(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】渦電流探傷システム及び渦電流探傷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/904 20210101AFI20221110BHJP
【FI】
G01N27/904
(21)【出願番号】P 2018213128
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】成重 将史
(72)【発明者】
【氏名】三木 将裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 功
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019909(JP,A)
【文献】特開2016-224010(JP,A)
【文献】特開2018-066671(JP,A)
【文献】特開2010-281765(JP,A)
【文献】特開2011-069623(JP,A)
【文献】再公表特許第00/08458(JP,A1)
【文献】特開2014-199240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 - G01N 27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1列に配列された複数の第1コイルと、前記第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有する探傷プローブと、
前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルを選択的に制御する渦電流探傷装置と、
前記渦電流探傷装置で得られた検出信号に基づいて、前記検出信号が欠陥信号であるどうかを判定する制御装置とを備えた渦電流探傷システムであって、
前記渦電流探傷装置は、
励磁コイル及び検出コイルとして、2個の第1コイル又は2個の第2コイルを選択して制御する第1の相互誘導型探傷モードと、
励磁コイル及び検出コイルとして、1個の第1コイル及び1個の第2コイルを選択して制御する第2の相互誘導型探傷モードと、
少なくとも1個の励磁・検出コイルとして、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルのうちのいずれかを選択して制御する自己誘導型探傷モードとを実行することを特徴とする渦電流探傷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の渦電流探傷システムにおいて、
前記制御装置は、
前記第1の相互誘導型探傷モードで得られた第1の検出信号の振幅と前記第2の相互誘導型探傷モードで得られた第2の検出信号の振幅が予め設定されたレベル以上である場合に、前記第1の検出信号の位相角と前記第2の検出信号の位相角に基づいて前記検出信号が欠陥信号であるか否かを判定し、
前記第1の相互誘導型探傷モードで得られた第1の検出信号の振幅と前記第2の相互誘導型探傷モードで得られた第2の検出信号の振幅のうちの少なくとも一方が前記レベル未満であり、且つ、前記自己誘導型探傷モードで得られた第3の検出信号の振幅が前記レベル以上である場合に、前記検出信号が欠陥信号であると判定することを特徴とする渦電流探傷システム。
【請求項3】
請求項1に記載の渦電流探傷システムにおいて、
前記自己誘導型探傷モードは、2個の励磁・検出コイルとして、隣り合う2個の第1コイル、隣り合う2個の第2コイル、又は隣り合う1個の第1のコイル及び1個の第2のコイルを選択して制御することを特徴とする渦電流探傷システム。
【請求項4】
第1列に配列された複数の第1コイルと、前記第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有する探傷プローブを用い、
前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルを選択的に制御し、
得られた検出信号に基づいて、前記検出信号が欠陥信号であるどうかを判定する渦電流探傷方法であって、
励磁コイル及び検出コイルとして、2個の第1コイル又は2個の第2コイルを選択して制御する第1の相互誘導型探傷モードと、
励磁コイル及び検出コイルとして、1個の第1コイル及び1個の第2コイルを選択して制御する第2の相互誘導型探傷モードと、
少なくとも1個の励磁・検出コイルとして、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルのうちのいずれかを選択して制御する自己誘導型探傷モードとを実行することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項5】
請求項4に記載の渦電流探傷方法において、
前記第1の相互誘導型探傷モードで得られた第1の検出信号の振幅と前記第2の相互誘導型探傷モードで得られた第2の検出信号の振幅が予め設定されたレベル以上である場合に、前記第1の検出信号の位相角と前記第2の検出信号の位相角に基づいて前記検出信号が欠陥信号であるか否かを判定し、
前記第1の相互誘導型探傷モードで得られた第1の検出信号の振幅と前記第2の相互誘導型探傷モードで得られた第2の検出信号の振幅のうちの少なくとも一方が前記レベル未満であり、且つ、前記自己誘導型探傷モードで得られた第3の検出信号の振幅が前記レベル以上である場合に、前記検出信号が欠陥信号であると判定することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項6】
請求項4に記載の渦電流探傷方法において、
