(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】蛍光合成レチノイド
(51)【国際特許分類】
C07D 215/14 20060101AFI20221118BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20221118BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20221118BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221118BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20221118BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221118BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221118BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20221118BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20221118BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221118BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221118BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221118BHJP
C07D 215/48 20060101ALI20221118BHJP
C07D 417/04 20060101ALI20221118BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C07D215/14 CSP
A61K31/47
A61K31/4709
A61K49/00
A61P1/00
A61P1/02
A61P11/00
A61P11/04
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/10
A61P17/14
A61P19/08
A61P25/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P43/00 111
C07D215/48
C07D417/04
G01N33/48 M
(21)【出願番号】P 2017538469
(86)(22)【出願日】2015-10-09
(86)【国際出願番号】 GB2015052956
(87)【国際公開番号】W WO2016055800
(87)【国際公開日】2016-04-14
【審査請求日】2018-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-04
(32)【優先日】2014-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2014-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517123380
【氏名又は名称】ハイ フォース リサーチ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ホワイティング アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マルダー トッド
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-507531(JP,A)
【文献】特開平3-167174(JP,A)
【文献】特開昭58-206567(JP,A)
【文献】特開昭60-36461(JP,A)
【文献】特表平8-505852(JP,A)
【文献】国際公開第98/07716(WO,A2)
【文献】特表2002-515025(JP,A)
【文献】特表平7-503733(JP,A)
【文献】特開平3-120273(JP,A)
【文献】特開昭63-264578(JP,A)
【文献】国際公開第00/59861(WO,A1)
【文献】特表2010-503615(JP,A)
【文献】特表2014-527083(JP,A)
【文献】特表2012-533520(JP,A)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、(1997)、7(18)、pp.2373-2378
【文献】Organic & Biomolecular Chemistry、(2013)、11(14)、pp.2323-2334
【文献】REGISTRY(STN)、[online]、RN 1575541-43-3、2014年3月28日
【文献】REGISTRY(STN)、[online]、RN 1369458-98-9、2012年4月17日
【文献】REGISTRY(STN)、[online]、RN 1347651-75-5、2011年12月2日
【文献】REGISTRY(STN)、[online]、RN 1266378-46-4、2011年3月4日
【文献】The Journal of Organic Chemistry、(1990)、55(13)、pp.3984-3991
【文献】BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS、(1991)、179(1)、pp.259-265
【文献】REGISTRY(STN)、[online]、RN 1028306-88-8、2008年6月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,A61K
CAplus(STN)、REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物によって放出される蛍光を検出することによって、前記化合物の分布を画像化することによる、細胞分化またはアポトーシスをモニターするための、式Iの化合物を有効成分として含有する医薬。
式Iの化合物:
【化1】
式中、
R
1は、水素、C1-10のアルキルまたはアシルを示し;
R
2、R
3、R
4およびR
5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-4アルキルであるか、または、一緒になって、R
2およびR
4、または、R
3およびR
5の一対は、単結合を示し;
R
6とR
7は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、C1-4アルキルまたは、一緒になって、R
4およびR
6、または、R
5およびR
7の一対は、単結合を示し、または、R
6およびR
7が、一緒になって、以下の基を示す:
=CR
11R
12;
ただし、R
2、R
3、R
4およびR
5からの一対が、単結合を示す場合、R
4およびR
6または、R
5およびR
7の一対は、単結合を示さない。
R
8およびR
9は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、C1-10アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン、トリフルオロアルキル、シアノ、ニトロ、-NR
aR
b、-OR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-OC(O)R
a、-S(O)R
aR
b、および-C(O)NR
aR
bを示す。
R
11およびR
12は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-10アルキルを示し、そして、
R
aおよびR
bは、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-10アルキルを示し;
R
10は、基II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、XまたはXIを示す:
【化2-1】
【化2-2】
式中、R
13は、水素またはC1-10アルキルを示す;
ただし、R
2およびR
4、R
3およびR
5、R
4およびR
6またはR
5およびR
7の一対は、単結合を示す;
およびこれらの立体異性体または幾何異性体;
フリー体または塩。
【請求項2】
式Iの化合物によって放出される蛍光を検出することによって、前記化合物の分布を画像化することによる、人体から収集された幹細胞の細胞分化またはアポトーシスをモニターする方法。
式Iの化合物:
【化1】
式中、
R
1は、水素、C1-10のアルキルまたはアシルを示し;
R
2、R
3、R
4およびR
5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-4アルキルであるか、または、一緒になって、R
2およびR
4、または、R
3およびR
5の一対は、単結合を示し;
R
6とR
7は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、C1-4アルキルまたは、一緒になって、R
4およびR
6、または、R
5およびR
7の一対は、単結合を示し、または、R
6およびR
7が、一緒になって、以下の基を示す:
=CR
11R
12;
ただし、R
2、R
3、R
4およびR
5からの一対が、単結合を示す場合、R
4およびR
6または、R
5およびR
7の一対は、単結合を示さない。
R
8およびR
9は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、C1-10アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン、トリフルオロアルキル、シアノ、ニトロ、-NR
aR
b、-OR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-OC(O)R
a、-S(O)R
aR
b、および-C(O)NR
aR
bを示す。
R
11およびR
12は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-10アルキルを示し、そして、
R
aおよびR
bは、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-10アルキルを示し;
R
10は、基II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、XまたはXIを示す:
【化2-1】
【化2-2】
式中、R
13は、水素またはC1-10アルキルを示す;
ただし、R
2およびR
4、R
3およびR
5、R
4およびR
6またはR
5およびR
7の一対は、単結合を示す;
およびこれらの立体異性体または幾何異性体;
フリー体または塩。
【請求項3】
4-2-[2,4,4-トリメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,4-ジヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、新規化合物、それらの使用およびそれらに関連する治療方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、新規な蛍光性合成レチノイド化合物、および細胞分化の制御におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、本発明の新規化合物を用いた医学的治療方法を提供する。
【0003】
[発明の背景]
ビタミンA(レチノール)およびその誘導体は、レチノイドとして知られる化合物のクラスに属する。レチノイドは、胚発生から成人の恒常性までの多くの重要な生物学的経路および、幹細胞増殖、分化およびアポトーシスのような幹細胞の発展の多くの局面を制御することに関与するシグナリング分子の重要なクラスである。
【0004】
レチノイドは、ビタミンAと、構造的および/または機能的に関連している。そして、全トランス-レチノイン酸(ATRA)を含む、その多くが、生物学的活性を有する。ATRAは、最も豊富な内在性レチノイドであり、そして、長年にわたって広く研究されてきた。ATRAは、生理学的および実験的条件下で、異性化し、異なる受容体を活性化する異なる異性体を有し、このために、これらの小分子で観察される様々な生物学的効果を示す。
【0005】
レチノイドは、正常および腫瘍細胞の両方で、分化およびアポトーシスを制御する能力のために、レチノイドは、毒性が広範な使用を妨げているが、化学予防剤および化学療法剤として作用する可能性を有する。
【0006】
しかし、ATRAは、特に、光に暴露されると、安定性が乏しい。ATRA化合物は、光に暴露すると、異性化し、そして、分解する。これを克服するために、暗闇の中で、ATRAを保管して作業する努力がなされているが、そのような予防措置は、ATRAの使用に伴うコストを増加させ、そして、問題を完全に緩和しない。さらに、ATRAは、保存時に、光異性化および分解を受けやすいので、単回投与で投与される活性化合物の量を正確に予測することは困難である。安定したレチノイド化合物を合成することによって、ATRAに付随する問題を克服する努力がなされてきた。ATRAは、その共役リンカー基のために、光異性化を受けやすいと一般に考えられている。
【0007】
国際特許出願PCT/GB2007/003237(WO2008/025965)は、良好な安定性を示し、細胞分化を誘導した新規レチノイド化合物を開示した。
【0008】
特に、関心のある1つの化合物は、レインナベート(Reinnervate)として市販されている、EC23(R)であった。
【0009】
【0010】
EC23(R)は、一般的に、光に曝露された場合に、良好な安定性を示すだけでなく、貯蔵時にも、良好な安定性を示す。EC23(R)は、また、代謝分解されやすくないと判明したため、ヒトまたは動物の体内で、比較的に、長い付随した半減期を有することができる。しかし、EC23(R)は、非常に弱い蛍光性であり、そして、生物学的サンプルに損傷を与える可能性のあるUV励起を必要とする。
