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特許7184836高品質半導体単結晶の水平成長のためのシステム、およびそれを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】高品質半導体単結晶の水平成長のためのシステム、およびそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 23/06 20060101AFI20221129BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C30B23/06
C30B29/36 A
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020038469
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021011423
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】19184259.0
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519167232
【氏名又は名称】サイクリスタル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フォーゲル
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-155137(JP,A)
【文献】米国特許第07279040(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第02664695(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/057742(WO,A1)
【文献】特開2010-037189(JP,A)
【文献】特表2008-532274(JP,A)
【文献】特表平08-506795(JP,A)
【文献】特開2007-308364(JP,A)
【文献】特開2005-200248(JP,A)
【文献】特開2009-212531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0058630(US,A1)
【文献】特表2016-531836(JP,A)
【文献】特開2018-039715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 -35/00
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的気相輸送(PVT)によって半導体材料からなる1つまたは複数の単結晶を製造するためのシステムであって、
前記1つまたは複数の単結晶を内側で成長させるためのPVT成長構造を収容するようになされた内側チャンバを有する反応炉を備え、
前記反応炉は、前記PVT成長構造の内側の前記1つまたは複数の単結晶の成長方向が、ほぼ水平である、または所定の値よりも小さい水平角度の範囲内であるように重力の方向に対してある向きで前記PVT成長構造を収容するようになされており、
前記反応炉におけるPVT成長プロセスのパラメータを制御するようになされているシステムコントローラをさらに備え、
前記PVT成長プロセスパラメータは、前記反応炉の前記内側チャンバの内側の圧力、成長温度、ならびに前記内側チャンバへのドーピングガスおよび/または不活性ガスのガス供給源のうちの少なくとも1つを含むものであり、
前記PVT成長プロセスのパラメータは、前記1つまたは複数の単結晶の成長面の最大高さを、それぞれの成長している前記単結晶の所定の断面に関連して所与の高さ範囲内にあるように制御され、
前記所与の高さ範囲は、2mmから8mmまでであり、
前記所定の断面は、成長している前記単結晶の外径よりも小さく、および成長した前記単結晶から作製される基板についての所望の直径にほぼ等しい直径の前記成長方向を横切る断面領域である、
システム。
【請求項2】
前記水平角度は、前記重力の方向に直交する水平平面に対して-15°から+15°の間の角度である、および/または
前記反応炉は、前記PVT成長構造を収容するように前記重力方向に対して水平に向けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記PVT成長構造は、原材料を収める中央の原材料区画と、中央の前記原材料区画の側面に1つずつ2つの成長区画とを備え、同じ前記原材料からそれぞれの単結晶を成長させるために、成長区画ごとに、および中央の前記原材料から前記PVT成長構造の重力を横切る方向に沿った縦軸に沿ってある距離に1つの結晶種が用意され、
前記原材料は、少なくとも炭化けい素、4H-SiC、およびIII~V族元素を含有する半導体を含む群から半導体材料の単結晶を成長させるために選択される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
複数の反応炉をさらに備え、各反応炉は、1つまたは複数の半導体単結晶を内側で成長させるためのそれぞれのPVT成長構造を収容するようになされた内側チャンバを有し、各反応炉およびそれぞれのPVT成長構造は、前記PVT成長構造内の前記1つまたは複数の単結晶の前記成長方向が、ほぼ水平である、または前記水平角度の範囲内であるように前記重力の方向に対して水平に向けられており、
前記複数の反応炉のうちの2つ以上の反応炉は、共通の真空チャネルによって互いに接続されるようになされ、前記共通の真空チャネルは、接続された前記2つ以上の反応炉の前記内側チャンバ内に共通の気相条件を生成するおよび/または制御するための真空ポンプシステムに接続可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
それぞれの前記内側チャンバにおいて到達した前記気相条件の圧力を示す測定を行うように前記共通の真空チャネルを介して接続された前記2つ以上の反応炉のうちの少なくとも1つに配置された1つまたは複数の圧力センサを備える圧力測定システムをさらに備え、
前記圧力測定システムは、前記圧力測定を監視し、前記真空ポンプシステムを制御するための真空制御パラメータ、およびガス供給システムを制御するための気相制御パラメータを出力して、全ての接続された内側チャンバ内でほぼ同じ所定の気相条件に到達し維持するように前記内側チャンバ内に前記気相を形成するガス成分を供給するようになされており、
前記気相条件は、前記気相の圧力および/または組成を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つまたは複数の圧力センサは、前記共通の真空チャネルに沿って前記真空ポンプシステムとの接続からより離れている接続された前記2つ以上の反応炉のうちの一の反応炉における前記気相条件の前記圧力を示す圧力測定を実行するようになされており、および/または
前記1つまたは複数の圧力センサは、接続された前記2つ以上の反応炉の下領域に関して前記内側チャンバのそれぞれに到達する前記気相条件の前記圧力を示す前記圧力測定を実行するようになされている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記反応炉の内側に配置された前記PVT成長構造を加熱するようになされた加熱システムであって、誘導加熱システムおよび抵抗加熱システムのうちの一方である加熱システム、および
前記反応炉から熱を放散するようになされている冷却システムであって、水冷システムと空冷システムのうちの一方またはその組合せである冷却システム
を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムコントローラは、1つまたは複数の反応炉における前記PVT成長プロセスのパラメータを制御するようになされており、
