(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】膜式ガスメータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01F3/22 A
(21)【出願番号】P 2018241078
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000150109
【氏名又は名称】株式会社竹中製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】宮内 等
(72)【発明者】
【氏名】重村 丈留
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-328054(JP,A)
【文献】特開2017-194444(JP,A)
【文献】特開2004-151023(JP,A)
【文献】特開2004-093497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流れにより往復動する計量膜と、
前記計量膜の往復動を回転動に変換する変換部と、
軸支された部分から所定の長さの位置で前記変換部の一部に当接し、この当接部分から受けた回転動により回動する羽根部と、該羽根部と同軸上に設置されており、前記羽根部の回動に連動して回転する第1の回転伝達部と、該第1の回転伝達部と係合して前記変換部の回転を増速させる
第2の回転伝達部とを含む増速機構部と、
磁石を保持し、前記増速機構部の回転により回転する磁石ホルダと、
前記磁石ホルダとともに回転する磁石を検出し、この回転数に応じた数のパルス信号を出力するセンサーと、
筐体に設置または筐体と一体に形成されており、少なくとも前記磁石および前記磁石ホルダを覆う支持部材と、
前記磁石ホルダを回転可能に保持するとともに前記支持部材に固定される固定プレートと、
を備え
、
前記第2の回転伝達部は、前記固定プレートを介して前記磁石ホルダと同軸上で連結され、
前記第1の回転伝達部、前記羽根部および前記固定プレートは、同軸上で前記支持部材に固定されることを特徴とする膜式ガスメータ。
【請求項2】
前記第1の回転伝達部は、前記変換部の回転停止に対して前記第1の回転伝達部の回転を止める回転止め部品を介して前記固定プレートに軸支されることを特徴とする、請求項
1に記載の膜式ガスメータ。
【請求項3】
前記変換部は、前記計量膜の往復動によって回転するクランクを備えることを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の膜式ガスメータ。
【請求項4】
ガスの流れにより往復動する計量膜を備える膜式ガスメータの製造方法であって、
前記計量膜の往復動を回転動に変換する変換部を形成し、
軸支された部分から所定の長さの位置で前記変換部の一部に当接し、この当接部分から受けた回転動により回動する羽根部と、該羽根部と同軸上に設置されており、前記羽根部の回動に連動して回転する第1の回転伝達部と、該第1の回転伝達部と係合して前記変換部の回転を増速させる
第2の回転伝達部を含む増速機構部を形成し、
磁石ホルダに磁石を保持させるとともに、前記磁石ホルダを前記増速機構部に設置し、
前記磁石を検出してその回転数に応じた数のパルス信号を出力するセンサーを設置
し、
少なくとも前記磁石および前記磁石ホルダを覆う支持部材を筐体に設置し、または筐体と一体に形成し、
前記磁石ホルダを回転可能に保持する固定プレートを
前記支持部材に固定し、
前記固定プレートを介して前記磁石ホルダと同軸上に前記第2の回転伝達部を連結させ、
前記第1の回転伝達部、前記羽根部および前記固定プレートを同軸上で前記支持部材に固定する、
処理を含むことを特徴とする膜式ガスメータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量膜の往復動により、ガス量を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス使用量などの計測には膜式のガスメータが用いられている。この膜式のガスメータは、ガス流によって往復動する計量膜の動きを利用して磁石を回動させ、この回動状態をセンサーで検出する手法が採られている。
【0003】
