(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 12/00 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
E04D12/00 C
E04D12/00 K
(21)【出願番号】P 2017068984
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2020-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東堤 泰久
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
(72)【発明者】
【氏名】小池 健文
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-252895(JP,A)
【文献】特開2013-057175(JP,A)
【文献】特開2000-064513(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092745(WO,A1)
【文献】特開昭53-120816(JP,A)
【文献】米国特許第05283998(US,A)
【文献】特開平08-114004(JP,A)
【文献】特開平10-068194(JP,A)
【文献】特開2005-188254(JP,A)
【文献】特開2003-013553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/12、1/14、1/34、12/00
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に防水処理が施された屋根下地と、
前記屋根下地上に該屋根下地の勾配方向と直交する直交方向に互いに間隔をあけて複数配置され、それぞれ前記勾配方向に延びるように設けられた桟と、
前記複数の桟上に載置固定された複数の化粧板と、を備え、
前記化粧板は、四辺の周縁が隣り合う他の前記化粧板の周縁に突付けられて施工され、
前記桟に接着により直接固定されている
屋根構造。
【請求項2】
表面に防水処理が施された屋根下地と、
前記屋根下地上に該屋根下地の勾配方向と直交する直交方向に互いに間隔をあけて複数配置され、それぞれ前記勾配方向に延びるように設けられた桟と、
前記複数の桟上に載置固定された複数の化粧板と、を備え、
前記化粧板は、四辺の周縁が隣り合う他の前記化粧板の周縁に突付けられて施工され、
前記化粧板の突付け箇所が前記桟に位置し、
前記化粧板は、前記桟に接着剤により固定され、
前記接着剤は、前記桟を前記屋根下地に固定している固定具の頭部を覆っている
屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関する。詳しくは、屋根下地の上に複数の屋根材を配置した屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の屋根構造として、屋根下地の上に複数の屋根材を配置したものが提案されている。このような屋根構造は、通常、屋根下地の表面にはアスファルトルーフィング等の下葺材が設置され、その上に、複数の屋根材が、隣接する端部同士が上下に重ね合わせて配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋根の防水性を左右する一要因として、屋根勾配がある。屋根勾配が比較的大きい場合、雨水は屋根面に沿ってスムーズに軒側に流れるため、雨水が屋根に滞留しにくく、屋根の防水性に寄与する。一方、屋根勾配が比較的小さい緩勾配の屋根の場合、雨水が屋根に滞留しやすく、屋根下地に到達する可能性が高まり、防水性を損なう虞がある。したがって、上記のような屋根構造においては、或る程度の屋根勾配を確保する必要性がある。しかしながら、屋根勾配を確保しようとすると、屋根構造の自由度が制限される。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、緩勾配の屋根面であっても防水性を向上させることができる屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る屋根構造は、
表面に防水処理が施された屋根下地と、
前記屋根下地上に該屋根下地の勾配方向と直交する直交方向に互いに間隔をあけて複数配置され、それぞれ前記勾配方向に延びるように設けられた桟と、
前記複数の桟上に載置固定された複数の化粧板と、を備え、
前記化粧板は、四辺の周縁が隣り合う他の前記化粧板の周縁に突付けられて施工され、前記桟に接着により直接固定されている
ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る屋根構造は、
表面に防水処理が施された屋根下地と、
前記屋根下地上に該屋根下地の勾配方向と直交する直交方向に互いに間隔をあけて複数配置され、それぞれ前記勾配方向に延びるように設けられた桟と、
前記複数の桟上に載置固定された複数の化粧板と、を備え、
前記化粧板は、四辺の周縁が隣り合う他の前記化粧板の周縁に突付けられて施工され、前記化粧板の突付け箇所が前記桟に位置し、
前記化粧板は、前記桟に接着剤により固定され、
前記接着剤は、前記桟を前記屋根下地に固定している固定具の頭部を覆っている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、化粧板を屋根下地上に直接葺く場合に比べて、化粧板と屋根下地の間に桟の高さ分の排水部を形成することができ、緩勾配の屋根面であっても防水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、本発明の屋根構造に係る一実施の形態を示し、屋根の勾配方向と直交する方向の断面図である。
