(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ガスバーナ及びボイラ
(51)【国際特許分類】
F23L 7/00 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
F23C99/00 334
(21)【出願番号】P 2021106851
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】冠木 豊
(72)【発明者】
【氏名】上妻 富明
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄三
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実公昭52-028171(JP,Y2)
【文献】特開2008-111591(JP,A)
【文献】特開昭62-123207(JP,A)
【文献】特開昭51-148827(JP,A)
【文献】特開2018-091592(JP,A)
【文献】実開昭55-171812(JP,U)
【文献】特開昭50-066611(JP,A)
【文献】実開昭56-089509(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 7/00
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナは、
燃焼空間にガス燃料を供給するためのガス燃料ノズルと、
前記ガス燃料ノズルから噴出した前記ガス燃料に混合させる一次空気が流通する一次空気通路を含む一次空気通路部と、
前記一次空気が混合された前記ガス燃料に混合させる二次空気が流通する二次空気通路を含む二次空気通路部と、
前記二次空気通路に設けられ、前記燃焼空間に水又は蒸気を噴霧するための少なくとも一つの噴霧ノズルと、
を備え
、
前記ガス燃料ノズルは、少なくとも一つの主孔と、前記主孔より孔径が小さく少なくとも二つの副孔と、を含み、
前記少なくとも1つの主孔と前記少なくとも二つの副孔は、前記ガスバーナの中心軸線の周りに互いに間隔を空けて配置され、
前記少なくとも1つの噴霧ノズルは、前記ガスバーナの中心軸線を中心とした周方向において、前記少なくとも2つの副孔の間に位置し、
前記ガスバーナの中心軸線及び前記主孔の出口中心位置を通る直線を基準線とし、前記周方向において、前記少なくとも一つの主孔の前記基準線からの角度位置をθ1、前記少なくとも一つの噴霧ノズルの前記基準線からの角度位置をθ2とした場合に、下記式(1)を満たす、
ガスバーナ。
θ2-10°≦θ1≦θ2+10°・・・(1)
【請求項2】
前記少なくとも一つの噴霧ノズルは、前記少なくとも一つの噴霧ノズルの中心軸線の延在方向が、前記主孔から噴出する前記ガス燃料が燃焼することで形成される主燃焼火炎を通過するように構成された、
請求項1に記載のガスバーナ。
【請求項3】
前記少なくとも一つの主孔は、前記ガスバーナ
の中心軸線の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の主孔を含み、
前記少なくとも一つの噴霧ノズルは、前記ガスバーナの前記中心軸線の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の噴霧ノズルを含み、
前記複数の主孔の数と前記複数の噴霧ノズルの数とは同数であり、
前記複数の噴霧ノズルの各々は、前記複数の噴霧ノズルの各々の中心軸線の延在方向が、前記複数の主孔の各々から噴出する前記ガス燃料が燃焼することで形成され
る主燃焼火炎をそれぞれ通過するように構成された、
請求項
1又は2に記載のガスバーナ。
【請求項4】
前記少なくとも一つの主孔は、前記ガスバーナの前記中心軸線の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の主孔を含み、
前記少なくとも一つの噴霧ノズルは、前記ガスバーナの前記中心軸線の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の噴霧ノズルを含み、
前記複数の主孔の数と前記複数の噴霧ノズルの数とは同数であり、
前記複数の主孔の各々および前記複数の噴霧ノズルの各々は、前記(1)式を満たすように構成された、
請求項
1又は2に記載のガスバーナ。
【請求項5】
前記ガス燃料は水素ガスを含むガス燃料である、
請求項1乃至
4の何れか一項に記載のガスバーナ。
【請求項6】
前記燃焼空間が内部に形成される火炉と、
前記火炉に設けられた請求項1乃至
5の何れか一項に記載のガスバーナと、
を備える、
ボイラ。
【請求項7】
ボイラ給水を加熱して蒸気を生成するための蒸発器と、
前記蒸気を前記噴霧ノズルに供給するための蒸気供給ラインと、
を備える、
請求項
6に記載のボイラ。
【請求項8】
蒸気ドラムから過熱器に送られる飽和蒸気が流通する接続管をさらに備え、
前記蒸気供給ラインは、前記接続管と前記噴霧ノズルとを接続し、前記飽和蒸気を前記噴霧ノズルに供給する、