このような膜式のガスメータに関し、計量膜の往復運動をクランク機構で伝達し、クランク機構のクランク軸と同軸に回転する流量発信磁石をMR(Magneto Resistive)センサーで検出するものがある(例えば、特許文献1、2)。また、クランクシャフトを収容する機構部屋の内部に取付けられたブラケットに磁石を保持するマグネットホルダやマグネットホルダへ芯ずれを許容した状態の回転を伝達する回転伝達機構を備えるものがある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-206656号公報
【文献】特開2016-075712号公報
【文献】特開2017-194444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、膜式のガスメータでは、計測膜の往復動による1つの磁石の回転で1パルスまたは2パルス程度の計測しか行えない。このようなガスメータにおいて計測の分解能を上げるために複数の磁石を設置するか、または磁石を多極化するという手法がとられる。このような手法によれば磁石の1回転に対し、MRセンサーの出力パルス数を増加させることができる。しかしながら、設置できる磁石の数や、多極化できる数には限界があるという課題がある。
斯かる課題について、特許文献1ないし3には開示や示唆はなく、特許文献1ないし3に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0006】
そこで、斯かる課題に鑑み、本発明の目的は磁石の回転数を増加させ、MRセンサーによる計測機能および計測精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の膜式ガスメータの一側面は、ガスの流れにより往復動する計量膜と、前記計量膜の往復動を回転動に変換する変換部と、軸支された部分から所定の長さの位置で前記変換部の一部に当接し、この当接部分から受けた回転動により回動する羽根部と、該羽根部と同軸上に設置されており、前記羽根部の回動に連動して回転する第1の回転伝達部と、該第1の回転伝達部と係合して前記変換部の回転を増速させる第2の回転伝達部とを含む増速機構部と、磁石を保持し、前記増速機構部の回転により回転する磁石ホルダと、前記磁石ホルダとともに回転する磁石を検出し、この回転数に応じた数のパルス信号を出力するセンサーと、筐体に設置または筐体と一体に形成されており、少なくとも前記磁石および前記磁石ホルダを覆う支持部材と、前記磁石ホルダを回転可能に保持するとともに前記支持部材に固定される固定プレートとを備え、前記第2の回転伝達部は、前記固定プレートを介して前記磁石ホルダと同軸上で連結され、前記第1の回転伝達部、前記羽根部および前記固定プレートは、同軸上で前記支持部材に固定される。
【0008】
上記膜式ガスメータにおいて、前記第1の回転伝達部は、前記変換部の回転停止に対して前記第1の回転伝達部の回転を止める回転止め部品を介して前記固定プレートに軸支されてよい。
上記膜式ガスメータにおいて、前記変換部は、前記計量膜の往復動によって回転するクランクを備えてよい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の膜式ガスメータの製造方法の一側面は、ガスの流れにより往復動する計量膜を備える膜式ガスメータの製造方法であって、前記計量膜の往復動を回転動に変換する変換部を形成し、軸支された部分から所定の長さの位置で前記変換部の一部に当接し、この当接部分から受けた回転動により回動する羽根部と、該羽根部と同軸上に設置されており、前記羽根部の回動に連動して回転する第1の回転伝達部と、該第1の回転伝達部と係合して前記変換部の回転を増速させる第2の回転伝達部を含む増速機構部を形成し、磁石ホルダに磁石を保持させるとともに、前記磁石ホルダを前記増速機構部に設置し、前記磁石を検出してその回転数に応じた数のパルス信号を出力するセンサーを設置し、少なくとも前記磁石および前記磁石ホルダを覆う支持部材を筐体に設置し、または筐体と一体に形成し、前記磁石ホルダを回転可能に保持する固定プレートを前記支持部材に固定し、前記固定プレートを介して前記磁石ホルダと同軸上に前記第2の回転伝達部を連結させ、前記第1の回転伝達部、前記羽根部および前記固定プレートを同軸上で前記支持部材に固定する処理を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0011】