【0011】
蛍光イメージングは、特に、生物学的文脈において、細胞事象が観察される、生きた細胞において、生物学的プロセスを研究するための強力なツールに、急速になった。単一分子視覚化技術の開発は、そのような用途のための蛍光顕微鏡の有用性を大幅に高め、それらの内在性環境における、タンパク質および小分子の追跡を可能にした。
【0012】
蛍光は、光、または、他の電磁放射線を吸収した物質が、電気的に励起された状態から、光を放出する、ルミネセンスの形態である。蛍光では、放出される光は、通常、吸収された光よりも、より長い波長(およびより低いエネルギー)である。この現象は、ストークス シフトとして知られており、そして、吸収された光子が放出される前に、第一励起状態の最低エネルギーレベル(S1)に、通常は、振動緩和を介する、エネルギーの損失に起因する。量子収率は、蛍光過程の効率を与える:それは、放出された光子の数の、吸収された光子の数に対する比率(最大値=1、すなわち、すべての吸収された光子は、光子の放射を齎す)として定義される。蛍光減衰は、一般に、指数関数的であり、そして、蛍光寿命は、基底状態に戻る緩和を受ける前に、励起状態にある分子の半減期の測定を指す。燐光においては、より長い励起状態の寿命が観察され、次いで、励起三重項状態からの放射性崩壊(すなわち、光子放出)が観察される。
【0013】
ドキソルビシンは、白血病、ホジキンリンパ腫、膀胱癌、乳癌、胃癌、肺癌、卵巣癌および甲状腺癌を含む、広範囲の癌の治療に使用される化学療法薬である。その分子の両親媒性および両性の性質は、薬物が細胞膜およびタンパク質の両方に結合できることを意味する。
【0014】
【0015】
化合物の固有の蛍光のために、ドキソルビシンは、また、蛍光イメージングの分野で一般的な研究ツールとなり、したがって、その分布は、様々な細胞および組織において視覚化された。ドキソルビシンの蛍光強度は、その濃度および微小環境に依存することが判明しているので、卵巣癌であるA2780細胞における薬剤の細胞内取り込みおよび輸送は、DNA、ヒストン、リン脂質などの細胞成分とのその相互作用を考慮することによって特徴付けることができた。
【0016】
現在、ドキソルビシンは、顕著な生物学的活性とともに、内因性蛍光発光を有する唯一の既知の低分子である。したがって、幹細胞発生の低分子モジュレーターに蛍光を組み込むことができれば、それ自体が強力なプローブとなり、そして、蛍光色素、タンパク質、量子ドット(quantum dots)の使用の必要性を否定するだろう。特に、生細胞追跡技術の使用は、細胞の取込みおよび局在化に関する貴重な情報を提供し、それによって、レチノイド活性および代謝に関する新しい洞察を提供する。さらに、それは、もはや、興味のある分子に大きい蛍光体を付する必要がないであろうから、後者は、その自然環境の生理学的な文脈で、続いて行ってもよい。さらに、有用な蛍光特性を有し得る不活性蛍光プローブを、生成することも有利であり得る。
【0017】
したがって、改良された蛍光のイメージング(imaging)のため、良好な貯蔵安定性を示し、体内において、比較的長い半減期を有する、代謝分解を受け難い、新規なフルオロフォアが必要とされている。従って、本発明の目的は、安定な蛍光レチノイドを提供することである。
【0018】
[発明の概要]
本発明は、高度に共役構造を提供するために、電子供与性の窒素を有する、新規な分子システムの調製により、EC23(R)型分子の蛍光バージョンを提供する。
【0019】
したがって、本発明の第1の態様によれば、式Iの化合物が提供される。
式中、
R
1は、水素、C1-10のアルキルまたはアシルを示し;
R
2、R
3、R
4およびR
5は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-4アルキルであるか、または、一緒になって、R
2およびR
4、または、R
3およびR
5の一対で、単結合を示し;
R
6とR
7は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、C1-4アルキルまたは、一対になって、R
4およびR
6、または、R
5およびR
7の一対で、単結合を示し、または、R
6およびR
7が、一緒になって、以下の基を示す:
=CR
11R
12;
ただし、R
2、R
3、R
4およびR
5からの一対が、単結合を示す場合、R
4およびR
6または、R
5およびR
7の一対は、単結合を示さない。
R
8およびR
9は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素、C1-10アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン、トリフルオロアルキル、シアノ、ニトロ、-NR
a R
b、-OR
a、-C(O)R
a、-C(O)OR
a、-OC(O)R
a、-S(O)R
aR
b、および-C(O)NR
aR
bを示す。
R
11およびR
12は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-10アルキルを示し、そして、
R
aおよびR
bは、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素またはC1-10アルキルを示し;
R
10は、基II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、XまたはXIを示す:
【0020】
式中、
R13は、水素またはC1-10アルキルを示す;
およびこれらの異性体;
フリー体または塩。
【0021】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、完全飽和、分枝、非分枝または環状炭化水素部分、すなわち、第一級、第二級または第三級アルキル、または、場合により、シクロアルキルまたはシクロアルキルで置換されたアルキルを意味し、それらはまた、飽和でも、不飽和のアルキルでもよい。特に断らない限り、好ましくは、アルキルは、1~10個の炭素原子、より好ましくは1~7個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を含む。アルキルの代表例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、N-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、オクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられ、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される用語「アリール」は、水素と炭素のみからなり、6~19個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を含有する、芳香族単環式または多環式炭化水素環系を指し、環系は部分的に飽和していてもよい。アリール基としては、フルオレニル、フェニル、インデニルおよびナフチルのような基が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で特に明記しない限り、用語「アリール」または接頭辞「ar-」(「アラルキル」などの)は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、アミジン、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルからなる群から選択される1以上の置換基によって置換されていてもよいアリールラジカルを含むものを意味する。好ましいアリール基は、必要に応じて置換されたフェニルまたはナフチル基である。
【0023】
アリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式、好ましくは一、二または三環式、より好ましくは単環式または二環式であってもよい。
【0024】
本明細書で定義される、本発明の1つの態様において、R10は、基II、IIIまたはIVである。
本発明の一つの局面では、R1は、C1-10アルキル、好ましくは、C1-3アルキルである。
【0025】
本発明の一の態様では、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ水素である。
【0026】
本発明の一の態様では、R2およびR4または、R3およびR5の一対は単結合を表す。
【0027】
本発明の一つの態様で、R6およびR7は、同一または異なって、R6およびR7は、それぞれ、C1-4アルキル、例えばメチルを表す。
【0028】
本明細書で使用する「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
【0029】
本明細書で定義される本発明の別の態様において、R10は、基IIである。
【0030】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基IIIである。
【0031】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基IVである。
【0032】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基Vである。
【0033】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基VIである。
【0034】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基VIIである。
【0035】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基VIIIである。
【0036】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基IXである。
【0037】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基Xである。
【0038】
本明細書で定義される本発明の別の態様では、R10は、基XIである。
【0039】
-CO2R13部分は、好ましくは、4位であり、すなわち、エチニル基に対してパラ位にあり、好ましくは、R13は、水素である。
【0040】
挙げることのできる、式Iの特定の化合物は、以下からなる群から選択されるものを含む。
4-2-[4,4-ジメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸(9);および、
6-(1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)-ナフタレン-2-カルボン酸 メチルエステル(11);
3-[4-(1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)-フェニル]-アクリル酸 メチルエステル(13);および、
4-2-[2,4,4-トリメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,4-ジヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸(17);
および、その異性体;
フリー体または塩。
【0041】
ATRAのようなレチノイド化合物は、貯蔵時に不安定である。特に、このような化合物は、300から400nm領域の光に暴露されると、光異性化および分解を受けやすい。驚くべきことに、本発明の式Iの化合物は、光に暴露されても安定であり、ATRAよりはるかに少ない光異性化および分解を受ける。一般に、式1の化合物は、ATRAのようなレチノイドよりはるかに優れた安定性を有し、特に、式1の化合物は、光異性化の影響をはるかに受けにくい。一般的に、3日間、300から400nmの波長を有する光への曝露後、本発明の化合物は、はるかに少ない異性化および分解を受ける。典型的には、3日間、300から400nmの波長の光への曝露後、本発明の化合物の少なくとも60重量%(ATRAの40重量%未満と比較して)が残存した。
【0042】
典型的には、本発明の化合物は、ヒト神経幹細胞から神経サブタイプへのような、幹細胞の分化を誘導する。一般に、本発明の化合物は、ATRAのような既知のレチノイドと同程度またはそれ以上の程度で、細胞の分化を誘導する。
【0043】
幹細胞、例えば、ヒト胎児脳組織の腹側中脳から誘導された細胞、を含むサンプルを、本発明の化合物で補充された培地に曝露した後、神経マーカーを発現する分化細胞の数を実質的に増加させることができる。典型的には、サンプルは、このような培地に約7日間曝露され得る。
【0044】
本発明による好ましい使用では、幹細胞の、少なくとも1つの分化した細胞型への分化において、本明細書で定義される化合物または組成物の使用が提供される。
【0045】
幹細胞は、典型的には、ヒトまたは動物の全能性幹細胞(totipotent stem cell)、特に、例えば、哺乳動物の全能性細胞(totipotent stem cell)(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)のような非ヒト全能性幹細胞(totipotent stem cell)であり得る。
【0046】
あるいは、幹細胞は、ヒトまたは動物の多能性幹細胞(pluripotent stem cell)、好ましくは、ヒト多能性幹細胞(pluripotent stem cell)であってもよい。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記幹細胞は、ヒトまたは動物の多分化能性幹細胞(multipotent stem cell)である。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、前記多分化能幹細胞は、造血幹細胞、神経幹細胞、骨幹細胞、筋幹細胞、間葉系幹細胞、皮膚幹細胞(例えば、皮膚、胃腸粘膜、腎臓、膀胱、乳腺、子宮、前立腺および、脳下垂体(pituitary)のような内分泌腺などの臓器から誘導される)、外胚葉性幹細胞(ectodermal stem cell)、中胚葉性幹細胞(mesodermal stem cell)または内胚葉性幹細胞(endodermal stem cell)(例えば、肝臓、膵臓、肺および血管のような臓器に由来する)からなる群から選択される。
