異なっていてもよく、
'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
は炭素数1~12のk+1価の有機基である。)
【化7】
(一般式(1c)中、
k、R、XおよびXは、それぞれ、前記一般式(1b)におけるR、k、XおよびXと同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
およびXは、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
は、炭素数1~6の2価の有機基である。)
【化8】
(一般式(1d)中、nは、2~5の整数である。)
【請求項9】
前記Chainは、下記一般式(S)で表される構造単位を含む、請求項1~8のいずれかに記載のポリマー。
【化9】
(一般式(S)中、Rは、(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基である。)
【請求項10】
前記Chainは、さらに下記一般式(MA)で表される構造単位を含む、請求項1~9のいずれかに記載のポリマー。
【化10】
【請求項11】
前記Chainは、さらに下記一般式(E)で表される構造単位および下記一般式(EE)で表される構造単位から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~10のいずれかに記載のポリマー。
【化11】
(一般式(E)および(EE)中、Zは1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。Qは水素原子または置換または未置換の炭素数1~6のアルキル基である。Xは酸素原子、または炭素数1~4のアルキレン基を表し、Qの前記アルキル基とXの前記アルキレン基の何れかの炭素原子とが結合して環を形成してもよい。
一般式(EE)中、複数存在するZ、QおよびXは各々同一でも異なっていてもよい。)
【請求項12】
前記Chainは、さらに下記一般式(M)で表される構造単位を含む、請求項1~11のいずれかに記載のポリマー。
【化12】
【請求項13】
下記一般式(P1)で表される、請求項1に記載のポリマー。
【化13】
(一般式(P1)中、p、qおよびrはそれぞれ、ポリマー中における、A、BおよびCのモル含有率を示し、p+q+r=1であり、pは0より大きく、qは0より大きく、rは0以上である。p、qまたはrは、n個の[ ]内の構造単位毎に同一でも異なっていてもよい。
nは1~6の整数であり、
Xは、水素または炭素数1以上30以下の有機基であり、
Yは、2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される1~6価の炭素数1以上30以下の有機基であり、
Aは、下記一般式(NB)で表される構造単位を含み、
Bは、下記一般式(AE)で表される構造単位を含み、
Cは、二重結合を有する共重合性化合物から誘導される2価の構造単位を含み、
複数存在するA同士、B同士またはC同士は同一でも異なっていてもよい。
Yには[ ]nで表されるポリマー鎖以外の他の構造が結合していてもよい。
【化14】
(一般式(NB)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、a1は0、1または2である。)
【化15】
(一般式(AE)中、Z、Q、Xは一般式(AE-1)と同義であり、Rは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。)
【請求項14】
前記Cを構成する2価の構造単位は、置換または無置換の、インデン、マレイミド、スチレン、およびノルボルナジエンから選択される少なくとも1種の化合物から誘導される2価の構造単位である、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
前記Bは、下記一般式(DE)および前記一般式(SE)で表される構造単位から選択される少なくとも1種の構造単位と、必要に応じて下記一般式(D)、下記一般式(S)、下記一般式(MA)、下記一般式(E)、下記一般式(EE)および下記一般式(M)で表される構造単位から選択される少なくとも1種の構造単位とを含む、請求項13または14に記載のポリマー。
【化16】
(一般式(DE)中、Q、X、Zは一般式(AE-1)と同義であり、Rは2以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。)
【化17】
(一般式(SE)中、Q、X、Zは一般式(AE-1)と同義であり、Rは、(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基である。)
【化18】
(一般式(D)中、Rは、多官能(メタ)アクリロイル基を含む基である。)
【化19】
(一般式(S)中、Rは、(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基である。)
【化20】
【化21】
(一般式(E)中、Z、Q、Xは一般式(AE-1)と同義である。)
【化22】
(一般式(EE)中、Z、Q、Xは一般式(AE-1)と同義であり、複数存在するZ、QおよびXは各々同一でも異なっていてもよい。)
【化23】
【請求項16】
前記Yを構成する2官能以上の前記チオール基含有化合物は、下記化学式(s-1)~(s-21)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~15のいずれかに記載のポリマー。
【化24】
【請求項17】
前記Yを構成する2官能以上の前記チオール基含有化合物は、下記化学式(s-1)~(s-3)、(s-5)および(s-8)~(s-10)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~16のいずれかに記載のポリマー。
【化25】
【請求項18】
下記一般式(NBm)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とを含むモノマー組成物を、2官能以上のチオール基含有化合物の存在下で重合して原料ポリマーを調製する工程と、
得られた前記原料ポリマーと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび/または単官能(メタ)アクリルモノマーとを、塩基性触媒の存在下で反応させて、ポリマー前駆体を調製する工程と、
次いで、得られた前記ポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させる工程と、
を含む、ポリマーの製造方法。
【化26】
(一般式(NBm)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、a1は0、1または2である。)
【請求項19】
前記原料ポリマーは、下記一般式(NB)で表される構成単位および下記一般式(MA)で表される構成単位を有するポリマー鎖が、2官能以上の前記チオール基含有化合物の少なくとも1つのチオール基から誘導されるチオエーテル基を介して結合している、請求項18に記載のポリマーの製造方法。
【化27】
(一般式(NB)中、R、R、RおよびR、a1は一般式(NBm)と同義である。)
【化28】
【請求項20】
前記ポリマー前駆体は、前記一般式(NB)で表される構成単位と下記一般式(D)で表される構造単位および/または下記一般式(S)で表される構造単位とを有するポリマー鎖が、2官能以上の前記チオール基含有化合物の少なくとも1つのチオール基から誘導されるチオエーテル基を介して結合している、請求項19に記載のポリマーの製造方法。
【化29】
【化30】
(一般式(D)中、Rは2以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。一般式(S)中、Rは(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基である。)
【請求項21】
前記ポリマーは、前記一般式(NB)で表される構造単位と、前記一般式(D)で表される構造単位および/または前記一般式(S)で表される構造単位と、下記一般式(DE)で表される構造単位および/または下記一般式(SE)で表される構造単位とを有するポリマー鎖が、2官能以上の前記チオール基含有化合物の少なくとも1つのチオール基から誘導されるチオエーテル基を介して結合している、請求項20に記載のポリマーの製造方法。
【化31】
(一般式(DE)中、Zは1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。Qは水素原子または置換または未置換の炭素数1~6のアルキル基である。Xは酸素原子、または炭素数1~4のアルキレン基を表し、Qの前記アルキル基とXの前記アルキレン基の何れかの炭素原子とが結合して環を形成してもよい。Rは2以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。)
【化32】
(一般式(SE)中、Z、Q、Xは一般式(DE)と同義である。Rは(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基である。)
【請求項22】
前記ポリマー前駆体と前記エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物とを反応させる工程の前に、前記ポリマー前駆体に水を添加し触媒の存在下で加熱する工程を含む、請求項18~21のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項23】
前記ポリマー前駆体と前記エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物とを反応させる工程の後に、反応物に水を添加し加熱する工程を含む、請求項18~22のいずれかに記載のポリマーの製造方法
【請求項24】
請求項1~17のいずれかに記載のポリマーを含む、ポリマー溶液。
【請求項25】
さらに、チオール基およびアルコキシ基を有する化合物またはそのオリゴマーを含む、請求項24に記載のポリマー溶液。
【請求項26】
チオール基およびアルコキシ基を有する前記化合物は、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい有機鎖に、チオール基およびアルコキシ基が結合した構造を備える、請求項25に記載のポリマー溶液。
【請求項27】
チオール基およびアルコキシ基を有する前記化合物は、下記一般式(a)で表される化合物を含む、請求項25~26のいずれかに記載のポリマー溶液。
【化33】
(一般式(a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のアルキル基を示し、少なくとも2つのRは炭素数1~3のアルコキシ基である。
Lは、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい、m+n価の有機鎖を示す。
Xは単結合、またはカルボニル基、(チオ)エステル基または(チオ)アミド基を含む2価の有機基を示す。
Qは単結合、またはカルボニル基または(チオ)エステル基または(チオ)アミド基を含む2価の有機基を示す。
m:n(モル比)は1:1~1:8であり、当該化合物の重量平均分子量は100~2000である。)
【請求項28】
カラーフィルタまたはブラックマトリクスの形成に用いられる、請求項24~27のいずれかに記載のポリマー溶液。
【請求項29】
請求項24~28のいずれかに記載のポリマー溶液と、
多官能(メタ)アクリレートモノマーと、
光重合開始剤と、
を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、ポリマー溶液および感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や固体撮像素子は、通常、カラーフィルタやブラックマトリクスを備えている。カラーフィルタやブラックマトリクスの形成には、感光性樹脂組成物が用いられることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1の請求項1には、少なくとも側鎖に、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、ならびに、光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献1の実施例には、アルカリ可溶性樹脂として、メタクリル酸/メタクリル酸アリル/グリシジル付加体を合成し、これを用いて感光性樹脂組成物を調製したことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、エポキシ基及び酸基を含有する樹脂と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの多塩基酸モノエステルと、溶剤とを含有する樹脂組成物であって、エポキシ基及び酸基を含有する樹脂中の酸基1モルに対して、エポキシ基が0.5~3.0モルであることを特徴とする樹脂組成物が記載されている。
【0005】
特許文献3には、無水マレイン酸部位を開環させた前駆体ポリマーに対し、エポキシ基を備える化合物を反応させる工程を含むポリマーの製造方法が開示されている。エポキシ基を備える化合物としては、メタクリル酸グリシジルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2012/147706号
【文献】国際公開第2016/103844号
【文献】国際公開第2017/154439号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カラーフィルタやブラックマトリクスを形成するための感光性樹脂組成物には、光により重合反応が起こって硬化する性質を備えるポリマーが用いられる。カラーフィルタやブラックマトリクスは、感光性樹脂組成物を、露光、現像によりパターニングした後、これを硬化することにより作製される。
【0008】
感光性樹脂組成物において、「高感度化」は一般的な課題にも思われるが、表示装置や撮像装置の複雑化や普及などに伴い、一層高いレベルの高感度化が求められている。感光性樹脂組成物の感度が高い(感度が良好である)ほど、露光に必要な時間は短くなり、生産性を向上させることができる。
【0009】
また、感光性樹脂組成物の硬化物には、黄色化が抑制されて透明性や耐熱変色性に優れている必要がある。さらに、感光性樹脂組成物を基板等に塗布し、得られた塗布膜を露光し、現像することによりパターンを形成する場合、製品の歩留まりや製品信頼性の観点から基板等に対して密着性に優れていることが要求される。
特許文献1~3においては、これらの特性において改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、感光性樹脂組成物に用いられるポリマーを改良することで、感度が良好であり、黄色化が抑制された高耐熱変色性であり、さらに基板への密着性に優れた樹脂硬化物が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0011】
本発明によれば、
下記一般式(P)で表されるポリマーを提供することができる。
【化1】
(一般式(P)中、
Yは、2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される1~6価の炭素数1以上30以下の有機基であり、
Chainは、下記一般式(AE-1)で表される構造単位および下記一般式(AE-2)で表される構造単位を含み、
【化2】
(一般式(AE-1)中、Zは1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。Qは水素原子または置換または未置換の炭素数1~6のアルキル基である。Xは酸素原子、置換または未置換の炭素数1~4のアルキレン基を表し、Qの前記アルキル基とXの前記アルキレン基の何れかの炭素原子とが結合して環を形成してもよい。一般式(AE-2)中、Rは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。
nは1~6の整数である。YにはChain以外の他の構造が結合していてもよい。)
【0012】
本発明によれば、
下記一般式(NBm)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とを含むモノマー組成物を、2官能以上のチオール基含有化合物の存在下で重合して原料ポリマーを調製し、
得られた前記原料ポリマーと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび/または単官能(メタ)アクリルモノマーとを、塩基性触媒の存在下で反応させて、ポリマー前駆体を調製し、
次いで、得られた前記ポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させて得られるポリマー、を提供することができる。
【化3】
(一般式(NBm)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、a1は0、1または2である。)
【0013】
本発明によれば、前記ポリマーを含むポリマー溶液を提供することができる。
【0014】
本発明によれば、
前記ポリマー溶液と、多官能(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤と、
を含む、感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
本発明によれば、
前記感光性樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリマーによれば、感度が良好であるとともに、黄色化が低減され透明性に優れ、さらに基板等への密着性に優れる樹脂硬化物を提供することができる。言い換えれば、本発明のポリマーは、これらの特性のバランスに優れた樹脂硬化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】液晶表示装置および/または固体撮像素子の構造の一例を模式的に示す図(断面図)である。
図2】実施例1で得られたポリマーP1のH-NMRチャートである。
図3図2H-NMRチャートの6.0ppm付近のピークを拡大したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なおすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「5~90%」とは「5%以上90%以下」を意味する。
【0019】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0020】
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
【0021】
特に、本明細書における「(メタ)アクリル基」とは、-C(=O)-CH=CHで表されるアクリロイル基と、-C(=O)-C(CH)=CHで表されるメタクリロイル基とを包含する概念を表す。
【0022】
[ポリマー(A)]
本実施形態のポリマー(A)は、2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される1~6価の炭素数1以上30以下の有機基に、下記Chainで表されるポリマー鎖が少なくとも1つ結合した構造を備える。
ポリマー(A)は、具体的には下記一般式(P)で表すことができる。
【0023】
【化4】
【0024】
一般式(P)中、Chainは、下記一般式(AE-1)で表される構造単位および下記一般式(AE-2)で表される構造単位を含む。これらの構造単位を含むポリマーPは、感度が良好であるとともにアルカリ溶解性に優れ、さらに黄色化が低減され透明性に優れ、基板等への密着性に優れる樹脂硬化物を提供することができる。言い換えれば、本発明のポリマーは、これらの特性のバランスに優れる。
【0025】
【化5】
【0026】
一般式(AE-1)中、Zは1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。Qは水素原子または置換または未置換の炭素数1~6のアルキル基である。Xは酸素原子、置換または未置換の炭素数1~4のアルキレン基を表し、Qの前記アルキル基とXの前記アルキレン基の何れかの炭素原子とが結合して環を形成してもよい。
一般式(AE-2)中、Rは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。
