(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】養殖桁洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/60 20170101AFI20221128BHJP
【FI】
A01K61/60 324
(21)【出願番号】P 2019021120
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】300021002
【氏名又は名称】株式会社森機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】森 光典
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208900(JP,A)
【文献】特開2008-029229(JP,A)
【文献】特開2003-225621(JP,A)
【文献】特開2019-010633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置された養殖桁を移動しながら洗浄するための養殖桁洗浄装置であって、
内部空間を有し、異物が付着した養殖桁の幹綱が前記内部空間内を通過することを妨げないように構成された、筐体と、
前記筐体に設けられ、前記内部空間を通過する幹綱に向けて洗浄用液体を噴射する、噴射部と、
前記筐体に設けられ、幹綱を洗浄用液体の噴射範囲内に案内する、幹綱案内部と、
前記筐体を船舶に取り付け、幹綱の上下動に対応して前記筐体と船舶との相対的位置関係を変化させる、取付部と
を備える養殖桁洗浄装置。
【請求項2】
前記筐体は、幹綱に接続された養殖資材のうち前記内部空間への入口より大きな養殖資材が前記筐体の外方を通過するように案内する養殖資材案内部を有する、請求項1に記載の養殖桁洗浄装置。
【請求項3】
前記幹綱案内部は、複数の回転ローラを有し、該複数の回転ローラの各々は、走行する幹綱の上に載った状態で回転しながら幹綱を案内する、請求項1又は請求項2に記載の養殖桁洗浄装置。
【請求項4】
前記噴射部は、回転しながら幹綱に対して洗浄用液体を噴射する複数の回転部を有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の養殖桁洗浄装置。
【請求項5】
前記幹綱案内部は、前記回転部からの洗浄用液体の噴射範囲内の中央部に近い位置を幹綱が通過するように配置されている、請求項4に記載の養殖桁洗浄装置。
【請求項6】
前記取付部は、船舶に取り付けられる第1支持部と、前記筐体に取り付けられる第2支持部と、前記第1支持部と前記第2支持部とを、両者の相対的位置関係を変化させることができるように連結する連結部とを有する、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の養殖桁洗浄装置。
【請求項7】
前記第2支持部は棒状部材であり、前記連結部は、前記棒状部材を挟んで回転する複数の対向ローラと、前記第1支持部に接続されて前記複数の対向ローラを保持するローラ保持部とを有し、
前記棒状部材は、幹綱の上下動に対応して、前記複数の対向ローラの各々のローラ間を移動する、
請求項6に記載の養殖桁洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖桁を洗浄するための技術に関し、より具体的には、養殖期間中に海上で養殖桁の幹綱の洗浄を行うことが可能な洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖桁は、ホタテ貝、カキ貝、昆布、わかめ、ホヤなどを養殖するための海上施設である。
図1に示されるように、養殖桁は、幹綱と呼ばれる太いロープを備え、幹綱には、養殖カゴを吊るすためのロープや、ホタテ耳吊り用のロープが、一定間隔で接続されている。幹綱は、両端がコンクリートブロック、鉄製アンカー、打ち込み式アンカーなどに固定されており、接続された複数の浮玉によって海中に張設される。
【0003】
近年、外洋での大規模養殖が盛んになりつつあり、養殖桁は大型化している。大型の養殖桁では、幹綱を陸上に揚げて洗浄することは容易ではなく、幹綱の交換も潜水作業となる。したがって、幹綱は、概ね一年中、海中に設置されているため、海中生物にとって恰好の住処となり、養殖物以外の貝類や海藻などといった異物が大量に繁殖して、養殖作業の妨げとなる。また、海中に設置されていた幹綱に新たなロープを吊り下げる際には、細いロープが確実に幹綱に固定されるようにするとともに、種の放出源となる海中生物が残留しないように、ロープを縛る前に幹綱に付着した異物を完全に洗浄することが必要である。しかし、幹綱は、長さが200mにもなり、一定の間隔で浮玉が接続されているため、洗浄は容易ではない。
