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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   G21D 3/04 20060101AFI20221117BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20221117BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20221117BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20221117BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G21D3/04 P
G21F9/02 551A
G21F9/02 501A
B01J20/02 A
B01J20/02 B
B01J20/22 A
B01J20/34 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019155585
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021032804
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 政隆
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正
(72)【発明者】
【氏名】吉津 達郎
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223807(JP,A)
【文献】特開平06-214094(JP,A)
【文献】特表平09-510295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21D 1/00- 9/00
G21F 9/00- 9/36
G21C 11/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力施設における対象設備の内部空間から排出され、放射性物質を含むガスを加熱する加熱器と、
前記加熱器で加熱されたガス中の前記放射性物質を除去するフィルタと、
前記加熱器よりもガス流れで前段に設置され、前記フィルタを透過したガスが有する熱を、前記フィルタを透過する前のガスに伝熱する熱交換器と
前記フィルタを透過したガスの少なくとも一部を前記内部空間に戻す第1戻り系統と、
前記第1戻り系統を流れるガス中の酸素を除去する酸素除去装置と、を備える
ガス処理システム。
【請求項2】
前記内部空間から排気されるガスの流量が前記内部空間に戻されるガスの流量よりも大きく、かつ、前記内部空間の圧力が前記内部空間の外部の圧力よりも低くなるように、前記第1戻り系統を流れるガスの流量を制御する運転制御装置を備える
請求項に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前記酸素除去装置は、酸素吸着材料を収容した酸素除去槽を備え、
前記酸素吸着材料は、銅、アルミニウム、及び、酸素を吸着可能な有機物又は無機物のうちの少なくとも一種を含む
請求項又はに記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記フィルタを透過後に前記第1戻り系統を流れるガスと、前記フィルタを透過する前のガスとを熱交換可能に備えられる
請求項の何れか1項に記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記第1戻り系統を流れるガスであって前記熱交換後のガスを冷却する冷却装置を備える
請求項に記載のガス処理システム。
【請求項6】
前記酸素除去装置は、酸素除去に伴い発熱する酸素吸着材料を収容した酸素除去槽を備え、
前記熱交換器は、前記酸素除去装置から前記内部空間に流れるガスと、前記フィルタを透過する前のガスとの間で熱交換可能に構成される
請求項の何れか1項に記載のガス処理システム。
【請求項7】
前記酸素吸着材料は鉄を含む
請求項に記載のガス処理システム。
【請求項8】
前記酸素除去装置は、前記酸素吸着材料に水を接触させる水接触機構を備える
請求項に記載のガス処理システム。
【請求項9】
前記酸素除去装置は圧力スイング吸着装置を備え、
前記熱交換器は、前記フィルタを透過後に前記第1戻り系統を流れるガスと、前記フィルタを透過する前のガスとを熱交換可能に備えられ、
前記圧力スイング吸着装置と前記熱交換器とは、前記熱交換器での熱交換後のガスを前記圧力スイング吸着装置に供給可能に接続される
請求項の何れか1項に記載のガス処理システム。
【請求項10】
前記第1戻り系統を流れるガスであって前記酸素除去装置による酸素除去後のガスを前記内部空間に供給する送風機を備える
請求項の何れか1項に記載のガス処理システム。
【請求項11】
前記送風機のガス流れ下流側を流れるガスの一部を前記酸素除去装置のガス流れ上流側に戻す第2戻り系統を備える
請求項10に記載のガス処理システム。
【請求項12】
前記内部空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置を備え、
前記不活性ガス供給装置は、前記酸素除去装置による酸素除去後のガスの供給と、前記不活性ガス供給装置による前記不活性ガスの供給とを切り替え可能なように前記内部空間に接続される