前記PVT成長プロセスパラメータは、前記1つまたは複数の反応炉の前記内側チャンバの内側の圧力、成長温度、ならびに前記内側チャンバへのドーピングガスおよび/または不活性ガスのガス供給源のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
物理的気相輸送(PVT)によって半導体材料からなる1つまたは複数の単結晶を製造する方法であって、
PVT成長構造の内側の前記1つまたは複数の単結晶の成長方向が、ほぼ水平である、または所定の値よりも小さい水平角度の範囲内であるように重力の方向に対してある向きで反応炉の内側チャンバ内に収容されている前記PVT成長構造内に前記1つまたは複数の単結晶を成長させるステップを含み、
前記1つまたは複数の単結晶の成長面の最大高さを、それぞれの成長している前記単結晶の所定の断面に関連して所与の高さ範囲内にあるように制御するものであって、
前記所与の高さ範囲は、2mmから8mmまでであり、
前記所定の断面は、成長している前記単結晶の外径よりも小さく、および成長した前記単結晶から作製される基板についての所望の直径にほぼ等しい直径の前記成長方向を横切る断面領域である、
方法。
【請求項10】
前記水平角度は、前記重力の方向に直交する水平平面に対して-15°から+15°の間の角度である、および/または
前記反応炉は、前記PVT成長構造を収容するように前記重力方向に対して水平に向けられている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所与の高さ範囲は、4mmから6mmまでである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数の単結晶をそれぞれ成長させるために前記PVT成長構造の内側に1つまたは複数の種結晶を用意するステップをさらに含み、
各種結晶は、内部に成長させられる前記単結晶の外径とほぼ等しい直径を有し、前記種結晶の直径は、前記単結晶から作製される基板についての所定の直径よりも少なくとも10%大きい直径を有し、または、前記基板の前記所定の直径よりも10%から35%大きい直径を有し、ならびに/あるいは
前記1つまたは複数の単結晶は、少なくとも炭化けい素、4H-SiC、およびIII~V族元素を含有する半導体を含む群からの半導体材料の単結晶である、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
互いに接続されているとともに共通の真空チャネルを介して真空ポンプシステムに接続されている2つ以上の反応炉に複数の単結晶を成長させるステップであって、各反応炉は、1つまたは複数の半導体単結晶を内側で成長させるためのPVT成長構造を収容するようになされた内側チャンバを有しており、前記反応炉は、前記PVT成長構造の内側の前記1つまたは複数の単結晶の成長方向が、ほぼ水平である、または所定の値よりも小さい水平角度の範囲内であるように前記重力の方向に対してのある向きで前記PVT成長構造を収容するようになされている、ステップと、
接続された前記2つ以上の反応炉の前記内側チャンバ内に、前記真空ポンプシステムを用いて、共通の気相条件を生成するおよび/または制御するステップと
をさらに含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
接続された前記2つ以上の反応炉のうちの少なくとも1つに配置された1つまたは複数の圧力センサを用いて、接続された前記2つ以上の反応炉の前記内側チャンバにおいて到達した前記気相条件の圧力を示す測定を実行するステップと、
前記圧力測定を監視し、前記真空ポンプシステムを制御するための真空制御パラメータを出力し、ガス供給システムを制御するための気相制御パラメータを出力して、全ての接続された内側チャンバ内でほぼ同じ所定の気相条件に到達し維持するように前記内側チャンバ内に前記気相を形成するガス成分を供給するステップとをさらに含み、
前記気相条件は、前記気相の圧力および/または組成を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記共通の真空チャネルに沿って前記真空ポンプシステムとの接続からより離れている接続された前記2つ以上の反応炉のうちの一の反応炉における前記気相条件の圧力を示す前記測定が、実行され、および/または
前記気相圧力を示す前記圧力測定が、接続された前記2つ以上の反応炉の下領域に関する前記共通の真空チャネルに関して実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
共通のシステムコントローラを用いて2つ以上の前記反応炉における前記PVT成長プロセスのパラメータを制御するステップであって、
前記PVT成長プロセスパラメータは、前記反応炉の前記内側チャンバの内側の圧力、成長温度、ならびに前記内側チャンバへのドーピングガスおよび/または不活性ガスのガス供給源のうちの少なくとも1つを含む、ステップ、ならびに/あるいは
前記共通のシステムコントローラを用いて各反応炉の加熱システムおよび冷却システムを制御するステップであって、前記加熱システムは、誘導加熱システムおよび抵抗加熱システムのうちの一方であり、前記冷却システムは、水冷システムと空冷システムのうちの一方またはその組合せである、ステップ
をさらに含む、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質バルク半導体単結晶を成長させるシステムおよび方法に関し、より詳細には、物理的気相輸送に基づいて重力の方向に対して水平方向に炭化ケイ素などの半導体単結晶を水平成長させるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、パワーエレクトロニクス部品、高周波部品、および発光半導体部品などの幅広い用途における電子部品のための半導体基板材料として広範囲に使用されている。
【0003】
一般に、バルクSiC単結晶ボウル(crystal boules)は、特に商業目的のために、物理的気相輸送(PVT)法を用いて成長させられる。次いで、SiC基板が、(例えば、ワイヤソーを用いて)バルクSiC結晶からスライスまたはウェハを切断し、一連の研磨ステップを用いて基板表面を仕上げることによって単結晶ボウルから製造される。仕上げられたSiC基板は、適当な半導体材料(例えば、SiC、GaN)の薄い単結晶層がSiC基板上へ堆積させられるエピタキシャルプロセスなどにおける半導体部品の製造に用いられる。堆積させられた単一層およびそこから製造された電子部品の特性は、下地基板の品質および均質性に決定的に依存する。このため、SiCの顕著な物理的、化学的、電気的、および光学的特性により、SiCをパワーデバイス応用に好適な半導体基板材料にさせる。
【0004】
PVTは、適当な原材料の昇華と、それに続く種結晶での再結晶(re-condensation)とを本質的に伴い、そこで単結晶の形成が行われる、結晶成長法である。原材料および種結晶は、成長構造の内側に置かれ、そこで原材料は、加熱によって昇華させられる。次いで、昇華させられた蒸気は、原材料と種結晶の間に確立された温度勾配により、制御されたやり方で種に向かって拡散し、種の上へ堆積し、そこでそれは単結晶として成長する。
【0005】