前記自己誘導型探傷モードは、2個の励磁・検出コイルとして、隣り合う2個の第1コイル、隣り合う2個の第2コイル、又は隣り合う1個の第1のコイル及び1個の第2のコイルを選択して制御することを特徴とする渦電流探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコイルプローブを用いる渦電流探傷システム及び渦電流探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、探傷プローブ(マルチコイルプローブ)と、渦電流探傷装置と、計算機とを備えた渦電流探傷システムを開示する。探傷プローブは、第1列に配列された複数の第1コイルと、第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有する。
【0003】
渦電流探傷装置は、励磁コイル及び検出コイルとして、2個の第1コイルを選択して制御する第1の相互誘導型探傷モード(Xスキャン)と、励磁コイル及び検出コイルとして、1個の第1コイル及び1個の第2コイルを選択して制御する第2の相互誘導型探傷モード(Yスキャン)とを実行する。渦電流探傷装置は、各探傷モードにて、励磁コイルに励磁電流を流して磁場を発生させ、被検体に渦電流を誘起させる。被検体に欠陥(きず)があれば渦電流が変化するので、この渦電流の変化に起因する検出コイルのインピーダンスの変化を検出信号として取得する。
【0004】
計算機は、第1の相互誘導型探傷モードで得られた第1の検出信号の位相角と第2の相互誘導型探傷モードで得られた第2の検出信号の位相角に基づいて、検出信号が欠陥信号(きず信号)であるかどうかを判定する。詳しく説明すると、第1の検出信号の位相角と第2の検出信号の位相角との差分が所定値(例えば20度)以下であれば、検出信号がリフトオフ信号(詳細には、探傷プローブが被検体の表面から離れたことで発生する信号)であると判定する。一方、第1の検出信号の位相角と第2の検出信号の位相角との差分が所定値を超えれば、検出信号が欠陥信号であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術では、第1の検出信号の振幅と第2の検出信号の振幅がレベル以上であれば、それらの位相角の差分に基づいて、検出信号が欠陥信号であるかどうかを判定する。しかしながら、欠陥の延在方向によっては、第1の検出信号の振幅又は第2の検出信号の振幅がレベル未満となる可能性がある。詳しく説明すると、例えば、第1の相互誘導型探傷モードで選択された励磁コイルと検出コイルの並び方向(すなわち、2個の第1コイルの並び方向)に対して直角となるように欠陥が延在する場合は、渦電流の変化が小さくなるので、第1の検出信号の振幅がレベル未満となる可能性がある。また、例えば、第2の相互誘導型探傷モードで選択された励磁コイルと検出コイルの並び方向(すなわち、1個の第1コイルと1個の第2コイルの並び方向)に対して直角となるように欠陥が延在する場合は、渦電流の変化が小さくなるので、第2の検出信号の振幅がレベル未満となる可能性がある。このような場合に、欠陥信号を識別することが困難となる。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、欠陥の延在方向にかかわらず、欠陥信号を識別することができる渦電流探傷システム及び渦電流探傷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、第1列に配列された複数の第1コイルと、前記第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有する探傷プローブと、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルを選択的に制御する渦電流探傷装置と、前記渦電流探傷装置で得られた検出信号に基づいて、前記検出信号が欠陥信号であるどうかを判定する制御装置とを備えた渦電流探傷システムであって、前記渦電流探傷装置は、励磁コイル及び検出コイルとして、2個の第1コイル又は2個の第2コイルを選択して制御する第1の相互誘導型探傷モードと、励磁コイル及び検出コイルとして、1個の第1コイル及び1個の第2コイルを選択して制御する第2の相互誘導型探傷モードと、少なくとも1個の励磁・検出コイルとして、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルのうちのいずれかを選択して制御する自己誘導型探傷モードとを実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、欠陥の延在方向にかかわらず、欠陥信号を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における渦電流探傷システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における探傷プローブの構造を表す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態における走査装置の構造を表す上面図である。
【
図5】本発明の一実施形態における渦電流探傷システムの探傷制御の手順を表すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態における第1の相互誘導型探傷モードを説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態における第2の相互誘導型探傷モードを説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態における自己誘導型探傷モードを説明するための図である。
【
図9】本発明の一実施形態における制御装置の信号識別処理の手順を表すフローチャートである。
【
図10】本発明の一変形例における自己誘導型探傷モードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における渦電流探傷システムの構成を表すブロック図である。