(1) 増速機構部により計量膜の往復動による磁石の回転数を増やすことで、センサーの検出パルスが増加し、ガスの計測能力および計測精度を高めることができる。
(2) 従前の変換部と磁石との間に増速機構部を追加することでセンサーの分解能を向上させることができる。
(3) 磁石を保持する磁石ホルダに増速機構部を接続することで、計量膜の往復動により動作する変換部の回転負荷を増加させずに磁石の回転を増速させることができる。
(4) 磁石ホルダに増速機構部を接続することで、少ない構成で増速回転させることが可能となり、ガスメータの振動や騒音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態に係るガスメータの計量部の構成例を示す図である。
【
図3】計測部から出力されるパルス信号の一例を示す図である。
【
図4】実施例に係るガスメータの外観構成例を示す図である。
【
図6】Aは計測収納部の構成例を示す図であり、Bはセンサー保持ケースの構成例を示す図である。
【
図7】増速機構部および計測部の構成例を示す図である。
【
図8】クランク機構と回転伝達部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔一実施の形態〕
図1は、一実施の形態に係るガスメータの計量部の構成例を示している。
図1に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
このガス計量部2は、ガス管内に流れるガスGの流れを検出する本発明の膜式ガスメータの計量機構の一例であり、たとえば
図1に示すように、計量膜4、変換部6、増速機構部8、計測部10を含んでいる。ガス計量部2は、たとえばガス管が連結されそのガス流を取り込むメータ本体部を備えている。計量膜4は、メータ本体部内のガス流から受ける力FGによって往復動することで、ガスGの利用流量に応じた流れの状態を一定の動作情報として抽出することができる。メータ本体部および計量膜4は同数であって、かつ少なくとも2つ以上を備える。そしてガス流の計量では、複数のメータ本体部に対して順にガスGを流していく。このときに計量膜4は、メータ本体部へのガスの充填やガス消費による容積の変化を受けて往復動する。この計量膜4の往復動は変換部6に伝達される。
【0014】
<変換部6について>
変換部6は、計量膜4の往復動を回転動作に変換してガス流量の計測部側に伝達する機構部の一例である。この変換部6は、たとえば一部を計量膜4に接続して計量膜4の往復動を水平運動または回転運動に変換して伝達する伝達アーム12-1、12-2を含む。伝達アーム12-1、12-2はたとえば接続された計量膜4の往復動を受けて変位することで計量膜4の往復動により生じる変位力FAを回動アーム14に伝達する。
回動アーム14は、伝達アーム12から受けた変位力FAを回転方向に変換して伝達する手段の一例である。回動アーム14は、たとえば伝達アーム12と同じ数で構成されており、伝達アーム12-1の一端側に回動アーム14-1、伝達アーム12-2の一端側に回動アーム14-2がそれぞれ回動可能に連結されている。さらに回動アーム14-1、14-2の他端側は、たとえば上部側の一面に共通の押圧部18が連結されているとともに、下部側の一面にクランク16が連結されている。
【0015】
押圧部18は、回動アーム14-1、14-2の回転変位によって一定の位置を中心にした円状に変位しながら増速機構部8を押圧することで、計量膜4の往復動を伝達する手段の一例である。
【0016】
<増速機構部8について>
増速機構部8は、変換部6を通じて伝達された回転運動を伝達するとともに、その回転速度を増速させる手段の一例である。増速機構部8には、たとえば第1の回転伝達部20と第2の回転伝達部24や、押圧部18によって回転方向に押圧される羽根部22、第2の回転伝達部24の回転によって回動する磁石ホルダ26が含まれる。
第1の回転伝達部20および第2の回転伝達部24は、たとえばそれぞれ異なる歯数の歯車で構成されており、係合させることで回転を伝達するとともに回転速度を増加させる。
羽根部22は、たとえば第1の回転伝達部20と接続または一体に形成されている。また羽根部22は、押圧部18の変位経路上に配置されており、ガス流の計量時に変位する押圧部18に当接する。