【0049】
本発明のさらなる態様によれば、幹細胞の分化を誘導する方法を提供するものであって、
(i)前記幹細胞を維持するのに適した、細胞培養培地中に、幹細胞の調製物を形成する工程であって、前記培養培地が、式Iの化合物を含む工程;そして
(ii)前記幹細胞を、少なくとも1つの分化した細胞型に分化させることを可能にする条件下で、培養することを含む方法、からなる。
【0050】
本発明の好ましい方法において、前記幹細胞は、多分化能性または多能性幹細胞である。一実施形態によれば、幹細胞は全能性幹細胞ではない。好ましくは、前記幹細胞は、ヒト起源である。
【0051】
本発明の好ましい方法において、前記分化した細胞は、ケラチノサイト、線維芽細胞(例えば、真皮、角膜、腸粘膜、口腔粘膜、膀胱、尿道、前立腺、肝臓)、上皮細胞(例えば、真皮、角膜、腸粘膜、口腔粘膜、膀胱、尿道、前立腺、肝臓)、神経膠細胞または神経細胞、肝細胞、間充織細胞、筋細胞(心筋細胞または筋管細胞)、腎臓細胞、血液細胞(例えば、CD4+リンパ球、CD8+リンパ球)、膵臓細胞、または内皮細胞からなる群から選択される。
【0052】
一般的に、培地は、本発明の化合物の0.1乃至20μΜの濃度を有し;典型的には、約10μMである。
【0053】
本発明の好ましい方法において、この方法は、可視光および/またはUV光、50℃を超えない温度、および/または、例えば、空気またはDMSOのような、酸化試薬の存在下に行われる。本発明の方法は、ex vivo、in vivoまたはin vitroで行うことができる。
【0054】
本発明の化合物は、良好な安定性を示し、そして、細胞分化および細胞アポトーシスを制御するために使用することができる。
【0055】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、レチノイド治療から利益を得る疾患または状態の治療または予防における、式Iの化合物の使用が提供される。
【0056】
式Iの化合物は、良好な安定性を示し、そして、ATRAよりもはるかに光異性化を受けにくく、一方、ATRAと同程度またはそれ以上の程度で、細胞分化およびアポトーシスを制御する。
【0057】
本発明のさらなる態様によれば、細胞分化またはアポトーシスの制御に使用するための、式Iの化合物が提供される。
【0058】
疾患または状態は、典型的には、細胞分化またはアポトーシスの制御から利益を得る。
【0059】
レチノイド治療から利益を得ることができる、疾患または状態には、癌(例えば、神経新生物)、ざ瘡、皮膚創傷(火傷、UV損傷、老化皮膚など)などの皮膚疾患が含まれる。
【0060】
本発明の化合物は、正常および腫瘍細胞における、分化およびアポトーシスを制御する、それらの能力のために、化学療法剤または化学予防剤として作用し得る。特に、本発明の化合物は、皮膚、口腔、喉頭、肺、膀胱、外陰部、乳房、消化管のものを含む、前癌性または癌性状態の、治療または予防に特によく適している。本発明の化合物は、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌(頭頸部、膀胱腫瘍のものを含む)の治療または予防に使用することができる。本発明の化合物の使用による、治療または予防に、特に、適した癌には、骨髄性白血病などの白血病、特に、急性前骨髄球性白血病が含まれる。
【0061】
なお、本発明の化合物は、インビトロでの細胞の形質転換を抑制し、そして、発癌を阻害すると考えられている。したがって、本発明の化合物は、腫瘍促進および/または腫瘍発生に対する抑制効果を示すと考えられる。化学療法剤として使用する場合、本発明の化合物は、一般に、明らかな悪性腫瘍の臨床的結果を低減または回避して、発癌性段階を停止または逆行させる。
【0062】
なお、本発明の化合物は、in vitroおよびin vivoにおいて、増殖、分化、および、正常、前悪性、および悪性細胞のアポトーシスを調節するそれらの能力に起因して、化学療法および/または化学予防の特性を示すと考えられている。
【0063】
本発明のさらなる態様によれば、細胞増殖、例えば、皮膚または神経細胞増殖の促進における、本発明の化合物の使用が提供される。
【0064】
本発明のさらなる態様によれば、組織の健康および発達を促進するため、特に、ヒトまたは動物の体の、皮膚、骨、神経、歯、毛および/または粘膜の健康および発達の促進において、本発明の化合物の使用が提供される。本発明の化合物は、老化の徴候(特に、しわおよび老人斑)、ざ瘡のような皮膚状態(特に、重度および/または難治性ざ瘡)、乾癬、ストレッチ マーク、毛孔性角化症、気腫、脱毛症などの予防または治療に使用することができる。
【0065】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の化合物は、眼の疾患または状態の治療または予防に使用され得るか、または視力を維持または最大化するために使用され得る。
【0066】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の化合物は、抗酸化剤として、特に、ヒトまたは動物の体内または体表での使用のための使用することができる。
【0067】
ヒトまたは動物の体に投与される、本発明の化合物の投与量は、意図する用途に依存する。例えば、局所適用に適した製剤は、一般に、本発明の化合物0.025乃至1重量%、特に、0.025乃至0.1重量%を含む。化学療法用途のために、20乃至80ミリグラム/m2/日の用量が通常で、好適には、40乃至50ミリグラム/m2/日であり、より好適には、約45ミリグラム/m2/日である。
【0068】
本明細書に記載のように、本発明の化合物は、本質的に蛍光性である。
【0069】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載の式Iの化合物を含むプローブが提供される。
【0070】
本発明は、さらに、有効量の式Iの化合物を投与し、蛍光医学イメージングによって、式Iの化合物によって放出される蛍光を検出することを含む、細胞分化またはアポトーシスをモニタリングする方法を提供する。
【0071】
本発明は、また、蛍光寿命マッピング顕微鏡法(FLIM)を含むが、これに限定されるものではない、技術を使用して、化合物によって放出される蛍光を検出することにより、式Iの化合物の分布を画像化することによって、細胞の分化またはアポトーシスをモニターする方法を提供する。
【0072】
別の局面において、本発明は、また、コヒーレント アンチ-ストークス ラマン散乱(CARS)および励起されたラマン散乱(SRS)を含むが、これに限定されるものではない、技術を使用して、励起されたラマン散乱信号を検出することにより、式Iの化合物の分布を画像化することによって、細胞の分化またはアポトーシスをモニターする方法を提供する。
【0073】
本発明は、また、ex vivoで、in vivoまたはin vitroで、式Iの化合物の濃度マップの作製を可能にする、ラマン散乱信号の多変量曲線解像度(MCR)と最小二乗分析を含むが、これに限定されるものではない、技術を使用して、式Iの化合物の、細胞内または細胞外の、濃度と分布をモニターする方法を提供する。
【0074】
また、本発明は、式Iの化合物が発する蛍光を、式Iの化合物から励起された、ラマン散乱信号と、重ね合わせる(superimposing)方法を提供する。この放出される蛍光を重ね合わせる(superimposing)方法は、本明細書に記載された、細胞分化またはアポトーシスをモニターする方法において有用である。
【0075】
式Iの化合物は、また、化合物が異なる細胞タイプに対して選択的に使用され得ること、すなわち、可視、蛍光および/またはラマンイメージングが、本発明の合成分子に、より応答性のある細胞型を同定するために使用され得るという点で、有意性がある。これは、セル識別方法を提供することができる。本発明の化合物の蛍光寿命を観察することは、局所環境および潜在的に、化合物の進行する作用に関する情報を提供することができる。また、本発明の蛍光性化合物で処理された細胞は、次いで、他の分子を用いて処理することができ、例えば、蛍光化合物を、「強制(displace)」して、とりわけ、薬物スクリーニングのために有用であり得る、相対的親和性の尺度を与えることができる。したがって、本発明の蛍光化合物は、他の適切に知られている化合物と組み合わせて、使用することができる。
【0076】
本発明のさらなる態様によれば、1種以上の本発明の化合物を、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む組成物が提供される。
【0077】
本発明の組成物は、また、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、アジュバントまたは希釈剤を含む。「薬学的に許容される」という句は、健全な医学的判断の範囲内で、または合理的な利益/リスク比に見合う、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症のない、ヒト、または、場合によっては、動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物および/または剤形を指すために、本明細書において、用いられる。
【0078】
本発明の組成物が、経口投与のために調製される場合、上記の化合物は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と一般に組み合わされて、医薬製剤または単位剤形を形成する。
【0079】
経口投与の場合、組成物は、粉末、顆粒形成物、溶液、懸濁液、エマルジョンの形態であってもよく、またはチューインガムからの活性成分の摂取のための、天然または合成ポリマーまたは樹脂であってもよい。組成物は、また、ボーラス(bolus)、口内速溶(electuary)またはペースト(paste)として提供されてもよい。本発明の経口投与組成物は、また、持続的放出のために製剤化することもでき、例えば、上記の化合物は、コーティング、マイクロカプセル化、または持続送達装置内に他の方法で配置することができる。そのような製剤中において、全有効成分は、製剤の0.1乃至99.9重量%を含む。
【0080】
したがって、本発明の化合物を含む、1つ以上の適切な単位剤形は、経口、非経口(皮下、静脈内、筋肉内および腹腔内を含む)、直腸、経皮(dermal)、経皮(transdermal)、胸腔内、肺内、粘膜、眼内および鼻腔内(呼吸器系)を含む、様々な経路によって投与することができる。組成物は、また、脂質製剤として、または、例えば、マイクロカプセル化を用いた持続放出のために、製剤化されてもよい。製剤は、適切な場合、好ましくは、別個の単位剤形で提供されてもよく、そして、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。このような方法は、治療剤を、液体担体、固体マトリックス、半固体担体、微細固体担体またはそれらの組み合わせと混合し、次いで、必要に応じて、所望の送達系に製品を導入または成形する工程を含み得る。
【0081】
本発明の化合物を含む医薬製剤は、周知で容易に入手可能な成分を用いて、当該分野で公知の手順によって調製することができる。例えば、化合物は、一般的な賦形剤、希釈剤または担体を用いて製剤化し、そして、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、粉末、エアロゾルなどに形成することができる。そのような製剤に適した賦形剤、希釈剤および担体の例には、緩衝剤だけではなく、例えば、デンプン、セルロース、糖類、マンニトールおよびケイ酸誘導体のような充填剤および増量剤、が含まれる。
【0082】
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポリビニルピロリドンのような結合剤を、また、含むこともできる。保湿剤、例えば、グリセロール、例えば、炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムのような崩壊剤を含めることができる。例えば、パラフィンのような溶解を遅延させるための薬剤も、また、含有させることができる。第4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤も、また、含めることができる。セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの界面活性剤を含めることができる。カオリンおよびベントナイトのような吸着性担体を添加することができる。滑石、例えばタルク、ステアリン酸カルシウムおよびマグネシウム、および固体のポリエチルグリコールのような滑沢剤も、また、含まれ得る。防腐剤を添加することもできる。本発明の組成物は、例えば、セルロースおよび/またはセルロース誘導体のような増粘剤も含有することができる。これらは、また、キサンタン、グアーまたはカルボガムまたはアラビアゴムなどのガム、あるいは、代わりに、ポリエチレングリコール、ベントンおよびモンモリロナイトなどを含み得る。
【0083】
例えば、本発明の化合物を含有する錠剤またはカプレットは、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムのような緩衝剤を含むことができる。適当な緩衝剤は、また、酢酸の塩、クエン酸の塩、ホウ酸の塩およびリン酸の塩を含み得る。カプレットおよび錠剤は、また、セルロース、アルファ化デンプン(pregelatinised starch)、二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微晶質セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、トウモロコシデンプン、鉱油、ポリプロピレングリコール、リン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの不活性成分を含有できる。本発明の少なくとも1つの化合物を含有する、硬質または軟質ゼラチンカプセルは、ゼラチン、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、および二酸化チタンなどの不活性成分、ならびに、ポリエチレングリコール(PEG)および植物油のような液体ビヒクルを含むことができる。さらに、本発明の1つ以上の化合物を含有する腸溶性コーティングされたカプレットまたは錠剤は、胃における崩壊に抵抗し、十二指腸のより中性からアルカリ性の環境で溶解するように設計されている。