図2は、本実施形態における探傷プローブの構造を表す概略図である。
図3は、本実施形態における走査装置の構造を表す上面図であり、
図4は、
図3の矢印IV方向から見た側面図である。なお、
図4においては、便宜上、レールやエンコーダの図示を省略している。
【0013】
本実施形態の渦電流探傷システムは、探傷プローブ1(マルチコイルプローブ)と、探傷プローブ1を被検体Sの表面に沿って移動させる走査装置2と、探傷プローブ1のコイル(詳細は後述)を選択的に制御する渦電流探傷装置3と、走査装置2及び渦電流探傷装置3を制御すると共に、渦電流探傷装置3で得られた検出信号を処理する制御装置4(例えばコンピュータ)と、制御装置4に接続された記憶装置5(例えばハードディスク)及び表示装置6(例えばディスプレイ)とを備える。
【0014】
探傷プローブ1は、可撓性の基板7と、基板7の長手方向(
図2の上下方向)に第1列として配列された複数(本実施形態では11個)の第1コイル8a~8kと、第1列に平行な第2列として配列された複数(本実施形態では10個)の第2コイル9a~9jとを有しており、第1コイル8a~8h及び第2コイル9a~9jが千鳥状(三角格子状)に配置されている。なお、第1コイル8a~8h及び第2コイル9a~9jは、それらの軸方向が基板7に対して垂直となっている。
【0015】
走査装置2は、被検体Sを載置する台座10と、台座10上に設けられたレール11と、探傷プローブ1を保持すると共に、レール11に沿って移動する移動ユニット12と、移動ユニット12の移動量(すなわち、探傷プローブ1の移動量)を測定するワイヤ式のエンコーダ13とを備える。移動ユニット12は、レール11上に配置された走行輪(図示せず)と、走行輪を回転させる電動モータ(図示せず)と、緩衝材14を介して探傷プローブ1を保持するアーム15と、
図4の上下方向におけるアーム15の位置を調整する機構(図示せず)とを有する。アーム15の位置を調整することにより、被検体Sの表面への探傷プローブ1の押し付け力を調整可能としている。
【0016】
走査装置2は、制御装置4からの移動指令に応じて移動ユニット12の電動モータを駆動して、探傷プローブ1を移動させる。また、エンコーダ13で測定された探傷プローブ1の移動量を制御装置4へ出力する。
【0017】
渦電流探傷装置3は、制御装置4からの探傷指令に応じて、第1の相互誘導型探傷モード、第2の相互誘導型探傷モード、及び自己誘導型探傷モード(詳細は後述)を順次実行するようになっている。詳しく説明すると、渦電流探傷装置3は、マルチプレクサ回路、励磁制御部、及び検出制御部を有している。渦電流探傷装置3は、各探傷モードに応じて、マルチプレクサ回路、励磁制御部、及び検出制御部を制御する。マルチプレクサ回路は、第1コイル8a~8h及び第2コイル9a~9jのうちのいずれかを選択して励磁制御部に接続すると共に、第1コイル8a~8h及び第2コイル9a~9jのうちのいずれかを選択して検出制御部に接続する。励磁制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続されたコイルに励磁電圧を印加して励磁電流を流す。検出制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続されたコイルのインピーダンス変化を検出信号として取得する。
【0018】
次に、本実施形態における渦電流探傷システムの探傷制御について説明する。
図5は、本実施形態における渦電流探傷システムの探傷制御の手順を表すフローチャートである。
図6は、本実施形態における第1の相互誘導型探傷モードを説明するための図である。
図7は、本実施形態における第2の相互誘導型探傷モードを説明するための図である。
図8は、本実施形態における自己誘導型探傷モードを説明するための図である。
【0019】
ステップS101にて、制御装置4は、渦電流探傷装置3に探傷指令を出力する。これにより、渦電流探傷装置3は、励磁コイル及び検出コイルとして、2個の第1コイルを選択して制御する第1の相互誘導型探傷モードを実行する。詳しく説明すると、渦電流探傷装置3のマルチプレクサ回路は、まず、第1コイル8aを励磁コイルとして選択して励磁制御部に接続し、第1コイル8cを検出コイルとして選択して検出制御部に接続する。励磁制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続された第1コイル8aに励磁電圧を印加して励磁電流を流す。検出制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続された第1コイル8cのインピーダンス変化を検出信号(以降、第1の検出信号という)として取得する。そして、渦電流探傷装置3は、検出制御部で取得された第1の検出信号を、コイル(ここでは、代表として励磁コイル)の選択情報と共に、制御装置4へ出力する。
【0020】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8bを励磁コイルとして選択し、第1コイル8dを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8cを励磁コイルとして選択し、第1コイル8eを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8dを励磁コイルとして選択し、第1コイル8fを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8eを励磁コイルとして選択し、第1コイル8gを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0021】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8fを励磁コイルとして選択し、第1コイル8hを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8gを励磁コイルとして選択し、第1コイル8iを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8hを励磁コイルとして選択し、第1コイル8jを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8iを励磁コイルとして選択し、第1コイル8kを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0022】