PVTベースの成長システムのコアは、いわゆる反応炉(reactor)であり、これは、成長構造が置かれて、単結晶の成長に適した低い気圧が作り出されるチャンバを用意する。成長構造の内壁は、例えば、少なくとも1.75g/cmの密度を有する多孔質黒鉛で概して作製され、これを通じてガス状形態のドーピング成分または不活性ガスが、多孔性により成長区画(growth compartment)の中に貫通できる。PVT成長構造の内側で原材料を昇華させるための熱は、一般的に、誘導加熱システムまたは抵抗加熱システムのどちらかによって供給される。成長構造内の温度は、成長構造のオーバーチュア(overture)の近くに設置された1つまたは複数の高温計または熱電対によって測定される。真空密閉反応炉は、1つまたは複数の真空ポンプによって排気され、1つまたは複数のガス供給によって不活性ガスまたはドーピングガスが供給されて、制御されたガス(ガス混合雰囲気)を製造する。全てのプロセスパラメータ(圧力、温度、ガス流量など)は、全ての含まれる構成要素(図3を参照して以下により詳細に説明されるような、例えば、インバータ、高温計、真空制御弁、MFC、および圧力計)と通信するコンピュータ動作式のシステムコントローラによって調節、制御、および記憶することができる。
【0006】
誘導加熱PVTシステムの場合には、通常、反応炉は、1つまたは複数のガラス管を備え、このガラス管は、任意選択で水を用いて冷却され、大気に対して反応炉の内部を完成するようにフランジを備えた両端に設けられる。そのような誘導加熱PVTシステムの一例は、米国特許第8,865,324号明細書に記載されている。加熱誘導コイルが、反応炉の外側に装着され、通常、電磁放射線からシールドを行う「ファラデーケージ」によって囲まれる。従来の抵抗加熱PVTシステムでは、加熱抵抗要素は、反応炉の内側に装着される。反応炉が金属製である場合には、それは、水または空気によって冷却することができる。抵抗加熱PVTシステムの例は、米国特許出願公開第2016/0138185号明細書、および米国特許出願公開第2017/0321345号明細書に記載されている。
【0007】
当業界で知られているそのようなPVT成長システムは、垂直に向けられており、すなわち反応炉と内側に配置されたPVT成長構造との両方は、重力方向に平行であるそれぞれの縦軸に向けられ、これは本質的に単結晶の成長方向に対応する。PVT成長構造の内壁を形成する黒鉛/炭素材料は昇華される原材料の成分(例えば、Siを含有するガス種)、および成長プロセス中に到達する高温によって攻撃されるので、垂直向きが、一般に使用される。続いて起こる黒鉛/炭素材料の劣化によって、黒鉛粒子が、内壁からはがれ、結晶成長区画の中に放出され、次いでこれが、重力の作用によってPVT成長構造下側に向かって落下するという結果になる。垂直に向けられた反応炉とPVT成長構造の両方を有するシステムでは、放出された黒鉛/炭素粒子が成長中の結晶と接触しないように、結晶ボウルは、PVT成長構造の上側で成長する。したがって、PVT成長構造の上側に成長する単結晶ボウルは成長プロセス中に放出される黒鉛粒子によって汚染されないので、高品質単結晶は、従来の垂直PVT成長システムにおいていまだに製造され得る。
【0008】
図1は、従来のPVT成長システムに共通に用いられるような、垂直向きに1つの単結晶ボウルを製造するための例示的な成長構造100を示す。垂直方向は、重力ベクトルFの方向を示す矢印によって図1に表されている。PVT成長構造100は、原材料106(例えば、粉末または粒状の形態のSiC)を用いた原材料区画(source material compartment)104が(重力に対して)下側に設けられているるつぼ102を有し、種結晶108は、上側に、および原材料区画106から縦軸116に沿ってある距離で、成長区画110内に配置される。るつぼ102の上部の放熱チャネル112は、種結晶108に冷却をもたらす。PVT成長構造100は、るつぼ102を囲む断熱材114を備えることもできる。断熱材114は、るつぼの黒鉛材料それ自体の多孔性よりも高い多孔性を有する泡状黒鉛などの多孔性の断熱材料で一般に作製される。
【0009】
PVT成長構造100では、単結晶ボウル109は、単結晶ボウル109が結晶成長中に黒鉛粒子によって汚染されないように、重力(F)の方向に概して一直線をなす縦軸116に沿って、およびるつぼ102の上側で、結晶種108の上へ成長する。
【0010】
しかしながら、そのような垂直に向けられたPVT成長構造およびPVT成長システムを用いて、一度に1つの単結晶が成長できるにすぎないので、これは、重大な経済的欠点という結果になる。
【0011】
欧州特許出願公開第2664695号明細書は、同じ垂直PVT成長構造内で同時に2つの単結晶を製造することを可能にするプロセスを説明する。単結晶は、先行技術に説明されているように垂直反応炉の内部に垂直配置されているPVT成長構造の上側において成長し、第2の結晶が、PVT成長構造の下側で同時に成長する。この構成では、PVT成長構造の内壁から放出される黒鉛/炭素粒子は、PVT成長構造の下側に成長する結晶ボウルの上へやはり落下することができ、それによって成長プロセス中に結晶の内部に黒鉛/炭素含有物を形成し、これにより結晶品質をかなり低下させる。黒鉛/炭素含有物は、高品質基板およびウェハの歩留まりも低下させ、したがって製造された単結晶について望ましくない廃棄および品質低下という結果になり、負の経済的影響を伴う。
【0012】
このため、半導体結晶ボウルを製造する、知られているPVTシステムの大部分は、黒鉛/炭素粒子汚染を防ぐためにPVT成長構造の上側に1つの単結晶を成長する垂直に向けられた反応炉およびPVT成長構造をやはり利用する。欧州特許出願公開第2664695号明細書に記載されたプロセスの場合には、垂直向きの結晶成長を必然的に伴うという欠点に甘んじている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第8,865,324号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0138185号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0321345号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2664695号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
結晶が重力方向と平行かつ反対な方向に成長させられる上述したような従来の結晶成長プロセスは、成長るつぼが黒鉛ベースの材料で大部分構成されているので、成長した結晶が全体的に黒鉛/炭素粒子によって汚染されるという共通の問題をその際に招いている。黒鉛/炭素粒子の汚染は、例えば、るつぼの円筒壁から、または原材料を成長区画から分離する膜の材料からくる。るつぼの円筒壁から生じる汚染に関しては、汚染粒子の排出は、タンタルなどのカーボンフリーな材料を用いることによって、または黒鉛ベースの内壁材料を、例えば炭化タンタル(TaC)で被覆することによって、減少させることができ、またはなくすこともできる。同様の材料は、るつぼの内側において原材料区画を成長区画から分離する膜に使用されてもよい。しかしながら、いずれの場合も、るつぼの内側の気相は、負の影響を受けるが,これは、るつぼおよび/または分離膜を形成する炭素の量の減少が、成長プロセス中に成長する結晶(例えば、4H-SiCにおいて6H-SiCまたは15R-SiC)の改変(modification change)をもたらし、したがって結晶品質の著しい劣化をもたらす場合があるからである。これらの改変は、SiCの場合に結晶構造の完全な変更または部分的な変更に対応し、これは多くの結晶構造に現れ得る。各結晶構造は、炭素が系から除去されるとき、4H構造の成長が不安定になり、6H構造および15R構造の成長が安定する傾向になるように、異なった成長条件を好む。
【0015】
このため、本発明の目的は、結晶成長プロセス中の黒鉛/炭素汚染の影響を減少させるまたはそれをなくしさえすることによって成長した単結晶の高品質を確実にしつつ、結晶を囲むまたはその近くに使用されるるつぼ壁、原材料の分離膜、およびPVT成長構造の他の部分などのPVT成長構造における黒鉛および/または炭素材料の使用に適合する1つまたは複数の半導体単結晶を製造するための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0017】