請求項7に記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスバーナ及び該ガスバーナを備えるボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電プラントにおいては、地球環境への影響を考慮して、二酸化炭素排出量を削減することが課題となっており、化石燃料の消費量削減や化石燃料に代わるエネルギ資源への転換が求められている。このような低炭素社会に適したエネルギ資源として水素が注目されている。水素は、炭素を含有しないため、燃焼時に二酸化炭素を生じない。しかし、水素は燃焼速度が速く燃焼性が優れているため、水素をボイラなどに設けられたバーナの燃料として用いたとき、火炎温度が高くなり、NOx(窒素酸化物)が発生しやすくなる。
【0003】
特許文献1には、NOxの発生を抑制可能なガスバーナが記載されている。このガスバーナは、天然ガスなどのガス燃料を用い、バーナ中心部に一次空気が供給される一次空気通路部と、一次空気通路部の周囲に二次空気が供給される二次空気通路部とを備えている。そして、ガス燃料ノズルから噴出するガス燃料と一次空気との燃料リッチの混合気が燃焼する第一燃焼反応領域と、二次空気を含む空気リッチの混合気が燃焼する第二燃焼反応領域とを形成することで、NOx発生量を抑制可能にすると共に、一次空気通路のほぼ径方向中央に水噴霧管を設け、該水噴霧管から水又は蒸気を燃焼反応領域に噴霧することにより、燃焼ガス温度を下げ、NOx発生量を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の低NOxバーナは、一次空気通路のほぼ中央に設けられた水噴霧管から、ガス燃料と一次空気とで燃料リッチ燃焼が行われる第一燃焼反応領域に水又は蒸気が噴霧される。第一燃焼反応領域は、ガス燃料と二次空気とで燃料希薄燃焼が行われる第二燃焼反応領域より温度が低いため、NOx発生量は第二燃焼反応領域より少ない。従って、NOx低減効果は限定的なものになる。また、水噴霧管は第二燃焼反応領域から離れているため、必要以上に噴霧量を多くすることになり、ランニングコストが増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑み、ガス燃料を用いるガスバーナにおいて、低NOx効果を高めることが可能なガスバーナを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るガスバーナの一態様は、燃焼空間にガス燃料を供給するためのガス燃料ノズルと、前記ガス燃料ノズルから噴出した前記ガス燃料に混合させる一次空気が流通する一次空気通路を含む一次空気通路部と、前記一次空気が混合された前記ガス燃料に混合させる二次空気が流通する二次空気通路を含む二次空気通路部と、前記二次空気通路に設けられ、前記燃焼空間に水又は蒸気を噴霧するための少なくとも一つの噴霧ノズルと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るガスバーナ及びボイラの一態様によれば、燃料リッチ燃焼と空気リッチ燃焼とを二段階に行うことで、NOxの発生を抑制できると共に、ガスバーナの二次空気通路に設けられた噴霧ノズルから火炉内の燃焼空間に水又は蒸気を噴霧することで、高温となるためNOxが多く発生しやすい空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の温度を低減することができる。これによって、NOxの発生を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るガスバーナの一部断面を示す概略側面断面図、及び該ガスバーナへのガス燃料供給システム図である。
【
図2】
図1中の矢印A方向から視認した模式的正面図である。
【
図3】一実施形態に係るガス燃料ノズルの先端部の側面断面図(
図4中のB―B線に沿う断面矢視図)である。
【
図4】一実施形態に係るガス燃料ノズルを火炉内から視認した正面図である。
【
図5】一実施形態に係るボイラの模式的断面図である。
【
図6】別な実施形態に係るボイラの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1~
図4は、一実施形態に係るガスバーナ1を示す。
図1及び
図2に示すように、例えばボイラなどを構成する火炉3の側壁に、ガスバーナ1を設置するための開口部を形成するバーナスロート部5が設けられ、該開口部にガスバーナ1が設置されている。ガスバーナ1は、火炉3の内部に形成される燃焼空間4に水素ガスを含むガス燃料を供給するためのガス燃料ノズル7と、ガス燃料ノズル7の外周部に一次空気通路9を形成する一次空気通路部13と、一次空気通路部13の外周側に二次空気通路11を形成する二次空気通路部15と、の三重構造からなっている。二次空気通路11には燃焼空間4に水又は蒸気を噴霧するための少なくとも一つの噴霧ノズル16が設けられている。
【0012】
図3及び
図4に示すように、ガス燃料ノズル7の先端部7aにガス燃料gを燃焼空間4に向けて噴出する燃料噴出孔25及び27が形成されている。上述した一次空気通路9から供給される一次空気F1は、ガス燃料gに対する空気比が1未満になるように設定されている。なお、空気比とはガス燃料を完全燃焼させるのに必要な空気量を1としたときの空気量の比率をいう。
【0013】
このような構成において、まず、噴出孔25及び27から噴出するガス燃料gと一次空気通路9から供給される一次空気F1とが混合した、空気比が1未満の燃料リッチ混合気による燃料リッチ燃焼が行われる。次に、さらに二次空気通路11から供給される二次空気F2を加えた、空気比が1以上の空気リッチ混合気による空気リッチ燃焼を二段階に行うことで、NOxの発生を抑制できる。
【0014】