【0004】
現在行われている洗浄方法は、通称「ロケット」を用いる方法である。ロケットは、
図2に示されるように、幹綱が通過する貫通孔を有するパイプ状の洗浄具であり、2つの部分A、Bで幹綱を挟むようになっている。貫通孔の径は、幹綱を通すことはできるが、幹綱の表面に付着した異物を通さない程度の大きさに設定されている。船舶に間隔を空けて設置された2つの桁移動具の間に海中から揚げた幹綱を張り、例えば船舶の船縁に固定されたロケットの貫通孔に幹綱を通し、船舶を前進させることによって、貫通孔の入り口部分で幹綱から異物が削ぎ落とされる。
【0005】
しかし、ロケットは、浮玉等が接続されている箇所やロープの縛り目の箇所を通過することができないため、養殖物が吊るされている期間(通常、半年から1年程度)は、ロケットを用いた洗浄を行うことができない。ロケットが幹綱の縛り目等の箇所に到達したときに船舶を停止し、幹綱からロケットを外し、縛り目等を超えた箇所で再びロケットを取付けることも可能ではあるが、作業が極めて煩雑である。また、貫通孔が大きすぎると異物の一部が除去されずに幹綱に残り、貫通孔が小さすぎると異物が貫通孔に詰まる。
【0006】
特許文献1は、技術分野は異なるものの、長尺物を洗浄するという点で共通する技術である。この技術は、モノレールの軌道桁の側面に付着した粉塵等を洗浄する装置に関し、不動の軌道桁の側面を、回転しながら上下左右に移動するウォータージェットノズルからの高圧水で洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、海に設置され、波により上下に移動する養殖桁の幹綱を、養殖期間中であっても海上で連続的に高速で洗浄することができる、養殖桁洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、海に設置された養殖桁を、移動しながら洗浄するための養殖桁洗浄装置を提供する。この養殖桁洗浄装置は、海に設置された状態の養殖桁、すなわち養殖期間中の養殖桁であっても、幹綱をブロックから外したり、吊り下げられたロープを幹綱から外したりすることなく、幹綱を洗浄することができるものである。
【0010】
本装置は、内部空間を有する筐体と、筐体を船舶に取り付ける取付部とを備える。筐体は、異物が付着した状態の幹綱が内部空間内を通過することを妨げないように構成されている。取付部は、幹綱の上下動に対応して筐体と船舶との相対的位置関係を変化させることができるように構成されている。筐体には、内部空間を通過する幹綱に向けて洗浄用液体を噴射する噴射部と、幹綱を洗浄用液体の噴射範囲内に案内する幹綱案内部とが設けられる。筐体は、幹綱に接続された養殖資材のうち内部空間より大きな養殖資材が筐体の外方を通過するように案内する養殖資材案内部をさらに有するものとすることができる。
【0011】
一実施形態においては、幹綱案内部は、複数の回転ローラを有するものであることが好ましい。複数の回転ローラの各々は、走行する幹綱の上に載った状態で回転しながら幹綱を案内することができる。また、噴射部は、回転しながら幹綱に対して洗浄用液体を噴射する複数の回転部を有するものであることが好ましい。幹綱案内部は、回転部からの洗浄用液体の噴射範囲内を幹綱が通過できるように構成されているが、好ましくは、幹綱が中央部に近い位置を通過するように配置されている。
【0012】
一実施形態においては、取付部は、船舶に取り付けられる第1支持部と、筐体に取り付けられる第2支持部と、第1支持部と前記第2支持部とを両者の相対的位置関係を変化させることができるように連結する連結部とを有するものとすることが好ましい。具体的には、第2支持部は棒状部材であり、連結部は、棒状部材を挟んで回転する複数の対向ローラと、第1支持部に接続されて複数の対向ローラを保持するローラ保持部とを有するものとすることができる。棒状部材は、幹綱の上下動に対応して、複数の対向ローラの各々のローラ間を移動するように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本装置は、養殖桁の付着物を、養殖桁の使用中であっても、幹綱に取り付けられた養殖資材や幹綱の繋ぎ目の影響を受けることなく、連続で洗浄することができる。また、本発明によれば、本装置は、波の高い日でも養殖桁の浮動に追随して動作するため、効果的に洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】従来の幹綱洗浄具(通称、ロケット)を用いて幹綱を洗浄する方法を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる養殖桁洗浄装置の内部構造を示す概略図であり、(a)は装置の斜視図、(b)は右側面図である。本図においては、筐体及び幹綱が点線で示されている。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる養殖桁洗浄装置が、幹綱の上下動に対応して船舶との間の相対的位置関係を変化させる状態を示す模式図であり、(a1)及び(b1)は、船舶の上下動にともなって幹綱が上下に移動することを示し、(a2)及び(b2)は、幹綱の(a1)及び(b1)の状態に対応して船舶と養殖桁洗浄装置の本体との位置関係が変化する状態を示す。