【0084】
本発明の治療化合物は、また、便利な経口投与のためのエリキシル剤または溶液として、または、例えば、筋肉内、皮下、腹腔内または静脈内経路による非経口投与に適した溶液として製剤化することもできる。本発明の治療用化合物の医薬製剤は、また、水性または無水の溶液または分散液の形態、またはエマルジョンもしくは懸濁液もしくは軟膏の形態を取ることができる。
【0085】
したがって、治療化合物は、非経口投与のために製剤化され得(例えば、ボーラス注射または連続注入などの注射による)、そして、アンプル、予備充填注射器、小容量注入容器または複数回投与の、単位用量形態で提供され得る。上記のように、剤形の貯蔵寿命を維持するのを助けるために、防腐剤を添加することができる。活性化合物および他の成分は、懸濁液、溶液または、油性または水性ビヒクルによる乳濁液を形成してもよく、そして、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような、製剤用試薬を含有してもよい。あるいは、活性化合物および他の成分は、粉末形態であってもよく、無菌固体の無菌単離によって、または使用前に、適切なビヒクル(例えば、無菌の発熱物質を含まない水)を用いて構成するための溶液からの凍結乾燥によって得られる。
【0086】
酸化防止剤、界面活性剤、他の防腐剤、フィルム形成性、角質溶解性またはコメドリック性の薬剤(keratolytic or comedolytic agents)、香料(perfumes)、香料(flavourings)および着色料から選択される補助剤を、必要に応じて、添加することが可能である。例えば、t-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびα-トコフェロールおよびその誘導体などの抗酸化剤を添加することができる。
【0087】
これらの製剤は、当技術分野において周知である、薬学的に許容される担体、ビヒクルおよび補助剤を含むことができる。
【0088】
例えば、生理学的観点から許容され、水に加えて、アセトン、酢酸、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、「Dowanol(R)」の名称で販売されている製品のようなグリコールエーテル、ポリグリコールおよびポリエチレングリコール、短鎖酸のC1~C4アルキルエステル、乳酸エチルまたはイソプロピル、「ミグリオール(R)」の名称で販売されている製品のような脂肪酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、動物、鉱物および植物の油およびポリシロキサンのような、溶媒から選択された、一つ以上の有機溶媒を使用して、溶液を調製することが可能である。
【0089】
好ましくは、組成物は、上記の1つ以上の化合物を含む溶媒または希釈剤の形態である。溶媒または希釈剤は、酸の溶液、ジメチルスルホン、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン、2-n-ノニル]、3-ジオキソランおよびエチルアルコールを含むことができる。好ましくは、溶媒/希釈剤は、酸性溶媒、例えば、酢酸、クエン酸、ホウ酸、乳酸、プロピオン酸、リン酸、安息香酸、酪酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸または酒石酸である。
【0090】
本発明の医薬製剤は、任意成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化剤または乳化剤、および当該技術分野で利用可能なタイプの塩を含むことができる。そのような物質の例は、生理学的に緩衝された食塩溶液および水などの通常の生理食塩溶液を含む。本発明の医薬製剤において有用である、担体および/または希釈剤の、特定の非限定的な例としては、水および、リン酸緩衝生理食塩水溶液のpHが7.0-8.0のような、生理学的に許容される緩衝食塩溶液を含む。
【0091】
溶媒は、酢酸溶液を含むことができる。溶媒は、例えば、酢酸溶液、例えば、酢酸の1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.05%または0.01%w/w未満の酸の濃度で組成物中に存在してもよい。
【0092】
本発明の組成物は、1つまたは複数の追加の治療薬を含んでいてもよい。例えば、本発明の組成物が、癌の治療または予防において、有用である場合、1つ以上の追加の化学療法剤およびまたは化学予防剤が含まれていてもよい。組成物が、スキンケアに有益である場合、1つまたは複数の保湿または抗菌剤のような、1つ以上の追加のスキンケア剤を、使用することができる。
【0093】
また、本発明の化合物は、持続放出剤形などの製剤によく適している。製剤は、それらが、おそらくある期間にわたって、例えば、腸管または気道の特定の部分で、活性化合物を放出するように構成することができる。コーティング、エンベロープ、および保護マトリックスは、例えば、ポリ乳酸 ポリグリコール酸(polylactide-glycolates)、リポソーム、マイクロエマルジョン、微小粒子、ナノ粒子、またはワックスなどのポリマー物質から、製造することができる。これらのコーティング、エンベロープ、および保護マトリックスは、例えば、ステント、カテーテル、腹膜透析チューブ(peritoneal dialysis tubing)、排出装置等の、コート留置デバイス(indwelling devices)に有用である。
【0094】
局所投与の場合、活性成分は、標的領域への直接適用のために、当該技術分野で知られているように製剤化することができる。主として、局所適用のために調整された形態は、例えば、クリーム、乳液、ゲル、粉末、分散液またはマイクロエマルジョン、多かれ少なかれ増粘されたローション、含浸パッド、軟膏またはスティック、エアロゾル製剤(例えば、スプレーまたは泡)、石鹸、洗剤、ローションまたは石鹸のケーキの形態をとる。この目的のための他の従来の他の形態は、創傷包帯、コーティングされた包帯または他のポリマー被覆、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゼリー、スプレー、およびエアロゾルが挙げられる。従って、本発明の治療用化合物は、経皮投与用のパッチまたは包帯を介して送達することができる。あるいは、治療用化合物は、例えば、ポリアクリレートまたはアクリレート/酢酸ビニル共重合体などの、接着性ポリマーの一部であるように製剤化することができる。長期的な適用の場合には、微多孔性および/または通気性バッキングラミネート(backing laminates)を使用することが望ましいかもしれず、その場合、皮膚の水和または浸軟を最小限に抑えることができる。バッキング層(backing layerは、所望の保護および支持機能を提供する、任意の適切な厚さとすることができる。適切な厚さは、一般に、約10から約200μmである。
【0095】
局所投与のための医薬製剤は、処置されるべき適応症または疾患に特異的な、一つ以上の本発明の化合物を、例えば、0.1ミリグラム/ミリリットル乃至10ミリグラム/ミリリットルの間のような、約0.001ミリグラム/ミリリットルから約100ミリグラム/ミリリットルの間、で含有する、例えば、生理学的に許容される緩衝性生理食塩水を含んでいてもよい。
【0096】
軟膏およびクリームは、例えば、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を添加して、水性または油性基剤を用いて製剤化することができる。ローションは、水性または油性基剤を用いて製剤化することができ、一般に、1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、または着色剤も、また、含有するであろう。活性化合物は、また、イオン導入(iontophoresis)を介しても送達することができる。局所製剤中の本発明の治療剤の重量パーセントは、種々の要因に依存するが、一般に、製剤の総重量の0.01重量%から、95%、および、典型的には、0.1から85重量パーセントである。
【0097】
点眼薬または点鼻薬のような滴剤は、また、一つ以上の、分散剤、可溶化剤または懸濁剤をも含む、水性または非水性基剤中に、治療化合物の一つ以上を用いて製剤化することができる。液体スプレーは、ポンピングすることができ、または、加圧パックから、便利に送達される。滴剤は、キャップされたボトルの単純な点眼器を介して、液体内容物を、1滴1滴、送達するように適合されたプラスチックボトルを介して、または特殊な形状の閉鎖物(closure)を介して送達することができる。
【0098】
治療用化合物は、さらに、口または咽喉での局所投与用に製剤することができる。例えば、活性成分はさらに、風味付けした基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを含むキャンディー(lozenge)として;例えばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に組成物を含むトローチ(pastilles)として;そして、適切な液体担体中に本発明の組成物を含む漱口剤として、製剤化することができる。
【0099】
本発明の化合物は、また、気道に投与することができる。したがって、本発明は、また、本発明の方法における使用のための、エアロゾルの医薬製剤および剤形を提供する。一般に、このような剤形は、特定の感染、徴候、または疾患の臨床症状を治療または予防するのに有効な、本発明の少なくとも一つの薬剤の量を含む。本発明の方法に従って治療されている感染症、徴候、または疾患の1つ以上の症状の、いずれかの統計的に有意な減衰が、本発明の範囲内において、そのような感染、徴候、または疾患の治療であると考えらる。
【0100】
あるいは、吸入または吹入(inhalation or insufflation)による投与のために、組成物は、例えば、治療剤およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物である、乾燥粉末の形態をとることができる。粉末組成物は、例えば、カプセルまたはカートリッジ、または、インヘラー、吹入(insufflator)、または定量吸入器を補助で用いて、粉末を投与することができる、例えば、ゼラチンまたはブリスターパックの単位投与剤型で提供することができる。
【0101】
エアロゾルまたは吸入形態で投与される場合、本発明の化合物はまた、水溶液で投与することができる。したがって、他のエアロゾル医薬製剤は、例えば、治療すべき適応症または疾患に特異的な、1つまたは複数の本発明の化合物の、約0.001ミリグラム/ミリリットルおよび約100ミリグラム/ミリリットルの間で含有する、生理学的に許容される緩衝生理食塩水を含んでいてもよい。液体に溶解または懸濁されない上述の化合物の微細に分割された固体粒子の形態の、乾燥エアロゾルも、また、本発明の実施において有用である。本発明の化合物は、散布剤(dusting powders)として製剤化することができ、そして、約1と5μmの間、または2と3ミクロンの間の平均粒子サイズを有する、微細分割粒子を含む。微細に分割された粒子は、当技術分野で周知の技術を用いて、粉砕し、スクリーン濾過することによって調製することができる。粒子は、粉末の形態であることができる、微細な分割材料の所定の量を吸入することによって投与することができる。
【0102】
必要な有効量は、複数回の投与単位の投与により到達することができるので、各剤形の個々のエアゾール用量に含まれる活性成分または成分の単位含有量は、それ自体、特定の感染、徴候、または疾患を治療するために有効な量を含む必要はないことが理解されるであろう。また、有効量は、個々に、または、一連の投与のいずれかで、剤形中の用量よりも少ない使用により達成することができる。
【0103】
吸入による、上部(鼻)または下気道への投与のために、本発明の治療用化合物は、好ましくは、噴霧器または加圧パックまたはエアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含んでもよい。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。
【0104】
また、活性成分は、例えば、一つ以上の鎮痛剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、化学的保護剤、化学療法剤、抗菌剤等のような、他の治療剤と組み合わせても、使用することができる。
【0105】
本発明のさらなる態様によれば、式XIIの化合物と、
【0106】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9は、それぞれ、本明細書に定義されているとおりであり;そして、
Zは脱離基であり、例えば、ハロゲン、擬ハロゲン、ボロン酸またはボロン酸エステルである。
【0107】
式XIIIの化合物とを、
R10H XIII
式中、R10は、本明細書に定義されたとおりである。
を反応させることを含む、本明細書に記載の、式Iの化合物の製造方法が提供される。
【0108】
代替的に、本明細書に記載の式Iの化合物の製造方法は、式XVの化合物と
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9は、それぞれ、本明細書に定義されているとおりである。
式XIVの化合物:
R
10Z XIV
式中、Zは、脱離基、例えば、ハロゲン、擬ハロゲンであり、ボロン酸またはボロン酸エステルである。
とを反応させることを含む。
【0109】
R10が、水素である、式Iの化合物は、本明細書に記載されるように、R10が、アルキルである、式Iの化合物の脱アルキル化により調製することができる。