請求項11の何れか1項に記載のガス処理システム。
【請求項13】
前記不活性ガスは、窒素を98体積%以上の割合で含む窒素ガスである
請求項12に記載のガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設の対象設備(例えば格納容器、原子炉建屋等)の内部で水素が発生した場合、対象設備の内部へ例えば不活性ガスを供給するとともに、対象設備内部のガスを外部に排出することが好ましい。対象設備内部から排出されるガスには、水素のほか、例えば放射性物質が含まれる。そこで、対象設備内部から排出されたガスへのガス処理が行われることが好ましい。ガス処理に関する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、原子力発電所の非常用ガス処理系のフィルタ装置への流入空気の湿分を低減する空気乾燥装置において、空気が流通する乾燥器ケーシングと、この乾燥器ケーシングの内部に配置された湿分分離器と、前記乾燥器ケーシングの壁面に取り付けられたパネルヒータとを有する空気乾燥装置が記載されている。また、特許文献1の技術では、対象設備(特許文献1に記載の原子炉棟内)のガスは、ヒータで加熱され、フィルタを透過している。フィルタ透過によりガス中の放射性物質が除去され、透過後のガスは外部に排出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-90778号公報(特に請求項1、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスの加熱により、ガスの加熱コスト(例えばヒータの運転コスト)がかかる。特に、対象設備内部のガス置換は例えば長期的に行われることがあるため、ガスの加熱コストは削減できることが好ましい。一方で、フィルタ透過前のガスの加熱が不十分であると、ガス中の水分に起因してフィルタで結露が生じることがある。フィルタでの結露により、フィルタの劣化が進行し易くなる。
【0006】
本発明は、ガスの加熱コストの削減とフィルタの劣化進行の抑制とを両立可能なガス処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス処理システムは、原子力施設における対象設備の内部空間から排出され、放射性物質を含むガスを加熱する加熱器と、前記加熱器で加熱されたガス中の前記放射性物質を除去するフィルタと、前記加熱器よりもガス流れで前段に設置され、前記フィルタを透過したガスが有する熱を、前記フィルタを透過する前のガスに伝熱する熱交換器と、前記フィルタを透過したガスの少なくとも一部を前記内部空間に戻す第1戻り系統と、前記第1戻り系統を流れるガス中の酸素を除去する酸素除去装置と、を備える
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガスの加熱コストの削減とフィルタの劣化進行の抑制とを両立可能なガス処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のガス処理システムの系統図である。
図2】酸素除去装置の構造を説明する図であり、(a)は一実施形態に係る酸素除去装置、(b)は別の実施形態に係る酸素除去装置、(c)は更に別の実施形態に係る酸素除去装置である。
図3】第2実施形態のガス処理システムの系統図である。
図4】第3実施形態のガス処理システムの系統図である。
図5】第4実施形態のガス処理システムの系統図である。
図6】第5実施形態のガス処理システムの系統図である。
図7】第6実施形態のガス処理システムの系統図である。
図8】第7実施形態のガス処理システムの系統図であり、ガス処理システムの通常運転中を示す図である。
図9】第7実施形態のガス処理システムの系統図であり、ガス処理システムの運転停止中を示す図である。
図10】第8実施形態のガス処理システムの系統図である。
図11】第9実施形態のガス処理システムの系統図である。
図12】第10実施形態のガス処理システムの系統図である。
図13】第11実施形態のガス処理システムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を適宜参照しながら本発明を説明するが、本発明は以下の実施形態になんら限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。また、本発明は、異なる実施形態同士を組み合わせて実施できる。以下の実施形態において、同じ部材、装置等については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0011】
また、以下の実施形態において、各種弁及び各種装置の制御は、特に断らない限り、図示しない制御装置によって実行できる。制御装置は、いずれも図示しないが、例えばCPUと、ROMと、RAMと、I/Fとを備える。そして、ROMに記録されたプログラムがCPUによって実行されることで制御装置が具現化される。
【0012】
本実施形態のガス処理システムは、加圧水型原子炉、沸騰水型原子炉等の軽水炉、及び高速増殖炉、新型転換炉、高温ガス炉他の各種原子炉に適用可能である。本実施形態のガス処理システムを加圧型原子炉の設備に適用する場合、例えば、アニュラス空気浄化設備の循環ラインを流れるガスを、本実施形態のガス処理システムを用いて加熱することができる。他にも、本実施形態のガス処理システムは沸騰水型原子炉にも適用でき、以下、一例として、沸騰水型原子炉に本実施形態のガス処理システム場合を例に挙げて、本実施形態のガス処理システムを説明する。