【
図5】本発明の一実施形態にかかる養殖桁洗浄装置が、例えば幹綱に浮玉が接続されている箇所を通過する際の動きを示す模式図である。
【
図6】本発明の別の実施形態にかかる養殖桁洗浄装置の右側面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
図3は、本発明の一実施形態にかかる養殖桁洗浄装置1(以下、装置1という)を、内部構造が分かるように表した概略図である。
図3(a)は、装置1の斜視図であり、
図3(b)は、装置1の右側面図である。装置1は、本体10と、本体10を船舶Sに取付けるための取付部30とを備える。なお、
図3(a)においては、図面が煩雑にならないように、取付部30のうち船舶Sに取り付けられる支柱32が省略されている。
【0016】
本体10は、洗浄対象物である養殖桁の幹綱Rが通過可能な内部空間11を有する筐体を備える。
図3(a)に示される実施形態においては、幹綱Rは、本体10の前方(
図3(a)の左斜め下方向)の幹綱入口から本体10に入り、内部空間11を通って、本体10の後方(
図3(a)の右斜め上方向)の幹綱出口から出るようになっている。筐体は、幹綱入口側を正面として、正面から見て左側に位置するケース12aと、それと対向して右側に位置するケース12bと、ケース12aとケース12bとをそれらの上部で互いに連結する連結板13とを有する。ケース12a、12bは、それぞれ、幹綱入口側の前板121a、121bと、幹綱出口側の後板123a、123bと、前板121a、121bと後板123a、123bとの間に配置される側板122a、122bとを有する。ケース12a、12bの下方は開放されている。
【0017】
本体10は、前板121aの右辺と121bの左辺との間、後方の後板123aの右辺と123bの左辺との間、及び、側板122aの下辺と122bの下辺との間が開放された門型の構造であり、幹綱Rをまたぐようにして配置される。したがって、幹綱Rの繋ぎ目や、幹綱Rに取り付けられる養殖資材(例えば浮玉F)の縛り目があっても、養殖資材が幹綱Rの下方に存在する限り、本体10は、これらの繋ぎ目や縛り目を通過することができるため、養殖期間中の洗浄が可能となる。幹綱入口及び幹綱出口の幅及び高さは、異物が付着した幹綱Rが通過することを妨げないサイズである。
【0018】
通常、船舶Sの進行方向に向かって片側の船縁から海上に突出するように、船舶Sの前方及び後方に一対の桁移動具が設けられており、装置1は、前方の桁移動具と後方の桁移動具との間に配置される。洗浄時には、幹綱Rが海中から引き上げられて一対の桁移動具の間に渡され、本体10が幹綱Rをまたぐように配置され、その状態で船舶Sを前進させることによって、幹綱Rが内部空間11を通過する。
【0019】
本体10の内部空間11には、内部空間11を通過する幹綱Rに向けて洗浄用液体を噴射する噴射部と、内部空間11を通過する幹綱Rを洗浄用液体の噴射範囲に案内する幹綱案内部とが配置されている。本体10は、幹綱案内部として、幹綱入口側に配置された回転ローラ14aと、幹綱出口側に配置された回転ローラ14bとを有する。回転ローラ14a、14bは、幹綱Rが接するローラ部141a、141bと、それらを側板122a、122bに回転自在に支持する支持軸142a、142bとを有する。回転ローラ14a、14bは、幹綱Rの上に載っており、したがって、本体10の自重は、幹綱Rによって支持される。回転ローラ14a、14bは、本体10の移動に伴って幹綱Rの上に載った状態で回転し、内部空間11を通過する幹綱Rが、回転噴射ノズル16a、16bからの洗浄用液体の噴射範囲内を通過するように、より好ましくは洗浄用液体の噴射範囲の中央部に近い位置を通過するように、案内する。ローラ部141a、141bは、幹綱Rが常にローラ部141a、141bの中央部付近を走行するように、両端部から中央部にかけて直径が縮小する形状になっていることが好ましい。
【0020】
本体10は、噴射部として、正面から見て左側に設けられた回転噴射ノズル16aと、右側の位置に設けられた回転噴射ノズル16bとを有する。回転噴射ノズル16aは、ケース12aの内側に配置され、回転噴射ノズル16bは、ケース12bの内側に配置される。回転噴射ノズル16aと回転噴射ノズル16bとは、内部空間11内に一定間隔で向かい合っており、その間隔は、異物が付着した幹綱Rが通過できる間隔であればよい。