空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域は高温となるためNOxが多く発生しやすい。二次空気通路11に設けられた噴霧ノズル16から水又は蒸気を噴霧することで、該燃焼領域の温度を低減することができる。これによって、NOxの発生を効果的に抑制できる。
図1及び
図2において、破線20は噴霧ノズル16から燃焼空間4に噴霧された水又は蒸気の噴霧領域を示す。
【0015】
本実施形態において、噴霧ノズル16は、二次空気通路11に設けられるため、ガス燃料ノズル7の中心軸線C1を中心とした径方向において、特許文献1のように一次空気通路9に設けられる場合よりも外側に設けられる。そのため、中心軸線C1を中心とした径方向において、噴霧ノズル16を空気リッチ燃焼が形成される燃焼領域に近い位置に配置できる。従って、少量の噴霧量で該燃焼領域を効率良く冷却できる。
【0016】
比較例として、燃焼用空気の供給経路又は排ガスの排出経路に水又は蒸気を噴霧する場合、火炎冷却が不要な領域を含めて満遍なく投入することになり、必要以上の多量の噴霧量を投入することになり、ランニングコストが高くなる。特許文献1のように、一次空気通路9に噴霧ノズルを配置した場合、噴霧位置と空気リッチ燃焼が行われる領域との距離が離れているため、必要以上に噴霧することになり、ランニングコストが高くなる。
【0017】
一実施形態では、噴霧ノズル16の中心軸線C2は、火炉3の側壁面3aに対して直交する方向に沿って配置される。これによって、中心軸線C2が火炉3の側壁面3aに対して斜めに配置された場合と比べて、水又は蒸気を火炉3の側壁面3aから燃焼空間4の奥側にさらに離れた位置まで到達させることができる。そのため、水又は蒸気を空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域又は該燃焼領域の近くに噴霧することができる。
【0018】
一実施形態では、ガスバーナ1の先端部7a、一次空気通路部13の出口端13a及び噴霧ノズル16の出口端16aは、ガス燃料ノズル7の中心軸線C1に沿う方向において、火炉3の側壁面3aの内面(燃焼空間4に面する面)と側壁面3aの外側面との間の位置に配置される。これによって、噴霧ノズル16の先端部の焼損を抑制しつつ、出口端16aから噴霧される水又は蒸気の噴霧角度(
図1の破線20の中心軸線C2に対する角度)の自由度を確保できる。
【0019】
図1に示す実施形態では、ガスバーナ1の中心軸線は、ガス燃料ノズル7の中心軸線C1と一致する。
【0020】
一実施形態では、ガス燃料ノズル7、一次空気通路部13及び二次空気通路部15は、夫々円筒形状に形成される。一次空気通路9は一次空気通路部13を形成する隔壁の内側に形成され、二次空気通路11は二次空気通路部15を形成する隔壁の内部に形成されている。なお、二次空気通路部15の外周側にさらに三次空気流路(不図示)を形成する三次空気流路部を設けてもよい。
【0021】
一実施形態では、ガス燃料gは水素ガスを含むガス燃料が用いられる。水素ガスを含むガス燃料を用いることで、燃焼速度を速め燃焼性を高めることができると共に、燃焼時に二酸化炭素の発生を抑制できる。また、火炎温度が高くなりNOxが発生しやすい水素ガスを含むガス燃料を上述のガスバーナに用いても、NOxの発生を効果的に抑制できる。
【0022】
本実施形態で用いられるガス燃料は、水素ガスと他の燃料(例えば、メタンを主成分とし、その他にエタン、プロパン及びブタンを含む都市ガスやプロパン、ブタンを主成分とするLPG(液化石油ガス)など)を含む場合(混焼)、及び水素ガスのみ場合(専焼)を含む。混焼の場合、水素ガスが主たる燃料である場合(水素ガスの体積割合が50%以上)及び他の燃料が主たる燃料である場合(水素ガスの体積割合が50%未満)を含む。
【0023】
水素ガスは、都市ガスやLPGと比較して燃焼速度が速く燃焼性が良いため、保炎性に優れた本実施形態に係るガスバーナ1に適用すると、保炎性即ち燃焼の安定性がさらに強化され、燃焼振動のポテンシャルは都市ガスやLPGより低減できると考えられる。従って、ガス燃料に占める水素ガスの含有率を高くすることで燃焼安定性を向上できるため、燃焼振動を抑制しつつNOxの発生を抑制できる。
【0024】
一実施形態では、水素ガスを含むガス燃料を用いる場合、一次空気F1の空気比は0.2~0.9であり、二次空気F2の空気比は、0.6~1.1であり、一次空気F1と二次空気F2の合計の空気比は1.0~2.0である。一次空気F1の空気比は、好ましくは0.2~0.5であり、二次空気F2の空気比は、好ましくは0.6~0.9である。水素ガスを含むガス燃料は、メタン、プロパン等の炭化水素系燃料と比べて燃焼速度が速く燃焼性が優れているため、一次空気F1の空気比の下限値を炭化水素系燃料より下げ、又は二次空気F2の空気比の上限値を炭化水素系燃料より増加しても燃焼が可能である。
【0025】
図1及び
図2に示す実施形態では、一次空気通路9を流れる中心空気である一次空気F1は直進流であるが、ガス燃料ノズル7の出口部分、即ち、一次空気通路9の出口部分に設けられたスワラ(保炎器)17によって、一次空気F1のうちの一部に旋回力が与えられ、スワラ17の後流側の火炉3内の領域に淀み領域19が形成される。この淀み領域19にガス燃料gが取り込まれることで、火炎の安定保持が可能となる。
【0026】