nは1~6の整数である。
【0027】
本実施形態のポリマー(A)が、一般式(P)で表される構造を有していることにより、感度が良好であるとともに、黄色化が低減され透明性に優れ、さらに基板等への密着性に優れる樹脂硬化物を提供することができる。
【0028】
一般式(AE-1)中、Zは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であれば特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を1~4個含む基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイル基を1~3個含む基であることがさらに好ましい。Zが含む(メタ)アクリロイル基の数を最適にすることで、感度に優れるとともにアルカリ溶解性(現像性)に優れ、言い換えればこれらのバランスに優れる。
【0029】
これらの特性の観点から、Zは(メタ)アクリロイル基を1個含む基であることが好ましく、下記一般式(1a)で表される基であることがより好ましい。
【0030】
【化6】
【0031】
一般式(1a)中、Rは水素原子またはメチル基またはエチル基である。
【0032】
一般式(AE-1)中、Qは水素原子または置換または未置換の炭素数1~6のアルキル基である。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を挙げることができる。置換された炭素数1~6のアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基等を挙げることができる。
【0033】
一般式(AE-1)中、Xは酸素原子、置換または未置換の炭素数1~4のアルキレン基である。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基を挙げることができる。置換された炭素数1~4のアルレン基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基等を挙げることができる。
【0034】
一般式(AE-1)中、Qの前記アルキル基とXの前記アルキレン基の何れかの炭素原子とが結合して環を形成してもよい。環構造としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、デカリン環、ベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることができる。
【0035】
一般式(AE-2)中、Rは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であれば特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を1~6個含む基であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を1~5個含む基であることがさらに好ましく、(メタ)アクリロイル基を2~5個含む基であることがより好ましい。Rが含む(メタ)アクリロイル基の数を最適にすることで、感度をより高めることができる。また、感度と現像性とをより高度に両立させやすくなる。さらに、耐熱性をより高めやすくなる。
【0036】
本実施形態のポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(AE-1)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.5~20モル%、より好ましくは1~15モル%である。一般式(AE-2)で表される構造単位の割合は、好ましくは6~40モル%、より好ましくは12~30モル%である。
【0037】
一般式(AE-2)で表される構造単位としては、例えば下記一般式(AE-2a)で表される構造単位、下記一般式(AE-2b)で表される構造単位を挙げることができる。
【0038】
【化7】
【0039】
一般式(AE-2a)中、Rは、(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基である。特に、通常の感光性樹脂組成物の設計においては、感度を上げようと硬化性を高めた場合には硬化が進みすぎて現像性が悪くなりがちであり、一方で現像性を改良しようとした場合には硬化が不十分となりがちであるため、ポリマー(A)のChainは、一般式(AE-2a)で表される構造単位を含むことが好ましく、これにより感度と現像性の双方を良好なバランスで両立することができる。
【0040】
は、例えば、以下一般式(Sa)で表される基である。
【0041】
【化8】
【0042】
一般式(Sa)において、X10は2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。
10の総炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20である、さらに好ましくは1~10である。
一般式(Sa)において、X10は2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。
10の総炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20である、さらに好ましくは1~10である。
【0043】
10の2価の有機基としては、例えばアルキレン基が好ましい。このアルキレン基中の一部の-CH-はエーテル基(-O-)となっていてもよい。アルキレン基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、直鎖状であることがより好ましい。
【0044】
10の2価の有機基としてより好ましくは、総炭素数3~6の直鎖状アルキレン基である。X10の炭素数(X10の鎖長)を適切に選択することで、一般式(AE-2a)で表される構造単位が架橋反応に一層関与しやすくなり、感度を高めることができる。
【0045】
10の2価の有機基(例えばアルキレン基)は、任意の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などを挙げることができる。
【0046】
また、X10の2価の有機基は、アルキレン基以外の任意の基であってよい。例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシ基等から選ばれる1種又は2種以上の基を連結して構成される2価の基であってもよい。
【0047】
本実施形態のポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(AE-2a)で表される構造単位の割合は、好ましくは5~40モル%、より好ましくは10~30モル%である。
【0048】
一般式(AE-2b)中、Rは、2以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であれば特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を2~6個含む基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイル基を3~5個含む基であることがさらに好ましい。Rが含む(メタ)アクリロイル基の数を最適にすることで、感度をより高めることができる。また、感度と現像性とをより高度に両立させやすくなる。さらに、耐熱性をより高めやすくなる。
【0049】
なお、感度の一層の向上の点からは、立体障害などの点で、Rは2以上のアクリロイル基(-C(=O)-CH=CHで表される基)を含むことが好ましい。
【0050】
は、下記一般式(1b)、(1c)または(1d)で表される基であることが好ましい。このような基であることで、上記の各種効果を得やすい傾向がある。
【0051】
【化9】
【0052】
一般式(1b)中、
kは2または3であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するXは同一であっても異なっていてもよく、
'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
は炭素数1~12のk+1価の有機基である。
Rは、感度の一層の向上(重合のしやすさ)などから、水素原子が好ましい。
kは、2でも3でもよいが、原料の入手容易性や感度の一層の向上の点からは、好ましくは3である。
【0053】
が炭素数1~6のアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状であっても分枝状であってもよい。
が炭素数1~6のアルキレン基である場合、Xは好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH-(メチレン基)である。
【0054】
が-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)場合の、Xの炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0055】
Xの炭素数1~6のアルキレン基は、好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH-CH-(エチレン基)または-CH-CH(CH)-である。
'が炭素数1~6のアルキレン基である場合、その具体的態様についてはXと同様である。
'が-X'-Z'-で表される基である場合、X'の具体的態様については上記Xと同様である。
【0056】
の炭素数1~12のk+1価の有機基としては、任意の有機化合物からk+1個の水素原子を除いた任意の基を挙げることができる。ここでの「任意の有機化合物」としては、例えば分子量300以下、好ましくは200以下、より好ましくは100以下の有機化合物である。
【0057】
は、例えば、炭素数1~12(好ましくは炭素数1~6)の直鎖状または分枝状炭化水素からk+1個の水素原子を除いた基である。より好ましくは、炭素数1~3の直鎖状炭化水素からk+1個の水素原子を除いた基である。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
【0058】
別の態様として、Xは、環状構造を含む基であってもよい。環状構造を含む基としては、脂環構造を含む基、複素環構造(例えば、イソシアヌル酸構造)を含む基などを挙げることができる。
【0059】
【化10】
【0060】
一般式(1c)中、
k、R、XおよびXは、それぞれ、上記の一般式(1b)におけるR、k、XおよびXと同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
およびXは、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
は、炭素数1~6の2価の有機基である。
R、k、XおよびXの具体的態様、好ましい態様などについては、一般式(1b)で説明したものと同様である。
【0061】
およびXの炭素数1~6の2価の有機基としては、例えば、炭素数1~6の直鎖状または分枝状炭化水素から2個の水素原子を除いた基を挙げることができる。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
【0062】
およびXの炭素数1~6の2価の有機基としては、直鎖状または分枝状アルキレン基を挙げることができる。直鎖状または分枝状アルキレン基の炭素数は好ましくは1~3である。
【0063】
【化11】
【0064】
一般式(1d)中、nは、2~5の整数であり、好ましくは、2または3である。
【0065】
本実施形態のポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(AE-2b)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~20モル%である。
【0066】
本実施形態のポリマー(A)のChainは、一般式(AE-1)で表される構造単位および一般式(AE-2)で表される構造単位からなる下記一般式(AE)で表される構造単位を含むことができる。
【0067】
【化12】
【0068】
一般式(AE)中、Z、Q、Xは一般式(AE-1)と同義であり、Rは一般式(AE-2)と同義である。
本実施形態のポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(AE)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.25~17モル%、より好ましくは0.5~12モル%である。
【0069】
本実施形態のポリマー(A)のChainは、一般式(AE-1)で表される構造単位および一般式(AE-2b)で表される構造単位からなる下記一般式(DE)で表される構造単位を含むことができる。下記一般式(DE)で表される構造単位をChainに含むポリマー(A)は、感度が良好であるとともにアルカリ溶解性に優れ、さらに黄色化がより低減され透明性に優れ、基板等への密着性により優れる樹脂硬化物を提供することができる。言い換えれば、本発明のポリマーは、これらの特性のバランスにより優れ、中でも感度に特に優れる。
【0070】
【化13】
【0071】
一般式(DE)中、Q、X、Zは一般式(AE-1)と同義であり、Rは一般式(AE-2b)と同義である。
本実施形態のポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(DE)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.25~17モル%、より好ましくは0.5~12モル%である。
【0072】
本実施形態のポリマー(A)のChainは、一般式(AE-1)で表される構造単位および一般式(AE-2a)で表される構造単位からなる構造単位として、下記一般式(SE)で表される構造単位を含むことができる。
【0073】
【化14】
【0074】
一般式(SE)中、Z、Q、Xは一般式(AE-1)と同義であり、Rは一般式(AE-2a)と同義である。
【0075】
ポリマー(A)が一般式(SE)で表される構造単位を含む場合、ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(SE)で表される構造単位の割合は、好ましくは3~35モル%、より好ましくは7~25モル%である。
【0076】
本実施形態のポリマー(A)のChainは、さらに下記一般式(NB)で表される構造単位を含むことができる。
【0077】
【化15】
【0078】
一般式(NB)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、a1は0、1または2である。
【0079】
一般式(NB)で表される構造単位は、化学的に堅牢である。そのため、これを構造単位として含むポリマー(A)は、加熱処理に供された際に重量減少が小さく、安定である。よって、ポリマー(A)を含む感光性樹脂組成物は、耐熱性が要求される液晶表示装置や固体撮像素子に用いるためのフィルムやフィルタを製造するために好適に用いることができる。
【0080】
~Rを構成し得る炭素数1~30の有機基としては、置換または無置換の、直鎖または分岐鎖の炭素数1~30のアルキルが挙げられ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシル基などが挙げられる。
【0081】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
【0082】
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0083】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
【0084】
一般式(NB)で表される構造単位における、R、R、RおよびRとしては水素またはアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。
【0085】
なお、R、R、RおよびRの炭素数1~30の有機基中の水素原子は、任意の原子団により置換されていてもよい。例えば、フッ素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基などで置換されていてもよい。より具体的には、R、R、RおよびRの炭素数1~30の有機基として、フッ化アルキル基などを選択してもよい。
一般式(NB)で表される構造単位において、a1は好ましくは0または1、より好ましくは0である。
【0086】
ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(NB)で表される構造単位の割合は、好ましくは10~90モル%、より好ましくは30~70モル%、さらに好ましくは40~60モル%である。
【0087】
本実施形態のポリマー(A)のChainは、本発明の効果の観点から、さらに下記一般式(D)で表される構造単位および/または下記一般式(S)で表される構造単位を含むことができる。
【0088】
【化16】
【0089】
一般式(D)中、Rは一般式(AE-2b)と同義である。
ポリマー(A)のChainが一般式(D)で表される構造単位を含む場合、ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(D)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.5~25モル%、より好ましくは1~18モル%である。
【0090】
【化17】
【0091】
一般式(S)中、Rは一般式(AE-2a)と同義である。
ポリマー(A)のChainが一般式(S)で表される構造単位を含む場合、ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(S)で表される構造単位の割合は、好ましくは3~35モル%、より好ましくは5~25モル%である。
【0092】
本実施形態において、ポリマー(A)は、上記構造単位に加え、一般式(MA)で表される構造単位を含んでもよい。一般式(MA)で表される構造単位は、アルカリ現像液により開環して、後述の一般式(M)で表されるように2つのカルボキシル基を生じる。そのため、当該構造単位を含むポリマー(A)は、優れた現像性を備える。ポリマー(A)のChainが、一般式(MA)で表される構造単位を含む場合、ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(MA)で表される構造単位は、好ましくは、1~30モル%、より好ましくは、2~25モル%である。
【0093】
【化18】
【0094】
なお、ポリマー(A)のChain中に含まれる各構造単位の含有量(比率)は、ポリマー(A)のChainを合成する際に用いる原料の仕込み量(モル量)、合成後に残存する原料の量、各種スペクトル(例えば、IRスペクトル、H-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル)のピークの存在、およびピーク面積などから推定/算出することができる。
【0095】
本実施形態のポリマー(A)のChainは、本発明の効果の観点から、さらに下記一般式(E)で表される構造単位および/または下記一般式(EE)で表される構造単位を含むことができる。
【0096】
【化19】
【0097】
一般式(E)および(EE)中、Z、Q、Xは一般式(AE-1)と同義である。一般式(EE)において、複数存在するZ、QおよびXは各々同一でも異なっていてもよい。
【0098】
ポリマー(A)が一般式(E)で表される構造単位を含む場合、ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(E)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~12モル%、より好ましくは2~9モル%である。
【0099】
ポリマー(A)が一般式(EE)で表される構造単位を含む場合、ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(EE)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~10モル%、より好ましくは2~8モル%である。
【0100】
本実施形態のポリマー(A)のChainは、ポリマー(A)の溶剤等への溶解性を調整するために、さらに下記一般式(M)で表される構造単位を含むことができる。
【0101】
【化20】
【0102】