【0021】
回転噴射ノズル16a、16bは、それぞれ、側板122a、122bの内面に垂直な方向の回転軸162a、162bの周りに回転する胴体161a、161bと、胴体161a、161bの側面から延びる複数のアーム163a、163bと、各々のアーム163a、163bの先端に設けられた噴射ヘッド164a、164bとを有する。回転噴射ノズル16a、16bには、洗浄用液体供給パイプ20a、20bを介して高圧の洗浄用液体が供給される。回転噴射ノズル16a、16bは、噴射ヘッド164a、164bから高圧の洗浄用液体が噴射されるときの反作用で回転する自噴式であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば別途設けられるモータで回転する強制回転式であってもよい。回転噴射ノズル16a、16bの回転方向は、限定されるものではないが、互いに逆回転であることがより好ましい。本実施形態の構成により、高圧の洗浄用液体の噴射範囲内を通過する幹綱Rには、幹綱入口側と幹綱出口側とで、両側からそれぞれ2回、洗浄用液体が当たることになるため、幹綱Rに付着した異物を効果的に除去することができる。
【0022】
高圧の洗浄用液体は、一般的にホタテ貝養殖籠の洗浄に用いられる高圧ポンプを使用して洗浄用液体供給パイプ20a、20bに供給することができる。洗浄用液体の水圧は、3MPa~5MPaであることが好ましい。
【0023】
本実施形態においては、回転噴射ノズル16a、16bは、それぞれの回転軸162a、162bの延長線が一致する位置に取り付けられているが、これに限定されるものではない。例えば、回転噴射ノズル16a、16bのいずれか一方が幹綱入口側に、他方が幹綱出口側に取り付けられていてもよい。また、本実施形態においては、内部空間11を通過する幹綱Rに向けて洗浄用液体を噴射する噴射部として、回転噴射ノズルが用いられているが、噴射部はこの形態に限定されるものではない。例えば、幹綱入口側及び幹綱出口側において、それぞれ数個の噴射ヘッドを、例えば円形に配置されるように側板122a、122bに設け、これらの噴射ヘッドから幹綱Rに向けて洗浄用液体を噴射するようにしてもよい。
【0024】
装置1は、本体10を船舶Sに取り付けるための取付部30を備える。取付部30は、幹綱Rの上下動に対応して、本体10と船舶Sとの相対的位置関係を自動的に変化させることができるように構成されている。取付部30は、船舶Sに取り付けられる第1支持部と、本体10に取り付けられる第2支持部と、第1支持部と第2支持部とを連結する連結部とを有するものとすることができる。本実施形態においては、第1支持部は棒状の支柱32(
図4参照)であり、第2支持部は、本体10の連結板13に取り付けられた棒状の本体支持柱34である。支柱32と本体支持柱34とを連結する連結部は、棒状の連結柱36である。連結柱36には、本体支持柱36が挿通される貫通口31と、貫通口31に突出する上対向ローラ38a、38b及び下対向ローラ39a、39bを有するローラ保持部とが設けられる。本体支持柱34は、上対向ローラ38aと38b及び下対向ローラ39aと39bに挟まれて、貫通口31内を上下に移動することができる。本体支持柱34の上端には、本体支持柱34が貫通口31から脱落することを防止する落下防止板37が設けられることが好ましい。
【0025】
装置1は、上述の取付部30を備えることによって、洗浄時に波の影響により幹綱Rが上下に移動した場合でも、効果的に幹綱Rの洗浄を行うことができる。
図4は、装置1が、幹綱Rの上下動に対応して船舶Sとの間の相対的位置関係を変化させる動作を説明する模式図である。
図4(a1)及び
図4(b1)は、船舶Sの上下動にともなって幹綱Rが上下に移動する場合があることを示しており、
図4(a2)及び
図4(b2)は、幹綱Rの状態(
図4(a1)及び
図4(b1)の各々)に対応して船舶Sと本体10との位置関係が変化する動作を表す正面図である。
【0026】
洗浄時に、幹綱Rは、海中から引き上げられて、船舶Sの前方及び後方において船縁に設けられる桁移動具間に渡される(
図4(a1))。本体10は、回転ローラ14a、14bが桁移動具間に渡された幹綱Rに載るように配置される。幹綱Rは、洗浄時に船舶Sが波で沈むと緩み(
図4(b1))、船舶Sが浮くと張る(
図4(a1))。本体1の高さが固定され、幹綱Rが張った状態のときに幹綱Rが回転噴射ノズル16a、16bの洗浄用液体の噴射範囲に入るように構成されていると、船舶Sが沈んで幹綱Rの緩みが生じた場合に、幹綱Rが洗浄用液体の噴射範囲から外れるおそれがある。そこで、装置1は、船舶Sが波で上下に浮沈を繰り返す場合でも、船舶Sの動きに応じて本体10が上下することにより、幹綱Rが洗浄用液体の噴射範囲を通過するように構成されている。