図1Bは、同上の屋根の勾配方向と平行な方向の断面図である。
【
図2】
図2は、同上の屋根下地を示す一部の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の防水シートの施工方法を示す一部の斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の桟の施工方法を示す一部の斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の化粧板の施工方法を示す一部の斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の隣接する化粧板の突付け状態を示す一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
図1A及び
図1Bには、本実施形態の屋根構造が示されている。この屋根構造は切妻屋根等であって、屋根下地1と、桟2と、化粧板3とを備えている。
【0014】
屋根下地1は、桟2及び化粧板3を建物に取付けるための基礎となる。屋根下地1には防水処理が施されている。これにより、屋根下地1上に雨水が付着しても屋根下地1の下側(屋内側)に浸入するのを抑制することができる。
【0015】
屋根下地1は、木毛や木片を圧縮成型した板材や合板などで形成される野地板11と、防水シート12とを備えている。防水シート12としては、アスファルトルーフィング、ゴムシート、塩化ビニル樹脂シートなどが例示される。防水シート12は野地板11上に全面にわたって配置されており、これにより、防水処理が施された屋根下地1が形成される。屋根下地1の上面(本実施形態では防水シート12の上面)は、傾斜している。すなわち、屋根下地1は勾配を有している。なお、本実施形態は屋根勾配が0.5寸以上2.5寸以下であってもよい。
【0016】
桟2は、化粧板3を取り付けるための基礎となる。桟2は屋根下地1上に複数設けられている。複数の桟2は、屋根下地1の勾配方向と直交する直交方向Xに等間隔に配置されている。隣り合う桟2の間隔Lは、一枚の化粧板3の長手方向(直交方向Xと同じ)の寸法よりも小さい。本実施形態における間隔Lは、化粧板3の長手方向の寸法の1/2の間隔であるが、これに限定されない。また各桟2は屋根下地1の勾配方向Yに延びるように長尺に形成されている。桟2としては、防水処理が施された木材や樹脂材が使用可能である。
【0017】
化粧板3は、屋根を化粧するために設けられる。化粧板3は桟2上に複数枚載置されて固定されている。化粧板3としては、薄い矩形板状のセメント瓦が使用可能であるが、これに限定されるものではない。化粧板3の大きさは、例えば、長手方向の寸法が600~1800mm、短手方向の寸法が100~300mm、厚みが2~10mmとすることができるが、これに限定されるものではない。なお、化粧板3は平面視の形状が略矩形状だけでなく、三角形、六角形等の多角形であっても使用可能である。
【0018】
本実施形態の屋根構造は、以下のように施工されて形成される。
【0019】
まず、
図2に示すように、野地板11上に複数枚の防水シート12を配置し、防水処理が施された屋根下地1を形成する。野地板11の上面は複数枚の防水シート12で全面にわたって覆われる。各防水シート12は野地板11上に接着により固定される。また隣り合う防水シート12は端部同士が重ねられて接合されることにより、シームレス化される。
【0020】
図3に示すように、直交方向Xで隣接する第一の防水シート121と第二の防水シート122は、直交方向Xにおける防水シート121の一方の端部125の上に、直交方向Xにおける防水シート122の一方の端部126が重ねられ、両端部125、126が接着剤や熱融着により接合される。また防水シート121、122と勾配方向Yの上側に隣接する第三の防水シート123は、防水シート121、122の上側端部127の上に、防水シート123の下側端部128が重ねられ、両端部127、128が接着剤や熱融着により接合される。端部125と端部126の接合部分は勾配方向Yで直線上に並ばないように、複数の防水シート12は千鳥で配置される。なお、
図3において、斜線部分は、防水シート12の重ねられる部分を示している。
【0021】
次に、
図4に示すように、屋根下地1上に複数の桟2を設ける。複数の桟2は防水シート12の表面に取り付けられる。各桟2は釘やビスなどの固定具により野地板11に固定される。該固定具は各桟2の表面から野地板11まで達するように打ち込まれる。各桟2は勾配方向Yに延びるように配置される。また複数の桟2は直交方向Xに間隔L毎に配置される。
【0022】
複数の桟2は上記の如く等間隔で配置されている。例えば、
図4では、直交方向Xにおいて、四本の桟21、22、23、24がこの順で紙面左側から並んで配置されているが、隣り合う二つの桟22、23の間隔Lは、化粧板3の長手方向の寸法の1/2に設定されている。したがって、例えば、最も左側の桟21と、左から三番目の桟23と、によって化粧板3の長手方向両端が支持され、左から2番目の桟22によって当該化粧板3の長手方向中央部が支持される。なお、桟2が等間隔に配置されていなくてもよく、桟2が化粧板3の長手方向両端部とその間の箇所を支持していれば良い。
【0023】
次に、
図5に示すように、桟2上に複数の化粧板3を配置する。化粧板3は直交方向Xと勾配方向Yとに複数ずつ並べて配置されるが、直交方向X及び勾配方向Yに隣接する化粧板3は互いに重ならないように突付けて配置される。
図1、
図5及び
図6において、隣り合う化粧板3の突付け箇所を符号Tで示す。