ポリマー(A)が一般式(M)で表される構造単位を含む場合、ポリマー(A)のChainに含まれる全構造単位中の、一般式(M)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~15モル%、より好ましくは2~10モル%である。
【0103】
本実施形態の一般式(P)で表されるポリマーのChainは、二重結合を有する共重合性化合物から誘導される2価の構造単位を含んでもよい。
構造単位は、例えば、置換または無置換の、インデン、マレイミド、スチレン、アセナフチレン、ノルボルナジエン、ジヒドロフラン、テルペン化合物(例えば、ピネン、リモネン等)、直鎖アルケン(例えば、ペンテン等)、環状アルケン(シクロヘキセン等)、シクロドデカトリエン、トリシクロウンデカエン、フマル酸ジアルキル(例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸エチル、フマル酸ジブチル等)、クマリン、(メタ)アクリル酸化合物(例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル)、酢酸ビニル、ビニルエーテル(例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル等)等から誘導される少なくとも1種の構造単位を含む。
これらのモノマーが有し得る置換基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。より具体的には、置換インデンとしては、メチルインデン等が挙げられる。置換マレイミドとしては、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド等が挙げられる。置換スチレンとしては、メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0104】
中でも好ましくは、Chainは、一般式(1)で表される構造単位(置換または無置換のインデンから誘導される2価の構造単位)、一般式(2)で表される構造単位(置換または無置換のマレイミドから誘導される2価の構造単位)、一般式(3)で表される構造単位(置換または無置換のスチレンから誘導される2価の構造単位)、または一般式(4)で表される構造単位(置換または無置換のノルボルナジエンから誘導される2価の構造単位)を含む。
【0105】
【化21】
【0106】
一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。一般式(2)において、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。一般式(3)において、R~R6は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。一般式(4)において、R~R10は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基を示す。
【0107】
一般式(P)中、Yは、2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される1~6価の炭素数1以上30以下の有機基(i)である。
【0108】
本実施形態において、官能基数は、チオール基の数である。すなわち、前記チオール基含有化合物は、2以上のチオール基を含み、前記有機基(i)は当該チオール基から誘導される1~6個のチオエーテル基を介してChainと結合する。前記有機基(i)は、Chainとの結合に関与しないチオール基を有していてもよく、ポリマー(A)は、nの数(結合数)が1~6のそれぞれの樹脂の混合物として得ることができる。
【0109】
炭素数1以上30以下の前記有機基(i)は、2官能以上、好ましくは3官能以上である。上限値は特に限定されないが、6官能以下である。
炭素数1以上30以下の前記有機基(i)の価数は、本発明の効果の観点から、1~6価、好ましくは2~6価、より好ましくは3~6価である。
【0110】
1~6価の炭素数1以上30以下の有機基(i)は、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。1~6価の炭素数1以上30以下の有機基(i)としては、例えば、1~6個のチオエーテル基(-S-*(*は結合手))を有する、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基およびヘテロ環基が挙げられる。
【0111】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、アリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。
【0112】
アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。
アルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。
アルカリル基としては、例えば、トリル基、キシリル基が挙げられる。
【0113】
シクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、およびn-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えば、エポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
【0114】
2官能以上の前記チオール基含有化合物としては、下記化学式(s-1)~(s-21)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化22】
【0116】
【化23】
【0117】
【化24】
【0118】
【化25】
【0119】
【化26】
【0120】
【化27】
【0121】
【化28】
【0122】
【化29】
【0123】
【化30】
【0124】
【化31】
【0125】
【化32】
【0126】
【化33】
【0127】
【化34】
【0128】
【化35】
【0129】
【化36】
【0130】
【化37】
【0131】
【化38】
【0132】
【化39】
【0133】
【化40】
【0134】
【化41】
【0135】
【化42】
【0136】
本実施形態において、2官能以上の前記チオール基含有化合物は、本発明の効果の観点から、3官能以上のチオール基含有化合物を含むことが好ましい。また、当該チオール基含有化合物はエステル構造を含むことも好ましい。
本実施形態において、2官能以上の前記チオール基含有化合物は、前記化学式(s-1)~(s-21)で表される化合物のうちでも、化学式(s-1)~(s-3)、(s-5)および(s-8)~(s-10)で表される化合物を含むことがより好ましく、化学式(s-1)~(s-3)、(s-5)および(s-9)で表される化合物を含むことが特により好ましい。
【0137】
2官能以上のチオール基含有化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)は、これらのチオール基含有化合物のチオール基から誘導されたチオエーテル基(-S-*(*は結合手))を末端に有し、チオエーテル基を介してChainに含まれる構造単位と結合する。前記有機基(i)は、Chainとの結合に関与しないチオール基を有していてもよい。
【0138】
一般式(P)において、YにはChain以外の他の構造が結合していてもよい。具体的には、前記一般式(P)を下記一般式(P')で表すことができる。
【0139】
【化43】
【0140】
一般式(P')中、ChainとYは一般式(P)と同義である。pは1以上の整数であり、qは0以上の整数であり、p+qは1~6である。
Qは
【0141】
Chain以外の他の構造であるQは、Yに結合することができれば特に限定されず合成反応に用いられる種々の成分を挙げることができるが、例えば、前記一般式(AE)で表される構造単位(前記一般式(DE)で表される構造単位および/または前記一般式(SE)で表される構造単位)、前記一般式(D)で表される構造単位、前記一般式(S)で表される構造単位、前記一般式(NB)で表される構造単位、前記一般式(MA)で表される構造単位、および二重結合を有する共重合性化合物から誘導される2価の構造単位から選択される少なくとも1種や、2官能以上の前記チオール基含有化合物から誘導される基が挙げられる。
【0142】
本実施形態のポリマー(A)は、以下の一般式(P1)で表される構造を有することが好ましい。一般式(P1)中の構造単位Aおよび構造単位Bは、典型的には、ポリマー(A)の主鎖を構成する。
【0143】
【化44】
【0144】
一般式(P1)中、p、qおよびrはそれぞれ、ポリマー中における、A、BおよびCのモル含有率を示し、p+q+r=1である。
pは0より大きく、好ましくは0.25~0.75である。
qは0より大きく、好ましくは0.25~0.75である。
rは0以上であり、好ましくは0~0.5、より好ましくは0~0.3、特に好ましくは0~0.1である。
p、qまたはrは、n個の[ ]内の構造単位毎に同一でも異なっていてもよい。
nは1~6の整数である。
Xは、水素または炭素数1以上30以下の有機基である。炭素数1以上30以下の当該有機基は、一般式(NB)のR~Rを構成する炭素数1以上30以下の有機基と同様である。
Yは、2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される1~6価の炭素数1以上30以下の前述の有機基(i)であり、チオール基から誘導されるチオエーテル基を介して[ ]n内の構造単位と結合する。
【0145】
Aは、前記一般式(NB)で表される構造単位を含む。
Bは、前記一般式(AE)で表される構造単位を含む。本実施形態においては、前記一般式(DE)および前記一般式(SE)で表される構造単位から選択される少なくとも1種の構造単位を含むことができる。
Bは、さらに、必要に応じて前記一般式(D)、前記一般式(S)、前記一般式(MA)、前記一般式(E)、前記一般式(EE)および前記一般式(M)で表される構造単位から選択される少なくとも1種の構造単位を含むこともできる。
Cは、二重結合を有する前記共重合性化合物より誘導される構造単位を含む。
複数存在するA同士、B同士またはC同士は同一でも異なっていてもよい。
なお、一般式(P1)において、A、BおよびCの結合順序は特に限定されず、A、BおよびCのいずれがYと結合していてもよい。
【0146】
一般式(P1)において、Yは、[ ]nで表されるポリマー鎖以外の他の構造と結合していてもよい。具体的には、前記一般式(P1)を下記一般式(P1')で表すことができる。
【0147】
【化45】
【0148】
一般式(P1')中、A、B、C、X、Y、p、qおよびrは一般式(P1)と同義である。Qは、一般式(P')と同義である。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+bは1~6である。
【0149】
本実施形態のポリマー(A)は、2官能以上の前記チオール基含有化合物として前記化学式(s-2)で表される化合物を用いた場合、例えば、以下の一般式(I)で表されるような構造を有することができる。
【0150】
【化46】
【0151】
一般式(I)中、A、B、C、X、p、qおよびrは一般式(P1)と同義である。4個の[ ]内の構造単位に含まれるA、B、C、X、p、qおよびrは、各々同一でも異なっていてもよい。
【0152】
一般式(I)において、A、BおよびCの結合順序は特に限定されず、A、BおよびCのいずれがチオエーテル基と結合していてもよい。また、一般式(I)においては、化学式(s-2)で表される化合物の4つのメルカプト基から誘導されたチオエーテル基を介して4個の[ ]内の構造単位と結合している例によって示したが、[ ]内の構造単位が1~3個結合している構造であってもよい。本実施形態においては、ポリマー(A)は、[ ]内の構造が1~4個結合している化合物を少なくとも1つ含む混合物として得ることができる。
【0153】
ポリマー(A)の重量平均分子量Mwは、例えば、1,000~20,000であり、好ましくは1,500~17,500、より好ましくは2,000~15,000、さらに好ましくは、3,000~10,000である。重量平均分子量を適切に調整することで、感度やアルカリ現像液に対する溶解性を調整することができる。
【0154】
また、ポリマー(A)の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0~6.0、より好ましくは1.0~5.5、さらに好ましくは1.0~5.0である。分散度を適切に調整することで、ポリマー(A)の物性を均質にすることができ、好ましい。なお、これらの値は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
【0155】
ポリマー(A)のガラス転移温度は、好ましくは150~250℃、より好ましくは170~230℃である。ポリマー(A)は、主として一般式(NB)で表される構造単位を含むことにより、比較的高いガラス転移温度を有する。このことは、液晶表示装置や固体撮像素子の製造に当たって、基板上に形成されたパターンが安定に存在できるという点で好ましい。なお、ガラス転移温度は、例えば、示差熱分析(differential thermal analysis:DTA)により求めることができる。
【0156】
本実施形態のポリマー(A)中に含まれる各構造単位の含有量(比率)は、ポリマー合成時の原料の仕込み量(モル量)、合成後に残存する原料の量、各種スペクトルのピーク面積(例えば、H-NMRのピーク面積)などから推定/算出することができる。
【0157】
<ポリマー(A)の製造方法>
本実施形態のポリマー(A)の製造方法について説明する。
ポリマー(A)は、任意の方法により製造(合成)することができる。ポリマー(A)は、例えば、
工程(I):一般式(NB)で表される構造単位と、一般式(MA)で表される構造単位と、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)とを含む原料ポリマーを準備する工程、
工程(II):工程(I)で得られた原料ポリマーと、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「多官能(メタ)アクリルモノマー」と称する)、および/またはヒドロキシル基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリルモノマー」と称する)とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、一般式(NB)で表される構造単位、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)、一般式(D)で表される構造単位および/または一般式(S)で表される構造単位、場合により一般式(MA)で表される構造単位を含むポリマー前駆体を調製する工程、および
工程(III):工程(II)で得られたポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させて、一般式(NB)で表される構造単位、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)、一般式(D)で表される構造単位および/または一般式(S)で表される構造単位、一般式(AE)で表される構造単位(一般式(DE)で表される構造単位および/または一般式(SE)で表される構造単位)、場合により一般式(MA)で表される構造単位を含むポリマー(A)を調製する工程、
により製造できる。
【0158】
工程(II)において、多官能(メタ)アクリルモノマーと単官能(メタ)アクリルモノマーの両方が用いられる場合、まず多官能(メタ)アクリルモノマーを原料ポリマーと反応させ、得られた反応混合物に、単官能(メタ)アクリルモノマーを反応させることが好ましい。
【0159】
(工程(I))
工程(I)における、一般式(NB)で表される構造単位と、一般式(MA)で表される構造単位と、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)とを含む原料ポリマーを準備する工程は、一般式(NBm)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とを含むモノマー組成物を、2官能以上の前記チオール基含有化合物の存在下で、重合(付加重合)することで実施することができる。なお、一般式(NBm)のR、R、RおよびRならびにa1の定義は、一般式(NB)のものと同様である。好ましい態様についても同様である。
【0160】
【化47】
【0161】
一般式(NBm)で表されるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-エン(慣用名:2-ノルボルネン)、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-アリル-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-エチニル-2-ノルボルネン、5-ベンジル-2-ノルボルネン、5-フェネチル-2-ノルボルネン、2-アセチル-5-ノルボルネン、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。重合の際、一般式(NBm)で表されるモノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
モノマー組成物は、上記モノマーに加えて他のモノマーを含んでいてもよい。
他のモノマーとしては、二重結合を有する共重合性化合物であれば特に限定されず公知の化合物を用いることができ、一般式(NBm)で表されるモノマーおよび無水マレイン酸と重合し得る。他のモノマーとしては、例えば、置換または無置換の、インデン、マレイミド、スチレン、アセナフチレン、ノルボルナジエン、ジヒドロフラン、テルペン化合物(例えば、ピネン、リモネン等)、直鎖アルケン(例えば、ペンテン等)、環状アルケン(シクロヘキセン等)、シクロドデカトリエン、トリシクロウンデカエン、フマル酸ジアルキル(例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸エチル、フマル酸ジブチル等)、クマリン、(メタ)アクリル酸化合物(例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル)、酢酸ビニル、ビニルエーテル(例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル等)等が挙げられる。工程(I)においては、一般式(NBm)で表されるモノマーと、無水マレイン酸と、さらに必要に応じてその他のモノマーとを、2官能以上の前記チオール基含有化合物の存在下で、重合(付加重合)することができる。
【0163】
2官能以上のチオール基含有化合物としては、前記化学式(s-1)~(s-21)で表される化合物が挙げられるがこれらに限定されない。2官能以上のチオール基含有化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0164】
重合の方法については限定されないが、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合が好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを使用できる。
アゾ化合物として具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)などを挙げることができる。
重合開始剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0165】
重合反応に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いることができる。重合溶媒は単独溶剤でも混合溶剤でもよい。
【0166】
原料ポリマーの合成は、一般式(NBm)で表されるモノマー、無水マレイン酸および重合開始剤を溶媒に溶解させて反応容器に仕込み、その後、加熱して、2官能以上の前記チオール基含有化合物を滴下しながら、付加重合を進行させることにより実施される。加熱温度は例えば50~80℃であり、加熱時間は例えば5~20時間である。