また、一次空気通路9の入口部には一次空気開口部21が設けられ、一次空気開口部21から一次空気通路9に一次空気F1が導入される。二次空気通路11の入口部には、エアレジスタ23が設置されて、レジスタタイプの旋回装置によって二次空気通路11に流入する二次空気F2に旋回力が与えられる。
【0027】
また、火炉3の側壁に形成されたガスバーナ1用の開口部分であるバーナスロート部5の外周部には、開口部の周囲を冷却するようにボイラ給水が流れる水管6が開口部を囲うように設置されている。
【0028】
次に、
図1を参照してガスバーナ1に水素ガスを含むガス燃料を供給するシステム構成について説明する。水素を含むガス燃料が貯蔵される水素ガスタンク29の出口には、入口弁31が設けられ、水素ガスタンク29からのガス燃料の供給及び遮断が制御される。入口弁31の出口側に減圧弁33が設けられ、ガス燃料は所定の圧力に減圧される。
【0029】
減圧弁33の下流側には、順に、流量計35、温度計37、遮断弁39、圧力計41、流量調整弁43、遮断弁45、バーナ入口圧力計47、バーナ入口弁49が設けられている。バーナ入口弁49を開弁することで、ガスバーナ1のガス燃料ノズル7にガス燃料gが供給される。
【0030】
一実施形態では、
図3及び
図4に示すように、ガス燃料ノズル7の先端部7aに設けられた燃料噴出孔25及び27は、少なくとも一つの主孔25と、主孔25より孔径が小さい少なくとも一つの副孔27と、を有する。主孔25から噴出するガス燃料gが燃焼することによって主燃焼火炎26が形成され、副孔27から噴出するガス燃料gが燃焼することによって副燃焼火炎28が形成される。噴霧ノズル16は、噴霧ノズル16の中心軸線C2の延在方向が、主燃焼火炎26を通過するように構成される。
【0031】
図1及び
図2に示すように、主燃焼火炎26及び副燃焼火炎28は、ガス燃料gの噴出方向に沿って延在する。主孔25は孔径が大きいためにガス燃料gの噴出量が多く、主燃焼火炎26の割合(燃焼火炎が広がる範囲、燃焼火炎が到達する距離、等)は、副燃焼火炎28より大きい。二次空気F2が加わることによって起こる空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域は、ガス燃料gと一次空気F1とによって形成される、燃料リッチ燃焼が行われる燃焼領域よりもガス燃料ノズル7の先端部7aより離れた場所で形成される。主燃焼火炎26の方が副燃焼火炎28より到達距離が長いため、空気リッチ燃焼の形成に与える影響度は副燃焼火炎28より主燃焼火炎26の方が大きい。本実施形態では、噴霧ノズル16の中心軸線C2の延在方向が、主燃焼火炎26を通過するように構成されるため、噴霧ノズル16から噴霧される水又は蒸気を主燃焼火炎26に正確に吹き付けることができる。そのため、空気リッチ燃焼が行われる燃料領域の温度を効果的に低減できる。
【0032】
一実施形態では、噴霧ノズル16が二次空気通路11に配置され、かつ噴霧ノズル16の中心軸線C2は、火炉3の側壁面3aに対して直交する方向に沿って配置される。これによって、噴霧ノズル16から噴霧される水又は蒸気を主燃焼火炎26の延在方向中心部に向けて噴霧することができる。そのため、空気リッチ燃焼が行われる燃料領域の温度を効果的に低減できる。
【0033】
なお、副孔27の孔径を主孔25の孔径より小さくし、副孔27から噴出するガス燃料gの流量を主孔25から噴出するガス燃料gの流量より小さくすることで、副孔27から噴出するガス燃料gは一次空気F1の一部に旋回力を与えるスワラ17の下流側に形成される淀み領域19に取り込まれやすくなる。これによって、火炎を安定保持でき、燃焼振動を抑制できる。
【0034】
また、
図3に示すように、主孔25の中心軸線C1に対する仰角を主孔噴出角度α1とし、副孔27の中心軸線C1に対する仰角を副孔噴出角度α2としたとき、α1<α2となるように構成される。これによって、主燃焼火炎26を長炎化でき緩慢燃焼を促進させることができる。そのため、火炎温度が低下しNOxの発生を抑制できる。また、α1<α2とすることで、副燃焼火炎28によって保炎効果を向上できる。
【0035】
また、
図3に示す実施形態では、ガス燃料ノズル7の内部にガス燃料通路8が形成されている。また、主孔25は、主孔25の中心軸線C3がガス燃料通路8に連通する入口開口25aから出口開口25bまで直線となるように形成される。また、副孔27は、副孔27の中心軸線C4がガス燃料通路8に連通する入口開口27aから出口開口27bまで直線となるように形成される。即ち、主孔25及び副孔27は、入口開口から出口開口まで直線状に形成され、曲線状に形成されたり、途中で曲折したりしていない。また、主孔25及び副孔27の孔径は入口開口25aから出口開口25bまで同一となるように形成されている。さらに、主孔25及び副孔27は、中心軸線C3及びC4の一端側が中心軸線C1に交わるように形成されている。
【0036】
また、主孔25及び副孔27は横断面が円形を有するが、必ずしも円形に限定されない。
【0037】
一実施形態では、
図4に示すように、ガスバーナ1の中心軸線(
図4に示す実施形態ではガス燃料ノズル7の中心軸線C1)を中心とした周方向において、中心軸線C1及び一つの主孔25の出口中心位置25cを通る基準線Lcを中心軸線C1の周方向における基準線としたとき、少なくとも一つの主孔25の基準線Lcからの角度位置をθ1、少なくとも一つの噴霧ノズル16の基準線Lcからの角度位置をθ2とした場合に、下記式(1)を満たすように構成される。
θ2-10°≦θ1≦θ2+10°・・・(1)