【0013】
図1は、第1実施形態のガス処理システム100の系統図である。ガス処理システム100は、例えば、炉心(図示しない)が溶融し、圧力容器99、格納容器1が破損するようなシビアアクシデント等の事故時、廃炉にともなう原子炉の解体時、及び定期検査時の各時における窒素パージの代替手段として利用できる。ガス処理システム100の設置場所は、原子炉の工学的安全施設でもよく、原子炉建屋外部に設けた固定式施設でもよく、可搬型の安全設備でもよい。
【0014】
格納容器1は、圧力容器99を内包し、圧力容器99の内部には、図示しないが核燃料物質を含む複数の燃料集合体が装荷された炉心が設置される。格納容器1の内部の圧差が圧力伝送器71(圧力センサ)で計測され、格納容器1内の酸素濃度が酸素濃度伝送器84(酸素濃度センサ)で計測される。
【0015】
ガス処理システム100は、加熱器4、フィルタ5及び熱交換器9を備える。加熱器4は、格納容器1の内部空間1a(原子力施設における対象設備の内部空間1aの一例)から排出され、放射性物質(放射性微粒子等)を含むガスを加熱するものである。フィルタ5は、加熱器4で加熱されたガスである被処理ガスA1中の放射性物質を除去するものである。熱交換器9は、加熱器4よりもガス流れで前段に設置され、フィルタ5を透過して生成したガスである処理ガスA2が有する熱を、フィルタ5を透過する前のガスである被処理ガスA1に伝熱するものである。
以下、内部空間1aからフィルタ5までを流れるガスを被処理ガスA1、フィルタ5から酸素除去装置8(後記する)までを流れるガスを処理ガスA2、酸素除去装置8から内部空間1aまでを流れるガスを処理ガスA3(後記する)という。
【0016】
他にも、ガス処理システム100は、凝縮器3を備える。凝縮器3は、被処理ガスA1の除湿機能を有する装置の一構成を示したものであり、吸湿剤、活性炭等のフィルタ5での前処理として、多様な気体除湿の構成にも置き換え可能である。凝縮器3で生じた凝縮水W1は、排水系統23及び流量調整弁24を通じて外部に排水される。また、ガス処理システム100は、送風機6を備える。送風機6は、図示したフィルタ5の下流側に限らず、フィルタ5の上流側に配置してフィルタ5に被処理ガスA1を圧送してもよく、加熱器4の上流側に配置してもよい。
【0017】
ガス処理システム100では、送風機6の吸い込みで格納容器1内の雰囲気から被処理ガスA1が抽気系統2を通して取り出される。被処理ガスA1は、凝縮器3により湿分を分離した後、電気ヒータ等の加熱手段を備えた加熱器4において加熱される。次いで、被処理ガスA1は、フィルタ5で放射性微粒子等を分離及び除去し、処理ガスA2として屋外雰囲気に放出される。
【0018】
ガス処理システム100は、フィルタ5を透過したガスである処理ガスA2の少なくとも一部を格納容器1の内部空間1aに戻す第1戻り系統15を備える。第1戻り系統15は、フィルタ5を透過した処理ガスA2を屋外大気中に排気する排気系統14から分岐して形成される。第1戻り系統15を備えることで、格納容器1の内部空間1aの雰囲気と同様の成分で、かつ、放射性物質除去後の処理ガスA2を内部空間1aに戻すことができ、内部空間1aの雰囲気のガス組成の変化を抑制できる。
【0019】
上記の熱交換器9は、フィルタ5を透過後に第1戻り系統15を流れるガスである処理ガスA2と、フィルタ5を透過する前のガスである被処理ガスA1とを熱交換可能に備えられる。熱交換器9がこのように構成されることで、従来大気中に捨てられていた処理ガスA2の熱を回収するとともに、フィルタ5透過前の被処理ガスA1への伝熱により温度低下した処理ガスA3を格納容器1の内部空間1aに戻すことができ、内部空間1aの温度上昇を抑制できる。
【0020】
ガス処理システム100は、第1戻り系統15を流れるガスである処理ガスA2中の酸素を除去する酸素除去装置8を備える。酸素除去装置8を備えることで、第1戻り系統15を通じて窒素濃度の高いガスを内部空間1aに供給することができる。これにより、内部空間1aの酸素濃度を抑制できる。
【0021】
酸素除去装置8は、酸素除去に伴い発熱する酸素吸着材料41を収容した酸素除去槽40を備える。そして、熱交換器9は、酸素除去装置8から内部空間1aに流れるガスである処理ガスA3と、フィルタ5を透過する前のガスである被処理ガスA1との間で熱交換可能に構成される。酸素除去装置8及び熱交換器9をこのように構成することで、酸素除去に伴って生じた熱を、フィルタ5を透過する前のガスである被処理ガスA1に伝熱できる。これにより、フィルタ5の前段に設置される加熱器4での加熱量を削減できる。
【0022】
また、動的機器を用いずに酸素を除去できるため、酸素除去コストを低減できる。さらには、例えば既存のガス処理システムに対して酸素除去装置8を取り付けるだけで、簡便な構成によって酸素を除去できる。
【0023】
酸素吸着材料41は鉄を含むことが好ましい。酸素吸着材料41が鉄を含むことで、酸素除去に伴って発熱できる。鉄は、単体の鉄、鉄の化合物、鉄合金等の形態で使用できる。また、酸素吸着材料41の形状は、例えば塊、粒、粉等の形状にできる。これらの中でも、酸素との接触面積を増大できる観点から、鉄の粉(鉄粉)が好ましい。処理ガスA2から鉄粉への酸素の供給(又は移動)を促進するため、活性炭を併用してもよい。
【0024】