反応容器に仕込む際の、一般式(NBm)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とのモル比は、0.5:1~1:0.5であることが好ましい。分子構造制御の観点から、モル比は1:1であることが好ましい。
このような工程により、「原料ポリマー」を得ることができる。
なお、原料ポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期共重合体などのいずれであってもよい。典型的にはランダム共重合体または交互共重合体である。なお、一般に、無水マレイン酸は交互共重合性が強いモノマーとして知られている。
【0167】
なお、原料ポリマーの合成後に、未反応モノマー、オリゴマー、残存する重合開始剤などの低分子量成分を除去する工程を行ってもよい。
具体的には、合成された原料ポリマーと低分子量成分とが含まれた有機相を濃縮し、その後、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒と混合して溶液を得る。そして、この溶液を、メタノールなどの貧溶媒と混合し、モノマーを沈殿させる。この沈殿物を濾取して乾燥させることで、原料ポリマーの純度を上げることができる。
【0168】
(工程(II))
工程(I)で得られた原料ポリマーと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび/または単官能(メタ)アクリルモノマーとを、塩基性触媒の存在下で反応させることで、原料ポリマーに含まれる一般式(MA)で表される構造単位の一部が開環し、一般式(D)で表される構造単位および/または一般式(S)で表される構造単位が形成されて、一般式(NB)で表される構造単位、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)、ならびに一般式(D)で表される構造単位および/または一般式(S)で表される構造単位を含み、場合により一般式(MA)で表される構造単位を含むポリマー前駆体が得られる。
【0169】
より具体的には、まず、原料ポリマーを適当な有機溶剤に溶解させた溶液を準備する。有機溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)などの単独溶剤または混合溶剤を用いることができるが、これらのみには限定されず、有機化合物や高分子の合成で用いられる種々の有機溶剤を用いることができる。
【0170】
一般式(NB)で表される構造単位、ならびに一般式(D)で表される構造単位および一般式(S)で表される構造単位の両方を含むポリマーを得る場合、次に、上記の溶液に、多官能(メタ)アクリルモノマーを加える。さらに、塩基性触媒を加える。そして溶液を適切に混合して均一な溶液として、少なくとも一般式(NB)の構造単位、および一般式(D)の構造単位が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)と1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含むポリマーを得る(工程(II-i))。
【0171】
ここで用いることができる多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば一般式(1b-m)で表される化合物、一般式(1c-m)で表される化合物、および一般式(1d-m)で表される化合物が挙げられる。一般式(1b-m)におけるk、R、X1、X1'およびXの定義および具体的態様は、上述の一般式(1b)におけるものと同様である。また一般式(1c-m)におけるk、R、X、X、X、X、XおよびXの定義および具体的態様は、上述の一般式(1c)におけるものと同様である。一般式(1c-m)におけるnは、上記の一般式(1d)におけるものと同様である。
【0172】
【化48】
【0173】
【化49】
【0174】
【化50】
【0175】
ヒドロキシ基を有する多官能(メタ)アクリル化合物として、好ましく使用可能なものを以下に示す。なお、以下に示される化合物のアクリロイル基の一部または全部を(メタ)アクリロイル基としたもの(またはその逆のもの)も使用可能である。
【0176】
【化51】
【0177】
【化52】
【0178】
【化53】
【0179】
【化54】
【0180】
【化55】
【0181】
【化56】
【0182】
次いで、工程(II-i)で得られたポリマーに、単官能(メタ)アクリルモノマーを、塩基性触媒の存在下で反応させることで、少なくとも一般式(NB)の構造単位、一般式(D)の構造単位、および一般式(S)の構造単位が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)と1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含むポリマー前駆体を得ることができる(工程(II-ii))。
【0183】
塩基性触媒としては、有機合成の分野で公知のアミン化合物や含窒素複素環化合物等を適宜用いることができる。例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物または含窒素複素環化合物を触媒として用いることができる。塩基性触媒の使用量は、例えば、原料ポリマー100質量部に対し、10~60質量部程度とすることができる。なお、塩基性触媒を過剰に用いると、中和に必要な酸の量が多くなり、精製が煩雑になる等の可能性があることに留意する。
【0184】
上記溶液を、好ましくは60~80℃で、3~9時間程度加熱することで、原料ポリマー中に含まれる一般式(MA)の構造単位の開環/一般式(AE)の構造単位の形成がなされる。
【0185】
なお、例えば、上記の加熱の途中に、ヒドロキシ基を有する単官能(メタ)アクリル化合物を反応系中に追添することで、ポリマー(A)中に前述の一般式(SE)で表される構造単位を生成することができる。
【0186】
反応の立体障害などの点から、ヒドロキシ基を有する単官能(メタ)アクリル化合物のほうが、ヒドロキシ基を有する多官能(メタ)アクリル化合物よりも、原料ポリマーと反応しやすい傾向にある。よって、ポリマー(A)中に前述の一般式(SE)で表される構造単位を生成させる場合には、ヒドロキシ基を有する単官能(メタ)アクリル化合物を最初から反応系中には仕込まず、反応系中に追添することが好ましい。
ヒドロキシ基を有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば以下一般式(Sa-m)で表される化合物が挙げられる。
一般式(Sa-m)において、X10およびRの定義については一般式(Sa)におけるものと同様である。
【0187】
【化57】
【0188】
一般式(Sa-m)で表される化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸などを挙げることができる。
【0189】
一般式(NB)で表される構造単位、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)、ならびに一般式(AE)で表される構造単位および一般式(DE)で表される構造単位のいずれか一方を含むポリマーを得る場合、工程(I)の後、工程(II-i)、工程(II-ii)のいずれか一方のみを実施すればよい。
【0190】
(工程(III))
工程(II)で得られたポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させて、ポリマー前駆体のカルボキシル基と前記エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のエポキシ基との反応により、一般式(AE)で表される構造単位(一般式(DE)で表される構造単位および/または一般式(SE)で表される構造単位)が形成されて、一般式(NB)で表される構造単位、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)、一般式(D)で表される構造単位および/または一般式(S)で表される構造単位、一般式(AE)で表される構造単位(一般式(DE)で表される構造単位および/または一般式(SE)で表される構造単位)、場合により一般式(MA)で表される構造単位を含むポリマー(A)を調製する。
【0191】
工程(III)は、工程(II-ii)で得られたポリマー前駆体を含む反応系に、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物を追添することにより実施することが好ましい。
【0192】
ポリマー前駆体と、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物との反応は、塩基性触媒の存在下で進行する。塩基性触媒は、工程(II-ii)で得られた反応系に残存している触媒をそのまま使用することができる。そのため、工程(III)は、工程(II-ii)で得られたポリマー前駆体を含む反応混合物からポリマー前駆体を単離精製したり、当該混合物中に含まれる塩基性触媒を中和したりすることなく、インサイチュで、工程(II-ii)で得られたポリマー前駆体を含む反応混合物にエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物を追添することにより実施することが好ましい。
【0193】
具体的には、ポリマー前駆体を含む反応混合物にエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物を追添して得られる反応溶液を、好ましくは60~80℃で、1~9時間程度加熱することで、ポリマー前駆体のカルボキシル基と前記エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のエポキシ基との反応により、一般式(AE)で表される構造単位(一般式(DE)で表される構造単位および/または一般式(SE)で表される構造単位)が形成され、ポリマー(A)が生成する。
【0194】
エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物としては、メタクリル酸グリシジル(GMA)、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、アクリル酸グリシジル等を挙げることができ、これから選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0195】
エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物の添加量は、ポリマー前駆体のカルボキシル基1モルに対して0.1~3.0モルであることが望ましい。
【0196】
なお、工程(II)と工程(III)との間に、工程(II)で得られたポリマー前駆体を、触媒の存在下で、水で処理することにより、ポリマー前駆体に含まれる式(MA)で表される構造単位を開環し、式(M)で表される構造単位を形成する工程(II’)を含むことも好ましい。
【0197】
具体的には、工程(II)で得られたポリマー前駆体Pを含む反応系に、水を追添することにより実施することが好ましい。使用される触媒としては、塩基性触媒を用いることができ、上記工程(II)で用いた塩基性触媒と同様の触媒を用いることができる。塩基性触媒の具体例としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物または含窒素複素環化合物が挙げられる。
【0198】
当該工程(II’)においては、ポリマー前駆体Pを含む反応系に、水を添加し、得られた反応溶液を、好ましくは60~80℃で、0.25~6時間程度加熱することで、ポリマー前駆体P中に含まれる式(MA)の構造単位が開環して、式(M)で表される構造単位が生成する。この反応は、塩基性触媒の存在下で進行する。塩基性触媒は、工程(II)で得られた反応系に残存している触媒をそのまま使用することができる。そのため、当該工程は、工程(II)で得られたポリマー前駆体Pを含む反応混合物からポリマー前駆体Pを単離精製したり、当該混合物中に含まれる塩基性触媒を中和したりすることなく、インサイチュで、工程(II)で得られたポリマー前駆体Pを含む反応混合物に水を追添することにより実施することが好ましい。
【0199】
次いで、工程(II’)で得られたポリマー前駆体を、工程(III)の反応に供することができる。工程(III)においては、工程(II’)で得られたポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させて、ポリマー前駆体のカルボキシル基と前記エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のエポキシ基との反応により、一般式(AE)で表される構造単位(一般式(DE)で表される構造単位および/または一般式(SE)で表される構造単位)が形成されて、一般式(NB)で表される構造単位、1~6価の炭素数1以上30以下の前記有機基(i)、一般式(D)で表される構造単位および/または一般式(S)で表される構造単位、一般式(AE)で表される構造単位(一般式(DE)で表される構造単位および/または一般式(SE)で表される構造単位)、場合により一般式(MA)で表される構造単位、一般式(E)で表される構造単位および/または一般式(EE)で表される構造単位を含むポリマー(A’)を調製することができる。
【0200】
工程(III)の後、所望のポリマー(A)以外の不要な成分の除去などのため、更に以下の工程を適宜行うことが好ましい。
【0201】
まず、上記で、有機溶剤で希釈し、また、酸(例えば、ギ酸、クエン酸など)を加えた反応溶液を、分液漏斗で少なくとも3分間激しく攪拌する。これを30分以上静止して、有機相と水相に分け、水相を除去する。このようにしてポリマー(A)の有機溶液を得る。
【0202】
得られたポリマー(A)の有機溶液に、過剰量のトルエンを加えてポリマー(A)を再沈殿させる。また、再沈殿により得られたポリマー粉末をさらに数回(例えば、2回)、トルエンで洗浄する。
さらに、酸や塩基性触媒の除去のため、得られたポリマー粉末を、イオン交換水で洗浄する操作を数回(例えば、3回)繰り返す。
イオン交換水で洗浄後のポリマー粉末を、例えば30~60℃で16時間以上乾燥させることで、高純度の本実施形態のポリマー(A)を得ることができる。
【0203】
本実施形態においては、さらに工程(II’)と同様にポリマー(A)に水を追添することにより、ポリマー(A)に含まれる式(MA)の構造単位を開環して、式(M)で表される構造単位を生成させることも好ましい。当該工程により、ポリマー(A)の溶剤等への溶解性を調整することができる。
【0204】
(ポリマー(A)を含むポリマー溶液)
本実施形態のポリマー溶液は、上述のポリマー(A)を含む。
本実施形態のポリマー溶液は、ポリマー(A)とともに、チオール基およびアルコキシ基を有する化合物(B)またはそのオリゴマーと含むことができる。
化合物(B)は、チオール基およびアルコキシ基を有していれば、本発明の効果を奏する範囲で公知の化合物を用いることができる。
【0205】
本実施形態のポリマー溶液は、化合物(B)またはそのオリゴマーを含むことにより、基板等への密着性に優れる樹脂硬化物を提供することができる。基板としては、特に限定されないが、後述するように、例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハー、GaNウエハー、銅張積層板などが挙げられる。
【0206】
本実施形態において、化合物(B)に含まれるアルコキシ基は、本発明の効果の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい有機鎖に、チオール基およびアルコキシ基が結合した構造を備える、ことも好ましい。
具体的には、化合物(B)は、下記一般式(a)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0207】
【化58】
【0208】
一般式(a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のアルキル基を示し、少なくとも2つのRは炭素数1~3のアルコキシ基である。
Lは、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい、m+n価の有機鎖を示す。
【0209】
本実施形態において、Lのm+n価の有機鎖としては、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキレン基(m+n:2)、炭素数1~20の直鎖または分岐のアルカンから誘導されるm+n価の基、置換または無置換のシロキサンから誘導されるm+n価の基を挙げることができる。
【0210】
Xは単結合、またはカルボニル基、(チオ)エステル基または(チオ)アミド基を含んでいてもよい2価の有機基を示す。
本実施形態において、Xとしては、単結合、または炭素数1~10のアルキレンエステル基が好ましい。
Qは単結合、またはカルボニル基または(チオ)エステル基または(チオ)アミド基を含んでいてもよい2価の有機基を示す。
本実施形態において、Qとしては、単結合、または炭素数1~10のアルキレンエステル基が好ましい。
m:n(モル比)は1:1~1:8であり、m+nは2~20である。
当該化合物の重量平均分子量は100~2000である。
【0211】
化合物(B)としては、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802、信越シリコーン社製)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803、信越シリコーン社製)、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、シロキサン鎖含有多官能型シランカップリング剤(KR-519、信越シリコーン社製)、下記構成単位を有する有機鎖含有多官能型シランカップリング剤等を挙げることができる。
【0212】
【化59】
【0213】
上記一般式中、a:b(モル比)は2:1~4:1である。重量平均分子量は1000~1500である。*は結合手である。当該化合物としては、X-12-1154(信越シリコーン社製)等を挙げることができる。
また化合物(B)またはそのオリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0214】
本実施形態のポリマー溶液において、化合物(B)またはそのオリゴマーは、本発明の効果の観点から、上記ポリマー(A)に対して、0.25~20質量%、好ましくは、1.0~15質量%であり、より好ましくは、2.0~12質量%である。
【0215】
さらに、本発明の効果に影響を与えない範囲で、ポリマー溶液は、多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0216】
[多官能(メタ)アクリル化合物]
2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である多官能(メタ)アクリレート化合物は、本発明の効果を発揮することができれば、従来公知の化合物を用いることができる。
【0217】
多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、以下の一般式(1b-p)で表される化合物、一般式(1c-p)で表される化合物、および一般式(1d-p)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
一般式(1b-p)におけるk、R、X、X'およびXの定義および具体的態様は、上述の一般式(1b)におけるものと同様である。また一般式(1c-p)におけるk、R、X、X、X、X、XおよびXの定義および具体的態様は、上述の一般式(1c)におけるものと同様である。
【0219】
一般式(1b-p)、一般式(1c-p)および一般式(1d-p)におけるYは、水素原子または(メタ)アクリロイル基、あるいはそれらの組み合せである。
【0220】
一般式(1b-p)、一般式(1c-p)および一般式(1d-p)においてYが水素原子である化合物は、未反応モノマー(すなわち、一般式(1b-p)、一般式(1c-p)および一般式(1d-p)で表される化合物)であってもよく、別途添加することもできる。
一般式(1d-p)におけるnは、2以上の整数であり、好ましくは、2~5の整数であり、より好ましくは2~3の整数である。
【0221】
【化60】
【0222】
【化61】
【0223】
【化62】
【0224】