即ち、主孔25の角度位置θ1と噴霧ノズル16の角度位置θ2とは、Δθ=|θ1-θ2|≦10°の関係にある。
【0038】
このような構成によれば、孔径が大きいためにガス燃料gの噴出量が多い主孔25の周方向角度位置と噴霧ノズル16の周方向角度位置とを合致させるか又は接近させることができる。これによって、噴霧ノズル16から噴霧される水又は蒸気を、空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の形成に対する寄与度が大きい主燃焼火炎26に正確に吹き付けることができる。そのため、空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の温度を効果的に低減できる。
【0039】
上述のように、噴霧ノズル16は、二次空気通路11に設けられているため、中心軸線C1を中心とした径方向においても、中心軸線C1から離れた位置に配置されている。その結果、噴霧ノズル16から噴霧される水又は蒸気を主燃焼火炎26の延在方向中心部に正確に吹き付けることができるため、空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の温度を効果的に低減できる。
【0040】
一実施形態では、
図2及び
図4に示すように、ガス燃料ノズル7の先端部にガスバーナ1の中心軸線C1の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の主孔25と、中心軸線C1の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の噴霧ノズル16と、が設けられる。複数の主孔25の数と複数の噴霧ノズル16の数とは同数であり、噴霧ノズル16の各々は、複数の噴霧ノズル16の各々の中心軸線C2の延在方向が、複数の主孔25の各々から噴出するガス燃料gが燃焼することで形成される主燃焼火炎26をそれぞれ通過するように構成される。なお、
図4では、1個の噴霧ノズル16のみを模式的に図示し、他の噴霧ノズル16の図示を省略している。
【0041】
この実施形態によれば、複数の主孔25と複数の噴霧ノズル16とを夫々一対一に対応させた配置とすることができる。これによって、複数の主孔25に対して1個の噴霧ノズル16を配置する場合と比べて、主燃焼火炎26の温度を確実に低減でき、NOx抑制効果を高めることができる。また、1個の主孔25に対して複数の噴霧ノズル16を配置する場合と比べて、設備費及び水又は蒸気の噴霧量を低減でき、経費節減に寄与できる。
【0042】
また、複数の噴霧ノズル16は二次空気通路11に設けられているため、特許文献1のように一次空気通路9に設けられた場合と比べて、ガス燃料ノズル7の中心軸線C1から離れた位置に設けられる。従って、中心軸線C1の周方向において噴霧ノズル16間の距離を長くすることができる。そのため、複数の噴霧ノズル16の各々から噴霧される水又は蒸気の互いの干渉を回避できるか、あるいは干渉領域を最小化できるため、噴霧量も最小化できる。
【0043】
一実施形態では、
図4に示すように、複数の主孔25と複数の副孔27はそれぞれ、中心軸線C1の周りに主孔25と副孔27とが交互に均等に配置されている。即ち、中心軸線C1の周りに各孔間のピッチ角度βが等しい間隔となっている。このように、主孔25は、中心軸線C1の周りに中心軸線C1を挟んで互いに対称となるように、ガス燃料ノズル7の先端部に複数形成されているので、主孔25から噴出されるガス燃料gは、ガスバーナ1の中心に対して偏りなく均等に噴出される。
【0044】
また、副孔27についても、中心軸線C1の周りに中心軸線C1を挟んで互いに対称となるように、ガス燃料ノズル7の先端部に複数形成されているので、副孔27から噴出されるガス燃料gは、ガスバーナ1の中心に対して偏りなく均等に噴出される。
【0045】
図4に示す実施形態では、4個の主孔25と4個の副孔27はそれぞれ、中心軸線C1の周りに主孔25と副孔27とが交互に均等に配置されている。即ち、中心軸線C1の周りに主孔25と副孔27との間のピッチ角度が中心軸線C1の周方向全周において45°と等しい間隔となっている。
【0046】
また、主孔25の出口開口25bの中心位置25cと、副孔27の出口開口27bの中心位置27cとは、ガス燃料ノズル7の中心軸線C1から距離が同一となるように設けられている。主孔25及び副孔27の出口開口25b、27bの中心位置25c、27cが中心軸線C1から同一距離であっても、主孔25の孔径が副孔27の孔径より大きいためにガス燃料gの噴出量が多く、かつ(主孔25の噴出角度α1)<(副孔27の噴出角度α2)であるために、
図1に示すように、主孔25からの主燃焼火炎26の到達距離は副孔27からの副燃焼火炎28の到達距離より長くなる。
【0047】
一実施形態では、
図2及び
図4に示すように、ガス燃料ノズル7の先端部分にガスバーナ1の中心軸線C1の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の主孔25と、中心軸線C1の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の噴霧ノズル16と、が設けられる。複数の主孔25の数と複数の噴霧ノズル16の数とは同数であり、複数の主孔25の各々及び複数の噴霧ノズル16の各々は、前記(1)式を満たすように構成される。
【0048】