別の実施形態として、酸素除去装置8は、酸素吸着材料を収容した酸素除去槽40を備え、当該酸素吸着材料は、銅、アルミニウム、及び、これらの単体、化合物、合金のほか、酸素を吸着可能な有機物又は無機物のうちの少なくとも一種を含むものとすることができる。酸素を吸着可能な有機物は、例えば、アスコルビン酸、グルコース、グルコースオキシダーゼ等である。酸素を吸着可能な無機物は、例えばナトリウム塩である。これらの材料を使用しても、酸素除去装置8によって酸素を除去できる。処理ガスA2から鉄粉への酸素の供給(又は移動)を促進するため、活性炭を併用してもよい。
【0025】
なお、酸素除去装置8は1台のみでもよく、2台以上を直列又は並列に接続してもよい。また、2種以上の酸素吸着材料を使用する場合、単一の酸素除去装置8に2種以上の酸素吸着材料を収容してもよく、1種のみの酸素吸着材料を収容した酸素除去装置8を、2台以上直列又は並列に接続してもよい。
【0026】
酸素除去装置8と熱交換器9の一次側(高温側)入口とは、第1戻り系統16aにより接続される。また、熱交換器9の一次側出口と、格納容器1の封入口18とは、第1戻り系統16bにより接続される。一方で、熱交換器9の二次側(低温側)入口と凝縮器3の被処理ガスA1出口とは、抽気系統2bにより接続される。また、熱交換器9の二次側出口と加熱器4の入口とは、抽気系統2cにより接続される。以下、抽気系統2a,2b,2cを総称して抽気系統2ということがある。熱交換器9は、例えば胴(図示しない)及び胴に収容される伝熱管55により構成できる。熱交換器9は、例えば、一次側を胴側にして二次側を伝熱管55にしてもよく、逆に熱交換器9の一次側を伝熱管55にして二次側を胴側にしてもよい。
【0027】
図2は、酸素除去装置8の構造を説明する図であり、(a)は一実施形態に係る酸素除去装置8、(b)は別の実施形態に係る酸素除去装置8、(c)は更に別の実施形態に係る酸素除去装置8である。
【0028】
図2(a)~(c)に示すように、酸素除去装置8は、酸素吸着材料41に水W2を接触させる水接触機構38を備える。水接触機構38は例えば噴霧ノズルであり、水W2が水接触機構38を通じて噴霧水39として噴霧される。ここで、酸素吸着材料41(ここでは鉄)への給水量増加は、酸化作用の促進によって脱酸素量を増加する操作である。
【0029】
水接触機構38は、図しない外部水源に対し、流量調整弁51を介して系統52で接続される。水接触機構38により、酸素吸着材料41に水W2を接触でき、酸素吸着材料41での酸素吸着反応を制御、即ち発熱量を制御できる。なお、水W2として塩水(塩化ナトリウム水溶液等)を使用し、その濃度を調整することで発熱量を制御してもよい。
【0030】
図2(b)に示す酸素除去装置8では、酸素除去装置8と熱交換器9の一次側底部とが、逆止弁53を介して系統54で接続される。熱交換器9の一次側で処理ガスA3が伝熱管55表面で冷却されて生じる凝縮水W3は、熱交換器9の一次側底部に水位を形成する。凝縮水W3の水位と系統54内を満たす凝縮水の水頭とで逆止弁53が開き、凝縮水W3は噴霧水39とともに、酸素吸着材料41に散水される。
【0031】
図2(c)に示す酸素除去装置8では、水接触機構38は、凝縮器3の排水系統23(いずれも図1参照)に、流量調整弁51を介して系統52で接続される。これにより、凝縮器3で生じた凝縮水W1が水接触機構38を通じて散水される。この場合、酸素除去装置8を凝縮器3より低位置に設置し、凝縮水W1を凝縮器3内の水位と排水系統23と系統52内の水頭とを利用して供給することによって、ポンプ等の動力が不要になる。凝縮水W1に放射性物質等が含まれる可能性があるが、排水系統23から系統52の間に、放射性物質等の除去手段を設けることによって、酸素吸着材料41の使用後の廃棄処理が簡素化される。
【0032】
図1に戻って、格納容器1の内部から抽気系統2aに吸引された被処理ガスA1は、凝縮器3で冷却されて凝縮することによって湿分が除去され、抽気系統2bを通って熱交換器9の二次側に流入する。ここで被処理ガスA1は、封入口18から格納容器1内部に封入された処理ガスA3と、格納容器1の図示しない不明の開口部から流入する空気A0(酸素を含む容器外部雰囲気)の混合ガスである。
【0033】
熱交換器9の二次側を通過する被処理ガスA1は、脱酸素処理され酸化反応で発熱した一次側の処理ガスA3によって加熱され、加熱器4に流れる。加熱器4でフィルタ5の露点設計値に基づく所定の温度まで加熱された被処理ガスA1は、抽気系統2cを通ってフィルタ5に流入する。被処理ガスA1が熱交換器9において処理ガスA3の熱で加熱されるため、加熱器4での加熱量が従来より少なくて済み、ガス処理システム100の消費エネルギを削減できる。
【0034】
フィルタ5で放射性物質等を除去された処理ガスA2は、送風機6から系統12に吐き出される。吐出された処理ガスA2は、排気系統14と第1戻り系統15とに分岐して流れる。排気系統14と第1戻り系統15の流量配分は、例えば、流量調整弁11,17の開度調整で設定される。
【0035】
排気系統14に流れた処理ガスA2は大気中に放出される。一方で、第1戻り系統15に流れた処理ガスA2は、酸素除去装置8に入り、酸素吸着材料41の例えば鉄粉を酸化することで酸素が除去され、処理ガスA3が生成する。処理ガスA3は、例えば窒素を高濃度(例えば98体積%以上)で含むガスである。酸素除去装置8での反応熱により温度が上昇した処理ガスA3は、熱交換器9の一次側で比較的低温の被処理ガスA1によって冷却され(即ち、被処理ガスA1は加熱され)、第1戻り系統16bを通って封入口18から格納容器1内に封入される。
【0036】