一般式(1b-p)で表される多官能(メタ)アクリル化合物の具体例としては、以下の構造の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。なお以下の化合物において、Yは水素原子、または(メタ)アクリロイル基、あるいはそれらの組み合せを表す。
【0225】
【化63】
【0226】
【化64】
【0227】
【化65】
【0228】
一般式(1c-p)で表される多官能(メタ)アクリル化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0229】
【化66】
【0230】
【化67】
【0231】
【化68】
【0232】
本実施形態のポリマー溶液において、上記多官能(メタ)アクリル化合物は、本発明の効果に影響を与えない範囲で配合することができ、当該樹脂組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおける多官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、樹脂のピーク面積に対し、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる量で配合することができる。
【0233】
[単官能(メタ)アクリル化合物]
本実施形態のポリマー溶液は、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である単官能(メタ)アクリル化合物を含んでもよい。
【0234】
単官能(メタ)アクリル化合物としては、以下の一般式(Sa-m)で表される化合物が挙げられる。単官能(メタ)アクリル化合物は未反応モノマーであってもよく、別途添加することもできる。
一般式(Sa-m)において、X10およびRの定義については一般式(Sa)におけるものと同様である。
【0235】
【化69】
【0236】
一般式(Sa-m)で表される化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸などを挙げることができる。
【0237】
本実施形態のポリマー溶液において、単官能(メタ)アクリル化合物は、本発明の効果に影響を与えない範囲で配合することができ、当該樹脂組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおける単官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、樹脂のピーク面積に対し、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる量で配合することができる。
【0238】
本実施形態のポリマー溶液は、典型的には、有機溶剤を含み、液体またはワニスの形態で提供される。有機溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0239】
有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ-ブチルラクトン、N-メチルピロリドンおよびシクロヘキサノン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤の使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0240】
(ポリマー溶液の製造)
本実施形態のポリマー溶液は、上記成分を、公知の方法で混合することにより作製することができる。本実施形態のポリマー溶液は、以下で説明する感光性樹脂組成物の樹脂材料として用いられる。
【0241】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述のポリマーと、必要に応じて添加される多官能(メタ)アクリル合物または単官能(メタ)アクリル合物と、感光剤とを含む。すなわち、本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述の本実施形態のポリマー溶液(ワニス、樹脂組成物)と、感光剤とを含む。以下に各成分について説明する。
【0242】
[感光剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物に用いられる感光剤としては、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-(2'-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2'-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光ラジカル重合開始剤は、ポリマー100質量部に対し、例えば、1~20質量部の量で、好ましくは、3~10質量部の量で用いられる。
【0243】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記成分を含むことにより、フォトリソグラフィー処理において高い感度を有するとともに、すぐれたアルカリ溶解性を有する。そのため、感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィー法において優れた現像性、優れた加工性を備える。また、感光性樹脂組成物の黄色化が抑制されるため、当該感光性樹脂組成物を硬化して得られる物品は透明性を有する。
【0244】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述のポリマー、多官能(メタ)アクリル化合物および感光剤に加え、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(単官能(メタ)アクリル化合物)を含んでもよい。単官能(メタ)アクリル化合物は、上述のものと同様である。単官能(メタ)アクリル化合物を含むことにより、得られる感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性がさらに向上し、また黄色化が低減される。
【0245】
一態様として、感光性樹脂組成物は着色剤を含んでもよい。着色剤を含むことで、液晶表示装置や固体撮像素子のカラーフィルタの形成材料として好ましく用いることができる。着色剤としては、種々の顔料または染料を用いることができる。
顔料としては有機顔料や無機顔料を用いることができる。
【0246】
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キサンテン系顔料、ピロメテン系顔料、染料レーキ系顔料等を使用することができる。
【0247】
無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)を使用することができる。
【0248】
染料としては、例えば、特開2003-270428号公報や特開平9-171108号公報、特開2008-50599号公報等に記載されている公知の染料を使用することができる。
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、感光性樹脂組成物は着色剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0249】
着色剤(特に顔料)は、目的や用途に応じて、適切な平均粒子径を有するものを使用できるが、特にカラーフィルタのような透明性が要求される場合は、0.1μm以下の小さい平均粒子径が好ましく、その他、塗料などの隠蔽性が必要とされる場合は、0.5μm以上の大きい平均粒子径が好ましい。
【0250】
着色剤は、目的や用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティングなどの表面処理がなされていてもよい。
【0251】
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、着色濃度と着色剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0252】
(界面活性剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含むことができ、界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0253】
非イオン性界面活性剤を含むことにより、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布して樹脂膜を得る際の塗布性が良好となり、均一な厚みの塗布膜を得ることができる。また、塗布膜を現像する際の残渣やパターン浮き上がりを防止することができる。
【0254】
非イオン性界面活性剤は、たとえばフッ素基(たとえば、フッ素化アルキル基)もしくはシラノール基を含む化合物、またはシロキサン結合を主骨格とする化合物である。本実施形態においては、非イオン性界面活性剤として、フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤を含むものを用いることがより好ましく、フッ素系界面活性剤を用いることがとくに好ましい。フッ素系界面活性剤としては例えば、DIC(株)製のメガファックF-171、F-173、F-444、F-470、F-471、F-475、F-482、F-477、F-554、F-556、およびF-557、住友スリーエム(株)製のノベックFC4430、及びFC4432等が挙げられるが、これらに限定されない。
界面活性剤を使用する場合の界面活性剤の配合量としては、樹脂100質量部に対して、0.01~10重量%が好ましい。
【0255】
(溶剤)
感光性樹脂組成物は、典型的には、溶剤を含むことができる。溶剤としては有機溶剤が好ましく用いられる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0256】
溶剤の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチル-n-アミルケトン(MAK)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
溶剤の使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0257】
(遮光剤)
本実施形態の樹脂組成物は、遮光剤を含むことができる。感光性樹脂組成物は遮光剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0258】
感光性樹脂組成物が遮光剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、遮光性能と遮光剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0259】
(架橋剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、架橋剤を含むことができる。
架橋剤は、光重合開始剤から発生する活性化学種の作用によりポリマーを架橋可能なもの(ポリマーと化学結合することができるもの)であれば、特に限定されない。
架橋剤は、ポリマーとのみ化学結合するのではなく、架橋剤同士で反応して結合形成してもよい。
【0260】
架橋剤は、例えば、一分子中に2以上の重合性二重結合を有する多官能化合物が好ましく、一分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物であることがより好ましい(ただし、架橋剤は、前述のポリマーには該当しない)。ポリマーが有する架橋性基(重合性二重結合)と同種の架橋性基を有する架橋剤を用いることが、均一な硬化性、感度の更なる向上などの点で好ましい。
架橋剤一分子あたりの官能数(重合性二重結合の数)の上限は特にないが、例えば8以下、好ましくは6以下である。
【0261】
架橋剤として具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、多官能(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の、多官能ビニルエーテル類;
(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等の、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の、多官能アリルエーテル類;
(メタ)アクリル酸アリル等の、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;
トリアリルイソシアヌレート等の、多官能アリル基含有イソシアヌレート類;
トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;
ジビニルベンゼン等の、多官能芳香族ビニル類;
等を挙げることができる。
【0262】
なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の六官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0263】
感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、感光性樹脂組成物は架橋剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよい。一例として、架橋剤の量は、感光性樹脂100質量部に対して通常30~70質量部、好ましくは40~60質量部程度とすることができる。
【0264】
感光性樹脂組成物は、各種目的や要求特性に応じて、フィラー、上述のポリマー以外のバインダー樹脂、酸発生剤、耐熱向上剤、現像助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤、シランカップリング剤、多価フェノール化合物等の成分を含んでもよい。
【0265】
[フィルム、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、液晶表示装置および固体撮像素子]
上述の感光性樹脂組成物を用いて膜形成し、その膜を露光・現像してパターンを形成することにより、パターン付フィルムを得ることができる。このフィルムは、カラーフィルタやブラックマトリクスなどに適用される。つまり、着色剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、カラーフィルタを得ることができる。また、遮光剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、ブラックマトリックスを得ることができる。そして、カラーフィルタやブラックマトリクスを備える液晶表示装置や固体撮像素子を製造することができる。
パターンを形成する典型的な手順を説明する。
【0266】
(感光性樹脂膜の形成)
例えば、上記の感光性樹脂組成物を、任意の基板上に塗布し、必要に応じて乾燥させることで、まず、感光性樹脂膜を得る。
【0267】
組成物を塗布する基板は特に限定されない。例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハー、GaNウエハー、銅張積層板などが挙げられる。
基板は、未加工の基板であっても、電極や素子が表面に形成された基板であってもよい。接着性の向上のために表面処理さていてもよい。
【0268】
感光性樹脂組成物の塗布方法は特に限定されない。スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。
【0269】
基板上に塗布した感光性樹脂組成物の乾燥は、典型的にはホットプレート、熱風、オーブン等で加熱処理することで行われる。加熱温度は、通常80~140℃、好ましくは90~120℃である。また、加熱の時間は、通常30~600秒、好ましくは30~300秒程度である。
【0270】
感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されず、最終的に得ようとするパターンに応じて適宜調整すればよいが、通常0.5~10μm、好ましくは1~5μmである。なお、膜厚は、感光性樹脂組成物中の溶剤の含有量や塗布方法などにより調整可能である。
【0271】
(露光)
露光は、典型的には、適当なフォトマスクを介して活性光線を感光性樹脂膜に当てることで行う。
【0272】
活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などが挙げられる。波長でいうと200~500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線であることが好ましく、特にi線が好ましい。また、2つ以上の光線を混合して用いてもよい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション又はステッパ-が好ましい。
露光の光量は、感光性樹脂膜中の感光剤の量などにより適宜調整すればよいが、例えば100~500mJ/cm程度である。
【0273】
なお、露光後、必要に応じて、感光性樹脂膜を再度加熱してもよい(露光後加熱:Post Exposure Bake)。その温度は、例えば70~150℃、好ましくは90~120℃である。また、時間は、例えば30~600秒、好ましくは30~300秒である。露光後加熱をすることで、光ラジカル重合開始剤から発生したラジカルによる反応が促進され、硬化反応が一層促される。
【0274】
(現像)
露光された感光性樹脂膜を、適当な現像液により現像することで、パターンを得ること、また、パターンを備えた基板を製造することができる。
本実施形態のポリマー溶液を含む感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜は、基板への密着性に優れることから、現像工程においてパターンの剥離が抑制される。
【0275】
現像工程においては、適当な現像液を用いて、例えば浸漬法、パドル法、回転スプレー法などの方法を用いて現像を行うことができる。現像により、感光性樹脂膜の露光部(ポジ型の場合)又は未露光部(ネガ型の場合)が溶出除去され、パターンが得られる。
使用可能な現像液は特に限定されない。例えば、アルカリ水溶液や有機溶剤が使用可能である。
【0276】
アルカリ水溶液として具体的には、(i)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液、(ii)エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン水溶液、(iii)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などが挙げられる。
本実施形態のポリマーは、アルカリ溶解性が調整され、感度に優れることから、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)溶液等の強塩基性現像液を用いる場合において、露光、現像後のパターンを設計通りの形状とすることができる。
【0277】
有機溶剤として具体的には、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)や酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、等が挙げられる。
現像液には、例えばメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や、界面活性剤などが添加されていてもよい。
【0278】
本実施形態においては、現像液としてアルカリ水溶液を用いることが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.1~10質量%であり、更に好ましくは0.5~5質量%である。
以上の工程により、パターンを得ること/パターンを備えた基板を製造することができるが、現像の後、様々な処理を行ってもよい。
【0279】
例えば、現像の後、リンス液によりパターンおよび基板を洗浄してもよい。リンス液としては、例えば蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0280】
また、得られたパターンを加熱して十分に硬化させるようにしてもよい。加熱温度は、典型的には150~400℃、好ましくは160~300℃、より好ましくは200~250℃である。加熱時間は特に限定されないが、例えば15~300分の範囲内である。この加熱処理は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンなどにより行うことが出来る。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては、空気であっても、窒素、アルゴンなどの不活性ガスであってもよい。また、減圧下で加熱してもよい。