本発明の根底にある概念は、単結晶がほぼ水平方向、すなわち重力の方向に直交する水平方向に成長させられる単結晶を製造するためのPVT成長システム、およびそれを製造する方法を提供することにあり、それによってるつぼ内壁から落下する汚染粒子、原材料区画の膜から落下する汚染粒子、および/またはPVT成長構造の他の部分によって放出される汚染粒子が、種結晶に成長する単結晶ボウルの上へ直接落下せず、むしろ重力の作用によってるつぼの側壁に向かって逸らされる。結果として、製造された結晶ボウルにおける黒鉛/炭素粒子の含有物による汚染は、なくされ得るまたは少なくとも最小にされ得る。「ほぼ水平方向」によって、0°あたりの所与の許容誤差(margin error)の範囲内にある、重力の方向を横切る平面とある水平角度をなす方向が意味される。
【0018】
したがって、本発明は、物理的気相輸送(PVT)によって半導体材料からなる1つまたは複数の単結晶を製造するためのシステムであって、1つまたは複数の単結晶を内側で成長させるためのPVT成長構造を収容するようになされた内側チャンバを有する反応炉を備え、反応炉は、PVT成長構造の内側の1つまたは複数の単結晶の成長方向が、ほぼ水平である、または所定の値よりも小さい水平角度の範囲内であるように重力の方向に対してのある向きでPVT成長構造を収容するようになされている、システムを提供する。
【0019】
さらなる発展例によれば、水平角度は、重力の方向に直交する水平平面に対して-15°から+15°の間の角度である、および/または反応炉は、PVT成長構造を収容するように重力方向に対して水平に向けられている。
【0020】
さらなる発展例によれば、PVT成長構造は、原材料を収める中央の原材料区画と、中央の原材料区画の側面に1つずつ2つの成長区画とを備え、同じ原材料からそれぞれの単結晶を成長させるために、成長区画ごとに、および中央の原材料から縦軸に沿ってある距離に1つの結晶種が用意され、原材料は、少なくとも炭化けい素、4H-SiC、およびIII~V族元素を含有する半導体を含む群から半導体材料からなる単結晶を成長させるために選択される。
【0021】
さらなる発展例によれば、システムは、複数の反応炉をさらに備え、各反応炉は、1つまたは複数の半導体単結晶を内側で成長させるためのそれぞれのPVT成長構造を収容するようになされた内側チャンバを有し、各反応炉およびそれぞれのPVT成長構造は、PVT成長構造内の1つまたは複数の単結晶の成長方向が、ほぼ水平である、または水平角度の範囲内であるように重力の方向に対して水平に向けられており、複数の反応炉のうちの2つ以上の反応炉は、共通の真空チャネルによって互いに接続されるようになされ、共通の真空チャネルは、接続された2つ以上の反応炉の内側チャンバ内に共通の気相条件を生成するおよび/または制御するための真空ポンプシステムに接続可能である。
【0022】
さらなる発展例によれば、システムは、それぞれの内側チャンバにおいて到達した気相条件の圧力を示す測定を行うように共通の真空チャネルを介して接続された2つ以上の反応炉のうちの少なくとも1つに配置された1つまたは複数の圧力センサを備える圧力測定システムをさらに備え、圧力測定システムは、圧力測定を監視し、真空ポンプシステムを制御するための真空制御パラメータ、およびガス供給システムを制御するための気相制御パラメータを出力して、全ての接続された内側チャンバ内でほぼ同じ所定の気相条件に到達し維持するように内側チャンバ内に気相を形成するガス成分を供給するようになされており、気相条件は、気相の圧力および/または組成を含む。
【0023】
さらなる発展例によれば、1つまたは複数の圧力センサは、共通の真空チャネルに沿って真空ポンプシステムとの接続からより離れている接続された2つ以上の反応炉のうちの一の反応炉における気相条件の圧力を示す圧力測定を実行するようになされており、および/または1つまたは複数の圧力センサは、接続された2つ以上の反応炉の下領域に関して共通の真空チャネルに関する気相条件の圧力を示す圧力測定を実行するようになされている。
【0024】
さらなる発展例によれば、システムは、反応炉の内側に配置されたPVT成長構造を加熱するようになされた加熱システムであって、誘導加熱システムおよび抵抗加熱システムのうちの一方である加熱システム、反応炉から熱を放散するようになされている冷却システムであって、水冷システムと空冷システムのうちの一方またはその組合せである冷却システム、ならびに/あるいは1つまたは複数の反応炉におけるPVT成長プロセスのパラメータを制御するようになされているシステムコントローラをさらに備え、PVT成長プロセスパラメータは、1つまたは複数の反応炉の内側チャンバの内側の圧力、成長温度、ならびに内側チャンバへのドーピングガスおよび/または不活性ガスのガス供給源のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
本発明によれば、物理的気相輸送(PVT)によって半導体材料からなる1つまたは複数の単結晶を製造する方法であって、PVT成長構造の内側の1つまたは複数の単結晶の成長方向が、ほぼ水平である、または所定の値よりも小さい水平角度の範囲内であるように重力の方向に対してある向きで反応炉の内側チャンバ内に収容されているPVT成長構造内に1つまたは複数の単結晶を成長させるステップを含む方法も提供される。
【0026】
さらなる発展例によれば、水平角度は、重力の方向に直交する水平平面に対して-15°から+15°の間の角度である、および/または反応炉は、PVT成長構造を収容するように重力方向に対して水平に向けられている。
【0027】
さらなる発展例によれば、上記方法は、1つまたは複数の単結晶の成長面の最大高さを、それぞれの成長している単結晶の所定の断面に関連して所与の高さ範囲内にあるように制御するステップをさらに含む。
【0028】
さらなる発展例によれば、所与の高さ範囲は、2mmから8mmまでであり、好ましくは4mmから6mmまでであり、所定の断面は、成長している単結晶の外径よりも小さい、および成長した単結晶から作製される基板についての所望の直径にほぼ等しい直径の成長方向を横切る断面領域である。
【0029】
さらなる発展例によれば、上記方法は、1つまたは複数の単結晶をそれぞれ成長させるためにPVT成長構造の内側に1つまたは複数の種結晶を用意するステップをさらに含み、各種結晶は、内部に成長させられる単結晶の外径とほぼ等しい、および単結晶から作製される基板についての所定の直径よりも少なくとも10%大きい直径を有し、好ましくは、種結晶の直径は、所定の基板直径よりも10%から35%大きく、ならびに/あるいは1つまたは複数の単結晶は、少なくとも炭化けい素、4H-SiC、およびIII~V族元素を含有する半導体を含む群からの半導体材料の単結晶である。
【0030】
さらなる発展例によれば、上記方法は、互いに接続されているとともに共通の真空チャネルを介して真空ポンプシステムに接続されている2つ以上の反応炉に複数の単結晶を成長させるステップであって、各反応炉は、1つまたは複数の半導体単結晶を内側で成長させるためのPVT成長構造を収容するようになされた内側チャンバを有しており、反応炉は、PVT成長構造の内側の1つまたは複数の単結晶の成長方向が、ほぼ水平である、または所定の値よりも小さい水平角度の範囲内であるように重力の方向に対してのある向きでPVT成長構造を収容するようになされている、ステップと、接続された2つ以上の反応炉の内側チャンバ内に、真空ポンプシステムを用いて、共通の気相条件を生成するおよび/または制御するステップとをさらに含む。
【0031】