【0024】
例えば、
図5では、直交方向Xにおいて、三枚の化粧板31、32、33が左側からこの順で並んで配置されているが、中央の化粧板32の左側の長手方向端部321が左側の化粧板31の右側の長手方向端部311と突付けられ、中央の化粧板32の右側の長手方向端部323は右側の化粧板33の左側の長手方向端部332と突付けられている。
【0025】
また勾配方向Yにおいて、三枚の化粧板34、32、35が下側からこの順で並んで配置されているが、中央の化粧板32の下側の短手方向端部324が下側の化粧板34の上側の短手方向端部344と突付けられ、中央の化粧板32の上側の短手方向端部325は上側の化粧板35の下側の短手方向端部355と突付けられている。このように矩形状の各化粧板3の四辺の周縁は、各辺の周縁に隣接する化粧板3に突付けられている。したがって、複数枚の化粧板3で形成された化粧面(屋根面)は、全体に亘ってフラットとなる。そのため、水が化粧面上を軒側に向かって流れ易くなり、滞留し難い。
【0026】
一枚の化粧板3は少なくとも三本の桟2に架け渡すようにして配置される。
図5では、化粧板32、34、35は紙面左側から右側に順に並ぶ三本の桟22、23、24に架け渡している。具体的には、桟22,23,24は、上記の如く、間隔Lで等間隔に配置され、この間隔Lが化粧板3の長手方向の寸法の1/2である。そして、化粧板32の長手方向両端がそれぞれ桟22,24上に固定され、さらに、化粧板32の長手方向中央部裏面が中央の桟23上に固定されている。当該化粧板32の上下に位置する化粧板34,35も同様に桟22,23,24に固定されている。また、化粧板32の直交方向Xに隣り合う化粧板31,33も各長手方向両端が桟2上に固定されて、化粧板32に突きつけられている。このように、各化粧板3の長手方向両端及びその間が桟2上に固定されているので、化粧板3は表面から荷重がかかっても変形し難い。
【0027】
化粧板3を桟2に固定するにあたっては、接着剤を使用するのが好ましい。これにより、化粧板3に釘孔が形成されず、防水性が損なわれないようにすることができる。接着剤としては、弾性接着剤を使用するのが好ましい。この場合、気温変化等による化粧板3の寸法変化に対する弾性接着剤の追従性が良好である。弾性接着剤としては、例えばウレタン樹脂、変成シリコーン樹脂、エポキシ・変成シリコーン樹脂、シリル化ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ブチルゴム樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリサルファイド樹脂、アクリル変成シリコーン樹脂、テレケリックポリアクリレート樹脂など、ゴム状弾性を有する接着剤を使用することができる。接着剤は、接着ガンなどを用いて桟2上に供給されるが、このとき、接着剤は桟2を固定している固定具の頭部を覆うように供給されることが好ましい。これにより、接着剤で固定具の頭部が覆われることになって、防水性が向上する。そして、桟2上に接着剤を供給した後、化粧板3の長手方向端部を桟2上に載置することにより、桟2に化粧板3を接着して固定することができる。
【0028】
上記のように形成される屋根構造では、屋根下地1と化粧板3との間に桟2の高さ分の通気空間4が軒先まで連続形成されている。複数枚の化粧板3で形成された化粧面上に雨が降ると、上記の如く当該化粧面全体がフラットとなっているため、雨水が軒側に流れ易い。ただし、雨水の一部は、化粧板3同士の突付け箇所Tの隙間に流れ落ちる。勾配方向Yに並ぶ化粧板3同士の突付け箇所Tの隙間に流れ落ちた雨水は、防水シート12上に落下するものの、上記の如く通気空間4が軒先まで連続形成されているため、通気空間4が排水部として機能して雨水が軒先にスムーズに流れ落ちる。一方、直交方向Xに並ぶ化粧板3同士の突付け箇所Tの隙間に流れ落ちた雨水は、桟2上に至るものの、上記の如く通気空間4が隣接するため、通気によって乾燥する。
【0029】
本実施形態の屋根構造は、以下の特徴を有する。
【0030】
すなわち、本実施形態は、
表面に防水処理が施された屋根下地1と、
屋根下地1上に該屋根下地1の勾配方向Yと直交する直交方向Xに互いに間隔をあけて複数配置され、それぞれ前記勾配方向Yに延びるように設けられた桟2と、
複数の桟2上に載置固定された複数の化粧板3と、を備え、
化粧板3は、隣り合う他の化粧板3と周縁同士が突付けられて施工されている。
【0031】
このため、本実施形態は、化粧板3と屋根下地1の間に桟2の高さ分の通気空間4を形成することができ、化粧板3を屋根下地1上に直接葺く場合に比べて、通気空間4により雨水を滞留しにくくして防水性を向上させることができる。
【0032】
また本実施形態は、化粧板3の突付け箇所Tが桟2に位置するのが好ましい。
【0033】
この場合、本実施の形態は、雨水が化粧板3の突付け箇所Tから桟2上に至っても通気空間4での通気より乾燥させることができ、防水性が向上する。
【0034】
また本実施形態は、化粧板3は桟2に接着により固定されていることが好ましい。
【0035】
この場合、本実施の形態は、化粧板3に釘孔が形成されず、化粧板3を桟2に釘打ちで固定する場合に比べて、防水性を向上させることができる。
【0036】
また本実施形態は、化粧板3は、弾性接着剤によって桟2に固定されていることが好ましい。
【0037】
この場合、弾性接着剤が化粧板3の寸法変化に追従可能であるため、化粧板3に応力がかかり難く、化粧板3の耐久性を保つことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 屋根下地
2 桟
3 化粧板
4 通気空間
T 突付け箇所
X 直交方向
Y 勾配方向