【0110】
式I、XII、XIIIおよびXIVの化合物は、当業者に公知の方法を用いて、または本明細書に記載される方法によって、調製することができる。このような調製の例は、概略的に示される。
【0111】
【0112】
【0113】
ナフタレンエステル(化合物11)およびアクリル酸エステル化合物(化合物13)は、それぞれ、適当なアリール ボロネートと、適当なナフタレン部分(例えば、6-ブロモ-ナフタレン-2-カルボン酸 メチルエステル)、および適切な桂皮酸エステル(例えば、3-ブロモ-メチル シンナメート)とをカップリングさせることにより調製することができる。
【0114】
アリール ボロネートは、B
2pin
2またはB
2neop
2のいずれかを用いて、5モル%のPd(dppf)Cl
2触媒および、DMSO中の酢酸カリウム塩基の2当量の存在下に、ヨウ化物14の、パラジウムで触媒されたボリル化により調製することができ、電子供与アミノ基に対して、パラ位の選択的官能化のための有効な方法を与え、アリールボロン酸12および10を良好な収率で製造できた。
17のような、ジヒドロキノリン由来化合物は、アミド3の初期グリニャールメチル化、その後、薗頭カップリングおよび鹸化により、調製することができる。
【0115】
本発明は、これから、下記の添付の図面のみを参照しながら、実施例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】
図1は、種々の溶媒の、EC23
(R)の正規化された励起スペクトルを示す。
【
図2】
図2は、種々の溶媒の、300nmで励起した、EC23
(R)の正規化された、発光スペクトルを示す。
【
図3】
図3は、種々の溶剤の、実施例3の化合物9の正規化された、励起のスペクトルを示す。
【
図4】
図4は、275から300ナノメートルの範囲内で励起された、種々の溶剤の、実施例3の化合物9の正規化された、発光スペクトルを示す。
【
図5】
図5は、クロロホルム中の、実施例6の化合物17の正規化された、励起スペクトルを示す。
【
図6】
図6は、378nmで励起した、クロロホルム中の、実施例6の化合物17の正規化された発光スペクトルを示す。
【
図7】
図7は、光の非存在下で、周囲温度で保存した後の、実施例3の化合物9の
1H NMRのスペクトルを示す。
【
図8】
図8は、周囲温度で、72時間、典型的な実験室光で処理した後の、実施例3の化合物9の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図8-1】
図8-1は、ATRA、EC23
(R)およびDMSO-ネスチン染色と比較した、実施例3の化合物9の幹細胞における活性を示す。
【
図8-2】
図8-2は、ATRA、EC23
(R)およびDMSO-CK8染色と比較した、実施例3の化合物9の幹細胞における活性を示す。
【
図8-3】
図8-3は、ATRA、EC23
(R)およびDMSO-TUJ-1染色と比較した、実施例3の化合物9の幹細胞における活性を示す。
【
図8-4】
図8-4は、ATRA、EC23
(R)およびDMSO-Oct 4染色と比較した、実施例3の化合物9の幹細胞における活性を示す。
【
図8-5】
図8-5は、ATRA、EC23
(R)およびDMSO-Sox 2 染色と比較した、実施例3の化合物9の幹細胞における活性を示す。
【
図9】
図9は、ATRA、EC23
(R)およびDMSOと比較した、実施例3の化合物9のフローサイトメトリー評価(flow cytometry evaluation)を示し、幹細胞マーカーのSSEA-3の発現が測定される。
【
図10】
図10は、ATRA、EC23
(R)およびDMSOと比較した、実施例3の化合物9のフローサイトメトリー評価(flow cytometry evaluation)を示し、幹細胞マーカーである、TRA160の発現が測定される。
【
図11】
図11は、ATRA、EC23
(R)およびDMSOと比較した、実施例3の化合物9のフローサイトメトリー評価(flow cytometry evaluation)を示し、幹細胞マーカーである、A2B5の発現が測定される。
【
図11-1】
図11-1は、実施例3の化合物9、ATRA、EC23
(R)およびDMSOで処理された、細胞集団の位相差顕微鏡のイメージ(phase contrast images)を示す。
【
図12】
図12は、1mMの処理濃度で、ATRA、EC23
(R)およびDMSOと比較した、実施例3の化合物9のMTT細胞生存分析を示す。
【
図13】
図13は、10mMの処理濃度で、ATRA、EC23
(R)およびDMSOと比較した、実施例3の化合物9のMTT細胞生存分析を示す。
【
図14】
図14は、濃度範囲にわたって、化合物9で処理されたTERA-2幹細胞の、7日後に共焦点顕微鏡を用いて画像化されたものを示す。
【
図15】
図15は、実施例3の化合物9(10mM)で処理し、そして、8時間後に共焦点顕微鏡を使用して撮像されたたSHSY5Y細胞(神経芽細胞腫)を示す。
【
図16】
図16は、実施例3の化合物9(10mM)で処理し、そして、24時間後に共焦点顕微鏡を用いて撮像された、線維芽細胞を示す。
【
図17】
図17は、実施例3の化合物9(10mM)で、7日間、処理され、4%パラホルムアルデヒドで固定され、そして、共焦点顕微鏡を用いて画像化された、TERA-2幹細胞を示す。
【
図18】
図18は、実施例3の化合物9(10mM)で、5日間、処理された、HaCatケラチノサイト皮膚細胞を示す。
【
図19】
図19は、実施例3の化合物9(10mM)で、5日間、処理され、そして、インボルクリンとK14で染色された、HaCatケラチノサイト皮膚細胞を示す。
【
図20】
図20は、実施例6の化合物17(10mM)で、5日間、処理された、HaCatケラチノサイト皮膚細胞を示す。
【
図21】
図21は、実施例6の化合物17(10mM)で、5日間、処理され、そして、インボルクリンとK14で染色された、HaCatケラチノサイト皮膚細胞を示す。
【
図22】
図22は、実施例3の化合物9のラマンスペクトルを示す。高強度のアセチレンバンドが、2190センチメートル
-1で観察され、例えば、アミド結合のような、生物由来の信号が観察できない、細胞サイレント領域(1800~2800センチメートル
-1)に存在する。
【0117】
図で、DC271へのいかなる参照は、実施例3の化合物9への参照である。
【0118】
以下の略語が、実施例および明細書の他の部分で使用される。
ATRA:全てトランスのレチノイン酸
B2pin2:ビス(ピナコラト)ジボロン
DCM:ジクロロメタン
DMF:N、N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
dppf:1,1’-フェロセンジイル-ビス(ジフェニルホスフィン)
EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸
EtOAc:酢酸エチル
GCMS:ガスクロマトグラフィー-質量分析
h:時間
KOAc:酢酸カリウム
RT:室温
THF:テトラヒドロフラン
【0119】
[一般的実験]
試薬は、Sigma-Aldrich社、Acros Organics社、アルファ・エイサー社とFluorochem社から購入し、特に明記しない限り、さらに精製することなく使用した。溶媒は、供給されたまま使用され、そして、述べた場合、使用する前に、適切な乾燥剤で、乾燥した。反応は、TLC、またはNMR分光法によって、in situでモニターした。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、メルク・ミリポア社のシリカゲル60G F254 25ガラスプレートを用いて、UVランプによって可視化して行われた。フラッシュカラムクロマトグラフィーを、Sigma-Aldrich社のシリカゲル(230~400メッシュ、40-63ミクロン、60Å)を用いて行い、およびTLCを用いてモニターした。NMRスペクトルは、バリアンVNMRS-700、バリアンVNMRS-600、ブルカーアバンス-400またはバリアン マーキュリー-400分光計において、特に明記しない限り、周囲プローブ温度(ambient probe temperature)で操作して、記録した。NMRスペクトルは、Goss Scientificから購入した、CDCl3またはDMSO-d6中で記録した。NMRピークは、シングレット(s)、ダブレット(d)、トリプレット(t)、カルテット(q)、ブロード(br)、ヘプテット(hept)、それらの組み合わせ、または多重(m)として、報告された。ES-MSは、TQD(ウォーターズUK)質量分析計およびアクイティーUPLC(ウォーターズ社、UK)を使用して、ダラム大学部門サービスによって実行され、そして、正確な質量測定は、QTOFプレミア質量分析計およびアクイティーUPLC(ウォーターズ株式会社、UK)を使用して得られた。GCMSは、島津QP2010-ウルトラを使用して、ダラム大学部門のサービスによって実行された。IRスペクトルは、パーキンエルマーFT-IR分光計で記録した。融点は、Gallenkamp融点装置を使用して得た。元素分析は、エクセター分析CE-440アナライザーを使用して、ダラム大学部門のサービスによって得た。
【0120】
[合成手順]
【0121】
実施例1
6-ヨード-4,4-ジメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(4)
1(a)N-(4-ヨードフェニル)-3-メチルブタ-2-エナミド(1)
4-ヨードアニリン(25.0グラム、114.0ミリモル)の、DCM(400ミリリットル)の溶液に、3,3-ジメチルアクロロイル クロリド(13.36ミリリットル、120.0ミリモル)を加え、得られた白色懸濁液を、0.5時間撹拌し、その後、ピリジン(9.70ミリリットル、120ミリモル)を添加し、そして、溶液を、室温で、16時間撹拌した。
溶液を、水でクエンチし、DCMで希釈し、飽和塩化アンモニウム、水および飽和食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO
4)して、そして、減圧留去して、粗淡褐色固体(33グラム)を得た。
これを、エタノールから再結晶し、1を、白色結晶性固体として得た(31.8グラム、93%)。
1H NMR(700メガヘルツ,CDCl
3)δ
1.91(s,3H),2.22(s,3H),5.68(s,1H),7.01(s,1H),7.33(m,2H),7.60(d,J=8.8ヘルツ,2H);
13C NMR(101メガヘルツ,CDCl
3)δ
20.2,27.7,87.2,118.5,121.8,138.0,138.2,154.5,165.2;
IR(neat)v
max/cm
-1 3294m,3094,2964w,2890w,1666m,1586m,1430m,821s,650m;
MS(ES):m/z=302.0[M+H]
+;
HRMS(ES)計算値C
11H
13NOIとして、[M+H]
+:302.0042,実測値302.0050;実測値:C,43.87;H,4.02;N4.64.計算値C
11H
12NOIとして:C,43.88;H,4.02;N4.65%;
融点=136-138℃。
【0122】
1(b)6-ヨード-4,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-2-オン(2)
AlCl3(7.66グラム、57.5ミリモル)を、無水DCM(150ミリリットル)に加え、そして、得られたスラリーを、0.5時間撹拌した。これに、1(11.5グラム、38.3ミリモル)を添加し、そして、その溶液を、室温で、2.5時間、激しく撹拌した。
反応を、水でゆっくりとクエンチし、DCMで希釈し、溶液がオフホワイトに変わるまで、5%NaOHで洗浄し、その後、さらに、水と飽和食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、そして、減圧留去し、粗黄色固体を得た。
これを、エタノールから再結晶して、2を、白色結晶性固体として得た(10.2グラム、88%)。
1H NMR(700メガヘルツ,CDCl3)δ
1.32(s,6H),2.47(s,2H),6.62(d,J=8.3ヘルツ,1H),7.47(dd,J=8.3,1.9ヘルツ,1H),7.56(d,J=1.8ヘルツ,1H),9.20(s,1H);
13C NMR(176メガヘルツ,CDCl3)δ
27.7,34.2,45.2,86.8,118.1,133.7,135.1,135.9,136.6,171.3;
IR(neat)vmax/cm-1 3164m,3102,3040w,2953m,1671s,1596m,1484m,817s;
MS(ES):m/z=302.0[M+H]+;
HRMS(ES)計算値C11H13NOIとして[M+H]+:302.0042,実測値302.0042;計算値C,43.91;H,4.02;N4.63.計算値C11H12INOとして:C,43.87;H,4.02;N4.65%;
融点=199-202℃。
【0123】
1(c)6-ヨード-4,4-ジメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-2-オン(3)
2(7.05グラム、23.4ミリモル)の無水DMF(200ミリリットル)溶液に、KOH(4.08グラム、70.2ミリモル)を粉砕して加え、そして、得られたスラリーを、50℃で、1時間撹拌した。これに、2-ヨードプロパン(7.00ミリリットル、70.2ミリモル)を添加し、そして、溶液を、50℃で、40時間、撹拌した。
反応を、水でクエンチし、酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム、水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、そして、減圧下留去し、粗透明な油状物を得た(7.2グラム)。
これを、シリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して(溶離剤として、1%のトリエチルアミンを含む、ヘキサン:酢酸エチル=9:1)、3を、無色の油として得た(3.93グラム、49%)。