さらなる発展例によれば、上記方法は、接続された2つ以上の反応炉のうちの少なくとも1つに配置された1つまたは複数の圧力センサを用いて、接続された2つ以上の反応炉の内側チャンバにおいて到達した気相条件の圧力を示す測定を実行するステップと、圧力測定を監視し、真空ポンプシステムを制御するための真空制御パラメータを出力し、ガス供給システムを制御するための気相制御パラメータを出力して、全ての接続された内側チャンバ内でほぼ同じ所定の気相条件に到達し維持するように内側チャンバ内に気相を形成するガス成分を供給するステップとをさらに含み、気相条件は、気相の圧力および/または組成を含む。
【0032】
さらなる発展例によれば、共通の真空チャネルに沿って真空ポンプシステムとの接続からより離れている接続された2つ以上の反応炉のうちの一の反応炉における気相条件の圧力を示す測定が、実行され、および/または気相圧力を示す圧力測定が、接続された2つ以上の反応炉の下領域に関する共通の真空チャネルに関して実行される。
【0033】
さらなる発展例によれば、上記方法は、共通のシステムコントローラを用いて2つ以上の反応炉におけるPVT成長プロセスのパラメータを制御するステップであって、PVT成長プロセスパラメータは、反応炉の内側チャンバの内側の圧力、成長温度、ならびに内側チャンバへのドーピングガスおよび/または不活性ガスのガス供給源のうちの少なくとも1つを含む、ステップ、ならびに/あるいは共通のシステムコントローラを用いて各反応炉の加熱システムおよび冷却システムを制御するステップであって、加熱システムは、誘導加熱システムおよび抵抗加熱システムのうちの一方であり、冷却システムは、水冷システムと空冷システムのうちの一方またはその組合せである、ステップをさらに含む。
【0034】
添付図面は、本発明の原理を説明するために本明細書の一部に組み込まれ、この一部を形成する。図面は、本発明がどのように作製および使用され得るかの有利な例および代替例を例示するためのものにすぎず、例示および説明した実施形態だけに本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0035】
さらなる特徴および利点は、下記添付図面に示されるように、本発明の以下のより詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】1つの単結晶ボウルがPVT成長構造の上側に成長させられている垂直に向けられたPVT成長構造の概略断面図である。
図2】2つの単結晶がPVT構造の上側と下側に同時に成長させられているPVT成長構造のさらなる構成の概略断面図である。
図3図1および図2に示されたPVT成長構造のいずれかのような垂直PVT成長構造を受け入れるための垂直反応炉を有する従来の誘導加熱PVT成長システムの概略断面図である。
図4】水平反応炉が2つの同心かつ一体の水冷式ガラス管を有する、一実施形態による半導体結晶ボウルの水平成長のために水平に向けられた反応炉を有する誘導加熱PVT成長システムの概略断面図である。
図5】水平反応炉が単一の同心壁を有する、一実施形態による半導体結晶ボウルの水平成長のために水平に向けられた反応炉を有する別の誘導加熱PVT成長システムの概略断面図である。
図6】別の実施形態による半導体結晶ボウルの水平成長のために水平に向けられた反応炉を有する抵抗加熱PVT成長システムの概略断面図である。
図7】PVT成長システムが共通の真空ポンプシステムへの共通の真空チャネルによって接続されたN個の水平反応炉を備える、一実施形態による複数の半導体結晶ボウルの水平成長のためのPVT成長システムを概略的に示す図である。
図8図2に示されたPVT成長構造のるつぼの概略断面図であって、PVT成長構造が重力方向に対して(a)垂直向き、および(b)水平向きに向けられているときの上側および下側の半導体ボウルにおける炭素汚染の影響を示す図である。
図9】(a)h=2mm、(b)h=8mm、(c)h>8mmであるセグメントsに対する成長面の最大高さhによって特徴付けられる結晶成長面の曲率パラメータが異なる場合についての水平向きに成長させられた半導体単結晶ボウルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明は、本発明の例示的な実施形態を示した添付図面を参照して、以下より十分に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書中に記載された実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全となるように、および本発明の範囲を当業者に十分伝えるように与えられる。明細書全体を通じて、同じ番号は、図面中同じ要素を指している。本発明は、炭化けい素を参照して以下に説明されるが、AlNなどの他の半導体材料を用いた物理的気相輸送法によって成長させられる単結晶の成長に本発明の原理を適用することが予見される。
【0038】
本発明の概念は、当業界で知られている垂直PVT成長構造を受け入れる垂直反応炉を有する、知られている全てのPVT成長システムに有利に拡張され得る。
【0039】
図2は、本発明によって有利に用いることができるSiCなどの半導体材料の2つの単結晶ボウル209A、209Bを同時に成長させるために、従来の通り垂直向きに使用されるPVT成長構造200の構成を示す。PVT成長構造200は、SiC原材料206のための原材料区画204が上側成長区画210Aおよび下側成長区画210Bにおけるるつぼ成長領域を分ける中央領域内に設けられているるつぼ202を備える。種結晶208Aおよび208Bは、縦軸216に沿って原材料区画204からある距離において、それぞれ別個の成長区画210Aおよび210Bに配置されている。原材料206から昇華されたSiC蒸気を上側および下側の成長区画210Aおよび210B内の種208A、208Bに向かって輸送する温度勾配を作り出すために、各種結晶208A、208Bは、それぞれの放熱チャネル212A、212Bによって冷却される。原材料区画204に対しての種208A、208Bの相対的向きが与えられるならば、単結晶成長は、上側の成長区画210Aにおいて上から下へ、および下側の成長区画210Bにおいて下から上へ、るつぼ202の縦軸216の方向に生じる。上側および下側の成長区画210Aおよび210Bの各々は、ガス状のSiおよびCを含有する成分だけが成長区画210Aおよび210Bに入ることを確実にするために、ガス透過性多孔質障壁(図示せず)によってSiC原材料206から隔てられ得る。好ましくは、るつぼ202は、黒鉛などの多孔質材料から作製され、これを通じて上側および下側の成長区画210A、210Bが、ドーピングガスまたは不活性ガスを受け入れる。るつぼ202は、多孔質断熱材214によって囲まれてもよい。
【0040】
このタイプの垂直成長構造は、図3に示された例など、垂直PVT成長システムに従来から使用されている。
【0041】
図3は、内側チャンバ304を備えた垂直反応炉301を有する従来のPVT成長システム300を示し、ここには306のようなPVT成長構造が、制御された温度条件および真空条件の下で単結晶を成長させるために垂直に置かれる。図示した例では、PVT成長システム300は、PVT成長構造304の内側の原材料を適当な成長温度まで加熱するために、反応炉301のまわりに配置された誘導加熱システム310を備える。概して、誘導加熱システム310は、反応炉縦軸318に沿って反応炉312の外側に設置されるとともに制御された電流を誘導コイル312へ供給するMFジェネレータ/インバータ314に接続されている誘導コイル312として設けられる。誘導コイル312は、PVT成長構造304の導電性の壁内に電気回路の電流を引き起こし、この電流は、原材料を昇華させるのに十分な熱を発生させる。例えば、2000℃を超える温度、特に約2200℃の温度が、SiC単結晶のPVT成長のために一般に使用される。誘導コイル312の高さは、PVT成長構造304の内側に確立された原材料温度および温度勾配を微調整することを可能にするために調整可能であり得る。PVT成長構造304の内側で到達した温度は、PVT成長構造304の加熱チャネルの近くに位置する高温計または熱電対などの1つまたは複数の温度センサ316を用いて測定され得る。