これによって、複数の主孔25と複数の噴霧ノズル16とを夫々一対一に対応させた配置とすることができる。そのため、複数の主孔25に対して1個の噴霧ノズル16を配置する場合と比べて、主燃焼火炎26の温度を確実に低減でき、NOx抑制効果を高めることができる。また、1個の主孔25に対して複数の噴霧ノズル16を配置する場合と比べて、設備費及び水又は蒸気の噴霧量を低減でき、経費節減に寄与できる。
【0049】
また、複数の噴霧ノズル16は二次空気通路11に設けられ、上記実施形態と同様に、ガス燃料ノズル7の中心軸線C1から離れた位置にあり、従って、中心軸線C1の周方向において噴霧ノズル16間の距離を長くすることができる。これによって、複数の噴霧ノズル16の各々から噴霧される水又は蒸気の互いの干渉を回避できるか、あるいは干渉領域を最小化できるため、噴霧量も最小化できる。
【0050】
図5及び
図6は、幾つかの実施形態に係るボイラを示す模式的断面図である。ボイラ50(50A、50B)は、内部に燃焼空間54が形成される火炉52を備え、火炉52を構成する隔壁に、上述した幾つかの実施形態に係るガスバーナ1を備えている。ガスバーナ1には、水素ガスを含むガス燃料gと、一次空気F1及び二次空気F2となる燃焼用空気aが供給される。燃焼空間54に伝熱管群で構成される蒸発器55が設けられている。蒸発器55を構成する伝熱管群を流れるボイラ給水Wbは燃焼空間54に形成される燃焼火炎58の熱を吸収して蒸気となる。ボイラ50で生成された蒸気は蒸気タービン(不図示)に送られ、該蒸気タービンを駆動する動力源となる。
【0051】
このような構成によれば、上述した構成のガスバーナ1を備えるため、高温となるためNOxが多く発生しやすい空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の温度を低減することができる。従って、NOxの発生を効果的に抑制できるボイラを実現できる。
【0052】
図5及び
図6に示す実施形態では、蒸発器55より燃焼ガスの流れ方向上流側の燃焼空間54に過熱器56及び57が設けられている。蒸発器55で生成された蒸気は一時蒸気ドラム64に貯留され、その後過熱器56及び57に送られ、過熱器56及び57で過熱蒸気となって蒸気タービンに送られる。ガスバーナ1より上方のボイラ50の隔壁にアフタエアポート62が設けられ、アフタエアポート62から燃焼空間54で完全燃焼させるためのアディショナルエアAaが供給される。
【0053】
一実施形態では、
図5に示すように、蒸発器55で生成された蒸気を噴霧ノズル16に供給するための蒸気供給ライン68を備えている。蒸気供給ライン68を備えているため、燃焼空間54への噴霧に必要な蒸気をボイラ50(50A)で生成された蒸気の一部で賄うことができる。そのため、別な蒸気供給源を必要とせず、設備費を低コスト化できる。
【0054】
また、蒸気を噴霧ノズル16に供給するため、水を供給するために必要な給水ポンプを必要とせず、蒸気を噴霧ノズル16に供給するための設備費が高価とならない。また、水と比べて燃焼空間54に均一に散布できると共に、高圧にして噴霧することができるため、噴霧領域を広げることができる、等の利点がある。
【0055】
図5に示す実施形態では、蒸気供給ライン68に、止め弁70,流量調整弁72,流量計74,圧力計76及び温度計78が設けられている。これらの計器によって、噴霧ノズル16に供給される蒸気の温度、圧力等の状態量を検出でき、かつ流量などを調整できる。
【0056】
図5に示す実施形態では、蒸気供給ライン68の上流側始端は、蒸気ドラム64と過熱器57とを接続する接続管66に接続されている。接続管66には、蒸気ドラム64から過熱器57に送られる飽和蒸気が流れている。このように、過熱器57で過熱蒸気となる前の低温の飽和蒸気を蒸気供給ライン68に供給しているため、過熱蒸気を蒸気供給ライン68に供給する場合と比べて、過熱蒸気より冷却効果を高めることができる。また、過熱蒸気より熱保有量が少ないため、ボイラプラント全体の熱効率の低下を抑制できる。
【0057】
なお、
図5に示す実施形態では、過熱蒸気となる前の飽和蒸気を蒸気供給ライン68に供給しているが、必ずしもこの実施形態に限定されず、蒸気ドラム64に貯留された蒸気など、他の部位の蒸気を供給するようにしてもよい。
【0058】
一実施形態では、
図6に示すように、上水Wcを噴霧ノズル16に供給するための水供給ライン80が設けられている。そのため、水道水などの上水Wcを水供給ライン80を介して噴霧ノズル16に供給することができる。このように、水を噴霧ノズル16に供給する場合、水道水などを供給源とすることができると共に、蒸気と比べて冷却効果が高いという利点がある。
【0059】
別な実施形態では、ボイラ給水Wbをヘッダ60などに供給する配管から分岐して噴霧ノズル16に供給する供給ラインを設け、ボイラ給水Wbの一部を噴霧ノズル16に供給するようにしてもよい。
【0060】
図6に示す実施形態では、水供給ライン80には、蒸気供給ライン68と同様の計器類が設けられているため、これらの計器によって、噴霧ノズル16に供給される蒸気の温度、圧力等の状態量を検出でき、かつ流量などを調整できる。
【0061】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0062】