磁石ホルダ26は、たとえば底面側が第2の回転伝達部24と一体に接続されており、増速した第2の回転伝達部24と同じ回転数で回転する。この磁石ホルダ26は、計測部10の磁石28を保持する手段の一例であり、計量膜4の往復動による力が増速機構部8を通じて伝達され、そのガス流の状態に応じた回転数で磁石28を回転させる。
【0017】
この増速機構部8では、たとえば
図2に示すように、回動アーム14-1、14-2の変位により所定の軌道Rで回動する押圧部18から羽根部22が押圧力FRを受ける。第1の回転伝達部20は、羽根部22を通じて押圧力FRを受けて回転する。また第2の回転伝達部24および磁石ホルダ26は、係合する第1の回転伝達部20の回転力が伝達されて回転する。第1の回転伝達部20と第2の回転伝達部24は、歯車比がM:N(M>N)で形成されている。これにより磁石ホルダ26は、伝達された計量膜4の往復動により回動する押圧部18の回転数に対し、(M/N)(>1)倍の回転数となる。
なお、第1の回転伝達部20と第2の回転伝達部24の歯車比は、計量膜4の往復動の回数に対し、計測部10による分解能の要求に応じて設定される。また、歯車比は、第2の回転伝達部24を回転させるのに必要なトルク(Torque)と、押圧部18の押圧力に従って上限を設定してもよい。
【0018】
<計測部10について>
計測部10は、伝達された回転動により磁石28を回動させ、この回転数をMRセンサー30で検出してガス流を計測する。この計測部10には、たとえば磁石ホルダ26が固定プレート32を介して回動可能に固定されるとともに、この磁石ホルダ26に磁石28が固定保持される。また計測部10には、たとえば磁石28の平面から所定距離離間した位置にMRセンサー30が配置されている。このとき、MRセンサー30は、たとえば磁石ホルダ26および磁石28の回転軸L1の回転軸上にセンサー面が対向している。MRセンサー30は、たとえば
図3に示すように、時間tの経過に沿って、磁石28の回転による磁界変化の大きさを検出し、その計測信号としてパルス信号Sを出力する。
ガス流量の計測処理では、たとえば図示しない制御部が、MRセンサー30が出力したパルス信号Sを受信して、ガス流量などからガスの使用状態、ガスの使用量などを計測する。
【0019】
<一実施の形態の効果>
斯かる構成によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) ガス流による計量膜4の往復動に対し、増速機構部8で回転伝達量を増幅させることで、MRセンサー30からの信号パルス数を増加させ、ガス流の検出分解能を向上させることができる。
(2) 変換部6と計測部10との間に増速機構部8を追加することでMRセンサー30の分解能を向上させることができる。
(3) 増速機構部8と変換部6とが押圧部18の接触によって回転力を伝達させることで、変換部6側に増速機構部8で増加した回転数の影響を与えない。
(4) 変換部6から伝達された回転力を2つの歯車の係合により増速して伝達することができ、低コスト化やメンテナンス性の向上が図れる。
(5) 増速機構部8が固定プレート32を介して固定されるので、回転数の増加によるメータの振動や騒音の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0020】
図4は、実施例に係る膜式ガスメータの外観構成例を示している。
このガスメータ40は、たとえば外装ケースとして上側ケース42と下側ケース44を備えている。上側ケース42には、計量膜4で取り出した往復動を伝達する変換部6や増速機構部8、計測部10などが収納される。下側ケース44には、取り込んだガスを流動させるメータ本体部やメータ本体部内のガス流により往復動する計量膜4などが収納される。
ガスメータ40には、たとえば上側ケース42の前面側に、計測結果を表示する計測表示窓部46を備えるほか、天井側にMRセンサー30を含む計測部10が収納される計測収納部50を開閉可能にする天板48や、計測対象であるガスGを取込みまたは排出する口金部などを備える。
【0021】
図5は、上側ケース42の内部構成例を示している。
図5に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
図5において、
図1と同一部分には同一符号を付している。
上側ケース42の内部には、たとえば