カラーフィルタおよび/またはブラックマトリクスを備える、液晶表示装置および/または固体撮像素子の構造の一例について、図1に模式的に示す。
【0281】
基板10上には、ブラックマトリクス11とカラーフィルタ12が形成されている。また、このブラックマトリクス11とカラーフィルタ12の上部に保護膜13および透明電極層14が設けられている。
【0282】
基板10は、通常、光を通過する材料により構成されるものであり、たとえば、ガラスの他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの重合体などにより構成される。基板10は、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、薬液処理等が施されたものであってもよい。
基板10は、好ましくはガラスより構成される。
ブラックマトリクス11は、たとえば、遮光剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物によって構成される。
【0283】
カラーフィルタ12としては、通常、赤、緑、青の三色が存在する。カラーフィルタ12は、各色に応じた着色剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0284】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例
【0285】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0286】
実施例中の使用化合物については、以下の略号または商品名で示す場合がある。
・MA:無水マレイン酸
・NB:2-ノルボルネン
・MEK:メチルエチルケトン
・PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、下記式(s-2)で表される化合物 (SC有機化学株式会社製)
【化70】
・TMMP:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、下記式(s-1)で表される化合物 (SC有機化学株式会社製)
【化71】
・DPMP:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、下記式(s-3)で表される化合物(SC有機化学株式会社製)
【化72】
・TEMPIC:トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、下記式(s-5)で表される化合物(SC有機化学株式会社製)
【化73】
・カレンズMT PE-1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、下記式(s-9)で表される化合物(昭和電工株式会社製)
【化74】
・EGMP-4:テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、上記式(s-4)下記式(s-4)で表される化合物(昭和電工株式会社製)
【化75】
・TS-G:下記式(s-11)で表される化合物(四国化成工業株式会社製)
【化76】
・3CTS-G:下記式(s-12)で表される化合物(四国化成工業株式会社製)
【化77】
・BTGL:チオグリコール酸ブチル、下記式で表される化合物(東京化成工業株式会社製)
【化78】
・4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・GMA:メタクリル酸グリシジル
・A-TMM-3LM-N:以下2種の化合物の混合物、ガスクロマトグラフ測定に基づく混合物中の左の化合物の量は約57%(新中村化学工業株式会社製)
【0287】
【化79】
【0288】
・A-9550:以下2種の化合物の混合物、水酸基価から見積もった混合物中の左のペンタアクリレート化合物の量は約50%(新中村化学工業株式会社製)、水酸基価:50mgKOH/g
【化80】
【0289】
・KBM-803:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0290】
<原料ポリマーの合成>
(原料ポリマー1の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液602.56g(NB換算451.92g、4.8mol)、無水マレイン酸(MA、470.69g、4.8mol)およびメチルエチルケトン(MEK)2238.50gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、44.21g、0.19mol)およびペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP、140.73g、0.29mol)をMEK189.74gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール3686.4gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール3686.4gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー1)908.1gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは2700であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.57であった。
【0291】
[原料ポリマー1の構造解析]
原料ポリマー1の合成は、反応開始時においては、溶剤中にモノマーおよびPEMPが溶解した状態でスタートし、その後、反応が進行してポリマーが生成する。反応溶液および得られたポリマーのそれぞれについて分析したところ、以下の結果が得られた。
【0292】
(a)反応溶液の分析
再沈殿精製前の反応溶液のGPC測定で、PEMP単体のピークが認められなかった。すなわち、反応溶液中にPEMPが残存していないことが確認された。また、再沈殿精製前の反応溶液のGC(ガスクロマトグラフィー)測定で、反応前と比べ、反応後の反応溶液中の2-ノルボルネン単体、無水マレイン酸単体のピークが減少しており、2-ノルボルネンおよび無水マレイン酸が反応し、ポリマーを形成していることが確認された。
ガスクロマトグラフィー測定の測定条件は下記の通りであった。
・GC装置:GC-2030(株式会社島津製作所)
・キャリアガス:N2
・検出器:水素炎イオン化(FID)検出器 、FID温度:300℃
・カラム:SH-RXi-1HT、内径0.25、長さ30m、膜厚0.25μm(株式会社島津ジーエルシー)
・気化室温度:210℃
・カラム流量:0.64mL/min
・カラム昇温条件:50℃5minホールド、20℃/minで300℃まで昇温、300℃10minホールド
【0293】
(b)ポリマーの分析
再沈殿精製後のポリマーのGPC測定で、PEMP単体、2-ノルボルネン単体、無水マレイン酸単体のピークが認められなかった。すなわち、ポリマー中にPEMP、2-ノルボルネン単体および無水マレイン酸が残存していないことが確認された。
PEMPを使用して合成した原料ポリマー1中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー1中に硫黄元素が存在していることを確認した。さらに、原料ポリマー1の13C-NMR測定において、62.0ppm付近に、炭素b由来のピークbの出現を確認した。すなわち、ポリマー中にPEMPが取り込まれたことが確認された。
【0294】
(c)原料ポリマー1の13C-NMR測定では、下記化学式(i)で示されるPEMP単体の炭素a由来のピークaが確認されず、代わりに下記化学式(ii)で示される原料ポリマー1のチオエーテル(R-S-R')に対応する炭素c由来のピークcが出現した。このピークcの積分値は、ピークbの積分値のおよそ2倍になっていた。
【化81】
(化学式(i)で示されるPEMP単体の13C-NMR測定により、炭素a由来のピークaが19.0ppm付近に、炭素b由来のピークbが62.0ppm付近に確認された。)
【化82】
(化学式(ii)で示される原料ポリマー1の13C-NMR測定により、炭素c由来のピークcが28ppm付近に確認された。)
【0295】
上記(a)および(b)より、仕込んだPEMP、2-ノルボルネン単体および無水マレイン酸が反応してポリマーに取り込まれたことがわかる。
【0296】
このことと、上記(c)の実験結果を踏まえ、さらに上記(原料ポリマー1の合成)の原料を考慮すると、原料ポリマー1の分子構造は、以下の一般式(I-1)で表される構造を備えていることがわかる。
【化83】
(ここで、Aは、2-ノルボルネンに由来する下記式(NB-1)で表される構造単位であり、Xは水素原子である。B’は、無水マレイン酸に由来する下記式(MA)で表される構造単位である。)
【化84】
【化85】
当該構造を備える原料ポリマー1を用いて合成した実施例のポリマーも、同様の構造を備える。
【0297】
13C-NMR測定の条件は以下の通りである。
(試験条件)測定サンプルは、秤量した試料に測定溶媒を加えて濃度調製した後、NMR測定用試料管に規定分量注いで作製した。
・測定装置:日本電子JNM-ECA400超伝導FT-NMR装置
・共鳴周波数:100.53MHz
・測定核:13
・測定法:NNE測定(インバースゲートデカップリング法)
・パルス幅:3.83μsec
・パルス繰り返し待ち時間:30s
・積算回数:4096回
・測定温度:室温
・測定溶媒:DMSO-d(重水素化ジメチルスルホキシド)
・試料濃度:20%(w/v)
【0298】
(原料ポリマー2の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸353.02g(3.6mol)と、2-ノルボルネン338.94g(3.6mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)41.45g(0.180mol)とを計量して入れた。これらを、メチルエチルケトン578.98gおよびトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度63℃で9.5時間加熱することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液をメチルエチルケトン712.92gで希釈した後、メタノール8519.9gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー2)550.4gを得た。
得られたポリマーをGPC測定した結果、重量平均分子量Mwは11,600であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.79であった。
【0299】
(原料ポリマー3の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸353.02g(3.6モル)と、2-ノルボルネン338.94g(3.6モル)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)33.16g(0.144モル)とを計量して入れた。これらを、メチルエチルケトン1030.1gおよびトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で1.5時間加熱し、さらにその後80℃で6時間加熱することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液を、メタノール8519.9gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー3)607.5gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは7000であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.82であった。
【0300】
(原料ポリマー4の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液602.56g(2-ノルボルネン換算451.92g、4.8mol)、無水マレイン酸(MAN、470.69g、4.8mol)およびメチルエチルケトン(MEK)2281.74gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、44.21g、0.19mol)およびPEMP(93.82g、0.19mol)をMEK193.4gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール3686.4gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール3686.4gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー4)910.1gを得た。
得られた原料ポリマー4をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3500であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.62であった。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。
反応溶液のGPC測定で、PEMP単体のピークが認められず、未反応のPEMPが残っていないことから、PEMPが原料ポリマー4中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー4の13C-NMR測定により、PEMPが原料ポリマー4中に取り込まれたことを確認した。
【0301】
元素分析した結果、原料ポリマー4中の硫黄含有量は2.4wt%であった。
【0302】
(原料ポリマー5の合成)
PEMPの代わりに、TMMP(101.99g、0.25mol)を用いた以外は、原料ポリマー4と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー5)900.1gを得た。
得られた原料ポリマー5をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3,100であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.74であった。
反応溶液のGPC測定で、TMMP単体のピークが認められず、未反応のTMMPが残っていないことから、TMMPが原料ポリマー5中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー5の13C-NMR測定により、TMMPが原料ポリマー5中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した
【0303】
(原料ポリマー6の合成)
PEMPの代わりに、DPMP(100.23g、0.13mol)を用いた以外は、原料ポリマー4と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー6)890.2gを得た。
得られた原料ポリマー6をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3,600であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.02であった。
反応溶液のGPC測定で、DPMP単体のピークが認められず、未反応のDPMPが残っていないことから、が原料ポリマー6中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー6の13C-NMR測定により、DPMPが原料ポリマー6中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。
【0304】
(原料ポリマー7の合成)
PEMPの代わりに、TEMPIC(134.53g、0.25mol)を用いた以外は、原料ポリマー4と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー7)879.9gを得た。
得られた原料ポリマー7をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは2,900であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.30であった。
反応溶液のGPC測定で、TEMPIC単体のピークが認められず、未反応のTEMPICが残っていないことから、TEMPICが原料ポリマー7中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー7の13C-NMR測定により、TEMPICが原料ポリマー7中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した
【0305】
(原料ポリマー8の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液50.21g(2-ノルボルネン換算37.66g、0.400mol)、無水マレイン酸(MAN、39.22g、0.400mol)およびメチルエチルケトン(MEK)189.32gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、3.68g、0.016mol)およびカレンズMT(登録商標)PE1(8.72g、0.016mol)をMEK15.75gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール1228.8gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール307.2gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー8)64.5gを得た。得られた原料ポリマー8をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは2,800であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.45であった。
反応溶液のGPC測定で、カレンズMT PE1単体のピークが認められず、未反応のカレンズMT PE1が残っていないことから、カレンズMT PE1が原料ポリマー8中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー8の13C-NMR測定により、カレンズMT PE1が原料ポリマー8中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。
【0306】
(原料ポリマー9の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液50.21g(2-ノルボルネン換算37.66g、0.400mol)、無水マレイン酸(MAN、39.22g、0.400mol)およびメチルエチルケトン(MEK)202.18gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、3.68g、0.016mol)およびEGMP-4(11.90g、0.032mol)をMEK16.23gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール1228.8gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール307.2gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー9)64.5gを得た。
得られた原料ポリマー9をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは2,900であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.57であった。