例えば、封入口18を通じた処理ガスA3の封入流量と格納容器1開口部(図示しない)から流入する空気A0の流量との流量比が9:1であれば、被処理ガスA1の酸素濃度は空気中の10%(2.1体積%)になる。従って、酸素除去装置8に充填する酸素吸着材料41の消費率も、空気から酸素除去を行う場合の約10%になる。このため、上記の酸素除去装置8によれば、不活性ガス製造の電力が不要であり、空気を原料とした脱酸素剤によって不活性ガス(例えば窒素ガス)を製造する場合と比べても、不活性ガスの製造コストを削減できる。
【0037】
また、処理ガスA3と空気A0との流量比が9:1のとき、排気系統14と第1戻り系統15aとの流量分配比は1:9である。この場合において、格納容器1内の酸素濃度をさらに下げる場合には、送風機6の風量増加により、処理ガスA2の抽気流量及び処理ガスA3の封入流量を増加するとともに第1戻り系統15aの流量分配比を増加すればよい。
【0038】
加熱器4、フィルタ5及び熱交換器9を備えるガス処理システム100によれば、フィルタ5の透過前の被処理ガスA1への伝熱により、加熱器4での加熱コストを削減できる。これとともに、フィルタ5の透過前の被処理ガスA1の加熱を十分に行うことができ、フィルタ5での結露抑制によるフィルタ5の劣化進行を抑制できる。
【0039】
また、加圧水型原子炉では、格納容器1内の雰囲気が空気であるので、特に事故時に水素燃焼を抑制する上で不活性ガス(例えば高濃度窒素)への置換が有効である。不活性ガスへの置換により、事故処理だけでなく事故拡大抑制効果も期待できる。従って、ガス処理システム100によって高濃度窒素である処理ガスA3を内部空間1aに供給すれば、格納容器1内の不活化の信頼性を向上できる。これにより、原子炉の事故処理、解体作業時等において、経済性及び作業性を向上できる。さらには、原子炉の事故処理及び解体作業に係わる設備の建設コストを低減できる。
【0040】
図3は、第2実施形態のガス処理システム200の系統図である。ガス処理システム200は、上記ガス処理システム100の装置構成に加え、第1戻り系統15を流れるガスであって熱交換器9での熱交換後のガスである処理ガスA3を冷却する冷却装置56を備える。冷却装置56は動力を必要としない静的冷却装置が好ましく、例えば放熱フィンである。第1戻り系統16bの配管(図示しない)外周に放熱フィンを配置することで、空冷方式により放熱できる。冷却装置56は例えば水プールでもよく、第1戻り系統16bの配管を水プールに潜らせることで、水冷方式により放熱してもよい。長大な配管を使用することで自然冷却を行わせて冷却する場合には、当該長大な配管の部分を冷却装置56として扱うことができる。
【0041】
冷却装置56を備えることで、熱交換後の処理ガスの温度を、冷却装置56での雰囲気温度近傍まで低下できる。これによって、酸素除去装置8での発熱、及び熱交換器9での被処理ガスA1への熱伝達の状況に係わらず、格納容器1内に所望温度の処理ガスA3を封入できる。この結果、格納容器1内の動的機器の過熱を抑制でき、原子炉等の事故処理及び解体時の作業性を向上できる。
【0042】
図4は、第3実施形態のガス処理システム300の系統図である。ガス処理システム300は、格納容器1の内部空間1aから排気される被処理ガスA1の流量が内部空間1aに戻される処理ガスA3の流量よりも大きく、かつ、内部空間1aの圧力が内部空間1aの外部の圧力よりも低く(即ち負圧に)なるように、第1戻り系統15を流れるガスの流量を制御する運転制御装置50を備える。流量制御は、例えば流量調整弁11及び流量調整弁17の開度制御により行われる。ただし、送風機6の出力調整により、流量制御を行ってもよい。運転制御装置50は、いずれも図示しないが、CPUと、ROMと、RAMと、I/Fとを備える。そして、ROMに記録されたプログラムがCPUによって実行されることで、運転制御装置50が具現化される。
【0043】
このようにすることで、内部空間1aへの酸素除去後の処理ガスA3の封入流量を最適化でき、内部空間1aでの酸素濃度を低く維持できる。また、ガス処理システム300によれば、格納容器1に封入される処理ガスA3の流量及び温度を安定して維持できる。また、格納容器1の内部を負圧に維持でき、封入する処理ガスAへの酸素の混入を抑制できる。さらには、加熱器4での十分な加熱により、フィルタ5での結露を抑制でき、フィルタ5の劣化を抑制できる。
【0044】
また、運転制御装置50による上記制御のほか、運転制御装置50は、以下の制御も行う。
ガス処理システム300は、抽気系統2cを流れる被処理ガスA1の温度を計測する温度伝送器72と、抽気系統2cを流れる被処理ガスA1の流量を計測する流量伝送器79とを備える。さらに、ガス処理システム300は、冷却装置56のガス流れ上流側の処理ガスA3の流量、温度及び酸素濃度をそれぞれ計測する流量伝送器75、温度伝送器76及び酸素濃度伝送器77を備える。そして、ガス処理システム300は、冷却装置56のガス流れ下流側の処理ガスA3の温度を計測する温度伝送器78を備える。これらは、図示しない電気信号線により、運転制御装置50に接続される。なお、空気中の酸素と窒素との割合はほぼ一定であるから、空気A0が内部空間1aに流入する本実施形態では、酸素濃度の計測に代えて窒素濃度を計測してもよい。
【0045】