図5に示すように、ガスGを内部に流すメータ本体部52の一部が配置されるとともに、このメータ本体部52内に設置された計量膜の往復動を受けて回転運動する回動シャフト54が設置されている。この回動シャフト54は、一端側が肘金56-1、56-2の一端側に回動可能に接続されている。この肘金56-1、56-2は、本発明の伝達アームの一例であり、たとえば回動シャフト54の回動によって水平方向に変位する。これにより肘金56-1、56-2は、他端側に接続する回動アーム14-1、14-2を変位させる。これにより回動アーム14-1、14-2を介して押圧部18が回動する。
【0022】
回動アーム14-1、14-2は、たとえば先端の下部側がクランク16に連結されている。このクランク16は、回動アーム14-1、14-2を通じて伝達された力により、所定の位置を回転中心として回動する。クランク16の回動によりたとえば図示しないメータ本体部52のバルブを開閉させてもよい。
また上側ケース42には、たとえばガス計測部の中心側であって、ケースの一部またはメータ本体部52の一部に軸支されるクランク軸62を備える。このクランク軸62は、たとえばガス計測部を支持する手段の一例であり、上側ケース42の一部に固定プレート60を介して係止されてもよく、またはクランク16の回転を受けて回動してもよい。
【0023】
さらに上側ケース42の天井側には、少なくともMRセンサー30を収納する計測収納部50が形成される。この計測収納部50は、たとえば上側ケース42の天井側の一部を開口させ、その開口内部や開口部を突出させて形成されている。
計測収納部50は、たとえば
図6のAに示すように、天板48で覆われており、その内部にセンサー保持ケース55に保持されたMRセンサー30が収納される。また計測収納部50内には、たとえばMRセンサー30を設置する載置カバー64が形成される。この載置カバー64は、たとえば上側ケース42と一体に形成され、または上側ケース42に設置されている。載置カバー64は、たとえば少なくとも上側ケース42内に設置された磁石ホルダ26や磁石28の上面や周縁部分を覆っている。
そのほか計測収納部50には、たとえば計測表示窓部46側にある制御基板に向けてMRセンサー30が発信するパルス信号Sを送信するリード線やこのリード線が接続される中継基板が設置されてもよく、またはMRセンサー30の検出信号を取り込む制御部を構成する電子基板が設置されてもよい。
【0024】
センサー保持ケース55は、たとえば
図6のBに示すように、MRセンサー30の上部および側面側の一部または全部を包囲して載置カバー64側に固定させる手段である。このセンサー保持ケース55は、たとえば金属板や磁気吸収素材で形成される磁気シールド66を介してMRセンサー30を保持する。この磁気シールド66は、天井側や側面側からの磁気を遮断し、載置カバー64の内側に配置される磁石28の回転により生じる磁気変化のみをMRセンサー30に計測させる手段の一例である。
【0025】
<増速機構部8および計測部10の内部構成例について>
図7は、増速機構部および計測部の構成例を示している。
上側ケース42には、押圧部18の回動を増幅する第1の回転伝達部20と第2の回転伝達部24を備える。第1の回転伝達部20は、たとえば上側ケース42の開口部側にある載置カバー64に対し固定プレート32を介して固定軸68により回動可能に固定される。この載置カバー64は、本発明の支持部材の一例である。また第2の回転伝達部24は、固定プレート32を介して磁石ホルダ26と同軸上で回動可能に連結されている。
第2の回転伝達部24および磁石ホルダ26の回転軸L1と第1の回転伝達部20の回転軸L2は、平行に配置されており、かつ増速機構部8の歯車比、または歯車の径の比率に応じた間隔が設けられている。
【0026】
<変換部6と増速機構部8の構成例について>
図8は、クランク機構と回転伝達部の構成例を示している。
図8に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。
固定プレート32には、たとえば
図8に示すように、中央側に径大な開口部70を備えることともに、その周辺に径小な複数の貫通孔72を備える。開口部70には、第2の回転伝達部24の回転面上に形成された係合手段71が挿入されるとともに、磁石ホルダ26の係合部を備える回転面側の一部が挿通する。これにより第2の回転伝達部24は、係合手段71が磁石ホルダ26の回転面側に形成される係合部と係合して磁石ホルダ26と一体化する。