1H NMR(700メガヘルツ,CDCl3)δ
1.25(s,6H),1.49(s,3H),1.50(s,3H),2.38(s,2H),4.66(hept,J=7.0ヘルツ,1H),6.87(d,J=8.6ヘルツ,1H),7.50(dd,J=8.6,2.1ヘルツ,1H),7.52(d,J=2.1ヘルツ,1H);
13C NMR(176メガヘルツ,CDCl3)δ
20.3,26.8,33.1,47.2,48.8,86.9,118.9,133.4,135.7,138.9,139.1,169.5;
IR(neat)vmax/cm-1 2961m,2934w,2870w,1667s,1582m,1482m,809s;
MS(ES):m/z=344.0[M+H]+;
HRMS(ES)計算値C11H13NOIとして[M+H]+:344.0511,実測値:344.0512。
【0124】
1(d)6-ヨード-4,4-ジメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(4)
3(1.25グラム、3.63ミリモル)の、無水トルエン(15ミリリットル)の溶液に、0℃で、ボラン ジメチルスルフィド錯体(THF中、2.0M、1.91ミリリットル、3.81ミリモル)を滴下し、そして、得られた溶液を、16時間、還流撹拌した。溶液を室温に冷却し、そして、10%のNa2CO3水溶液(25ミリリットル)を加えて、そして、溶液を、0.5時間撹拌し、酢酸エチルで希釈し、水と飽和食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、そして、減圧下留去し、粗無色油状物(1.12グラム)を得た。
これを、シリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して(溶離剤として、1%のトリエチルアミンを含む、ヘキサン:酢酸エチル=9:1)、4を、無色の油(1.08グラム、90%)として得た。
1H NMR(700メガヘルツ,CDCl3)δ
1.19(s,3H),1.19(s,3H),1.24(s,6H),1.65-1.67(m,2H),3.14-3.17(m,2H),4.06(hept,J=6.6ヘルツ,1H),6.46(d,J=8.8ヘルツ,1H),7.28(dd,J=8.9,2.1ヘルツ,1H),7.39(d,J=2.2ヘルツ,1H);
13C NMR(176メガヘルツ,CDCl3)δ
18.9,30.3,32.4,36.6,36.8,47.3,76.1,113.4,134.5,134.8,135.6,144.0;
IR(neat)vmax/cm-1 2957m,2927w,2863w,1580m,1489m,792s,684w;
MS(ES):m/z=330.1[M+H]+;
HRMS(ES)計算値C11H13NOIとして[M+H]+:330.0719,実測値:330.0717。
【0125】
実施例2
【0126】
【0127】
2(a)メチル 4-ヨードベンゾエート(5)
4-ヨード安息香酸(25グラム、100.8ミリモル)を、メタノール(250ミリリットル)に懸濁し、そして、濃H2SO4(5ミリリットル)を加え、そして、得られた溶液を、一晩、還流撹拌した。透明な溶液を、次に、室温にゆっくり冷却し、次いで、0℃にした。
得られた固体を濾過し、冷たいメタノールで洗浄し、そして、乾燥させて、5を、無色の結晶性固体(23.7グラム、90%)として得た。
1H NMR(600メガヘルツ,CDCl3)δ
3.90(s,3H),7.73(d,J=8.6ヘルツ,2H),7.79(d,J=8.6ヘルツ,2H);
13C NMR(176メガヘルツ,CDCl3)δ
52.5,100.9,129.8,131.2,137.9,166.7;
IR(neat)vmax/cm-1 3040w,2996w,2946w,1709s,1596m,1436m,1269s,1114s,843s,683m;
MS(GC):m/z=261.9[M]+;実測値:C,36.54;H,2.71.計算値C8H7IO2として:C,36.67;H,2.69%。
【0128】
2(b)メチル 4-((トリメチルシリル)エチニル)安息香酸(6)
Pd(PPh3)2Cl2(1.18グラム、1.68ミリモル)、CuI(1.68グラム、1.68ミリモル)および5(22.0グラム、83.98ミリモル)を添加する前に、オーブンで乾燥した500ミリリットルのシュレンクフラスコを減圧排気し、そして、アルゴンを再充填し、フラスコをセプタムで密封した。トリエチルアミン(200ミリリットル)およびトリメチルシリルアセチレン(13.94ミリリットル、100.8ミリモル)を加え、そして、フラスコを排気/再度アルゴンを充填することを3回行った。混合物を、室温で、一晩攪拌した。溶液を、ヘキサンで希釈し、真空下、セライト/シリカゲルを通過させ、そして、減圧留去して、6を、オフホワイトの固体として得た(19.8グラム)。これは、精製することなく、次の工程に使用した。
MS(GC):m/z=232.1[M]+;実測値:C,66.90;H,6.88.計算値C13H16O2Siとして:C,67.2;H,6.94%。
【0129】
2(c)メチル 4-エチニル安息香酸(7)
メタノール:DCM溶液(2:1、300ミリリットル)に、6(18.5グラム、79.5ミリモル)およびK2CO3(22.0グラム、159ミリモル)を加えた。混合物を、6時間、アルゴン下で攪拌した。次いで、溶液を、減圧留去して、3分の1の量にして、ヘキサンで希釈し、セライトを通過させ、そして、減圧留去して、淡褐色固体を得た。
減圧下昇華により精製し、7を、白色固体として得た(11.1グラム、2つのステップで83%)
1H NMR(600メガヘルツ,CDCl3)δ
3.23(s,1H),3.91(s,3H),7.54(d,J=8.4ヘルツ,2H,),7.98(d,J=8.6ヘルツ,2H);
13C NMR(176メガヘルツ,CDCl3)δ
52.5,80.2,83.0,126.9,129.6,130.3,132.3,166.6;
IR(neat)vmax/cm-1 3035w,3006w,2950w,2103w,1699s,1605m,1433m,1277s,1107s,859s;
MS(GC):m/z=160.1[M]+;実測値:C,74.62;H,5.01.計算値C10H8O2として:C,74.99;H,5.03%。
【0130】
実施例3
4-2-[4,4-ジメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸(9)
3(a)4-2-[4,4-ジメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸(8)
Pd(PPh
3)
2Cl
2(0.0744グラム、0.106ミリモル)、CuI(0.0202グラム、0.106ミリモル)および、7(0.219グラム、1.37ミリモル)を添加する前に、オーブンで乾燥したシュレンクフラスコを減圧排気し、アルゴンを再充填し、フラスコをセプタムで密封した。4(0.349グラム、1.06ミリモル)のトリエチルアミン(6ミリリットル)溶液を加え、フラスコを排気し、再度アルゴンを充填することを3回行った。混合物を、72時間、室温で攪拌した。
混合物をジエチルエーテルで希釈し、真空下、セライト/シリカゲルを通過させ、そして、減圧留去して、粗橙色固体(0.47グラム)を得た。
これを、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して(溶離液として、1%のトリエチルアミンを有する、ヘキサン:酢酸エチル=8:2)、8を、オレンジ色の固体として得た(0.105グラム、27%)。
1H NMR(700メガヘルツ,CDCl
3)δ
1.21/1.23(s,6H),1.28(s,6H,),1.66-1.71(m,2H),3.19-3.24(m,2H),3.92(s,3H),4.15(hept,J=6.6ヘルツ,1H),6.64(d,J=8.7ヘルツ,1H),7.24-7.25(m,1H),7.36(d,J=1.8ヘルツ,1H),7.54(d,J=8.3ヘルツ,2H),7.98(d,J=8.3ヘルツ,2H);
13C NMR(151メガヘルツ,CDCl
3)δ
19.1,30.1,32.2,36.7,36.8,47.4,52.3,86.8,95.2,108.0,110.6,128.5,129.5,129.6,131.1,131.2,131.7,145.0,167.0;
MS(ES):m/z=362.2[M+H]
+;
HRMS(ES)計算値C24H28NO2として[M+H]
+:362.2120,実測値:362.2114。
【0131】
3(b)4-2-[4,4-ジメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸(9)
Pd(PPh
3)
2Cl
2(0.253グラム、0.36ミリモル)、CuI(0.0686グラム、0.36ミリモル)および7(0.634グラム、3.96ミリモル)を添加する前に、オーブン乾燥したシュレンクフラスコを減圧排気し、アルゴンを再充填し、フラスコを、セプタムで密封した。4(1.185グラム、1.06ミリモル)のトリエチルアミン(30ミリリットル)溶液を、真空下で超音波処理により脱気し、アルゴンで再充填することを3回行った。次いで、この溶液を、シュレンクフラスコに添加され、真空下で脱気し、そして、再び、アルゴンを充填し、そして、得られた混合物を、72時間、室温で撹拌した。
次いで、反応混合物を蒸発乾固し、そして、薄いセライト/SiO
2プラグを介して、ヘキサン次いで、ヘキサン:酢酸エチル(9:1)で溶離した。有機層を、次いで、飽和NH
4Cl、3%EDTA水溶液、水および飽和食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO
4)し、そして、減圧留去し、オレンジ色の固体(1.38グラム)を得た。
これを、THF(30ミリリットル)に溶かし、そして、20%のNaOH水溶液(3ミリリットル)を加えた。得られた溶液を、40時間、還流撹拌し、混合物を冷却し、水を加えた。溶液を、5%HClで中和し、酢酸エチルで希釈し、飽和NaHCO
3、水および飽和食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO
4)し、そして、減圧留去して、粗黄色固体(1.0グラム)を得た。
これを、溶媒積層(DCM/ヘキサン)により、2回再結晶し、17を、明るい黄色の針状晶として得た(0.73グラム、2つの工程にわたって58%)。
1H NMR(700メガヘルツ;(CD
3)
2SO)δ
1.16(s,3H),1.17(s,3H),1.22(s,6H),1.60-1.64(m,2H),3.17-3.21(m,2H),4.15(hept,J=7.0ヘルツ),6.70(d,J=9.3ヘルツ,1H),7.19(dd,J=8.6,2.1ヘルツ,1H),7.30(d,J=2.1ヘルツ,1H),7.56(d,J=8.5ヘルツ,2H),7.92(d,J=8.6ヘルツ,2H),13.02(s,1H);
13C NMR(700メガヘルツ,(CD
3)
2SO)δ
18.6,29.7,31.6,35.8,36.1,46.7,86.5,94.9,106.5,109.5,110.5,128.9,129.4,130.7,130.7,131.2,144.7,166.8;
MS(ES):m/z=348.2[M+H]
+;
HRMS(ES)計算値C
23H
26NO
2として、[M+H]
+:348.1964,実測値:348.1965。
【0132】
実施例4
3-[4-(1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)-フェニル]-アクリル酸メチルエステル(13)
【0133】
4(a)メチル-(3-メチル-ブト-2-エニル)-フェニル-アミン
500ミリリットルの丸底フラスコの中に、N-メチルアナリン(3.24グラム、30.32ミリモル)、1-ブロモ-3-メチル-ブタ-2-エン(5.0グラム、33.56ミリモル)およびK
2CO
3(4.63グラム、33.56ミリモル)を、160ミリリットルのMeCNに溶かした溶液を入れ、85℃で、18時間加熱した。その時点でのin situのES
+-MSによる分析は、反応が完了したことを示した。混合物を、ジエチルエーテル(100ミリリットル)で希釈し、そして、水で洗浄した(3×100ミリリットル)。有機層を、MgSO
4で乾燥し、濾過し、減圧下に蒸発させると、粗油状物を得た。
これを、シリカパッドを通して濾過し、ヘキサンで溶出した。溶媒を、減圧下に除去し、表題化合物を、透明な油として得た(3.82グラム、72%)。
m/z(ES
+-MS)176(MH
+);
1H NMR(499.76メガヘルツ,CDCl
3)δ
7.28(2H,d,J=7.0ヘルツ),6.79(2H,d,J=7.0ヘルツ),6.75(1H,tr,J=7.0ヘルツ),5.25(1H,tr,J=6.0ヘルツ),3.93(2Hd,J=6.0ヘルツ),2.93(3H,s)1.76(6H,s);
13C{
1H} NMR(100.61メガヘルツ,CDCl
3)δ
149.86,134.54,129.08,120.91,116.42,112.97,50.53,37.91,25.70.17.92;
HRMS計算値、C
12H
18Nとして
-([M+H]
+)176.14338,実測値176.14336。
【0134】
4(b)1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン
500ミリリットルの丸底フラスコに、メチル-(3-メチル-ブト-2-エニル)-フェニルアミン(18.0グラム、102.86ミリモル)およびポリリン酸(75ミリリットル)の混合物を加え、120℃で18時間、加熱した。その時点で、混合物の精製されたアリコートの、1H NMR分光分析による分析は、反応が完了したことを示した。
混合物を、5分かけて、水(100ミリリットル)をゆっくりと添加することによって希釈した。溶液を、注意深く、KOH水溶液の添加によりアルカリ性にし、そして、その後、ジエチルエーテル(1リットル)で抽出した。有機層を、水(3×200ミリリットル)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして、溶媒を、減圧下、除去し、粗油状物を得た。