例えば、酸素濃度伝送器77で計測された酸素濃度が第一(低レベル)濃度許容値を超えた場合は、運転制御装置50は、酸素除去量増加のため、水接触機構38を通じた給水量の増加、又は酸素吸着材料41の補給を運転支援情報として作業員に指示する。指示は、例えば図示しない表示装置(モニタ等)への表示により行うことができる。以下、運転支援情報の作業員への指示は、同様にして行うことができる。なお、給水量増加は、酸化作用の促進によって脱酸素量を増加する操作である。酸素濃度が第二(高レベル)濃度許容値を超えた場合は、運転制御装置50は、運転の停止、又は不活性ガス供給装置(図8を参照しながら後記する)による不活性ガスの運転支援情報として指示する。
【0046】
例えば、酸素濃度伝送器84で計測された酸素濃度が第一(低レベル)濃度許容値を超えた場合は、処理ガスA3の流量及び抽気系統2から抽気する被処理ガスA1の流量を増加するように、流量調整弁11及び流量調整弁17の開度、又は送風機6の出力が調整される。このとき、酸素濃度伝送器77で計測された酸素濃度が第一濃度許容値を超えたときの指示と同様に、作業員に対して上記運転支援情報が指示される。酸素濃度が第二(高レベル)濃度許容値を超えた場合も、酸素濃度伝送器77で計測された酸素濃度が第二濃度許容値を超えたときの指示と同様に、作業員に対して上記運転支援情報が指示される。
【0047】
例えば、温度伝送器78で計測された処理ガスA3の温度が第一(低レベル)濃度許容値を超えた場合は、運転制御装置50は、処理ガスA3の温度を低下させるように、水接触機構38を通じた給水量の減少、流量調整弁32の開度絞りによる処理ガスA3の封入量の増加等の運転支援情報を作業員に指示する。処理ガスA3の温度を低下は、冷却装置56として可変容量型の放熱フィンを使用して冷却量を増加させることで行ってもよい。温度が第二(高レベル)濃度許容値を超えた場合も、酸素濃度伝送器77で計測された酸素濃度が第二濃度許容値を超えたときの指示と同様に、作業員に対して上記運転支援情報が指示される。
【0048】
そして、ガス処理システム300では、上記の各運転制御とともに、温度伝送器72の温度測定値とフィルタ5での結露を抑制するための設定温度とを比較し、被処理ガスA1の温度が設定温度になるように、加熱器4のヒータ出力が調整される。
【0049】
以上の制御により、内部空間1aの酸素濃度又は温度が許容値を超えた場合に、作業員に対して注意を促すことができる。これにより、作業員が適切な対応をとることができる。
【0050】
図5は、第4実施形態のガス処理システム400の系統図である。ガス処理システム400は、第1戻り系統15を流れるガスであって酸素除去装置8による酸素除去後のガスである処理ガスA3を内部空間1aに供給する送風機10を備える。送風機10は、上記の送風機6よりも通常は出力が小さな補助的なものである。送風機10のガス流れ下流側には、処理ガスA3が流れる第1戻り系統16の一部として第1戻り系統16cが形成される。
【0051】
ガス処理システム400では、送風機6の次段に酸素除去装置8が配置され、熱交換器9の次段に送風機10が配置されている。従って、酸素除去装置8内の酸素吸着材料41の圧力損失が大きい場合においても、送風機10の吸込側に処理ガスA3を圧送できる。これにより、内部空間1aへの処理ガスA3の封入信頼性を向上でき、ロバスト性を向上できる。また、2台の送風機6,10により酸素除去装置8及び熱交換器9に処理ガスA2,A3を流すので、格納容器1内に封入可能な処理ガスA2,A3の流量範囲を広く設定できる。また、送風機6,10を複数台設置するため、1台あたりの負荷を低減できる。
【0052】
なお、送風機6,10のそれぞれには、バイパス系統を設けてもよい。例えば、送風機6,10のどちらか1台が故障した場合には、故障した送風機をバイパスして残り1台の送風機を用いることで、ガス処理システム400を停止せずに運転できる。例えば、送風機6が故障した場合は、流量調整弁11を閉じて送風機10の出力を増加させればよい。これにより、被処理ガスA1の吸引、フィルタ5による放射性物質等の分離除去、処理ガスA2,A3の酸素除去装置8及び熱交換器9への供給、及び格納容器1の内部空間1aへの処理ガスA3を封入を実行できる。
【0053】
図6は、第5実施形態のガス処理システム500の系統図である。ガス処理システム500では、上記のガス処理システム400(図5参照)と比べて、送風機6の設置場所が異なる。即ち、ガス処理システム500では、送風機6の次段にフィルタ5が配置され、熱交換器9の次段に送風機10が設置される。
【0054】
これにより、格納容器1の内部空間1aから被処理ガスA1を容易に吸引でき、被処理ガスA1をフィルタ5に圧送できる。また、酸素除去装置8及び熱交換器9を経た処理ガスA3は、送風機10により吸引されることで、格納容器1の内部空間1aに十分に封入できる。ここで、送風機6の配置場所及び送風機6の接続配管の引き回しは、酸素除去装置8、熱交換器9、加熱器4等の圧力損失を生じる装置の設置位置に応じて決定される。従って、送風機10が設置されることで、送風機6の設置場所及び設計に自由度を増加できる。
【0055】
図7は、第6実施形態のガス処理システム600の系統図である。ガス処理システム600は、送風機10のガス流れ下流側を流れる処理ガスA3の一部を酸素除去装置8のガス流れ上流側に戻す第2戻り系統37を備える。第2戻り系統37は、第1戻り系統16cから分岐する。ガス処理システム600は、さらに、第1戻り系統16cのガス流量を調整する流量調整弁35と、第2戻り系統37のガス流量を調整する流量調整弁36とを備える。
【0056】