また貫通孔72には、たとえば下方側からネジやボルトなどの締結部品74が挿入され、図示しない上側ケース42の筐体の一部に固定される。
さらに固定プレート32には、第1の回転伝達部20の回転中心軸上に貫通孔76が形成されている。この貫通孔76には、たとえば内部に第1の回転伝達部20の保持性を高めるためのネジ部材がインサート成型されており、第1の回転伝達部20の貫通孔を通じて固定軸68が挿通される。また第1の回転伝達部20の下方には、回転止め80と回転止め保持部材82とが配置されており、固定軸68に軸支される。
この回転止め80は、たとえばガス流が停止したときに、第1の回転伝達部20に生じる慣性力などによる回転を阻止する手段の一例である。この回転止め80は、たとえば第1の回転伝達部20の底面側の一部に接触させることで、摩擦により回転を停止させる構成であり、通常の計測時の磨耗や回転抵抗によるガス流の計測精度の低下を防止するために、第1の回転伝達部20に対する接触面積や接触圧力などが設定されている。
回転止め保持部材82は、回転止め80を第1の回転伝達部20の側面に対して所定の圧力で押し付けるとともに、回転止め80の抜け落ちを防止する手段の一例である。この回転止め保持部材82は、たとえば第1の回転伝達部20の側面に形成され、回転止め80を挿入する開口部分を塞ぐための蓋として機能する。
固定軸68に軸支された回転止め80および回転止め保持部材82は、第1の回転伝達部20とともに固定軸68を中心に回動する。
【0027】
そのほか、変換部6側には、たとえば回動アーム14-1、14-2の回動により伝達される力でクランク16が回動する。このクランク16の底部側には、たとえば複数本の肘金58が連結されており、クランク16の回転軌道に応じて回動する。この肘金58は、たとえば図示しないメータ本体部52のバルブに接続されている。
つまりこのガスメータ40では、たとえば
図9に示すように、下側ケース44内に2つのメータ本体部52が収納されており、交互にガスを流入させる。そしてこのガスの流入によりメータ本体部52内に設置される計量膜4が往復動し、この往復動によって回動シャフト54が回動してガス流の流れ状態を伝達する。ここで抽出された回動動作は、肘金56-1、56-2を介して増速機構部8側に伝達されるとともに、
図8に示すクランク16を介して肘金58を動作させる。肘金58は、メータ本体部52に交互に流れるガス流により図示しないバルブを交互に開閉させればよい。
【0028】
<ガスメータの製造工程>
このガスメータ40は、本発明の製造方法の一例として、
(a) 上側ケース42および下側ケース44を形成する工程、
(b) 計量膜4の往復動を回転動に変換する変換部6を形成する工程、
(c) 変換部6の回転を増速させる増速機構部8を設置する工程、
(d) 磁石ホルダ26に磁石28を保持させるとともに、磁石ホルダ26を増速機構部8に設置する工程、
(e) 磁石28を検出してその回転数に応じた数のパルス信号を出力するMRセンサー30を設置する工程
により製造することができる。
【0029】
<実施例の効果>
斯かる構成によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 第1の回転伝達部20と第2の回転伝達部24の歯数などの比率により磁石28の回転数を増加させることができ、この回転数の増加によってMRセンサー30の出力するパルス信号を増やすことで、ガス流の計測精度を向上させることができる。
(2) 計量膜4の往復動を伝達する変換部6と計測部10の間に、歯数の異なる歯車を介在させることで、ガス流の計測精度を向上させることができる。
(3) 磁石ホルダ26の回転のみを増速させることで、変換部6などの機構部への影響が少ない。
(4) 固定プレート32を介して増速機構部8をケース側に固定することで、変換部6等に増速による振動や増速による慣性力の影響を与えない。
【0030】
以上説明した実施の形態および実施例について、変形例を以下に列挙する。
【0031】