【0042】
PVT成長システム300は、場合によっては反応炉内側チャンバ304の内側で到達した圧力を測定するための圧力測定装置の組合せを備えた、圧力測定システム320も備える。単結晶成長のために適切な雰囲気を作り出すために、PVT成長システム300は、1つまたは複数の真空/抽出ポンプ332(例えば、真空ポンプおよび/または高真空ポンプ)と、真空ポンプ332の吸引力を制御する調整可能な制御弁334とを有する真空ポンプシステム330を備える。ガス供給源340は、1種または複数種のガス状化合物(例えば、ArおよびNを含有する成分)を反応炉内側チャンバ304に供給して、単結晶成長のために適当なドーピング雰囲気または不活性雰囲気を作り出す。ガス供給源340は、現場に設けられた圧縮ガスシリンダまたは中央ガス供給源(図示せず)へのインタフェースであってもよい。反応炉301へのドーピングガスおよび不活性ガスの供給は、マスフローコントローラ(MFC)342によって個々に制御される。一般に、反応炉301内で発生した熱を放散するための水冷システム350は、2つの同心状かつ内部的に水冷式のガラス管(図示せず)として設けられる。
【0043】
一般に、反応炉301および誘導加熱システム310は、電磁放射線を減少させるためにシールドまたはファラデーケージ370内に取り囲まれる。PVT成長システム300のさらなる構成要素は、反応炉301を封止する金属フランジを備え、高温計(図示せず)によって温度を測定するためのガラスインサートを含む。
【0044】
PVT成長システム300の上記および他の制御可能なプロセスパラメータシステムは、システムコントローラ380によって制御され、システムコントローラ380は、成長プロセスパラメータを調整し、圧力、温度、誘導コイルの位置、冷却水温度等などの単結晶成長プロセスの全データを記録する。図3に示されたタイプのPVT成長システムの例示的な動作は、米国特許第8,865,324号明細書に十分に記載されており、したがって、本明細書では、これについて、さらに詳述されない。
【0045】
図4は、一実施形態による半導体結晶ボウルの水平成長のために水平に向けられた反応炉401を有する誘導加熱PVT成長システム400を示す。
【0046】
誘導加熱PVT成長システム400は、上述された誘導加熱PVT成長システム300とほぼ同じ特性を有し、誘導加熱PVT成長システム400は、縦軸418が重力を横切る方向に沿った状態に向けられている反応炉401を備えるという違いがある。反応炉401の水平向きは、上述したPVT構造200などの単一のPVT成長構造を、内側に、水平向きに、すなわちその縦軸216が反応炉401の縦軸416と一直線に並べられている状態で収容することを可能にし、水平に向けられたPVT成長構造200の左側および右側にこのとき位置する単結晶ボウル209A、209Bが、ほぼ水平である方向に成長するようになっている。PVT成長構造200の成長方向および/または縦軸216は、図4に示されるように、必ずしも水平平面、すなわち重力方向Fに直交する平面と(ある許容誤差内の)0°の水平角度をなす必要はない。例えば、反応炉401および/または反応炉401の内側のPVT成長構造200は、本開示の原理から逸脱することなく、所定の値未満の水平平面との水平角度をなすように向けられ得る。好ましくは、反応炉401および/またはPVT成長構造200の水平角度の値は、-15°から+15°の間にある。PVT成長構造200のそのような向きでは、半導体結晶ボウル209A、209Bを囲むPVT成長構造200の側面内壁は、重力方向を本質的に横切ることになり、したがって、そこから放出される黒鉛/炭素粒子、または少なくとも大部分は、PVT成長構造200の下側内壁に重力によって落下する。結果として、2つの単結晶ボウル209A、209Bを同時にかつ高い結晶品質で製造することが可能である。上述したPVT成長システム300と同様に、PVT成長システム400は、システムコントローラ480の制御によってMFジェネレータ414から電流が供給される加熱用コイル412を有する専用の誘導加熱システム410を備える。反応炉内側チャンバ内で到達する温度は、システムコントローラ480によって制御されている適当な温度センサ416を用いて測定および監視することができる。加えて、反応炉401は、システムコントローラ480によって個々に制御および/または監視される冷却システム450も備える。
【0047】
図5は、さらなる実施形態による半導体結晶ボウルの水平成長のために水平に向けられた反応炉501を有する誘導加熱PVT成長システム500を示し、誘導加熱PVT成長システム500は、それが単一のガラス管を有する反応炉501を備えるという点で、図4に示されたPVTシステム400とは本質的に異なる。この場合には、反応炉501からの熱の放散は、水冷によって実現されず、むしろ、制御されたやり方でガラス管の外縁のまわりを通過させられる空気の流れによって実現される。図4の実施形態と同様に、反応炉501は、上述したPVT成長構造200などのPVT成長構造をほぼ水平向きに、すなわちその縦軸218が反応炉縦軸518と一直線に並べられている状態で収容するように水平に向けられる。PVT成長システム500は、誘導加熱システム510、圧力測定システム520、真空ポンプシステム530、ガス供給システム540、誘導加熱および空冷システムを含むプロセス制御システムも備え、これらは、上述したPVT成長システム300を参照して説明したものと同様であり、同様のやり方でシステムコントローラ580によって制御され、したがって、これらは、本明細書でさらに詳述されない。
【0048】
図6は、さらなる実施形態による半導体結晶ボウルの水平成長のために水平に向けられた反応炉601を有する抵抗加熱PVT成長システム600を示し、抵抗加熱PVT成長システム600は、それが代わりに抵抗タイプの加熱システム660を用いるという点で、上述したPVTシステム400および500とは本質的に異なる。反応炉601は、上述したPVT成長構造200と同様の水平に向けられたPVT成長構造602を収容する内側チャンバ604を有するが、断熱材は、抵抗加熱のために側壁を覆っていない。抵抗加熱システム660は、反応炉601の内側に装着された抵抗加熱要素662を備える。加熱用電流制御ユニット664は、抵抗加熱要素662へ電流を供給して、制御されたやり方で反応炉内側チャンバ604を加熱し、適当な成長温度を実現する。反応炉601は、金属の壁で作製され、それぞれの水冷システム650を備えることができる。代替として、図5を参照して上述された空冷システムなどの空冷システムが、使用されてもよい。PVT成長システム600は、圧力測定システム620、真空ポンプシステム630、およびガス供給システム640などのプロセス制御システムも備え、これらは、上述したPVT成長システム300を参照して説明されたものと同様であり、同様のやり方でシステムコントローラ680によって制御され、したがって、これらは、本明細書でさらに詳述されない。
【0049】
単結晶の生産率を増大させるために、上述したPVT成長システム400、500、600の反応炉のいずれかなどの複数の水平に向けられた反応炉を有するPVT成長システムが設けられてもよく、これらは、共通のチャネルバキューム(channel vacuum)を介して共通の真空システムに接続されている。
【0050】