1)一態様に係るガスバーナは、燃焼空間(4)に水素ガスを含むガス燃料(g)を供給するためのガス燃料ノズル(7)と、前記ガス燃料ノズル(7)から噴出した前記ガス燃料(g)に混合させる一次空気(F1)が流通する一次空気通路(9)を含む一次空気通路部(13)と、前記一次空気(F1)が混合された前記ガス燃料(g)に混合させる二次空気(F2)が流通する二次空気通路(11)を含む二次空気通路部(15)と、前記二次空気通路(11)に設けられ、前記燃焼空間(4)に水又は蒸気を噴霧するための少なくとも一つの噴霧ノズル(16)と、を備える。
【0063】
このような構成によれば、水素ガスを含むガス燃料(g)と一次空気通路部(13)から供給される一次空気(F1)との燃料リッチ混合気によって燃焼する燃料リッチ燃焼と、一次空気(F1)に二次空気通路部(15)から供給される二次空気(F2)を加えた空気リッチ混合気によって燃焼する空気リッチ燃焼とを二段階に行うことで、NOxの発生を抑制できる。また、二次空気通路(13)に設けられた上記噴霧ノズル(16)から水又は蒸気を噴霧することで、高温となるためNOxが多く発生しやすい空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の温度を低減することができる。これによって、NOxの発生を効果的に抑制できる。
【0064】
噴霧ノズル(16)は、二次空気通路(11)に設けられるため、ガスバーナ(1)の中心軸線(C1)を中心とした径方向において、特許文献1のように一次空気通路(9)に設けられる場合よりも外側に設けられる。そのため、中心軸線(C1)を中心とした径方向において、噴霧ノズル(16)を空気リッチ燃焼が形成される燃焼領域に近い位置に配置できる。従って、少量の噴霧量で効率良く該燃焼領域を冷却できる。
【0065】
2)別な態様に係るガスバーナは、1)に記載のガスバーナにおいて、前記ガス燃料ノズル(7)は、少なくとも一つの主孔(25)と、前記主孔(25)より孔径が小さい少なくとも一つの副孔(27)と、を含み、前記少なくとも一つの噴霧ノズル(16)は、前記少なくとも一つの噴霧ノズル(16)の中心軸線(C2)の延在方向が、前記主孔(25)から噴出する前記ガス燃料(g)が燃焼することで形成される主燃焼火炎(26)を通過するように構成される。
【0066】
孔径が副孔(27)より大きい主孔(25)から噴出するガス燃料(g)によって形成される主燃焼火炎(26)は、副孔(27)から噴出するガス燃料(g)によって形成される副燃焼火炎(28)より長炎化する。従って、主燃焼火炎(26)は、空気リッチ燃焼の形成に寄与する寄与度は副燃焼火炎(28)より大きい。上記2)の構成によれば、噴霧ノズル(16)の中心軸線(C2)の延在方向が、主燃焼火炎(26)を通過するように構成されているため、噴霧ノズル(16)から噴霧される水又は蒸気を副燃焼火炎(26)に正確に吹き付けることができる。これによって、空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の温度を効果的に低減できる。
【0067】
3)さらに、別な態様に係るガスバーナは、1)又は2)に記載のガスバーナにおいて、前記ガス燃料ノズル(7)は、少なくとも一つの主孔(25)と、前記主孔(25)より孔径が小さい少なくとも一つの副孔(27)と、を含み、前記ガスバーナ(1)の前記中心軸線(C1)を中心とした周方向において、前記少なくとも一つの主孔(25)の角度位置をθ1、前記少なくとも一つの噴霧ノズル(16)の角度位置をθ2とした場合に、下記式(1)を満たす。
θ2-10°≦θ1≦θ2+10°・・・(1)
【0068】
このような構成によれば、ガスバーナ(1)の中心軸線(C1)を中心とした周方向において、主孔(25)の角度位置θ1と噴霧ノズル(16)の角度位置θ2とが上記(1)式を満たすため、主孔(25)と噴霧ノズル(16)の周方向角度位置を合致させるか又は接近させることができる。そのため、噴霧ノズル(16)から噴霧される水又は蒸気を空気リッチ燃焼の形成に対して寄与度が大きい主燃焼火炎(26)に正確に吹き付けることができる。これによって、空気リッチ燃焼が行われる燃焼領域の温度を効果的に低減できる。
【0069】
4)さらに別な態様に係るガスバーナは、2)に記載のガスバーナにおいて、前記少なくとも一つの主孔(25)は、前記ガスバーナ(1)の前記中心軸線(C1)の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の主孔(25)を含み、前記少なくとも一つの噴霧ノズル(16)は、前記ガスバーナ(1)の前記中心軸線(C1)の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の噴霧ノズル(16)を含み、前記複数の主孔(25)の数と前記複数の噴霧ノズル(16)の数とは同数であり、前記複数の噴霧ノズル(16)の各々は、前記複数の噴霧ノズル(16)の各々の中心軸線(C2)の延在方向が、前記複数の主孔(25)の各々から噴出する前記ガス燃料(g)が燃焼することで形成される前記主燃焼火炎(26)をそれぞれ通過するように構成される。
【0070】
このような構成によれば、複数の主孔(25)と複数の噴霧ノズル(16)とを夫々一対一に対応させた配置とすることができる。これによって、複数の主孔(25)に対して1個の噴霧ノズル(16)を配置する場合と比べて、主燃焼火炎(26)の温度を確実に低減でき、NOx抑制効果を高めることができる。また、1個の主孔(25)に対して複数の噴霧ノズル(16)を配置する場合と比べて、設備費及び水又は蒸気の噴霧量を低減でき、経費節減に寄与できる。
【0071】