(1) 増速機構部8は、たとえば所定の歯数の比率が設定された2枚の歯車で構成する場合に限られず、たとえば3枚以上の歯車を組み合せて増速させてもよい。この増速機構部では、たとえば押圧部18に当接する第1の歯車と第2の歯車が係合するとともに、第2の歯車と第3の歯車が係合する。このとき第1の歯車の歯数M1よりも第2の歯車の歯数N1を少なくし、かつ第2の歯車の歯数N1よりも第3の歯車の歯数X3を小さくする。このように第1の歯車から第3の歯車に向けて徐々にギア比を小さくすることで、押圧部18が伝達する押圧力FRに対して、歯車の係合負荷を軽減できるので、増速の割合を大きくすることができる。
【0032】
(2) 増速機構部8は、たとえば歯車同士を直接係合させるものに限らない。押圧部18を介して伝達されたガス流の往復動に対し、磁石28の回転数を増加させる手段として、たとえば大径の第1の回転伝達部20と小径の第2の回転伝達部24とをベルトドライブで連結してもよい。斯かる構成によれば、第1の回転伝達部20の径と第2の回転伝達部24の外径の比率により磁石の回転数を増加させることができる。
【0033】
(3) 上記実施例では、第1の回転伝達部20に設置する回転止め80および回転止め保持部材82の設置状態の一例を示した。ここでは、回転止め80および回転止め保持部材82の構成例を説明する。回転止め80は、たとえば
図10のAに示すようにゴムパッキンを利用してもよい。この回転止め80は、たとえば第1の回転伝達部20内部において、固定軸68との接触面積を小さくしている。このような構成によれば、ガスメータ40内部にあるガスの透過を抑えることができる。また、固定軸68との接触量を抑えることで、通常のガス流計測時の摩擦抵抗を抑えられ、ガス流の計測を阻害しない。
また、回転止め90は、たとえば
図10のBに示すように、固定軸68に対して嵌合する部材としてOリングを用いている。これにより回転止め保持部材82や固定軸68との隙間を埋めることができ、封止機能が高められるとともに、Oリングの密着度による回転止めの機能も期待できる。
【0034】
回転止め92は、たとえば
図10のCに示すように、ゴムパッキンを利用しており、固定軸68に対する接触面積を増加させて形成している。このような構成により
図10のAに示す構成よりもガス封止機能が高められるとともに、固定軸68と第1の回転伝達部20との間の接触負荷が増加し、回転止め機能が向上する。
さらに、第1の回転伝達部20には、たとえば
図10のDに示すように、内部に空間部94が形成されており、この空間部94の底部にファイバー部材96が設置されている。このファイバー部材96は、たとえば空間部94の形状に合わせて形成されており、固定軸68の周面に近接または接触状態となっている。また、ファイバー部材96には、回転止めの一例であり、たとえば第1の回転伝達部20と接触する面と反対側の面に座金97が設置されるとともに、この座金97を介してバネや樹脂部材などの弾性部材98の一端が接続されている。またこの弾性部材98の他端側は、たとえば固定軸68に設置された支持部材100に接続されている。ファイバー部材96は、たとえば支持部材100側から空間部94の底部側に向けて座金97を介して弾性部材98の弾性力が負荷される。このような構成により、ファイバー部材96が固定軸68との間で封止機能を発揮するとともに、弾性部材98の付勢により第1の回転伝達部20回転を停止させることができる。
【0035】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、計量膜の往復動を変換して得た回転動作を増速させてMRセンサーで検出することで、ガス流の計測精度を向上させることができ、有用である。
【符号の説明】
【0037】
2 ガス計量部
4 計量膜
6 変換部
8 増速機構部
10 計測部
12、12-1、12-2 伝達アーム
14、14-1、14-2 回動アーム
16 クランク
18 押圧部
20 第1の回転伝達部
22 羽根部
24 第2の回転伝達部
26 磁石ホルダ
28 磁石
30 MRセンサー
32 固定プレート
40 ガスメータ
42 上側ケース
44 下側ケース
46 計測表示窓部
48 天板
50 計測収納部
52 メータ本体部
54 回動シャフト
55 センサー保持ケース
56-1、56-2、58 肘金
60 固定プレート
62 クランク軸
64 載置カバー
66 磁気シールド
68 固定軸
70 開口部
71 係合手段
72、76 貫通孔
74 締結部品
78 ベアリング
80、90、92 回転止め
82 回転止め保持部材
94 空間部
96 ファイバー部材
97 座金
98 弾性部材