ガス処理システム600での通常運転中、流量調整弁35は開弁しているが、流量調整弁36は閉弁している。しかし、酸素濃度伝送器77によって測定された酸素濃度が許容値を超えた場合は、流量調整弁35の開弁を維持したまま流量調整弁36が開かれ、送風機10から吐き出された処理ガスA3の一部が酸素除去装置8に戻される。これにより、酸素除去装置8において戻された処理ガスA3中の酸素除去が行われる。
【0057】
第1戻り系統15を流れる一部の処理ガスA3の酸素除去が行われることで、内部空間1aに供給される処理ガスA3の酸素が十分に除去される。これにより、内部空間1aの酸素濃度を低く維持できる。また、酸素除去性能が低下する等、酸素除去装置8の性能変化が生じた場合であっても、内部空間1aに封入される処理ガスA3中の酸素濃度を低く維持できる。
【0058】
図8は、第7実施形態のガス処理システム700の系統図であり、ガス処理システム700の通常運転中を示す図である。ガス処理システム700は、内部空間1aに不活性ガスA4を供給する不活性ガス供給装置61を備える。不活性ガス供給装置61は、酸素除去装置8による酸素除去後のガスである処理ガスA3の供給と、不活性ガス供給装置61による不活性ガスA4の供給とを切り替え可能なように内部空間1aに接続される。不活性ガスA4は、例えば、窒素を98体積%以上の割合で含む窒素ガスである。このような不活性ガスA4により、内部空間1aの酸素濃度を低下できる。
【0059】
ガス処理システム700は、第1戻り系統16b(第1戻り系統16aでもよい)に流量調整弁32を備える。また、ガス処理システム700は、第1戻り系統16bに接続され、不活性ガス供給装置61に接続される系統34に流量調整弁33を備える。ガス処理システム700の通常運転時には、流量調整弁32,17は開弁し、流量調整弁33は閉弁(図8においてドット柄で示す)する。これにより、酸素除去装置8での酸素除去後の処理ガスA3が内部空間1aに供給される。
【0060】
図9は、第7実施形態のガス処理システム700の系統図であり、ガス処理システム700の運転停止中を示す図である。上記の図7を参照しながら説明したように、酸素除去性能が低下する等、酸素除去装置8の性能変化が生じた場合、例えば酸素除去装置8の交換等が行われる。酸素除去装置8の交換中、ガス処理システム700は停止し、不活性ガス供給装置61が稼動する。即ち、流量調整弁32,17は閉弁(図9においてドット柄で示す)し、流量調整弁33が開弁する。これにより、不活性ガス供給装置61による不活性ガスの内部空間1aへの供給が行われる。また、流量調整弁11は開弁し、フィルタ5で放射性物質等を分離除去した処理ガスA2の全量が屋外雰囲気に放出される。
【0061】
不活性ガス供給装置61を備えることで、ガス処理システム700の運転停止に伴って処理ガスA3の供給が停止しても、内部空間1aの酸素濃度を低下させるためのガス(処理ガスA3又は不活性ガスA4)を連続的に供給できる。
【0062】
なお、不活性ガス供給装置61の不活性ガスA4が第1戻り系統16cに到達するまで、系統34に存在する空気等を外部に排出するための系統又は弁を設けてもよい。これにより、内部空間1aへの空気の混入を抑制できる。また、不活性ガス供給装置61は、常時運転する必要は無い。
【0063】
図10は、第8実施形態のガス処理システム800の系統図である。ガス処理システム800に備えられる酸素除去装置8は、圧力スイング吸着装置62(PSA装置)を備える。圧力スイング吸着装置62は、触媒の吸着及び脱着の圧力依存性を利用した圧力変動の繰り返しによりガス中の酸素を吸着除去することで、ガス中窒素の濃縮を行うものである。圧力スイング吸着装置62による酸素吸着除去は、安定的な酸素吸着除去の観点から、例えば常温又は常温に近い温度で行うことが好ましい。
【0064】
ガス処理システム800での酸素除去装置8は、上記ガス処理システム100での酸素除去装置8の設置場所とは異なる場所に設置される。具体的には、ガス処理システム800では、酸素除去装置8は、第1戻り系統15aのガス流れで熱交換器9の下流側に設置される。従って、熱交換器9は、フィルタ5を透過後に第1戻り系統15aを流れる処理ガスA2と、フィルタ5を透過する前の被処理ガスA1とを熱交換可能に備えられ、圧力スイング吸着装置62と熱交換器9とは、熱交換器9での熱交換後のガスを前記圧力スイング吸着装置62に供給可能に接続される。
【0065】
酸素除去装置8及び熱交換器9は以下のように接続される。第1戻り系統15aは、熱交換器9の一次側(高温側)入口に接続される。熱交換器9の一次側(高温側)出口は、第1戻り系統15bにより、酸素除去装置8の原料ガス入口に接続される。酸素除去装置8の処理ガス出口は、第1戻り系統16により、格納容器1の封入口18に接続される。
【0066】
第1戻り系統15aを流れる処理ガスA2は、熱交換器9の一次側に流通する。熱交換器9では、処理ガスA2が冷却され(即ち、被処理ガスA1が加熱され)、処理ガスA2は、酸素除去装置8に供給される。酸素除去装置8では、酸素の吸着除去により、窒素が濃縮される。濃縮された窒素を含む処理ガスA3は、第1戻り系統16を通って格納容器1の内部空間1a内に封入される。濃縮の際に分離除去された酸素ガスA5は、大気中に排出される。
【0067】
圧力スイング吸着装置62により構成される酸素除去装置8が、第1戻り系統15aのガス流れで熱交換器9の下流側に備えられることで、熱交換器9での冷却により温度低下後の処理ガスA2を圧力スイング吸着装置62に供給できる。これにより、圧力スイング吸着装置62での酸素除去を安定して行うことができる。この結果、格納容器1の内部空間1aでの酸素濃度をより低くできる。