ステップS102にて、制御装置4は、第1の相互誘導型探傷モードで得られた第1の検出信号を、探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報と関連付けて、記憶装置5に記憶させる。
【0023】
ステップS103に進み、渦電流探傷装置3は、励磁コイル及び検出コイルとして、1個の第1コイルと1個の第2コイルを選択して制御する第2の相互誘導型探傷モードを実行する。詳しく説明すると、渦電流探傷装置3のマルチプレクサ回路は、まず、第1コイル8aを励磁コイルとして選択して励磁制御部に接続し、第2コイル9aを検出コイルとして選択して検出制御部に接続する。励磁制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続された第1コイル8aに励磁電圧を印加して励磁電流を流す。検出制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続された第2コイル9aのインピーダンス変化を検出信号(以降、第2の検出信号という)として取得する。そして、渦電流探傷装置3は、検出制御部で取得された第2の検出信号を、コイル(ここでは代表として励磁コイル)の選択情報と共に、制御装置4へ出力する。
【0024】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8bを励磁コイルとして選択し、第2コイル9aを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8bを励磁コイルとして選択し、第2コイル9bを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8cを励磁コイルとして選択し、第2コイル9bを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8cを励磁コイルとして選択し、第2コイル9cを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0025】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8dを励磁コイルとして選択し、第2コイル9cを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8dを励磁コイルとして選択し、第2コイル9dを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8eを励磁コイルとして選択し、第2コイル9dを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8eを励磁コイルとして選択し、第2コイル9eを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0026】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8fを励磁コイルとして選択し、第2コイル9eを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8fを励磁コイルとして選択し、第2コイル9fを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8gを励磁コイルとして選択し、第2コイル9fを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8gを励磁コイルとして選択し、第2コイル9gを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0027】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8hを励磁コイルとして選択し、第2コイル9gを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8hを励磁コイルとして選択し、第2コイル9hを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8iを励磁コイルとして選択し、第2コイル9hを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0028】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8iを励磁コイルとして選択し、第2コイル9iを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8jを励磁コイルとして選択し、第2コイル9iを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8jを励磁コイルとして選択し、第2コイル9jを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8kを励磁コイルとして選択し、第2コイル9jを検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0029】