図7は、2つ以上の半導体単結晶を同時に成長させるためにN個の反応炉700Aから700Nであって、共通の真空チャネル705を介して互いに接続されているN個の反応炉700Aから700Nを備えるPVT成長システム700を示す。反応炉700Aから700Nは、水平に向けられ、すなわちそれらの縦軸は、重力方向を横切る水平平面に実質的にあり、好ましくは、単結晶成長中に同じ気相圧力条件で動作するような同じタイプのものである。共通の真空チャネル705は、N個の反応炉700Aから700Nを共通の真空ポンプシステム730に直列方式で接続し、それによって反応炉の1つは真空ポンプ732に直接接続され、これに対して、他の反応炉は共通の真空チャネル705を介して排気される。これは、ほぼ同じ気相組成(Nおよび/またはAr)が成長プロセス中に全ての反応炉700Aから700N内で実現および維持できることを確実にしつつ、同じポンプシステム730を用いて内側チャンバ704内に気相組成(Nおよび/またはAr)を作り出して制御することを可能にする。反応炉内側チャンバ内の真空条件および/または圧力は、真空ポンプ732により近い真空チャネル605の端部における真空ポンプ632と反応炉700Nとの間に設けられた調整可能な制御弁734を介してシステムコントローラ780によって中央制御される。したがって、反応炉700Aから700Nの内側チャンバの内側の圧力は、中央集中化されたやり方でかつ反応炉ごとに真空システムとコントローラを分離する必要なく、同時に制御することができる。
【0051】
PVT成長システム700は、それぞれの反応炉内側チャンバ内で到達した圧力を示す測定を実行するために、反応炉700Aから700Nのうちの少なくとも1つに配置され得る1つまたは複数の圧力センサを有する圧力測定システム720も備える。単結晶成長のための適当なドーピングガスおよび/または不活性ガス雰囲気は、ガス供給源(図示せず)からの個々のガス供給によってドーピング/不活性ガス雰囲気を形成するガス成分であって、専用のマスフローコントローラを介してシステムコントローラ780によって個々に制御されるガス成分を供給することによって各反応炉700Aから700Nの内側チャンバ内で実現される。圧力測定システム720は、圧力センサによって測定される圧力を監視し、調整可能な制御弁734を制御して反応炉内側チャンバの内側の圧力を所定の圧力に調節するための真空制御パラメータを出力する。圧力測定システム720は、共通の真空チャネル705を介して接続された全ての反応炉にわたってほぼ同じ所定の気相条件(すなわち、ドーピング/不活性ガス雰囲気の圧力および組成)を実現して維持するように反応炉内側チャンバの中へのガス成分の供給を制御するMFCのために、監視された圧力に基づいて気相制御パラメータも出力する。
【0052】
図7の構成では、各反応炉700Aから700Nは、上述したPVT成長システム400、500、および600の反応炉401、501、601などの任意のタイプのものであり得、そのためにそれぞれの加熱システムは、反応炉700Aから700Nごとに個々にかつ反応炉700Aから700Nごとに個々の成長プロセスパラメータを用いて必要な温度条件に到達するように、それぞれのMFジェネレータを介して実現および制御される。反応炉内側チャンバ内で到達した温度は、システムコントローラ780の制御によって適当な温度センサを用いて測定および監視され得る。加えて、反応炉700Aから700Nは、それぞれの反応炉700Aから700Nから放熱するために、システムコントローラ780によって個々に制御および/または監視されるそれぞれの冷却システムを備える。冷却システムは、上述したように反応炉のタイプに応じて水冷または空冷システムに基づき得る。誘導加熱システム、冷却システム、および温度制御の動作は、図3を参照して上述した従来のPVT成長システム300にあるのと本質的に同じであり、空間および機器費用を節約するために、個々にまたは共通のコントローラまたはPCを用いて制御することができる。しかしながら、成長した単結晶の最終特性の主要で重大な役割を果たす成長プロセスパラメータ、すなわちドーピング/不活性ガス相の圧力および組成は、同じシステムコントローラ780によって中央集中的なやり方で制御され、このコントローラ780は、圧力測定システム720による監視下で、共通の真空チャネル705に接続された単一の調整可能な制御弁734の制御によって反応炉内側チャンバの内側の圧力を適応調整するとともに、個々のMFCの制御によってガス供給源から内側チャンバの中に供給されるガス成分の量を適応調整する。これは、従来の「隔離された」反応炉の概念に基づくPVT成長システムと比較して、重大な成長プロセスパラメータのより良い制御および再現性を実現するのを可能にする。
【0053】
好ましくは、圧力センサは、共通の真空路705に沿って真空ポンプシステム730に直接接続された反応炉700Nからより離れている反応炉700Aにおいて圧力を測定する。圧力センサは、反応炉700Aの上側で圧力を測定するように設けられ得る。代替の構成では、圧力センサは、反応炉700Aの下側に設けることもできる。ドーピングガスまたは不活性ガスの量は、共通のMFCの制御下で共通のガスダクトによって同時に全ての反応炉へ供給することができ、それによって個々のMFCからの応答のわずかな差による供給の差をなくし、成長プロセス制御を容易にする。さらに、反応炉内側チャンバの内側の圧力の測定および監視は、精度を大きく損失することなく反応炉の1つだけに設けられた圧力センサによって実行することができ、空間および機器費用のさらなる節約を伴う。
【0054】
図7に示されたPVT成長システム700における共通の真空チャネル705によって接続された反応炉の個数Nは、2から20の間の、より好ましくは6から10の間の任意の整数として選択することができる。接続された反応炉の個数に関するそのような制限は、大部分の用途に受け入れられる時間内に成長プロセスに適した真空条件に到達することを可能にしつつ、真空ポンプシステム730の排気能力に高い需要を負わせるのを防ぐことが望ましいものであり得る。したがって、単一の反応炉を用いる従来のPVT成長システムに使用される真空ポンプシステムのいずれかは、PVT成長システム700における真空ポンプシステム730として有利に用いられ得る。
【0055】
他方では、共通の真空チャネル705に接続された反応炉の個数Nは、固定される必要はなく、共通の真空チャネルへの追加の反応炉または不要な反応炉の真空接続を単に追加または除去することによって必要に応じて簡単に増減されてもよい。
【0056】
したがって、本発明は、1つまたは複数の単結晶を同時に製造することを可能にするとともに、水平に向けられたPVT成長システムおよび/または水平に向けられたPVT成長反応炉を用いることにより黒鉛/炭素粒子に起因する汚染の影響を低減しまたはなくしさえもする。水平向きは、図2を参照して上述したように、下側結晶が黒鉛/炭素粒子によって汚染されるという欠点がない、例えば、2つの結晶の同時成長を可能にするように設計されたPVT成長構造を利用することも可能にする。
【0057】
図8は、PVT成長構造が重力方向(F)に対して(a)垂直向き、および(b)水平向きに向けられるときの上側および下側の成長区画210A、210B上の2つの半導体結晶ボウル209A、209Bの同時成長中のPVT成長構造200に関してるつぼ202を参照して黒鉛/炭素汚染の影響を示す。
【0058】
図8(a)に示されるように、下側の成長区画210B内で成長する半導体ボウル209Bは、成長プロセス全体の最中に黒鉛/炭素汚染によって本質的に影響を受けないままである上側の区画210A内で成長する半導体ボウル209Bと比較して、重力の作用によって下側の結晶種208Bの方向に落下する放出された黒鉛/炭素粒子で強く汚染される。汚染している黒鉛/炭素粒子は、例えば、結晶209Bの周囲かつるつぼ縦軸216に沿って同心に配置されている下側の区画210Bの円筒壁から、原材料を下側の成長区画210Bから分離する膜(図示せず)の材料から、および/または結晶を囲むまたはその近くに使用されるPVT成長構造の他の部分からくる。
【0059】