これを、シリカパッドを通して、ヘキサンで溶出した。溶媒を、減圧下、除去し、表題化合物を、透明な油状物として得た(14.93グラム、83%)。
m/z(EI-MS)175(50%,M+),160(60%,M+-Me);
1H NMR(499.76メガヘルツ,CDCl3)δ
7.23(iH,dd,J=7.5,1.5ヘルツ),7.11(1H,triplet of doublets,J=7.5,1.5ヘルツ),6.63(1H,triplet of doublets,J=7.5,1.5ヘルツ),6.62(1H,d,J=7.5ヘルツ),3.25(2H,tr,J=6.0ヘルツ),2.92(3H,s),1.80(2H,tr,J=6.0ヘルツ);
13C{1H} NMR(125.67メガヘルツ,CDCl3)δ
145.74,131.61,126.94,126.02,116.25,111.09,47.88,39.50,37.50,32.19,31.21,
HRMS計算値、C12H18Nとして-([M+H]+)176.14338,実測値176.14332。
【0135】
4(c)6-ヨード-1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン
1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(2.10グラム、12.0ミリモル)およびヨウ素(3.05グラム、12.0ミリモル)を、DCM(100ミリリットル)に溶かした溶液に、赤色HgOを添加した(2.59グラム、12.0ミリモル)。1H NMRによる分析が、反応が完結(2時間)したことを示すまで、反応液を、室温で撹拌した。混合物を濾過し、希釈したNa2S2O3水溶液(100ミリリットル)および水(100ミリリットル)で洗浄した。有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして、溶媒を減圧下除去した。残渣を、アルミナのプラグを通して濾過して、DCMで溶出し、溶媒を減圧下に除去すると、表記化合物を、淡黄色油状物として得た(2.50グラム、69%)。
m/z(EI-MS)301(100%,M+),286(80%,M+-Me);
1H NMR(499.67メガヘルツ,CDCl3)δ
7.40(1H,d,J=2.0ヘルツ),7.32(1H,dd,J=8.5,2.0ヘルツ),6.35(1H,d,J=8.5ヘルツ),3.24(2H,tr,J=6.0ヘルツ),2.89(3H,s),1.74(2H,tr,J=6.0ヘルツ)1.27(6H,s);
13C{1H} NMR(125.67メガヘルツ,CDCl3)δ
144.92,135.49,134.34,127.22,126.52,113.35,47.58,39.30,36.87,32.29,30.79;
HRMS計算値。C12H17NIとして-([M+H]+)302.04003,実測値302.04008。
【0136】
4(d)1,4,4-トリメチル-6-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(12)
乾燥した、N2で充填されたグローブボックスにおいて、Pd(dppf)Cl2(0.126グラム、0.15mmol)、6-ヨード-1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(0.93グラム、3.09ミリモル)、B2pin2(0.78グラム、3.09ミリモル)および酢酸カリウム(0.61グラム、6.18ミリモル)をヤングタップを取り付けた厚肉ガラス管中で混合した。脱気したDMSO(10ミリリットル)を添加し、そして、混合物を、80℃で、18時間、加熱した。その際、GCMS分析は、反応が完了したことを示した。
混合物を、ジエチルエーテル(100ミリリットル)で希釈し、そして、水で洗浄した(3×100ミリリットル)。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして、溶媒を、減圧下、除去し、残渣を得た。
これを、シリカパッドを通して濾過し、1:1のDCM/ヘキサンで溶出した。溶媒を、減圧下、除去し、粗生成物が得られた。それを、-20℃で、メタノールから再結晶すると、12を、白色針状晶として得た(0.66グラム、70%)。
融点140-141℃
m/z(EI-MS)301(100%,M+),286(100%,M+-Me);
1H NMR(699.73メガヘルツ,CDCl3)δ
7.63(1H、s)、7.55(1H,d,J=8.0ヘルツ),6.56(1H,d,J=8.0ヘルツ),3.29(2H,tr,J=6.0ヘルツ),2.94(3H,s),1.75(2H,tr,J=6.0ヘルツ),1.33(12H,s),1.31(6H,s);
13C{1H}NMR(175.73メガヘルツ,CDCl3):δ
147.8,134.4,132.3,130.3,110.1,83.2,47.7,39.2,37.2,32.1,30.7,25.0、
ボロンに結合する炭素の共鳴は観察されなかった。
11B{1H} NMR(128.38メガヘルツ,CDCl3)δ
31.01;
元素分析:計算値(%)C18H28BNO2として:C71.77,H9.37,N4.65;実測値:C71.79,H9.27,N4.60。
【0137】
4(e)3-[4-(1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)-フェニル]-アクリル酸 メチルエステル(13)
乾燥した、N
2で充填されたグローブボックスにおいて、Pd(dppf)Cl
2(25ミリグラム、0.03ミリモル)、1,4,4-トリメチル-6-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(0.49グラム、1.55ミリモル)、3-(4-ブロモ-フェニル)-アクリル酸 メチルエステル(0.37グラム、0.83ミリモル)およびK
3PO
4・2H
2O(0.77グラム、3.10ミリモル)を、ヤングタップを取り付けた厚肉ガラス管中で混合した。脱気した、イソプロピルアルコール(10ミリリットル)および水(1ミリリットル)を添加し、混合物を、18時間、80℃で加熱し、その際、GCMS分析は、反応が完了したことを示した。
溶媒を、減圧下、除去し、そして、残留物を、DCM(100ミリリットル)に溶解し、そして、水で洗浄した(3×20ミリリットル)。有機層をMgSO
4で乾燥し、濾過し、そして、溶媒を、減圧下、除去し、残渣を得た。
それを、シリカパッドを通して濾過し、DCMで溶出した。溶媒を、減圧下、除去すると、黄色の固体を得た。
それを、-20℃で、メタノールから再結晶し、13を、黄白色針状晶として得た(0.32グラム、62%)。
融点121-123℃
UV-vis(CHCl
3)λ
max(ε)380nm(23900Lmol
-1cm
-1);λ
em(CHCl
3)536nm;
m/z(ES
+-MS)336([M-H]
+);
1H NMR(499.77メガヘルツ,CDCl
3)δ
7.73(1H,d,J=16.0ヘルツ),7.58(2H,d,J=8.5ヘルツ),7.56(2H,d,J=8.5ヘルツ),7.48(1H,s),7.37(1H,d,J=8.0ヘルツ),6.66(1H,d,J=8.0ヘルツ),6.45(1H,d,J=16.0ヘルツ),3.83(3H,s),3.30(2H,tr,J=5.5ヘルツ),2.97(3H,s),1.81(2H,tr,J=5.5ヘルツ),1.35(6H,s);
13C{
1H} NMR(125.67メガヘルツ,CDCl
3)δ
167.87.145.49,144.98,143.89,131.85(2つのピークが重なった),12.71,127.45,126.49,125.63,124.56,116.56,111.28,51.79,47.75,39.40,37.24,32.34,30.97;
HRMS計算値C
22H
26NO
2として
-([M-H]
+)336.19581,実測値336.19577。
【0138】
実施例5
6-(1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)-ナフタレン-2-カルボン酸 メチルエステル(11)
5(a)6-(5,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサボリナン-2-イル)-1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(10)
乾燥した、N
2で充填された、グローブボックス内で、Pd(dppf)Cl
2(0.135グラム、0.17mmol)、6-ヨード-1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(1.0グラム、3.32ミリモル)、B
2pin
2(0.75グラム、3.32ミリモル)および酢酸カリウム(0.65グラム、6.64ミリモル)を、ヤングタップを取り付けた厚肉ガラス管中で混合した。脱気したDMSO(10ミリリットル)を加え、そして、混合物を、80℃で、18時間、加熱した。その際、GCMS分析が、反応は完了したことを示した。混合物を、ジエチルエーテル(100ミリリットル)で希釈し、そして、水で洗浄した(3×100ミリリットル)。有機層を、MgSO
4で乾燥し、濾過し、そして、溶媒を、減圧下、除去し、残渣を得た。
それを、シリカパッドを通して濾過し、1:1のDCM/ヘキサンで溶出した。溶媒を、減圧下、除去し、粗生成物が得られた。
これを、-20℃で、メタノールから再結晶し、白色針状晶として、10を得た(0.80グラム、88%)。
融点151-153℃
m/z(EI-MS)287(90%,M
+),272(100%,M
+-Me);
1H NMR(499.77メガヘルツ,CDCl
3)δ
7.64(1H,d,J=1.5ヘルツ),7.54(1H,dd,J=8.5,1.5ヘルツ),7.27(1H,s),6.57(1H,d,J=8.5ヘルツ),3.75(4H,s),3.28(2H,tr,J=6.0ヘルツ),2.94(3H,s),1.76(2H,tr,J=6.0ヘルツ),1.32(6H,s),1.02(6H,s);
13C{
1H} NMR(125.67メガヘルツ,CDCl
3)δ
147.49,133.29,131.42,130.19,110.09,72.33,47.75,39.24,37.29,32.05,32.03,30.83,20.12,
ボロンに結合する炭素の共鳴は観察されなかった。
11B{
1H} NMR(128.38メガヘルツ,CDCl
3)δ
27.02;
元素分析:計算値(%)C
17H
26BNO
2として:C71.09,H9.12,N4.88;実測値:C71.00,H9.12,N4.81。
【0139】
5(b)6-(1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)-ナフタレン-2-カルボン酸 メチルエステル(11)
乾燥した、N
2で充填されたグローブボックスにおいて、Pd(dppf)Cl
2(13ミリグラム、0.02ミリモル)、6-(5,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサボリナン-2-イル)-1,4,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(0.25グラム、0.87ミリモル)、6-ブロモナフタレン-2-カルボン酸 メチルエステル(0.22グラム、0.83ミリモル)およびK
3PO
4・2H
2O(0.43グラム、1.74ミリモル)を、ヤングタップを取り付けた厚肉ガラス管中で混合した。脱気したDMSO(15ミリリットル)および水(3ミリリットル)を添加し、そして、混合物を、80℃で、18時間、加熱し、その際、GCMS分析が、反応は完了したことを示した。混合物を、ジエチルエーテル(100ミリリットル)で希釈し、そして、水で洗浄した(3×100ミリリットル)。有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして、溶媒を、減圧下、除去し、残渣を得た。
これを、シリカパッドを通して濾過し、DCMで溶出した。溶媒を、減圧下、除去し、黄色固体を得、-20℃で、メタノールから再結晶して、黄白色の針状晶の11を得た(0.28グラム、94%)。
融点166-167℃
UV-vis(CHCl
3)λ
max(ε)243nm(53200Lmol
-1cm
-1);λ
em(CHCl
3)494nm;
m/z(EI-MS)359(100%,M
+),344(60%,M
+-Me);
1H NMR(699.73メガヘルツ,CDCl
3)δ
8.60(1H,s),8.06(1H,dd,J=8.5,1.5ヘルツ),7.99(1H,s),1.97(1H,d,J=8.5ヘルツ),7.90(1H,d,J=8.0ヘルツ),7.81(1H,dd,J=8.5,1.5ヘルツ),7.60(1H,d,J=2.0ヘルツ),7.49(1H,dd,J=8.5,2.0ヘルツ),6.71(1H,d,J=8.5ヘルツ),3.99(3H,s),3.32(2H,tr,J=6.0ヘルツ),2.99(3H,s),1.84(2H,tr,J=6.0ヘルツ),1.39(6H,s);
13C{
1H}NMR(175.73メガヘルツ,CDCl
3)δ
167.55,145.49,141.72,136.29,131,99,131.08,129.74,128.74,128.18,126.62,126.31,126.05,125.62,124.97,123.74,111.41,52.29,47.79,39.43,37.31,32.40,31.03;
HRMS計算値C
24H
25NO
2-として(M
+)359.18798,実測値359.18789。
【0140】
実施例6
4-2-[2,4,4-トリメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,4-ジヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸(17)
【0141】
6(a)6-ヨード-2,4,4-トリメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,4-ジヒドロキノリン(15)