また、複数の噴霧ノズル(16)は二次空気通路(11)に設けられているため、ガスバーナ(1)の中心軸線(C1)から比較的離れた位置に設けられる。従って、複数の噴霧ノズル(16)の各々から噴霧される水又は蒸気の互いの干渉を回避できるか、あるいは干渉領域を最小化できるため、噴霧量も最小化できる。
【0072】
5)さらに別な態様に係るガスバーナは、3)に記載のガスバーナにおいて、前記少なくとも一つの主孔(25)は、前記ガスバーナ(1)の前記中心軸線(C1)の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の主孔(25)を含み、前記少なくとも一つの噴霧ノズル(16)は、前記ガスバーナ(1)の前記中心軸線(C1)の周りに互いに間隔を空けて配置された複数の噴霧ノズル(16)を含み、前記複数の主孔(25)の数と前記複数の噴霧ノズル(16)の数とは同数であり、前記複数の主孔(25)の各々および前記複数の噴霧ノズル(16)の各々は、前記(1)式を満たすように構成される。
【0073】
このような構成によれば、複数の主孔(25)と複数の噴霧ノズル(16)とを夫々一対一に対応させた配置とすることができる。これによって、複数の主孔(25)に対して1個の噴霧ノズル(16)を配置する場合と比べて、主燃焼火炎(26)の温度を確実に低減でき、NOx抑制効果を高めることができる。また、1個の主孔(25)に対して複数の噴霧ノズル(16)を配置する場合と比べて、設備費及び水又は蒸気の噴霧量を低減でき、経費節減に寄与できる。
また、上記4)の構成と同様に、複数の噴霧ノズル(16)の各々から噴霧される水又は蒸気の互いの干渉を回避できるか、あるいは干渉領域を最小化できるため、噴霧量も最小化できる。
【0074】
6)さらに別な態様に係るガスバーナは、1)乃至5)の何れかに記載のガスバーナにおいて、前記ガス燃料は水素ガスを含むガス燃料である。
【0075】
上記構成のガスバーナによれば、ガス燃料(g)が水素ガスを含むガス燃料であるため、燃焼速度が速く燃焼性が向上すると共に、ガス燃料(g)の火炎温度が高くなりNOxが発生しやすい水素ガスを含む場合でも、上述のガスバーナに用いることで、NOxの発生を効果的に抑制できる。
【0076】
7)本開示に係るボイラの一態様によれば、前記燃焼空間(54)が内部に形成される火炉(52)と、前記火炉(52)に設けられた1)乃至6)の何れかに記載のガスバーナ(1)と、を備える。
【0077】
このような構成によれば、1)乃至5)の何れかに記載のガスバーナ(1)を備えるため、ガスバーナ(1)が行う二段燃焼により低NOx化できると共に、二次空気通路(11)に設けられた噴霧ノズル(16)から水又は蒸気を燃焼空間(54)に向けて噴霧することで、空気リッチ燃焼が行われ高温となるためNOxが多く発生しやすい燃焼領域の温度を低減することで、さらに低NOx化が可能になる。従って、NOxの発生を効果的に抑制できる。
【0078】
8)別な態様に係るボイラは、7)に記載のボイラにおいて、ボイラ給水(Wb)を加熱して蒸気を生成するための蒸発器(55)と、前記蒸気を前記噴霧ノズル(16)に供給するための蒸気供給ライン(68)と、を備える。
【0079】
このような構成によれば、噴霧ノズル(16)から噴霧される蒸気を蒸気供給ライン(68)を介して噴霧ノズル(16)に供給できるため、噴霧ノズル(16)に供給するための蒸気をボイラ(50)で生成された蒸気の一部で賄うことができる。そのため、別な蒸気供給源を必要とせず、設備費を低コスト化できる。
【符号の説明】
【0080】
1 ガスバーナ
3、52 火炉
3a 側壁面
5 バーナスロート部
4、54 燃焼空間
6 水管
7 ガス燃料ノズル
7a 先端部
8 ガス燃料通路
9 一次空気通路
11 二次空気通路
13 一次空気通路部
13a 出口端
15 二次空気通路部
16 噴霧ノズル
16a 出口端
17 スワラ(保炎器)
19 淀み領域
20 噴霧領域
21 一次空気開口部
23 エアレジスタ
25 主孔
25a 入口開口
25b 出口開口
25c 出口中心位置
26 主燃焼火炎
28 副燃焼火炎
27 副孔
27a 入口開口
27b 出口開口
27c 出口中心位置
29 水素タンク
31 入口弁
33 減圧弁
35、74 流量計
37、78 温度計
39、45 遮断弁
41、76 圧力計
43、72 流量調整弁
47 バーナ入口圧力計
49 バーナ入口弁
50(50A、50B) ボイラ
55 蒸発器
56、57 過熱器
58 燃焼火炎
60 ヘッダ
62 アフタエアポート
64 蒸気ドラム
66 接続管
68 蒸気供給ライン
70 止め弁
80 水供給ライン
Aa アディショナルエア
C1、C2、C3、C4 中心軸線
F1 一次空気
F2 二次空気
Lc 基準線
Wb ボイラ給水
Wc 上水
g ガス燃料
α1 主孔噴出角度
α2 副孔噴出角度
【要約】
【課題】ガス燃料を用いるガスバーナにおいて、低NOx効果を高めることが可能なガスバーナを提案する。
【解決手段】本開示に係るガスバーナの一態様は、燃焼空間にガス燃料を供給するためのガス燃料ノズルと、ガス燃料ノズルから噴出したガス燃料に混合させる一次空気が流通する一次空気通路を含む一次空気通路部と、一次空気が混合されたガス燃料に混合させる二次空気が流通する二次空気通路を含む二次空気通路部と、二次空気通路に設けられ、燃焼空間に水又は蒸気を噴霧するための少なくとも一つの噴霧ノズルと、を備える。
【選択図】
図1