図8(b)に示された水平に向けられたるつぼ202では、汚染黒鉛/炭素粒子は、結晶成長中に半導体ボウル209Bの成長面220B全体の上へもはや落下しない。しかしながら、半導体結晶ボウル209A、209Bの成長面220A、220Bの湾曲に応じて、るつぼ202および/または他の構成部分の側壁から放出された炭素/黒鉛粒子の一部は、成長面220A、220Bの少なくとも一部にさらに当たり、結晶ボウル209A、209Bに貫通し得る。これは、図8(b)に示されるように、炭素/黒鉛含有物が、半導体結晶ボウル209A、209Bの両方でおよび縦方向216に沿った半導体結晶ボウル209A、209Bの長さ全体にわたって所与の厚さの側面上層222A、222Bに組み込まれることをもたらす可能性があり、それによって半導体ボウル209A、209Bの上外縁における結晶品質を乱す。
【0060】
したがって、そのような炭素/黒鉛含有層222A、222Bの厚さを最小に減少させるために、成長プロセスは、以下に述べるプロセス条件の一方または両方に従うことができる。
【0061】
第1のプロセス条件は、直径sに係る結晶ボウル209A、209Bの断面領域が、後で単結晶ボウル209A、209Bから製造される基板に望まれる直径にほぼ対応する直径内、および成長時間全体の最中(ただし、成長時間=総プロセス時間-オンシード成長時間(on-seed growing time)であり、このオンシード成長時間は、一般に5mmよりも大きい所望の結晶の縦長さに到達するのに必要な時間に対応する)に、包含物がないはずであるというものである。この第1のプロセス条件は、成長面220A、220Bの湾曲が、適当な高さ範囲内にある直径「s」の断面に対応する円セグメントに対して最大高さhを有するように成長プロセスパラメータを制御することによって実現することができ、この場合に、上述した負の影響が生じないまたは少なくとも最小にされ、適当な高さ範囲は、最小値hMIN=2mmと最大値hMAX=8mmの間(そして、より好ましくは、hMIN=4mmとhMAX=6mmの間)にあり、最終的な基板の所望の直径から独立であるととともに、結晶ボウル209A、209Bの直径にほぼ対応する結晶種208A、208Bの直径から独立である。
【0062】
したがって、高さhがhMIN未満(例えば、h<2mm)に入る場合、結晶品質の望ましくない改質および結果として生じる劣化が起こり得る。
【0063】
高さhが最大hMAX(例えば、h>8mm)を超える場合には、るつぼ内壁および/または膜から落下する黒鉛/炭素粒子が、成長する結晶209B(または209A)上へ当たり、含有物を形成する可能性があり、これは、図9(c)に示されるように、水平に成長する結晶のかなりの「上半分」222Bに黒鉛/炭素粒子が点在することをもたらす。
【0064】
図9(a)および(b)は、hMIN=2mmおよびhMAX=8mmに対応する湾曲の高さhが使用される場合を示し、したがって、結晶表面220Bのあまりに大きい湾曲またはあまりに小さい湾曲により起こり得る望ましくない改質が防がれ得る。この場合には、黒鉛/炭素粒子は、結晶ボウル209Bの成長面220Bにまだ触れ得るが、結晶209A自体に組み込まれることなく、成長るつぼ202の下側壁、内側側壁上の重力により落下する。せいぜい、半導体ボウル209B上の薄い上層222Bだけが影響を受け得る。
【0065】
成長面220A、220Bの高さhが上述した所定の範囲[hMIN;hMAX]内に維持されるのを確実にするために、成長面220A、220Bの対応する湾曲を実現するための適当な成長プロセスパラメータ、例えば、るつぼ202の内側の温度勾配は、例えばシミュレーション分析に基づく、反応炉およびそれぞれのるつぼの特性、半導体ボウル209A、209Bの必要な直径および長さ、基板直径s、ならびにPVT成長プロセスに必要な温度に基づいて決定することができる。
【0066】
第2のプロセス条件は、単結晶成長に使用される結晶種208Aの基部が、包含物のない断面の直径sよりも少なくとも10%大きい直径を有することである。この第2の条件は、成長面220Aの湾曲について上述された第1の条件の要件が、結晶ボウル209Aの縁領域において満たすことができないという欠点に対処する。縁領域における成長面220Aの局所的な湾曲は、結晶ボウル209Aがるつぼ202の内壁と一緒に成長するのを防ぐために、かなりより大きいことが好ましい。そして、黒鉛/炭素粒子は、単結晶ボウルの縁領域に常に積み重ねられ、これは、後で、結晶ボウルの続く処理によって(例えば、円筒研削によって)最終的な基板直径へ除去され得る。したがって、その内部で成長させられる単結晶の外径にほぼ等しく、および単結晶から作製される基板についての所定の直径よりも少なくとも10%大きい直径を有する種、最も好ましくは、所定の基板直径よりも10%から35%大きい種結晶の直径を有する種を使用することが必要である。
【0067】
したがって、本発明は、半導体単結晶の生産率を増大させることが可能であるとともに、均質な高品質結晶を確実にする水平成長方向に1つの半導体単結晶ボウルを製造する、または2つ以上の半導体単結晶ボウルを同時に製造するPVT成長システムの新規な概念を提供し、それによって、垂直に向けられた反応炉および/または垂直るつぼの概念に基づくPVT成長システムにおいて製造された半導体単結晶と比較して、廃棄物による損失を減少させる。
【0068】
本発明によるPVT成長システムのさらなる利点は、それが任意のタイプの垂直成長反応炉を用いて有利に実施され得るということに見られ得る。さらに、いくつかの水平反応炉を共通の真空チャネルを介して共通の真空ポンプシステムへ接続することによって、すなわち、るつぼの寸法および/または原材料の量を変更する必要なく、従来のるつぼを水平方向に利用することによって、2つ以上の半導体単結晶ボウルを同時に製造することが可能であり、これは、いくつかの結晶種を取り囲むための拡大された直径、および拡大された原材料を取り囲むために拡大された直径を有するるつぼを使用するPVT成長システムと比較して、費用の節約という結果になる。
【0069】
最後に、図3~7に示された実施形態の説明は、PVT成長構造200を参照してなされたが、これは、2つの半導体単結晶を同時に成長させることを可能にし、本発明の原理は、示されたタイプのPVT成長構造以外の、および2つの単結晶以外の1つまたは複数の単結晶を一度に成長させることを可能にする構成を有する、他のタイプのPVT成長構造に有利に適用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
100、200 PVT成長構造
102、202、602 るつぼ
104、204 原材料区画
106、206 原材料
108、208A、208B 種結晶
109、209A、209B 単結晶ボウル
110、210A、210B 成長区画
112、212A、212B 放熱チャネル
114、214 断熱材層
116、216 PVT成長構造の縦軸
220A、220B 単結晶ボウルの成長面
222A、222B 含有層
318、418、518、618 反応炉の縦軸
300、400、500、600、700 PVT成長システム
301、401、501、601 反応炉
304、404、504、604 内側チャンバ
606 反応炉金属壁
310、410、610、710 誘導加熱システム
312、412、512 誘導コイル
314、414、514 MFジェネレータ/インバータ
316、416、516、616 温度センサ
320、420、520、620、720 圧力測定システム
622 圧力センサ
330、430、530、630、730 真空ポンプシステム
332、432、532、632、732 真空ポンプ
334、434、534、634、734 調整可能な制御弁
340、440、540、640 ガス供給源
342、442、542、642 MFC(マスフローコントローラ)
350、450、650 水冷システム
660 抵抗加熱システム
662 抵抗加熱要素
664 加熱用電流制御ユニット
370 シールド
380、480、580、680、780 システムコントローラ
700Aから700N 反応炉
705 共通の真空チャネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9