【0027】
幹綱Rが緩んだとき(
図4(b1))には、
図4(b2)に示されるように、幹綱Rに載った本体10が自重で下降する。このとき、本体支持柱34は、上対向ローラ38aと38bとの間、及び下対向ローラ39aと39bとの間を、下方に移動する。一方、幹綱Rが張ったとき(
図4(a1))には、
図4(a2)に示されるように、幹綱Rに持ち上げられることによって本体10が上昇し、本体支持柱34は上方に移動する。このように、装置1においては、幹綱Rの上下動に対応して本体10が上下し、本体10と船舶Sとの相対的位置関係が自動的に変化するように構成されていることにより、幹綱Rは、回転ローラ14a、14bによって回転噴射ノズル16a、16bの洗浄用液体の噴射範囲内に常に案内されることになる。
【0028】
取付部30は、本実施形態の構成に限定されるものではない。取付部30は、例えば、互いに対して回転可能にリンクされた複数のアームと、アームの動きを規制する油圧ダンパーとを備えるリンクアーム機構とすることもできる。例えば、リンクアーム機構は、一方の端部が船舶Sに取り付けられた第1アームと、一方の端部が本体10に取り付けられた第2アームと、第1アームの他方の端部及び第2アームの他方の端部に回転可能に連結された第3アームとを有し、第1アーム及び第2アームのそれぞれと第3アームとが油圧ダンパーで連結されたものとすることができる。油圧ダンパーによるアームの動きの規制力は、幹綱Rに載った本体10が、幹綱Rの上下動に対応して自重で上下動を行うことができる程度のものとして設計される。
【0029】
装置1は、さらに、内部空間11への入口(幹綱入口)より大きいサイズの養殖資材が本体10の外部を通過するように案内するための養殖資材案内部を備えることが好ましい。装置1は、養殖資材案内部として、滑り板18a、18bを有する。滑り板18a、18bは、
図3に示されるように、ケース12a、12bの前方において半円弧状に張り出すように設けられた前部181a、181bと、前部181a、181bの下端に連続し、内部空間11の下を前後方向に渡された下部182a、182bと、下部182a、182bの後端に連続し、斜め上に向かって延びる後部183a、183bとを有する。
【0030】
図5は、装置1が、幹綱Rに浮玉Fが接続されている箇所を通過する際の動きを示す模式図である。装置1の内部空間11を幹綱Rが通過しているとき(
図5(a))に、内部空間11への入口より大きなサイズの浮玉Fが近づき(
図5(b))、浮玉Fは、装置1の前方に配置された滑り板18a、18bの前部181a、181bに当たる(
図5(c))。前部181a、181bに当たった浮玉Fは、前部181a、181bに沿って下方に移動し、下部182a、182bに沿って後方に移動する(
図5(d))。本体10は、浮玉Fを乗り越えるときに上昇し、幹綱Rが回転ローラ14a、14bから離れ((
図5(d))、幹綱Rに浮玉Fが接続されている部分を容易に通過する(
図5(e))。したがって、装置1を用いれば、浮玉Fなどの養殖資材が存在する箇所でも作業を中断することなく、連続的に洗浄を行うことができる。
【0031】
本実施形態において、滑り板は、前部181a、181bのみが前方に半円弧状に張り出した形状であるが、これに限定されるものではない。別の実施形態においては、例えば
図6に示されるように、滑り板は、本体10の前方だけでなく、後部183’a、183’bが半円弧状に後方にも張り出した形状のものとすることができる。滑り板をこのような形状にすることによって、船舶Sを前進させて洗浄を行うだけでなく、後退させて洗浄を行うこともできる。さらに別の実施形態においては、前部181a、181bは、半円弧状に張り出した形状ではなく、例えば下部182a、182bから連続して四分円弧状に前方に突出した形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 養殖桁洗浄装置
10 本体
11 内部空間
12a、12b ケース
121a、121b 前板
122a、122b 側板
123a、123b 後板
13 連結板
14a、14b 回転ローラ
141a、141b ローラ部
142a、142b 支持軸
16a、16b 回転噴射ノズル
161a、161b 胴体
162a、162b 回転軸
163a、163b アーム
164a、164b 噴射ヘッド
18a、18b 滑り板
181a、181b 前部
182a、182b 下部
183a、183b 後部
20 洗浄用液体供給パイプ
30 取付部
31 貫通口
32 支柱
34 本体支持柱
36 連結柱
37 落下防止板
38a、38b 上対向ローラ
39a、39b 下対向ローラ
F 浮玉
R 幹綱
S 船舶