ステップS104にて、制御装置4は、第2の相互誘導型探傷モードで得られた第2の検出信号を、探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報と関連付けて、記憶装置5に記憶させる。
【0030】
ステップS105に進み、渦電流探傷装置3は、2つの励磁・検出コイルとして、隣り合う2個の第1コイルを選択して制御する自己誘導型探傷モードを実行する。詳しく説明すると、渦電流探傷装置3のマルチプレクサ回路は、まず、第1コイル8a,8bを励磁・検出コイルとして選択して励磁制御部及び検出制御部に接続する。励磁制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続された第1コイル8a,8bに励磁電圧を印加して励磁電流を流す。検出制御部は、マルチプレクサ回路を介し接続された第1コイル8a,8bのインピーダンス変化を検出信号(以降、第3の検出信号という)として取得する。そして、渦電流探傷装置3は、検出制御部で取得された第3の検出信号を、コイル(ここでは2つの励磁・検出コイル)の選択情報と共に、制御装置4へ出力する。
【0031】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8b,8cを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8c,8dを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、第1コイル8d,8eを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8e,8fを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8f,8gを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0032】
その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8g,8hを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、第1コイル8h,8iを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8i,8jを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。その後、渦電流探傷装置3は、第1コイル8j,8kを励磁・検出コイルとして選択して、同様の制御を行う。
【0033】
ステップS106にて、制御装置4は、自己誘導型探傷モードで得られた第3の検出信号を、探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報と関連付けて、記憶装置5に記憶させる。
【0034】
ステップS107に進み、制御装置4は、探傷が完了したかどうかを判定する。例えば検査者の操作によって終了信号が入力されるか、若しくはエンコーダで測定された探傷プローブ1の移動量が設定値に達した場合に、探傷が完了したと判定する。探傷が完了したと判定されない場合は、ステップS108に移る。
【0035】
ステップS108にて、制御装置4は、走査装置2に移動指令を出力する。これにより、走査装置2は、移動ユニット12の電動モータを駆動して、探傷プローブ1を移動させる。その後、ステップS101に戻って、上述の手順を繰り返す。
【0036】
制御装置4は、上述のようにして記憶装置5で記憶された第1の検出信号、第2の検出信号、及び第3の信号に基づいて信号識別処理を行っている。その詳細を、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態における制御装置の信号識別処理の手順を表すフローチャートである。
【0037】
制御装置4は、探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報が同じである第1の検出信号、第2の検出信号、及び第3の検出信号に対し、以下の処理を行う。
【0038】
ステップS201にて、制御装置4は、第1の検出信号の振幅が予め設定されたレベル以上であるか否かを判定する。第1の検出信号の振幅がレベル以上である場合、ステップS201の判定がYESとなって、ステップS202に移る。ステップS202にて、制御装置4は、第2の検出信号の振幅(但し、第2の検出信号が2つあれば、それらの振幅のうちの大きい方)がレベル以上であるか否かを判定する。第2の検出信号の振幅がレベル以上である場合、ステップS202の判定がYESとなって、ステップS203に移る。
【0039】
ステップS203にて、制御装置4は、第1の検出信号の位相角と第2の検出信号の位相角との差分を演算し、演算した差分(但し、第2の検出信号が2つあり、それらの振幅が両方ともレベル以上である場合は、演算した2つの差分のうちの大きい方)が所定値以下であるか否かを判定する。前述した差分が所定値(例えば20度)以下である場合、ステップS203の判定がYESとなって、ステップS204に移る。ステップS204にて、制御装置4は、検出信号がリフトオフ信号であると判定する。そして、前述した判定結果を、探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報(あるいは、これらの情報から演算された探傷位置情報)と関連付けて、記憶装置5に記憶させる。
【0040】
前述した差分が所定値を超える場合、ステップS203の判定がNOとなって、ステップS205に移る。ステップS205にて、制御装置4は、検出信号が欠陥信号(きず信号)であると判定する。そして、前述した判定結果を、探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報(あるいは、これらの情報から演算された探傷位置情報)と関連付けて、記憶装置5に記憶させる。
【0041】