反応溶液のGPC測定で、EGMP-4単体のピークが認められず、未反応のEGMP-4が残っていないことから、EGMP-4が原料ポリマー9中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー9の13C-NMR測定により、EGMP-4が原料ポリマー9中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。
【0307】
(原料ポリマー10の合成)
PEMPの代わりに、TS-G(73.45g、0.19mol)を用いた以外は、原料ポリマー4と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー10)860.23gを得た。
得られた原料ポリマー10をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3,300であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.65であった。
反応溶液のGPC測定で、TS-G単体のピークが認められず、未反応のTS-Gが残っていないことから、TS-Gが原料ポリマー10中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー10の13C-NMR測定により、TS-Gが原料ポリマー10中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。
【0308】
(原料ポリマー11の合成)
PEMPの代わりに、3CTS-G(84.23g、0.19mol)を用いた以外は、原料ポリマー4と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー11)900.1gを得た。
得られた原料ポリマー11をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3100であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.61であった。
反応溶液のGPC測定で、3CTS-G単体のピークが認められず、未反応の3CTS-Gが残っていないことから、が原料ポリマー11中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー11の13C-NMR測定により、3CTS-Gが原料ポリマー中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。
【0309】
(原料ポリマー12の合成)
PEMPの代わりに、BTGL(113.83g、0.76mol)を用いた以外は、原料ポリマー4と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー)867.1gを得た。
得られた原料ポリマー12をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは2,900であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.57であった。
反応溶液のGPC測定で、BTGL単体のピークが認められず、未反応のBTGLが残っていないことから、BTGLが原料ポリマー12中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー12の13C-NMR測定により、BTGLが原料ポリマー12中に取り込まれたことを確認した。
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。
【0310】
[実施例1]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP1を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 100.54gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 40.51g(0.281モル)を加え、温度70℃で4時間反応させた。さらにその後、GMA 26.62g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
【0311】
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP1を得た。
【0312】
ポリマーP1のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP1には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
表1に、合成例で使用した成分、各成分の仕込み量を無水マレイン酸(MA)換算で示し、各構造単位の量(モル分率、モル%)をH-NMRの積分値解析により算出し、無水マレイン酸(MA)換算で示した。
図2にポリマーP1のH-NMRチャートを示し、図3に6.0ppm付近のピークの部分拡大したものを示す。
【0313】
図3のポリマーP1のH-NMRチャートに示されている5.8-6.7ppmのアクリロイル基(-CH=CH)の3Hに対応するピークに加え、×で示されている5.6-5.8ppm、及び6.0-6.1ppmにメタクリロイル基(-C(CH)=CHの2H(-C(CH)=CHのCH)に対応するピークが出現した。ポリマーP1のGPC測定において、未反応の3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)のピークが見られないことから、ポリマー中にアクリロイル基、及びGMA由来のメタクリロイル基が導入されたことがわかる。
【0314】
また開環反応前後、及びGMA付加反応の前後での反応溶液のGPC測定において、開環前後で3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)由来のピークが減少し、GMA付加反応前後でGMA由来のピークが減少したことからも、A-TMM-3LM-N、及びGMAがポリマー中に導入されたことがわかる。
【0315】
(ポリマー溶液の調製)
得られたポリマーP1 100質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%のポリマー溶液1を作製した。
【0316】
(感光性樹脂組成物の調製)
全固形分濃度が30質量%になるように、以下の成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して、感光性樹脂組成物1を調製した。
・ポリマー溶液1中の固形分(ポリマーP1):100質量部
・多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールへキサアクリレート)(新中村化学工業株式会社製、A-DPH):50質量部
・光重合開始剤(BASF社製、Ingacure OXE01):5質量部
・密着助剤(信越化学工業株式会社製、KBM-403):1質量部
・界面活性剤(DIC株式会社製、F-556):0.5質量部
得られた感光性樹脂組成物は必要に応じてPTFEメンブレンフィルターMillex-LS(メルクミリポア社製)でろ過し、不溶分を取り除いた。
【0317】
[実施例2]
4-HBAの添加量を54.02g、GMAを33.28g、MEKを100.91gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリマーP2を作製し、実施例1と同様にしてポリマーP2を含むポリマー溶液2を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0318】
[実施例3]
4-HBAの添加量を56.27g、MEKを100.14gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリマーP3を作製し、実施例1と同様にしてポリマーP3を含むポリマー溶液3を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0319】
[実施例4]
4-HBAの添加量を27.01g、MEKを102.93gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリマーP4を作製し、実施例1と同様にしてポリマーP4を含むポリマー溶液4を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0320】
[実施例5]
4-HBAの添加量を56.27g、GMAを39.94g、MEKを101.01gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリマーP5を作製し、実施例1と同様にしてポリマーP5を含むポリマー溶液5を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0321】
[実施例6]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物(HEMA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP6を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 112.76gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、 HEMA 25.38g(0.195モル)を加え、その後、トリエチルアミン6.00g(0.059モル)を加え、温度70℃で6時間反応させた。さらにその後、GMA 26.62g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量の水でポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を2回繰り返した。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、HEMAで開環し、GMAと反応させたポリマーP6を得た。
ポリマーP6のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物のピーク、及びエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP6には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
表1に、合成例で使用した成分、各成分の仕込み量を無水マレイン酸(MA)換算で示し、各構造単位の量(モル分率、モル%)をH-NMRの積分値解析により算出し、無水マレイン酸(MA)換算で示した。
H-NMR測定により、ポリマーP6が、HEMAで開環された構造、およびGMAが反応した構造を有することを確認した。
実施例1と同様にしてポリマーP6を含むポリマー溶液6を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0322】
[実施例7]
実施例1で得られたポリマーP1 100質量部と、KBM-803 5質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%のポリマー溶液7を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0323】
[実施例8]
実施例2で得られたポリマーP2 100質量部と、KBM-803 5質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%のポリマー溶液8を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0324】
[実施例9]
実施例3で得られたポリマーP3 100質量部と、KBM-803 5質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%のポリマー溶液9を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0325】
[実施例10]
実施例4で得られたポリマーP4 100質量部と、KBM-803 5質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%のポリマー溶液10を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0326】
[実施例11]
実施例5で得られたポリマーP5 100質量部と、KBM-803 5質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%のポリマー溶液11を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0327】
[実施例12]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP10を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 100.57gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、GMA 13.31g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nで開環し、GMAと反応させたポリマーP10を得た。
ポリマーP10のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP10には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
H-NMR測定により、ポリマーP10が、A-TMM-3LM-Nで開環された構造、およびGMAが反応した構造を有することを確認した。
実施例1と同様にしてポリマーP10を含むポリマー溶液12を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0328】
[実施例13]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー4のMA単位を、5官能(メタ)アクリル化合物(A-9550)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP12を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー4 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 100.57gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-9550 70.06gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させた。さらにその後、GMA 26.62g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-9550および4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP12を得た。
ポリマーP12のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物、単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP12には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
表1に、合成例で使用した成分、各成分の仕込み量を無水マレイン酸(MA)換算で示し、各構造単位の量(モル分率、モル%)をH-NMRの積分値解析により算出し、無水マレイン酸(MA)換算で示した。
H-NMR測定により、ポリマーP12が、A-9550および4-HBAで開環された構造、およびGMAが反応した構造を有することを確認した。
実施例1と同様にしてポリマーP12を含むポリマー溶液13を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0329】
[実施例14]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー4のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)で開環し、さらに水との反応により開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP13を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー4 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 100.57gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、水 0.90g(0.050モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、GMA 26.62g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび水で開環し、GMAと反応させたポリマーP13を得た。
ポリマーP13のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP13には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
表1に、合成例で使用した成分、各成分の仕込み量を無水マレイン酸(MA)換算で示し、各構造単位の量(モル分率、モル%)をH-NMRの積分値解析により算出し、無水マレイン酸(MA)換算で示した。
H-NMR測定により、ポリマーP13が、A-TMM-3LM-Nおよび水で開環された構造、およびGMAが反応した構造を有することを確認した。
実施例1と同様にしてポリマーP13を含むポリマー溶液14を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0330】
[実施例15]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー4のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させてポリマーを調製し、さらにMA単位を水との反応により開環して得られたポリマーP14を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー4 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 99.23gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、GMA 19.97g(0.140モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
次いで、上記ポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%のポリマー溶液を作製した。このポリマー溶液に、ポリマー固形分に対し30質量%の水を添加し、70℃で5時間反応させた。反応後の溶液について、続いて溶媒置換を以下の手順で行った。
・溶媒置換:得られた反応混合物の固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合した。その後、ロータリーエバポレーターにより、減圧下、50℃で溶媒の除去を行った。ポリマー溶液の固形分濃度が加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%になったのを確認し、溶媒除去の操作を中断した。同様の操作で固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合し、その後減圧下、50℃で溶媒の除去を行い、固形分濃度を加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%に調製する操作をさらに2回繰り返した。その後、固形分濃度が30±3質量%になるように溶媒除去、もしくはPGMEAを加え、均一になるまで攪拌する操作を行った。以上の操作で反応に使用した水が除去され、溶媒がPGMEAに置換される。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nで開環し、GMAと反応させ、さらにMA単位を水との反応により開環したポリマーP14を含むポリマー溶液15を得た。