3(1.17グラム、3.42ミリモル)の無水THF(50ミリリットル)の溶液に、MeMgBr(3.0Mのジエチルエーテルを2.28ミリリットル、6.84ミリモル)を加え、得られた溶液を、16時間、還流下に撹拌した。溶液を冷却し、20%のHCl(1.14ミリリットル)および水でクエンチした。酢酸エチルで希釈し、水と飽和食塩水で洗い、乾燥(硫酸マグネシウム)し、減圧留去して、粗無色油状物(0.95グラム)を得た。
これを、すぐに、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤として、1%のトリエチルアミンを含む、ヘキサン:酢酸エチル=97.5:2.5)により精製して、15を、ピンク色の油として得た(0.35グラム、30%)。これを、直ぐに、次の反応に使用した。
1H NMR(400メガヘルツ,CDCl
3)δ
1.20(s,6H),1.45(s,3H),1.46(s,3H),1.98(d,J=0.9ヘルツ,3H),4.16(hept,J=7.1ヘルツ,1H),4.50(q,J=1.2ヘルツ,1H),6.73(d,J=8.7ヘルツ,1H,),7.34(dd,J=8.7,2.2ヘルツ,1H),7.42(d,J=2.1ヘルツ,1H)。
【0142】
6(b)4-2-[2,4,4-トリメチル-1-(プロパン-2-イル)-1,4-ジヒドロキノリン-6-イル]エチニル安息香酸(17)
Pd(PPh
3)
2Cl
2(0.073グラム、0.104ミリモル)、CuI(0.0198グラム、0.104ミリモル)および、7(0.176グラム、1.10ミリモル)を、アルゴン下で、シュレンクフラスコに添加した。フラスコを排気し、アルゴンを再充填した。15(0.356グラム、1.04ミリモル)を、トリエチルアミン(12ミリリットル)に溶解したものを添加し、そして、フラスコを排気/再びアルゴンで満たした(3×)。混合物を、72時間、室温で攪拌した。溶液を、ジエチルエーテルで希釈し、真空下に、セライト/SiO
2に通し、そして、減圧留去して、粗緑色固体(0.4グラム)を得た。
これを、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤として、1%のEt
3Nを含む、ヘキサン:酢酸エチル=8:2)により、精製して、16(スキームIV)を、淡緑色固体として得た(0.12グラム、30%)。
16(0.073グラム、0.195ミリモル)を、その後、THF(10ミリリットル)に溶解し、そして、これに、20%のNaOH水溶液(2ミリリットル)を添加した。得られた溶液を、還流下で、40時間、撹拌し、混合物を冷却し、水とジエチルエーテルを加えた。溶液を、5%HClを用いて、pH7に酸性化し、ジエチルエーテルで希釈し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、減圧下、溶媒を除去して、17を、黄色固体として得た(0.070グラム、99%)。
1H NMR(400メガヘルツ;CDCl
3)δ
1.24(s,6H),1.47(s,3H),1.49(s,3H),2.01(d,J=0.9 ヘルツ,3H),4.23(hept,J=7.2ヘルツ,1H),4.53(d,J=1.1ヘルツ,1H),6.93(d,J=8.6ヘルツ,1H),7.27-7.29 (m,1H),7.37(d,J=2.0ヘルツ,1H),7.54(d,J=8.3ヘルツ, 2H),8.03(d,J=8.4ヘルツ,2H)。
【0143】
実施例7
実施例3の化合鬱9および実施例6の化合物17の初期蛍光の特性
【0144】
9の吸収および発光スペクトルを、種々の溶媒において得た(
図3および
図4)。9を、EC23
(R)と比較すると(
図1および
図2)、最大の吸収および発光の波長において、有意な増加を示す。9からの蛍光は、1nMという低い濃度で、容易に検出され、そして、溶媒依存性効果が観察され、非極性溶媒において、高い強度の蛍光が検出された。一方、顕著な蛍光消光は、特に、水中で観察された。蛍光発光波長も、また、溶媒の極性に強く依存し、非極性溶媒と比較したとき、極性溶媒において、著しい赤色シフトが起こった。
細胞に適用した場合、9の蛍光は、局所の極性に依存して、離散的な細胞位置で識別可能であると予想することができることを、この初期特性は示す。
【0145】
化合物17は、化合物9と同様の発光プロファイルを示す(
図6)だけでなく、より長い極大吸収波長(
図5)を示す。この吸収帯は、約379nmでのピーク、および、インジゴ/青(440nm)にトレイルする(trails)。この、より長波長吸収帯は、蛍光顕微鏡で典型的である、405nmの励起源において、化合物17は、化合物9よりも、より効果的に励起されるであろうことを示す。
【0146】
実施例3の化合物9の光安定性
DMSO-d6の中の、化合物9の
1H NMRのスペクトルは、光の非存在下に、周囲温度で保存した後に記録された(
図7)。化合物9の同じサンプルは、次いで、標準的な実験室光に、72時間、30cmの距離で露出され、そして、
1H NMRスペクトルを記録した(
図8)。小さな割合が、構造的に同様のエナミン体に変換するが、この期間にわたって、典型的な実験室の照明に対して、化合物9は、安定である。化合物9は、おおよそ16日間の暴露まで安定であり、劣化のいくつかの兆候が明らかになった。化合物9は、依然として、サンプルの主な成分であるが(>60%)、より顕著な分解は、22日間の曝露後に観察される。
【0147】
化合物9および化合物17の生物学的評価
レチノイドの定義特性は、特定の細胞型の分化を誘導する、および、定義された配列のDNA(レチノイン酸応答エレメント、RAREs)に連結されることにより、レチノイン酸に直接応答する遺伝子の発現を誘導するそれらの能力である。レチノイン酸応答エレメントは、リガンド活性化レチノイン酸リセプター(RARs)に結合し、それにより遺伝子のメッセンジャーRNA転写が発現されるために必要な、遺伝子調節配列(プロモーター)に、遺伝子転写機構の動員を可能にする。
【0148】
蛍光レチノイドが、レチノイド活性を有することを示すため、TERA-2細胞(胚性癌腫細胞株)を、1および10μMの、ATRA、EC23
(R)および化合物9を用いて処理し、次いで、得られたサンプルを、様々な免疫細胞化学染料で染色した。
図8-1は、神経幹細胞において典型的に発現される中間フィラメントである、ネスチンの存在下、1および10μMの、ATRA、EC23
(R)および化合物9を用いて、およびビヒクル溶媒である、DMSOを用いて、TERA-2細胞を処理した結果を示す。すべての条件は、10μMのEC23
(R)および化合物9のサンプルにおけるより、おそらくより少ない程度に、ネスチンの染色は、陽性であった。
【0149】
図8-2は、TERA-2細胞を、1および10μMのATRA、EC23
(R)および化合物9で そして、ビヒクル溶媒のDMSOで、非神経分化のマーカーである、サイトケラチン8(CK8)の存在下に、処理した結果を示す。ATRAとEC23
(R)の両方の、10μMのサンプルにおいて、非神経分化における典型的な減少のように、より弱い強度の染色が見られた。しかし、1μMのサンプルと比較した場合、化合物9では僅かに明るくなった。DMSO処理は、CK8に対して、非常に明るい染色を示す。
【0150】
図8-3は、TERA-2細胞を、1および10μMのATRA、EC23
(R)および化合物9で そして、ビヒクル溶媒のDMSOで、パン・ニューロン・マーカー(pan neuronal marker)であるTUJ-1の存在下に、処理した結果を示す。ATRA、EC23
(R)および化合物9で処理したサンプルは、TUJ-1に対して、10μMでの処理で明らかな増加染色を有する、顕著な染色を示した。DMSOで処理した細胞は、唯一限定されたTUJ-1染色を示した。
【0151】
図8-4は、TERA-2細胞を、1および10μMのATRA、EC23
(R)および化合物9で、そして、ビヒクル溶媒のDMSOで、多能性のマーカーである転写因子であるOct 4の存在下に、処理した結果を示す。DMSOで処理した細胞は、Oct 4に対して、明らかな陽性染色を示し、そして、染色は、1μMのATRA処理においても明らかである。他のすべての条件で、Oct 4に対して、染色を示さず、EC23
(R)および化合物9は、容易に、分化の促進を通して、多能性のマーカーを抑制的に制御することを示す。
【0152】
図8-5は、TERA-2細胞を、1および10μMのATRA、EC23
(R)および化合物9で そして、ビヒクル溶媒のDMSOで、多能性のマーカーである転写因子である、Sox2の存在下に、処理した結果を示す。DMSOで処理した細胞は、Sox2に対して、明らかな陽性染色を示し、ATRA、EC23
(R)および化合物9で処理した細胞において、著しい染色の低下を有する、顕著な染色を示した。この観察は、ATRA,EC23
(R)および化合物9は、容易に、分化の促進を通して、多能性のマーカーを抑制的に制御することを示す。
【0153】
図9は、ATRA、EC23
(R)および化合物9で、および、DMSOで処理した、TERA-2細胞のフローサイトメトリー分析を示す。幹細胞マーカーであるSSEA-3の発現を測定した。一般的には、細胞を、レチノイドを用いて処理した場合、発現は低下する。SSEA-3のフローサイトメトリーは、DMSOで処理した細胞と比較して、SSEA-3の発現は、レチノイドで処理された細胞において、有意に減少していることを示す。化合物9で処理した細胞は、1および10μMの処理の両方で、ATRAおよびEC23
(R)よりも、より高いレベルのSSEA-3を示した。
【0154】
図10は、ATRA、EC23
(R)および化合物9およびDMSOで処理した、TERA-2細胞のフローサイトメトリー分析を示す。細胞がレチノイドで処理された場合、一般的に低減される、幹細胞マーカーであるTRA160の発現を測定した。TRA160のフローサイトメトリーは、DMSOで処理された細胞と比較して、レチノイドで処理された細胞において、TRA160の発現が大幅に減少することを示す。化合物9で処理した細胞は、1および10μMの両方において、ATRAおよびEC23
(R)よりも、TRA160がわずかに高いレベルであることを示した。
【0155】
図11は、ATRA、EC23
(R)および化合物9およびDMSOで処理した、TERA-2細胞のフローサイトメトリー分析を示す。レチノイドを用いて細胞を処理した場合には、一般的に上昇する、早期神経マーカーであるA2B5の発現が測定された。A2B5のフローサイトメトリーは、A2B5の発現は、DMSOで処理された細胞と比較して、レチノイド処理細胞において、著しく増加することを示す。ATRAで処理した細胞は、A2B5のレベルより、より高い発現をし、次いで、EC23
(R)および化合物9が続く。
【0156】
図11-1は、ATRA、EC23
(R)および化合物9、およびDMSOで処理された細胞集団の位相コントラスト画像を示す。DMSOで処理した細胞集団において、細胞は小さく、そして、密に一緒にパックされた。対照的に、ATRA、EC23
(R)および化合物9で処理された細胞集団は、より低密度であり、そして細胞は、はるかに広がっている。
【0157】
図12および
図13は、1および10μMのATRA、EC23
(R)および化合物9、およびDMSOで処理した、MTT細胞生存率分析を示す。すべての処理は、DMSOと同等の生存率を示し、レチノイドで処理された細胞は、重大な毒性作用を示さないことを示唆する。
【0158】
図14は、化合物9について、10、1、0.1、0.01μMの濃度で処理され、そして、7日後に共焦点蛍光顕微鏡を用いて画像化された、TERA-2細胞を示す。最も低い処理濃度でさえ、0.1乃至10μMの処理は、容易に画像化でき、化合物9の蛍光を見ることができた。化合物9は、主に、核エンベロープ(nuclear envelope)の周りに局在し、そして、また、他の細胞構造の周りに局在するように見える。
【0159】
図15、16および17は、それぞれ、10μMの化合物9で処理され、そして、8時間(SHSY5Y)および24時間(線維芽細胞)および7日間(TERA-2)の後、共焦点蛍光顕微鏡を用いて画像化した、SHSY5Y細胞(神経芽腫)および線維芽細胞およびTERA-2細胞を示す。化合物9は、再び、核エンベロープ(nuclear envelope)周囲に明らかに局在化がはっきりと見える。
【0160】
図18は、10μMの化合物9で、5日間、処理され、固定され、そして、共焦点蛍光顕微鏡を用いて、画像形成された、HaCatケラチノサイト皮膚細胞を示す。
【0161】
図19は、化合物9(10mM)で、5日間処理した、HaCatケラチノサイト皮膚細胞を示す。固定されたカバースリップは、次いで、インボルクリン(緑)およびK14(赤)で染色され、共焦点顕微鏡を用いて画像化された。化合物9の蛍光は、青色に着色される。インボルクリンは、選択的に、核の中および周りへ、レチノイドを輸送する、細胞レチノイン酸結合タンパク質(CRABP)を染色する。K14は、基底ケラチノサイトの分割の原型マーカーであり、表皮細胞形状の維持に働く。
【0162】
図21は、5日間、化合物17(10mM)で処理した、HaCatケラチノサイト皮膚細胞を示す。固定化されたカバースリップは、次いで、インボルクリン(緑)およびK14(赤)で染色され、共焦点顕微鏡を用いて画像化した。化合物17の蛍光は、青色に着色された。インボルクリンは、核の中及び周りへ、レチノイドを輸送する、細胞レチノイン酸結合タンパク質(CRABP)を、選択的に染色する。K14は、基底ケラチノサイトの分割の原型マーカーであり、表皮細胞形状の維持に役立つ。
図20のように、同一の条件下で、化合物17からの蛍光は、化合物9によって示されるものよりも、有意により強い(
図19)。
【0163】
図22は、化合物9のラマンスペクトルを示す。高強度アセチレン帯域が、2190cm
-1で観察される。これは、例えば、アミド結合のような、生物学的起源のシグナルが観察されない、細胞サイレント領域(1800~2800cm
-1)に存在する。このスペクトルの分離は、細胞サイレント領域におけるラマンバンドが、ラマン顕微鏡/分光法を用いて、細胞サンプルを撮像または分析する際に、より容易に検出できることを可能する。