第1の検出信号の振幅がレベル未満である場合、ステップS201の判定がNOとなって、ステップS206に移る。あるいは、第2の検出信号の振幅がレベル未満である場合、ステップS202の判定がNOとなって、ステップS206に移る。ステップS206にて、制御装置4は、第3の検出信号の振幅がレベル以上であるか否かを判定する。第3の検出信号の振幅がレベル以上である場合、ステップS206の判定がYESとなって、ステップS205に移る。ステップS205にて、制御装置4は、検出信号が欠陥信号であると判定する。そして、前述した判定結果を、探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報(あるいは、これらの情報から演算された探傷位置情報)と関連付けて、記憶装置5に記憶させる。
【0042】
表示装置6は、記憶装置5で記憶された欠陥信号とこれに関連付けられた探傷プローブ1の位置情報及びコイルの選択情報(あるいは、これらの情報から演算された探傷位置情報)に基づいて、探傷結果を表示するようになっている。
【0043】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0044】
検査体Sに欠陥がある場合を想定する。自己誘導型探傷モードで得られた第3の検出信号の振幅は、欠陥の延在方向に依らず大きいものの、第1の相互誘導型探傷モードで得られた第1の検出信号の振幅と第2の相互誘導型探傷モードで得られた第2の検出信号の振幅は、欠陥の延在方向に依って著しく小さくなる。
【0045】
詳しく説明すると、例えば、第1の相互誘導型探傷モードで選択された2個の第1コイルの並び方向に対して直角となるように欠陥が延在する場合は、渦電流の変化が小さくなるので、第1の検出信号の振幅がレベル未満となる可能性がある。また、例えば、第2の相互誘導型探傷モードで選択された1個の第1コイルと1個の第2コイルの並び方向に対して直角となるように欠陥が延在する場合は、渦電流の変化が小さくなるので、第2の検出信号の振幅がレベル未満となる可能性がある。
【0046】
このような場合に、第1の検出信号又は第2の検出信号だけでは、検出信号が欠陥信号又はリフトオフ信号であるかを判定することができない。また、第3の検出信号だけでは、検出信号が欠陥信号又はリフトオフ信号であるかを判定することができない。
【0047】
そこで、本実施形態の制御装置4は、第1の検出信号、第2の検出信号、及び第3の検出信号に基づいて検出信号が欠陥信号又はリフトオフ信号であるかを判定する。詳細には、第1の検出信号の振幅と第2の検出信号の振幅がレベル以上である場合に、第1の検出信号の位相角と第2の検出信号の位相角に基づいて検出信号が欠陥信号であるか否かを判定する。第1の検出信号の振幅と第2の検出信号の振幅のうちの少なくとも一方がレベル未満であっても、第3の検出信号の振幅がレベル以上であれば、検出信号が欠陥信号であると判定する。したがって、欠陥の延在方向にかかわらず、欠陥信号を識別することができる。
【0048】
なお、上記一実施形態において、制御装置4は、第1の検出信号の位相角と第2の検出信号の位相角との差分が所定値を超える場合に、検出信号が欠陥信号であると判定する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、制御装置4は、例えば、第1の検出信号の位相角が予め設定された第1の範囲(詳細には、例えば90度を含む所定の範囲)にあり、且つ、第2の検出信号の位相角が予め設定された第2の範囲(詳細には、例えば230度を含む所定の範囲)にある場合や、第1の検出信号の位相角が第2の範囲にあり、且つ、第2の検出信号の位相角が第1の範囲にある場合に、検出信号が欠陥信号であると判定してもよい。
【0049】
また、上記一実施形態において、第1の相互誘導型探傷モードは、励磁コイル及び検出コイルとして、2個の第1コイルを選択して制御する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、第1の相互誘導型探傷モードは、励磁コイル及び検出コイルとして、2個の第2コイルを選択して制御してもよい。
【0050】
また、上記一実施形態において、自己誘導型探傷モードは、2個の励磁・検出コイルとして、隣り合う2個の第1コイルを選択して制御する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、自己誘導型探傷モードは、2個の励磁・検出コイルとして、隣り合う2個の第2コイルを選択して制御してもよいし、隣り合う1個の第1コイル及び1個の第2コイルを選択して制御してもよい。また、自己誘導型探傷モードは、1個の励磁・検出コイルとして、例えば、1個の第1コイル又は1個の第2コイルを選択して制御してもよい(
図10参照)。また、自己誘導型探傷モードは、3個以上の励磁・検出コイルとして、例えば、第1コイル8a~8k及び第2コイル9a~9jのうちの3個以上のコイルを選択して制御してもよい。
【0051】
また、上記一実施形態において、探傷プローブ1は、第1コイル8a~8k及び第2コイル9a~9jが千鳥状(三角格子状)に配置されている場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、探傷プローブ1は、第1コイル8a~8k及び第2コイル9a~9jが四角格子状に配置されてもよい。
【0052】
また、上記一実施形態において、渦電流探傷システムは、探傷プローブ1を被検体の表面に沿って移動させる走査装置2を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば、検査者が探傷プローブ1を把持して被検体の表面に配置してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 探傷プローブ
3 渦電流探傷装置
4 制御装置
8a~8k 第1コイル
9a~9j 第2コイル