ポリマーP14のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP14には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0331】
[実施例16]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー5を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー5のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP15を作製した。
実施例1と同様にしてポリマーP15を含むポリマー溶液16を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0332】
[実施例17]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー6を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー6のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP16を作製した。
実施例1と同様にしてポリマーP16を含むポリマー溶液17を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0333】
[実施例18]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー7を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー7のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP17を作製した。
実施例1と同様にしてポリマーP17を含むポリマー溶液18を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0334】
[実施例19]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー8を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー8のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP18を作製した。実施例1と同様にしてポリマーP18を含むポリマー溶液19を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0335】
[実施例20]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー9を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー9のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP19を作製した。
実施例1と同様にしてポリマーP19を含むポリマー溶液20を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0336】
[実施例21]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー10を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー10のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP20を作製した。
実施例1と同様にしてポリマーP20を含むポリマー溶液21を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0337】
[実施例22]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー11を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー11のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP21を作製した。
実施例1と同様にしてポリマーP21を含むポリマー溶液22を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0338】
[比較例1]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー2のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP7を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー2 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 102.93gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 27.12g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させた。さらにその後、GMA 26.62g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
【0339】
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP7を得た。
【0340】
ポリマーP7のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP7には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
表1に、合成例で使用した成分、各成分の仕込み量を無水マレイン酸(MA)換算で示し、各構造単位の量(モル分率、モル%)をH-NMRの積分値解析により算出し、無水マレイン酸(MA)換算で示した。
【0341】
また開環反応前後、及びGMA付加反応の前後での反応溶液のGPC測定において、開環前後で3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)由来のピークが減少し、GMA付加反応前後でGMA由来のピークが減少したことからも、A-TMM-3LM-N、及びGMAがポリマー中に導入されたことがわかる。
実施例1と同様にしてポリマーP7を含むポリマー溶液23を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0342】
[比較例2]
4-HBAの添加量を13.50g、GMAを13.31g、MEKを100.80gに変えた以外は比較例1と同様にしてポリマーP8を作製し、実施例1と同様にしてポリマーP8を含むポリマー溶液24を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0343】
[比較例3]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー2のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物(HEMA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP9を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー2 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 111.43gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、 HEMA 25.38g(0.195モル)を加え、その後、トリエチルアミン6.00g(0.059モル)を加え、温度70℃で6時間反応させた。さらにその後、GMA 13.31g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量の水でポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を2回繰り返した。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、HEMAで開環し、GMAと反応させたポリマーP9を得た。
ポリマーP9のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物のピーク、及びエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP9には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
表1に、合成例で使用した成分、各成分の仕込み量を無水マレイン酸(MA)換算で示し、各構造単位の量(モル分率、モル%)をH-NMRの積分値解析により算出し、無水マレイン酸(MA)換算で示した。
H-NMR測定により、ポリマーP9が、HEMAで開環された構造、およびGMAが反応した構造を有することを確認した。
実施例1と同様にしてポリマーP9を含むポリマー溶液25を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0344】
[比較例4]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー3を用いた以外は実施例12と同様にしてポリマーP11を含むポリマー溶液26を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0345】
[比較例5]
(ポリマーの合成)
原料ポリマー1の代わりに、原料ポリマー12を用いた以外は実施例3と同様にして、原料ポリマー12のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP22を作製した。
実施例1と同様にしてポリマーP22を含むポリマー溶液27を調製した。感光性樹脂組成物は、実施例1と同様に調製した。
【0346】
<評価方法>
実施例、比較例で合成されたポリマー、ポリマー溶液、感光性樹脂組成物について、以下に従い評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0347】
(重量平均分子量(Mw)・分子量分布(PDI))
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(PDI:Mw/Mn)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。測定条件は、以下の通りである。結果を表1に示す。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー社製TSK-GEL Supermultipore HZ-M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0348】
(現像性評価(アルカリ現像液に対するポリマー(または感光性樹脂組成物)の溶解速度))
実施例、比較例で得られたポリマー溶液(または感光性樹脂組成物)をウエハー上にスピンコートし、PGMEAを乾燥させ、そして温度100℃で2分間プリベークすることで、膜厚2μm±0.2の樹脂膜を作製した。
この樹脂膜を、ウエハーごと、温度23℃の2.38質量%TMAH水溶液に浸漬し、樹脂膜の溶解速度を測定した。
溶解速度は、浸漬したウエハーを目視で観察して樹脂膜が溶解して干渉模様が見えなくなるまでの時間を測定し、その時間で膜厚を割り算することで算出した。結果を表1~3に示す。ポリマー溶液については、アルカリ溶解速度が、200nm/s以上、2000nm/s以下であれば、現像性が良好とみなすことができる。感光性樹脂組成物については、アルカリ溶解速度が、200nm/s以上、2500nm/s以下であれば、現像性が良好とみなすことができる。
【0349】
[感光性樹脂組成物の感度評価(2.38質量%TMAH水溶液)]
(残膜率が90%以上となる露光量)
実施例、比較例で得られた感光性樹脂組成物を、HMDS(Hexamethyldisilazane)処理した3インチシリコンウエハ上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.3μm)の薄膜Aを得た。
この薄膜Aに、遮光率1~100%の階調を有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて100mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。
露光後、薄膜を2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液で23℃、表2、3に記載の現像時間で現像(ウエハごと浸漬)することで、1~100mJ/cmの各露光量で露光、現像された薄膜Bを得た。
上記の方法にて得られた薄膜A、薄膜Bの膜厚から、以下の式より残膜率を算出した。
残膜率(%)=(各露光量での薄膜Bの膜厚/薄膜Aの膜厚)×100
そして、残膜率が90%以上となる露光量を、各感光性樹脂組成物の感度とした。結果を表2、3に示す。残膜率が90%以上となる露光量が、50mJ/cm以下であれば、感光性組成物として問題なく使用することができ、20mJ/cm以下であれば感度が良好であり、10mJ/cm以下であれば特に感度が優れるとみなすことができる。
【0350】
[イエローインデックス]
感光性樹脂組成物を、イーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.1μm)の薄膜を得た。
この薄膜に、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-600F)にて100mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。
露光後、薄膜を2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液で23℃、10秒間現像(ウエハごと浸漬)することで、100mJ/cmの露光量で露光、現像された薄膜を得た。
薄膜を230℃、30分間、空気下で加熱処理した。薄膜を室温空気下で冷却した後、再度薄膜を230℃、30分間、空気化で加熱処理した。同様の操作を繰り返し、30分間、空気下で加熱処理を合計で3回行った。
上記の方法にて得られた薄膜のイエローインデックス(YI)を色彩色差計CR-5(コニカミノルタ製)を用いて、測定箇所変えて3回測定し、その平均値をYIの値とした。測定タイプは透過測定、100%校正は未塗布のイーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)を使用した。結果を表2、3に示す。イエローインデックスが1.15以下であれば感光性樹脂組成物として問題なく使用でき、1.10以下であれば耐熱変色性が良好とみなすことができ、0.8以下であれば特に耐熱変色性が良好とみなすことができる。
【0351】
[現像時の密着性]
(ラインパターンに対する密着性)
感光性樹脂組成物を、イーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.1μm)の薄膜を得た。
この薄膜に横幅40μm、縦幅400μmのガラス部(露光部)と横幅40μm、縦幅400μmのクロム部(遮光部)を交互に、計5か所のガラス部(露光部)有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて18mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。この露光により、フォトマスクのガラス部は光を透過するため指定の露光量で露光され、クロム部は光を透過しないため、未露光部となり、露光部と未露光部を交互に有するラインパターンが得られた。露光後、薄膜を0.5質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液で23℃、10秒間現像(ウエハごと浸漬)することで、18mJ/cmの露光量で露光、現像された薄膜を得た。露光、現像後の計5か所の横幅40μm、縦幅400μmのラインパターンについて、ラインパターンの剥離の有無を顕微鏡で観察した。
(判定基準)
○:現像後のラインパターンは基板に密着しており、剥離している箇所は認められなかった。
×:現像後のラインパターンにおいて、基板から剥離している箇所が認められた。
【0352】
(ドットパターンに対する密着性)
感光性樹脂組成物を、イーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.1μm)の薄膜を得た。
この薄膜に横幅50μm、縦幅50μmのガラス部(露光部)とガラス部の周囲がクロム部(遮光部)になっているパターンを計3か所有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて18mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。この露光により、フォトマスクのガラス部は光を透過するため指定の露光量で露光され、クロム部は光を透過しないため、未露光部となり、横幅50μm、縦幅50μmの露光分を有するドットパターンが得られた。露光後、薄膜を0.5質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液で23℃、10秒間現像(ウエハごと浸漬)することで、18mJ/cmの露光量で露光、現像された薄膜を得た。露光、現像後の計3か所の横幅50μm、縦幅50μmのドットパターンについて、ラインパターンの剥離の有無を顕微鏡で観察した。
(判定基準)
○:現像後のドットパターンは基板に密着しており、剥離している箇所は認められなかった。
×:現像後のドットパターンにおいて、基板から剥離している箇所が認められた。
【0353】
【表1】
【0354】
【表2】
【0355】
【表3】
【0356】
【表4】
【0357】
実施例1~6、12~22で合成されたポリマーは、いずれも一般式(P)で表される構造を有しており、感度が良好であるとともに、黄色化が低減され透明性に優れ、さらに基板等への密着性に優れる樹脂硬化物を得ることができた。さらにポリマー中に取り込まれたチオール基含有化合物が3官能以上のチオール基含有化合物であり、かつエステル構造を含むチオール基含有化合物である、実施例1~6、12~19で合成されたポリマーは特に黄色化が低減され透明性に優れていた。一方で、チオール基含有化合物を用いていない比較例1~4、単官能のチオール基含有化合物を用いた比較例5で合成されたポリマーは、透明性が低く、さらに基板等への密着性が低い樹脂硬化物が得られた。
実施例1~5のポリマー溶液に、さらに所定のカップリング剤(チオール基およびアルコキシ基を有する化合物)を添加した実施例7~11のポリマー溶液は、さらに感度に優れるとともに、黄色化がより低減されており、さらに基板への密着性により優れていた。
【0358】
<カラーフィルタの作製>
実施例1~22で調製した感光性樹脂組成物に対し、さらに、顔料分散液NX-061(大日精化工業株式会社製、緑色)を適量加えた着色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、緑色のカラーフィルタを形成することができた。
また、顔料分散液として、NX-061の代わりに、同社製のNX-053(青色)、NX-032(赤色)などを用いて、青色または赤色のカラーフィルタを形成することができた。
【0359】
<ブラックマトリクスの作製>
実施例1~22で調製した感光性樹脂組成物に対し、さらに、カーボンブラック分散液NX-595(大日精化工業株式会社製)を適量加えた黒色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、ブラックマトリクスを形成することができた。
【0360】
この出願は、2020年9月23日に出願された日本出願特願2020-158807号および2020年12月4日に出願された日本出願特願2020-201731号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0361】
10 基板
11 ブラックマトリクス
12 カラーフィルタ
13 保護膜
14 透明電極層
図1
図2
図3