【0068】
また、圧力スイング吸着装置62では、窒素の濃縮は、上記のように、触媒の吸着及び脱着の圧力依存性を利用した圧力変動の繰り返しにより行われる。このため、不明の開口部(図示しない)からの空気A0が含まれるものの窒素濃度が比較的高い処理ガスA2を圧力スイング吸着装置62の原料ガスとして再利用するため、窒素濃縮のための圧力変動の繰り返し回数が減って圧力スイング吸着装置62の電力コストを削減できる。即ち、ガス処理システム800によれば、圧力スイング吸着装置62により空気から窒素を製造する場合と比べて、窒素の製造コストを削減できる。
【0069】
図11は、第9実施形態のガス処理システム900の系統図である。ガス処理システム900では、熱交換器9と酸素除去装置8とを接続する第1戻り系統15bに、上記図3等を参照しながら説明した冷却装置56が備えられる。
【0070】
冷却装置56を備えることで、熱交換器9での処理ガスA2の伝熱が不十分であっても、冷却装置56によって処理ガスA2を冷却できる。これにより、温度低下後の処理ガスA2を圧力スイング吸着装置62に供給でき、圧力スイング吸着装置62での酸素除去を安定して行うことができる。この結果、格納容器1の内部空間1aでの酸素濃度をより低くできる。さらに上記図10及び図11において、処理ガスA2を屋外雰囲気に放出するための流量調整弁11を閉じ、第1戻り系統15bから流路を分岐して流量調整弁(図示しない)を設けて屋外に連通し、熱交換器9を通過した処理ガスA3を屋外雰囲気に放出してもよい。これによって、フィルタ5の透過前の被処理ガスA1への伝熱量が増加し、加熱器4での加熱コストを削減できる。
【0071】
図12は、第10実施形態のガス処理システム1000の系統図である。上記のガス処理システム100等は、第1戻り系統15を備えていた。しかし、図12に示すガス処理システム1000は、第1戻り系統15を備えていない。従って、熱交換器9での熱交換後の処理ガスA2は、格納容器1の内部空間1aに戻されることなく、大気に排出される。一方で、格納容器1の内部空間1aには、不活性ガス供給装置61による不活性ガスA4が封入される。
【0072】
ガス処理システム1000によれば、処理ガスA3の大気への排出前の処理ガスA2が有する熱を被処理ガスA1に伝熱するため、加熱器4での加熱コストを削減できる。また、熱交換後の処理ガスA3はそのまま大気に排出されるため、配管の引き回しを簡略化できる。
【0073】
図13は、第11実施形態のガス処理システム1100の系統図である。ガス処理システム1100は、酸素除去装置8をバイパスする第1戻り系統28を備える。第1戻り系統15と第1戻り系統16aとは、第1戻り系統28によって直接接続される。第1戻り系統28は流量調整弁25を備える。また、第1戻り系統15は、酸素除去装置8を遮断可能な流量調整弁26,27を備える。流量調整弁26は、酸素除去装置8のガス流れ下流側に配置される。流量調整弁27は、酸素除去装置8のガス流れ上流側に配置される。
【0074】
格納容器1での不明の開口部(図示しない)から内部空間1aに空気A0が流入するものの、その流入量が少なく、格納容器1の気密性が比較的高いといえる場合がある。この場合、初期に酸素が除去されれば、その後の格納容器1の内部空間1aの酸素濃度は十分に低いと考えられ、処理ガスA2の酸素濃度も低くなる。そこで、酸素濃度伝送器84の測定値が予め定められた閾値以下の場合には、流量調整弁25は開弁し、流量調整弁26,27は閉弁(図13においてドット柄で示す)する。これにより、酸素除去装置8がバイパスされ、熱交換器9では処理ガスA2の熱のみで被処理ガスA1が加熱される。一方で、例えば事故対応時、原子炉解体作業時等、格納容器1内の酸素濃度が増加し、酸素濃度伝送器84の測定値が予め定められた閾値を越えた場合には、流量調整弁25は閉弁し、流量調整弁26,27は開弁する。これにより、酸素除去装置8による処理ガスA2の酸素除去が行われる。
【0075】
ガス処理システム1100によれば、格納容器1の内部空間1aの酸素濃度(処理ガスA2の酸素濃度でもよい)に応じて、酸素除去装置8の接続の有無を切り替えることができる。これにより、酸素濃度が低いとき、酸素除去装置8の流通に起因する圧力損失の発生を抑制でき、送風機6の消費エネルギを削減できる。
【符号の説明】
【0076】
1 格納容器
10 送風機
100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100 ガス処理システム
11,17,24,25,26,27,32,33,35,36,51 流量調整弁
12,34,52, 系統
14 排気系統
15,15a,15b,16,16a,16b,16c,28 第1戻り系統
18 封入口
1a 内部空間
2,2a,2b,2c 抽気系統
23 排水系統
3 凝縮器
37 第2戻り系統
38 水接触機構
39 噴霧水
4 加熱器
40 酸素除去槽
41 酸素吸着材料
5 フィルタ
50 運転制御装置
53 逆止弁
55 伝熱管
56 冷却装置
6 送風機
61 不活性ガス供給装置
62 圧力スイング吸着装置
71 圧力伝送器
72,76,78 温度伝送器
75,79 流量伝送器
77,84 酸素濃度伝送器
8 酸素除去装置
9 熱交換器
99 圧力容器
A0 空気
A1 被処理ガス
A2,A3 処理ガス
A4 不活性ガス
A5 酸素ガス
W2 水
W1,W3 凝縮水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13